説明

画像形成装置、パターン位置検出方法

【課題】スポット光の直径がライン幅より長くてもテストパターンの位置を精度よく決定できる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】記録媒体150に形成した複数のラインのテストパターンを読み取って、液滴の吐出タイミングを調整する画像形成装置100であって、記録媒体に光を照射する発光手段及び記録媒体からの反射光を受光する受光手段とを有する読み取り手段30と、テストパターンのパターンデータを記憶するパターンデータ記憶手段618と、パターンデータを読み出して記録媒体にテストパターンを形成するテストパターン印刷手段と、テストパターン上を前記光が移動している間、前記受光手段が前記光の走査位置から受光した前記反射光の強度データを記憶する強度データ記憶手段525と、極小値付近の前記強度データの傾きの大きさを表す傾き度データにライン位置決定演算を施し前記ラインの中央位置を検出する位置検出手段616と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に形成した複数のラインのテストパターンを読み取って、液滴の吐出タイミングを調整する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴を用紙などのシート材に吐出して画像を形成する画像形成装置が知られている(以下、液体吐出方式の画像形成装置という)。液体吐出方式の画像形成装置は、大きくシリアル方式とラインヘッド方式のものに区分できる。シリアル方式の画像形成装置は、紙送りを繰り返しながら、紙送り方向と直角に(主走査方向に)記録ヘッドが往復移動して用紙全体に画像を形成する。ラインヘッド方式の画像形成装置は、最大用紙幅とほぼ同じ長さにノズルが並んでおり、ラインヘッド内のノズルは紙が送られ液滴を吐出するタイミングになると液滴を吐出することで画像を形成する。
【0003】
しかしながら、シリアル方式の画像形成装置では、往路及び復路の双方向で1本の罫線を形成したような場合、往路と復路で罫線の位置ずれが発生しやすいということが知られている。また、ラインヘッド方式の画像形成装置では、ノズルの加工精度や取り付け誤差などに起因して、定常的に着弾位置がずれるノズルがあると紙送り方向に平行な線が現れやすいことが知られている。
【0004】
このため、液体吐出方式の画像形成装置には、液滴の着弾位置を調整する調整機能が搭載されることがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
図1(a)は、着弾位置の調整を説明する図の一例である。発光素子(例えばLED)が照射したスポット光がテストパターンを矢印方向に走査すると、スポット光の走査位置の濃度に応じた反射光が受光素子にて検出される。シート材が白色などの反射性の良好な用紙であれば、光がテストパターンを走査した時は、無地の部分を移動した時よりも相対的にスポット光はインクに吸収される。受光素子が受光する反射光を電圧で表せば、図示するように、スポット光がテストパターンと重畳した際の電圧は、テストパターン以外の無地の部分を走査している際の電圧よりも大きく低下する。この電圧が急激に低下する領域を解析することで、テストパターンのエッジ位置を決定できる。
【0006】
図1(b)は、スポット光とテストパターンの大きさの関係を示す図である。スポット光はテストパターンを構成する複数のライン(図では1本)を一定速度(等速)で横切るように移動する。一般的な波長のスポット光とシート材では、光とテストパターンの重畳面積が大きいほど、スポット光の反射光が低下するとしてよい。このため、図1(a)のように電圧の降下領域からエッジ位置を決定するには、スポット径d = テストパターンのライン幅L、又は、スポット径d < テストパターンのライン幅L、であることが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、スポット径d≦テストパターンのライン幅Lでなければならないとすると、ライン幅Lを大きくするため、インクを多量に使用するという問題がある。スポット径を小さくすることでもd≦Lを満たすことができるが、発光素子の改良はコスト増をもたらす。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、スポット光の直径がライン幅より長くてもテストパターンの位置を精度よく決定できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、記録媒体に形成した複数のラインのテストパターンを読み取って、液滴の吐出タイミングを調整する画像形成装置であって、前記記録媒体に光を照射する発光手段及び前記記録媒体からの反射光を受光する受光手段とを有する読み取り手段と、テストパターンのパターンデータを記憶するパターンデータ記憶手段と、前記パターンデータを読み出してテストパターンを形成するテストパターン印刷手段と、前記記録媒体又は前記読み取り手段を相対的に等速で移動させる相対移動手段と、テストパターン上を前記光が移動している間、前記受光手段が前記光の走査位置から受光した前記反射光の強度データを記憶する強度データ記憶手段と、極小値付近の前記強度データの傾きの大きさを表す傾き度データにライン位置決定演算を施し前記ラインの中央位置を検出する位置検出手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
スポット光の直径がライン幅より長くてもテストパターンの位置を精度よく決定できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来において着弾位置の調整を説明する図の一例である。
【図2】スポット径d > テストパターンのライン幅Lの場合のラインセンター位置の決定方法を説明する図の一例である。
【図3】シリアル方式の画像形成装置の概略斜視図の一例である。
【図4】キャリッジの動作をより詳細に説明する図の一例である。
【図5】画像形成装置の制御部のブロック図の一例である。
【図6】液滴位置ずれセンサがテストパターンのラインセンター位置を検出するための構成を模式的に示す図の一例である。
【図7】従来のエッジ位置の決定の概略を説明する図の一例である。
【図8】従来のエッジ位置の決定方法を説明する図の一例である。
【図9】スポット径d>ライン幅Lの場合における、ライン位置の決定方法を説明する図の一例である。
【図10】ラインセンター付近のΔSの傾きを算出した図の一例である。
【図11】吐出タイミング補正処理実行部がラインセンター位置を決定する手順を説明する図の一例である。
【図12】吐出タイミング補正処理実行部がラインセンター位置を決定する手順を説明する図の一例である。
【図13】従来のライン位置の決定方法による、スポット径d >ライン幅Lのテストパターンのライン位置の決定を説明する図の一例である。
【図14】ラインの色とライン幅の関係の一例を示す図である。
【図15】ライン方式の画像形成装置のヘッドの配置とテストパターンを模式的に説明する図の一例である。
【図16】補正処理実行部が液滴吐出タイミングを補正する手順の一例を示すフローチャート図である。
【図17】精度低下要因を説明する図の一例である。
【図18】補正処理実行部の機能ブロック図の一例である(実施例2)。
【図19】VsgとVpを説明する図の一例である。
【図20】パターン測定データの出力波形の一例、白紙測定データの出力波形の一例をそれぞれ示す図である。
【図21】x´とy´から得られる検出電圧zを模式的に説明する図の一例である。
【図22】補正処理実行部が信号補正する手順の一例を示すフローチャート図である。
【図23】補正処理実行部の処理を説明するフローチャート図の一例である。
【図24】画像形成装置とサーバを有する画像形成システムを模式的に説明する図の一例である。
【図25】サーバと画像形成装置のハードウェア構成図の一例を示す図である。
【図26】画像形成システムの機能ブロック図の一例である。
【図27】画像形成システムの動作手順を示すフローチャート図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
図2は、スポット径d > テストパターンのライン幅Lの場合のラインセンター位置の決定方法を説明する図の一例である。スポット光が左から右に等速で1本のラインを走査している。ラインとスポット光の形状に起因して、スポット光がラインと重畳し始めた時は、重畳面積が急激に大きくなり、スポット光がラインと重畳し終える時は、重畳面積が急激に小さくなる。
【0014】
一方、スポット光の重心がラインの中央と重畳している間は、重畳面積の変化率が小さいが、ゆっくりと増加傾向から減少傾向に移行しているはずである。よって、スポット光の重心がラインの中央と一致する時、理想的には、重畳面積の増加率ΔSは変曲点を示す(ΔS=0)。例えばこの重畳面積の増加率ΔSは、特許請求の範囲の傾き度データに相当する。
【0015】
テストパターンからの反射光はラインとスポット光の重畳面積が大きいほど少なく、小さいほど大きくなるので、反射光の強度を監視すれば、スポット光の重心がラインの中央を通過するタイミングが検出される。したがって、反射光の強度の増加率が正から負に変化する時(面積増加率ΔSが正から負に変化する時)のスポット光の位置がラインの位置(この場合はラインセンター位置)である。
【0016】
また、スポット光の重心がラインの中央付近を移動している間は、重畳面積の変化速度が小さいので、反射光の強度もゆっくりと変化する。このため、面積増加率ΔSが正から負に変化する位置も安定しやすい。したがって、スポット径d > テストパターンのライン幅L(以下、単に「ライン幅L」という)という状況でも、ラインの位置を精度よく決定することができる。
【0017】
〔構成例〕
図3は、シリアル方式の画像形成装置100の概略斜視図の一例を示す。画像形成装置100は、本体フレーム70により支持されている。画像形成装置100の長手方向にはガイドロッド1及び幅ガイド2が掛け渡され、ガイドロッド1及び副ガイド2にキャリッジ5が矢印A方向(主走査方向)に往復移動可能なように保持されている。
【0018】
また、主走査方向には無端ベルト状のタイミングベルト9が、駆動プーリ7と加圧コロ15に張架されており、タイミングベルト9の一部がキャリッジ5に固定されている。また、駆動プーリ7は主走査モータ8により回転駆動され、これによりタイミングベルト9が主走査方向に移動し、連動してキャリッジ5も往復移動する。タイミングベルト9には加圧コロ15によって張力が掛けられており、タイミングベルト9はたるむことなくキャリッジ5を駆動させることができる。
【0019】
また画像形成装置100は、インクを供給するカートリッジ60と記録ヘッドを維持・クリーニングする維持機構26を有する。
【0020】
シート材150はキャリッジ5の下側にあるプラテン40上を、不図示のローラにより矢印B方向(副走査方向)に間欠的に搬送される。シート材50は、紙などの普通紙、光沢紙、フィルム、電子基板など液滴が付着可能な記録媒体であればよい。シート材150の搬送位置毎に、キャリッジ5は主走査方向に移動し、キャリッジ5が搭載している記録ヘッドが液滴を吐出する。吐出が終わるとシート材150が再度、搬送され、キャリッジ5が主走査方向に移動して液滴を吐出する。これを繰り返すとシート材150の全面に画像が形成される。
【0021】
図4は、キャリッジ5の動作をより詳細に説明する図の一例である。上記のガイドロッド1及び副ガイド2は左側板3と右側板4の間に掛け渡され、キャリッジ5は軸受け12と副ガイド受け部11によりガイドロッド1及び副ガイド2を摺動自在に保持され、矢印X1,X2方向(主走査方向)に移動可能となっている。
【0022】
キャリッジ5にはブラック(K)の液滴を吐出する記録ヘッド21,22、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色のインク滴を吐出する記録ヘッド23,24,が搭載されている。記録ヘッド21はブラックがよく使用されるために配置したものであり、省略することもできる。
【0023】
なお、記録ヘッド21〜24としては、インク流路内(圧力発生室)のインクを加圧する圧力発生手段(アクチュエータ手段)として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させることによる圧力でインク滴を吐出させるいわゆるサーマル型のもの、又は、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで、インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のもの、などを用いることができる。
【0024】
キャリッジ5を移動走査する主走査機構32は、主走査方向の一方側に配置される主走査モータ8と、主走査モータ8によって回転駆動される駆動プーリ7と、主走査方向の他方側に配置された加圧コロ15と、駆動プーリ7と加圧コロ15との間に掛け回されたタイミングベルト9とを備えている。なお、加圧コロ15は、図示しないテンションスプリングによって外方(駆動プーリ7に対して離れる方向)にテンションが作用させられている。
【0025】
タイミングベルト9は、キャリッジ5の背面側に設けたベルト保持部10に一部分が固定保持されていることで、タイミングベルト9の無端移動に伴い主走査方向にキャリッジ5を牽引する。
【0026】
また、キャリッジ5の主走査方向に沿うようにエンコーダシート41が配置されており、キャリッジ5に設けたエンコーダセンサ42によって当該エンコーダシート42のスリットを読取ることで、キャリッジ5の主走査方向の位置を検知することができる。このキャリッジ5が主走査領域のうち記録領域に存在する場合、シート材150が図示しない紙送り機構によってキャリッジ5の主走査方向と直交する矢示Y1,Y2方向(副走査方向)に間欠的に搬送される。
【0027】
以上説明した、本実施形態に係る画像形成装置100では、キャリッジ5を主走査方向に移動し、シート材150を間欠的に送りながら、記録ヘッド21〜24を画像情報に応じて駆動して液滴を吐出させることによってシート材150に所要の画像を形成することができる。
【0028】
キャリッジ5の一側面には、着弾位置のずれを検出(テストパターンの読取り)するための液滴位置ずれセンサ30が搭載されている。液滴位置ずれセンサ30は、LEDなどの発光素子及び反射型フォトセンサで構成した受光素子によって、シート材150に形成された着弾位置検出用のテストパターンを読み取る。
【0029】
この液滴位置ずれセンサ30は記録ヘッド21用のものなので、記録ヘッド22〜24の液滴吐出タイミングを調整するため記録ヘッド22〜24と並列に別の液滴位置ずれセンサ30を搭載することが好ましい。また、液滴位置ずれセンサ30を記録ヘッド22〜24と並列になるようにスライドさせる機構がキャリッジ5に搭載されていれば、一台の液滴位置ずれセンサ30で記録ヘッド22〜24の液滴吐出タイミングを調整できる。または、画像形成装置100がシート材150を逆方向に送っても、一台の液滴位置ずれセンサ30で記録ヘッド22〜24の液滴吐出タイミングを調整できる。
【0030】
図5は、画像形成装置100の制御部300のブロック図の一例である。制御部300は、主制御部310及び外部I/F311を有する。主制御部310は、CPU301と、ROM302、RAM303、NVRAM304、ASIC305、及び、FPGA(Field Programmable Gate Array)306を有する。CPU301はROM302に記憶されたプログラム3021を実行して、画像形成装置100の全体を制御する。ROM302にはこのプログラム3021の他、初期値や制御のためのパラメータなど固定データが格納されている。RAM303は、プログラムや画像データ等を一時的に格納する作業メモリであり、NVRAM304は、装置の電源が遮断されている間も設定条件などのデータを保持するための不揮発性メモリである。ASIC305は画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行なったり、各種のエンジンを制御する。FPGA306は、装置全体を制御するための入出力信号を処理する。
【0031】
主制御部310は、この装置全体の制御を司るとともにテストパターンの形成、テストパターンの検出、着弾位置の調整(補正)などに関わる制御を司る。後述するように、本実施例では主にCPU301がROM302に記憶されたプログラム3021を実行してラインセンター位置の検出を行うが、一部又は全てをFPGA306やASIC305など、LSIが行ってもよい。
【0032】
外部I/F311は、ネットワークに接続された他の機器と通信するための通信装置、USB、IEEE1394、と接続するためのバスやブリッジであり、外部からのデータを主制御部310に送出する。また、外部I/F311は主制御部310が生成したデータを外部に出力する。外部I/F311には脱着可能な記憶媒体320が装着可能であり、プログラム3021は記憶媒体320に記憶された状態や、外部からの通信装置を介して配信される。
【0033】
また、制御部300は、ヘッド駆動制御部312、主走査駆動部313、副走査駆動部314、給紙駆動部315、排紙駆動部316、及び、スキャナ制御部317を有する。ヘッド駆動制御部312は、記録ヘッド21〜24のそれぞれの吐出有無、吐出する場合の液滴吐出タイミング及び吐出量を制御する。ヘッド駆動制御部312は、記録ヘッド21〜24を駆動制御するためのヘッドデータ生成配列変換用ASICを有し(ヘッドドライバ)、印刷データ(ディザ処理などが施されたドットデータ)に基づき、液滴の有無と液滴の大きさを示す駆動信号を生成して、記録ヘッド21〜24に供給する。記録ヘッド21〜24はノズル毎にスイッチを有しており、駆動信号に基づきオン・オフすることで、記録ヘッド21〜23は印刷データにより指定されるシート材150の位置に指定されるサイズの液滴を着弾させる。なお、ヘッド駆動制御部312のヘッドドライバは記録ヘッド21〜24側に設けられてもよいし、ヘッド駆動制御部312と記録ヘッド21〜24が一体になっていてもよい。図示する構成は一例である。
【0034】
主走査駆動部(モータドライバ)313は、キャリッジ5を移動走査する主走査モータ8を駆動する(例えば主走査駆動部313は、特許請求の範囲の相対移動手段に相当する)。主制御部310には、前述したキャリッジ位置を検出するエンコーダセンサ42が接続されており、主制御部310はこの出力信号に基づいてキャリッジ5の主走査方向の位置を検出する。そして、主走査駆動部313を介して主走査モータ8を駆動制御することでキャリッジ5を主走査方向に往復移動させる。
副走査駆動部(モータドライバ)314は紙送りするための副走査モータ132を駆動する。主制御部310には、副走査方向の移動量を検出するロータリエンコーダセンサ131からの出力信号(パルス)が入力され、主制御部310はこの出力信号に基づいて紙送り量を検出し、副走査駆動部314を介して副走査モータ132を駆動制御することで図示しない搬送ローラを介してシート材を紙送りする。
【0035】
給紙駆動部315は給紙トレイからシート材を給紙する給紙モータ133を駆動する。排紙駆動部316は、印刷されたシート材150をプラテン上に排紙するローラを駆動する排紙モータ134を駆動する。なお、排紙駆動部316は、副走査駆動部314により代用してもよい。
【0036】
スキャナ制御部317は、画像読取部135を制御する。画像読取部135は、原稿を光学的に読み取り画像データを生成する。
【0037】
また、主制御部310には、テンキー、プリントスタートキーなどの各種キー及び各種表示器を含む操作/表示部136が接続されている。主制御部310は、操作/表示部136を介してユーザが操作したキー入力の受け付け、メニューの表示などを行う。
【0038】
その他図示しないが、維持機構26を駆動する維持回復モータを駆動するための回復系駆動部、各種のソレノイド(SOL)類を駆動するソレノイド類駆動部(ドライバ)、電磁クラック類などを駆動するクラッチ駆動部、を有していてもよい。また、主制御部310には、その他の図示しない各種センサの検出信号も入力されるが図示を省略している。
【0039】
主制御部310は、シート材上にテストパターンを形成する処理を行い、形成したテストパターンに対し、キャリッジ5に搭載した液滴位置ずれセンサ30の発光素子を発光させる発光駆動制御を行う。そして、受光素子の出力信号を取得しテストパターンの反射光を電気的に読取り、この読取り結果から着弾位置ずれ量を検出し、更に着弾位置ずれ量に基づいて記録ヘッド21〜24の液滴吐出タイミングを着弾位置ずれがなくなるように補正する制御を行う。
【0040】
〔着弾位置ずれの補正〕
図6は、液滴位置ずれセンサ30がテストパターンのラインセンター位置を検出するための構成を模式的に示す図の一例である。図6は、図4の記録ヘッド21と液滴位置ずれセンサ30を右側面板4から見た図になっている。例えば印字位置ずれセンサ30は、特許請求の範囲の読み取り手段に相当する。
【0041】
液滴位置ずれセンサ30は、主走査方向と直交する方向に並ぶ、発光素子402と受光素子403を有している。発光素子402と受光素子403の配置は逆でもよい。発光素子401は、後述するスポット光をテストパターン400に投光して、受光素子403はシート材150に反射した光、プラテン40からの反射光、その他の散乱光などを受光する。発光素子402と受光素子403は筐体の内側に固定され、液滴位置ずれセンサ30のプラテン40に対向する面は、レンズ405により外部から遮蔽されている。このように、液滴位置ずれセンサ30はパッケージ化されており、単体で流通することができる。
【0042】
液滴位置ずれセンサ30内において、発光素子402及び受光素子403は、キャリッジ5の走査方向に対して直交する方向に配置している(副走査方向に並行に配置されている)。これにより、キャリッジ5の移動速度変動による検出結果への影響を低減することができる。
発光素子402は、例えばLEDであり、ピークの発光波長は緑色に相当する563ナノ〔m〕である。また、受光素子403は、発光素子に合わせて560ナノ〔m〕にピーク受光感度波長を有する。このような波長を採用した理由は、テストパターンのインク色は主にK,M,Cであるが、MとCインクの反射強度が共に小さくなる(吸収されやすい)波長が、560ナノ〔m〕周辺のためである。このため、インク色が上記以外(K、M、C)の場合、必要であれば発光素子402の波長も設計すればよい。
【0043】
また、発光素子402が形成するスポット径は、高精度のレンズを使用せずに安価なレンズを使用するためにmmオーダーとなっている。このスポット径は、テストパターンのエッジの検出精度と関係するが、mmオーダーでも本実施形態のラインセンター位置の求め方であれば十分に高精度にラインセンター位置を検出できる。ただし、スポット径をより小さくすることも可能である。
【0044】
CPU301は、所定のタイミングになると着弾位置ずれ補正を開始する。このタイミングは、例えば、ユーザが操作/表示部136から着弾位置ずれ補正を指示したタイミング、CPU301がインク吐出前に発光素子402が発光しその時の反射光の強度が所定値以下であることから特定のシート材150であると判定したタイミング、最後に着弾位置ずれ補正を行った際の温度と湿度を記憶しておき温度又は湿度のいずれかが閾値以上ずれたと判定したタイミング、定期的(毎日、毎週、毎月等)なタイミング、等がある。
【0045】
テストパターンの形成について説明する。CPU301は主走査制御部313にキャリッジ5の往復移動と、ヘッド駆動制御部312に予め定められたテストパターンを印刷データとして液滴の吐出を指示する。主走査制御部313は、シート材150に対して、キャリッジ5を主走査方向に往復移動させるとともに、ヘッド駆動制御部312は記録ヘッド21から液滴を吐出させて、少なくとも2本以上の独立したラインを含むテストパターンを形成する。
【0046】
また、CPU301は、シート材150に形成したテストパターンを液滴位置ずれセンサ30にて読取るための制御を行う。具体的には、CPU301によって発光制御手段511に液滴位置ずれセンサ30の発光素子402を駆動するためのPWM値が設定され、この発光制御手段511の出力が平滑回路512で平滑化されて駆動回路513に与えられる。駆動回路513は発光素子402を発光駆動して、シート材150のテストパターンに対して発光素子402からスポット光が照射される。なお、発光制御手段511、平滑回路512、駆動回路513、光電変換回路521、ローパスフィルタ522、A/D変換回路523、及び、補正処理実行部526は主制御部310又は制御部300に搭載されている。共有メモリ525は例えばRAM303である。
【0047】
シート材上のテストパターンに発光素子402からのスポット光が照射されることで、テストパターンから反射される反射光が受光素子403に入射する。受光素子403は反射光の強度信号を光電変換回路521に出力する。具体的には、光電変換回路521は、強度信号を光電変換して、この光電変換信号(センサ検出電圧)をローパスフィルタ回路522に出力する。ローパスフィルタ回路522は高周波のノイズ分を除去した後、A/D変換回路523に光電変換信号を出力する。A/D変換回路523は、光電変換信号をA/D変換し、信号処理回路(FPGA)306に出力する。信号処理回路(FPGA)306は、A/D変換された検出電圧のデジタル値である検出電圧データを共有メモリ525に格納する。例えば、共有メモリ525は、特許請求の範囲の強度データ記憶手段に相当する。
【0048】
補正処理実行部526は共有メモリ525に記憶された検出電圧データを読み出し、着弾位置ずれ補正を行い、ヘッド駆動制御部312に設定する。すなわち、補正処理実行部526は、テストパターンのライン位置(ラインセンター位置)を決定して、2本のライン間の適正距離と比較することで、着弾位置ずれ量を算出する。
【0049】
補正処理実行部526は、吐出タイミング補正部616、テストパターン印刷部617及び、パターンデータ記憶部618を有する。テストパターン印刷部617は、パターンデータ記憶部618に記憶されているテストパターンをシート材に形成する。テストパターンは図6の回路等により読み出され、検出電圧データが共有メモリ525に記憶される。
【0050】
吐出タイミング補正部616は、検出電圧データからラインセンター位置を決定する。例えば、吐出タイミング補正部616は、特許請求の範囲の位置検出手段に相当する。そして、ライン間の距離に基づき着弾位置ずれがなくなるように記録ヘッド21を駆動するときの液滴吐出タイミングの補正値を算出して、この算出した液滴吐出タイミング補正値をヘッド駆動制御部312に設定する。これにより、ヘッド駆動制御部312は、記録ヘッド21を駆動する際に、補正値に基づいて液滴吐出タイミングを補正した上で記録ヘッド21を駆動するので、液滴の着弾位置ずれを低減することができる。
【0051】
〔ライン位置の決定〕
<従来のライン位置の決定>
図7は、従来のライン位置の決定の概略を説明する図の一例である。図7(a)の数字I〜Vは時刻の経過を表し、下のスポット光ほど時間経過が長い。
時刻I:スポット光とテストパターンは重畳していない。
時刻II:スポット光の半分がテストパターンと重畳している。この瞬間、反射光の減少率が最も大きくなる(重畳している面積が単位時間に最も大きく正に変化する)。
時刻III:スポット光の全体がテストパターンと重畳している。この瞬間、反射光の強度が最も小さくなる。
時刻IV:スポット光の半分がテストパターンと重畳している。この瞬間、反射光の増加率が最も大きくなる(重畳している面積が単位時間に最も大きく負に変化する)。
時刻V:スポット光がテストパターンを通過し、スポット光とテストパターンは重畳していない。
【0052】
スポット光の重心がテストパターンのラインのエッジ位置と一致するのは、時刻II及びIVである。したがって、スポット光とラインとが時刻II及びIVの関係にあることを反射光から検出できれば、エッジ位置を精度よく決定できる。
【0053】
図7(b)は受光素子の検出電圧の一例を、図7(c)は吸収面積(スポット光とテストパターンの重畳面積)の一例を、図7(d)は図7(c)の吸収面積を微分した吸収面積の増加率の一例を、それぞれ示す。微分することで、検出電圧の傾きの大きさを表すデータ(例えば、特許請求の範囲の傾き度データ)が得られる。なお、図7(d)は、図7(b)の出力波形を微分しても同等の情報が得られる。また、吸収面積は例えば検出電圧から算出されるが、絶対値である必要はないので、図7(c)の吸収面積は所定値から図7(b)の検出電圧を減算することで吸収面積と同様の波形が得られる。
【0054】
上述したように、時刻IIにおいて反射光の減少率が最も大きくなり(重畳している面積が単位時間に最も大きく正に変化する)、時刻IVにおいて反射光の増加率が最も大きくなる(重畳している面積が単位時間に最も大きく負に変化する)。そして、図9(d)に示すように、増加率が増加傾向から減少傾向に変化する点は、時刻IIと一致しており、増加率が減少傾向から増加傾向に変化する点は、時刻IVと一致している。
【0055】
増加傾向から減少傾向又はその逆に変化する点は、平面上の曲線において曲がる方向が変わる点、すなわち変曲点である。以上から、出力信号が変曲点を示せば、スポット光がテストパターンのエッジ位置と一致していることになる。したがって、変曲点が精度よく検出されれば、エッジ位置も精度よく決定できる。
【0056】
図8は、エッジ位置の決定方法を説明する図の一例である。図8(a)は、検出電圧の概略図を、図8(b)は検出電圧の拡大図をそれぞれ示す。変曲点のおよその値は、吐出タイミング補正部616又は開発者が実験的に求めることができる。上述したように、例えば、検出電圧や吸収面積を微分して傾きがゼロに最も近い位置が変曲点となる。
【0057】
この変曲点が含まれるように、検出電圧の上限閾値Vruと下限閾値Vrdが予め定められている。後述するように、CPU301はテストパターンのない領域に対し検出電圧がほぼ同じ一定値(後述する4〔V〕)になるように発光素子402の出力と受光素子403の感度をキャリブレーションする。本実施例の描画密度の補正により、検出電圧の極大値はほぼ同じ一定値にすることができるので、上限閾値Vruと下限閾値Vrdの間に変曲点が含まれる。
【0058】
吐出タイミング補正部616は、検出電圧の立下り部分について、矢示Q1方向に探索して、検出電圧が下限閾値Vrd以下になる点を点P2として記憶する。次に、点P2より矢示Q2方向に探索して、検出電圧が上限閾値Vruを超える点を点P1として記憶する。
【0059】
そして、点P1と点P2の間の複数の検出電圧データを用いて回帰直線L1を算出し、回帰直線L1と上下閾値の中間値Vcとの交点を算出し交点C1とする。
【0060】
同様にして、吐出タイミング補正部616は、検出電圧の立上がり部分について、矢示Q3方向に探索して、検出電圧が下限閾値Vru以上になる点を点P4として記憶する。次に、点P4より矢示Q4方向に探索して、検出電圧が上限閾値Vrd以下になる点を点P3として記憶する。
【0061】
そして、点P3と点P4の間の複数の検出電圧データを用いて回帰直線L2を算出し、回帰直線L2と上下閾値の中間値Vcとの交点を算出し交点C2とする。交点C1と交点C2が一本のラインのエッジ位置なので、交点C1とC2の中央がラインセンター位置である。
【0062】
この後、吐出タイミング補正部616は、複数のラインのラインセンター位置を求め、テストパターンの2本のライン間の理想的な距離と、ラインセンタ間の距離との差分を算出する。この差分は、理想的なラインの位置に対する実際のラインの位置のずれなので、着弾位置ずれ量になる。吐出タイミング補正部616は、算出した着弾位置ずれ量に基づいて、記録ヘッド21から液滴を吐出させるタイミング(液滴吐出タイミング)を補正する補正値を算出し、補正値をヘッド駆動制御部312に設定する。これにより、ヘッド駆動制御部312は補正された液滴吐出タイミングで記録ヘッド21を駆動するので、着弾位置ずれが低減することになる。
【0063】
<本実施形態のライン位置の決定>
本実施形態の吐出タイミング補正部616は、スポット径d>ライン幅Lの場合に、ライン位置を精度よく決定することができる。なお、この方法ではラインセンター位置を直接、決定することができる。
【0064】
図9は、スポット径d>ライン幅Lの場合における、ライン位置の決定方法を説明する図の一例である。
図9(a)は、ラインとスポット径の相対位置を示し、図9(b)は各相対位置における吸収面積を示し、図9(c)は各相対位置における検出電圧を示し、図9(d)は各相対位置における面積増加率ΔSを示す。なお、図9(b)の吸収面積は例えば検出電圧の減少分を重畳面積の増加分に変換して算出される。波形が分かれば絶対値である必要はない。各グラフはラインとスポット径の相対位置が共通になるように、表示されている。
【0065】
なお、図9では便宜的にスポット径がラインに対し移動しているが、両者の相対位置は図7と同様である(ただし、ラインヘッドの場合は、図9のように、スポット径がラインに対し移動しているように見える。)。
【0066】
図9(a)のI〜IIIは代表的な相対位置を示すための番号である。
I:ラインの左側エッジとスポット光の左端が一致している
II:ラインの中心とスポット光の中心(重心)が一致している
III:ラインの右側エッジとスポット光の右端が一致している
d=Lと場合と比較して、スポット光内をラインが占める面積が小さいため、検出電圧は極小値を含め全体的に大きくなる(スポット光が吸収されにくい)。極小値の検出電圧が大きいと、検出電圧の振幅も十分な値幅を取れなくなり、スレッシュ領域に変曲点を含めることが難しくなる。または、変曲点を得ることも容易でなくなる。
【0067】
何らかの補正処理(例えば、極小値をゼロに対応させ、ゼロから4Vまでの検出電圧を線形補正する)により、検出電圧の振幅を大きくすることも不可能ではない。しかし、図9(d)に示すように、エッジ付近では急激に面積増加率ΔSが変化している。これは検出電圧の変化が大きいことを示しており、線形補正により振幅を大きくしてもこの急激な変動のため、ライン位置の誤差が大きくなってしまう。
【0068】
これに対し図9(d)の面積増加率ΔSのグラフを見ると、「ラインセンター付近の傾き」は小さいだけでなく安定している。したがって、このラインセンター付近のデータを用いてラインセンター位置を決定すれば、その算出値は誤差が小さいことが期待できる。
【0069】
図10は、ラインセンター付近のΔSの傾きを算出した図の一例を示す。ラインセンター付近は、重畳面積が増加から減少に移行するので、ΔS=0となるだけでなくΔS´=0となる。したがって、ΔS=0及びΔS´=0、又は、ΔS=0若しくはΔS´=0となる点を探せばよい。
【0070】
図11、12は、吐出タイミング補正部616がラインセンター位置を決定する手順を説明する図の一例である。ラインセンター位置の算出方法は、例えば、以下のようになる。
(1)ΔS=0を中心として正負に対称となるように閾値を設定する。
(2)上側閾値とΔS曲線との交点をD1、下側閾値との交点をD2とし、D1〜D2間のデータを用いて最小二乗法により回帰直線を求める。
(3)これにより図12のような回帰直線が得られる。なお、図12の回帰直線は外挿している。ラインセンター付近の傾きが安定しているので、回帰直線も安定しており、簡単な一次近似で十分な近似精度が得られる。
(4)この回帰直線と、ΔS=0の直線との交点Xnを算出する。このXnをラインセンター位置と定義する。
(5)このラインセンター位置の算出プロセスを、検出電圧データに対し施すことで、各ラインのラインセンター位置を決定できる。
(6)これによりライン間の距離がわかるので、理想的なライン間の距離と比較することで、吐出タイミングの補正値を算出することができる。
【0071】
この他、回帰直線でなく曲線で近似してもよい。また、近似的にΔS´=0の点を求めるため、D1〜D2間のデータを所定数毎に区切って傾きを算出し、傾きの絶対値が最も小さくなった時の位置を、ラインセンター位置としてもよい。
【0072】
なお、厳密には、Xn(ラインセンター位置)は、面積変化率ΔS=0及びΔS´=0となる位置であるが、検出電圧の極小値、重畳面積の極大値となる位置、と同等の意味を持つ。
【0073】
<スポット光の径dとライン幅Lの関係>
上述したように、スポット径d = ライン幅L、又は、スポット径d < ライン幅L、であれば、従来のライン位置の決定方法を適用できる。しかし、スポット径d > ライン幅Lの場合でも、従来のライン位置の決定方法を適用できる場合がある。
【0074】
図13は、従来のライン位置の決定方法による、スポット径d >ライン幅Lのテストパターンのライン位置の決定を説明する図の一例である。図13(a)はスポット径dとライン幅Lの関係を、図13(b)は受光素子の検出電圧の一例を、図13(c)は吸収面積の一例を、図13(d)は図13(c)の吸収面積を微分した吸収面積の増加率の一例を、それぞれ示す。
【0075】
「スポット径d > ライン幅L」であることは、スポット光の全体がテストパターンと重畳しないことを意味するので、図13(d)の吸収面積の増加率から明らかなように、スポット光の右端がテストパターンを乗り越えた時点で吸収面積が減少に転じ、増加率が急激に減少する。
【0076】
しかしながら、従来法では、変曲点の近傍の検出電圧データが得られていれば、交点C1、C2を求めることができるので、スポット光の径dはd/2<Lであればよい。すなわち、スポット径d が ライン幅Lに比べて極端に大きくなければ従来のライン位置の決定方法により、スポット径d >ライン幅Lであっても、ライン位置を精度よく特定できる。
【0077】
換言すると、本実施形態のライン位置の決定方法は、d/2≧L(ライン幅Lがスポット径dの半分以下)の場合に効果的である。
【0078】
ライン幅Lの下限は、発光素子が発する光の波長、ラインの色、受光素子の性能等に影響される。ライン幅は狭いほどインクの消費量を低減できるので、例えば1ピクセル分のライン幅であることが好ましい。しかし、現実的には1ピクセル分のライン幅では、スポット光が吸収されても受光素子が吸収による反射光の減少を検出できない。例えば、図9(b)では吸収面積SがS=0のまま一定値となるに過ぎず、図9(c)では検出電圧が4V一定になるに過ぎず、図9(d)ではΔS=0一定となるに過ぎない。
【0079】
また、発光素子が発する光の波長が一定でも、ラインの色によっては反射強度が異なり、ラインの色が同じでも発光素子が発する光の波長によって反射強度は異なる。また、ライン幅Lが短いほどラインの色の影響は小さくなる。
【0080】
したがって、ライン幅Lの下限を一律に特定することは困難といえる。このため、例えば、ライン幅Lの下限は、受光素子がテストパターンによるスポット光の吸収を検出できる程度の幅として規定される。例えば、検出電圧の極小値が、シート材の無地部分の値(図では4V)よりも、例えば所定値(例えば3〜10%)以上小さくなる際のライン幅Lがライン幅Lの下限である。
【0081】
また、画像形成装置に搭載される液滴位置ずれセンサ30は1種類の場合が多いので、発光素子が発する光の波長が一定である。よって、ラインの色が異なっても、ラインセンター位置の決定精度を同程度にするには、検出電圧の極小値が同定度になるように、ラインの色によってライン幅を可変とすることも有効である。
【0082】
図14は、ラインの色とライン幅の関係の一例を示す図である。ブラックのライン幅をLK、シアンのライン幅をLC、イエローのライン幅をLY、マゼンダのライン幅をLMとする。図ではLK<LC<LM<LYであるが、発光素子が発する光の波長によって変動しうる。このように、ライン幅をラインの色毎に調整しておくことで、インク色に拘わらず極小値を近づけることが容易になる。
【0083】
極小値が一定になれば、図9(d)に示す面積増加率ΔSの波形が、ラインの色が異なっても似た形状になりやすい。吐出タイミング補正部616が、異なる色のラインに共通のライン位置の決定演算を施しても、色の違いによる微小な誤差が生じることを抑制できる。例えば、「ΔS=0を中心として正負に対称となる閾値」をKCYMに共通の一定値にしても色の違いによる微小な誤差が生じにくい。なお、K・C・Y・Mでライン幅が同じであっても、「ΔS=0を中心として正負に対称となる閾値」をK・C・Y・Mに共通の一定値にすることを否定するものではない。
【0084】
〔ライン方式の画像形成装置の場合〕
本実施形態では、図3,4のシリアル方式の画像形成装置100を例にして説明したが、ライン方式の画像形成装置100においても同様の方法で着弾位置ずれ量を補正できる。ライン方式の画像形成装置100について簡単に説明する。
【0085】
図15は、ライン方式の画像形成装置100のヘッドの配置とテストパターンを模式的に説明する図の一例である。ヘッド固定ブラケット160はシート材搬送方向と直交する主走査方向の端から端まで掛け渡されるように固定されている。ヘッド固定ブラケット160には、上流側からKCMYのインクの記録ヘッド180がそれぞれ主走査方向の全域に配置されている。各色の記録ヘッド180は端部が重複するように千鳥状に配置されている。こうすることで、記録ヘッド180の端部でも十分な解像度が得られる液滴が吐出されるので、主走査方向の全域に1つの記録ヘッド180を配置する必要がなくコスト増を抑制できる。なお、インク色ごとに主走査方向の全域に1つの記録ヘッド180を配置してもよいし、各色の記録ヘッド180の主走査方向の重複領域をより長くしてもよい。
【0086】
ヘッド固定ブラケット160よりも下流にはセンサ固定ブラケット170が、シート材搬送方向と直交する主走査方向の端から端まで掛け渡されるように固定されている。センサ固定ブラケット170には、液滴位置ずれセンサ30がヘッドの数だけ配置されている。すなわち、1つの液滴位置ずれセンサ30は、1つの記録ヘッド180と、主走査方向に少なくとも一部が重複するように配置されている。1つの液滴位置ずれセンサ30は、1対の発光素子402と受光素子403を有する。発光素子402と受光素子403は、主走査方向にほぼ並行に並列配置されている。図15の場合、液滴位置ずれセンサ30は移動しないので、例えば副走査駆動部314が特許請求の範囲の相対移動手段に相当する。
【0087】
このような形態の画像形成装置100は、テストパターンを構成する各ラインを、ラインの長手方向が主走査方向と並行になるように形成する。Kを基準に他の色の液滴の着弾位置ずれを補正する場合、画像形成装置100は、KのラインとMのライン、KのラインとCのライン、KのラインとYのラインを形成する。そして、シリアル方式の画像形成装置100と同様に、CMYKのテストパターンのラインセンター位置を検出し、その位置ずれ量から液滴吐出タイミングを補正する。
【0088】
以上のように、ライン方式の画像形成装置100においても、適切に液滴位置ずれセンサ30を配置することで着弾位置ずれを補正できる。
【0089】
〔動作手順〕
図16(a)は、補正処理実行部526が液滴吐出タイミングを補正する手順の一例を示すフローチャート図である。
【0090】
まず、CPU301が、着弾位置ずれ補正を開始するよう主制御部310に指示する。この指示により、主制御部310は副走査駆動部314を介して副走査モータ132を駆動しシート材150を記録ヘッド21の真下まで搬送させる(S1)。
【0091】
次に、主制御部310は主走査駆動部313を介して主走査モータ27を駆動して、キャリッジ5をシート材150上に移動し、シート材150上の特定の箇所にて発光素子と受光素子のキャリブレーションを実施する(S2)。
【0092】
図16(b)はS2の処理を説明するフローチャート図の一例である。キャリブレーションは、発光素子の検出電圧が所望の範囲内(例えば4V±0.4〔V〕の範囲内に調整している。)になるように発光素子の光量を調整する処理である。
【0093】
CPU301によって発光制御手段511に液滴位置ずれセンサ30の発光素子402を駆動するためのPWM値が設定され、平滑回路512で平滑化された後、駆動回路513に与えられることで、駆動回路513が発光素子402を発光駆動する(S21)。
【0094】
液滴位置ずれセンサ30の受光素子403が検出した強度信号は共有メモリ525に記憶され、CPU301が所望の電圧値になっているかチェックする(S22)。
【0095】
所望の電圧値になっていれば(S22のOK)、図16(b)の処理は終了する。所望の電圧値になっていなければ(S22のNo)、CPU301はPWM値を変更することで(S23)、光量の再調整を行う。
【0096】
図16(a)に戻り、主制御部310は、シート材150の副走査位置はそのままで紙送りせずに、主走査制御部313が主走査駆動モータ27を介してキャリッジ5を移動させる。そして、ヘッド駆動制御部312が、パターンデータ記憶部618に記憶されたテストパターンを用いて記録ヘッド21〜24を駆動する(S6)。これにより、スポット光の径d>ライン幅Lのテストパターンを形成することができる。例えば、補正処理実行部526がブラックを基準にマゼンダの着弾位置ずれを調整する場合は、ブラックとマゼンダのラインを交互に形成したテストパターンを形成する。その他の色も同様である。
【0097】
次に、吐出タイミング補正部616は、検出電圧データからテストパターンのラインセンター位置を検出し、液滴の着弾位置ずれを補正する(S12)。すなわち、吐出タイミング補正部616は各ライン間の距離を適正距離と比較して着弾位置ずれ量を算出し、着弾位置ずれがなくなるように液滴吐出タイミングの補正値を算出し、ヘッド駆動制御部312に設定する。
【0098】
以上説明したように、本実施例の画像形成装置は、スポット光の径dよりも幅の狭いラインのテストパターンを形成しても、ラインセンター付近の検出電圧を用いてライン位置を決定するので、算出値の誤差を小さくすることができる。この結果、液滴吐出タイミングを高精度に調整できる。
【実施例2】
【0099】
実施例1では、スポット光d>ライン幅Lとした場合に、ライン位置を安定して決定することを可能とした。しかし、検出電圧が不安定であれば算出方法が適切でも、ライン位置の精度が低下する。
【0100】
〔精度低下要因〕
図9では、「ΔS=0を中心として正負に対称となる閾値」とΔSの交点D1,D2の間のデータから回帰直線を求めたが、検出電圧が不安定なため、ΔSが本来の好ましい位置と別の場所で閾値と交差する可能性がある。
【0101】
図17(a)は振幅が不安定な検出電圧の一例を、図17(b)は面積増加分ΔSの一例をそれぞれ示す。図17(a)のような検出電圧はやや誇張したものであり一般には得られないが、例えばテストパターンが特殊な用紙に形成された場合に検出電圧が不安定になりうる。例えば、トレーシングパーパーのように透過率の高いシート材150に形成されたテストパターンを読み取ると、用紙の透きムラ(透過率変動)や受光素子の感度の増幅等により、検出電圧の振幅がバラつくことが知られている。図示するように振幅が不安定になることで、閾値とΔSの交点D1,D2の位置が大きくずれてしまう。この交点D1,D2から求めた回帰直線とΔS=0の交点は、ラインセンター位置から外れてしまう。
【0102】
そこで、本実施例では、実施例1のラインセンター位置を決定方法により吐出タイミングを調整すると共に、特殊なシート材でも検出電圧の振幅を補正可能な画像形成装置について説明する。
【0103】
なお、本実施形態ではトレーシングパーパーを例に説明するが、透過率の高いシート材150であれば同様の課題が生じる。例えば、トレーシングパーパー以外の普通紙でも十分に紙が薄い場合には本実施形態のラインセンター位置の検出方法が有効である。したがって、本実施形態の液滴吐出タイミングの補正処理は特定の材質や種類、厚みを有するシート材150に限定されない。また、厚みが十分にある普通紙に適用することもできる。
【0104】
〔構成例〕
図18は、本実施例の補正処理実行部526の機能ブロック図の一例である。図18において図7と同一部の説明は省略する。本実施例の補正処理実行部526は、印字前前処理部611、印字後前処理部612、同期処理部613、パターン非存分除外処理部614、及び、振幅補正処理部615を有する。なお、共有メモリ525は不図示のサーバが有していてもよい。
【0105】
印字前前処理部611は、テストパターンが形成される前の検出電圧データに前処理を施し、印字後前処理部612は、テストパターンが形成された後の検出電圧データに前処理を施す。同期処理部613は、テストパターンの形成前と形成後の検出電圧データを同期させる(位置を合わせる)。パターン非存分除外処理部614は、検出電圧データから後述するVpを減算する。振幅補正処理部615は、振幅補正処理を行うことでラインセンター位置を演算するための検出電圧zを生成する。
【0106】
〔信号補正〕
以下、本実施例の検出電圧の信号補正について説明する。本実施例の信号補正は、
・パターン非存分除外処理
・振幅補正処理
の2つの補正を有している。
【0107】
また、信号補正するために、前処理が必要とされる。よって、処理手順は以下のようになる。
(1)前処理
(2)信号補正
(2-1)パターン非存分除外処理、(2-2)振幅補正処理
<前処理>
以下、前処理について説明する。前処理は前処理Aと前処理Bに分けることができる。前処理Aは、テストパターン形成前の白紙状態(バックグラウンド)の検出電圧データに対する以下の処理により構成される。
・前処理A
(i) n回スキャン
(ii) 同期処理
(iii) 平均化
(iv) フィルタ処理
前処理Bは、テストパターン形成後の検出電圧データに対する以下の処理により構成される。
・前処理B
(i) n回スキャン
(ii) 同期処理
(iii) 平均化
<前処理A>
・前処理A−(i)
n回スキャンは安定した検出電圧が得られるようにする処理である。n回スキャン部は、受光素子が検出し最終的にA/D変換回路523が変換した反射光の検出電圧が、ある一定値になるようにCPU301に要求する。CPU301は、検出電圧がある範囲に入るようにフィードバック制御する。これにより、検出電圧は例えば4.0〜4.4〔V〕の範囲に入るようになり、n個の検出電圧が得られる。例えば、印字前前処理部611が使用する共有メモリ525又は共有メモリ525の所定領域が、特許請求の範囲の第1の強度データ記憶手段に相当する。
【0108】
・前処理A-(ii)
同期処理は、n個の検出電圧の主走査方向のデータの位置を揃える処理である。検出電圧データはスポット光がシート材150以外を走査しても検出されるが、必要なのはシート材150から得られた検出電圧のみである。このため、同期化部は、n個の検出電圧データの始まりをシート材150の紙端に揃える。n回の検出電圧データを紙端から始めるため、同期化部は検出電圧データが閾値を最初に越えたところを、シート材150の紙端として検出する。このような同期方法の他、エンコーダセンサ42が検出した主走査方向の位置情報に検出電圧データを対応づけて記憶しておき、位置情報を一致させてn個の検出電圧データの同期を取ってもよい。
【0109】
・前処理A−(iii)
平均化処理は、重心位置毎にn個の検出電圧データの平均を算出する処理である。n個の検出電圧データはシート材150の紙端を走査方向の基準位置(位置がゼロ)として、位置毎にn個の検出電圧データを有する。この位置は、エンコーダセンサが検出するキャリッジ5の位置であるが、スポット光の重心位置と1対1に対応するので、以下、スポット光の重心位置として説明する。
【0110】
・前処理A-(iv)
フィルタ処理は、検出電圧データの平均値にフィルタ処理を施す処理である。フィルタ処理部は、平均化部が平均した重心位置毎の検出電圧データの平均値をフィルタ処理する。具体的には、着目している検出電圧データの前後m個(着目しているデータを含めm個とする)のデータを抽出して、平均を算出する。
【0111】
<テストパターンの形成>
テストパターン印刷部617は、実施例1にて説明したようにパターンデータ記憶部618に記憶されたテストパターンを形成する。すなわち、スポット径d>ライン幅Lのテストパターンを形成する。
【0112】
<前処理B>
前処理Bも前処理Aと同様である。
・前処理B-(i):n回の検出電圧データが得られる。印字前前処理部612が使用する共有メモリ525又は共有メモリ525の所定領域が、特許請求の範囲の第2の強度データ記憶手段に相当する。
・前処理B-(ii):テストデータの形成後は、n回の検出電圧データの極大値同士、及び、極小値同士を一致させることで、波形を合わせることができる。比較的簡単な方法は、A−(ii)と同様に、n個の検出電圧データの始まりをシート材150の紙端に揃えることである。テストパターンが紙端に対し同じ位置に形成されていれば、複数の検出電圧データの極大値及び極小値も同じ位置に揃えることができる。またA−(ii)と同様に、エンコーダセンサ42が検出した主走査方向の位置情報に検出電圧データを対応づけて記憶しておき、位置情報を一致させてn個の検出電圧データの同期を取ってもよい。
・前処理B−(iii):平均化部は同期化したn個の検出電圧データの平均を算出する。n個の検出電圧データは、位置毎にn個の検出電圧データが存在するので、平均化部は重心位置毎にn個の検出電圧データの平均を算出する。
【0113】
<信号補正処理>
信号補正の前に同期処理部613が同期処理を行う。同期処理部613は、A-(i)〜(iv)の前処理が施されたテストパターン形成前の検出電圧データと、B-(i)〜(iii)の前処理が施されたテストパターン形成後の検出電圧データの紙端を揃える。
【0114】
揃え方はA-(ii)と同様に、閾値を最初に越えた検出電圧データを先頭1個目のデータとすることで行う。以下、説明のため、テストパターン形成前の検出電圧データを白紙測定データVsg2、テストパターン形成後の検出電圧データをパターン測定データVsg1という。
【0115】
以下、信号補正処理について説明する。
(2-1)パターン非存分除外処理
パターン非存分除外処理は、検出電圧Vsgからパターンに依存しない検出電圧分を低減する処理を行う。具体的には、VsgからVpを減じる。これにより、シート材150以外に起因する検出電圧を排除することができる。
【0116】
図19は、VsgとVpを説明する図の一例である。受光素子の検出電圧に寄与する要因を説明する。受光素子が受光する光の多くは発光素子がシート材に対し発光した光の反射光であるが、反射光にはシート材の反射分とシート下の板状部材(以下、プラテンという)の反射分が含まれる。また、反射光以外に、空中散乱光や背景放射などの光も受光素子に受光される。これらを以下のように定義する。
Vsg:受光素子が受光した光の全ての検出電圧
Vp:テストパターンが形成された部分でも吸収し切れない光による反射光、空中散乱光、暗出力による検出電圧
Vs:検出したい検出電圧
図19のVsgはテストパターンが形成された場合の検出電圧の波形である。Vsgにおいて、テストパターンが形成された箇所はテストパターンが光を吸収することにより、反射光が低下している。しかしながら、図19におけるVpはテストパターンが形成されている部分においても出力されている。これが、テストパターンの形成によって変動しない検出電圧Vpである。
【0117】
このためテストパターンの形成後において、検出電圧の極小値はインクにより吸収されないパターン非存分によるものとみなせるので、本実施例ではパターン読み取り時の最低電圧Vpをパターン非存分による検出電圧とする。
【0118】
なお、ここでは単一色のテストパターンの場合を例を挙げて説明したが、複数の色のテストパターンの場合にも本処理は適用できる。その場合、最も多くスポット光を吸収する色のテストパターンでの極小値がVpとなる。この場合、他の色のテストパターンの部分では除外しきれない電圧が残るが、若干残った場合にも位置の検出精度は向上する。
【0119】
したがって、パターン測定データVsg1及び白紙測定データVsg2からそれぞれVpを減じれば、インクから反射する以外の検出電圧を除外できる。これにより、受光素子がテストパターンを読み取った際の波形出力の極小値のばらつきが低減される。
【0120】
パターン非存分除外処理部614は、以下を算出する。例えば、パターン非存分除外処理部614は特許請求の範囲の減算処理手段に相当する。
x´=Vsg1−Vp
y´=Vsg2−Vp
図20(a)はパターン測定データの出力波形の一例を、図20(b)はパターン測定データからVpを減じた出力波形の一例を、それぞれ示す。図20(a)と(b)を比較すると分かるように、パターン非存分除外処理により全体的にパターン測定データが小さくなっていることが分かる。
【0121】
図20(c)は白紙測定データの出力波形の一例を、図20(d)は白紙測定データからVpを減じた出力波形の一例を、それぞれ示す。図20(c)と(d)を比較すると分かるように、パターン非存分除外処理により全体的に白紙測定データが小さくなっていることが分かる。
【0122】
(2-2)振幅補正処理
同期処理によりx´とy´は同じ走査位置の検出電圧データになるので、スポット光が、テストパターンがない場所を走査するとx´とy´が等しくなり、テストパターンがある場所を走査するとx´が略ゼロとなる。これは、x´が、ある位置においてy´を基準(最大)としてテストパターンにより吸収しきれずに検出された反射光による検出電圧であることを意味する。すなわち、シート材の透過率などがもたらす変動が位置毎に異なっても、変動が検出電圧を大きくする位置(y´が大きい位置)ではx´も大きくなり、変動が検出電圧を小さくする位置(y´が小さい位置)ではx´も小さくなる。
【0123】
このことは、換言すると、x´に含まれる位置に起因する変動は、「x´/y´」という比例補正により適切に補正可能であることを示す。
【0124】
図21は、x´とy´から得られる検出電圧zを模式的に説明する図の一例である。図21(a)ではx´とy´を1つに重ねて表示しており、図21(b)では検出電圧zと固定値を表示している。x´/y´は、ある位置の変動を含んだx´が、y´を基準にした場合にどのくらいの比率で含まれるかを表すので、振幅として適切な固定値を定めておけば、「固定値×x´/y´」により振幅が一定の検出電圧データを取得することができる。この検出電圧をzとすると、以上から、振幅補正処理後の検出電圧zは、
z=固定値×(x´/y´)
で表すことができる。
【0125】
検出電圧zは、シート材の位置により生じる変動が除去され、テストパターン部で極小に白地で極大になる振幅が一定の検出電圧となる。
【0126】
以上の考え方に基づき、振幅補正処理部615は、「固定値×(x´/y´)」の演算を行う。例えば、振幅補正処理部615は特許請求の範囲の信号補正手段に相当する。
x´とy´はすでに求められており、固定値はセンサキャリブレーションにより得られた検出電圧の最大値(例えば4〔V〕)からVpを減じた値である(Vpを減じるのはx´とy´もVpが減じられているため)。しかし、本実施形態で求める面積増加率ΔSは重畳面積の微分値なので、固定値は"1"でもよい。
【0127】
以上から、振幅補正処理部615は図21(b)のような振幅が一定の検出電圧zを得ることができる。この後、吐出タイミング補正部616は検出電圧zから面積増加率ΔSを求め、交点D1,D2からラインセンター位置を決定する。パターン非存分除外処理と振幅補正処理により、センター付近の波形を安定させることができるので、ラインセンター位置を精度よく求めることができる。
【0128】
〔動作手順〕
図22は、補正処理実行部526が信号補正する手順の一例を示すフローチャート図である。
【0129】
まず、CPU301が、着弾位置ずれ補正を開始するよう主制御部310に指示する。この指示により、主制御部310は副走査駆動部314を介して副走査モータ132を駆動しシート材150を記録ヘッド21の真下まで搬送させる(S1)。
【0130】
次に、主制御部310は主走査駆動部313を介して主走査モータ27を駆動して、キャリッジ5をシート材150上に移動し、シート材150上の特定の箇所にて発光素子と受光素子のキャリブレーションを実施する(S2)。S2の処理は実施例1と同様なので説明は省略する。
【0131】
次に、印字前前処理部611のn回スキャン部は、キャリッジ5をホームポジションまで移動し、テストパターン形成前のn回スキャンを行い、n個の検出電圧データを共有メモリ525に記憶する(S3a)。
【0132】
図23(b)はS3の処理を説明するフローチャート図の一例である。まず、CPU301が発光素子を点灯させる(S31)。
【0133】
次に、光電変換回路521等が検出電圧データの取り込みを開始する(S32)。取り込みを開始したら、主走査駆動部313は主走査駆動モータ27によりキャリッジ5を移動させていく(S33)。つまり、キャリッジ5が移動ながら、光電変換回路521等が検出電圧データを取り込む。データのサンプリングは例えばは20kHz(50μs間隔)である。
【0134】
キャリッジ5が画像形成装置の端部に到達すると、光電変換回路521等は検出電圧データの取り込みを終了する(S34)。主制御部310は一連の検出電圧データを共有メモリ525に蓄積する。主制御部310はキャリッジ5をホームポジションで停止させる(S35)。
【0135】
CPU301は所定の回数、検出電圧データの読み取りをn回完了したか否か確認し、完了している場合は次のS5の処理に進み、完了していない場合はS3の検出電圧データの読み取り処理を再度行う(S4)。
【0136】
次に、印字前前処理部611は共有メモリ525に蓄積された所定の回数読み取ったテストパターン形成前の検出電圧データを読み出して前処理を実行し、そのデータをRAM303に保存する(S5)。S5の前処理の内容は図23(c)に示されるがすでに説明したので省略する。
【0137】
次に、主制御部310は、シート材150の副走査位置はそのままで紙送りせずに、主走査制御部313が主走査駆動モータ27を介してキャリッジ5を移動させると共に、ヘッド駆動制御部312がパターンデータ記憶部618に記憶されたテストパターンを用いて記録ヘッド21〜24を駆動して液滴を吐出する(S6)。これにより、着弾位置ずれ調整用のテストパターンがシート材に形成される。
【0138】
次に、印字後前処理部612のn回スキャン部は、キャリッジ5をホームポジションまで移動し、テストパターン形成後のn回スキャンを行い、n個の検出電圧データを共有メモリ525に記憶する(S3b)。
【0139】
CPU301は所定の回数、検出電圧データの読み取りをn回完了したか否か確認し、完了している場合は次のS8の処理に進み、完了していない場合はS3のパターンデータ読み取り処理を再度行う(S7)。
【0140】
次に、印字後前処理部612は共有メモリ525に蓄積された所定の回数読み取った検出電圧データを読み出して前処理を実施し、そのデータをRAM303に保存する(S8)。S8の前処理の内容は図23(d)に示されるがすでに説明したので省略する。
【0141】
次に、同期処理部613は前処理が施された白紙測定データとパターン測定データをRAM303より読み出して、同期化処理によって位置あわせを行う(S9)。
【0142】
次に、パターン非存分除外処理部614は、パターン測定データの極小値からVpを求め、白紙測定データとパターン測定データからそれぞれVpを減算する(S10)。
【0143】
次に、振幅補正処理部615は、式「z=固定値×(x´/y´)」を用いて振幅補正処理を行い検出電圧zを生成する(S11)。これにより、変曲点がスレッシュ領域内に収まった検出電圧データが得られた。
【0144】
吐出タイミング補正部616は、検出電圧zによりラインセンター位置を検出し、液滴の着弾位置ずれを補正する(S12)。すなわち、吐出タイミング補正部616は各ライン間の距離を適正距離と比較して着弾位置ずれ量を算出し、着弾位置ずれがなくなるように液滴吐出タイミングの補正値を算出し、ヘッド駆動制御部312に設定する。
【0145】
以上説明したように、本実施形態の画像形成装置100は、透過率が高いシート材に、スポット光径d>ライン幅Lのラインを形成しても、ラインセンター位置を精度よく求めることができ、液滴の着弾位置ずれを精度よく補正することができる。
【実施例3】
【0146】
本実施例では、パターン非存分除外処理と振幅補正処理を画像形成装置でなく、サーバが行う画像形成システムについて説明する。
【0147】
図24は、画像形成装置100とサーバ200を有する画像形成システム500を模式的に説明する図の一例である。図24において図4と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。画像形成装置とサーバ200がネットワーク201を介して接続されている。ネットワーク201は、社内のLAN、LAN同士を接続したWAN,若しくは、インターネット、又は、これらを組み合わせたものである。
【0148】
図24のような画像形成システム500では、画像形成装置100がテストパターンの形成及び印字位置ずれセンサによるテストパターンの走査を行い、サーバ200が液滴吐出タイミングの補正値を算出する。したがって、画像形成装置100の処理負荷を低減でき、サーバ200に液滴吐出タイミングの補正値の算出機能を集約できる。
【0149】
図25は、サーバ200と画像形成装置100のハードウェア構成図の一例を示す図である。サーバ200は、それぞれバスで相互に接続されているCPU51、ROM52、RAM53、記憶媒体装着部54、通信装置55、入力装置56、及び、記憶装置57を有する。CPU51は、OS(Operating System)、及び、プログラム570を記憶装置57から読み出して、RAM53を作業メモリにして実行する。このプログラム570は、下記の処理を行う。
【0150】
RAM53は必要なデータを一時保管する作業メモリ(主記憶メモリ)になり、ROM52にはBIOSや初期設定されたデータ、ブートストラップロータ等が記憶されている。記憶媒体装着部54は、可搬型の記憶媒体320を装着するインタフェースである。
【0151】
通信装置55は、LANカードやイーサネット(登録商標)カードと呼ばれ、ネットワーク201に接続して、画像形成装置100の外部I/F311と通信する。なお、画像形成装置100には、少なくともサーバ200のIPアドレス又はドメイン名が登録されている。
【0152】
入力装置56は、キーボード、マウスなど、ユーザの様々な操作指示を受け付けるユーザインターフェイスである。タッチパネルや音声入力装置を入力装置とすることもできる。
【0153】
記憶装置57は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの不揮発メモリを実体とし、OS、プログラム等を記憶している。プログラム570は、記憶媒体320に記録された状態又は不図示のサーバ200からダウンロードされる態様で配布される。
【0154】
図26は、画像形成システム500の機能ブロック図の一例である。画像形成装置100の補正処理実行部526は印字前後のn回スキャン部、テストパターン印刷部617、及び、パターンデータ記憶部618のみ有し、残りの機能はサーバ側が有する。サーバ側の機能を補正処理演算部620と称する。共有メモリ525はサーバ200が有していてもよいし、サーバ200と画像形成装置100が共に共有メモリ525を有していてもよい。また、テストパターン記憶部618はサーバ200又は不図示の別のサーバにあってもよく、画像形成装置100がサーバ200からダウンロードしてもよい。
【0155】
補正処理演算部620は印字前の同期化部、平均化部、フィルタ処理部、印字後の同期化部、平均化部、同期処理部613、パターン非存分除外処理部614、振幅補正処理部615、及び、吐出タイミング補正部616を有する。各ブロックの機能は実施例1と同様なので省略する。
【0156】
画像形成システム500では、画像形成装置側のn回スキャン部が印字前と印字後のn個のデータをサーバ200に送信する。サーバ側の補正処理演算部620は、パターン非存分除外処理や振幅補正処理を行って、液滴吐出タイミングの補正値を算出する。サーバ200は液滴吐出タイミングの補正値を画像形成装置100に送信するので、ヘッド駆動制御部312は吐出タイミングを変更することができる。
【0157】
図27は、画像形成システム500の動作手順を示すフローチャート図の一例である。図示するように図26のS5,S8〜S12をサーバ200が行い、これら以外の印字前後のn回のスキャンに必要な処理を画像形成装置100が行う。
【0158】
また、画像形成装置100とサーバ200が通信するため、画像形成装置100は、ステップS4-1において印字前のn個のスキャン結果を送信する処理、S7-1において印字後のn個のスキャン結果を送信する処理、を新たに行う。また、画像形成装置100は、S7-2において液滴吐出タイミングの補正値を受信する処理を新たに行う。
【0159】
これに対し、サーバ200は、ステップS12で液滴吐出タイミングの補正値を算出し、S13において、液滴吐出タイミングの補正値を画像形成装置100に送信する処理を新たに行う。
【0160】
このように、処理が行われる場所が変わるだけで、画像形成システム500は、実施例1と同様に、シート材の特性から受ける影響を抑制して、液滴吐出タイミングを高精度に補正することができる。
【符号の説明】
【0161】
1 ガイドロッド
2 副ガイド
5 キャリッジ
7 駆動プーリ
8 主走査モータ
9 タイミングベルト
21〜24 記録ヘッド
30 液滴位置ずれセンサ
41 エンコーダシート
42 エンコーダセンサ
100 画像形成装置
301 CPU
310 主制御部
312 ヘッド駆動制御部
313 主走査駆動部
314 副走査駆動部
402 発光素子
403 受光素子
525 共有メモリ
526 補正処理実行部
611 印字前前処理部
612 印字後前処理部
613 同期処理部
614 パターン非存分除外処理部
615 振幅補正処理部
616 吐出タイミング補正部
617 テストパターン印刷部
618 パターンデータ記憶部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0162】
【特許文献1】特開2008−229915号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に形成した複数のラインのテストパターンを読み取って、液滴の吐出タイミングを調整する画像形成装置であって、
前記記録媒体に光を照射する発光手段及び前記記録媒体からの反射光を受光する受光手段とを有する読み取り手段と、
テストパターンのパターンデータを記憶するパターンデータ記憶手段と、
前記パターンデータを読み出して前記記録媒体にテストパターンを形成するテストパターン印刷手段と、
前記記録媒体又は前記読み取り手段を相対的に等速で移動させる相対移動手段と、
テストパターン上を前記光が移動している間、前記受光手段が前記光の走査位置から受光した前記反射光の強度データを記憶する強度データ記憶手段と、
極小値付近の前記強度データの傾きの大きさを表す傾き度データにライン位置決定演算を施し前記ラインの中央位置を検出する位置検出手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記位置検出手段は、
前記傾き度データのうちゼロから正負に所定範囲の前記傾き度データの回帰直線を求め、走査位置に依存せず前記傾き度データがゼロとなる直線と該回帰直線との交点を前記ラインの中央位置として検出する、
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記発光手段が前記記録媒体に形成する光の直径は、前記ラインのライン幅よりも長いい、ことを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記位置検出手段は、ゼロから正側の閾値までの前記傾き度データ、及び、ゼロから正側の閾値と絶対値が同じ負側の閾値までの前記傾き度データから前記回帰直線を求める、
ことを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記位置検出手段は、前記傾き度データがゼロ又は前記傾き度データの傾きがゼロとなる走査位置を前記ラインの中央位置として検出する、
ことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記パターンデータ記憶手段に記憶されたパターンデータは、ラインの色が異なっても前記強度データの極小値が同程度になるようにライン幅が調整されている、
ことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記位置検出手段は、第一のラインの中央位置と、前記第一のラインに隣接した第二のラインの中央位置との距離を算出し、
当該画像形成装置は、該距離と予め定められた適正距離の差に基づき、液滴の吐出タイミングを調整する、
ことを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記テストパターンが形成される前に、前記受光手段が前記光の走査位置から受光した前記反射光の第2の強度データを記憶する第2の強度データ記憶手段と、
前記テストパターンが形成された後に、前記走査位置と略同じ走査位置の前記テストパターンを前記光が移動する際に前記受光手段が受光した前記反射光の第1の強度データを記憶する第1の強度データ記憶手段と、
前記第1の強度データと前記第2の強度データのそれぞれから前記第1の強度データの極小値と同程度の値を減じる減算処理手段と、
減算処理された前記第2の強度データに対する前記第1の強度データの割合を算出して、前記第1の強度データの極大値を略一定に揃える信号補正手段と、
を有することを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項9】
記録媒体に光を照射する発光手段及び前記記録媒体からの反射光を受光する受光手段とを有する読み取り手段と、
テストパターンのパターンデータを記憶するパターンデータ記憶手段と、を有し、前記記録媒体に形成した複数のラインのテストパターンを読み取って、液滴の吐出タイミングを調整する画像形成装置のパターン位置検出方法であって、
テストパターン印刷手段が、前記パターンデータを読み出して前記記録媒体にテストパターンを形成するステップと、
相対移動手段が、前記記録媒体又は前記読み取り手段を相対的に等速で移動させるステップと、
テストパターン上を前記光が移動している間、前記受光手段が前記光の走査位置から受光した前記反射光の強度データを強度データ記憶手段に記憶するステップと、
位置検出手段が、極小値付近の前記強度データの傾きの変化の大きさを表す傾き度データにライン位置決定演算を施し前記ラインの中央位置を検出するステップと、
を有することを特徴とするパターン位置検出方法。
【請求項10】
記録媒体に液滴を吐出して形成したテストパターンを読み取って、液滴の吐出タイミングを調整する画像形成システムであって、
前記記録媒体に光を照射する発光手段及び前記記録媒体からの反射光を受光する受光手段とを有する読み取り手段と、
パターンデータを読み出して前記記録媒体にテストパターンを形成するテストパターン印刷手段と、
前記記録媒体又は前記読み取り手段を相対的に等速で移動させる相対移動手段と、
を備える画像形成装置と、
テストパターンのパターンデータを記憶するパターンデータ記憶手段と、
テストパターンを前記光が移動している間、前記受光手段が前記光の走査位置から受光した前記反射光の強度データを記憶する強度データ記憶手段と、
極小値付近の前記強度データの傾きの大きさを表す傾き度データにライン位置決定演算を施し前記ラインの中央位置を検出する位置検出手段と、
を有することを特徴とする画像形成システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2013−99865(P2013−99865A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243762(P2011−243762)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】