説明

画像形成装置、外部装置、及び印刷システム

【課題】外部装置側のネットワーク遮断が発生しても、ネットワーク再接続後に途中から印刷ジョブを継続して行う印刷システムを提供すること。
【解決手段】ネットワーク遮断時に外部装置は印刷データの送信アドレスを保存し、画像形成装置は印刷ジョブを停止して再接続後の印刷データの再開アドレスを保存する。ネットワーク再接続後に外部装置は送信アドレスから印刷データの送信を再開し、画像形成装置は再開アドレスから印刷データの描画処理を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、外部装置、及びこれらの装置を備える印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PCなどに代表される外部装置と画像形成装置が無線LANや有線LANで接続された印刷システムがある。多くの印刷システムにおける外部装置と画像形成装置は次のように動作している。即ち、外部装置は例えばPDL(Page Description Language)のような印刷画像の元となるデータと印刷設定を含んだ印刷ジョブを画像形成装置に送信し、画像形成装置は印刷設定に応じて印刷画像を描画して記録紙に印刷する。そして、画像形成装置が印刷ジョブを処理中に何らかの障害が発生した場合には、多くの画像形成装置は処理中の印刷ジョブをキャンセルしている。しかし、障害発生要因が解除できれば印刷処理を継続して実行できる場合もある。そこで、外部装置から受信した印刷ジョブを画像形成装置で処理中になんらかの障害が発生した場合に、画像形成装置が印刷ジョブを停止し、障害が解消された後に画像形成装置が印刷ジョブを再開する印刷システムが提案されている。例えば、特許文献1では、電源断した画像形成装置が電源復帰後に未処理の印刷ジョブを検索し、未処理の印刷ジョブの印刷データの再送を外部装置に要求することで印刷ジョブを再開している。また、特許文献2では、画像形成装置が用紙無しやジャム発生で印刷が停止した場合に、外部装置は印刷データの送信を停止し、画像形成装置の障害が解消された後に画像形成装置から外部装置へ印刷データの再送要求を行うことで印刷ジョブを再開している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−112722号公報
【特許文献2】特開平10−040025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成装置にネットワーク接続された外部装置の携帯化やインフラ整備が進むにつれて、徒歩や車、電車等で移動中のユーザが外部装置から印刷ジョブを当該画像形成装置に送信するという印刷システムの利用が普及し始めている。しかし、そのような利用形態においては、外部装置側要因によるネットワーク遮断の発生頻度が高い。外部装置側要因とは、例えば、外部装置側ネットワークの電波状況の悪化やアクセスポイントの障害や電源断、ユーザによる外部装置のサスペンド、外部装置の充電切れ等である。その結果、印刷ジョブが正常に完了しないことが多い。そこで、外部装置側の要因によるネットワーク遮断時に印刷ジョブを停止して、ネットワーク再接続後に停止した印刷ジョブを停止途中の状態から再開できる印刷システムが求められている。しかしながら、特許文献1および2にあるような印刷システムにおいても外部装置側のネットワーク遮断に対する印刷ジョブの再開には対応できていない。そのため従来の印刷システムでは外部装置側の要因でネットワーク遮断発生した場合に、画像形成装置が処理中の印刷ジョブをキャンセルしている。ユーザが印刷ジョブを再送信するためには、ユーザがネットワーク再接続を確認し、再度印刷ジョブを指定して別印刷ジョブとして再送信する必要があり、ユーザの利便性が悪いとともに再送信時間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、画像形成装置に接続された外部装置側要因の障害により停止した画像形成装置による印刷処理を当該停止位置から再開可能な画像形成装置、外部装置、及び印刷システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る印刷システムは、画像形成装置及び当該画像形成装置と通信可能な外部装置を有する印刷システムであって、前記外部装置は、ジョブ識別子とPDLデータと当該PDLデータの先頭アドレスである送信開始アドレスとを含む印刷データを前記画像形成装置に送信する送信手段と、前記画像形成装置との通信が遮断された際の、前記送信済みのPDLデータのサイズに応じて定められた前記PDLデータのアドレスを前記送信開始アドレスとして記憶する手段と、前記遮断された通信の再開後、前記ジョブ識別子と前記記憶された送信開始アドレスと当該アドレスが示す位置からの前記PDLデータとを含む印刷データを前記画像形成装置へ送信する再開手段とを備え、前記画像形成装置は、前記画像形成装置から前記印刷データを受信する手段と、前記受信した印刷データに含まれるジョブ識別子に関連付けて当該印刷データに係る印刷ジョブを生成する手段と、前記生成した印刷ジョブに係る前記受信済みの印刷データのPDLデータを印刷可能な画像データに変換する描画手段と、前記外部装置との通信が遮断されたときに、前記変換済みで印字前の前記印刷ジョブに係る前記PDLデータのページの先頭アドレスであって、前記受信した先頭アドレス及びPDLデータのサイズに応じて定められたアドレスを再開アドレスとして記憶する手段と、前記再開アドレスが示す位置まで前記変換した画像データを印字する手段と、前記遮断された通信の再開後、前記生成された印刷ジョブに関連付けられた前記ジョブ識別子を含む前記印刷データを受信した場合、当該受信した印刷データに含まれるPDLデータを前記記憶した再開アドレスから前記描画手段により変換し、当該変換した画像データを印字するように制御する手段とを備えたことを特徴とする印刷システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像形成装置に接続された外部装置側要因の障害により停止した画像形成装置による印刷処理を当該停止位置から再開可能な画像形成装置、外部装置、及び印刷システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】印刷システムの構成を示す図である。
【図2】印刷データを概念的に示す図である。
【図3】第1および第2の実施形態における外部装置による処理のフローチャートである。
【図4】第1および第2の実施形態における画像形成装置による処理のフローチャートである。
【図5】第1の実施形態における再開アドレスを示す図である。
【図6】第2の実施形態における再開アドレスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。ただし、発明の範囲は本実施形態に限定されない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態を示す印刷システムの全体構成の一例を示すシステム構成図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の印刷システムは、デスクトップPCやノートPC、携帯端末等に代表される外部装置101と画像形成装置102とがネットワーク103を介して通信可能なように接続されている。ネットワーク103は有線LANや無線LANなどで直接接続していても、インターネットを介していてもよい。
【0012】
外部装置101はCPU,ROM,RAM,HDD等を有し、CPUがHDDに格納されたプログラムをRAM上に読み出して実行することにより、各部の機能を実現するものである。図1のネットワーク通信部101aは画像形成装置102とデータの送受信を行う。記憶部101bはROM、RAM、HDD等で実現され、印刷データや印刷ジョブ情報などを記憶しておくものである。制御部101cはCPUによって実行される制御プログラムである。制御部101cは外部装置上で動作する印刷アプリケーションを用いてユーザが生成した文書から印刷データを生成する。ここで、印刷データは後述するジョブセッション情報と印刷設定とPDLデータを含む。制御部101cは印刷データを記憶部101bに記憶するとともに、記憶部101bから印刷データを読み出してネットワーク通信部101aを介して画像形成装置102に印刷データを送信するよう制御する。また、制御部101cはネットワーク通信部101aを介して画像形成装置からデータを受信し、受信した内容に基づき印刷ジョブを制御する。
【0013】
画像形成装置102はCPU,ROM,RAM,HDD等を有し、CPUがHDDに格納されたプログラムをRAM上に読み出して実行することにより、各部の機能を実現するものである。
【0014】
図1のネットワーク通信部102aは外部装置101とデータの送受信を行う。記憶部102bはROM、RAM、HDD等で実現され、印刷データや印刷ジョブ情報などを記憶しておくものである。制御部102cは、ネットワーク通信部102aを介して印刷データを受信すると、印刷データ中のジョブセッション情報に基づいて印刷ジョブを生成し、印刷設定および印刷データを記憶部102bに記憶する。そして、制御部102cは、印刷データ中のPDLデータを展開部102dで印刷可能な画像データに展開し、印刷設定に応じて画像形成部102eで記録紙上に画像形成(即ち印刷処理)するよう動作する。このように、制御部102cは、印刷処理にかかる各構成部の処理を制御する。操作部102fは印刷ジョブの状態の表示(受信中、実行中、印刷完了等)や印刷ジョブにかかるユーザ操作を受付けるものである。ユーザ操作の例として明示的な印刷ジョブ停止や印刷ジョブのキャンセルなどがあり、ユーザ操作に応じた入力信号に応じた制御を制御部102bが実行する。
【0015】
図2は、印刷データ104を概念的に示す図である。図2において、ジョブセッション情報104aは印刷ジョブの識別子であるジョブ識別子と送信開始アドレスを含む。ジョブ識別子は外部装置101の制御部101cが生成するものであり、画像形成装置102の制御部102cが生成する画像形成装置内の印刷ジョブと関連付けられている。送信開始アドレスは外部装置101の制御部101cが生成したPDLデータの何バイト目から送信開始しているかを示すアドレスである。
【0016】
画像形成装置102の制御部102cは送信開始アドレスを読み取ることで外部装置101から何バイト目からのPDLデータが送信されているかを判定することができる。印刷設定104bは印刷ジョブの設定を示すものであり、例えば、片面両面印刷や後処理(ステイプル、パンチなど)、カラーモード(白黒印刷やカラー印刷)などを指定するものである。PDLデータ104cは外部装置101の制御部101cが印刷アプリケーションを用いてユーザが生成した文書をPDL変換したデータであり、画像形成装置102の展開部102dがPDLデータ104cを印刷可能な画像データに変換する。
【0017】
図3は本発明にかかる実施形態うち外部装置101のCPUによって実行される制御部101cの制御フローを示すフローチャートである。
【0018】
S1001にて、ユーザが不図示の印刷アプリケーションの印刷画面から印刷実行を指示すると制御部101cは印刷データを生成する。制御部101cはジョブセッション情報内のジョブ識別子を生成するとともにジョブセッション情報内の送信開始アドレスを0に初期化する。送信開始アドレスが0とは、PDLデータの先頭から画像形成装置102に送信開始するという意味である。また、制御部101cはジョブセッション情報を記憶部101bに記憶しておく。
【0019】
次にS1002にて、制御部101cはネットワーク通信部101aを介して印刷データを画像形成装置102に送信開始する。ここで制御部101cは印刷データ内のPDLデータに関して上記送信開始アドレスを記憶部101bより読み出して送信する。
【0020】
次にS1003にて制御部101cは送信したPDLデータのサイズ分送信開始アドレスをカウントアップして記憶部101bに記憶する。すなわち、送信開始アドレスは、送信済みのPDLデータのサイズに応じて定められる。このように送信したPDLデータのサイズ分送信開始アドレスをカウントアップすることによって、外部装置101は、送信する印刷データのうち、どこまでのPDLデータが送信済みであるかを示す情報を保持することができる。
【0021】
次にS1004にて、制御部101cはネットワーク通信部101aでネットワーク遮断が発生したかどうかを判定する。本実施形態においては、ネットワーク通信部101aがTCP/IPなどに代表される通信プロトコルの論理的な遮断を検知することでネットワーク遮断の発生を判断するものとする。しかしながら、判断の方法はこの方法に限定されず、どのような方法で実施しても良い。以降の説明においても同様である。
【0022】
ネットワーク遮断が発生していない場合はS1005へ進み、ネットワーク遮断が発生した場合はS1007へ進む。S1005では、制御部101cが全印刷データを画像形成装置102に送信したかどうかを判定する。全データ送信していない場合はS1002へ進み、全データ送信した場合はS1006に進む。S1006では制御部101cは記憶部101bに記憶しておいたジョブセッション情報と印刷データを削除することにより、該印刷ジョブを削除するよう制御する。
【0023】
S1004にてネットワーク遮断が発生し、S1007へ進んだ場合、S1007にて制御部101cは、印刷データの送信処理を停止し、ネットワーク遮断発生時点のPDLデータのアドレスを送信開始アドレスとして記憶部101bに記憶する。このように送信開始アドレスを記憶することによって、外部装置101は、印刷データのうち未送信であるデータを画像形成装置102に後に送信するための送信開始位置を示す情報を保持することができる。
【0024】
そして、S1008に進み、制御部101cはネットワーク通信部101aよりネットワークが再接続されたかどうかを判定する。ネットワークが再接続されていない場合はS1013へ進む。
【0025】
S1013では制御部101cは不図示のキャンセル指示画面からユーザが明示的に印刷ジョブキャンセル指示したかどうかを判定し、キャンセル指示がない場合はS1008に進み、キャンセル指示があった場合はS1006へ進む。
【0026】
S1008にてネットワークが再接続された場合はS1009へ進む。S1009にて制御部101cは印刷ジョブ再開要求を画像形成装置102に送信する。ここで印刷ジョブ再開要求は該印刷ジョブのジョブセッション情報を含んでおり、画像形成装置102の制御部102cは該ジョブセッション情報内のジョブ識別子に基づいて再開要求された印刷ジョブを特定することができる。
【0027】
次に、S1010にて制御部101cは画像形成装置102から前記印刷ジョブ再開要求のジョブセッション情報で指定した印刷ジョブの再開判定結果を応答としてネットワーク通信部101aを介して受信する。そして、S1011にて制御部101cは該印刷ジョブが再開不可と判断した場合はS1006へ進み、再開可と判断した場合はS1012へ進む。印刷ジョブの再開判定結果の説明は、図4の説明において後述する。
【0028】
S1012で制御部101cはS1001にて記憶部101bに記憶したジョブセッション情報を読み出し、S1007で記憶部101bに記憶した送信開始アドレスをジョブセッション情報内の送信開始アドレスとして設定する。そして、制御部101cは更新したジョブセッション情報を画像形成装置102にネットワーク通信部101aを介して送信し、S1002へ進む。S1002で制御部101cは、ネットワーク通信部101aを介して、送信開始アドレスが示す位置からのPDLデータを含む印刷データを画像形成装置102に送信する。
【0029】
このようにすることで、外部装置101は外部装置側の要因によるネットワーク遮断が発生した場合に印刷データの送信を停止し、ネットワーク再接続した場合に該印刷データの送信を途中から再開することができる。
【0030】
図4は本発明にかかる実施形態うち画像形成装置102のCPUによって実行される制御部102cの制御フローを示すフローチャートである。
【0031】
S2001にて制御部102cは、ネットワーク通信部102aを介して外部装置101からジョブセッション情報を受信したかどうかを判定する。ジョブセッション情報を受信した場合はS2002に進み、制御部102cは受信したジョブセッション情報内のジョブ識別子に対応付けた印刷ジョブを生成し、記憶部102bに記憶する。制御部102cはジョブセッション情報を記憶部102bに記憶する。
【0032】
次にS2003で、制御部102cは、ネットワーク通信部102aを介して印刷設定を受信して記憶部102bに記憶する。次にS2004で制御部102cは、該印刷ジョブのネットワーク通信部102aを介して受信した印刷データ104に含まれているPDLデータを記憶部102bにスプール開始するよう制御する。
【0033】
次にS2005へ進み、制御部102cは該印刷ジョブのPDLデータを記憶部102bから読み出して展開部102dで印刷可能な画像データへと描画開始するよう制御する。次にS2006へ進んで、制御部102cは展開部102dによって変換済みの画像データの印刷を開始するよう画像形成部102eを制御する。ここで、上記スプール処理、描画処理、印刷処理は非同期に行うことができるものとする。つまり、展開部102dは記憶部102bに記憶されたPDLデータを読み出して全画像データを生成完了するまで描画処理を繰り返し、画像形成部102eは展開部102dが生成した全画像データを記録紙に印刷完了するまで印刷処理を繰り返す。
【0034】
次にS2007へ進み、制御部102cはネットワーク通信部102aでネットワーク遮断が発生したかどうかを判定する。ネットワーク通信部102aがTCP/IPなどに代表される通信プロトコルの論理的な遮断を検知することで判断する。ネットワーク遮断が発生していない場合はS2008に進み、ネットワーク遮断が発生した場合はS2010に進む。
【0035】
S2008では制御部102cは画像形成部102eで該印刷ジョブの全画像データを印刷完了したかどうかを判定する。印刷完了していない場合はS2007に進み、印刷完了した場合はS2009に進む。S2009では制御部102cは記憶部102bに記憶しておいたジョブセッション情報と印刷設定とPDLデータを削除することにより、該印刷ジョブを削除するよう制御する。
【0036】
S2007にてネットワーク遮断が発生し、S2010へ進んだ場合、S2010にて制御部102cは印刷ジョブを停止する。制御部102cはジョブセッション情報内のジョブ識別子に対応付けた印刷ジョブを識別する情報と印刷設定を記憶部102bに記憶するように制御する。さらに、制御部102cはS2004で開始したスプール処理およびS2005で開始した描画処理およびS2006で開始した印刷処理を停止するよう制御する。
【0037】
そして、S2011へ進み、制御部102cは再開アドレスを記憶部102bに保存する。再開アドレスとはネットワーク再接続後に展開部102dが記憶部102bから読み出しするPDLデータの読み出しアドレスである。このように再開アドレスを記憶することによって、後述するように、画像形成装置102は、処理を再開するための開始位置を示す情報を保持することができる。
【0038】
図5は本実施形態における再開アドレスを説明する図である。PDLデータの一部105とは、記憶部102bに記憶されているPDLデータの一部を示したものである。遮断発生時の読出アドレス105aは、ネットワーク遮断発生時に展開部102dがNページ目を描画途中であったとした場合の、展開部102dが記憶部102bから読み出し中のPDLデータのアドレスである。書込アドレス105bはネットワーク通信部102aで受信したPDLデータの記憶部102bに記憶完了したアドレスを示している。ネットワーク遮断発生後に、ネットワーク通信部102aで受信済みでかつ記憶部102bに記憶していないPDLデータがある場合、制御部102cは、当該記憶部102bに記憶していないPDLデータを記憶部102bに記憶する。
【0039】
図5において、ネットワーク遮断発生時に記憶部102bに記憶する再開アドレス105cは展開部102dが描画中かつ印字前のNページ目のPDLデータの先頭アドレスとしている。再開アドレス105cは、S2001で受信したジョブセッション情報に含まれる送信開始アドレス、及び展開部102dが記憶部102bから読み出し済みのPDLデータのサイズを用いて算出される。このような位置に再開アドレス105cを設定する理由は、次のとおりである。すなわち、展開部102dがNページ目を描画途中の状態で制御部102cが印刷ジョブを停止すると、展開部102dが1ページの描画に必要とするメモリを印刷ジョブの再開まで解放できないことになる。その結果、少ないメモリしか搭載していない画像形成装置ではメモリ使用効率が低下するからである。画像形成装置102の制御部102cが印刷ジョブ再開後に、展開部102dが記憶部102bから読み出し再開するアドレスは前記再開アドレスからとなる。そして、展開部102dは描画途中であったNページ目の描画データを展開部102dから削除するよう動作する。画像形成部102eはネットワーク遮断時に展開部102dが描画済みの画像データの全てを記録紙に印刷する。
【0040】
図4のS2011で制御部102cが再開アドレスを記憶部102bに記憶した後、S2012へ進む。S2012では制御部102cはネットワークが再接続されたかどうかを判定する。ネットワークが再接続されていない場合はS2013へ進み、ネットワークが再接続された場合はS2015へ進む。
【0041】
S2013で制御部102cはネットワーク遮断後から予め設定された規定時間が経過(タイムアウト)したかどうかを判定する。規定時間は不図示の操作部設定画面から予め入力され記憶部102bに記憶されていてもよいし、プログラムに静的にコーディングされていてもよい。S2013でタイムアウトが発生していない場合はS2012へ進み、タイムアウトが発生した場合(所定の期間経過後に通信が再開していない場合)はS2014へ進む。
【0042】
S2014では制御部102cは該印刷ジョブを削除するよう制御した後S2012へ進む。S2012で制御部102cがネットワークが再接続されたと判定した場合はS2015へ進む。
【0043】
S2015では制御部102cがネットワーク通信部102aで外部装置101から送信された印刷ジョブ再開要求(図3のS1009)を受信したかどうかを判定する。該印刷ジョブ再開要求にはジョブセッション情報が含まれており、制御部102cはジョブセッション情報内のジョブ識別子を読み取ることで停止中のどの印刷ジョブに対する再開要求かを判定することが可能である。印刷ジョブ再開要求を受信した場合はS2016へ進む。
【0044】
S2016では制御部102cは前記ジョブ再開要求で指定された印刷ジョブを再開可否を判定する。即ち、S2014にて制御部102cが該印刷ジョブを削除していない場合は再開可能と判定し、削除していた場合は再開不可能と判定する。再開不可能であった場合はS2017へ進み、再開可能であった場合はS2018へ進む。S2017では制御部102cは再開不可能を意味する判定結果を外部装置101に送信する。S2018では制御部102cは再開可能を意味する判定結果を外部装置101に送信し、S2019へ進む。
【0045】
S2019では制御部102cはネットワーク通信部102aで外部装置101からジョブセッション情報を受信したかどうかを判定する。ジョブセッション情報を受信した場合はS2020へ進み、制御部102cはジョブセッション情報内のジョブ識別子で指定された印刷ジョブを再開するよう制御する。
【0046】
そして、S2021へ進み、制御部102cはPDLデータのスプール処理を再開するよう制御する。ここで、制御部102cは印刷ジョブ停止時の書込アドレス以前のPDLデータを受信した場合(ジョブセッション情報内の送信開始アドレスから判断する)、書込アドレス以前の受信データを記憶部102bに二重に記憶しないよう制御する。
【0047】
次にS2022へ進み、制御部102cは展開部102dでの描画処理を再開するよう制御する。ここで、展開部102dは印刷ジョブ停止時の再開アドレスを記憶部102bから読み出して、記憶部102bに記憶されるPDLデータを再開アドレスから読み出す。次にS2023へ進み、制御部102cは画像形成部102eでの印刷処理(印字処理)を再開するよう制御して、S2007へ進む。
【0048】
このようにすることで、画像形成装置102は外部装置側の要因によるネットワーク遮断が発生した場合に印刷ジョブを停止し、ネットワーク再接続した場合に外部装置101から該印刷データを途中から受信再開して印刷することができる。
【0049】
また、上記外部装置101および上記画像形成装置102を利用した印刷システムにより、外部装置側要因でネットワークが遮断しても印刷ジョブを停止でき、ネットワーク再接続時にユーザが関与することなく印刷ジョブを途中から再開することができる。よって、ユーザの利便性を向上できる。また、ネットワーク再接続後に未送信の印刷データを外部装置から送信再開するので印刷ジョブ再開時のデータ転送時間を短縮することもできる。
【0050】
(第2の実施形態)
第2の実施形態における印刷システムの全体構成は第1の実施形態と同様である。第1の実施形態との差異はネットワーク遮断時の再開アドレスの設定方法にある。以下、図6を用いて説明する。
【0051】
図6において、PDLデータの一部106とは、記憶部102bに記憶されているPDLデータの一部を示したものである。遮断発生時の読出アドレス106aは、ネットワーク遮断発生時に展開部102dがNページ目を描画途中であったとした場合の、展開部102dが記憶部102bから読み出し中のPDLデータのアドレスである。書込アドレス106bはネットワーク通信部102aで受信したPDLデータの記憶部102bに記憶完了したアドレスを示している。第2の実施形態において、展開部102dはネットワーク遮断が発生しても描画処理を継続する。ネットワーク遮断発生時に記憶部102bに記憶する再開アドレス106cは展開部102dがPDLデータの受信不足で描画が完了しないN+2ページ目のPDLデータの先頭アドレスとする。そして、展開部102dはPDLデータの受信不足で描画できないN+2ページ目の途中の描画データを展開部102dから削除するよう動作する。ネットワーク再接続後に展開部102dが記憶部102bから読み出し再開するアドレスは前記再開アドレスからとなる。画像形成部102eはネットワーク遮断時に展開部102dが描画済みの画像データの全てを記録紙に印刷する。
【0052】
このようにすることで、画像形成装置102の制御部102cが印刷ジョブを再開後に、展開部102dが描画すべきページ数を第1の実施形態よりも削減することができるので印刷完了までの時間を短縮することができる。
【0053】
なお、再開アドレスの設定方法を実施形態1及び2において具体的に説明したが、設定方法はこれらに限定されるものではない。
【0054】
以上のように本実施形態によれば、画像形成装置は外部装置側要因でネットワークが遮断しても印刷ジョブを停止でき、外部装置はネットワーク再接続時にユーザが関与することなく印刷ジョブを途中から再開することができる。その結果、このような画像形成装置及び外部装置は、ユーザの利便性を向上させる効果がある。また、外部装置はネットワーク再接続後に未送信の印刷データを外部装置から送信再開するので印刷ジョブ再開時のデータ転送時間を短縮することができるという効果もある。
【0055】
(その他の実施形態)
本発明は、複数の機器(例えばコンピュータ、インターフェース機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用することも、1つの機器からなる装置(複合機、プリンタ、ファクシミリ装置など)に適用することも可能である。
【0056】
前述した実施形態の機能を実現するように前述した実施形態の構成を動作させるプログラムを記憶媒体に記憶させ、該記憶媒体に記憶されたプログラムをコードとして読み出し、コンピュータにおいて実行する処理方法も上述の実施形態の範疇に含まれる。即ちコンピュータ読み取り可能な記憶媒体も実施例の範囲に含まれる。また、前述のコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体はもちろんそのコンピュータプログラム自体も上述の実施形態に含まれる。
【0057】
かかる記憶媒体としてはたとえばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD―ROM、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROMを用いることができる。
【0058】
また前述の記憶媒体に記憶されたプログラム単体で処理を実行しているものに限らず、他のソフトウエア、拡張ボードの機能と共同して、OS上で動作し前述の実施形態の動作を実行するものも前述した実施形態の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
101 外部装置
101a ネットワーク通信部
101b 記憶部
101c 制御部
102 画像形成装置
102a ネットワーク通信部
102b 記憶部
102c 制御部
102d 展開部
102e 画像形成部
102f 操作部
103 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置及び当該画像形成装置と通信可能な外部装置を有する印刷システムであって、
前記外部装置は、
ジョブ識別子とPDLデータと当該PDLデータの先頭アドレスである送信開始アドレスとを含む印刷データを前記画像形成装置に送信する送信手段と、
前記画像形成装置との通信が遮断された際の、前記送信済みのPDLデータのサイズに応じて定められた前記PDLデータのアドレスを前記送信開始アドレスとして記憶する手段と、
前記遮断された通信の再開後、前記ジョブ識別子と前記記憶された送信開始アドレスと当該アドレスが示す位置からの前記PDLデータとを含む印刷データを前記画像形成装置へ送信する再開手段と
を備え、
前記画像形成装置は、
前記画像形成装置から前記印刷データを受信する手段と、
前記受信した印刷データに含まれるジョブ識別子に関連付けて当該印刷データに係る印刷ジョブを生成する手段と、
前記生成した印刷ジョブに係る前記受信済みの印刷データのPDLデータを印刷可能な画像データに変換する描画手段と、
前記外部装置との通信が遮断されたときに、前記変換済みで印字前の前記印刷ジョブに係る前記PDLデータのページの先頭アドレスであって、前記受信した先頭アドレス及びPDLデータのサイズに応じて定められたアドレスを再開アドレスとして記憶する手段と、
前記再開アドレスが示す位置まで前記変換した画像データを印字する手段と、
前記遮断された通信の再開後、前記生成された印刷ジョブに関連付けられた前記ジョブ識別子を含む前記印刷データを受信した場合、当該受信した印刷データに含まれるPDLデータを前記記憶した再開アドレスから前記描画手段により変換し、当該変換した画像データを印字するように制御する手段と
を備えたこと
を特徴とする印刷システム。
【請求項2】
画像形成装置と通信可能な外部装置であって、
ジョブ識別子とPDLデータと当該PDLデータの先頭アドレスである送信開始アドレスとを含む印刷データを前記画像形成装置に送信する送信手段と、
前記画像形成装置との通信が遮断された際の、前記送信済みのPDLデータのサイズに応じて定められた前記PDLデータのアドレスを前記送信開始アドレスとして記憶する手段と、
前記遮断された通信の再開後、前記ジョブ識別子と前記記憶された送信開始アドレスと当該アドレスが示す位置からの前記PDLデータとを含む印刷データを前記画像形成装置へ送信する再開手段と
を備えたことを特徴とする外部装置。
【請求項3】
前記送信する印刷データを生成する手段と、
前記画像形成装置との通信の前記再開後、印刷ジョブ再開要求を前記画像形成装置へ送信する手段と、
前記印刷ジョブ再開要求に対する応答が再開可能であることを示すときは前記再開手段により前記印刷データを送信し、再開不可能であるときは前記生成された印刷データを削除するように制御する手段と
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の外部装置。
【請求項4】
外部装置と通信可能な画像形成装置であって、
ジョブ識別子とPDLデータと当該PDLデータの先頭アドレスである送信開始アドレスとを含む印刷データを前記画像形成装置から受信する手段と、
前記受信した印刷データに含まれるジョブ識別子に関連付けて当該印刷データに係る印刷ジョブを生成する手段と、
前記生成した印刷ジョブに係る前記受信済みの印刷データのPDLデータを印刷可能な画像データに変換する描画手段と、
前記外部装置との通信が遮断されたときに、前記変換済みで印字前の前記印刷ジョブに係る前記PDLデータのページの先頭アドレスであって、前記受信した先頭アドレス及びPDLデータのサイズに応じて定められたアドレスを再開アドレスとして記憶する手段と、
前記再開アドレスが示す位置まで前記変換した画像データを印字する手段と、
前記遮断された通信の再開後、前記生成された印刷ジョブに関連付けられた前記ジョブ識別子を含む前記印刷データを受信した場合、当該受信した印刷データに含まれるPDLデータを前記記憶した再開アドレスから前記描画手段により変換し、当該変換した画像データを印字するように制御する手段と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記描画手段が変換するPDLデータに係る印刷ジョブを記憶する記憶手段と、
前記通信の遮断から所定の期間経過後に通信が再開しない場合、前記記憶した印刷ジョブを削除する手段と、
前記遮断した通信の再開後に前記外部装置から印刷ジョブ再開要求を受信した場合、前記記憶した印刷ジョブを削除したときは再開不可能であることを、前記記憶した印刷ジョブを削除していないときは再開可能であることを当該要求に対して応答するように制御する手段と
を備えることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記再開アドレスは、前記PDLデータの前記描画手段による変換済み位置に係るページの先頭アドレスであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記再開アドレスは、前記PDLデータの受信済み位置に係るページの先頭アドレスであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
画像形成装置及び当該画像形成装置と通信可能な外部装置を有する印刷システムにおいて実施される方法であって、
前記外部装置において実施される方法は、
ジョブ識別子とPDLデータと当該PDLデータの先頭アドレスである送信開始アドレスとを含む印刷データを前記画像形成装置に送信する送信ステップと、
前記画像形成装置との通信が遮断された際の、前記送信済みのPDLデータのサイズに応じて定められた前記PDLデータのアドレスを前記送信開始アドレスとして記憶するステップと、
前記遮断された通信の再開後、前記ジョブ識別子と前記記憶された送信開始アドレスと当該アドレスが示す位置からの前記PDLデータとを含む印刷データを前記画像形成装置へ送信する再開ステップと
を備え、
前記画像形成装置において実施される方法は、
前記画像形成装置から前記印刷データを受信するステップと、
前記受信した印刷データに含まれるジョブ識別子に関連付けて当該印刷データに係る印刷ジョブを生成するステップと、
前記生成した印刷ジョブに係る前記受信済みの印刷データのPDLデータを印刷可能な画像データに変換する描画ステップと、
前記外部装置との通信が遮断されたときに、前記変換済みで印字前の前記印刷ジョブに係る前記PDLデータのページの先頭アドレスであって、前記受信した先頭アドレス及びPDLデータのサイズに応じて定められたアドレスを再開アドレスとして記憶するステップと、
前記再開アドレスが示す位置まで前記変換した画像データを印字するステップと、
前記遮断された通信の再開後、前記生成された印刷ジョブに関連付けられた前記ジョブ識別子を含む前記印刷データを受信した場合、当該受信した印刷データに含まれるPDLデータを前記記憶した再開アドレスから前記描画ステップにより変換し、当該変換した画像データを印字するように制御するステップと
を備えたこと
を特徴とする印刷方法。
【請求項9】
画像形成装置と通信可能な外部装置において実施される方法であって、
ジョブ識別子とPDLデータと当該PDLデータの先頭アドレスである送信開始アドレスとを含む印刷データを前記画像形成装置に送信する送信ステップと、
前記画像形成装置との通信が遮断された際の、前記送信済みのPDLデータのサイズに応じて定められた前記PDLデータのアドレスを前記送信開始アドレスとして記憶するステップと、
前記遮断された通信の再開後、前記ジョブ識別子と前記記憶された送信開始アドレスと当該アドレスが示す位置からの前記PDLデータとを含む印刷データを前記画像形成装置へ送信する再開ステップと
を備えたことを特徴とする印刷方法。
【請求項10】
外部装置と通信可能な画像形成装置において実施される方法であって、
ジョブ識別子とPDLデータと当該PDLデータの先頭アドレスである送信開始アドレスとを含む印刷データを前記画像形成装置から受信するステップと、
前記受信した印刷データに含まれるジョブ識別子に関連付けて当該印刷データに係る印刷ジョブを生成するステップと、
前記生成した印刷ジョブに係る前記受信済みの印刷データのPDLデータを印刷可能な画像データに変換する描画ステップと、
前記外部装置との通信が遮断されたときに、前記変換済みで印字前の前記印刷ジョブに係る前記PDLデータのページの先頭アドレスであって、前記受信した先頭アドレス及びPDLデータのサイズに応じて定められたアドレスを再開アドレスとして記憶するステップと、
前記再開アドレスが示す位置まで前記変換した画像データを印字するステップと、
前記遮断された通信の再開後、前記生成された印刷ジョブに関連付けられた前記ジョブ識別子を含む前記印刷データを受信した場合、当該受信した印刷データに含まれるPDLデータを前記記憶した再開アドレスから前記描画ステップにより変換し、当該変換した画像データを印字するように制御するステップと
を備えたことを特徴とする印刷方法。
【請求項11】
コンピュータに請求項8から請求項10のいずれか1つに記載の方法を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−250545(P2010−250545A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99044(P2009−99044)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】