説明

画像形成装置、情報処理方法及びプログラム

【課題】スキャンデータの転送先のコンピュータとの接続形態を適切に多様化させることのできる画像形成装置、情報処理方法及びプログラムの提供を目的とする。
【解決手段】読み取り手段と操作手段とを備えた画像形成装置であって、ネットワークを介して接続されるコンピュータとの通信を制御するネットワーク通信手段と、USBを介して接続されるコンピュータとの通信を制御するUSB通信手段と、前記ネットワーク通信手段又は前記USB通信手段によって受信されるスキャンデータの取得要求に応じ、前記操作手段に対する入力を待機し、該操作手段に対する入力に応じて前記読み取り手段に読み取りを実行させる読み取り制御手段と、読み取られたスキャンデータのコンピュータへの転送を、前記取得要求を受信した前記ネットワーク通信手段又は前記USB通信手段に実行させるデータ転送制御手段とを有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、情報処理方法及びプログラムに関し、特にネットワーク又はUSBによって接続されたコンピュータにスキャンデータを転送可能な画像形成装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキャナとPC(Personal Computer)とを接続し、PC側において設定された読み取り条件に従ってスキャナがスキャンを実行し、そのスキャンデータ(画像データ)をPCからの要求によってスキャナがPCに転送する技術が存在する。斯かる技術において、PC側の操作(画面に対する入力等)に基づいて読み取りを開始する方式(以下、「通常モード」という。)と、スキャナ側の操作(操作パネルを介した入力等)に基づいて読み取りを開始する方式(以下、「スキャンウェイトモード」という。)とがある。
【0003】
通常モードの場合、ユーザは、スキャナ側に原稿をセットした後PCに戻り、PCにおいて読み取り条件等を設定する。読み取り条件の設定後、ユーザは、PCにおいて読み取りの開始指示を入力する。当該開始指示はスキャナに通知され、スキャナによって原稿が読み取られる。その後、ユーザは、原稿を回収するため改めてスキャナの設置場所に赴く必要があった。
【0004】
一方、スキャンウェイトモードの場合、ユーザは、PC側において読み取り条件等を設定し、読み取りの開始指示を入力する。当該開始指示により、スキャナは、操作パネル等を介したスキャンの開始指示の入力を待機する。ユーザは、スキャナの設置場所に赴き、原稿をセットし、スキャナに対して読み取り開始指示(例えば、スタートキーの押下)を入力する。当該開始指示の入力に応じてスキャナによって原稿が読み取られる。
【0005】
上記した手順より明らかなように、スキャンウェイトモードの場合は、PCとスキャナとの間の行き来の回数を減少させることができるという利点がある。また、ユーザが原稿から離れることは無いため、セキュアな読み取りを実現することができる。
【0006】
他方において、PCとスキャナとの間の接続は、ネットワークによる場合とUSBによる場合とがある。従来、ネットワーク接続の場合とUSB接続の場合とでは、スキャンウェイトモードにおけるPC及びスキャナ間の通信手順が異なっていた。
【0007】
図1は、ネットワーク接続の場合のスキャンウェイトモードによる処理手順を示すシーケンス図である。同図には、LAN(Local Area Network)等のネットワークによって接続されたPC520a及びスキャナ510a間におけるスキャンデータの転送時の処理手順が示されている。
【0008】
同図において、PC520aは、ドライバ521aを有する。ドライバ521aは、ネットワーク接続されたスキャナ510aからのスキャンデータの取得等を制御するドライバプログラムである。
【0009】
スキャナ510aは、RSHD511a、プロトコルスタック制御部512a、及び上位層513a等を有する。RSHD511aは、リモートシェルの実行を制御するプログラムであり、ここでは、ドライバ521aとのネットワーク通信を制御する。プロトコルスタック制御部512aは、ネットワーク接続されたPC520aへのスキャンデータの転送等を制御するプログラムである。上位層513aは、スキャナ510aに画像データの読み取りを実行させるプログラムである。
【0010】
PC520aにおいて、ユーザによって読み取り条件の設定及び読み取り開始指示が入力されると、ドライバ521aは、RSHD511aとの間でTCPのセッションを開設する(TCPレベルでのコネクションを確立する)(S11)。続いて、ドライバ521aは、スキャンデータの取得要求をRSHD511aに対して行う(S12)。RSHD511aは、当該取得要求をプロトコルスタック制御部512aに通知する(S13)。当該取得要求に応じ、プロトコルスタック制御部512aは、上位層513aに対して読み取りの実行を要求する(S14)。上位層513aは、スタートキーが押下されると読み取りを実行し(S15)。スキャンデータの転送をプロトコルスタック制御部512aに要求する(S16)。プロトコルスタック制御部512aは、スキャンデータの取得要求元へのスキャンデータの送信をRSHD511aに要求する(S17)。RSHD511aは、スキャンデータを要求元のPC520aのドライバ521aに送信する(S18)。ドライバ521aは、スキャンデータの受信が完了すると、セッションを切断する(S19)。
【0011】
また、図2は、ネットワーク接続の場合のスキャンウェイトモードにおいて読み取りが中止された際の処理手順を示すシーケンス図である。図2中、図1と同一部分には同一符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0012】
図1のステップS11からS14までと同様の処理が実行され、上位層513aがスタートキーの押下を待機している間に、PC520aにおいてユーザによってキャンセルが指示されたとする。ここで、ドライバ521aは、スキャンデータの取得要求に対する応答待ちであるため、改めてスキャンの中止要求をRSHD511aに対して送信することはできない。そこで、ドライバ521aは、RSHD511aとのTCPのセッションを切断する(S21)。当該セッションの切断は、RSHD511aによって検知される。RSHD511aは、セッションの切断の検知に応じ、セッションの切断をプロトコルスタック制御部512aに通知する(S22)。プロトコルスタック制御部512aは、上位層513aに対してセッションの切断を通知する(S23)。上位層513aは、セッションの切断の通知に応じ、読み取りの終了処理を実行することにより、スキャナ510aを待機状態から解放する(S24)。
【0013】
一方、図3は、USB接続の場合のスキャンウェイトモードによる処理手順を示すシーケンス図である。同図にはUSB接続されたPC520b及びスキャナ510b間におけるスキャンデータの転送時の処理手順が示されている。
【0014】
同図において、PC520bは、ドライバ521bを有する。ドライバ521bは、USB接続されたスキャナ510bからのスキャンデータの取得等を制御するドライバプログラムである。
【0015】
スキャナ510bは、USBD511b、プロトコルスタック制御部512b、及び上位層513b等を有する。USBD511bは、USB接続におけるPC520bとのUSB通信を制御するプログラムである。プロトコルスタック制御部512bは、USB接続されたPC520bへのスキャンデータの転送等を制御するプログラムである。上位層513bは、スキャナ510bに画像データの読み取りを実行させるプログラムである。
【0016】
PC520bにおいて、ユーザによって読み取り条件の設定及び読み取り開始指示が入力されると、ドライバ521bは、スキャナ520bのスタートキーの状態の取得要求をUSBD511bに送信する(S31)。スタートキーの状態の取得要求は、TWANプロトコルスタック制御部512bを経て上位層513bに通知される(S32、S33)。上位層513bは、スタートキーの状態(押下されたか否か)を確認し、当該状態(キー状態情報)を示す情報をプロトコルスタック制御部512bに通知する(S34)。キー状態情報は、USBD511bを経てドライバ521bに返信される(S35、S36)。このような手順(ステップS31〜S36)が、開始指示の入力後、繰り返し実行される。
【0017】
USBD511bから返信されるキー状態情報において、スタートキーが押下されたことが示されていると、ドライバ521bは、スキャンデータの取得要求をUSBD511bに対して送信する(S37)。USBD511bは、当該取得要求をプロトコルスタック制御部512bに通知する(S38)。当該取得要求に応じ、プロトコルスタック制御部512bは、上位層513bに対してデータの取得を要求する(S39)。以降、図1のステップS16〜S18と同様の手順でスキャンデータがPC520aに返信される(S40〜S42)。なお、USB接続の場合は、セッションという概念が存在しないため、セッションの切断は行われない。
【0018】
また、図4は、USB接続の場合のスキャンウェイトモードにおいて読み取りが中止された際の処理手順を示すシーケンス図である。図4中、図3と同一部分には同一符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0019】
ステップS31〜S36の処理が繰り返し実行されることによりスタートキーの状態の確認がドライバ521bによって行われている間に、PC520bにおいてユーザによってキャンセルが指示されたとする。この場合、ドライバ521bは、キー状態の取得要求の送信を終了する。その結果、ステップS31〜S36のループ処理は終了する。
【0020】
図1から図4において示したように、ネットワーク接続の場合とUSB接続の場合とでは、通常時(図1及び図3)及び中止時(図2及び図4)の双方において、処理手順が異なる。
【0021】
なお、従来、一台のスキャナは、いずれか一方のみ接続方式に対応していた。
【特許文献1】特開2005−175551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、ユーザによる利用形態は多種多様であり、その接続方式がいずれか一方に限定されるのは利便性に欠ける。但し、双方の接続方式による機能モジュールを単純に組み合わせてスキャナに実装した場合、プロトコルスタック制御部512や上位層513等は、双方の接続方式に対応した振る舞いを要求され、その実装内容が複雑化し、開発工数が増加するという問題がある。
【0023】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、スキャンデータの転送先のコンピュータとの接続形態を適切に多様化させることのできる画像形成装置、情報処理方法及びプログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
そこで上記課題を解決するため、本発明は、読み取り手段と操作手段とを備えた画像形成装置であって、ネットワークを介して接続されるコンピュータとの通信を制御するネットワーク通信手段と、USBを介して接続されるコンピュータとの通信を制御するUSB通信手段と、前記ネットワーク通信手段又は前記USB通信手段によって受信されるスキャンデータの取得要求に応じ、前記操作手段に対する入力を待機し、該操作手段に対する入力に応じて前記読み取り手段に読み取りを実行させる読み取り制御手段と、読み取られたスキャンデータのコンピュータへの転送を、前記取得要求を受信した前記ネットワーク通信手段又は前記USB通信手段に実行させるデータ転送制御手段とを有することを特徴とする。
【0025】
このような画像形成装置では、スキャンデータの転送先のコンピュータとの接続形態を適切に多様化させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、スキャンデータの転送先のコンピュータとの接続形態を適切に多様化させることのできる画像形成装置、情報処理方法及びプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図5は、本発明の実施の形態におけるシステム構成例を示す図である。
【0028】
同図において、機器10は、少なくともスキャナとして機能する画像形成装置である。機器10は、LAN(Local Area Network)等のネットワーク40(有線又は無線の別は問わない。)を介して一台以上のPC(Personal Computer)20と接続されている。また、機器10は、PC30とUSB接続されている。
【0029】
図6は、本発明の実施の形態における機器のハードウェア構成例を示す図である。同図において、機器10は、それぞれバスBで相互に接続されている、CPU101、ROM102、RAM103、補助記憶装置104、LANコントローラ105、USBポート106、画像読み取り装置107、及び操作パネル108等より構成される。
【0030】
ROM102や補助記憶装置104には、各種のプログラムやプログラムによって利用されるデータ等が記録されている。RAM103は、プログラムをロードするための記憶領域や、ロードされたプログラムのワーク領域等として用いられる。CPU101は、RAM103にロードされたプログラムを処理することにより、後述される機能を実現する。
【0031】
LANコントローラ105は、ネットワーク40を介した通信を実現する。USBポート106は、USB(Universal Serial Bus)ケーブルを差し込む接続口である。画像読み取り装置107は、紙文書より画像データ(スキャンデータ)を読み取る。操作パネル108は、ユーザからの入力の受け付けやユーザに対する情報の通知等を行うめのボタン又はキー等の操作手段や、液晶パネル等の表示手段等を備えたハードウェアである。
【0032】
なお、機器10は、印刷装置、FAX装置等を更に備えた複合機として構成されていてもよい。
【0033】
図7は、本発明の実施の形態におけるPC及び機器のソフトウェア構成例を示す図である。同図において、PC20は、ドライバ21を有する。ドライバ21は、ネットワーク接続された機器10からのスキャンデータの取得等を制御するドライバプログラムである。
【0034】
PC30は、ドライバ31を有する。ドライバ31は、USB接続されたスキャナ510bからのスキャンデータの取得等を制御するドライバプログラムである。
【0035】
機器10は、RSHD11、USBD12、プロトコルスタック制御部13、及び読み取り制御部14等を有する。RSHD11は、リモートシェルの実行を制御するプログラムであり、本実施の形態では、ドライバ21とのネットワーク通信を制御する。
【0036】
USBD12は、USB接続におけるPC30(ドライバ31)とのUSB通信を制御するプログラムである。
【0037】
プロトコルスタック制御部13は、RSHD11又はUSBD12を用いて、ネットワーク接続又はUSB接続されたPC20又はPC30との間のスキャンデータの転送等を制御するプログラムである。
【0038】
読み取り制御部14は、画像読み取り装置107を制御して原稿からの画像の読み取りを実行させる。
【0039】
以下、PC20又はPC30と機器10とによる処理手順について説明する。なお、本実施の形態では、スキャンウェイトモードによる画像データの読み取りについて説明する。スキャンウェイトモードとは、機器10において読み取られた画像データをPC20又は30に転送する形態において、機器10の操作パネル108における操作によって読み取りを開始する方式をいう。なお、本実施の形態では、操作パネル108のスタートキーによる押下を、操作パネル108における操作の具体例として説明する。
【0040】
図8は、本実施の形態のネットワーク接続の場合の処理手順を説明するためのシーケンス図である。同図には、ネットワーク40によって接続されたPC20及び機器10間におけるスキャンデータの転送時の処理手順が示されている。
【0041】
PC20において、例えば、ドライバ21が表示させている画面を介して、ユーザによって読み取り条件の設定及び読み取り開始指示が入力されると、ドライバ21は、RSHD11との間でTCPのセッションを開設する(TCPレベルでのコネクションを確立する)(S101)。続いて、ドライバ21は、スキャンデータの取得要求をRSHD11に対し送信する(S102)。RSHD11は、当該取得要求をプロトコルスタック制御部13に通知する(S103)。当該取得要求に応じ、プロトコルスタック制御部13は、読み取り制御部14に対して読み取りの実行を要求する(S104)。読み取り制御部14は、操作パネル108を制御し、スタートキーの押下を待機させる。スタートキーが押下されると、読み取り制御部14は、読み取り装置107を制御して、原稿の読み取りを実行させる(S105)。原稿の読み取りが完了すると、読み取り制御部14は、スキャンデータの転送をプロトコルスタック制御部13に要求する(S106)。プロトコルスタック制御部13は、スキャンデータの取得要求元へのスキャンデータの送信をRSHD11に要求する(S107)。RSHD11は、スキャンデータを要求元のPC20のドライバ21に送信する(S108)。ドライバ21は、スキャンデータの受信が完了すると、セッションを切断する(S109)。
【0042】
また、図9は、本実施の形態のネットワーク接続の場合において読み取りが中止された際の処理手順を示すシーケンス図である。図9中、図8と同一部分には同一符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0043】
図8のステップS101からS104までと同様の処理が実行され、読み取り制御部14がスタートキーの押下を待機している間に、PC20において例えばドライバ21が表示させている画面を介してユーザによってキャンセル指示が入力されたとする。ここで、ドライバ21は、スキャンデータの取得要求に対する応答待ちであるため、改めてスキャンの中止要求をRSHD11に対して送信することはできない。そこで、ドライバ21は、RSHD11とのTCPのセッションを切断する(S201)。当該セッションの切断は、RSHD11によって検知される。RSHD11は、セッションの切断の検知に応じ、セッションの切断をプロトコルスタック制御部13に通知する(S202)。プロトコルスタック制御部13は、読み取り制御部14に対してセッションの切断を通知する(S203)。読み取り制御部14は、セッションの切断の通知に応じ、読み取りの終了処理を実行することにより、機器10を待機状態から解放する(S204)。
【0044】
次に、USB接続の場合の処理手順について説明する。図10は、本実施の形態のUSB接続の場合の処理手順を説明するためのシーケンス図である。同図にはUSB接続されたPC30及び機器10間におけるスキャンデータの転送時の処理手順が示されている。
【0045】
PC30において、例えば、ドライバ31が表示させている画面を介して、ユーザによって読み取り条件の設定及び読み取り開始指示が入力されると、ドライバ31は、USBD12との間でUSBレベルでの擬似的なセッション(以下、「擬似セッション」という。)を開設する(S301)。ここで、擬似セッションは、USBレベルの通知において、その切断又は破棄が、サーバ側(USBD12)において検知可能なものであればよい。
【0046】
続いて、ドライバ31は、スキャンデータの取得要求をUSBD12に対して行う(S302)。USBD12は、当該取得要求をプロトコルスタック制御部13に通知する(S303)。当該取得要求に応じ、プロトコルスタック制御部13は、読み取り制御部14に対して読み取りの実行を要求する(S304)。読み取り制御部14は、操作パネル108を制御し、スタートキーの押下を待機させる。スタートキーが押下されると、読み取り制御部14は、読み取り装置107を制御して、原稿の読み取りを実行させる(S305)。原稿の読み取りが完了すると、読み取り制御部14は、スキャンデータの転送をプロトコルスタック制御部13に要求する(S306)。プロトコルスタック制御部13は、スキャンデータの取得要求元へのスキャンデータの送信をUSBD12に要求する(S307)。USBD12は、スキャンデータを要求元のPC30のドライバ31に送信する(S308)。ドライバ31は、スキャンデータの受信が完了すると、擬似セッションを切断する(S309)。
【0047】
また、図11は、本実施の形態のUSB接続の場合において読み取りが中止された際の処理手順を示すシーケンス図である。図11中、図10と同一部分には同一符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0048】
図10のステップS301からS304までと同様の処理が実行され、読み取り制御部14がスタートキーの押下を待機している間に、PC30において例えばドライバ31が表示させている画面を介してユーザによってキャンセル指示が入力されたとする。ここで、ドライバ31は、スキャンデータの取得要求に対する応答待ちであるため、改めてスキャンの中止要求をUSBD12に対して送信することはできない。そこで、ドライバ31は、USBD12との擬似セッションを切断する(S401)。当該擬似セッションの切断は、USBD12によって検知される。USBD12は、擬似セッションの切断の検知に応じ、擬似セッションの切断をプロトコルスタック制御部13に通知する(S402)。プロトコルスタック制御部13は、読み取り制御部14に対して擬似セッションの切断を通知する(S403)。読み取り制御部14は、擬似セッションの切断の通知に応じ、読み取りの終了処理を実行することにより、機器10を待機状態から解放する(S404)。
【0049】
上述したように、本実施の形態における機器10は、ネットワーク接続及びUSB接続の双方において、スキャンウェイトモードにより処理手順を実行することができる。また、図8及び図9と図10及び図11とを比較すると明らかなように、本実施の形態では、USB接続の場合の処理シーケンスは、ネットワーク接続の場合の処理シーケンスと同様なものとなっている。すなわち、USB接続の場合に、スタートキーの状態を確認するためのポーリングは実行されない。これは、USBD12とドライバ31との間において擬似的なセッションが設けられることにより、接続形態の相違による処理手順の相違がRSHD11及びUSBD12の層において吸収されているからである。その結果、プロトコルスタック制御部13及び読み取り制御部14は、接続形態の別によらず同じ動作によってスキャンウェイトモードによるスキャンを実現することができる。したがって、プロトコルスタック制御部13及び読み取り制御部14の実装を、接続形態に対して共通なものとすることができる。また、プロトコルスタック制御部13と、RSHD11及びUSBD12との間のインタフェースを統一化してもよい。そうすることにより、プロトコルスタック制御部13において、RSHD11とUSBD12との別を意識した実装を行う必要性を軽減することができる。
【0050】
なお、ネットワーク接続における処理手順をUSB接続の場合の従来の処理手順(図3及び図4参照)に合わせることも考えられる。但し、この場合、スタートキーの接続を確認するためのポーリングをネットワーク40を介して実行することになり、ネットワークトラフィックを増加させるという問題がある。したがって、本実施の形態のように、ネットワーク接続の処理手順に統合する方が、ネットワーク負荷に対する影響の観点において好ましい。
【0051】
ところで、上記では、機器10とPC20又は30との同時期における接続の多重度が1対1の例について説明したが、1対多であってもよい。以下では、斯かる例について説明する。
【0052】
図12は、複数のネットワーク接続によるスキャン要求が同時期に発生した場合の処理手順を説明するためのシーケンス図である。同図においてPC20a及びPC20bは、図5におけるPC20の各一台に相当する。ドライバ21aは、PC20aのドライバ21であり、ドライバ21bは、PC20bのドライバ21である。
【0053】
PC20aにおいて、例えば、ドライバ21aが表示させている画面を介して、ユーザによって読み取り条件の設定及び読み取り開始指示が入力されると、ドライバ21aは、RSHD11との間でTCPのセッションを開設する(S501a)。続いて、ドライバ21aは、スキャンデータの宛先を識別するための情報(宛先情報)の登録要求をRSHD11に送信する(S502a)。宛先情報は、例えば、PC20をネットワーク40において一意に識別する情報(ホスト名又はIPアドレス等)、及びPC20aにおけるユーザを識別する情報(ユーザ名等)等を含む。なお、ユーザ名は、OS(Operating System)による認証機能において入力された認証情報より取得しても良いし、ドライバ21又はドライバ21の上位アプリケーションが認証情報を入力させるようにし、当該認証情報より取得してもよい。
【0054】
宛先情報は、プロトコルスタック制御部13を介して読み取り制御部14に通知される(S503a、S504a)。読み取り制御部14は、宛先情報をRAM103内に保持(登録)すると共に、操作パネル107の液晶パネルに宛先一覧画面を表示させ、当該宛先一覧画面に当該宛先情報を表示させる(S505a)。宛先情報の登録が正常に行われると、その旨が、ドライバ21aに返信される(S506a〜S508a)。
【0055】
続いて、ステップS509a〜S511aでは、図8のステップS102〜S104と同様の手順によって、ドライバ21aによるスキャンデータの取得要求が読み取り制御部14に通知される。したがって、この段階で機器10は、読み取りの待機状態となる。
【0056】
この待機状態において、他のPC20(PC20b)においてユーザによって読み取り条件の設定及び読み取り開始指示が入力されたとする。この場合、ドライバ21bに関してステップS501a〜S511aと同様の処理が実行される(S501b〜S511b)。なお、ステップS502b〜S504bでは、PC20bの識別情報とPC20bのユーザの識別情報とを含む情報が宛先情報として読み取り制御部14に通知される。その結果、ステップS505bにおいて宛先一覧画面は例えば以下のように表示される。
【0057】
図13は、宛先一覧画面の表示例を示す図である。同図に示される宛先一覧画面170には、二つの宛先情報の一覧が表示されている。一つはステップS504aにおいて読み取り制御部14に通知されたものであり、もう一つはステップS504bにおいて読み取り制御部14に通知されたものである。したがって、ステップS504aの段階において、宛先一覧画面170には、一つのみの宛先情報が表示されている。
【0058】
ここで、機器10(読み取り制御部14)は、待機状態となっている。そこで、ユーザが、宛先一覧画面170において、スキャンデータの宛先(転送先)を選択し、スタートボタンを押下すると(S512)、選択された宛先をスキャンデータの転送先として、図8のステップS105〜S108と同様の処理が実行され、その後、当該宛先に斯かるドライバ21とのセッションが切断される。続けて、宛先を選択し、スタートボタンが押下されると(S512)、新たに選択された宛先を転送先として、S105〜S108と同様の処理が実行される。
【0059】
なお、同時に複数の宛先の選択を可能としてもよい。この場合、複数の宛先に同じスキャンデータが送信される。
【0060】
次に、図14は、ネットワーク接続とUSB接続とによるスキャン要求が同時期に発生した場合の処理手順を説明するためのシーケンス図である。図14中、図12と同一ステップには同一ステップ番号を付している。
【0061】
ステップS501aからステップS511aまでは、図12において説明した通りである。
【0062】
機器10の待機状態において、機器10とはUSB接続しているPC30において、例えば、ドライバ31が表示させている画面を介して、ユーザによって読み取り条件の設定及び読み取り開始指示が入力されると、ドライバ31は、USBD12との間で擬似セッションを開設する(S601)。続いて、ドライバ31は、スキャンデータの宛先情報の登録要求をUSBD12に送信する(S602)。以降、ステップS603〜S605では、ステップS503a〜S505aと同様に宛先情報が読み取り制御部14に通知され、宛先一覧画面170に表示される。
【0063】
宛先情報の登録が正常に行われたことが通知されると(S606〜S608)、ステップS609〜S611において、図10のステップS302〜S304と同様の手順によって、ドライバ31によるスキャンデータの取得要求が読み取り制御部14に通知される。
【0064】
以降の処理手順は、図12において説明した通りである。
【0065】
上述したように、本実施の形態における機器10によれば、スキャンウェイトモードにおいて、ネットワーク又はUSBによって接続された複数のコンピュータからのスキャンデータの取得要求に対応することができる。その際、複数の取得要求に対するスキャンデータの転送先をユーザに適切に選択させることができる。
【0066】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】ネットワーク接続の場合のスキャンウェイトモードによる処理手順を示すシーケンス図である。
【図2】ネットワーク接続の場合のスキャンウェイトモードにおいて読み取りが中止された際の処理手順を示すシーケンス図である。
【図3】USB接続の場合のスキャンウェイトモードによる処理手順を示すシーケンス図である。
【図4】USB接続の場合のスキャンウェイトモードにおいて読み取りが中止された際の処理手順を示すシーケンス図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるシステム構成例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における機器のハードウェア構成例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるPC及び機器のソフトウェア構成例を示す図である。
【図8】本実施の形態のネットワーク接続の場合の処理手順を説明するためのシーケンス図である。
【図9】本実施の形態のネットワーク接続の場合において読み取りが中止された際の処理手順を示すシーケンス図である。
【図10】本実施の形態のUSB接続の場合の処理手順を説明するためのシーケンス図である。
【図11】本実施の形態のUSB接続の場合において読み取りが中止された際の処理手順を示すシーケンス図である。
【図12】複数のネットワーク接続によるスキャン要求が同時期に発生した場合の処理手順を説明するためのシーケンス図である。
【図13】宛先一覧画面の表示例を示す図である。
【図14】ネットワーク接続とUSB接続とによるスキャン要求が同時期に発生した場合の処理手順を説明するためのシーケンス図である。
【符号の説明】
【0068】
10 機器
11 RSHD
12 USBD
13 プロトコルスタック制御部
14 読み取り制御部
20、30 PC
21、31 ドライバ
40 ネットワーク
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 補助記憶装置
105 LANコントローラ
106 USBポート
107 画像読み取り装置
108 操作パネル
B バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読み取り手段と操作手段とを備えた画像形成装置であって、
ネットワークを介して接続されるコンピュータとの通信を制御するネットワーク通信手段と、
USBを介して接続されるコンピュータとの通信を制御するUSB通信手段と、
前記ネットワーク通信手段又は前記USB通信手段によって受信されるスキャンデータの取得要求に応じ、前記操作手段に対する入力を待機し、該操作手段に対する入力に応じて前記読み取り手段に読み取りを実行させる読み取り制御手段と、
読み取られたスキャンデータのコンピュータへの転送を、前記取得要求を受信した前記ネットワーク通信手段又は前記USB通信手段に実行させるデータ転送制御手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ネットワーク通信手段は、ネットワークを介して接続されるコンピュータからの前記取得要求ごとに該コンピュータの識別情報を受信し、
前記読み取り制御手段は、前記操作手段に対する入力が行われるまでに受信された複数の前記識別情報の一覧を表示手段に表示させ、
前記データ転送制御手段は、前記一覧において選択された前記識別情報に係るコンピュータに前記スキャンデータを転送することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ネットワーク通信手段は、ネットワークを介して前記取得要求を送信するコンピュータの識別情報を受信し、
前記USB通信手段は、USBを介して前記取得要求を送信するコンピュータの識別情報を受信し、
前記読み取り制御手段は、前記操作手段に対する入力が行われるまでに前記ネットワーク通信手段及び前記USB通信手段によって受信された前記識別情報の一覧を表示手段に表示させ、
前記データ転送制御手段は、前記一覧において選択された前記識別情報に係るコンピュータに前記スキャンデータを転送することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
読み取り手段と操作手段とを備えた画像形成装置が実行する情報処理方法であって、
ネットワークを介して接続されるコンピュータとの通信を制御するネットワーク通信手順と、
USBを介して接続されるコンピュータとの通信を制御するUSB通信手順と、
前記ネットワーク通信手順又は前記USB通信手順によって受信されるスキャンデータの取得要求に応じ、前記操作手段に対する入力を待機し、該操作手段に対する入力に応じて前記読み取り手段に読み取りを実行させる読み取り制御手順と、
読み取られたスキャンデータのコンピュータへの転送を、前記取得要求を受信した前記ネットワーク通信手順又は前記USB通信手順に実行させるデータ転送制御手順とを有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項5】
前記ネットワーク通信手順は、ネットワークを介して接続されるコンピュータからの前記取得要求ごとに該コンピュータの識別情報を受信し、
前記読み取り制御手順は、前記操作手段に対する入力が行われるまでに受信された複数の前記識別情報の一覧を表示手段に表示させ、
前記データ転送制御手順は、前記一覧において選択された前記識別情報に係るコンピュータに前記スキャンデータを転送することを特徴とする請求項4記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記ネットワーク通信手順は、ネットワークを介して前記取得要求を送信するコンピュータの識別情報を受信し、
前記USB通信手順は、USBを介して前記取得要求を送信するコンピュータの識別情報を受信し、
前記読み取り制御手順は、前記操作手段に対する入力が行われるまでに前記ネットワーク通信手順及び前記USB通信手順によって受信された前記識別情報の一覧を表示手段に表示させ、
前記データ転送制御手順は、前記一覧において選択された前記識別情報に係るコンピュータに前記スキャンデータを転送することを特徴とする請求項4又は5記載の情報処理方法。
【請求項7】
読み取り手段と操作手段とを備えた画像形成装置を、
ネットワークを介して接続されるコンピュータとの通信を制御するネットワーク通信手段と、
USBを介して接続されるコンピュータとの通信を制御するUSB通信手段と、
前記ネットワーク通信手段又は前記USB通信手段によって受信されるスキャンデータの取得要求に応じ、前記操作手段に対する入力を待機し、該操作手段に対する入力に応じて前記読み取り手段に読み取りを実行させる読み取り制御手段と、
読み取られたスキャンデータのコンピュータへの転送を、前記取得要求を受信した前記ネットワーク通信手段又は前記USB通信手段に実行させるデータ転送制御手段として機能させるためのプログラム。
【請求項8】
前記ネットワーク通信手段は、ネットワークを介して接続されるコンピュータからの前記取得要求ごとに該コンピュータの識別情報を受信し、
前記読み取り制御手段は、前記操作手段に対する入力が行われるまでに受信された複数の前記識別情報の一覧を表示手段に表示させ、
前記データ転送制御手段は、前記一覧において選択された前記識別情報に係るコンピュータに前記スキャンデータを転送することを特徴とする請求項7記載のプログラム。
【請求項9】
前記ネットワーク通信手段は、ネットワークを介して前記取得要求を送信するコンピュータの識別情報を受信し、
前記USB通信手段は、USBを介して前記取得要求を送信するコンピュータの識別情報を受信し、
前記読み取り制御手段は、前記操作手段に対する入力が行われるまでに前記ネットワーク通信手段及び前記USB通信手段によって受信された前記識別情報の一覧を表示手段に表示させ、
前記データ転送制御手段は、前記一覧において選択された前記識別情報に係るコンピュータに前記スキャンデータを転送することを特徴とする請求項7又は8記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−177367(P2009−177367A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12016(P2008−12016)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】