説明

画像形成装置、パターン位置決定方法、プログラム、印刷物の製造方法

【課題】シート材の影響を抑制してテストパターンの位置を検出する画像形成装置を提供すること。
【解決手段】記録媒体に光を照射する発光手段及び記録媒体からの反射光を受光する受光手段を有する読み取り手段30と、読み取り手段を等速で移動させる相対移動手段313と、テストパターンが形成される前に、記録媒体に対し読み取り手段が相対移動している間に受光手段が受光した反射光の第2の検出データを取得する第2の検出データ取得手段611と、テストパターンが形成された後に、走査位置と略同じ走査位置のテストパターンを光が横断する際に受光手段が受光した第1の検出データを取得する第1の検出データ取得手段612と、走査位置に応じて切り換えられた減算量を第1の検出データと第2の検出データのそれぞれから減じる減算処理手段614と、第2の検出データに対する第1の検出データの割合を算出する信号補正手段615と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に形成した異なる色を有するテストパターンを読み取って、液滴の吐出タイミングを調整する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴を用紙などのシート材に吐出して画像の形成を行い、印刷物を製造する画像形成装置が知られている(以下、液体吐出方式の画像形成装置という)。液体吐出方式の画像形成装置は、大きくシリアル方式とラインヘッド方式のものに区分できる。シリアル方式の画像形成装置は、紙送りを繰り返しながら、紙送り方向と直角に(主走査方向に)記録ヘッドが往復移動して用紙全体に画像を形成することで印刷物を製造する。ラインヘッド方式の画像形成装置は、最大用紙幅とほぼ同じ長さにノズルが並んでおり、ラインヘッド内のノズルは紙が送られ液滴を吐出するタイミングになると液滴を吐出することで画像を形成する。
【0003】
しかしながら、シリアル方式の画像形成装置では、往路及び復路の双方向で1本の罫線を印字したような場合、往路と復路で罫線の位置ずれが発生しやすいということが知られている。また、ラインヘッド方式の画像形成装置では、ノズルの加工精度や取り付け誤差などに起因して、定常的に着弾位置がずれるノズルがあると紙送り方向に平行な線が現れやすいことが知られている。
【0004】
このため、液体吐出方式の画像形成装置では、液滴の着弾位置を調整するための自動調整用のテストパターンをシート材に印刷し、テストパターンを光学的に読み取り、その読み取り結果に基づいて吐出タイミングの調整を行うことが行われることが多い(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
特許文献1には、撥水性を有する撥水性部材上に、独立した複数の液滴で構成される基準パターンと、この基準パターンとは異なる吐出条件で吐出された独立した複数の液滴で構成される被測定パターンとを、記録ヘッドの走査方向に並べて形成させるパターン形成手段と、各パターンに光を照射する発光手段及び各パターンからの正反射光を受光する受光手段で構成される読取り手段と、この読取り手段の読取り結果に基づいて各パターン間の距離を測定して、この測定結果に基づいて記録ヘッドの液滴吐出タイミングを補正する補正手段とを備えている画像形成装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された液滴吐出タイミングの補正方法では、下記するような問題がある。
【0007】
図1(a)は、テストパターンを読み取る受光素子を模式的に説明する図の一例である。LEDが照射したスポット光がテストパターンを矢印方向に走査すると、スポット光の走査位置の濃度に応じた反射光が受光素子にて検出される。よく知られているように光は黒い物体によく吸収されるので、シート材が白でテストパターンが黒であれば、テストパターンを走査した時のスポット光は反射されにくい。受光素子が受光する反射光を電圧で表せば、図示するように、スポット光がテストパターンと重畳した際の電圧は、テストパターン以外を走査している際の電圧よりも大きく低下する。
【0008】
図1(b)は電圧の変化を拡大して示す図の一例である。横軸は、例えば時間又はスポット光の走査位置である。細長い円は電圧が急激に変化している領域を示す。テストパターンのエッジはこの領域内にあることが推測され、例えば、電圧値が極大と極小の中央値を示す時にスポット光の重心がテストパターンのエッジを走査していると判定される。したがって、電圧値が例えば電圧の振幅の中央値を示す時、画像形成装置は走査位置にテストパターンのエッジ位置があると判定しテストパターンの位置を特定できる。
【0009】
しかしながら、シート材がトレーシングペーパーのような反射率の低い(透過率の高い)材質の場合、受光素子の出力電圧が安定しにくいため、テストパターンのエッジ位置を精度よく特定できないという問題がある。すなわち、反射率の低いシート材の場合、電圧値の振幅が小さくなったり、また、シート材の透きムラ(透過率変動)やセンサ感度を増幅することにより電圧値が不安定になる。受光素子の出力電圧の振幅が小さくなったり不安定になると、テストパターンのエッジ位置の特定精度が低下するため、液滴吐出タイミングの調整精度が低下することになる。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑み、シート材の特性から受ける影響を抑制して、テストパターンの位置を精度よく特定できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に鑑み、本発明は、記録媒体に形成したテストパターンを読み取って、液滴の吐出タイミングを調整する画像形成装置であって、前記記録媒体に光を照射する発光手段及び前記記録媒体からの反射光を受光する受光手段を有する読み取り手段と、前記記録媒体又は前記読み取り手段を相対的に等速で移動させる相対移動手段と、前記テストパターンが形成される前に、前記記録媒体に対し前記読み取り手段が相対移動しながら、前記受光手段が前記光の走査位置から受光した前記反射光の第2の検出データを取得する第2の検出データ取得手段と、前記テストパターンが形成された後に、前記記録媒体に対し前記読み取り手段が相対移動しながら、前記走査位置と略同じ走査位置の前記テストパターンを前記光が横断する際に前記受光手段が受光した前記反射光の第1の検出データを取得する第1の検出データ取得手段と、走査位置に応じて切り換えられた減算量を、前記第1の検出データと前記第2の検出データのそれぞれから減じる減算処理手段と、減算処理された前記第2の検出データに対する前記第1の検出データの割合を算出して、前記第1の検出データの極大値を略一定に揃える信号補正手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
シート材の特性から受ける影響を抑制して、テストパターンの位置を精度よく特定できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】テストパターンを読み取る受光素子を模式的に説明する図の一例である。
【図2】パターン非依存分除外処理を説明する図の一例である。
【図3】振幅補正処理を説明する図の一例である。
【図4】マゼンタと黒のラインが交互に形成されたテストパターンと出力電圧Vsgの一例を示す図である。
【図5】シリアル方式の画像形成装置の概略斜視図の一例である。
【図6】キャリッジの動作をより詳細に説明する図の一例である。
【図7】片方向印字で形成されるテストパターンの一例を示す図である。
【図8】双方向印字で形成されるテストパターンの一例を示す図である。
【図9】画像形成装置の制御部のブロック図の一例である。
【図10】印字位置ずれセンサがテストパターンのエッジを検出するための構成を模式的に示す図の一例である。
【図11】補正処理実行部の機能ブロック図の一例である
【図12】スポット光とテストパターンの一例を示す図である。
【図13】スポット光とテストパターンの一例を示す図である。
【図14】エッジ位置の特定方法を説明する図の一例である。
【図15】吸収面積と吸収面積の増加率の一例をそれぞれ示す図である。
【図16】振幅が不安定な出力電圧、振幅の補正後の出力電圧の一例をそれぞれ示す図である。
【図17】スポット光の径とテストパターンの線幅を説明する図の一例である。
【図18】スポット光の径とテストパターンの線幅を説明する図の一例である。
【図19】ライン方式の画像形成装置のヘッドの配置とテストパターンを模式的に説明する図の一例である。
【図20】信号補正を説明する図の一例である。
【図21】n回スキャンの測定結果の一例を示す図である。
【図22】同期処理を説明する図の一例である。
【図23】フィルタ処理を説明する図の一例である。
【図24】n回スキャンを説明する図の一例である。
【図25】同期処理を説明する図の一例である。
【図26】VsgとVpを説明する図の一例である
【図27】色毎の極小値の一例を示す図である。
【図28】極小値の求め方の一例を示す図である。
【図29】パターン測定データの出力波形の一例、白紙測定データの出力波形の一例をそれぞれ示す図である。
【図30】x´とy´から得られる演算対象データzを模式的に説明する図の一例である。
【図31】補正処理実行部が信号補正する手順の一例を示すフローチャート図である。
【図32】補正処理実行部の処理を説明するフローチャート図の一例である。
【図33】ブラックとマゼンタのテストパターンとパターン測定データの一例を示す図である。
【図34】図33のパターン測定データから決定されるVwを示す図の一例である。
【図35】出力波形(パターン測定データ)が微分された微分波形の一例を示す図である。
【図36】パターン測定データと閾値TH1を示す図の一例である。
【図37】極小値、極大値と走査位置等の関係を示す図の一例である。
【図38】パターン測定データの出力波形等の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0015】
本実施例では、2つの処理(パターン非依存分除外処理と振幅補正処理)を利用してテストパターンの位置を特定する。そして、単一色のテストパターンでなく、複数の色を有するテストパターンがシート材に形成された場合も、同様の処理を利用してテストパターンの位置を決定することを特徴の1つとして説明する。
【0016】
・パターン非依存分除外処理
まず、受光素子の出力電圧に寄与する要因を説明する。受光素子が受光する光の多くは発光素子がシート材に対し発光した光の反射光であるが、反射光にはシート材の反射分とシート下の板状部材(以下、プラテンという)の反射分が含まれる。また、反射光以外に、空中散乱光や背景放射などの光も受光素子に受光される。これらを以下のように定義する。
Vsg:受光素子が受光した光の全ての出力電圧
Vp:テストパターンが形成された部分でも吸収し切れない光による反射光、空中散乱光、暗出力による出力電圧
Vs:検出したい出力電圧
ところで、本発明はテストパターンが形成された部分の反射光と、テストパターンが形成されていない部分の反射光からテストパターンの位置を検出することを目的としている。このため、テストパターンの形成によって変動しない反射光の部分を削除することで、目的とするテストパターンによって変動する信号を取り出すことが出来る。テストパターンが形成された部分でも吸収されなかった光や暗出力からなる出力電圧Vpは、テストパターンが形成されているときも形成されていないときも出力される電圧であるため、Vpによる出力電圧は、テストパターンの形成によって変動しない出力電圧であると考える。なお、「テストパターンが形成された部分でも吸収されなかった光による反射光」にはテストパターンが吸収しなかった光をシートが反射したもの、シートを透過してプラテンが反射したものが含まれるがここでは言及しない。また、実際には後述するように様々な変動要因により変動が発生する。
【0017】
以下例として、テストパターンが単一色の場合に、目的とする信号を取り出す例を説明する。Vsg、Vp、Vsの説明は上述したものと同様であるが、説明のために1,2等の符号を付与している。
【0018】
まず、図2(b)のVsg1はテストパターンが形成された場合の出力電圧の波形である。Vsg1において、テストパターンが形成された箇所はテストパターンが光を吸収することにより、反射光が低下している。しかしながら、図2(b)におけるVpはテストパターンが形成されている部分においても出力されている。これが、テストパターンの形成によって変動しない出力電圧Vpである。
【0019】
つまり、Vsg1からVpを減ずることにより、テストパターンの形成によって変動する信号である図2(d)のVs2(後述するx´)を取り出すことが出来る。Vpは特許請求の範囲の減算量の一例である。
【0020】
次に図2(a)、図2(c)を用いて、用紙の反射率の変動による信号の変動の処理を説明する。
【0021】
図2(a)はテストパターンなしの場合の出力電圧Vsg1を示す。また、図2(c)はテストパターンなしの場合の出力電圧Vsg1からVpを減じたVs1(後述するy´)を示す。 ここで、図2(c)のy´に示すようにテストパターンによる吸収がなくても、出力電圧は変動している。この変動は、用紙の反射率に大きく依存しているものであり、この変動が図2(d)の出力電圧x´にも含まれている。このことを示すようにx´の振幅も変動している。このような変動があると、テストパターンの位置の検出精度が低下してしまう。
【0022】
後述するように、画像形成装置は出力電圧の変曲点(出力電圧に示された短い横線)の周辺の出力電圧データを用いてテストパターンを構成するラインのエッジ位置を決定する。しかし、変曲点の位置が安定していないため、テストパターンのエッジ位置の検出精度が低下してしまう。そこで、本実施例の画像形成装置は図2(d)のx´の変動を抑制する補正を行う。
【0023】
・振幅補正処理
図3(a)はx´(Vs1)とy´(Vs2)を重ねたグラフの一例を示す。後述する同期処理によりx´とy´は同じ走査位置の出力電圧データになるので、スポット光が、テストパターンがない場所を走査するとx´とy´が等しくなり、テストパターンがある場所を走査するとx´が略ゼロとなる。なお、前述した非パターン依存分除外処理により、テストパターンがある場所でも生じてしまう反射光による出力電圧は除外されている。つまりこれは、x´が、ある位置においてy´を基準(最大)としてテストパターンによる吸収が行われた残りの反射光によって出力される出力電圧であることを意味する。すなわち、シート材の透過率などがもたらす変動が位置毎に異なっても、変動が出力電圧を大きくする位置(y´が大きい位置)ではx´も大きくなり、変動が出力電圧を小さくする位置(y´が小さい位置)ではx´も小さくなる。そして、パターンが形成される部分では略ゼロになる。
【0024】
このことは、換言すると、x´に含まれる位置に起因する変動は、「x´/y´」という比例補正により適切に補正可能であることを示す。
【0025】
したがって、振幅として適切な固定値を定めておけば、「固定値×x´/y´」により振幅が一定の出力電圧データを取得することができる。この出力電圧をzとすると、以上から、振幅補正処理後の出力電圧zは
z=固定値×(x´/y´)
で表すことができる。
【0026】
図3(b)は、出力電圧zの一例を示す。固定値にx´とy´の比が反映され、振幅の安定した出力電圧z(後述する演算対象データ)が得られている。
【0027】
本実施例の画像形成装置は、以上の2段階の信号補正処理により、シート材の特性から出力電圧データの振幅が不安定になっても、テストパターンのエッジ位置を精度よく特定することを可能にする。
【0028】
ところで、ここまでの説明では、テストパターンが単一色である場合を説明した。しかしながら、テストパターンが単一色でない場合、色毎にVpが異なってしまうという不都合が生じる。
図4(a)はマゼンタと黒のラインが交互に形成されたテストパターンを、図4(b)は出力電圧Vsgの一例を示す。発光素子の光の波長は固定なので、テストパターンの色によって吸収の度合いが異なり、一般には黒のラインが最もよく光を吸収する。光が黒のラインを通過中のVsgの極小値をVpK、マゼンタのラインを通過中のVsgの極小値をVpMとすると、VpKとVpMは異なってしまう(以下、VpK、VpMを区別しない場合、Vpという)。
【0029】
このようなVsgから一定のVpを減じても、図2(b)のようにVsの最小値は略ゼロに揃わないので、変曲点の位置が安定せず、テストパターンのエッジを精度よく検出することが困難になる。
【0030】
そこで、本実施例では、テストパターンの色毎にVsgから減ずべき値を変更する。例えば、光の走査位置が黒のラインに相当する範囲では減ずべき値をVpMとし、マゼンタのラインに相当する範囲ではVpMとする。テストパターンのどの位置でVpを切り換えるかは、ライン上でなければよく、図では黒のエッジとマゼンタのエッジの中点(極小値同士の中点)としている。
【0031】
光が黒のラインを通過中のVsgからVpKを減じ、マゼンタのラインを通過中のVsgからVpMを減じることで、Vsgの極小値は全域で略ゼロに揃う。したがって、以降はテストパターンなしの場合の出力電圧y´との比を取ることで、図3のように振幅の安定した出力電圧データzが得られる。
【0032】
〔構成例〕
図5は、シリアル方式の画像形成装置100の概略斜視図の一例を示す。画像形成装置100は、本体フレーム70により支持されている。画像形成装置100の長手方向にはガイドロッド1及び幅ガイド2が掛け渡され、ガイドロッド1及び副ガイド2にキャリッジ5が矢印A方向(主走査方向)に往復移動可能なように保持されている。
【0033】
また、主走査方向には無端ベルト状のタイミングベルト9が、駆動プーリ7と加圧コロ15に張架されており、タイミングベルト9の一部がキャリッジ5に固定されている。また、駆動プーリ7は主走査モータ8により回転駆動され、これによりタイミングベルト9が主走査方向に移動し、連動してキャリッジ5も往復移動する。タイミングベルト9には加圧コロ15によって張力が掛けられており、タイミングベルト9はたるむことなくキャリッジ5を駆動させることができる。
【0034】
また画像形成装置100は、インクを供給するカートリッジ60と記録ヘッドを維持・クリーニングする維持機構26を有する。
【0035】
シート材150はキャリッジ5の下側にあるプラテン40上を、不図示のローラにより矢印B方向(副走査方向)に間欠的に搬送される。シート材50は、紙などの普通紙、光沢紙、フィルム、電子基板など液滴が付着可能な記録媒体であればよい。シート材150の搬送位置毎に、キャリッジ5は主走査方向に移動し、キャリッジ5が搭載している記録ヘッドが液滴を吐出する。吐出が終わるとシート材150が再度、搬送され、キャリッジ5が主走査方向に移動して液滴を吐出する。これを繰り返すとシート材150の全面に画像が形成され、印刷物が製造される。
【0036】
図6は、キャリッジ5の動作をより詳細に説明する図の一例である。上記のガイドロッド1及び副ガイド2は左側板3と右側板4の間に掛け渡され、キャリッジ5は軸受け12と副ガイド受け部11によりガイドロッド1及び副ガイド2を摺動自在に保持され、矢印X1,X2方向(主走査方向)に移動可能となっている。
【0037】
キャリッジ5には黒(K)の液滴を吐出する記録ヘッド21,22、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色のインク滴を吐出する記録ヘッド23,24,が搭載されている。記録ヘッド21は黒がよく使用されるために配置したものであり、省略することもできる。
【0038】
なお、記録ヘッド21〜24としては、インク流路内(圧力発生室)のインクを加圧する圧力発生手段(アクチュエータ手段)として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させることによる圧力でインク滴を吐出させるいわゆるサーマル型のもの、又は、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで、インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のもの、などを用いることができる。
【0039】
キャリッジ5を移動走査する主走査機構32は、主走査方向の一方側に配置される主走査モータ8と、主走査モータ8によって回転駆動される駆動プーリ7と、主走査方向の他方側に配置された加圧コロ15と、駆動プーリ7と加圧コロ15との間に掛け回されたタイミングベルト9とを備えている。なお、加圧コロ15は、図示しないテンションスプリングによって外方(駆動プーリ7に対して離れる方向)にテンションが作用させられている。
【0040】
タイミングベルト9は、キャリッジ5の背面側に設けたベルト保持部10に一部分が固定保持されていることで、タイミングベルト9の無端移動に伴い主走査方向にキャリッジ5を牽引する。
【0041】
また、キャリッジ5の主走査方向に沿うようにエンコーダシート41が配置されており、キャリッジ5に設けたエンコーダセンサ42によって当該エンコーダシート42のスリットを読取ることで、キャリッジ5の主走査方向の位置を検知することができる。このキャリッジ5が主走査領域のうち記録領域に存在する場合、シート材150が図示しない紙送り機構によってキャリッジ5の主走査方向と直交する矢示Y1,Y2方向(副走査方向)に間欠的に搬送される。
【0042】
以上説明した、本実施例に係る画像形成装置100では、キャリッジ5を主走査方向に移動し、シート材150を間欠的に送りながら、記録ヘッド21〜24を画像情報に応じて駆動して液滴を吐出させることによってシート材150に所要の画像を形成し、印刷物を製造することができる。
【0043】
キャリッジ5の一側面には、着弾位置のずれを検出(テストパターンの読取り)するための印字位置ずれセンサ30が搭載されている。印字位置ずれセンサ30は、LEDなどの発光素子及び反射型フォトセンサで構成した受光素子によって、シート材150に形成された着弾位置検出用のテストパターンを読み取る。
【0044】
この印字位置ずれセンサ30は記録ヘッド21用のものなので、記録ヘッド22〜24の液滴吐出タイミングを調整するため記録ヘッド22〜24と並列に別の印字位置ずれセンサ30を搭載することが好ましい。また、印字位置ずれセンサ30を記録ヘッド22〜24と並列になるようにスライドさせる機構がキャリッジ5に搭載されていれば、一台の印字位置ずれセンサ30で記録ヘッド22〜24の液滴吐出タイミングを調整できる。または、画像形成装置100がシート材150を逆方向に送っても、一台の印字位置ずれセンサ30で記録ヘッド22〜24の液滴吐出タイミングを調整できる。
【0045】
図7、8はテストパターンの一例を示す図であり、図7は片方向印字で形成されるテストパターンを、図8は双方向印字で形成されるテストパターンを、それぞれ示す。各ラインの上側の番号は記録ヘッド21〜24の符号であり、各ラインの上側の矢印は、往路(図6のX1方向)又は復路(図6のX2方向)を示している。
【0046】
図7では、記録ヘッド22が吐出したブラックのラインと、記録ヘッド23が吐出したマゼンタ(又はシアン)のラインとが交互に形成されている。記録ヘッド22と23はいずれも往路でのみインクを吐出する。
【0047】
図8では、全てのラインが記録ヘッド22が吐出したブラックのラインである。図8のテストパターンでは、往路でのみ形成されるラインと復路でのみ形成されるラインが交互に配置されている。例えば、復路で形成されるラインが液滴吐出タイミングを調整するために使用される。
【0048】
本実施形態に係る画像形成装置100では、印字位置ずれセンサの出力に基づいて記録ヘッド21〜24の液滴吐出タイミングが調整された後に、キャリッジ5を主走査方向に移動し、シート材150を間欠的に送りながら、調整されたタイミングで画像情報に応じて記録ヘッド21〜24が駆動される。この駆動に応じて液滴が吐出されることによってシート材150にずれのない画像を形成し、印刷物を製造する。画像が形成されるシート材150は印刷対象媒体の一例である。なお、本実施形態では、テストパターンが形成されるシート材150と、画像が形成されるシート材150とに同一の番号を付与しているが、このシート材は同じシート材であってもよいし、異なるシート材であってもよい。例えば、シート材としてロール紙を用いた場合には2つのシート材は後の肯定でカットされるまでは同一のシート材である。また、シート材としてカット紙を用いた場合には2つのシート材は異なるシート材であると考えられる。
【0049】
図9は、画像形成装置100の制御部300のブロック図の一例である。制御部300は、主制御部310及び外部I/F311を有する。主制御部310は、CPU301と、ROM302、RAM303、NVRAM304、ASIC305、及び、FPGA(Field Programmable Gate Array)306を有する。CPU301はROM302に記憶されたプログラム3021を実行して、画像形成装置100の全体を制御する。ROM302にはこのプログラム3021の他、初期値や制御のためのパラメータなど固定データが格納されている。RAM303は、プログラムや画像データ等を一時的に格納する作業メモリであり、NVRAM304は、装置の電源が遮断されている間も設定条件などのデータを保持するための不揮発性メモリである。ASIC305は画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行なったり、各種のエンジンを制御する。FPGA306は、装置全体を制御するための入出力信号を処理する。
【0050】
主制御部310は、この装置全体の制御を司るとともにテストパターンの形成、テストパターンの検出、着弾位置の調整(補正)などに関わる制御を司る。後述するように、本実施例では主にCPU301がROM302に記憶されたプログラム3021を実行してエッジ位置の検出を行うが、一部又は全てをFPGA306やASIC305など、LSIが行ってもよい。
【0051】
外部I/F311は、ネットワークに接続された他の機器と通信するための通信装置、USB、IEEE1394、と接続するためのバスやブリッジであり、外部からのデータを主制御部310に送出する。また、外部I/F311は主制御部310が生成したデータを外部に出力する。外部I/F311には脱着可能な記憶媒体320が装着可能であり、プログラム3021は記憶媒体320に記憶された状態や、外部からの通信装置を介して配信される。
【0052】
また、制御部300は、ヘッド駆動制御部312、主走査駆動部313、副走査駆動部314、給紙駆動部315、排紙駆動部316、及び、スキャナ制御部317を有する。ヘッド駆動制御部312は、記録ヘッド21〜24のそれぞれの吐出有無、吐出する場合の液滴吐出タイミング及び吐出量を制御する。ヘッド駆動制御部312は、記録ヘッド21〜24を駆動制御するためのヘッドデータ生成配列変換用ASICを有し(ヘッドドライバ)、印刷データ(ディザ処理などが施されたドットデータ)に基づき、液滴の有無と液滴の大きさを示す駆動信号を生成して、記録ヘッド21〜24に供給する。記録ヘッド21〜24はノズル毎にスイッチを有しており、駆動信号に基づきオン・オフすることで、記録ヘッド21〜23は印刷データにより指定されるシート材150の位置に指定されるサイズの液滴を着弾させる。なお、ヘッド駆動制御部312のヘッドドライバは記録ヘッド21〜24側に設けられてもよいし、ヘッド駆動制御部312と記録ヘッド21〜24が一体になっていてもよい。図示する構成は一例である。
【0053】
主走査駆動部(モータドライバ)313は、キャリッジ5を移動走査する主走査モータ8を駆動する。主制御部310には、前述したキャリッジ位置を検出するエンコーダセンサ42が接続されており、主制御部310はこの出力信号に基づいてキャリッジ5の主走査方向の位置を検出する。そして、主走査駆動部313を介して主走査モータ8を駆動制御することでキャリッジ5を主走査方向に往復移動させる。
【0054】
副走査駆動部(モータドライバ)314は紙送りするための副走査モータ132を駆動する。主制御部310には、副走査方向の移動量を検出するロータリエンコーダセンサ131からの出力信号(パルス)が入力され、主制御部310はこの出力信号に基づいて紙送り量を検出し、副走査駆動部314を介して副走査モータ132を駆動制御することで図示しない搬送ローラを介してシート材を紙送りする。
【0055】
給紙駆動部315は給紙トレイからシート材を給紙する給紙モータ133を駆動する。排紙駆動部316は、印刷されたシート材150をプラテン上に排紙するローラを駆動する排紙モータ134を駆動する。なお、排紙駆動部316は、副走査駆動部314により代用してもよい。
【0056】
スキャナ制御部317は、画像読取部135を制御する。画像読取部135は、原稿を光学的に読み取り画像データを生成する。
【0057】
また、主制御部310には、テンキー、プリントスタートキーなどの各種キー及び各種表示器を含む操作/表示部136が接続されている。主制御部310は、操作/表示部136を介してユーザが操作したキー入力の受け付け、メニューの表示などを行う。
【0058】
その他図示しないが、維持機構26を駆動する維持回復モータを駆動するための回復系駆動部、各種のソレノイド(SOL)類を駆動するソレノイド類駆動部(ドライバ)、電磁クラック類などを駆動するクラッチ駆動部、を有していてもよい。また、主制御部310には、その他の図示しない各種センサの検出信号も入力されるが図示を省略している。
【0059】
主制御部310は、シート材上にテストパターンを形成する処理を行い、形成したテストパターンに対し、キャリッジ5に搭載した印字位置ずれセンサ30の発光素子を発光させる発光駆動制御を行う。そして、受光素子の出力信号を取得しテストパターンの反射光を電気的に読取り、この読取り結果から着弾位置ずれ量を検出し、更に着弾位置ずれ量に基づいて記録ヘッド21〜24の液滴吐出タイミングを着弾位置ずれがなくなるように補正する制御を行う。
【0060】
〔着弾位置ずれの補正〕
図10は、印字位置ずれセンサ30がテストパターンのエッジ位置を検出するための構成を模式的に示す図の一例である。図10は、図6の記録ヘッド21と印字位置ずれセンサ30を右側面板4から見た図になっている。
【0061】
印字位置ずれセンサ30は、主走査方向と直交する方向に並ぶ、発光素子402と受光素子403を有している。発光素子402と受光素子403の配置は逆でもよい。発光素子401は、後述するスポット光をテストパターン400に投光して、受光素子403はシート材150に反射した光、プラテン40からの反射光、その他の散乱光などを受光する。発光素子402と受光素子403は筐体の内側に固定され、印字位置ずれセンサ30のプラテン40に対向する面は、レンズ405により外部から遮蔽されている。このように、印字位置ずれセンサ30はパッケージ化されており、単体で流通することができる。
【0062】
印字位置ずれセンサ30内において、発光素子402及び受光素子403は、キャリッジ5の走査方向に対して直交する方向に配置している(副走査方向に並行に配置されている)。これにより、キャリッジ5の移動速度変動による検出結果への影響を低減することができる。
【0063】
発光素子402には例えば、LEDを採用することができるが、可視光を投射可能な光源(例えば、レーザ、各種のランプ)であればよい。可視光とするのは、スポット光がテストパターンにより吸収されることを期待するためである。なお、発光素子402の波長は固定であるが、波長が異なる発光素子402を搭載した複数の印字位置ずれセンサ30を搭載することも可能である。
【0064】
また、発光素子402が形成するスポット径は、高精度のレンズを使用せずに安価なレンズを使用するためにmmオーダーとなっている。このスポット径は、テストパターンのエッジの検出精度と関係するが、mmオーダーでも本実施例のエッジ位置の求め方であれば十分に高精度にエッジ位置を検出できる。ただし、スポット径をより小さくすることも可能である。
【0065】
CPU301は、所定のタイミングになると着弾位置ずれ補正を開始する。このタイミングは、例えば、ユーザが操作/表示部136から着弾位置ずれ補正を指示したタイミング、CPU301がインク吐出前に発光素子402が発光しその時の反射光の強度が所定値以下であることから特定のシート材150であると判定したタイミング、最後に着弾位置ずれ補正を行った際の温度と湿度を記憶しておき温度又は湿度のいずれかが閾値以上ずれたと判定したタイミング、定期的(毎日、毎週、毎月等)なタイミング、等がある。
【0066】
本実施例の着弾位置ずれ補正は、テストパターンを形成する前と形成した後の2段階の処理を有する。しかしながら、主な違いはテストパターンを形成するか否かであるので、ここではテストパターンを形成する場合を説明する。
【0067】
CPU301は主走査制御部313にキャリッジ5の往復移動と、ヘッド駆動制御部312に予め定められたテストパターンを印刷データとして液滴の吐出を指示する。主走査制御部313は、シート材150に対して、キャリッジ5を主走査方向に往復移動させるとともに、ヘッド駆動制御部312は記録ヘッド21から液滴を吐出させて、少なくとも2本以上の独立したラインを含むテストパターンを形成する。
【0068】
また、CPU301は、シート材150に形成したテストパターンを印字位置ずれセンサ30にて読取るための制御を行う。具体的には、CPU301によって発光制御手段511に印字位置ずれセンサ30の発光素子402を駆動するためのPWM値が設定され、この発光制御手段511の出力が平滑回路512で平滑化されて駆動回路513に与えられる。駆動回路513は発光素子402を発光駆動して、シート材150のテストパターンに対して発光素子402からスポット光が照射される。なお、発光制御手段511、平滑回路512、駆動回路513、光電変換回路521、ローパスフィルタ522、A/D変換回路523、及び、補正処理実行部526は主制御部310又は制御部300に搭載されている。共有メモリ525は例えばRAM303である。
【0069】
シート材上のテストパターンに発光素子402からのスポット光が照射されることで、テストパターンから反射される反射光が受光素子403に入射する。受光素子403は反射光の強度信号を光電変換回路521に出力する。具体的には、光電変換回路521は、強度信号を光電変換して、この光電変換信号(センサ出力電圧)をローパスフィルタ回路522に出力する。ローパスフィルタ回路522は高周波のノイズ分を除去した後、A/D変換回路523に光電変換信号を出力する。A/D変換回路523は、光電変換信号をA/D変換し、信号処理回路(FPGA)306に出力する。信号処理回路(FPGA)306は、A/D変換された出力電圧のデジタル値である出力電圧データを共有メモリ525に格納する。
【0070】
補正処理実行部526は共有メモリ525に記憶された出力電圧データを読み出し、着弾位置ずれ補正を行い、ヘッド駆動制御部312に設定する。すなわち、補正処理実行部526は、テストパターンのエッジ位置を検出して、2本のライン間の適正距離と比較することで、着弾位置ずれ量を算出する。補正処理実行部526は、CPU301がプログラムを実行すること又はIC等で実現される。
【0071】
補正処理実行部526は着弾位置ずれがなくなるように記録ヘッド21を駆動するときの液滴吐出タイミングの補正量を算出して、この算出した液滴吐出タイミング補正量をヘッド駆動制御部312に設定する。これにより、ヘッド駆動制御部312は、記録ヘッド21を駆動する際に、補正量に基づいて液滴吐出タイミングを補正した上で記録ヘッド21を駆動するので、液滴の着弾位置ずれを低減することができる。
【0072】
図11は、補正処理実行部526の機能ブロック図の一例である。補正処理実行部526は、印字前前処理部611、印字後前処理部612、同期処理部613、パターン非依存分除外処理部614、振幅補正処理部615及び吐出タイミング補正部616を有する。印字前前処理部611は、テストパターンが形成される前の出力電圧データに前処理を施し、印字後前処理部612は、テストパターンが形成された後の出力電圧データに前処理を施す。同期処理部613は、テストパターンの形成前と形成後の出力電圧データを同期させる(位置を合わせる)。パターン非依存分除外処理部614は、出力電圧データからVpを減算する。振幅補正処理部615は、振幅補正処理を行うことでエッジ位置を演算するための演算対象データzを生成する。吐出タイミング補正部616は、テストパターンのエッジ位置から求めた着弾位置ずれ量に基づき液滴吐出タイミングを補正する。なおこれらの処理の詳細は後述する。
【0073】
〔スポット光の位置とエッジ位置〕
続いて、図12、11を用いてスポット光とエッジ位置の関係について説明する。
図12は、スポット光とテストパターンの一例を示す図である。スポット光はテストパターンを構成する複数のライン(図では1本)を一定速度(等速)で横切るように移動する(以下、テストパターンとラインを厳密には区別せずに説明する。)。横切る際の速度は可変でもよいが、横断中は等速である。用紙などのシート材は紙送りによりラインの長手方向に移動しているため、スポット光はラインを斜めに横切るように移動するが、シート材が停止してもエッジ位置の特定方法は同じである。一般的な波長のスポット光とシート材ではテストパターンの重複面積が大きいほど、スポット光の反射光が低下するとしてよい。
【0074】
なお、図12、11ではスポット径d = テストパターンのライン幅Lとする。実際にはスポット光は若干の楕円になるが、テストパターンに並行に長軸を持つのでスポット光の形状はエッジ位置の精度にほとんど影響しない。
【0075】
図13は、本実施例のエッジ位置の特定の概略を説明する図の一例である。図13(a)の数字I〜Vは時刻の経過を表し、下のスポット光ほど時間経過が長い。
時刻I:スポット光とテストパターンは重複していない。
時刻II:スポット光の半分がテストパターンと重畳している。この瞬間、反射光の減少率が最も大きくなる(重畳している面積が単位時間に最も大きく正に変化する)。
時刻III:スポット光の全体がテストパターンと重畳している。この瞬間、反射光の強度が最も小さくなる。
時刻IV:スポット光の半分がテストパターンと重畳している。この瞬間、反射光の増加率が最も大きくなる(重畳している面積が単位時間に最も大きく負に変化する)。
【0076】
スポット光の重心がテストパターンのラインのエッジ位置と一致するのは、時刻II及びIVである。したがって、スポット光とラインとが時刻II及びIVの関係にあることを反射光から検出できれば、エッジ位置を精度よく特定できる。
【0077】
図13(b)は受光素子の出力電圧の一例を、図13(c)は吸収面積(スポット光とテストパターンの重畳面積)の一例を、図13(d)は図13(c)の吸収面積を微分した吸収面積の増加率の一例を、それぞれ示す。なお、図13(d)は、図13(b)の出力波形を微分しても同等の情報が得られる。また、吸収面積は例えば出力電圧から算出されるが、絶対値である必要はないので、図13(c)の吸収面積は所定値から図13(b)の出力電圧を減算することで吸収面積と同様の波形が得られる。
【0078】
上述したように、時刻IIにおいて反射光の減少率が最も大きくなり(重畳している面積が単位時間に最も大きく正に変化する)、時刻IVにおいて反射光の増加率が最も大きくなる(重畳している面積が単位時間に最も大きく負に変化する)。そして、図13(d)に示すように、増加率が増加傾向から減少傾向に変化する点は、時刻IIと一致しており、増加率が減少傾向から増加傾向に変化する点は、時刻IVと一致している。
【0079】
増加傾向から減少傾向又はその逆に変化する点は、平面上の曲線において曲がる方向が変わる点、すなわち変曲点である。以上から、出力信号が変曲点を示せば、スポット光がテストパターンのエッジ位置と一致していることになる。したがって、変曲点が精度よく検出されれば、エッジ位置も精度よく特定できる。
【0080】
〔エッジ位置の特定〕
図14は、エッジ位置の特定方法を説明する図の一例である。図14(a)は、出力電圧の概略図を、図14(b)は出力電圧の拡大図をそれぞれ示す。変曲点のおよその値は、吐出タイミング補正処理実行部526又は開発者が実験的に求めることができる。上述したように、例えば、出力電圧や吸収面積を微分して傾きがゼロに最も近い位置が変曲点となる。
【0081】
この変曲点が含まれるように、出力電圧の上限閾値Vruと下限閾値Vrdが予め定められている。後述するように、CPU301はテストパターンのない領域に対し出力電圧がほぼ同じ一定値(後述する4〔V〕)になるように発光素子402の出力と受光素子403の感度をキャリブレーションする。振幅補正処理により、出力電圧の極大値はほぼ同じ一定値にすることができるので、出力電圧が不安定でも上限閾値Vruと下限閾値Vrdの間に変曲点が含まれている。
【0082】
吐出タイミング補正部616は、出力電圧の立下り部分について、矢示Q1方向に探索して、出力電圧が下限閾値Vrd以下になる点を点P2として記憶する。次に、点P2より矢示Q2方向に探索して、出力電圧が上限閾値Vruを超える点を点P1として記憶する。
【0083】
そして、点P1と点P2の間の複数の出力電圧データを用いて回帰直線L1を算出し、回帰直線L1と上下閾値の中間値Vrcとの交点を算出し交点C1とする。
【0084】
同様にして、吐出タイミング補正部616は、出力電圧の立上がり部分について、矢示Q3方向に探索して、出力電圧が下限閾値Vru以上になる点を点P4として記憶する。次に、点P4より矢示Q4方向に探索して、出力電圧が上限閾値Vrd以下になる点を点P3として記憶する。
【0085】
そして、点P3と点P4の間の複数の出力電圧データを用いて回帰直線L2を算出し、回帰直線L2と上下閾値の中間値Vrcとの交点を算出し交点C2とする。吐出タイミング補正部616は交点C1と交点C2を二本のラインのエッジ位置に特定する。上下閾値の決定プロセスによれば、この交点C1とC2はほぼ変曲点と一致するとしてよい。
【0086】
交点C1と交点C2が二本のラインのエッジ位置なので、交点C1とC2の中央がラインセンタである。
【0087】
この後、吐出タイミング補正部603は、複数のラインのラインセンタを求め、テストパターンの2本のライン間の理想的な距離と、ラインセンタ間の距離との差分を算出する。この差分は、理想的なラインの位置に対する実際のラインの位置のずれなので、着弾位置ずれ量になる。吐出タイミング補正部は、算出した着弾位置ずれ量に基づいて、記録ヘッドから液滴を吐出させるタイミング(液滴吐出タイミング)を補正する補正値を算出し、補正値をヘッド駆動制御部に設定する。これにより、ヘッド駆動制御部は補正された液滴吐出タイミングで記録ヘッドを駆動するので、着弾位置ずれが低減することになる。
【0088】
〔精度低下要因〕
このように、上限閾値と下限閾値の間の出力電圧データを用いてエッジを検出する場合、上限閾値と下限閾値の間に少なくとも変曲点が含まれていなければ、エッジを検出できない。上限閾値と下限閾値(2つのスレッシュホールド)が形成する幅を、以下、「スレッシュ領域」という。スレッシュ領域は出力電圧を単位とするが、出力電圧に対応する吸収面積でも定義できる。
【0089】
図15は、吸収面積と吸収面積の増加率の一例をそれぞれ示す図である。図15のAのスレッシュ領域に変曲点があれば、図12で説明したように、吐出タイミング補正部616はエッジ位置を精度よく検出することができる。
【0090】
これに対し、図15のBのスレッシュ領域に変曲点がある場合、Aのスレッシュ領域から回帰直線を求めても、吐出タイミング補正部616は正確なエッジ位置を検出することはできない。また、変曲点がBのスレッシュ領域にあることが分かっていれば、スレッシュ領域をAからBの位置に移動して吐出タイミング補正部616が回帰直線を求めることもできるが、変曲点の位置が大きくずれることは、出力電圧や吸収面積のカーブが変形している可能性がある。例えば、波形の振幅がばらつくおそれがあり、カーブの傾きが大きくなったスレッシュ領域から、吐出タイミング補正部616が回帰直線を求めると、交点C1、C2も大きくずれる可能性がある。このことは、図15の下図で、Aのスレッシュ領域では頂点付近を含む位置の幅を十分に狭い範囲で推定できるに対し、Bのスレッシュ領域では変曲点(図15ではスレッシュ領域B内にはないが)付近を含む位置の幅を狭い範囲で推定しにくいことによって示されている。
【0091】
したがって、出力電圧の振幅が、変曲点がスレッシュ領域Aに入らないほどに変動した場合、スレッシュ領域Aからエッジ位置を特定したり、変曲点そのものを求めてスレッシュ領域を移動してエッジ位置を決定することは好適ではないことがわかる。
【0092】
そこで、本実施例の補正処理実行部526は、出力電圧の振幅を略一定に補正することで、変曲点がスレッシュ領域に入るようして、エッジ位置を精度よく検出する。
【0093】
図16(a)は振幅が不安定な出力電圧の一例を、図16(b)は振幅の補正後の出力電圧の一例をそれぞれ示す。図16(a)のような出力電圧は一般には得られないが、印字位置ずれセンサ30がトレーシングペーパーのように透過率の高いシート材150に形成されたテストパターンを読み取ると、振幅がバラつくことが知られている。図示するように振幅が不安定になることで、変曲点がスレッシュ領域から外れてしまう。元のスレッシュ領域のまま、補正処理実行部526が交点C1,C2を求めると、変曲点が含まれない出力電圧から交点C1,C2を求めることになるので、エッジ位置は正確でないことになる。スレッシュ領域が変曲点を含むようにスレッシュ領域を移動させると、移動する前の交点C1,C2の求め方でエッジ位置を精度よく決定できるという保証がない。
【0094】
これに対し、図16(b)に示すように、振幅の極大値を揃えることで、変曲点をスレッシュ領域に含ませること、及び、スレッシュ領域の中心付近に集中させることが可能になる。これにより、図15のAのスレッシュ領域と同様、吐出タイミング補正部616は回帰直線を求めるという簡単な近似で、精度よくエッジ位置を検出することができる。
【0095】
なお、本実施例ではトレーシングペーパーを例に説明するが、透過率の高いシート材150であれば同様の課題が生じる。例えば、トレーシングペーパー以外の普通紙でも十分に紙が薄い場合には本実施例のエッジ位置の検出方法が有効である。したがって、本実施例の液滴吐出タイミングの補正処理は特定の材質や種類、厚みを有するシート材150に限定されない。また、厚みが十分にある普通紙に適用することもできる。
【0096】
〔スポット光の径とテストパターンの線幅〕
図12ではスポット径d = テストパターンのライン幅Lとしたが、「スポット径d > テストパターンのライン幅L」 又は、「スポット径d < テストパターンのライン幅L」でも、エッジ位置は検出可能である。
【0097】
図17(a)は、スポット径d > テストパターンのライン幅Lの関係にあるスポット光とテストパターンの一例を示す。ここでは「d/2<L<d」であるとする。図17(b)は受光素子の出力電圧の一例を、図17(c)は吸収面積の一例を、図17(d)は図17(c)の吸収面積を微分した吸収面積の増加率の一例を、それぞれ示す。
【0098】
スポット径d > テストパターンのライン幅L であることは、スポット光とテストパターンが完全には重畳しないことを意味するので、図17(d)の吸収面積の増加率から明らかなように、スポット光の右端がテストパターンを乗り越えた時点で吸収面積が減少に転じ、増加率が急激に減少する。
【0099】
しかしながら、本実施例では変曲点の近傍の出力電圧データが得られていれば、交点C1、C2を求めることができるので、スポット光dはd/2<Lであればよい。すなわち、スポット径d が テストパターンのライン幅Lに比べて極端に大きくなければよい。
【0100】
図18(a)は、スポット径d < テストパターンのライン幅Lの関係にあるスポット光とテストパターンの一例を示す。図18(b)は受光素子の出力電圧の一例を、図17(c)は吸収面積の一例を、図18(d)は図18(c)の吸収面積を微分した吸収面積の増加率の一例を、それぞれ示す。
【0101】
スポット径d < テストパターンのライン幅L であることは、スポット光とテストパターンが完全に重畳した状態が継続することを意味するので、図18(b)(c)に示すように出力電圧や吸収面積が一定の領域が生じる。また、図18(d)に示すように、吸収面積の増加率がゼロとなる領域が生じる。その後、スポット光の右端がテストパターンを乗り越えた時点で吸収面積が減少に転じ、増加率が緩やかに減少する(減少率が増加)。
【0102】
このような場合、図12と同様に、変曲点近傍の出力電圧データが十分に得られるので、吐出タイミング補正部616は十分に交点C1、C2を求めることができる。
【0103】
〔ライン方式の画像形成装置の場合〕
本実施例では、図5,6のシリアル方式の画像形成装置100を例にして説明したが、ライン方式の画像形成装置100においても同様の方法で着弾位置ずれ量を補正できる。ライン方式の画像形成装置100について簡単に説明する。
【0104】
図19は、ライン方式の画像形成装置100のヘッドの配置とテストパターンを模式的に説明する図の一例である。ヘッド固定ブラケット160はシート材搬送方向と直交する主走査方向の端から端まで掛け渡されるように固定されている。ヘッド固定ブラケット160には、上流側からKCMYのインクの記録ヘッド180がそれぞれ主走査方向の全域に配置されている。各色の記録ヘッド180は端部が重複するように千鳥状に配置されている。こうすることで、記録ヘッド180の端部でも十分な解像度が得られる液滴が吐出されるので、主走査方向の全域に1つの記録ヘッド180を配置する必要がなくコスト増を抑制できる。なお、各色毎に主走査方向の全域に1つの記録ヘッド180を配置してもよいし、各色の記録ヘッド180の主走査方向の重複領域をより長くしてもよい。
【0105】
ヘッド固定ブラケット160よりも下流にはセンサ固定ブラケット170が、シート材搬送方向と直交する主走査方向の端から端まで掛け渡されるように固定されている。センサ固定ブラケット170には、印字位置ずれセンサ30がヘッドの数だけ配置されている。すなわち、1つの印字位置ずれセンサ30は、1つの記録ヘッド180と、主走査方向に少なくとも一部が重複するように配置されている。また、1つの印字位置ずれセンサ30は、1対の発光素子402と受光素子403を有する。発光素子402と受光素子403は、主走査方向にほぼ並行に並列配置されている。
【0106】
このような形態の画像形成装置100は、テストパターンを構成する各ラインを、ラインの長手方向が主走査方向と並行になるように形成する。Kを基準に他の色の液滴の着弾位置ずれを補正する場合、画像形成装置100は、KのラインとMのライン、KのラインとCのライン、KのラインとYのラインを形成する。そして、シリアル方式の画像形成装置100と同様に、CMYKのテストパターンのエッジ位置を検出し、その位置ずれ量から液滴吐出タイミングを補正する。
【0107】
以上のように、ライン方式の画像形成装置100においても、適切に印字位置ずれセンサ30を配置することで着弾位置ずれを補正できる。
【0108】
〔信号補正〕
以下、本実施例の出力電圧の信号補正について説明する。
図20(a)は、補正前の受光素子の出力電圧の一例を、図20(b)は振幅補正された出力電圧の一例をそれぞれ示す。
【0109】
図20(a)はトレーシングペーパーのような透過率の高いシート材150に印字されたテストパターンを受光素子が読み取った場合の出力電圧の波形である。用紙自体の反射光の強度が変動するため、図20(a)のように波形の極大値(地肌読み取り部分)及び極小値(パターン読み取り部分)が不揃いで変動が大きい。
【0110】
図20(b)は、パターン非依存分除外処理及び振幅補正処理後の出力電圧の波形の一例である。本実施例の信号補正により、テストパターンに依存しない受光分の電圧が排除され、また、極大値及び極小値のバラツキが低減された、安定した出力データが得られる。このため、以降の着弾位置ずれ量を高精度に算出し、着弾位置ずれを高精度に補正することができる。
【0111】
本実施例の信号補正は、
・パターン非依存分除外処理
・振幅補正処理
の2つの補正を有している。
【0112】
また、信号補正するために、前処理が必要とされる。よって、処理手順は以下のようになる。
(1)前処理
(2)信号補正
(2-1)パターン非依存分除外処理、(2-2)振幅補正処理
<前処理>
以下、前処理について説明する。前処理は前処理Aと前処理Bに分けることができる。前処理Aは、テストパターン形成前の白紙状態(バックグラウンド)の出力電圧データに対する以下の処理により構成される。
・前処理A
(i) n回スキャン
(ii) 同期処理
(iii) 平均化
(iv) フィルタ処理
前処理Bは、テストパターン形成後の出力電圧データに対する以下の処理により構成される。
・前処理B
(i) n回スキャン
(ii) 同期処理
(iii) 平均化
<前処理A>
・前処理A-(i)
図21は、A-(i)のn回スキャンの測定結果の一例を示す図である。n回スキャンに先立ち、n回スキャン部はシート材(ex、普通紙、トレーシングペーパー)に対するセンサキャリブレーションを行う。n回スキャン部は、受光素子が検出し最終的にA/D変換回路523が変換した反射光の出力電圧が、ある一定値になるようにCPU301に要求する。CPU301は、出力電圧がある範囲に入るようにフィードバック制御する。例えば、出力電圧が4.4〔V〕より大きければ発光制御手段511の発光量を低減し、出力電圧が4.0〔V〕未満であれば発光制御手段511の発光量を増大する。図21(a)(b)に示すように、センサキャリブレーションにより、出力電圧は4.0〜4.4〔V〕の範囲に入るようになる。なお、目標値を4.0〜4.4Vに設定したPI制御やPID制御によりセンサキャリブレーションしてもよい。
【0113】
この出力電圧は、上記のVsg2(テストパターンが形成されていない領域の出力電圧)である。n回スキャン部は図21(a)(b)のような出力電圧データをn個取得する。
【0114】
・前処理A-(ii)
図22はA-(ii)の同期処理を説明する図の一例である。平均化部はn回スキャン部が取得したn個の出力電圧データの平均を算出する。出力電圧データはスポット光がシート材150以外を走査しても検出されるが、必要なのはシート材150から得られた出力電圧のみである。このため、同期化部は、n個の出力電圧データの始まりをシート材150の紙端に揃える。
【0115】
n回の出力電圧データを紙端から始めるため、同期化部は出力電圧データが閾値を最初に越えたところを、シート材150の紙端として検出する。平均化されるための出力電圧データは、閾値を超えた以降のデータである(閾値を超えた出力電圧データを先頭1個目のデータとして扱う)。閾値はセンサキャリブレーションの目標値を4.0〔V〕とした場合、それよりもやや小さい3.5〜3.9〔V〕程度である。
【0116】
このような同期方法の他、エンコーダセンサ42が検出した主走査方向の位置情報に出力電圧データを対応づけて記憶しておき、位置情報を一致させてn個の出力電圧データの同期を取ってもよい。
【0117】
・前処理A-(iii)
次に、n個の出力電圧データはシート材150の紙端を走査方向の基準位置(位置がゼロ)として、位置毎にn個の出力電圧データを有する。この位置は、エンコーダセンサが検出するキャリッジ5の位置であるが、スポット光の重心位置と1対1に対応するので、以下、スポット光の重心位置として説明する。すなわち、平均化部は重心位置毎にn個の出力電圧データの平均を算出する。
【0118】
・前処理A-(iv)
図23は、フィルタ処理を説明する図の一例である。フィルタ処理部は、平均化部が平均した重心位置毎の出力電圧データの平均値をフィルタ処理する。具体的には、着目している出力電圧データの前後m個(着目しているデータを含めm個とする)のデータを抽出して、平均を算出する。これにより、測定ノイズが低減され、同期処理で同期しきれなかった出力電圧データのズレを低減することができる。
【0119】
図23では、実線の波形がフィルタ処理前の出力電圧データであり、点線の波形がフィルタ処理後の出力電圧データである。フィルタ処理前の出力電圧データはA/D変換回路523の分解能の影響を受け階段状の変動を示すが、フィルタ処理によりなだらかになることがわかる。
【0120】
<前処理B>
・前処理B-(i)
図24は、B-(i)のn回スキャンを説明する図の一例である。図24(a)では、A-(i)のn回スキャンが行われたシート材150に色の異なるラインを含むテストパターンが形成されている。色の数は2色以上であればよいが、一般の画像形成装置ではCMYKの4色、又は、インク種類が多い画像形成装置では6〜9色のインクを有する。テストパターンの色の数は何色でもよい。
【0121】
図24(b)はテストパターンが形成されたシート材150からの反射光を受光素子が受光した際の出力電圧データの波形を示す。n回スキャン部はこのようなデータをn回取得する。
【0122】
・前処理B-(ii)
図25は同期処理を説明する図の一例である。上段は同期前の出力電圧データを、下段は同期後の出力電圧データをそれぞれ模式的に示す。テストデータの形成前と異なりテストデータの形成後は、n回の出力電圧データの極大値同士、及び、極小値同士を一致させることで、エッジ位置を揃えることができる。図25のような波形データの極大値同士、及び、極小値同士を一致させる(完全に一致させることは困難であるが)には、いくつか方法がある。
【0123】
比較的簡単な方法は、A−(ii)と同様に、n個の出力電圧データの始まりをシート材150の紙端に揃えることである。テストパターンが紙端に対し同じ位置に形成されていれば、複数の出力電圧データの極大値及び極小値も同じ位置に揃えることができる。
【0124】
またA−(ii)と同様に、エンコーダセンサ42が検出した主走査方向の位置情報に出力電圧データを対応づけて記憶しておき、位置情報を一致させてn個の出力電圧データの同期を取ってもよい。
【0125】
また、同期化部は、n個の出力電圧データの位置をずらしながら、n個の出力電圧データのズレが最小になるようにn個の出力電圧データの位置を決定することもできる。
【0126】
・前処理B-(iii)
平均化部は同期化したn個の出力電圧データの平均を算出する。n個の出力電圧データは、位置毎にn個の出力電圧データが存在するので、平均化部は重心位置毎にn個の出力電圧データの平均を算出する。
【0127】
<信号補正処理>
信号補正の前に同期処理部613が同期処理を行う。同期処理部613は、A-(i)〜(iv)の前処理が施されたテストパターン印字前の出力電圧データと、B-(i)〜(iii)の前処理が施されたテストパターン印字後の出力電圧データの紙端を揃える。
【0128】
揃え方はA-(ii)と同様に、閾値を最初に越えた出力電圧データを先頭1個目のデータとすることで行う。以下、説明のため、テストパターン印字前の出力電圧データを白紙測定データ(Vsg2)、テストパターン印字後の出力電圧データをパターン測定データ(Vsg1)という。
【0129】
以下、信号補正処理について説明する。
【0130】
(2-1)パターン非依存分除外処理
パターン非依存分除外処理は、Vsg(=Vs+Vp)からテストパターンに吸収されない反射分を低減する処理を行う。具体的には、Vsgから、色毎に異なるVpを減じる。これにより、シート材150以外に起因する出力電圧を排除することができる。
【0131】
図26は、VsgとVpを説明する図の一例である。上記のようにテストパターンの有無に関係なくVpはほぼ一定であるが、厳密にVpを求めることは困難なので、スポット光がテストパターンを走査した際の出力電圧Vsgの極小値をVpとする。また、極小値は色の影響を受けるので、極小値Vpは色毎に定義する。説明を容易にするため、色の数は黒とマゼンタの2色として、極小値はそれぞれVpK、VpMとする。
【0132】
VpKとVpMの決定方法には以下のような方法がある。
a)予め各色のテストパターンの出力電圧を実験的に取得しておき極小値を決定しておく
b)実際に複数色のテストパターンの出力電圧を取得しておき、そのデータから色毎の極小値を抽出しておく
図27(a)は、色毎の極小値の一例を示す図である。実験的に得られた各色の極小値が登録されている。パターン非依存分除外処理部614にとって、テストパターンに含まれている色は不明なので、ユーザがテストパターンに使用されている色とその順番を画像形成装置に入力しておく。
【0133】
なお、色毎の極小値は、紙種の影響を受ける場合がある。例えば、普通紙、トレーシングペーパー、厚紙、コーティング紙等により、色毎に極小値の大きさに影響が生じる場合がある。このため、図27(a)に示すように、色毎の極小値は、用紙種類毎に記憶しておくことが好ましい。また、紙種でなく紙のブランド名に応じて極小値を登録しておいてもよい。
【0134】
b)の極小値を動的に求める場合、パターン非依存分除外処理部614は、まず、色の違いに拘わらず走査順に全ての極小値を抽出する。
図27(b)は、極小値と走査位置等の関係を示す図の一例である。極小値が抽出された走査位置を極小値と対応づけておく。図示するようにテストパターンを構成する色の順に極小値と走査位置が検出される。なお、走査位置は、最初の極小値の走査位置をゼロとする相対値としているが、紙端からの絶対値を用いてもよい。
【0135】
図28は、極小値の求め方の一例を示す図である。極小値をy軸に投影した場合、色毎に極小値はある範囲内に集中する。図のように黒とマゼンタしかなければ、2つのグループに集中するので、極小値を2つのグループのどちらかに分類し、平均などを求めれば色毎の極小値が得られる。
【0136】
このため、パターン非依存分除外処理部614は、極小値の全ての組み合わせで極小値同士の差を求める。差が所定値内の極小値を1つのグループとすることで、同じ色から得られた極小値の集合が得られる。1つのグループへの分類が困難で、複数のグループに含まれうる極小値は、消去する。よって、グループ毎に、例えば、極小値の平均、中央値、最も大きい極小値をその色(グループ)のVpとすることができる。
【0137】
なお、この場合、極小値がどの色に対応するかは不明だが、極小値の大きさから予め既知の色情報に対応づけることもできる。
【0138】
次に、パターン非依存分除外処理部614は、以下を算出する。
・白紙測定データVsg2−Vp
・パターン測定データVsg1−Vp
図29(a)はパターン測定データの出力波形の一例を、図29(b)はパターン測定データからVpを減じた出力波形の一例を、それぞれ示す。図29(a)のパターン測定データには、黒のラインからの反射光、マゼンタのラインからの反射光、及び、ライン間の白紙からの反射光を含む。したがって、パターン測定データからVpを減じる場合、光の走査位置に応じて、VpM又はVpKを減じる必要がある。
【0139】
a)とb)のいずれの場合も、どの走査位置でVpMとVpKを切り換えるかを決定する必要がある。本実施例では、パターン測定データが極小値を示した走査位置から次の極小値の走査位置までの中点で、VpMとVpKを切り換える。図29(a)では両矢印で示す範囲毎にVpMとVpKを切り換える。
【0140】
したがって、図27(b)の例では、パターン非依存分除外処理部614は、走査位置がゼロから50までは約1の値を減じて、走査位置が50〜150までは約2の値を減じて、走査位置がゼロから150〜250までは約1の値を減じる。
【0141】
図29(b)に示すように、VpM又はVpKを減じることで、黒のラインに対応した極小値、及び、マゼンタのラインに対応した極小値はそれぞれほぼゼロになる。パターン測定データの途中でVpが切り替わるので、Vpが減じられたパターン測定データは微分可能とはならない(滑らかなデータとならない)。しかし、エッジ位置の特定には変曲点を使うので、全体的な波形はエッジ位置の特定に影響しない。
【0142】
図29(c)は白紙測定データの出力波形の一例を、図29(d)は白紙測定データからVpを減じた出力波形の一例を、それぞれ示す。白紙測定データからもパターン非依存分を除外するため、パターン非依存分除外処理部614は白紙測定データから、走査位置に応じて、VpM又はVpKを減じる。
【0143】
(2-2)振幅補正処理
続いて、説明のため、以下のように置き換える。
白紙測定データx´=白紙測定データVsg1−Vp
パターン測定データy´=パターン測定データVsg2−Vp
演算対象データzを求める際の考え方について説明する。
シート材150に画像が何も形成されていない状態でも、シート材150の反射光や反射率は、透過性や結晶性といったシート材150の特性で変動する。また、シート材150の指向性の高さにより程度に差はあるが、シート材150の凹凸やシート材150を支えるプラテン等の傾きが一定でないといった要因で、光軸がずれることによる反射率の変動もある。
【0144】
さらに、受光素子とシート材150の距離が一定でなかったり、プラテン40の保持機構や、様々な事象を要因とする振動、電源変動や制御的な相性等、シート材150を走査するスポット光の位置に関係する反射率の変動要因は枚挙にいとまがない。
【0145】
しかし、変動要因は様々であるが、どのような要因であっても区別することなく、反射率の変動を位置または時間の関数として表現できる。この反射率の変化をバックグラウンド変動と呼ぶことにする。
【0146】
以下、説明を容易にするため、以下のイメージしやすい例を用いて説明する。
・位置または時間の関数を、時間の関数とする
・バックグラウンド変動を時間の関数 Kbgとする
・非印字媒体を白紙の紙とする
・受光素子で検知したい変化を、紙に吐出されたインクの位置とする
・有効数字確保や演算上、適当な係数を最大電位 Vmaxとする
・センサで測定する値を電圧値Vとする
まず、インクの色素が光を吸収するメカニズムを考える。インクに入射してくる光子は、色素固有のエネルギー状態を下回った時に吸収される(光のエネルギーは振動数に比例し可視光であれば振動数により色が変わることから理解される)。色素のエネルギー状態は外界からエネルギーを加えることで変化させることもできるが、工業的には、特に意図的な制御を行わない限り、一定とみなせることが多い。
【0147】
ここでは一定とみなしうる場合を考え、色素のエネルギー状態を色素が光を取り込まない確率と考え、この一定値をKi(<1)とする。入射光を1とすると反射光として帰還するのを妨げる確率(反射光率)は(1-Ki)となる。例えば、Kiを0.3とすれば、0.7の光は反射光として帰還できない。
【0148】
本実施例の受光素子が検出したいのは、位置毎に量の異なる反射光率(1-Ki)の変化である。よって、反射光率(1-Ki)を定量化するためには、位置の関数(1-Ki)と、測定電圧が比例関係にあることが望ましい。
【0149】
つまり、測定電圧をVとしたとき、
V ∝ (1-Ki)
と仮定すれば、測定電圧Vは反射光率に比例する。
【0150】
しかし、実際にはバックグラウンド変動があるため、
V ∝ Kbg × (1-Ki)
となる。
【0151】
ここで改めて、処理したい変動(1-Ki)をZとおくと、
V ∝ Kbg × Z
⇔ Z ∝ ( 1 / Kbg ) × V となる。
Vmax を適当に定めることで、これは
Z = ( Vmax / Kbg ) × V …(1)
となる。
【0152】
この式(1)は、時間関数KbgとVが同じ時間の関数であれば、バックグラウンド変動が含まれる測定電圧を、あたかもバックグラウンド変動が無いかのように扱えるよう補正できることを示している。
【0153】
しかし、現実的にはKbgの性質上、KbgとVを同時に測定することができないので、KbgとVをそれぞれ測定し、時間軸を合わせることで、同じ位置のKbgとVを測定できたことになる。この処理は、信号補正処理の同期処理が相当する。
【0154】
式(1)の各変数を、本実施例で説明したデータで表すと、以下のように対応する。
Kbg = y´
V = x´
Z = Vsg =z
Vmax = Vsgの最大値(例えば4V)=Vmax−Vp
実際にはZは、最終的な演算対象のデータとなるので、実測されているVsgと一致するわけではないが、Vsgの代わりに得られるデータがZであるので、「Z=Vsg」とし、さらに「Z=z」とする。また、Vmaxは適宜定めることができるので、zが演算対象データであることからVsgの最大値、すなわちVsgの理想的な振幅とする。なお、VmaxにはVpが含まれているので、Vmax = Vmax−Vpと置き直している。以上から式(1)を書き直すと次式のようになる。
【0155】
z = Vmax ×x´/y´ …(2)
図30は、x´とy´から得られる演算対象データzを模式的に説明する図の一例である。図30(a)は異なる色を含むテストパターンのパターン測定データと白紙測定データである。図30(c)は、説明のために示した単一色のテストパターンのパターン測定データと白紙測定データである。図30(a)は、図29(b)と(d)を重ねたものである。
【0156】
図30(a)(c)のいずれの場合も、パターン測定データと白紙測定データの極大値がほぼ一致している。すなわち、スポット光が、テストパターンがない場所を照射するとx´とy´が等しくなり、テストパターンがある場所を照射するとx´が略ゼロとなる。このことは、x´/y´が、ある位置の変動を含んだx´がy´を基準にした場合にどのくらいの比率で含まれるかを表すこと、すなわち、バックグラウンド変動を除去した際の白紙測定データとパターン測定データの比を表すと考えられる。
【0157】
したがって、この比にVmaxを乗じれば、バックグラウンド変動が除去され、テストパターン部で極小に、無地部で極大になる振幅が一定の演算対象データzが得られることが分かる。よって、式(2)に従って、x´/y´を算出することで、両者に含まれるバックグラウンド変動を消去することができる。
【0158】
以上の考え方に基づき、振幅補正処理部615は、式(2)の演算を行う。x´とy´はすでに求められており、Vmaxは予め定められた固定値(例えば4〔V〕)からVpKを減じた値、又は、x´/y´のピーク値の平均などである。したがって、振幅補正処理部615は図30(b)(d)のような振幅が一定の演算対象データzを得ることができる。この後、吐出タイミング補正部616は上述したように交点C1、C2をエッジ位置に決定することができる。
【0159】
なお、固定値Vmaxは固定されている必要はなく、極大値と相関するVsg2の平均値や中央値などでもよい。印字前前処理部611がテストパターン形成前に行ったn回スキャンのVsg2はテストパターン形成後の出力電圧の最大値となるので、固定値Vmaxとみなすことができる。
【0160】
〔動作手順〕
図31は、補正処理実行部526が信号補正する手順の一例を示すフローチャート図である。
【0161】
まず、CPU301が、着弾位置ずれ補正を開始するよう主制御部310に指示する。この指示により、主制御部310は副走査駆動部314を介して副走査モータ132を駆動しシート材150を記録ヘッド21の真下まで搬送させる(S1)。
【0162】
次に、主制御部310は主走査駆動部313を介して主走査モータ27を駆動して、キャリッジ5をシート材150上に移動し、シート材150上の特定の箇所にて発光素子と受光素子のキャリブレーションを実施する(S2)。
【0163】
図32(a)はS2の処理を説明するフローチャート図の一例である。キャリブレーションは、発光素子の出力電圧が所望の範囲内(具体的には4V±0.4〔V〕の範囲内に調整している。)になるように発光素子の光量を調整する処理である。
【0164】
CPU301によって発光制御手段511に印字位置ずれセンサ30の発光素子402を駆動するためのPWM値が設定され、平滑回路512で平滑化された後、駆動回路513に与えられることで、駆動回路513が発光素子402を発光駆動する(S21)。
【0165】
印字位置ずれセンサ30の受光素子403が検出した強度信号は共有メモリ525に記憶され、CPU301が所望の電圧値になっているかチェックする(S22)。
【0166】
所望の電圧値になっていれば(S22のYes)、図32(a)の処理は終了する。所望の電圧値になっていなければ(S22のNo)、CPU301はPWM値を変更することで光量の再調整を行う(S23)。
【0167】
次に、印字前前処理部611のn回スキャン部は、キャリッジ5をホームポジションまで移動し、テストパターン形成前のn回スキャンを行い、n個の出力電圧データを共有メモリ525に記憶する(S3a)。
【0168】
図32(b)はS3の処理を説明するフローチャート図の一例である。まず、CPU301がセンサ光源を点灯させる(S31)。
【0169】
次に、光電変換回路521等が出力電圧データの取り込みを開始する(S32)。取り込みを開始したら、主走査駆動部313は主走査駆動モータ27によりキャリッジ5を移動させていく(S33)。つまり、キャリッジ5が移動ながら、光電変換回路521等が出力電圧データを取り込む。データのサンプリングは例えば20kHz(50μs間隔)である。
【0170】
キャリッジ5が画像形成装置の端部に到達すると、光電変換回路521等は出力電圧データの取り込みを終了する(S34)。主制御部310は一連の出力電圧データを共有メモリ525に蓄積する。主制御部310はキャリッジ5をホームポジションで停止させる(S35)。
【0171】
CPU301は所定の回数、出力電圧データの読み取りをn回完了したか否か確認し、完了している場合は次のS5処理に進み、完了していない場合はS3の出力電圧データの読み取り処理を再度行う(S4)。
【0172】
次に、印字前前処理部611は共有メモリ525に蓄積された所定の回数読み取ったテストパターン形成前の出力電圧データを読み出して前処理を実行し、そのデータをRAM303に保存する(S5)。S5の前処理の内容は図32(c)に示されるがすでに説明したので省略する。
【0173】
次に、主制御部310は、シート材150の副走査位置はそのままで紙送りせずに、主走査制御部313が主走査駆動モータ27を介してキャリッジ5を移動させると共に、ヘッド駆動制御部312が記録ヘッド21〜24を駆動して着弾位置ずれ調整用のテストパターンを形成する(S6)。
【0174】
次に、印字後前処理部612のn回スキャン部は、キャリッジ5をホームポジションまで移動し、テストパターン形成後のn回スキャンを行い、n個の出力電圧データを共有メモリ525に記憶する(S3b)。処理内容は図32(b)と同様である。
【0175】
CPU301は所定の回数、出力電圧データの読み取りをn回完了したか否か確認し、完了している場合は次のS8の処理に進み、完了していない場合はS3のパターンデータ読み取り処理を再度行う(S7)。
【0176】
次に、印字後前処理部612は共有メモリ525に蓄積された所定の回数読み取った出力電圧データを読み出して前処理を実施し、そのデータをRAM303に保存する(S8)。S8の前処理の内容は図32(d)に示されるがすでに説明したので省略する。
【0177】
次に、同期処理部613は前処理が施された白紙測定データとパターン測定データをRAM303より読み出して、同期化処理によって位置あわせを行う(S9)。
【0178】
次に、パターン非依存分除外処理部614は、パターン測定データの極小値からVpK、VpMを求め、白紙測定データとパターン測定データからそれぞれVpK、VpMを減算する(S10)。
【0179】
次に、振幅補正処理部615は、VpK、VpMが減算された後の白紙測定データと、パターン測定データに対し式(2)を用いて振幅補正処理を行い演算対象データzを生成する(S11)。これにより、変曲点がスレッシュ領域内に揃った出力電圧データが得られた。吐出タイミング補正部616は、演算対象データzによりエッジ位置を検出し、液滴の着弾位置ずれを補正する(S12)。すなわち、吐出タイミング補正部616は下限閾値Vrdと上限閾値Vruから交点C1,C2を求める。交点C1とC2の中点がテストパターンを構成するラインの位置である。吐出タイミング補正部616は各ラインの距離を適正距離と比較して着弾位置ずれ量を算出し、着弾位置ずれがなくなるように記録ヘッド21を駆動するときの液滴吐出タイミングの補正量を算出する。
【0180】
以上説明したように、本実施例の画像形成装置100は、テストパターンに依存しない反射光を排除し、さらに出力電圧の振幅がほぼ一定になるように補正する。これにより、変曲点の位置をスレッシュ領域内に揃えることができるので、エッジ位置を精度よく求めることができ、液滴の着弾位置ずれを精度よく補正することができる。また、テストパターンが複数の色で構成されていても、出力電圧から色毎に異なるVpを減じることで、テストパターンが複数の色を有していても、液滴の着弾位置ずれを精度よく補正することができる。
【実施例2】
【0181】
実施例1では出力電圧から色毎に異なるVpを減じたが、本実施例では波形を利用して減算量を決定する画像形成装置について説明する。なお、信号補正の2つの処理、パターン非依存分除外処理、振幅補正処理のうち、振幅補正処理は実施例1と同様であり。パターン非依存分除外処理に先だって行われる前処理も実施例1と同様である。
【0182】
以下、パターン非依存分除外処理について説明する。
【0183】
(2-1)パターン非依存分除外処理
パターン非依存分除外処理は、Vsg(=Vs+Vp)からテストパターンに吸収されない反射分を低減する処理を行う。具体的には、色に関係なく最小値毎にVpに相当するVwを決定しVsgから減じる。これにより、インクの色という情報を用いることなく、シート材150以外に起因する出力電圧を排除することができる。
【0184】
本実施例ではVpの変わりにVwaveform (以下、Vwという)を定義する。Vwは色と関係なく定義されるが、Vpと同様に、白紙測定データとパターン測定データから減じられる減算量となる。
Vw … 印字箇所を検知するための出力変動に関係無い出力値
パターン非依存分除外処理部614は、出力電圧の波形の極小値毎にVwを決定し、走査位置に応じてVwを切り替えて、白紙測定データとパターン測定データのそれぞれから取り除く。隣接した2つの極大値の間にある極小値が1つのVwとなり、Vwは隣接した極大値から極大値までの走査位置の出力電圧に対応づけられる。
【0185】
図33はブラックとマゼンタのテストパターンとパターン測定データの一例を示す図である。実施例1と同様に、波形が現れ、波形によって極小値が変わってくる。なお、実際のテストパターンのライン数は4本より多い。
【0186】
パターン非依存分除外処理部614は、出力電圧の極小値を決定する。極小値がVwとなる。Vwの値の決定の方法としては、例えば、パターン測定データを取得する際に、波形を追って極小値を決定する。パターン測定データの取得と並行して極小値を決定することで、決定のためだけにパターン測定データを読み出す処理が不要になる。パターン測定データを取得した後に極小値を決定することもできる。
【0187】
図34は図33のパターン測定データから決定されるVwを示す図の一例である。図では4つのVw(Vw1〜Vw4)が検出されている。これらはブラックとマゼンタのラインに対応した極小値だが、パターン非依存分除外処理部614は色の違いを意識する必要はない。
【0188】
続いて、極小値(及び極大値も)の決定の方法を説明する。なお、極小値はその前後の出力電圧において最小値である必要はなく、ほぼ最小値(例えば、最小値から数%の範囲内)と見なせれば極小値と扱うことができる。極大値についても同様である。
【0189】
(i)抽出方法1
この方法では出力波形を微分した波形を求める。微分することで、極小値及び極大値を判別しやすくなる。
【0190】
図35は出力波形(パターン測定データ)が微分された微分波形の一例を示す図である。パターン非依存分除外処理部614は微分波形を、2つの閾値TH1とTH2と比較する。パターン測定データが極小値となる時、傾きがゼロなので、微分波形の値がゼロになる。これは、パターン測定データが極大値となる時も同様である。したがって、パターン測定データの極小値と極大値は、微分波形が負側の閾値TH1と正側のTH2の間に含まれる範囲に存在する。また、パターン測定データの傾きは極小値を挟んで負値から正値に変化し、極大値を挟んで正値から負値に変化する。
【0191】
これらを利用して、パターン非依存分除外処理部614は、微分波形が閾値TH1を下回った場合に、極小値を探索するモードになる(極小値の探索を開始する)。そして、微分波形のデータが最初にゼロになった時の出力電圧を極小値として記憶しておく。完全にゼロにならない場合があるので、ゼロと見なせる値であればゼロと判断する。
【0192】
次に、微分波形が閾値TH2よりも大きくなった場合に、極大値を探索するモードになる(極大値の探索を開始する)。そして、微分波形のデータが最初にゼロになった時の出力電圧を極大値として記憶しておく。極大値と極小値が得られた時の、印字位置ずれセンサ30の主走査方向の位置はエンコーダセンサ42により特定されている。
【0193】
このように極小値、極大値を決定することで、極小値、極大値を精度よく決定できる。閾値TH1、TH2は出力電圧の大きさにはあまり影響されないので実験的に予め定めておくことができる。
【0194】
なお、微分波形が閾値TH1を上回った場合に、極小値を探索するモードになってもよいし、微分波形が閾値TH2を下回った場合に、極大値を探索するモードになってもよい。また、微分波形の値が最初にゼロになった時の出力電圧を極小値、極大値とするのでなく、ゼロになった後、ゼロでなくなるまでの出力電圧を記憶しておき、その平均や中央値を極小値、極大値としてもよい。
【0195】
以上の処理を繰り返すことで、極小値、極大値、及び、極小値、極大値が検知される走査位置を特定することができる。なお、ラインが等間隔であれば、極小値から次の極小値までの距離の半分の走査位置に極大値があるので、極大値を検知しなくてもよい。
【0196】
微分波形はパターン測定データの取得に続いてリアルタイムに求められるので、パターン測定データの1データと1対1に関連づけることができるが、パターン測定データの各データと微分波形にそれぞれ番号を付しておき、番号で関連づけてもよい。すなわち、パターン測定データと微分波形の関連づけはどのように行ってもよい。
【0197】
(ii)抽出方法2
この方法では出力波形を微分した微分波形を求めず、閾値を1つのみ使用してパターン測定データから極小値、極大値を決定する。
【0198】
図36はパターン測定データと閾値TH1を示す図の一例である。閾値TH1はパターン測定データの最大値の半分程度である。閾値TH1よりも下側に極小値があり、上側に極大値がある。
【0199】
パターン非依存分除外処理部614は、パターン測定データを監視して、閾値TH1より下に来た場合に極小値を探索するモードになる(極小値の探索を開始する)。そして、極小値を探索するモードになった直後に1つのデータを保持し、次に取得されるデータと比較する。比較の結果、より小さい値が取得された場合に保持するデータを最も新しい(小さい)データで置き換える。この比較とデータの置き換えを繰り返す。
【0200】
パターン測定データが閾値TH1まで達すると、保持しているデータは、閾値TH1を下回ってから再度TH1に達するまでの間の最小値であるはずなので、それを極小値として決定する。
【0201】
極大値の場合も同様である。パターン非依存分除外処理部614は、パターン測定データを監視して、閾値TH2を超えた場合に極大値を探索するモードになる(極大値の探索を開始する)。そして、極大値を探索するモードになった直後に1つのデータを保持し、次に取得されるデータと比較する。比較の結果、より大きい値が取得された場合に保持するデータを最も新しい(大きい)データで置き換える。この比較とデータの置き換えを繰り返す。
【0202】
パターン測定データが閾値TH1まで達すると、保持しているデータは、閾値TH1を超えてから再度TH1に降下するまでの間の最大値であるはずなので、それを極大値として決定する。以上の処理を繰り返す事で、パターン測定データの極小値及び極大値を決定していくことができる。
【0203】
パターン非依存分除外処理部614は、抽出方法(i)(ii)のような方法で極大値、極小値を決定すると、Vw1〜Vw4の適用範囲を決定する。
【0204】
例えば、図34から明らかなように、極小値を挟む前後の所定範囲が1ライン分のパターン測定データである。または、極大値から次の極大値までに1つの極小値が含まれ、その範囲が1ライン分のパターン測定データである。
【0205】
図37は、極小値、極大値と走査位置等の関係を示す図の一例である。極小値、極大値が、抽出された走査位置と対応づけられている。走査位置については実施例1と同様である。パターン非依存分除外処理部614は、最初の極大値が得られる走査位置(100)までのパターン測定データに対しVw1を減算量に決定し、走査位置(100)からその次の極大値が得られる走査位置(200)までのパターン測定データに対しVw2を減算量に決定し、走査位置(200)からその次の極大値が得られる走査位置(300)までのパターン測定データに対しVw3を減算量に決定し、走査位置(300)からその次の極大値が得られる走査位置(400)までのパターン測定データに対しVw4を減算量に決定する。このように決定したVw1〜Vw4を白紙測定データ及びパターン測定データから減じることができる。
【0206】
図38(a)はパターン測定データの出力波形の一例を示す。パターン非依存分除外処理部614は、パターン測定データから走査位置に応じてVw1〜Vw4を減じる。図38(b)はパターン測定データからVw1〜Vw4を減じた後の出力波形の一例を示す。
【0207】
図38(b)に示すように、Vw1〜Vw4を減じることで、パターン測定データの4つの極小値はそれぞれほぼゼロになる。パターン測定データの途中で減じられる値Vwが切り替わるので、パターン測定データの波形はVwが切り替わる位置で急激に変化する。しかし、エッジ位置の特定には変曲点を使うので、全体的な波形はエッジ位置の特定に影響しない。
【0208】
図38(c)は白紙測定データの出力波形の一例を、図38(d)は白紙測定データからVw1〜Vw4を減じた出力波形の一例を、それぞれ示す。白紙測定データからもパターン非依存分を除外するため、パターン非依存分除外処理部614は白紙測定データから、走査位置に応じてVw1〜Vw4を減じる。
【0209】
以降の処理は実施例1と同様であり、振幅補正処理部615は、振幅補正処理を行うことでエッジ位置を演算するための演算対象データzを生成し、吐出タイミング補正部616は、テストパターンのエッジ位置を求めて液滴吐出タイミングを補正する。
【0210】
本実施例の画像形成装置100は、出力電圧から極小値、極大値を求め、白紙測定データとパターン測定データからそれぞれVwを減じることで、テストパターンが異なる色のラインを有しているか否かに関係なく、液滴の着弾位置ずれを精度よく補正することができる。
【符号の説明】
【0211】
1 ガイドロッド
2 副ガイド
5 キャリッジ
7 駆動プーリ
8 主走査モータ
9 タイミングベルト
21〜24 記録ヘッド
30 印字位置ずれセンサ
41 エンコーダシート
42 エンコーダセンサ
100 画像形成装置
301 CPU
310 主制御部
312 ヘッド駆動制御部
313 主走査駆動部
314 副走査駆動部
402 発光素子
403 受光素子
525 共有メモリ
526 補正処理実行部
611 印字前前処理部
612 印字後前処理部
613 同期処理部
614 パターン非依存分除外処理部
615 振幅補正処理部
616 吐出タイミング補正処理部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0212】
【特許文献1】特開2008−229915号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に形成したテストパターンを読み取って、液滴の吐出タイミングを調整する画像形成装置であって、
前記記録媒体に光を照射する発光手段及び前記記録媒体からの反射光を受光する受光手段を有する読み取り手段と、
前記記録媒体又は前記読み取り手段を相対的に等速で移動させる相対移動手段と、
前記テストパターンが形成される前に、前記記録媒体に対し前記読み取り手段が相対移動しながら、前記受光手段が前記光の走査位置から受光した前記反射光の第2の検出データを取得する第2の検出データ取得手段と、
前記テストパターンが形成された後に、前記記録媒体に対し前記読み取り手段が相対移動しながら、走査位置と略同じ走査位置の前記テストパターンを前記光が横断する際に前記受光手段が受光した前記反射光の第1の検出データを取得する第1の検出データ取得手段と、
走査位置に応じて切り換えられた減算量を、前記第1の検出データと前記第2の検出データのそれぞれから減じる減算処理手段と、
減算処理された前記第2の検出データに対する前記第1の検出データの割合を算出して、前記第1の検出データの極大値を略一定に揃える信号補正手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記減算処理手段は、前記第1の検出データの極小値を走査位置と対応づけて抽出し、
前記極小値となる走査位置の前後の所定範囲毎に、前記減算量を前記所定範囲に含まれる前記極小値に切り替えて、前記第1の検出データと前記第2の検出データのそれぞれから減じる、ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記テストパターンに含まれる複数のラインは異なる色を有し、
前記減算処理手段は、前記第1の検出データの極小値を走査位置と対応づけて抽出し、
値の差が所定値内の前記極小値を同じ前記色の前記極小値と推定し、同じ前記色の前記極小値を統計処理した値を前記減算量として、前記第1の検出データと前記第2の検出データのそれぞれから減じる、
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記減算処理手段は、隣接した前記極小値が検出された走査位置の中点毎に前記減算量を切り換え、前記第1の検出データと前記第2の検出データのそれぞれから減じる、
又は、
前記減算処理手段は、前記第1の検出データの極大値を走査位置と対応づけて抽出し、
前記極大値が抽出された走査位置毎に前記減算量を切り換え、前記第1の検出データと前記第2の検出データのそれぞれから減じる、
ことを特徴とする請求項2又は3記載の画像形成装置。
【請求項5】
予め前記色毎に前記減算量が登録された減算量記憶手段を有し、
前記減算処理手段は、受け付けた前記テストパターンにおける前記色の配置順情報に基づき、走査位置に応じて前記減算量記憶手段から読み出す前記減算量を切り換える、
ことを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記減算量記憶手段には、前記記録媒体の種類別に、前記色毎に前記減算量が登録されている、
ことを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記信号補正手段は、前記割合に予め定められた電圧値を乗じて、振幅が略一定のテストパターン位置決定用データを生成する、
ことを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記テストパターン位置決定用データの上限閾値と下限閾値の間に含まれる、該テストパターン位置決定用データの変化が最も大きくなる点の位置を、前記ラインの位置に決定するライン位置決定手段を有する、
を有することを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
記録媒体に光を照射する発光手段及び前記記録媒体からの反射光を受光する受光手段を有する読み取り手段を有し、前記記録媒体に形成したテストパターンを読み取って、液滴の吐出タイミングを調整する画像形成装置のパターン位置検出方法であって、
相対移動手段が、前記記録媒体又は前記読み取り手段を相対的に等速で移動させるステップと、
前記テストパターンが形成される前に、前記記録媒体に対し前記読み取り手段が相対移動しながら、前記受光手段が前記光の走査位置から受光した前記反射光の第2の検出データを第2の検出データ取得手段が取得するステップと、
前記テストパターンが形成された後に、前記記録媒体に対し前記読み取り手段が相対移動しながら、前記走査位置と略同じ走査位置の前記テストパターンを前記光が横断する際に前記受光手段が受光した前記反射光の第1の検出データを第1の検出データ取得手段が取得するステップと、
減算処理手段が、走査位置に応じて切り換えられた減算量を、前記第1の検出データと前記第2の検出データのそれぞれから減じるステップと、
信号補正手段が、減算処理された前記第2の検出データに対する前記第1の検出データの割合を算出して、前記第1の検出データの極大値を略一定に揃えるステップと、
を有することを特徴とするパターン位置検出方法。
【請求項10】
記録媒体に光を照射する発光手段及び前記記録媒体からの反射光を受光する受光手段を有する読み取り手段を有し、前記記録媒体に形成したテストパターンを読み取って、液滴の吐出タイミングを調整する画像形成装置に、
前記記録媒体又は前記読み取り手段を相対的に等速で移動させる相対移動ステップと、
前記テストパターンが形成される前に、前記記録媒体に対し前記読み取り手段が相対移動しながら、前記受光手段が前記光の走査位置から受光した前記反射光の第2の検出データを取得する第2の検出データ取得ステップと、
前記テストパターンが形成された後に、前記記録媒体に対し前記読み取り手段が相対移動しながら、前記走査位置と略同じ走査位置の前記テストパターンを前記光が横断する際に前記受光手段が受光した前記反射光の第1の検出データを取得する第1の検出データ取得ステップと、
走査位置に応じて切り換えられた減算量を、前記第1の検出データと前記第2の検出データのそれぞれから減じる減算処理ステップと、
減算処理された前記第2の検出データに対する前記第1の検出データの割合を算出して、前記第1の検出データの極大値を略一定に揃える信号補正ステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項11】
記録媒体に光を照射する発光手段及び前記記録媒体からの反射光を受光する受光手段を有する読み取り手段と、前記記録媒体に液滴を吐出する液滴吐出手段と、を有する画像形成装置を用いた印刷物の製造方法であって、
相対移動手段が、前記記録媒体又は前記読み取り手段を相対的に等速で移動させるステップと、
前記記録媒体に対し前記読み取り手段が相対移動しながら、前記受光手段が前記光の走査位置から受光した前記反射光の第2の検出データを第2の検出データ取得手段が取得するステップと、
前記第2の検出データが取得された記録媒体に対し、前記液滴吐出手段で少なくとも複数のラインを含むテストパターンを形成するステップと、
前記テストパターンが形成された後に、前記記録媒体に対し前記読み取り手段が相対移動しながら、前記走査位置と略同じ走査位置の前記テストパターンを前記光が横断する際に前記受光手段が受光した前記反射光の第1の検出データを第1の検出データ取得手段が取得するステップと、
減算処理手段が、走査位置に応じて切り換えられた減算量を、前記第1の検出データと前記第2の検出データのそれぞれから減じるステップと、
信号補正手段が、減算処理された前記第2の検出データに対する、減算処理された前記第1の検出データの割合を算出して、前記第1の検出データの極大値を略一定に揃えた第3のデータとするステップと、
ライン位置決定手段が、予め定められた上限から下限内に含まれる前記第3のデータにライン位置決定演算を施し前記ラインの位置を検出するステップと、
検出されたラインの位置に基づいて、前記液滴吐出手段の液滴吐出タイミングを調整するステップと、
前記液滴吐出手段が、当該調整された吐出タイミングで印刷対象媒体へ液滴の吐出を行い印刷物を製造するステップと、
を有することを特徴とする印刷物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2013−49267(P2013−49267A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171453(P2012−171453)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】