説明

画像形成装置、画像形成システム

【課題】装置の構造を複雑化させることなくノズル内のメニスカス面におけるインクの粘度上昇を防ぎ、かつ、より良好な画像を得ることのできる画像形成装置及び画像形成システムを実現する。
【解決手段】描画しない画素のうち、描画する画素(●)の少なくとも直前の画素は、メニスカス面を揺動させない画素(○)とし、その他の画素をメニスカス面の揺動を行う画素(◎)として適宜設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して画像を描画するインクジェット方式の画像形成装置、インクジェット方式の画像形成装置を備える画像形成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置には、印刷の指示があった場合に直ちに印刷を実行することができるように、インクを吐出するノズルに常にインクが満たされているものがある。このような画像形成装置において、ノズルの開口部におけるインクのメニスカス面では、インク中の溶媒が蒸発しやすく、インクの粘度が上昇しやすい。メニスカス面においてインクの粘度の上昇は、ノズルからのインクの吐出不良の原因となる。
【0003】
そのため、メニスカス面におけるインクの粘度の上昇が起こらないように、従来様々な技術が提案されている。このような技術としては、例えば、画像形成とは別に定期的にインクを排出させたり、メニスカス面を揺動させたり、といったものが挙げられる。また、特許文献1には、インク吐出口が形成されるオリフィスプレートに多孔質部材を設け、この多孔質部材を介して、メニスカス面に新しいインクを供給することが記載されている。
【特許文献1】特開2005−246788号公報(2005年9月15日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように多孔質部材を設けると、装置の構造が複雑になり、加工も困難である。一方、メニスカス面を揺らすようになっている装置では、メニスカス面を揺動させた直後、メニスカス面が揺動されたノズルからインクを吐出させようとしたときに、この揺動の影響により吐出不良が起こり、所望の画像が得られないことがある。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑み、装置の構造を複雑化させることなく、良好な画像を得ることのできる画像形成装置、画像形成システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、インク滴を記録媒体上に吐出して1画素の記録を行う複数のノズル、各ノズルに連通し、内部にインクを収容可能な複数の加圧室、及び、各加圧室内のインクに圧力をかけて上記ノズルから上記インク滴を吐出させる複数の圧電素子を備えるインクジェットヘッドと、上記ノズルに対応する各圧電素子に対して、描画すべき画素についてはインク滴を吐出させる第一駆動信号を印加し、同一のノズルにおける2以上の所定数以上連続する描画しない画素のうち、描画すべき画素の直前の画素を除く少なくとも1の画素については、上記ノズル内のメニスカスを揺動させるがインク滴を吐出させない第二駆動信号を印加し、描画すべき画素の直前の上記画素については上記第一及び第二駆動信号のいずれも印加しないようになっている駆動信号印加部と、を備える。
【0007】
上記画像形成装置によると、描画すべき画素の直前の画素についてはメニスカス面を揺動させないことで、この画素の直後の画素の描画において、インク滴の吐出不良を起こりにくくすることができる。その結果、上記画像形成装置によれば画像の描画不良が起こりにくく、所望の画像を得ることができる。
【0008】
また、上記所定数は3以上であって、上記駆動信号印加部は、上記ノズルに対応する各圧電素子に対して、上記所定数以上連続する描画しない上記画素のうち、描画すべき画素の直後の画素については、上記第一及び第二駆動信号のいずれも印加しないようになっていることが好ましい。
【0009】
インク滴を吐出した直後にメニスカス面を揺動させると、揺動の幅が大きくなりすぎたり、逆に小さくなりすぎたりして、インクの洩れ又はインク粘度の上昇等が起きやすい。これに対して上記画像形成装置は、インク液を吐出直後の画素についてはメニスカス面を揺動させないことで、このような問題を起こりにくくすることができる。
【0010】
また、上記課題は、画像データに応じて、階調1以上の画素については記録媒体上にインク滴を吐出し、階調ゼロの画素についてはインク滴を吐出しないことで画像を描画する画像形成装置と、上記画像形成装置に上記画像データを送信する制御装置と、を備える画像形成システムであって、上記画像形成装置は、インク滴を記録媒体上に吐出して一画素の記録を行う複数のノズル、各ノズルに連通し、内部にインクを収容可能な複数の加圧室、及び、各加圧室内のインクに圧力をかけて上記ノズルからインク滴を吐出させる複数の圧電素子を備えるインクジェットヘッドと、上記画像データに応じて、階調1以上(N−1)以下の画素についてはインク滴を吐出させる第一の駆動信号を、階調N以上の画素については上記ノズル内のメニスカスを揺動させるがインク滴の吐出はさせない第二駆動信号を、上記圧電素子に対して印加可能であって、階調ゼロの画素については上記第一及び第二駆動信号のいずれも印加しないようになっている駆動信号印加部と、を備え、上記制御装置は、最小階調がゼロで最大階調が(N−1)である階調数Nの画像データ中、同一の上記ノズルに対応し階調ゼロの画素が2以上の所定数以上連続するとき、階調1以上の画素の直前の画素を除く少なくとも1の画素に対して階調N以上とした階調数(N+1)以上の新たな画像データを生成して当てはめる画像データ生成部を備える画像形成システムによっても解決可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像形成装置によると、描画すべき画素の直前の画素については、メニスカス面を揺動させないことで、この画素の直後の描画すべき画素について、インク滴の吐出不良が起きにくい。その結果、上記画像形成装置によれば画像の描画不良が起こりにくい。また、本発明の目的は、本発明の画像形成システムによっても実現可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の一形態である画像形成装置について、図面を参照して以下に説明する。
【0013】
〔1〕画像形成装置1
図1は本実施形態の画像形成装置1の構成の要部構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置1は、制御装置10及び画像形成部20を備える。
【0015】
制御装置10は、画像データから階調数3の第一印字データ(i)を生成する画像処理部11、及び第一印字データ(i)に4番目の階調を加えて第二印字データ(ii)を生成するデータ加工部12を備える。
【0016】
画像形成部20は、インクを用紙上に吐出して画像を描くヘッド22、及びヘッド22を駆動するヘッド駆動部21を備える。
【0017】
ヘッド駆動部21は、駆動パルス(1)〜(3)を発生する駆動パルス発生部21a、及び、駆動パルス(1)〜(3)のいずれかを、第二印字データ(ii)に応じて選択し、抵抗及びコンデンサ等を介して、ヘッド22の圧電素子22aに印加するセレクタ21bを備える。ヘッド22の構造の詳細については後述する。
【0018】
なお、以下では、第一印字データ(i)の最大階調数Nは3、第二印字データ(ii)の最大階調数N’は(N+1)つまり4、駆動パルスは(1)〜(3)の3種類であるとするが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
〔2〕制御装置10
制御装置10の動作について、データ加工部12の動作を中心に、図2及び図3を参照してより詳細に説明する。図2(a)は第一印字データ(i)の一例を、図2(b)は第二印字データ(ii)の一例を、図2(c)は第二印字データ(ii)の他の例を示す図面である。これらの図面において、横方向つまり行の成分は走査方向の画素を、縦方向つまり列の成分は副走査方向の画素を示す。また、これらの図面において、1列〜n列の成分は同一のノズルにより記録される画素をそれぞれ表す。つまり、1のノズルは例えば2列目の1行目からm行目の画素を用紙上に記録し、他のノズルは例えばn列目の1行目からm行目の画素を用紙上に記録する。
【0020】
図2(a)に示すように、第一印字データ(i)は、“0(ゼロ)”、“1”、“2”の3階調からなる。データ加工部12は、第一印字データ(i)中で、列方向に階調“0”の画素が所定数以上連続するときには、これらの階調“0”の画素のうち、描画される画素の直前の画素以外から選択される少なくとも1つの画素の階調を、“3”に変更する。「描画される画素」とは、図2(a)に示す例においては、階調“1”または階調“2”の画素である。こうして、データ加工部12は、階調が変更された第二印字データ(ii)を生成する。なお、この「所定数」とは、2以上の整数であればよく、特に限定されるものではない。
【0021】
また、所定数連続する階調“0”の画素のうち、階調“3”に変更される画素の位置は、少なくとも描画される画素の直前の画素以外であって、かつ下記〔3〕欄で述べるように、吐出不良を防ぐことができる範囲内で、適宜設定可能であり、特に限定されるものではない。所定数が3以上であるときは、階調“0”から階調“3”に変更される画素は、描画される画素の直後の画素以外から選択されることが好ましい。言い換えると、階調“3”の画素は、列方向(縦方向)において、階調“1”又は“2”の画素との間に階調“0”の画素を少なくとも1つ挟んで配されることが好ましい。
【0022】
第二印字データ(ii)の一例として、図2(b)に示す印字データは、図2(a)の印字データ(i)中で列方向に階調“0”の画素が3以上連続するとき、これらの階調“0”の画素のうち、階調“1”または階調“2”の画素の直前及び直後の画素を除いて、全ての画素の階調が“3”に変更されている。言い換えると、階調“1”または階調“2”の画素から列方向2つ目の画素から、階調“1”または階調“2”の画素の2つ手前までの画素が、全て階調“3”となっている。
【0023】
また、第二印字データ(ii)の他の例として、図2(c)に示す印字データは、図2(a)の印字データ(i)中で列方向に階調“0”の画素が3以上連続するとき、これら階調“0”の画素のうち、階調“1”または階調“2”から列方向2つ目の画素から、階調“1”または階調“2”の画素の2つ手前までの画素が、1つ置きに階調“3”となっている。
【0024】
なお、以上では最大階調数Nが3の場合について述べたが、さらに付加する階調を“3”としたが、本発明はこれに限定されるものではない。最大階調数Nの第一印字データ(i)には、0、1、2、・・・(N−1)の階調が含まれ得る。データ加工部12は、この印字データ(i)に少なくとも1つの階調、つまり(N+1)番目の階調(図2(b)及び図2(c)の例では階調“3”)を少なくとも付加するようになっている。
【0025】
図3(a)〜図3(c)には、最大階調数Nが2である場合、つまり階調が0及び1の2つである場合の第一印字データ(i)の一例、及びこれを加工してなる第二印字データ(ii)の2つの例を示す。図3(b)の第二印字データ(ii)は、データ加工部12で図2(b)と同様の処理を経て生成され、階調“1”の画素から列方向2つ目の画素から、階調“1”の画素の2つ手前までの画素が、全て階調“2”となっている。また、図3(c)の第二印字データ(ii)は、データ加工部12で図2(c)と同様の処理を経て生成され、階調“1”から列方向2つ目の画素から、階調“1”の画素の2つ手前までの画素が、1つ置きに階調“2”となっている。
【0026】
〔3〕画像形成部20
(3-1)ヘッド22
ヘッド22はいわゆるライン型ヘッドである。ヘッド22の要部構成を示す平面図を図4に、断面図を図5に示す。
【0027】
図4に示すように、ヘッド22は、用紙に対向する吐出面23をさらに備える。用紙は、図示しない搬送部によって図4中に示す方向Dに搬送されるようになっており、吐出面23から吐出されたインク滴を受けるようになっている。吐出面23の長手方向(方向Dに直行する方向)の大きさは用紙の印字領域の最大幅Eより大きくなっている。吐出面23には、ノズル24の開口部である微小径を有する吐出口25が、吐出面23の長手方向において少なくとも最大幅Eに渡って複数設けられる。
【0028】
図5に示すように、ヘッド22は、吐出面23の吐出口25以外の覆う撥水膜23aと、吐出口25に対して1つずつ設けられた加圧室26と、インクを貯留する図示しないインク槽と、インク槽から複数の加圧室26にインクを供給する共通流路27とを備える。加圧室26と共通流路27とは供給孔28で繋げられており、この供給孔28を介して共通流路27から加圧室26にインクが供給される。ノズル24は加圧室26内から吐出口25まで連続している。加圧室26の壁のうち吐出面23と逆側の壁は振動板29で構成されており、振動板29は複数の加圧室26に渡って連続して形成されており、振動板29には同様に複数の加圧室26に渡って連続して形成された共通電極30が積層されている。共通電極30上には、加圧室26毎に別個の圧電素子22aが設けられており、共通電極30と共に圧電素子22aを挟むようにこれも加圧室26毎に別個の個別電極31が設けられる。
【0029】
上述のヘッド駆動部21bからの駆動パルスが個別電極31に、印加されることで、各圧電素子22aは個別に駆動される。この駆動による圧電素子22aの変形が振動板29に伝えられ、振動板29の変形によって加圧室26は圧縮される。その結果、加圧室26内のインクに圧力が加わり、ノズル24を通ったインクが吐出口25からインク滴となって用紙上に吐出される。
【0030】
インク滴が吐出されない間も、ノズル24内にはインクが入っており、ノズル24内でインクはメニスカス面Mを形成している。
【0031】
(3-2)ヘッド駆動部21
ヘッド駆動部21によるヘッド22の駆動について、図6〜図9を参照して以下に具体的に説明する。
【0032】
図6(a)〜図6(c)は駆動パルス(1)〜(3)の波形の例をそれぞれ表す図面であり、図7(a)〜図7(c)はセレクタ21bによって駆動パルス(1)〜(3)がそれぞれ選択されたときの圧電素子22aにかかる駆動電圧と、この圧電素子22aに対応するノズル2内のインクの流速(ノズル内流速[m/s])とを示す図面である。また、図8(a)は、駆動パルス(3)の波形の他の例を示し、図8(b)は図8(a)に示す波形の駆動パルス(3)がセレクタ21bによって選択されたときの圧電素子22aにかかる駆動電圧と、この圧電素子22aに対応するノズル内流速とを示す図面である。
【0033】
図6(a)〜図6(c)に示すように、駆動パルス(1)は1のパルスからなり、駆動パルス(2)は、駆動パルス(1)と同一幅のパルスが2つ連続してなり、駆動パルス(3)は、駆動パルス(1)のパルス幅よりも小さい幅のパルスが複数回繰り返されてなる。
【0034】
駆動パルス(1)のパルス幅は、ヘッド流路の固有振動周期(本例では13 usec)の半周期に近い長さ(本例では約7 usec)となるように設定される。ここで「ヘッド流路」とは、ノズル24、加圧室26、及び供給孔28を含む部分を意味する。よって、図7(a)に示すように、圧電素子22aに印加される駆動電圧のパルス幅も、同様にヘッド流路の固有振動周期の半分に近い長さになる。このような駆動電圧によると、ノズル内流速は10m/sを超えるので、1つのインク滴が吐出口25から吐出される。
【0035】
図7(b)に示すように、駆動パルス(1)と同一幅のパルスが2つ連続した駆動パルス(2)が選択されると、2つのインク滴が吐出口25から吐出される。すなわち、駆動パルス(1)が選択されたときと比較して、一画素当たりに吐出されるインクの体積が2倍となる。
【0036】
駆動パルス(3)のパルス幅は、ヘッド流路の固有振動周期よりかなり短く設定される。よって、図7(c)に示すように、圧電素子22aに印加される駆動電圧のパルス幅も、同様にヘッド流路の固有振動周期よりかなり短くなる。このような短いパルスが連続すると、ノズル内流速は、メニスカス面Mが揺動されるもののインク滴が吐出されない程度の値となる。
【0037】
なお、駆動パルス(3)の波形は、図6(c)の形に限定されるものではなく、ノズル24内のメニスカス面Mを揺動させ、かつインク滴を吐出させないものであればよい。このような駆動パルス(3)の例としては、図8(a)に示すように、パルス幅がヘッド流路の固有振動周期に近いものが挙げられる。図8(a)この駆動パルス(3)によると、図8(b)に示すように、ノズル内流速の振動が打ち消されるので、メニスカス面Mを大きく揺らすことができ、かつインク滴が形成されないようにすることができる。
【0038】
セレクタ21bは、制御装置10からの第二印字データ(ii)中、階調“1”については駆動パルス(1)を、階調“2”については駆動パルス(2)を、階調“3”については駆動パルス(3)を選択して圧電素子22aに印加し、階調“0”についてはいずれの駆動パルスも印加しないようになっている。
【0039】
図9(a)は、仮に図2(a)の第一印字データ(i)に基づいてセレクタ12bが駆動パルスを選択するとしたときのヘッド22の動作を示す図面であり、図9(b)及び図9(c)は、それぞれ図2(b)及び(c)の第二印字データ(ii)に基づいてセレクタ12が選択した駆動パルスによるヘッド22の動作を示す図面である。図9(a)〜図9(c)において、丸はそれぞれ図2(a)〜図2(c)の画素に対応する。また、黒丸(●)はインク滴が吐出される画素を、二重丸(◎)はメニスカス面Mが揺動される画素を、一重丸(○)は、インク滴の吐出もメニスカス面Mの揺動も行われない画素を示す。なお、図9(a)〜図9(c)では、説明の便宜上、駆動パルス(1)及び(2)によるインク滴の吐出を区別せずに同一の黒丸(●)で表す。
【0040】
セレクタ21bが上述したように第二印字データ(ii)に基づいて駆動パルスを選択すると、図9(b)及び図9(c)に示すように、列方向において、黒丸(●)と二重丸(◎)との間に、少なくとも1つの一重丸(○)が挟まれている。つまり、或るノズル24からインク滴が吐出されて1つの画素の記録が行われた後、メニスカス面Mの揺動が行われるまで、少なくとも1の画素の記録にかかる時間は、このノズル24においてはインクの吐出もメニスカス面Mの揺動も行われない。同様に、或るノズル24でメニスカス面Mが揺動された後、インク液が吐出されるまでの間に、少なくとも1の画素の記録にかかる時間は、このノズル24においてはインクの吐出もメニスカス面Mの揺動も行われない。
【0041】
図9(a)に示すように、描画しない画素について、全くメニスカス面Mを揺動させなければ、ノズル24内ではインクの粘度が増加し、吐出不良が起きる。
【0042】
一方、メニスカス面Mを揺動させる駆動電圧の波形は、インク滴を吐出させる駆動電圧の波形と同様に、ノズル内流速の振動と位相を異にしている(図7(a)〜図7(c)及び図8(b))。それゆえ、駆動パルス(3)によりノズル内流速が振動され、メニスカス面Mが揺動された後、このノズル内流速の振動が充分に小さくなる前に駆動パルス(1)又は(2)が印加されると、所望の大きさのインク滴を安定に形成することができず、吐出不良が起きることがある。
【0043】
これに対して、本実施形態の画像形成装置1では、上述したとおり、或るノズル24でメニスカス面Mが揺動された後、同一のノズル24からインク滴の吐出を行うまでに、1画素の記録にかかる時間以上、ノズル内流速を振動させないようになっている(図9(b)及び図9(c))。よって、画像形成装置1では、ノズル内流速の振動が小さくなってからインク滴の吐出を行うことができる。その結果、上述のような吐出不良は起こりにくくなる。
【0044】
また、インク滴を吐出した後、吐出によって生じたノズル内流速の振動が充分に小さくならないうちに駆動パルス(3)が印加されると、メニスカス面Mの揺動幅が大きくなりすぎてインクが吐出口25から外にこぼれたり、逆にメニスカス面Mの揺動幅が小さく、インクの粘度防止という効果が充分に得られなかったりすることがある。
【0045】
これに対して、本実施形態の画像形成装置1では、上述したとおり、或るノズル24からインク滴吐出後、同一のノズル24でメニスカス面Mの揺動を行うまでに、1画素の記録にかかる時間以上、ノズル内流速を振動させないようになっている(図9(b)及び図9(c))。よって、画像形成装置1では、ノズル内流速の振動が小さくなってからメニスカス面Mの揺動を行うことができる。その結果、上述のような問題は起こりにくくなる。
【0046】
なお、上記制御装置10内の各ブロックは、ハードウェアロジックによって実現されてもよいし、コンピュータを用いてソフトウェアによって実現されてもよい。ソフトウェアによって実現される場合、制御装置10は、CPU(central processing unit)、ROM(read only memory)、RAM(random access memory)等を備え、各ブロックは、CPUがROMから読み出したプログラムをRAM上で展開することで実現される。すなわち、コンピュータをデータ加工部12として機能させるプログラムによっても、本形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
以上の実施形態では、本発明の目的を画像形成装置1という一つの装置にて達成するものとしたが、これ以外にも、制御装置10の機能を果たす装置と、この装置とは別に画像形成部20の機能を果たす装置とを備える画像形成システムも、本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施形態の画像形成装置1の構成の要部構成を示すブロック図である。
【図2】図2(a)は最大階調数Nが3である場合の第一印字データ(i)の一例を、図2(b)は図2(a)の第一印字データ(i)が加工されてなる第二印字データ(ii)の一例を、図2(c)は第二印字データ(ii)の他の例を示す図面である。
【図3】図3(a)は最大階調数Nが2である場合の第一印字データ(i)の一例を、図3(b)は図3(a)の第一印字データ(i)を加工してなる第二印字データ(ii)の一例を、図3(c)は第二印字データ(ii)の他の例を示す図面である。
【図4】ヘッド22の要部構成を示す平面図である。
【図5】ヘッド22の要部構成を示す断面図である。
【図6】図6(a)〜図6(c)は駆動パルス(1)〜(3)の波形の例をそれぞれ表す図面である。
【図7】図7(a)〜図7(c)はセレクタ21bによって駆動パルス(1)〜(3)がそれぞれ選択されたときの圧電素子22aにかかる駆動電圧と、この圧電素子22aに対応するノズル2内のインクの流速とを示す図面である。
【図8】図8(a)は、駆動パルス(3)の波形の他の例を示す図面であり、図8(b)は図8(a)に示す波形の駆動パルス(3)がセレクタ21bによって選択されたときの圧電素子22aにかかる駆動電圧と、この圧電素子22aに対応するノズル内流速とを示す図面である。
【図9】図9(a)は、仮に図2(a)の第一印字データ(i)に基づいてセレクタ12bが駆動パルスを選択するとしたときのヘッド22の動作を示す図面であり、図9(b)及び図9(c)は、それぞれ図2(b)及び(c)の第二印字データ(ii)に基づいてセレクタ12が選択した駆動パルスによるヘッド22の動作を示す図面である。
【符号の説明】
【0049】
1 画像形成装置
10 制御装置
11 画像処理部
12 データ加工部
20 画像形成部
21 ヘッド駆動部
21a 駆動パルス発生部
21b セレクタ(駆動信号印加部の一例)
22 ヘッド
22a 圧電素子
23 吐出面
23a 撥水膜
24 ノズル
25 吐出口
26 加圧室
27 共通流路
28 供給孔
29 振動板
30 共通電極
31 個別電極
M メニスカス面
(i) 第一印字データ
(ii)第二印字データ
(1)、(2) 駆動パルス(第一駆動信号)
(3) 第二駆動信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴を記録媒体上に吐出して1画素の記録を行う複数のノズル、各ノズルに連通し、内部にインクを収容可能な複数の加圧室、及び、各加圧室内のインクに圧力をかけて上記ノズルから上記インク滴を吐出させる複数の圧電素子を備えるインクジェットヘッドと、
上記ノズルに対応する各圧電素子に対して、描画すべき画素についてはインク滴を吐出させる第一駆動信号を印加し、同一のノズルにおける2以上の所定数以上連続する描画しない画素のうち、描画すべき画素の直前の画素を除く少なくとも1の画素については、上記ノズル内のメニスカスを揺動させるがインク滴を吐出させない第二駆動信号を印加し、描画すべき画素の直前の上記画素については上記第一及び第二駆動信号のいずれも印加しないようになっている駆動信号印加部と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
上記所定数は3以上であって、
上記駆動信号印加部は、上記ノズルに対応する各圧電素子に対して、上記所定数以上連続する描画しない上記画素のうち、描画すべき画素の直後の画素については、上記第一及び第二駆動信号のいずれも印加しないようになっている請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
画像データに応じて、階調1以上の画素については記録媒体上にインク滴を吐出し、階調ゼロの画素についてはインク滴を吐出しないことで画像を描画する画像形成装置と、上記画像形成装置に上記画像データを送信する制御装置と、を備える画像形成システムであって、
上記画像形成装置は、
インク滴を記録媒体上に吐出して一画素の記録を行う複数のノズル、各ノズルに連通し、内部にインクを収容可能な複数の加圧室、及び、各加圧室内のインクに圧力をかけて上記ノズルからインク滴を吐出させる複数の圧電素子を備えるインクジェットヘッドと、
上記画像データに応じて、階調1以上(N−1)以下の画素についてはインク滴を吐出させる第一の駆動信号を、階調N以上の画素については上記ノズル内のメニスカスを揺動させるがインク滴の吐出はさせない第二駆動信号を、上記圧電素子に対して印加可能であって、階調ゼロの画素については上記第一及び第二駆動信号のいずれも印加しないようになっている駆動信号印加部と、を備え、
上記制御装置は、最小階調がゼロで最大階調が(N−1)である階調数Nの画像データ中、同一の上記ノズルに対応し階調ゼロの画素が2以上の所定数以上連続するとき、階調1以上の画素の直前の画素を除く少なくとも1の画素に対して階調N以上とした階調数(N+1)以上の新たな画像データを生成して当てはめる画像データ生成部を備える画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−238644(P2008−238644A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83786(P2007−83786)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】