説明

画像形成装置、画像形成方法及び、画像形成プログラム

【課題】圧接離間機能に関する動作異常の発生を検知した後に電源を入れ直すだけでは解消しない再発する動作異常を、初期動作で発見する。
【解決手段】複数のイメージングユニットのそれぞれに形成されたトナー像を1つの転写媒体に転写する工程を経て画像を形成する画像形成装置であって、複数のイメージングユニットと転写媒体との圧接と離間とを切替えて2状態以上の圧接離間モードのうちの何れかに遷移させる圧接離間手段と、圧接離間手段に関する動作異常を検知する検知手段と、検知手段により動作異常が検知された場合に復帰動作を実施するにあたり、2状態以上の圧接離間モード間で生じ得るあらゆる圧接離間モード間の遷移動作パターンに基づいて動作させ検査する復帰手段(ステップS28〜S33)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体と1次転写ベルトとの圧接離間機能を備える画像形成装置に関し、特に、圧接離間機能に関する動作異常の発生を検知した後に、動作異常を再発させず、初期動作で的確に発見するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、感光体と1次転写ベルトとの圧接離間機能を備える画像形成装置において、圧接離間機能に関する動作異常の発生を検知した時には、動作を停止しサービスコールを促すメッセージを表示パネルに出力させている。
また、突発的なノイズ等の影響により圧接離間機能に関する動作異常が発生した場合には、一度メインスイッチを切り電源を入れ直すだけで動作異常が解消し正常に動作することも多い。
【0003】
そこで、最近の新機種の中には、圧接離間機能に関する動作異常の発生を検知した時に、いきなりサービスコールを促すのではなく、その前にメインスイッチのオフオンを促すメッセージを表示パネルに出力させるものがある。このメッセージを見たユーザがサービスを呼ぶ前にメインスイッチのオフオンを行うことによって、無駄にサービスマンが呼ばれてサービスコストが余計にかかってしまうような事態を減らすことができる。
【0004】
一方、電源を入れたときの初期動作では一般に、感光体と1次転写ベルトとが圧接状態であれば一旦離間動作を行うようになっているが、時間的な制約があるので、あらゆるパターンに基づいて動作させ、異常がないか全て検査するようなことはしない。
ここで、感光体と1次転写ベルトとの圧接離間機能を備える画像形成装置が、特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2007-232941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特定のパターンにおいてのみ発生するような動作異常の場合には、電源を入れ直すだけでは動作異常は解消しないにもかかわらず、メインスイッチのオフオンを行うと初期動作では問題なくあたかも正常であるかのように動作してしまい、動作中に再び同じ動作異常が再発するという大変困った事態に陥ることがある。
上記のような事態になり、動作異常は解消していないにもかかわらず正常であるかのように動作したり、同じ動作異常を繰り返したりすると、感光体と1次転写ベルトとが離間していない状態で無理な動作開始や停止が繰り返され、感光体と1次転写ベルトとが擦れて双方に多大なダメージを与える可能性があり、何らかの対策が望まれる。
【0006】
本発明は、圧接離間機能に関する動作異常の発生を検知した後に、電源を入れ直すだけでは解消しない再発する動作異常を、初期動作で発見することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る画像形成装置は、複数のイメージングユニットのそれぞれに形成されたトナー像を1つの転写媒体に転写する工程を経て画像を形成する画像形成装置であって、前記複数のイメージングユニットと前記転写媒体とのそれぞれの圧接と離間とを切替えて、2状態以上の圧接離間モードのうちの何れかに遷移させる圧接離間手段と、圧接離間手段に関する動作異常を検知する検知手段と、検知手段により動作異常が検知された場合に復帰動作を実施するにあたり、前記2状態以上の圧接離間モード間で生じ得るあらゆる圧接離間モード間の遷移動作パターンに基づいて動作させ検査する復帰手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る画像形成方法は、複数のイメージングユニットのそれぞれに形成されたトナー像を1つの転写媒体に転写する工程を経て画像を形成する画像形成装置における画像形成方法であって、前記画像形成装置は、前記複数のイメージングユニットと前記転写媒体とのそれぞれの圧接と離間とを切替えて、2状態以上の圧接離間モードのうちの何れかに遷移させる圧接離間手段を備え、圧接離間手段に関する動作異常を検知する検知ステップと、検知ステップにより動作異常が検知された場合に復帰動作を実施するにあたり、前記2状態以上の圧接離間モード間で生じ得るあらゆる圧接離間モード間の遷移動作パターンに基づいて動作させ検査する復帰ステップとを含むことを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る画像形成画像形成プログラムは、複数のイメージングユニットのそれぞれに形成されたトナー像を1つの転写媒体に転写する工程を経て画像を形成する画像形成装置における画像形成プログラムであって、前記画像形成装置は、前記複数のイメージングユニットと前記転写媒体とのそれぞれの圧接と離間とを切替えて、2状態以上の圧接離間モードのうちの何れかに遷移させる圧接離間手段を備え、前記画像形成装置に、圧接離間手段に関する動作異常を検知する検知ステップと、検知ステップにより動作異常が検知された場合に復帰動作を実施するにあたり、前記2状態以上の圧接離間モード間で生じ得るあらゆる圧接離間モード間の遷移動作パターンに基づいて動作させ検査する復帰ステップとを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
課題を解決するための手段に記載した構成により、圧接離間手段に関する動作異常の検知後の初期動作において、従来の初期動作では動かしていなかったパターンも動かして検査することができるので、電源を入れ直すだけでは解消しない再発する動作異常を初期動作で発見することができる。
従って、同じ動作異常を繰り返し、感光体と1次転写ベルトとが離間していない状態で無理な動作開始や停止が繰り返され、感光体と1次転写ベルトとが擦れて双方に多大なダメージを与えるようなことがなくなる。
【0011】
ここで、画像形成装置において、前記複数のイメージングユニットは、黒用1つと、カラー用3つの、合計4つがあり、前記2状態以上の圧接離間モードには、4つのイメージングユニットが全て離間した全離間状態と、黒用の1つのイメージングユニットのみが接触した黒圧接状態と、4つのイメージングユニットが全て接触した全圧接状態とがあり、前記復帰手段は、前記復帰動作を実施するにあたり、全圧接状態から黒圧接状態へ遷移する第1遷移動作と、黒圧接状態から全離間状態へ遷移する第2遷移動作と、全離間状態から全圧接状態へ遷移する第3遷移動作と、全圧接状態から全離間状態へ遷移する第4遷移動作と、全離間状態から黒圧接状態へ遷移する第5遷移動作と、黒圧接状態から全圧接状態へ遷移する第6遷移動作とを、異常がないか全て検査することを特徴とすることもできる。
【0012】
これにより、復帰動作を実施するにあたり、第1遷移動作から第6遷移動作までの6つの遷移動作を全て検査することができるので、第1遷移動作から第6遷移動作までの何れかの遷移動作パターンにおいてのみ発生するような動作異常であっても、メインスイッチのオフオンを行うと初期動作で発見することができる。
ここで、画像形成装置において、前記復帰手段は、動作異常後の復帰動作でない初期動作を実施するにあたり、あらゆる圧接離間モード間の遷移動作パターンに基づいて動作させ検査することなく、必要最低限の遷移動作パターンに基づいて動作させ検査することを特徴とすることもできる。
【0013】
これにより、動作異常後の復帰動作でない初期動作を実施する場合には、必要最低限の遷移動作パターンを実行するので、待ち時間を無駄に増やすことがない。
ここで、画像形成装置において、前記検知手段は、動作異常を検知した場合に、その旨を不揮発性の記憶媒体に記憶し、前記圧接離間手段は、電源投入直後の初期動作において、前記記憶媒体に動作異常を検知した旨が記憶されていない場合に必要最低限の遷移動作パターンを実行し、記憶されている場合にあらゆる圧接離間モード間の遷移動作パターンを異常がないか全て検査し、さらに異常がなかった場合に前記記憶媒体に記憶されている動作異常を検知した旨を消去することを特徴とすることもできる。
【0014】
これにより、動作異常を検知した旨を不揮発性の記憶媒体に記憶するので、電源投入直後の初期動作において、動作異常を検知した後の復帰動作なのか、動作異常後の復帰動作でない初期動作なのかを容易に判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[実施の形態1]
<概要>
1.画像形成装置の全体構成
実施の形態1の画像形成装置は、圧接離間機能に関する動作異常を検知した場合に、不揮発性の記憶媒体にその旨を記憶し、電源投入直後の初期動作において、不揮発性の記憶媒体にその旨が記憶されていない場合に必要最低限の遷移動作パターンを実行し、記憶されている場合にあらゆる接触離間モード間の遷移動作パターンに基づいて動作させ、異常がないか全て検査する。
【0016】
<構成>
図1は、実施の形態1における画像形成装置の全体構成を示す図である。
図1に示すように、本実施の形態における画像形成装置1は、タンデム型カラーデジタルプリンタであり、画像プロセス部2、給送部4、定着装置5、制御部6を備え、ネットワーク(例えば社内LAN)に接続されて、社内の端末装置から印刷の実行指示を受付けると、その指示に従って、記録シート上にカラー画像を形成して出力する。
【0017】
画像プロセス部2は、主に画像の形成を担う部分であり、矢印Aに示す方向に循環する1次転写ベルト11に添って、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれのトナー像を形成する画像形成ユニット3Y、3M、3C、3Kが順に配列され、各画像形成ユニットの下方には、レーザダイオード等の発光素子を備える光学部10が配置されている。なお画像プロセス部2において、参照番号の後に“Y”が付いている構成要素を主体とする画像形成ユニットがイエローのトナーによる画像を生成し、以下同様に参照番号の後に“M”が付いている構成要素を主体とする画像形成ユニットがマゼンタのトナーによる画像を生成し、参照番号の後に“C”が付いている構成要素を主体とする画像形成ユニットがシアンのトナーによる画像を生成し、参照番号の後に“K”が付いている構成要素を主体とする画像形成ユニットがブラックのトナーによる画像を生成する。
【0018】
画像形成ユニット3Yは、感光体ドラム31Yと、その周辺に配設された帯電器32Y、現像器33Y、1次転写ローラ34Y、及びクリーナ35Yを備えている。
イエローのトナーによる画像を生成するにあたり、帯電器32Yが感光体ドラム31Yを一様に帯電させ、制御部6の制御により、光学部10が一様に帯電した感光体ドラム31Yへレーザ光Lを出射して静電潜像を形成し、形成された静電潜像に現像器33Yがイエローのトナーによる現像を行い、現像されたトナー像が1次転写ベルト11に1次転写され、1次転写後、感光体ドラム31Yに残留するトナーがクリーナ35Yによって除去される。
【0019】
画像形成ユニット3M、3C、3Kについても、画像形成ユニット3Yと同様の構成を備え(図中の符号を省略している)、同様に各色のトナーによる画像を生成する。
1次転写ベルト11に1次転写されるトナー像は、画像形成ユニットのそれぞれを通過する毎にそれぞれの色が重ねられ、最終的にフルカラーのトナー画像が生成される。
一方、給送部4は、主に記録シートの搬送を担う部分であり、記録シートSを納める給紙カセット41と、納められている記録シートSを搬送路43へ1枚ずつ繰り出す繰り出しローラ42と、繰り出された記録シートSを送り出すタイミングを図るタイミングローラ対44と、2次転写ローラ45とを備え、記録シートSが2次転写位置46まで搬送され、1次転写ベルト11に生成されたフルカラーのトナー画像が、2次転写位置46において記録シートSに2次転写される。
【0020】
定着装置5は、トナー画像が2次転写された記録シートSを加熱及び加圧して、トナー画像を記録シートSに定着させる。
定着後の記録シートSは排紙ローラ71等の駆動により排紙トレイ72へ排紙される。
制御部6は、画像形成装置1の全体の動作や温調等を一括して制御するコントローラであり、形成すべき画像のデータに基づいて、各画像形成ユニット別に光学部10の発光素子用の駆動信号を生成し、1次転写において各色のトナー像を正確に重ねたり、2次転写において記録シートSにトナー画像が正確に転写されるようにタイミングを調整する。
2.圧接離間機能の概要
図2(a)、(b)、(c)は、1次転写ローラ34Y、34M、34C、34Kの圧接離間モードを示す図である。
【0021】
1次転写ベルト11を、感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kへ、圧接、及び離間するには、1次転写ベルト11の内周に設けられた1次転写ローラ34Y、34M、34C、34Kを圧接、及び離間することにより行う。1次転写ローラ34Y、34M、34C、34Kの圧接、及び離間は、専用のモータ36(例えば、ステッピングモータ)を動力源とし、圧接、及び離間の状態を判別する2個のセンサ(図示せず)の出力に基づいて制御する。モータ36を回転駆動させるカム(図示せず)が回転し、各1次転写ローラの圧接離間モードが変化する。カムの回転角が所定の角度を越える毎に、2個のセンサのオン/オフの状態がそれぞれ切り替わる。なお、本願の圧接離間機能に関しては、本願と同一の出願人による特開2007-232941号公報(特許文献1)に公開されているので、詳細な説明は省略する。
【0022】
本実施の形態では、主に感光体ドラム31Y、31M、31C、31K、及び1次転写ベルト11の寿命を延ばすため、待機時、モノクロモードプリント時及び、カラーモードプリント時のそれぞれに対し、使用する感光体ドラムの違いに応じて1次転写ローラの圧接離間モードを切り替えている。
待機時には、図2(a)に示すように、1次転写ローラ34Y、34M、34C、34Kを全て離間した全離間状態にする。1次転写ベルト11と各感光体ドラムとが接触したままであると、感光体ドラムにメモリ画像が発生して形成する画像にムラができることがあり、このような不具合を防止するために有効な手段である。
【0023】
モノクロモードプリント時には、図2(b)に示すように、1次転写ローラ34Y、34M、34Cを離間し、1次転写ローラ34Kのみが1次転写ベルト11と接触した黒圧接状態にする。従って、画像形成中でありながら、感光体ドラム31Y、31M、31Cの回転を停止することができる。
カラーモードプリント時には、図2(c)に示すように、1次転写ローラ34Y、34M、34C、34Kを全て1次転写ベルト11と接触した全圧接状態にする。
【0024】
なお、転写抜けを防止するために、1次転写ローラ34Yの上流側に補助ローラ37を設け、1次転写ローラ34Yと感光体ドラム31Yとの接触面を適正化している。
3.画像形成装置の機能構成
図3は、実施の形態1における画像形成装置1の機能構成を示す図である。
図3に示すように、画像形成装置1は、圧接離間部81、検知部82、復帰部83を備える。
【0025】
圧接離間部81は、1次転写ローラ34Y、34M、34C、34Kを圧接、及び離間する上記モータ36やカム、2個のセンサ、及び、図1における制御部6による動作制御の一部に相当し、複数のイメージングユニット(画像形成ユニット3Y、3M、3C、3Kに相当)と、転写媒体(1次転写ベルト11に相当)との圧接と離間とを切替えて、2状態以上の圧接離間モード(待機時、モノクロモードプリント時及び、カラーモードプリント時の各状態に相当)のうちの何れかに遷移させる。
【0026】
検知部82は、図1における制御部6によるエラー処理制御に相当し、カムの回転角に応じてオン/オフが切り替わる上記2個のセンサの出力信号に基づいて、圧接離間部81に関する動作異常を検知し、その旨を示す圧接離間異常情報を不揮発性の記憶媒体に記憶する。
圧接離間部81に関する動作異常は、以下の2通りの方法で検出する。
【0027】
(1)各圧接又は離間動作を行うにあたり、ステッピングモータのドライバに対して動作に必要なパルスを与え終わった後に、対応するセンサからの出力が予定された状態を示すものでない時。
(2)各圧接又は離間動作を開始して所定時間が経過しても、対応するセンサからの出力が予定された状態を示さない時。
【0028】
図4は、プリント動作時、及び初期動作時に発生し得る圧接離間モード間の遷移動作パターンを一覧にまとめた図である。
図4に示すように、黒用1つと、カラー用3つの、合計4つのイメージングユニットが全て離間した全離間状態、黒用の1つのイメージングユニットのみが接触した黒圧接状態、4つのイメージングユニットが全て接触した全圧接状態の3つの圧接離間モード間の遷移動作パターンは、全圧接状態から黒圧接状態へ遷移する第1遷移動作(カラープリント→モノクロプリントの直接切替え時に行われる)と、黒圧接状態から全離間状態へ遷移する第2遷移動作(モノクロプリント→停止、及び通常の初期動作時に行われる)と、全離間状態から全圧接状態へ遷移する第3遷移動作(停止→カラープリント時に行われる)と、全圧接状態から全離間状態へ遷移する第4遷移動作(カラープリン→停止、及び通常の初期動作時に行われる)と、全離間状態から黒圧接状態へ遷移する第5遷移動作(停止→モノクロプリント時に行われる)と、黒圧接状態から全圧接状態へ遷移する第6遷移動作(モノクロプリント→カラープリントの直接切替え時に行われる)の6パターンが考えられる。
【0029】
復帰部83は、図1における制御部6による初期動作制御に相当し、動作異常後の復帰動作でない初期動作を実施するにあたり、2状態以上の圧接離間モード間で生じ得るあらゆる圧接離間モード間の遷移動作パターンに基づいて動作させ検査することなく、必要最低限の遷移動作パターンを実行し、また検知部82により動作異常が検知された場合に、動作を停止させた後復帰動作を実施するにあたり、2状態以上の圧接離間モード間で生じ得るあらゆる圧接離間モード間の遷移動作パターンに基づいて動作させ、異常がないか全て検査する。より具体的には、電源投入直後の初期動作を実施するにあたり、検知部82が備える不揮発性の記憶媒体に圧接離間異常情報が記憶されていない場合に、全離間以外の状態であると検知すれば全離間へ遷移する遷移動作を実行し、当該記憶媒体に圧接離間異常情報が記憶されている場合に、図4に示した第1遷移動作から第6遷移動作までの6つ全ての遷移動作パターンを異常がないか全て検査し、さらに、異常がなかった場合に当該記憶媒体に記憶されている動作異常を検知した旨を消去する。
4.不具合の検討
ここで、動作異常後の復帰動作において、従来のように、2状態以上の圧接離間モード間で生じ得るあらゆる圧接離間モード間の遷移動作パターンに基づいて動作させ検査することなく、全離間以外の状態であると検知すれば全離間へ遷移する遷移動作を実行し、全離間の状態であると検知すれば遷移動作を一切実行しないような場合に、想定し得る特に問題のある不具合について検討する。
【0030】
・全離間状態から全圧接状態へ遷移する第3遷移動作において動作異常が起こった場合、
第3遷移動作はカラープリントの開始時に行われる。例えば、センサの故障により、4つのイメージングユニットが全て圧接しているにもかかわらず、センサがそれを検知できずにエラーが発生するような状況が想定される。
【0031】
このような状況から、メインスイッチをオフオンすると、電源投入直後の初期動作において、センサは全離間であると検知するので、遷移動作を一切実行しない。その後、プリント開始時に各感光体ドラム、及び、1次転写ベルトの回転を開始するが、実際には全圧接状態でありながら制御部6は全離間であると思っているので、双方が安定回転に達するまでの間に、線速度の差により各感光体ドラムと1次転写ベルトとの間に擦れが生じて、双方にダメージを与える。
【0032】
・全圧接状態から黒圧接状態へ遷移する第1遷移動作において動作異常が起こった場合、
第1遷移動作はカラープリントからモノクロプリントへの直接切替え時に行われる。例えば、カムが部分的に破損し、黒圧接状態まで動かず、センサは正常であるにもかかわらず、エラーが発生するような状況が想定される。
【0033】
このような状況から、メインスイッチをオフオンすると、電源投入直後の初期動作において、センサは全圧接であると検知するので、全圧接状態から全離間状態へ遷移する第4遷移動作を実行する。この時、カムの破損の程度により第4遷移動作が正常に終了することがある。そうすると、その後、プリントを開始して、カラープリントからモノクロプリントへの直接切替えを行う時に、第1遷移動作において動作異常が起こり、このようなことが繰り返されるので、各感光体ドラムと1次転写ベルトとが離間していない状態で無理な停止が繰り返され、各感光体ドラムと1次転写ベルトとの間に擦れが生じて、双方にダメージを与える。
【0034】
本実施の形態によれば、上記想定し得る特に問題のある不具合についても、動作異常後の初期動作において、各感光体ドラムと1次転写ベルトとを回転させないでエラーを再現させることができるので、各感光体ドラムと1次転写ベルトとの間に擦れが生じて、双方にダメージを与えるような事態を回避することができる。
<動作>
図5は、実施の形態1における、制御部6による電源投入直後の初期動作の処理の手順を示す図である。
【0035】
以下に図5を用いて、電源投入直後の初期動作の処理の手順を説明する。
(1)メインスイッチがオンされると、不揮発性の記憶媒体に圧接離間異常情報が記憶されているか否かを判断する(ステップS1)。
(2)圧接離間異常情報が記憶されていない場合には(ステップS1:NO)、動作異常後の復帰動作でない通常の初期動作サブルーチンを実施して、プリント待ち状態となる(ステップS2)。
【0036】
(3)圧接離間異常情報が記憶されている場合には(ステップS1:YES)、動作異常後の復帰動作である、あらゆる圧接離間モード間の遷移動作パターンに基づいて動作させ、異常がないか全て検査する特別な初期動作サブルーチンを実施する(ステップS3)。
(4)エラーが発生せずに特別な初期動作が正常に終了した場合には、圧接離間異常情報を消去して、プリント待ち状態となる(ステップS4)。
【0037】
図6は、図5におけるステップS2の通常の初期動作サブルーチンの処理内容の概略を示す図である。
(1)全離間状態であるか否かを判断する(ステップS11)。全離間状態であれば(ステップS11:YES)、遷移動作を一切実行しないで、メインルーチンへ戻る。
(2)全離間状態でなければ(ステップS11:NO)、全圧接状態であるか否かを判断する(ステップS12)。
【0038】
(3)全圧接状態であれば(ステップS12:YES)、全圧接状態から全離間状態へ遷移する第4遷移動作を実行して、メインルーチンへ戻る(ステップS13)。
(4)全圧接状態でなければ(ステップS12:NO)、黒圧接状態であるか否かを判断する(ステップS14)。
(5)黒圧接状態であれば(ステップS14:YES)、黒圧接状態から全離間状態へ遷移する第2遷移動作を実行して、メインルーチンへ戻る(ステップS15)。
【0039】
(6)黒圧接状態でなければ(ステップS14:NO)、エラー処理を行う(ステップS16)。
図7は、図5におけるステップS3の特別な初期動作サブルーチンの処理内容の概略を示す図である。
(1)全離間状態であるか否かを判断する(ステップS21)。全離間状態であれば(ステップS21:YES)、全離間状態へ遷移動作を実行しない。
【0040】
(2)全離間状態でなければ(ステップS21:NO)、全圧接状態であるか否かを判断する(ステップS22)。
(3)全圧接状態であれば(ステップS22:YES)、全圧接状態から全離間状態へ遷移する第4遷移動作を実行する(ステップS23)。
(4)全圧接状態でなければ(ステップS22:NO)、黒圧接状態であるか否かを判断する(ステップS24)。
【0041】
(5)黒圧接状態であれば(ステップS24:YES)、黒圧接状態から全離間状態へ遷移する第2遷移動作を実行する(ステップS25)。
(6)黒圧接状態でなければ(ステップS24:NO)、エラー処理を行う(ステップS26)。
(7)全離間状態から全圧接状態へ遷移する第3遷移動作を実行する(ステップS27)。
【0042】
(8)全圧接状態から黒圧接状態へ遷移する第1遷移動作を実行する(ステップS28)。
(9)黒圧接状態から全離間状態へ遷移する第2遷移動作を実行する(ステップS29)。
(10)全離間状態から全圧接状態へ遷移する第3遷移動作を実行する(ステップS30)。
【0043】
(11)全圧接状態から全離間状態へ遷移する第4遷移動作を実行する(ステップS31)。
(12)全離間状態から黒圧接状態へ遷移する第5遷移動作を実行する(ステップS32)。
(13)黒圧接状態から全圧接状態へ遷移する第6遷移動作を実行する(ステップS33)。
【0044】
(14)全圧接状態から全離間状態へ遷移する第4遷移動作を実行して、メインルーチンへ戻る(ステップS34)。
ここで、図6、及び図7における、第1遷移動作から第6遷移動作までの6つの遷移動作のそれぞれにおいて動作異常が検知された場合には、その旨を示す圧接離間異常情報を不揮発性の記憶媒体に記憶し、動作を停止させ、サービスコールの前にメインスイッチのオフオンを促すメッセージを表示パネルに出力させる。
このメッセージを見たユーザがメインスイッチをオフオンすると、図5の処理が開始される。
【0045】
<まとめ>
以上のように、本実施の形態によれば、圧接離間機能に関する動作異常を検知した後の電源投入直後の初期動作において、通常の初期動作では検査しない遷移動作パターンも検査することにより、各感光体ドラムと1次転写ベルトとが安定回転に達するまでの間の線速度の差や、各感光体ドラムと1次転写ベルトとが離間していない状態で無理な停止が繰り返されることによる、各感光体ドラムと1次転写ベルトとの間に擦れが生じて、双方にダメージを与えるような事態を回避することができるという優れた効果が得られる。
【0046】
なお、コンピュータに本実施の形態のような動作を実行させることができるプログラムがコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、この記録媒体が流通し取り引きの対象となり得る。また、当該プログラムは、例えばネットワーク等を介して流通して取り引きの対象となり得、また、表示装置に表示されたり印刷されて、利用者に提示されることもあり得る。
【0047】
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、CD、MO、DVD、メモリカード等の着脱可能な記録媒体、及び、ハードディスク、半導体メモリ等の固定記録媒体等であり、特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、感光体と1次転写ベルトとの圧接離間機能を備える画像形成装置に広く適用することができる。本発明によって、感光体と1次転写ベルトとの間に擦れが生じて双方ににダメージを与えるような事態を回避することができ、その産業的利用価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施の形態1における画像形成装置の全体構成を示す図である。
【図2】(a)、(b)、(c)は、1次転写ローラ34Y、34M、34C、34Kの圧接離間モードを示す図である。
【図3】実施の形態1における画像形成装置1の機能構成を示す図である。
【図4】プリント動作時、及び初期動作時に発生し得る圧接離間モード間の遷移動作パターンを一覧にまとめた図である。
【図5】実施の形態1における、制御部6による電源投入直後の初期動作の処理の手順を示す図である。
【図6】図5におけるステップS2の通常の初期動作サブルーチンの処理内容の概略を示す図である。
【図7】図5におけるステップS3の特別な初期動作サブルーチンの処理内容の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 画像形成装置
2 画像プロセス部
3Y 3M 3C 3K 画像形成ユニット
4 給送部
5 定着装置
6 制御部
10 光学部
11 1次転写ベルト
31Y 31M 31C 31K 感光体ドラム
32Y 32M 32C 32K 帯電器
33Y 33M 33C 33K 現像器
34Y 34M 34C 34K 1次転写ローラ
35Y 35M 35C 35K クリーナ
36 モータ
37 補助ローラ
41 給紙カセット
42 繰り出しローラ
43 搬送路
44 タイミングローラ対
45 2次転写ローラ
46 2次転写位置
71 排紙ローラ
72 排紙トレイ
81 圧接離間部
82 検知部
83 復帰部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のイメージングユニットのそれぞれに形成されたトナー像を、1つの転写媒体に転写する工程を経て、画像を形成する画像形成装置であって、
前記複数のイメージングユニットと、前記転写媒体との、それぞれの圧接と離間とを切替えて、2状態以上の圧接離間モードのうちの何れかに遷移させる圧接離間手段と、
圧接離間手段に関する動作異常を検知する検知手段と、
検知手段により動作異常が検知された場合に、復帰動作を実施するにあたり、
前記2状態以上の圧接離間モード間で生じ得るあらゆる圧接離間モード間の遷移動作パターンに基づいて動作させ検査する復帰手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記複数のイメージングユニットは、黒用1つと、カラー用3つの、合計4つがあり、
前記2状態以上の圧接離間モードには、4つのイメージングユニットが全て離間した全離間状態と、黒用の1つのイメージングユニットのみが接触した黒圧接状態と、4つのイメージングユニットが全て接触した全圧接状態とがあり、
前記復帰手段は、前記復帰動作を実施するにあたり、全圧接状態から黒圧接状態へ遷移する第1遷移動作と、黒圧接状態から全離間状態へ遷移する第2遷移動作と、全離間状態から全圧接状態へ遷移する第3遷移動作と、全圧接状態から全離間状態へ遷移する第4遷移動作と、全離間状態から黒圧接状態へ遷移する第5遷移動作と、黒圧接状態から全圧接状態へ遷移する第6遷移動作とを、異常がないか全て検査すること
を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記復帰手段は、
動作異常後の復帰動作でない初期動作を実施するにあたり、あらゆる圧接離間モード間の遷移動作パターンに基づいて動作させ検査することなく、必要最低限の遷移動作パターンに基づいて動作させ検査すること
を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記検知手段は、
動作異常を検知した場合に、その旨を、不揮発性の記憶媒体に記憶し、
前記圧接離間手段は、
電源投入直後の初期動作において、前記記憶媒体に動作異常を検知した旨が記憶されていない場合に、必要最低限の遷移動作パターンを実行し、記憶されている場合に、あらゆる圧接離間モード間の遷移動作パターンを、異常がないか全て検査し、さらに、異常がなかった場合に、前記記憶媒体に記憶されている動作異常を検知した旨を消去すること
を特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
複数のイメージングユニットのそれぞれに形成されたトナー像を、1つの転写媒体に転写する工程を経て、画像を形成する画像形成装置における画像形成方法であって、
前記画像形成装置は、
前記複数のイメージングユニットと、前記転写媒体との、それぞれの圧接と離間とを切替えて、2状態以上の圧接離間モードのうちの何れかに遷移させる圧接離間手段を備え、
圧接離間手段に関する動作異常を検知する検知ステップと、
検知ステップにより動作異常が検知された場合に、復帰動作を実施するにあたり、前記2状態以上の圧接離間モード間で生じ得るあらゆる圧接離間モード間の遷移動作パターンに基づいて動作させ検査する復帰ステップと
を含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項6】
複数のイメージングユニットのそれぞれに形成されたトナー像を、1つの転写媒体に転写する工程を経て、画像を形成する画像形成装置における画像形成プログラムであって、
前記画像形成装置は、
前記複数のイメージングユニットと、前記転写媒体との、それぞれの圧接と離間とを切替えて、2状態以上の圧接離間モードのうちの何れかに遷移させる圧接離間手段を備え、
前記画像形成装置に、
圧接離間手段に関する動作異常を検知する検知ステップと、
検知ステップにより動作異常が検知された場合に、復帰動作を実施するにあたり、前記2状態以上の圧接離間モード間で生じ得るあらゆる圧接離間モード間の遷移動作パターンに基づいて動作させ検査する復帰ステップと
を実行させることを特徴とする画像形成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−156736(P2010−156736A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333556(P2008−333556)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】