説明

画像形成装置、画像形成方法

【課題】ヘッドからの記録液の吐出性能を担保しつつ、処理液を付与することなく滲みを抑制する、ヘッドにより記録液を中間転写体に付与して画像形成を行うインクジェット方式の画像形成装置、これを用いた画像形成方法の提供。
【解決手段】ヘッド61Y、61M、61C、61BKに備えられたノズル61cにより吐出された記録液を付与される、表面が導電性の中間転写体37と、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから吐出され中間転写体37との間を一時的にブリッジした状態の記録液が電気分解するように中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間に電圧を印加する電圧印加手段33とを用いる。ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、記録液との界面を形成する界面形成部61aの少なくとも一部に、同界面における静電容量を増加させるための非平滑構造62を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドによりインク等の記録液を中間転写体に付与して画像形成を行うインクジェット方式の画像形成装置、これを用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ピエゾ方式に代表される可動アクチュエータ方式、サーマル方式に代表される加熱膜沸騰方式等により、複数の微小ノズルからインク等の記録液を液滴化して吐出するヘッドを備え、インクジェット記録を行うインクジェットプリンタ等のインクジェット方式の画像形成装置が知られている(たとえば、〔特許文献1〕参照)。
【0003】
インクジェット方式において、ヘッドから記録紙等の被記録材に記録液を直接吐出する構成では、ヘッドと被記録材とが近接するため、被記録材に付着している紙粉、埃等がノズルに付着しやすい。紙粉等がノズルに付着すると、ノズルから吐出される液滴の飛翔方向が乱れたり、ノズルが閉塞したりして、画像品質や信頼性が低下する。このような問題を回避するための方策としては、ノズルからの吐出安定性を優先し、粘度が小さい記録液を使用するのが一般的であるが、粘度が小さい記録液は、被記録材に着弾する際に滲みが発生しやすい。
【0004】
そこで、ヘッドから吐出された記録液を担持する中間転写体を備え、中間転写体に画像を形成した後、被記録材に転写する画像形成装置が提案されている(たとえば、〔特許文献1〕参照)。
【0005】
また、このように中間転写体を備えた画像形成装置において、滲みをさらに減じるために、記録液をpH変化させるための処理液を中間転写体に付与する処理液付与部を備えた画像形成装置が提案されている(たとえば、〔特許文献1〕参照)。この画像形成装置では、記録液は、少なくとも顔料及びポリマー微粒子が水及び水溶性溶媒からなる媒体に分散されており、顔料及びポリマー微粒子は、pHを変化させることにより凝集する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、処理液付与部を備えた画像形成装置は、処理液の付与により、印刷速度が低下するという問題や、装置が大型化してしまうという問題がある。また、これらの問題は、ヘッドからの記録液の吐出性能を担保しつつ、解決する必要がある。
【0007】
本発明は、ヘッドからの記録液の吐出性能を担保しつつ、処理液を付与することなく滲みを抑制する、ヘッドにより記録液を中間転写体に付与して画像形成を行う画像形成装置、これを用いた画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、導電性記録液を吐出するノズルを備えたヘッドと、このヘッドにより吐出された導電性記録液を付与される、少なくとも表面が導電性の中間転写体と、前記ヘッドから吐出された直後の導電性記録液が同ヘッドと前記中間転写体との間を一時的にブリッジした状態でこの状態の導電性記録液が電気分解するように前記中間転写体と前記ヘッドとの間に電圧を印加する電圧印加手段と、導電性記録液によって前記中間転写体上に担持された画像を被記録材に転写する転写手段とを有し、前記ヘッドは、導電性記録液との界面を形成する界面形成部の少なくとも一部に、同界面における静電容量を増加させるための非平滑構造を備えている画像形成装置にある。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置において、前記非平滑構造は、前記ノズルを形成されたノズル板に備えられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の画像形成装置において、前記非平滑構造は、導電性微粒子、導電性繊維、前記ヘッド自身の形状の少なくとも1つによって形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の画像形成装置において、導電性記録液は、溶媒として水を含み、顔料がアニオン性分散剤により分散されており、前記中間転写体は、前記電圧印加手段によって電圧を印加されたときにアノードとして機能することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載の画像形成装置を用いて画像形成を行う画像形成方法にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、導電性記録液を吐出するノズルを備えたヘッドと、このヘッドにより吐出された導電性記録液を付与される、少なくとも表面が導電性の中間転写体と、前記ヘッドから吐出された直後の導電性記録液が同ヘッドと前記中間転写体との間を一時的にブリッジした状態でこの状態の導電性記録液が電気分解するように前記中間転写体と前記ヘッドとの間に電圧を印加する電圧印加手段と、導電性記録液によって前記中間転写体上に担持された画像を被記録材に転写する転写手段とを有し、前記ヘッドは、導電性記録液との界面を形成する界面形成部の少なくとも一部に、同界面における静電容量を増加させるための非平滑構造を備えている画像形成装置にあるので、導電性記録液の電気分解により、処理液を付与することなく滲みを抑制しつつ、非平滑構造により、導電性記録液の電気分解による気泡に起因するヘッドからの記録液の吐出性能の低下を抑制ないし防止し、ヘッドにより記録液を中間転写体に付与して良好な画像形成を行うことができる画像形成装置を提供することができる。
【0014】
前記非平滑構造は、前記ノズルを形成されたノズル板に備えられていることとすれば、導電性記録液の電気分解により、処理液を付与することなく滲みを抑制しつつ、ノズル板に備えられた非平滑構造により、導電性記録液の電気分解による気泡に起因するヘッドからの記録液の吐出性能の低下を抑制ないし防止し、ヘッドにより記録液を中間転写体に付与して良好な画像形成を行うことができる画像形成装置を提供することができる。
【0015】
前記非平滑構造は、導電性微粒子、導電性繊維、前記ヘッド自身の形状の少なくとも1つによって形成されていることとすれば、導電性記録液の電気分解により、処理液を付与することなく滲みを抑制しつつ、導電性微粒子、導電性繊維、前記ヘッド自身の形状から適切に選択されて形成された非平滑構造により、導電性記録液の電気分解による気泡に起因するヘッドからの記録液の吐出性能の低下を抑制ないし防止し、ヘッドにより記録液を中間転写体に付与して良好な画像形成を行うことができる画像形成装置を提供することができる。
【0016】
導電性記録液は、溶媒として水を含み、顔料がアニオン性分散剤により分散されており、前記中間転写体は、前記電圧印加手段によって電圧を印加されたときにアノードとして機能することとすれば、汎用性の高い導電性記録液の電気分解により、処理液を付与することなく滲みを抑制しつつ、非平滑構造により、導電性記録液の電気分解による気泡に起因するヘッドからの記録液の吐出性能の低下を抑制ないし防止し、ヘッドにより記録液を中間転写体に付与して良好な画像形成を行うことができる画像形成装置を提供することができる。
【0017】
本発明は、かかる画像形成装置を用いて画像形成を行う画像形成方法にあるので、導電性記録液の電気分解により、処理液を付与することなく滲みを抑制しつつ、非平滑構造により、導電性記録液の電気分解による気泡に起因するヘッドからの記録液の吐出性能の低下を抑制ないし防止し、ヘッドにより記録液を中間転写体に付与して良好な画像形成を行うことができる画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した画像形成装置の概略正面図である。
【図2】図1に示した画像形成装置においてヘッドから中間転写体に導電性記録液が付与される様子を示す概略図である。
【図3】図1に示した画像形成装置においてヘッドから吐出された導電性記録液中の顔料がプロトンを介して凝集した状態を示す概念図である。
【図4】図1に示した画像形成装置においてカソードとアノードとの間に形成される導電性記録液による液柱の状態を示す概念図である。
【図5】中間転写体表面が金属の画像形成装置においてヘッドから吐出された導電性記録液中の顔料がプロトン及び金属カチオンを介して凝集した状態を示す概念図である。
【図6】中間転写体表面が金属の画像形成装置において表面が弾性体の転写画像担持体を有する画像形成装置の構成例を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置100は、インクジェットプリンタとしてのプリンタであってフルカラーの画像形成を行うことができるようになっている。画像形成装置100は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。
【0020】
画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。画像形成装置100は、記録媒体である被記録材たる用紙としての記録体である転写紙Sの片面に画像形成可能な片面画像形成装置であるが、転写紙Sの両面に画像形成可能な両面画像形成装置であってもよい。
【0021】
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な、当該色のインクとしての導電性記録液である記録液を吐出する記録液吐出体としてのインクヘッドである記録ヘッドとしてのヘッド61Y、61M、61C、61BKを有している。
【0022】
ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、画像形成装置100の本体99の略中央部に配設された中間転写ドラムである中間転写体37の外周面に対向する位置に配設されている。ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、中間転写体37の移動方向であって図1において時計回り方向であるA1方向の上流側からこの順で並んでいる。同図において各符号の数字の後に付されたY、M、C、BKは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
【0023】
ヘッド61Y、61M、61C、61BKはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の画像を形成するための記録液吐出装置であるインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKに備えられている。なお、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、図1の紙面に垂直な方向に複数が並設された態様で、インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKに備えられている。
【0024】
中間転写体37は、A1方向に回転している状態で、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向する領域で、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKからイエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が順次重ね合わされる態様で吐出されて付与され、その表面上に画像が形成されるようになっている。このように、画像形成装置100は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを中間転写体37に対向させA1方向に並設したタンデム構造となっている。
【0025】
ヘッド61Y、61M、61C、61BKによる中間転写体37に対する記録液の吐出すなわち付与は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体37上の同じ位置に重なるよう、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0026】
図1に示すように、画像形成装置100は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをそれぞれ備えたインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKと、中間転写体37を備え中間転写体37のA1方向への回転に伴って転写紙Sを搬送する用紙搬送ユニットとしての搬送ユニット10と、転写紙Sを多数枚積載可能であり積載した転写紙Sのうち最上位の転写紙Sのみを搬送ユニット10に向けて給送する給紙ユニット20と、搬送ユニット10によって搬送されてきた画像形成済み言い換えるとプリント済みの転写紙Sを多数積載可能な排紙台25とを有している。
【0027】
画像形成装置100はまた、図2(b)に示すようにヘッド61Y、61M、61C、61BKから吐出された直後の記録液による液柱がヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37との間を一時的にブリッジした状態で、中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間に電位差が形成されるように、かかる液柱の状態の記録液の内部に電極酸化反応もしくは電極還元反応に起因する電流成分を含んだ通電を行いかかる状態の記録液に後述のように含まれている色剤の凝集を促進する電圧印加手段としての通電手段33を有している。
【0028】
画像形成装置100はまた、図1に示すように、記録液等が転写紙Sに転写された後の中間転写体37から、中間転写体37上に残留している記録液等を除去してクリーニングするためのクリーニング手段としての清掃手段34と、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを一体に支持したヘッド支持体としてのキャリッジ50と、画像形成装置100の動作全般を制御するCPU、メモリ等を含む制御手段としての図示しない制御部とを有している。
【0029】
搬送ユニット10は、中間転写体37の他に、中間転写体37に対向して配置され中間転写体37との間の領域である転写部31を転写紙Sが通過するときに中間転写体37上に担持された記録液による画像をその転写紙Sに転写する転写手段64と、給紙ユニット20から給送されてきた転写紙Sを転写部31に案内するとともに、転写部31を通過した転写紙Sを排紙台25に案内するガイド板39と、中間転写体37をA1方向に回転駆動する図示しない駆動手段としてのモータ等とを有している。このように、画像形成装置100は、転写紙Sへの画像形成を中間転写体37を用いて間接的に行う間接方式の画像形成装置となっている。
【0030】
転写手段64は、中間転写体37に従動回転する転写ローラ38を備えている。なお、転写ローラ38は転写紙Sに転写される画像を転写紙Sに定着させるためのヒータを内蔵していても良い。また、搬送ユニット10は、転写ローラ38によって中間転写体37から転写紙Sに転写された画像を転写紙Sに定着させるための定着手段としての定着ローラを備えていてもよい。
【0031】
図2に示すように、中間転写体37は、導電性基体であるアルミニウム製の支持体37aと、支持体37a上に形成されたシリコーンゴム製の表面層37bとを有している。支持体37aの材質はアルミニウムに限られるものではなく、機械的強度があれば、たとえばアルミ合金、銅、ステンレス等の金属によって形成しても良い。表面層37bの材質はシリコーンゴムに限られるものではなく、記録液の剥離性が高いという利点のためには表面エネルギーが低く転写紙Sへの追随性が高い弾性材料であればよく、たとえばウレタンゴム、フッ素ゴム、ニトリルブタジエンゴムなどによって形成しても良い。
【0032】
表面層37bは、中間転写体37に導電性を付与するために、かかるゴム材料に導電剤としてのカーボン、白金、金などの金属微粒子を分散して混入させた導電性ゴムとされ、導電層となっている。ただし、導電性微粒子を増やすと導電性は向上するが、離型性が低下するトレードオフの関係であるので、適宜、調整が必要である。後述するように、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37とが一時的にブリッジした記録液による液柱に所望の電位差を形成するには、導電性ゴムの体積抵抗率は10Ω・cm未満であることが好ましく、また、記録液の体積抵抗率よりも小さいことが望ましい。
【0033】
表面層37bの厚みは0.1〜1mm程度がよく、0.2〜0.6mmが好適である。ただし、表面層37bは必須の構成でなく、支持体37aのみを中間転写体37としても良い。また、中間転写体37は、ドラム状でなく、無端ベルト状、その他可能であればシート状であっても良い。
【0034】
図1に示すように、給紙ユニット20は、転写紙Sを多数枚積載可能な給紙トレイ21と、給紙トレイ21に積載された転写紙Sのうち最上位の転写紙Sのみを搬送ユニット10に向けて給送する給紙ローラ22と、給紙トレイ21及び給紙ローラ22を支持した筐体23と、給紙ローラ22を、ヘッド61Y、61M、61C、61BKにおける記録液の吐出タイミングに合わせるように回転駆動し転写紙Sを給送させる図示しない駆動手段としてのモータ等とを有している。
【0035】
キャリッジ50は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKに劣化等が生じたときにこれらが新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと一体で、本体99に対して着脱可能となっている。ヘッド61Y、61M、61C、61BKもそれぞれ、劣化等が生じたときに新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、独立して本体99に対して着脱可能となっている。これによって、交換作業、メンテナンス作業が容易化されている。
【0036】
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、用いる記録液の色が異なるものの、その余の点では互いに略同様の構成となっている。インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをそれぞれ複数、主走査方向に並設され、インク吐出装置60Y、60M、60C、60BK、画像形成装置100はヘッド固定式のフルライン型となっている。
【0037】
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、複数のヘッド61Y、61M、61C、61BKに供給される当該色の記録液を収容したメインタンクとしての記録液カートリッジであるインクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKと、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK内に収容された記録液を各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに向けて圧送し給送するための供給ポンプとしての図示しないポンプと、ポンプによってインクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK側から供給されてきた記録液を各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに分配して供給する記録液供給部であるインク供給部としてのディストリビュータである図示しないディストリビュータタンクとを有している。
【0038】
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKはまた、ディストリビュータタンク内の記録液量の不足を検出するために同記録液量を検知する記録液量検知手段であるインク量検知手段としての図示しないインク量検知センサと、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKとディストリビュータタンクとの間の記録液の給送路をポンプとともに形成している図示しないパイプと、ディストリビュータタンクと各ヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間の記録液の給送路を形成している図示しないパイプとを有している。
【0039】
インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKは、内部の記録液が消費されて残り少なくなったときあるいはなくなったとき等に新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、本体99に対して着脱可能となっている。
【0040】
ポンプは、制御部によって作動を制御される。具体的には、インク量検知センサによってディストリビュータタンク内の記録液量の不足が検出されたことを条件として、この不足が検出されなくなるまで駆動され、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK内の記録液をディストリビュータタンクに供給する。この点、制御部は記録液供給制御手段であるインク供給制御手段として機能する。制御部は、画像形成装置100において駆動される構成については、特に説明しない場合であっても、その駆動を制御するようになっている。
【0041】
記録液は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒に対応した色剤と、この色剤の分散剤であるアニオン性分散剤と、溶媒とを少なくとも含んでいる。かかる色剤とかかる分散剤とにより、記録液のインク成分はアニオン性基を有している。溶媒は安全性の観点及び後述する電気分解を生じせしめるための導電性の観点から水を含んでおり、記録液は導電性インクであり水溶性インクである水溶性記録液となっている。なお、記録液は、保存安定性の観点から、アルカリ性であることが望ましい。
【0042】
記録液に用いられる色剤である顔料としては、特に限定されないが、オレンジ又はイエロー用の顔料として、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
また、レッド又はマゼンタ用の顔料として、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
また、グリーン又はシアン用の顔料として、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料として、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
記録液中の顔料の含有量は、通常、0.1〜40質量%であり、1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がさらに好ましい。
【0043】
アニオン性分散剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0044】
記録液は、転写性の点から、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等が塩基を用いて中和されたアニオン性基を有する樹脂をさらに含むことが好ましい。
記録液は、水に可溶な溶媒をさらに含んでもよい。水に可溶な溶媒としては、特に限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等の多価アルコール誘導体;ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒;エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類;チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄溶媒;炭酸プロピレン、炭酸エチレン等の炭酸アルキレンが挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0045】
図2に示すように、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、同図において下方を向く記録液吐出側に配設された導電性のノズル板61aと、ノズル板61aに形成されたノズル61bと、ディストリビュータタンクから記録液を供給され記録液を充填されたインク室61cと、インク室61c内の記録液をノズル61bから吐出させる図示しないインク吐出手段とを有している。ノズル61b、インク室61c、インク吐出手段はこれらが1組となって、それぞれ各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに多数備えられているが、同図においてはそのうちの1組のみを図示している。
【0046】
ノズル板61aは、全体が導電性である。ノズル板61aは、インク室61c側の面をインク室61c内の記録液との界面を形成する界面形成部として備えているとともに、この界面形成部に、かかる界面における静電容量を増加させるための非平滑構造62を備えている。非平滑構造62は、かかる静電容量を増加させるために形成されるため、ノズル板61aの導電性の部分に形成されるものである。
【0047】
ノズル板61aは、全体が導電性であるに限らず、インク室61c側の面のみを導電処理された部材であっても良いし、インク室61c側に配設された導電性部材と中間転写体37側に配設された絶縁性部材とによって構成しても良い。ただし、このような場合であっても、非平滑構造62は、導電性の部分に形成される。
【0048】
ノズル板61aの導電性の部分は、後述するようにカソードとして備えられるため、金属溶出に対して耐性を有する材質によって構成する必要はなく、金属、カーボンなど導電性の高い材料によって構成されればよい。
【0049】
非平滑構造62は、ノズル板61a本体表面に導電性微粒子及び/又は導電性繊維を付着させることや、ノズル板61a自体の形状を設定することによって形成される。導電性微粒子としては、銅、銅合金、銀などの金属微粒子を用いても良いし、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタンなどの金属酸化物微粒子を用いても良いし、カーボンブラックや、樹脂微粒子に金などをメッキし、導電性を持たせた微粒子を用いても良い。導電性繊維としては、ニッケルや鉄などの金属ファイバーを用いても良いし、カーボンファイバーや所謂カーボンナノチューブなどを用いても良い。導電性微粒子、導電性繊維は、可能ならばノズル板61aに成長させたものであっても良いし、これらを銀ペーストなどでノズル板に接着させたものであっても良い。非平滑構造62をノズル板61a自体の形状によって形成する場合には、機械的摩耗や化学的処理によりノズル板61a表面に凹凸を作ることが可能である。何れにしても、非平滑構造62は、ノズル板61aの、記録液との接触面積を増加させるように形成されるものであり、その増加の程度は大きくなればなるほど良い。
【0050】
ノズル板61aは、中間転写体37とのギャップが50〜200μmの間で設定される。かかるギャップが50μm未満であると、回転体である中間転写体37とノズル板61aとのギャップを維持することが困難になることがあり、またかかるギャップが200μmを超えると、後述する液注のブリッジが形成されにくくなることがあるためである。
【0051】
インク吐出手段は、ノズル61bから記録液を液滴化して吐出させ転写紙Sに着弾させるためのアクチュエータとして圧電素子を有し、圧電素子に印加される電圧パルスに応じてノズル61bから記録液を吐出するようになっている。インク吐出手段のアクチュエータはピエゾ方式等の、形状変形素子方式である他の方式の可動アクチュエータであってもよいし、サーマル方式等の加熱ヒータ方式によってノズル61bから記録液を吐出させるものであっても良い。
【0052】
図2に示すように、通電手段33は、電源33aと、電源33aを支持体37aとノズル板61aとに接続した特に図示しない電気回路と、制御部の機能の一部として実現され電源33aによる電圧の印加タイミング、印加時間を制御する電圧印加制御手段とを有している。電圧印加制御手段としての制御部は、電源33aの電圧を変更する電圧変更手段としても機能する。
【0053】
電源33aは、電気回路により、陽極を支持体37aに接続され、陰極をノズル板61aに接続されている。よって、通電手段33は、中間転写体37をアノードとして備え、ノズル板61aをカソードとして備えている。
【0054】
図1に示すように、清掃手段34は、中間転写体37に対していわゆるカウンター当接の態様で当接した、弾性体としてのゴムによって形成された清掃部材としてのクリーニングブレードによって構成されている。清掃手段34はクリーニングブレードとともに、清掃部材としてのクリーニングローラを備えていてもよい。
【0055】
このような構成の画像形成装置100においては、画像形成開始の旨の所定の信号の入力により、中間転写体37が各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向しながらA1方向に回転し、この過程で、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体37の同じ位置に重なるよう、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして順次重ね合わされる態様で吐出され、中間転写体37上に一時的に画像が担持される。
【0056】
このとき、電圧印加制御手段としての制御部により、通電手段33が駆動され、電源33aから支持体37aとノズル板61aとの間に電圧が印加されている。
この状態で、記録液が、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから中間転写体37上に付与されるが、そのときには、まず、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから、図2(a)に示すように、ノズル61bにおいてメニスカスを形成している記録液が、図2(b)に示すように、中間転写体37に向けて移動し、ノズル61cと中間転写体37との間に、記録液からなる液柱のブリッジが一時的に形成され、次いで、図2(c)に示すように、記録液からなる液柱のブリッジが分断されることによって中間転写体37に担持され、中間転写体37上に記録液による画像が形成される。
【0057】
そして、図2(b)に示した、記録液からなる液注のブリッジが形成された状態では、通電手段33により、記録液中の色剤成分が凝集作用を受ける。具体的には、通電手段33の電圧印加により、カソードであるノズル板61aとアノードである中間転写体37とにはそれぞれ次の電極反応が生じ、記録液の液柱のブリッジに含まれる水が電気分解される。
カソード:4HO+4e→2H+4OH・・・反応式(1)
アノード:2HO→4H+O+4e・・・反応式(2)
【0058】
これにより、アノードとして機能する中間転写体37の表面で、記録液の液柱のブリッジに含まれる水が酸化してプロトン(H+)が生成するため、図3に示すように、アニオン性分散剤Dにより分散されている顔料Pが、プロトンを介して凝集する。これにより、隣接するドット間の滲みの発生が抑制され、高精細な画像が形成される。また、かかる電圧印加によりノズル61bの目詰まりが予防されるという利点もある。なお、かかるブリッジを形成する時間は、圧電素子に印加される電磁パルスのピーク電圧とパルス幅等により制御可能である。
【0059】
ここで、図4を用いて、カソード及びアノードの間に形成される液柱のブリッジについて説明する。液柱のブリッジBの内部では、カチオン及びアニオンは、それぞれカソードC及びアノードAの近傍に移動する。その結果、カソードC及びアノードAの表面に、それぞれ電気二重層E及びEが形成されるが、電気二重層E及びEの充電速度は、液柱のブリッジBの導電率、記録液に含まれるイオンの濃度でほぼ決定される。このとき、電気二重層Eの電圧が数Vに達すると、水が電気分解してファラデー電流が流れる。その結果、アノードAの表面では、水が酸化してプロトンが生成し、アニオン性分散剤により分散されている顔料が凝集する。すなわち、かかるブリッジが形成された瞬間に、ブリッジに、顔料の凝集作用をもたらすイオンが効率よく生成することで、記録液の中間転写体37への着液と同時に顔料の凝集が行われる。その結果、隣接する記録液ドット間における顔料の滲みが発生せず、非常に高精細な溶質画像が形成される。
【0060】
一方、電気二重層Eの容量EECは、電気二重層Eの容量EACよりも十分に大きい場合には、カソードCの表面では、水が還元しにくく、カソードCでの水素の発生が抑制される。水素の発生の抑制が十分でないと、カソードCの表面で発生した水素に起因してノズル61bからの記録液の吐出の不良が生じる可能性があるため、水素の発生は十分に抑制する必要がある。水素の発生が十分に抑制されるのは、カソードCであるノズル板61aの面積が、アノードAとしての、液柱が接触する部分の中間転写体37の面積よりも十分に大きく、電気二重層Eの容量EECが、電気二重層Eの容量EACの500倍以上、より好ましくは1000倍以上となっている場合である。
そこで、非平滑構造62は、電気二重層Eの容量EECが、電気二重層Eの容量EACの500倍以上、より好ましくは1000倍以上となるように形成されている。
【0061】
なお、顔料の凝集の度合いは、プロトンの生成量、即ち、液柱のブリッジを形成する時間、通電手段33による印加電圧等により制御することが可能である。また、水が酸化してプロトンが生成する際に、酸素も発生するが、微量であることに加え、水に溶解すると考えられるため、画像形成を阻害しない。
【0062】
液柱のブリッジBが形成されてから分断されるまでの時間は、通常、数マイクロ秒〜数十マイクロ秒であり、記録液の導電率は、通常、数十mS/m〜数百mS/mである。このため、中間転写体37に記録液による画像を形成するためには、通電手段33による印加電圧は、水の理論分解電圧である1.23Vや一般的な水の電気分解の条件である数V〜十数Vでは不十分であり、数十V〜数百Vであることが好ましい。
【0063】
中間転写体37上に担持された画像の先端が転写部31に到達するタイミングに合わせて、給紙ユニット20から給送された一枚の転写紙Sが転写部31に供給され、転写ローラ38が連れ回りしながら、転写部31を通過する転写紙Sに、中間転写体37上に担持されている画像が転写され、転写紙Sの表面に画像が形成される。画像が形成された転写紙Sは、排紙台25に案内され排紙台25上に積載される。
【0064】
このようにして画像が転写紙Sに転写されるときには、凝集成分を含む記録液が転写紙Sに転写される。したがって、上述の凝集作用により凝集した色剤によって画像が形成されることにより、転写紙Sが普通紙である場合であっても、フェザリングやブリーディングを防止ないし抑制しつつ、高速で高画像濃度、高画質の画像形成が可能である。
【0065】
また、高速の画像形成を行うには、記録液を速乾性とすることを要するため、記録液は転写紙Sへの吸収性が一般に高いが、この場合には記録液が転写紙Sの奥深くまで浸透し、いわゆる裏移りを生じ、両面画像形成に不向きとなる。しかし、かかる凝集作用により記録液の転写紙Sへの吸収性が低減されるためかかる裏移りが防止ないし抑制され、両面画像形成にも適している。さらにまた、記録液の転写紙Sへの吸収性が低減されることにより、転写紙Sのコックリングやカールなどの変形も抑制ないし防止されるとともに、これによって画像を担持した転写紙Sの搬送性が向上し、ジャムが防止ないし抑制されるなど、転写紙Sの取り扱いが容易化する。
【0066】
転写部31における転写により、転写部31を通過した中間転写体37上には、記録液に起因する成分はほとんど残っていないが、中間転写体37は清掃手段34によるクリーニングを受けることで、記録液のオフセットが高度に防止ないし抑制され、繰り返し画像形成を行っても、オフセットによる地肌汚れが防止ないし抑制され、画像劣化、中間転写体37の劣化が抑制ないし防止されて、経時的に良好な画像形成を行うことが可能である。
【0067】
以上の条件を考慮した次の実験により画像形成が良好に行われるか否かを確かめたところ、表1に示すようになった。
実験の条件は次のとおりである。
【0068】
実験に用いた画像形成装置は、次の条件を満たす、画像形成装置100と同様の構成の、インクジェットプリンタGX5000(リコー社製)を用いた画像形成装置である。
中間転写体37は、支持体37aとしてのアルミニウム素管の外周に、表面層37bとして、体積抵抗率が5Ω・cm、厚さが0.2mmの、カーボンが分散されているシリコーンゴム層を有しており、外周の線速が50mm/秒でA1方向に回転駆動される。
非平滑構造62は、ヘッド61M、61C、61BK作製前にノズル板61aのインク室61c側の加工により形成されている。
【0069】
ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれにおけるノズル板61aの構成は次のように互いに異なっている。
ヘッド61Yにおけるノズル板61aは通常市販品であって非平滑構造62を備えていない未加工品である。この構成の電気二重層Eの容量EECは、電気二重層Eの容量EACの400倍程度と推測される。
ヘッド61Mにおけるノズル板61aは、インク室61c側に藤倉化成社製の導電性ペーストドータイトD−550を、ノズル61bを避けるようにブレード塗工し、導電性ペーストを塗布した箇所に、そのうえから導電性微粒子をのせ、接着させたものである。使用した導電性微粒子は、ライオンケミカル社製ケッチェンブラックEC−600JDである。この構成の電気二重層Eの容量EECは、電気二重層Eの容量EACの2000倍程度と推測される。
ヘッド61Cにおけるノズル板61aは、ヘッド61Mにおけるノズル板61aと同様に導電性ペーストを塗布したのち、カーボンナノチューブを同様に接着させたものである。使用したカーボンナノチューブは、昭和電工社製VGCFである。この構成の電気二重層Eの容量EECは、電気二重層Eの容量EACの1500倍程度と推測される。
ヘッド61BKにおけるノズル板61aは、高さ100μmで100μmピッチの溝をノズル板61a本体に対してA1方向に対応する方向に切って加工したものである。この構成の電気二重層Eの容量EECは、電気二重層Eの容量EACの800倍程度と推測される。
【0070】
各ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37とのギャップは100μmとした。
転写ローラ38は、金属製の芯金に厚さが5mmのゴム層を形成したものである。
清掃手段34としては、フッ素ゴムからなるブレードを用いた。
【0071】
記録液としては以下のようなものを用いた。
【0072】
<イエロー記録液>
・スルホン酸基結合型イエロー顔料分散液(CAB−O−JET−270Y、固形分10質量%、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製):41.0質量%
・トリエチレングリコール:14.0質量%
・グリセリン:25.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:7.0質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.2に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
【0073】
<マゼンタ記録液>
・スルホン酸基結合型マゼンタ顔料分散液(CAB−O−JET−260M、固形分10質量%、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製):41.0質量%
・ジエチレングリコール:19.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:4.0質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.2に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
【0074】
<シアン記録液>
・スルホン酸基結合型シアン顔料分散液(CAB−O−JET−250C、固形分10質量%、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製):41.0質量%
・エチレングリコール:5.0質量%
・トリエチレングリコール:14.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:5.0質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.2に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
【0075】
<ブラック記録液>
・スルホン酸基結合型カーボンブラック顔料分散液(CAB−O−JET−200、固形分20質量%、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製):36.0質量%
・2−ピロリドン:9.0質量%
・グリセリン:15.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:1.0質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.2に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
【0076】
評価の手順は次のとおりである。
(1)各電源の電圧を120Vとする。
(2)各ヘッド61Y、61M、61C、61BKからA1方向に1cm長で1mm幅のライン画像を10本出力。
(3)それぞれのライン幅の最大値の平均値を測定して評価。ライン幅が狙いである1mmより広がっていると滲みが発生し、1mmに近いほど滲みが少ないという評価となる。
(4)各色のA4ベタ画像を出力した後に、任意の100個のノズル61bから不吐出となっているノズル数を調べる。
(5)各ヘッド61Y、61M、61C、61BKを新規のものとし、電源の電圧を0Vとして(2)〜(4)と同じ手順で評価を行う。
【0077】
【表1】

【0078】
同表において、「ライン幅」は、滲みに関する評価項目であり、「不吐出ノズル数」は、カソードにおける気泡発生及びこれに起因するノズル61bからの記録液の不吐出に関する評価項目となっている。同表から、電圧を印加することによりラインの広がり、つまり滲みが解消ないし抑制され、かつ非平滑構造62により、水素発生による気泡に起因する記録液の不吐出が抑制されることが確かめられた。
【0079】
ここで、すでに述べたように、中間転写体37が表面層37bを備えておらず支持体37aからなる構成においては、支持体37aがアノードとして機能することとなる。この場合、支持体37aの表面で、水とともに、金属である支持体37aを酸化するようにすることが可能である。金属である支持体37aを酸化するようにすると、色剤を凝集するのに優れた金属カチオンが生成するため、図5に示すように、プロトン及び金属カチオン(Mn+)を介して、アニオン性分散剤Dにより分散されている顔料Pが凝集することとなり、凝集性が高くなる。
【0080】
このような構成においては、図6に示すように、転写手段64が、転写ローラ38のみならず、中間転写体37上に形成された画像を転写され一旦担持する、表面に弾性体層としてのゴム層63aを備えた転写画像担持体としての中間転写ドラム63を備えていることが望ましい。中間転写ドラム63は中間転写体37に連れ回りし、転写ローラ38は中間転写ドラム63に連れ回りする。中間転写ドラム63の表面が弾性体であることにより、金属製で表面硬度の高い中間転写体37からの画像の転写が良好に行われ、転写性が向上する。
【0081】
中間転写ドラム63は、ゴム層63aと、ゴム層63aに覆われた基体63bとを有している。基体63bを構成する材料としては、特に限定されないが、アルミニウム、アルミ合金、銅、ステンレス等の金属が挙げられる。ゴム層63aを構成する材料としては、特に限定されないが、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
【0082】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0083】
たとえば、非平滑構造は、その機能が十分に果たされるのであれば、ヘッドの、電圧印加手段によって電圧を印加される部分であって導電性記録液との界面を形成する界面形成部の全体に形成するのに限らず、界面形成部の少なくとも一部に形成しても良い。よって、記録液との界面を形成し電圧印加手段によって電圧を印加される部分としてノズル板以外の部分がヘッドに備えられていればその部分に非平滑構造を形成してもよい。
【0084】
導電性記録液中の顔料は、カチオン性分散剤により分散し、カソードとして機能する中間転写体の表面で生成した水酸化物イオンを介して、凝集させてもよい。
中間転写体は、全体が導電性である必要はなく、少なくとも表面が導電性であればよい。
【0085】
本発明を適用する画像形成装置は、上述のタイプの画像形成装置に限らず、他のタイプの画像形成装置、すなわち、ヘッドに関してシャトル型であってもよいし、また、複写機、ファクシミリの単体、あるいはこれらの複合機、これらに関するモノクロ機等の複合機、その他、電気回路形成に用いられる画像形成装置、バイオテクノロジー分野において所定の画像を形成するのに用いられる画像形成装置であっても良い。ヘッドの数は画像形成装置の用途に応じて増減されるものであり、1つであっても、複数であってもよい。
【0086】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0087】
33 電圧印加手段
37 中間転写体
61a 界面形成部、ノズル板
61b ノズル
61Y、61M、61C、61BK ヘッド
62 非平滑構造
64 転写手段
100 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0088】
【特許文献1】特開2008−62397号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性記録液を吐出するノズルを備えたヘッドと、
このヘッドにより吐出された導電性記録液を付与される、少なくとも表面が導電性の中間転写体と、
前記ヘッドから吐出された直後の導電性記録液が同ヘッドと前記中間転写体との間を一時的にブリッジした状態でこの状態の導電性記録液が電気分解するように前記中間転写体と前記ヘッドとの間に電圧を印加する電圧印加手段と、
導電性記録液によって前記中間転写体上に担持された画像を被記録材に転写する転写手段とを有し、
前記ヘッドは、導電性記録液との界面を形成する界面形成部の少なくとも一部に、同界面における静電容量を増加させるための非平滑構造を備えている画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記非平滑構造は、前記ノズルを形成されたノズル板に備えられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の画像形成装置において、
前記非平滑構造は、導電性微粒子、導電性繊維、前記ヘッド自身の形状の少なくとも1つによって形成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の画像形成装置において、
導電性記録液は、溶媒として水を含み、顔料がアニオン性分散剤により分散されており、
前記中間転写体は、前記電圧印加手段によって電圧を印加されたときにアノードとして機能することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つに記載の画像形成装置を用いて画像形成を行う画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−264717(P2010−264717A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119919(P2009−119919)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】