説明

画像形成装置、純正品判断方法および消耗品

【課題】消耗品の純正品判断に必要な演算式を、第三者が解析によって取得するのを困難にする。また、たとえ第三者によって演算式が解析されたとしても、第三者が純正品に完全に代替する非純正品を作製するのを困難にする。
【解決手段】消耗品の装着時に(S1)、記憶媒体から固体識別情報および付加情報がリーダライタによって読み取られる(S2)。制御部は、リーダライタによって読み取った固体識別情報をマスク処理して得られる結果に応じて演算式を選択するとともに、選択した演算式に従って上記の固体識別情報を用いて演算し、その演算結果とリーダライタにて読み取った付加情報に含まれる判別情報とが一致するか否かを判断することにより、装着された消耗品が純正品であるか否かを判断する(S6、S7、S10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶媒体が付された消耗品(例えばトナーカートリッジ)を用いて画像を形成する画像形成装置と、その画像形成装置に適用可能で、消耗品が純正品であるか否かを判断する純正品判断方法と、消耗品とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、記憶媒体が付された消耗品を使用する装置において、記憶媒体に記憶された情報に基づいて装置の使用が可能か否かを判断するものがある。例えば特許文献1のシステムでは、消耗品(例えばトナーカートリッジ)に記憶媒体(例えばICタグ)を持たせ、消耗品の利用を許可する電子情報(例えば解除キーの情報)と、記憶媒体に固有の固体識別情報とを用いて所定の演算(例えば排他的論理和の演算)を実行し、その演算結果を暗号化して記憶媒体に書き込むようにしている。ユーザ側の装置(例えばプリンタ)では、消耗品の記憶媒体から暗号化情報を読み出して復号化し、その復号化した情報と上記の固体識別情報とを用いて所定の演算を実行し、上記の解除キー情報を復元する。解除キー情報を復元できた場合は、消耗品が純正品であると判断してその利用制限が解除され、その消耗品を使用することが可能となる。
【0003】
また、例えば特許文献2には、消耗品がトナーカートリッジである場合に、非正規業者が使用済みのトナーカートリッジにトナーを再充填して再利用することを防止するシステムが開示されているが、このシステムにおいても、消耗品の記憶媒体に記憶された情報に基づいて装置の使用が可能か否かを判断している。つまり、消耗品の記憶媒体(例えばRFIDタグ)に、固体識別情報と、所定の演算式に従って固体識別情報を用いて演算した結果(演算情報)と、装置の使用が可能か否かを指示する使用指示情報とを記憶させている。ユーザ側の装置(例えばプリンタ)では、消耗品の記憶媒体から固体識別情報を読み出し、それを用いて所定の演算式に従って演算し、その演算結果が記憶媒体に記憶された演算情報に一致するか否かを判断する。演算式による演算結果と記憶された演算情報とが一致する場合には、記憶された演算情報に対応する使用指示情報に基づいて装置の使用が可能か否かを判断し、装置の使用が不可と判断した場合は、装置の使用が禁止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−348443号公報(請求項1、段落〔0010〕、〔0014〕等参照)
【特許文献2】特開2005−134513号公報(請求項1等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、消耗品が純正品である場合に装置の使用が可能となる特許文献1のシステムにおいて、第三者が非純正品を作製し、それをユーザ側の機器で使用させるためには、少なくとも、固体識別情報を用いて演算する際の演算式を、純正品の記憶媒体に記憶された情報から解析によって取得する必要がある。そして、取得した演算式に従って演算した結果を、非純正品の記憶媒体に記憶させておく必要がある。
【0006】
ところが、特許文献1では、固体識別情報を用いた演算式が、用いる消耗品の固体識別情報に関係なく、一定の演算式である。つまり、解除キーの情報と固体識別情報との排他的論理和を演算するという演算式が、固体識別情報によって変わることのない一定の演算式である。このため、第三者は、解析の際の母体となる純正品を多く集めなくても(少ない数の純正品から)、演算式を解析によって取得することが容易になるという問題が生ずる。また、演算式が一定(1種類)の場合、第三者がその演算式さえ解析してしまえば、その後は第三者が解析した演算式を用いて純正品に完全に代替する非純正品を作製できてしまうという問題も生ずる。なお、非正規業者による消耗品の再利用を防止する特許文献2のシステムにおいても、例えば最初に使用される全ての消耗品について一定の演算式が適用される場合には、上記と同様の問題が起こり得る。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、消耗品の純正品判断に必要な演算式を第三者が解析によって取得するのを困難にすることができるとともに、たとえ第三者によって演算式が解析されたとしても、その演算式を用いて第三者が純正品に完全に代替する非純正品を作製するのを困難にすることができる画像形成装置と、その画像形成装置に適用可能な純正品判断方法と、消耗品とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像形成装置は、記憶媒体が付された消耗品を用いて画像を形成する画像形成装置であって、前記消耗品の装着時に、該消耗品に固有の固体識別情報と、該消耗品が純正品であるか否かを判別するための判別情報を含む付加情報とが記憶された前記記憶媒体から、前記固体識別情報および前記付加情報を読み取る読取装置と、前記読取装置にて読み取った前記固体識別情報を用いて演算を行う演算制御部とを備え、前記演算制御部は、前記固体識別情報をマスク処理して得られる結果に応じて演算式を選択するとともに、選択した演算式に従って前記固体識別情報を用いて演算し、その演算結果と前記読取装置にて読み取った前記付加情報に含まれる前記判別情報とが一致するか否かを判断することにより、装着された前記消耗品が純正品であるか否かを判断することを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、消耗品(例えばトナーカートリッジ)の装着時に、読取装置により、固体識別情報と判別情報を含む付加情報とが記憶媒体(例えばICタグ)から読み取られる。そして、演算制御部は、固体識別情報をマスク処理して得られる結果に応じて演算式を選択し、選択した演算式に従って演算を行う。そして、演算制御部は、その演算結果と読取装置にて読み取った付加情報に含まれる判別情報とが一致するか否かを判断することにより、装着された消耗品が純正品であるか否かを判断する。例えば、演算制御部での演算結果と判別情報とが一致している場合には、装着された消耗品は純正品と判断され、一致していない場合には、非純正品(偽造品)と判断される。
【0010】
このような純正品判断を行う画像形成装置に対して、第三者が非純正品を作製し、かつ、非純正品であることがわからないようにユーザに使用させるためには、固体識別情報を用いて演算される上記の演算式を、純正品の記憶媒体に記憶された情報(固体識別情報、付加情報)から解析によって取得し、取得した演算式に従って演算した結果を付加情報(判別情報)として、非純正品の記憶媒体に記憶させておく必要がある。つまり、固体識別情報から判別情報を得るための上記演算式を取得する必要がある。
【0011】
しかし、本発明では、装着された消耗品が純正品であるか否かを判断するにあたって用いる演算式が、固体識別情報をマスク処理して得られる結果に応じて選択される。つまり、使用される演算式は、装着された消耗品の固体識別情報(その固体識別情報をマスク処理して得られる結果)によって異なり、常に一定の(常に同じ)演算式とはならない。したがって、第三者が純正品判断に必要な演算式を解析するためには、膨大な量の純正品を集めて解析する必要が生じるため、第三者による演算式の解析、取得を困難にすることができる。
【0012】
また、純正品判断に使用される演算式は、マスク結果に応じて選択可能とするために少なくとも2つは存在する。したがって、たとえ第三者によって演算式が解析されたとしても、その解析を一部の演算式の解析に留めさせることができる。そして、本発明の画像形成装置においては、ある条件では(ある固体識別情報またはそれをマスク処理した結果によっては)別の演算式が選択されて使用されるため、第三者は解析によって取得した演算式が正しいものであるかどうか迷うことになる。つまり、第三者に対して、取得した演算式が間違っているとの疑義を持たせることができる。したがって、第三者によって一部の演算式が解析され、取得されたとしても、第三者は演算式全体の解析が完全にできていないことから、純正品に完全に代替する非純正品を作製することが困難になる。
【0013】
なお、上記の作用効果は、以下に示す本発明の純正品判断方法によっても同様に得られる。すなわち、本発明の純正品判断方法は、記憶媒体が付された消耗品が純正品であるか否かを判断する純正品判断方法であって、前記消耗品に固有の固体識別情報と、前記消耗品が純正品であるか否かを判別するための判別情報を含む付加情報とが記憶された前記記憶媒体から、前記固体識別情報および前記付加情報を読み取る読取工程と、読み取った前記固体識別情報を用いて演算を行う演算工程とを有し、前記演算工程では、前記固体識別情報をマスク処理して得られる結果に応じて演算式を選択するとともに、選択した演算式に従って前記固体識別情報を用いて演算し、その演算結果と前記読取工程にて読み取った前記付加情報に含まれる前記判別情報とが一致するか否かを判断することにより、前記消耗品が純正品であるか否かを判断するものである。
【0014】
本発明の画像形成装置において、前記演算制御部は、第1の演算式に従って前記固体識別情報を用いて演算して得られる第1の演算結果が、前記付加情報に含まれる第1の判別情報と一致しているか否かを判断し、一致している場合に、前記固体識別情報をマスク処理して得られる結果に応じて、第2の演算式または第3の演算式を選択し、選択した演算式に従って前記固体識別情報を用いて演算して得られる第2の演算結果が、前記付加情報に含まれる第2の判別情報と一致しているか否かを判断することにより、装着された前記消耗品が純正品であるか否かを判断してもよい。
【0015】
この場合、演算制御部は、第1の演算式によって得られる第1の演算結果に基づく判断と、第2の演算式または第3の演算式によって得られる第2の演算結果に基づく判断との2段階で、消耗品が純正品であるか否かを判断するので、純正品判断の精度を上げることができる。
【0016】
なお、上記の作用効果は、以下に示す本発明の純正品判断方法によっても同様に得られる。すなわち、本発明の純正品判断方法は、前記演算工程では、第1の演算式に従って前記固体識別情報を用いて演算して得られる第1の演算結果が、前記付加情報に含まれる第1の判別情報と一致しているか否かを判断し、一致している場合に、前記固体識別情報をマスク処理して得られる結果に応じて、第2の演算式または第3の演算式を選択し、選択した演算式に従って前記固体識別情報を用いて演算して得られる第2の演算結果が、前記付加情報に含まれる第2の判別情報と一致しているか否かを判断することにより、前記消耗品が純正品であるか否かを判断するものである。
【0017】
本発明の画像形成装置は、情報を表示する表示部をさらに備え、前記演算制御部は、前記第1の演算結果が前記第1の判別情報と一致していない場合、前記第2の演算結果が前記第2の判別情報と一致していない場合のいずれについても、装着された前記消耗品が非純正品であると判断し、非純正品であることを前記表示部に表示させてもよい。
【0018】
このように、装着された消耗品が非純正品の場合に、表示部にその旨を表示させることにより、ユーザはその事態を把握することができ、必要に応じてメーカーに問い合わせるなどの措置を講じることが可能となる。
【0019】
本発明の画像形成装置において、前記消耗品は、内部にトナーを装填したトナーカートリッジであってもよい。この場合、トナーカートリッジに装填されたトナーを用いて画像を形成する構成において、上述した本発明の効果を得ることができる。
【0020】
本発明の消耗品は、画像形成装置に装着される消耗品であって、該消耗品に固有の固体識別情報と、前記画像形成装置にて該消耗品が純正品であるか否かを判別するために付加された付加情報とが記憶された記憶媒体を備え、前記付加情報は、前記画像形成装置にて、前記固体識別情報をマスク処理した結果に応じて選択される演算式に従って前記固体識別情報を用いて演算したときに得られる演算結果と同じ情報を、判別情報として有していることを特徴としている。
【0021】
上記の構成によれば、消耗品の記憶媒体に記憶された付加情報は、画像形成装置側で上記消耗品の固体識別情報を用いて演算したときに得られる演算結果と同じ情報を判別情報として有している。これにより、上記消耗品を画像形成装置に装着したときには、画像形成装置側で純正品判断のために選択される演算式がマスク処理の結果に応じて変わっても、画像形成装置側での固体識別情報を用いた演算結果と、消耗品に記憶された付加情報(判別情報)とが必ず一致するので、画像形成装置では上記消耗品を純正品として使用することが可能となる。
【0022】
ここで、付加情報の判別情報は、画像形成装置側で用いられる1つの演算式に基づいて決まるものではなく、固体識別情報をマスク処理した結果に応じて選択される演算式、つまり、複数の演算式の中から選択されるいずれかの演算式に基づいて決まり、常に一定の条件(同じ演算式)で決まるものではない。したがって、第三者が演算式を解析するためには、膨大な量の純正品を集めて解析する必要が生じるため、第三者による演算式の解析、取得を困難にすることができる。
【0023】
また、たとえ、複数あるうちの一部の演算式が純正品から第三者によって解析され、取得した演算式に基づいて判別情報が非純正品の記憶媒体に書き込まれ、その非純正品が画像形成装置で使用される場合でも、画像形成装置においては、非純正品の固体識別情報をマスク処理した結果によっては、第三者が解析によって取得した演算式とは別の演算式が選択されて使用されることになるため、画像形成装置側での演算結果と非純正品の付加情報(判別情報)とが一致しないことになり、第三者は取得した演算式が正しいものかどうか迷うことになる。つまり、第三者に対して、取得した演算式が間違っているとの疑義を持たせることができる。したがって、第三者によって一部の演算式が解析され、取得されたとしても、第三者は演算式全体の解析ができていないことから、純正品に完全に代替する非純正品を作製することが困難になる。
【0024】
本発明の消耗品において、前記付加情報は、前記画像形成装置にて、第1の演算式に従って前記固体識別情報を用いて演算される第1の演算結果と同じ情報を第1の判別情報として有しているとともに、前記画像形成装置にて、前記固体識別情報をマスク処理して得られる結果に応じて、第2の演算式または第3の演算式が選択されるときに、選択される演算式に従って前記固体識別情報を用いて演算される第2の演算結果と同じ情報を第2の判別情報として有していてもよい。
【0025】
上記消耗品が画像形成装置に装着されたときには、画像形成装置は、第1の演算式によって得られる第1の演算結果と付加情報の第1の判別情報とに基づく判断と、第2の演算式または第3の演算式によって得られる第2の演算結果と付加情報の第2の判別情報とに基づく判断との2段階の判断により、消耗品が純正品であるか否かを判断できる。これにより、画像形成装置側での純正品判断の精度を上げることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、装着された消耗品が純正品であるか否かを判断するにあたって用いる演算式が、固体識別情報をマスク処理して得られる結果に応じて選択され、常に一定の演算式とはならない。これにより、純正品判断に必要な演算式の第三者による解析、取得を困難にすることができる。また、たとえ、複数あるうちの一部の演算式が第三者によって解析され、取得されたとしても、本発明の画像形成装置においては、ある条件では別の演算式が選択されて使用されるため、第三者は取得した演算式が正しいものであるかどうか迷うことになる。したがって、第三者によって一部の演算式が解析され、取得されたとしても、第三者は、演算式全体の解析が完全にできていないことから、純正品に完全に代替する非純正品を作製することが困難になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の一形態に係る複合機の概略の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】上記複合機のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図3】上記複合機に装着されるトナーカートリッジに付されたタグのメモリに記憶されている情報の一部を示す説明図である。
【図4】上記メモリに記憶される固体識別情報の一例を示すとともに、その固体識別情報を用いた演算を具体的に示す説明図である。
【図5】上記メモリに記憶される固体識別情報の他の例を示すとともに、その固体識別情報を用いた演算を具体的に示す説明図である。
【図6】上記複合機のリーダライタおよび上記タグの概略の構成を示すブロック図である。
【図7】上記複合機における純正品判断手法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。まず、本実施形態の画像形成装置の概略の構成について説明する。ここでは、画像形成装置として、電子写真方式で画像を形成するモノクロの複合機を例に挙げて説明する。
【0029】
(画像形成装置の概略構成)
図1は、本実施形態に係る画像形成装置としての複合機100の概略の構成を示す断面図である。複合機100は、例えば、コピー、ファクシミリ、スキャナ、プリンタ等の諸機能を併せ持つ、いわゆるMFP(Multi Function Peripheral)と呼ばれるものである。この複合機100において、装置最上部には原稿搬送装置1が設けられており、装置正面上方には操作パネル2が設けられている。原稿搬送装置1は、原稿トレイに積載された原稿を1枚ずつ、後述するスキャナ部3の読取位置(コンタクトガラス3a上)に自動で搬送して排出する。
【0030】
操作パネル2は、印刷時の設定(例えば枚数、部数)をはじめとする各種の設定を行うための入力部として機能しているとともに、各種の情報を表示する表示部としての機能も有している。本実施形態では、操作パネル2は、タッチパネル式の液晶表示部2aと、複数の押圧ボタン(図示せず)とで構成されており、液晶表示部2aは入力部および表示部として、押圧ボタンは入力部として機能している。なお、上記の押圧ボタンは、テンキー(0〜9の数字キー、#やC(クリア)などの記号キー)、機能選択キー(コピーモードやFAX送信モードなどの動作モード設定キー)、スタート、リセット、ストップの各種キーを含む。
【0031】
また、複合機100は、スキャナ部3、給紙部4、搬送部5、画像形成部6および定着部7を備えている。
【0032】
スキャナ部3は、原稿を読み取って画像データを生成する。具体的に説明すると、スキャナ部3の上面には、送り読取用のコンタクトガラス3aと、載置読取用のコンタクトガラス3bとが設けられている。また、スキャナ部3の内部には、水平方向(図1で言えば、左右方向)に移動する移動枠(露光ランプ、ミラー等を具備)、レンズ、イメージセンサ(例えばCCD)等の光学系部材(いずれも不図示)が設けられている。
【0033】
原稿搬送装置1で連続的に搬送される原稿を読み取る場合、送り読取用のコンタクトガラス3aの下方に移動枠を固定し、原稿の反射光をレンズ、イメージセンサに導く。一方、載置読取用のコンタクトガラス3bに載置された原稿を読み取る場合、移動枠を水平方向に移動させて、上記原稿の反射光をレンズ、イメージセンサに導く。イメージセンサの各画素の出力値をA/D変換することにより、読み取り原稿の画像データを得ることができる。上記の画像データは、後述する制御部8の記憶部82(図2参照)に記憶される。
【0034】
給紙部4は、用紙を収容するとともに、収容した用紙を画像形成部6に供給するものであり、本実施形態では、垂直方向に2段に積まれた2つの給紙カセット4a・4aを有している。各給紙カセット4aは、各種(例えば、普通紙、コピー用紙、再生紙等)、各サイズ(例えば、A4、A3、B4、B5、レターサイズ等)の用紙を複数(例えば、500〜1000枚程度)積載して収容する。なお、給紙カセット4aの段数は上記の2段に限定されるわけではない。
【0035】
また、各給紙カセット4aには、用紙搬送方向上流側の端部を回動支点として回動する用紙積載板4bが設けられている。そして、この用紙積載板4bの下方には、一端がシャフト4cに連結されて他端で用紙積載板4bを上方に押し上げる押し上げ部材4dが設けられている。シャフト4cを回転させて押し上げ部材4dの角度を変化させ、用紙載置板4bを上方に押し上げることにより、用紙積載板4b上に載置された用紙は給紙ローラ4eに押圧され、最上位の用紙が給紙ローラ4eの回転によって排出される。なお、給紙ローラ4eの回転によって複数枚の用紙が同時に給装された場合には、図示しないフィードローラおよびリタードローラによって用紙が捌かれ、最上位の1枚のみが搬送される。また、用紙積載板4b上の用紙の残量は、図示しない用紙残量センサによって検知される。
【0036】
搬送部5は、給紙部4から排紙トレイ(図示せず)に至る搬送路に沿って用紙を搬送する。具体的には、搬送部5は、用紙搬送時に回転駆動する複数の搬送ローラ対(図1では、上流側から5a〜5gの計7つを図示)や、搬送される用紙を画像形成部6の手前で待機させ、トナー像形成のタイミングを合わせて送り出すレジストローラ対5h等を含んで構成されている。
【0037】
画像形成部6は、スキャナ部3にて生成した画像データまたは外部(例えばパーソナルコンピュータ)から通信回線を介して入力された画像データに基づいて、給紙部4から給紙された用紙に画像(トナー像)を形成し、搬送される用紙にトナー像を転写する。この画像形成部6は、図1中の矢印方向に回転駆動可能に支持される感光体ドラム6aを備えているとともに、その感光体ドラム6aの周囲に配設される帯電装置6b、露光装置6c、現像装置6d、転写ローラ6eおよび清掃装置6fを備えている。
【0038】
この構成では、まず、帯電装置6bにより、感光体ドラム6aの表面が所定電位に帯電される。そして、露光装置6cは、画像データに基づいてレーザ光を出力し、図1において、帯電装置6bの右側から感光体ドラム6aの表面を走査露光する。これにより、感光体ドラム6aの表面に画像データに応じた静電潜像が形成される。そして、図1において、感光体ドラム6aの右側に位置する現像装置6dは、感光体ドラム6aに形成された静電潜像にトナーを供給して現像する。感光体ドラム6aの下方の転写ローラ6eは、感光体ドラム6aに圧接し、ニップを形成する。そして、レジストローラ対5hがタイミングを図り用紙をニップに進入させる。用紙とトナー像のニップ進入時、転写ローラ6eには所定の電圧が印加され、用紙に感光体ドラム6a上のトナー像が転写される。転写後に感光体ドラム6aに残留するトナー等は、清掃装置6fによって除去される。
【0039】
定着部7は、画像形成部6にて用紙に転写されたトナー像を定着させる。本実施形態では、定着部7は、主として発熱体を内蔵する加熱ローラ7aと加圧ローラ7bとで構成される。加熱ローラ7aと加圧ローラ7bとは互いに圧接され、ニップを形成する。そして、用紙がこのニップを通過すると、トナーが溶融・加熱され、トナー像が用紙に定着される。トナー定着後の用紙は、排紙トレイに向けて送られる。なお、定着部7は、電磁誘導加熱方式等、他の加熱方式でトナー像を用紙に定着させる構成であってもよい。
【0040】
また、本実施形態の複合機100には、トナーカートリッジ200が現像装置6dの上方に装着される。トナーカートリッジ200は、例えばブラックのトナーを収容しており、そのトナーを現像装置6dに供給する。トナーカートリッジ200は消耗品であり、トナー残量が少なくなってきたときに適宜新しいものと交換される。なお、本実施形態の複合機100は、装着されるトナーカートリッジ200に付されたタグ210(図6参照)に記憶されている情報を用いて、そのトナーカートリッジ200が純正品であるか非純正品であるかを判断する機能を有しているが、その詳細については後述する。
【0041】
(複合機のハードウェア構成)
次に、本実施形態の複合機100のハードウェア構成について説明する。図2は、本実施形態の複合機100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0042】
同図に示すように、本実施形態の複合機100は、内部の制御基板上に制御部8を有している。制御部8は、原稿搬送装置1、操作パネル2、スキャナ部3、給紙部4、搬送部5、画像形成部6、定着部7等の複合機100の各部の制御を司り、例えば、CPU81、記憶部82、画像処理部83等を含んで構成されている。CPU81は、中央演算処理装置であり、記憶部82に格納され、展開される制御プログラムやデータに基づき複合機100の各部の制御や演算を行う。記憶部82はROM、RAM、フラッシュROM等の不揮発性と揮発性の記憶装置の組み合わせで構成される。例えば、記憶部82は、複合機100の制御プログラム、データ等を記憶する。
【0043】
また、制御部8には、各種コネクタ、ソケットを有し、複合機100の外部と通信をするためのI/F部84(インターフェイス部)が設けられる。そして、複合機100は、I/F部84を介し、ネットワークや、ケーブル等によりユーザ端末300(例えば、パーソナルコンピュータ)を接続することができる。なお、ユーザ端末300は、複数台、複合機100と通信可能に接続できるが、図2では、便宜上、1台のみ図示している。
【0044】
そして、使用者は、各ユーザ端末300から複合機100に向け、画像データやファイルを送信し、複合機100は、受信した画像データ等に基づき印刷を行うことができる。例えば、受信した画像データに、画像処理部83がデータ形式の変換や濃度調整等の画像処理を施し、印刷のために、露光装置6cに画像処理後の画像データを出力する。なお、画像処理部83の機能は多様であるが、公知の方法で画像処理を行うことができるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0045】
さらに、制御部8には、リーダライタ9が接続されている。リーダライタ9は、トナーカートリッジ200に取り付けられたRFIDのタグ210(図6参照)と無線通信することが可能であり、タグ210に対して情報の読み出しや書き込みを行う読取装置や書込装置としての機能を有している。すなわち、制御部8がリーダライタ9に対して、タグ210に記憶されている情報の読み取りや、タグ210への情報の書き込みを指示すると、リーダライタ9は、制御部8の指示を受けて、タグ210に対して情報の読み出しや書き込みを行う。
【0046】
ここで、記憶媒体としてのタグ210に記憶されている情報について説明する。図3は、タグ210のメモリ212に記憶されている情報の一部を示す説明図である。このように、メモリ212には、タグ210が付されたトナーカートリッジ200の純正品判断の際に用いる情報として、固体識別情報220と付加情報230とが記憶されている。
【0047】
固体識別情報220は、例えばタグ210の製造番号のように、製造されるタグ210の1つ1つに固有の情報である。したがって、タグ210がトナーカートリッジ200に付された場合、固体識別情報220は、トナーカートリッジ200の1つ1つに固有の情報となり、複数のトナーカートリッジ200を区別し得る情報となる。また、固体識別情報200は、メモリ212内において、書き換え不可能な領域に記憶されており、固体識別情報200の書き込みや書き換えが不可能となっている。
【0048】
付加情報230は、複合機100に装着されたトナーカートリッジ200が純正品であるか否かを判別するために付加された情報である。この付加情報230は、メモリ212内において、書き換え可能な領域に記憶されており、用いる固体識別情報220に応じて付加情報230を書き込む、あるいは書き換えることが可能である。例えば、タグ210の製造時に、そのタグ210の固体識別情報220に応じて付加情報230が書き込まれる。
【0049】
このような付加情報230は、第1の判別情報231と、第2の判別情報232とを含んでいる。第1の判別情報231は、複合機100にて、第1の演算式に従って固体識別情報220を用いて演算される第1の演算結果と同じ情報である。一方、第2の判別情報232は、複合機100にて、固体識別情報220をマスク処理して得られる結果に応じて、第2の演算式または第3の演算式が選択されるときに、選択される第2の演算式または第3の演算式に従って固体識別情報220を用いて演算される第2の演算結果と同じ情報である。なお、マスク処理とは、マスクパターンを用いてビットパターンの一部を抽出する処理である。
【0050】
なお、第1〜第3の演算式は、例えば固体識別情報220と所定の情報との排他的論理和による演算式を想定することができるが、排他的論理和以外の演算式とすることも勿論可能である。また、第1〜第3の演算式として、複数の論理演算を組み合わせた式とすることも勿論可能である。以下、第1〜第3の演算式を用いた演算により得られる第1の判別情報231および第2の判別情報232の具体例について説明する。なお、ここでは、説明の理解を容易にするために、ビット数を減らして説明する。
【0051】
例えば、第1の演算式が、(固体識別情報^0x1111)であり、第2の演算式が、(固体識別情報^0x2222)であり、第3の演算式が、(固体識別情報^0x3333)であるとする。なお、“^”の演算記号は、排他的論理和(XOR)を示し、後で登場する“&”の演算記号は、論理積(AND)を示す。また、“0x”は、16進数であることを示す。さらに、複合機100において、固体識別情報220をマスク処理する際に用いるマスクパターンは、例えば、0x1555とし、マスク処理した結果が0x1111と等しくない場合には、第2の演算式を選択し、第2の演算式に従って固体識別情報220を用いて演算する一方、マスク処理した結果が0x1111と等しい場合には、第3の演算式を選択し、第3の演算式に従って固体識別情報220を用いて演算することとする。
【0052】
したがって、固体識別情報220が、例えば0x1234である場合、第1の演算式による演算結果は、
0x1234^0x1111=0x0325
となる。また、固体識別情報220をマスク処理すると、
0x1234&0x1555=0x1014
となり、マスク処理した結果が0x1111と等しくないので、複合機100では第2の演算式が選択される。第2の演算式による演算結果は、
0x1234^0x2222=0x3016
となる。よって、固体識別情報220が、例えば0x1234である場合、第1の判別情報231としては、第1の演算結果と同じ情報である0x0325が、その固体識別情報220を持つタグ210のメモリ212に書き込まれ、第2の判別情報232としては、第2の演算結果と同じ情報である0x3016が上記メモリ212に書き込まれることになる。なお、上記演算を具体的に示したものを図4に示す。
【0053】
また、固体識別情報220が、例えば0x1111である場合、第1の演算式による演算結果は、
0x1111^0x1111=0x0000
となる。また、固体識別情報220をマスク処理すると、
0x1111&0x1555=0x1111
となり、マスク処理した結果が0x1111と等しいので、複合機100では第3の演算式が選択される。第3の演算式による演算結果は、
0x1111^0x3333=0x2222
となる。よって、固体識別情報220が、例えば0x1111である場合、第1の判別情報231としては、第1の演算結果と同じ情報である0x0000が、その固体識別情報220を持つタグ210のメモリ212に書き込まれ、第2の判別情報232としては、第2の演算結果と同じ情報である0x2222が上記メモリ212に書き込まれることになる。なお、上記演算を具体的に示したものを図5に示す。
【0054】
上記した制御部8は、例えば、トナーカートリッジ200の装着時に、リーダライタ9によってタグ210から固体識別情報220および付加情報230を読み取ったときに、読み取った固体識別情報220を用いて、第1〜第3の演算式に従って演算を行い、装着されたトナーカートリッジ200が純正品であるか否かを判断する演算制御部としての機能を有している。なお、制御部8による純正品判断の手法の詳細については後述する。
【0055】
なお、タグ210のメモリ212に記憶させる情報としては、上記した純正品判断の際に用いる情報のほかに、例えば以下のようなものも記憶させることができる。すなわち、タグ210には、トナーカートリッジ200に収容されるトナーの色の情報を記憶させることができる。この情報の読み出しにより、制御部8は、トナーカートリッジ200の装着ミスを把握することができる。また、タグ210には、トナーカートリッジ200の適合機種に関する情報を記憶させることもできる。この情報の読み出しにより、制御部8は、複合機100に取り付けられたトナーカートリッジ200が適切であるか否かを判断できる。さらに、タグ210には、トナーカートリッジ200に収容されるトナーの特性や、高品質な画像を形成する上で現像装置6dの現像ローラ等に印加すべき適切な電圧等のパラメータを記憶させることができる。この情報の読み出しにより、制御部8は、より良い品質で印刷を行うことができる。
【0056】
また、トナーカートリッジ200内のトナーの残量を検知するため、タグ210には、トナーカートリッジ200が複合機100に装着されてから、トナーを用いて印刷された枚数の累計等を記憶させる(書き込む)ことができる。タグ210に記憶される印刷枚数に関する情報を絶えず書き替え、また、適宜読み出すことで、制御部8は、印刷枚数とトナー消費量との関係から、トナーカートリッジ200内のトナーの残量や、トナー切れを演算等により検知することができる。
【0057】
(リーダライタおよびタグの構成)
次に、上記したリーダライタ9およびトナーカートリッジ200に付されるタグ210の構成について説明する。図6は、リーダライタ9およびタグ210の概略の構成を示すブロック図である。
【0058】
リーダライタ9の基板9aには、CPU91、メモリ92、変調部93、フィルタ94、復調部95、第1アンテナA1等が実装されている。CPU91は、制御部8との通信制御やリーダライタ9の動作を制御する演算装置である。メモリ92には、CPU91が制御を行う上で必要となるプログラムやデータが記憶される。
【0059】
変調部93は、搬送波にタグ210に送信する指示や情報(信号波)をのせる。フィルタ94は、変調後の波形のうち、通信に不要な周波数成分を取り除く。変調部93は、振幅変調、周波数変調、位相変調等、リーダライタ9とタグ210間の通信方式に応じた変調を行う(復調部95も同様)。そして、変調部93の出力は、通信対象となるタグ210と対向する第1アンテナA1に入力され、通信対象となるタグ210に受信され、指示や情報が伝達される。復調部95は、タグ210が記憶する情報等がのせられたタグ210からの反射波の復調を行う部分である。
【0060】
一方、タグ210には、第2アンテナA2、IC211および上述したメモリ212が設けられている。なお、タグ210は、本実施形態のようにパッシブ型のものであってもよいし、電源を有するアクティブ型のものであってもよい。IC211は、制御演算回路、リーダライタ9と通信を行うための変復調回路、リーダライタ9の放出する搬送波等から電力を得るIC211等の駆動用電源としての整流回路等を内蔵している。メモリ212には、上述したような各種情報が記憶される。なお、メモリ212は、IC211内に内蔵されてもよい。
【0061】
リーダライタ9の第1アンテナA1は、基板9a上に配線によりコイル状(ループ状)に形成されており、タグ210の第2アンテナA2もコイル状(ループ状)に形成されている。例えば、リーダライタ9の第1アンテナA1とタグ210の第2アンテナA2とは、同程度の大きさとされる。また、変調部93による第1アンテナA1への電圧印加や、IC211による第2アンテナA2への電圧印加により、磁界が生ずる。一方のアンテナで生じた磁界は、電磁誘導によって他方のアンテナに電圧(電流)を発生させ(電磁誘導方式)、通信が行われる。なお、リーダライタ9とタグ210は、電波方式で通信を行うものであってもよい。
【0062】
リーダライタ9のCPU91は、制御部8からの指示を受け、上記のようにタグ210と通信を行うことにより、リーダライタ9は、タグ210から情報の読み取りを行って、読み取った情報を制御部8に送信したり、制御部8から受け取ったデータをタグ210に書き込んだりすることが可能となる。
【0063】
(純正品判断の手法について)
次に、複合機100に装着されたトナーカートリッジ200が純正品であるか否かの判断手法について説明する。図7は、純正品判断手法の流れを示すフローチャートである。
【0064】
まず、複合機100にトナーカートリッジ200が装着されると(S1)、リーダライタ9によって、トナーカートリッジ200のタグ210に記憶されている固体識別情報220および付加情報230(第1の判別情報231、第2の判別情報232)が読み取られる(S2;読取工程)。すると、制御部8は、以下に示すS3以降の演算工程において、読み取った固体識別情報220を用いて所定の演算を行うとともに、その演算結果に応じて、装着されたトナーカートリッジ200が純正品であるか否かを判断する。
【0065】
具体的には、制御部8は、第1の演算式(例えば固体識別情報^0x1111)に従って固体識別情報220を用いて演算し、その演算によって得られる第1の演算結果が、付加情報230に含まれる第1の判別情報231と一致しているか否かを判断する(S3)。S3にて、第1の演算結果と第1の判別情報231とが一致していない場合、制御部8は、装着されたトナーカートリッジ200は非純正品であると判断する(S4)。そして、制御部8は、非純正品である旨を操作パネル2の液晶表示部2aに表示させ(S5)、処理を終了する。
【0066】
一方、S3にて、第1の演算結果と第1の判別情報231とが一致している場合、次に、制御部8は、固体識別情報220を所定のマスクパターン(例えば0x1555)を用いてマスク処理し、その結果が、所定の情報(例えば0x1111)と一致しているか否かを判断する(S6)。S6にて、マスク処理した結果が所定の情報と一致していない場合には、制御部8は、第2の演算式(例えば固体識別情報^0x2222)を選択するとともに、選択した第2の演算式に従って固体識別情報220を用いて演算し、その演算によって得られる第2の演算結果が、付加情報230に含まれる第2の判別情報232と一致しているか否かを判断する(S7)。
【0067】
S7にて、第2の演算結果と第2の判別情報232とが一致している場合は、制御部8は、装着されたトナーカートリッジ200は純正品であると判断し(S8)、処理を終了する。一方、S7にて、第2の演算結果と第2の判別情報232とが一致していない場合には、制御部8は、装着されたトナーカートリッジ200は非純正品であると判断する(S9)。そして、制御部8は、非純正品である旨を操作パネル2の液晶表示部2aに表示させ(S5)、処理を終了する。
【0068】
また、上記したS6において、マスク処理した結果が所定の情報と一致している場合には、制御部8は、第3の演算式(固体識別情報^0x3333)を選択するとともに、選択した第3の演算式に従って固体識別情報220を用いて演算し、その演算によって得られる第2の演算結果が、付加情報230に含まれる第2の判別情報232と一致しているか否かを判断する(S10)。
【0069】
S10にて、第2の演算結果と第2の判別情報232とが一致している場合は、制御部8は、装着されたトナーカートリッジ200は純正品であると判断し(S11)、処理を終了する。一方、S10にて、第2の演算結果と第2の判別情報232とが一致していない場合には、制御部8は、装着されたトナーカートリッジ200は非純正品であると判断する(S9)。そして、制御部8は、非純正品である旨を操作パネル2の液晶表示部2aに表示させ(S5)、処理を終了する。
【0070】
以上のように、制御部8は、固体識別情報220をマスク処理して得られる結果に応じて第2の演算式または第3の演算式を選択するとともに、選択した演算式に従って固体識別情報220を用いて演算し、その演算結果とリーダライタ9にて読み取った付加情報230に含まれる第2の判別情報232とが一致するか否かを判断することにより、装着されたトナーカートリッジが純正品であるか否かを判断している(S6、S7、S10参照)。つまり、純正品判断を行うにあたり、用いる演算式(第2の演算式または第3の演算式)が、固体識別情報220をマスク処理して得られる結果に応じて選択され、常に一定の演算式とはならない。したがって、第三者が演算式を解析するためには、膨大な量の純正品を集めて解析する必要が生じるため、純正品判断に必要な演算式の第三者による解析、取得を困難にすることができる。
【0071】
また、たとえ第三者によって純正品の記憶情報から一部の演算式(例えば第2の演算式)が解析されたとしても、複合機100では、装着されるトナーカートリッジ200(または固体識別情報220)によっては、少ない確率ではあるが別の第3の演算式が選択されて使用されるため、第三者は取得した演算式が純正品判断に使用する演算式として正しいものかどうか迷うことになる。上述した純正品の判断手法によれば、このような戸惑いを第三者に与えることができ、その結果、第三者によって一部の演算式が解析され、取得されたとしても、第三者はその演算式を安心して使用することができなくなる。そして、第三者は純正品の判断手法における全容解明ができていない、すなわち、演算式全体の解析が完全にできていないことから、純正品に完全に代替する非純正品を作製することが困難になる。
【0072】
また、制御部8は、第1の演算式によって得られる第1の演算結果に基づく判断(第1の純正品判断)と、第2の演算式または第3の演算式によって得られる第2の演算結果に基づく判断(第2の純正品判断)との2段階の判断によって、トナーカートリッジ200が純正品であるか否かを判断しているので、純正品判断の精度を上げることができる。
【0073】
また、制御部8は、上述した判断手法に基づき、装着されたトナーカートリッジ200が非純正品であると判断した場合には、非純正品であることを液晶表示部2aに表示させるので、ユーザは表示内容を見て、使用しているトナーカートリッジ200が非純正品であることを認識することができる。非純正品のまま使用するか、純正品を入手して使用するかはユーザの判断に委ねられるが、必要に応じてメーカーに問い合わせて対応を検討することも可能となる。
【0074】
なお、本実施形態では、第1〜第3の演算式、固体識別情報220、付加情報230を少ないビット数で例示したが、これは説明の理解をしやすくするためであり、さらにビット数を増やしたり(例えば256ビットの情報としたり)、複雑な演算式を採用することによって、演算式の解析をより困難にさせることも勿論可能である。また、マスクパターンでマスクされないビットを増やし、マスクされないビットの情報に基づいて他の演算式(第4、第5の演算式など)を用いてさらに演算を行うことにより、純正品判断を行うことも可能である。
【0075】
なお、本実施形態では、タグ210のメモリ212に記憶される付加情報230として、第1の判別情報231と第2の判別情報232とを分けて記憶しているが、第1の判別情報231と第2の判別情報232とを区別できるのであれば、1つの判別情報(ビット列)の中に第1の判別情報231と第2の判別情報232とを含めて記憶させるようにしてもよい。
【0076】
なお、本実施形態では、画像形成装置をモノクロの複合機100で構成した例について説明したが、本実施形態で示した構成は、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの他の画像形成装置、タンデム式またはロータリー式のカラー画像形成装置にも適用可能である。カラー画像形成装置においては、各色のトナーカートリッジごとに上述した純正品の判断方法を適用すればよい。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、記憶媒体が付された消耗品(例えばトナーカートリッジ)およびその消耗品を用いて画像を形成する画像形成装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
2a 液晶表示部(表示部)
8 制御部(演算制御部)
9 リーダライタ(読取装置)
100 複合機(画像形成装置)
200 トナーカートリッジ(消耗品)
210 タグ(記憶媒体)
220 固体識別情報
230 付加情報
231 第1の判別情報
232 第2の判別情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体が付された消耗品を用いて画像を形成する画像形成装置であって、
前記消耗品の装着時に、該消耗品に固有の固体識別情報と、該消耗品が純正品であるか否かを判別するための判別情報を含む付加情報とが記憶された前記記憶媒体から、前記固体識別情報および前記付加情報を読み取る読取装置と、
前記読取装置にて読み取った前記固体識別情報を用いて演算を行う演算制御部とを備え、
前記演算制御部は、前記固体識別情報をマスク処理して得られる結果に応じて演算式を選択するとともに、選択した演算式に従って前記固体識別情報を用いて演算し、その演算結果と前記読取装置にて読み取った前記付加情報に含まれる前記判別情報とが一致するか否かを判断することにより、装着された前記消耗品が純正品であるか否かを判断することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記演算制御部は、第1の演算式に従って前記固体識別情報を用いて演算して得られる第1の演算結果が、前記付加情報に含まれる第1の判別情報と一致しているか否かを判断し、一致している場合に、前記固体識別情報をマスク処理して得られる結果に応じて、第2の演算式または第3の演算式を選択し、選択した演算式に従って前記固体識別情報を用いて演算して得られる第2の演算結果が、前記付加情報に含まれる第2の判別情報と一致しているか否かを判断することにより、装着された前記消耗品が純正品であるか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
情報を表示する表示部をさらに備え、
前記演算制御部は、前記第1の演算結果が前記第1の判別情報と一致していない場合、前記第2の演算結果が前記第2の判別情報と一致していない場合のいずれについても、装着された前記消耗品が非純正品であると判断し、非純正品であることを前記表示部に表示させることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記消耗品は、内部にトナーを装填したトナーカートリッジであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
記憶媒体が付された消耗品が純正品であるか否かを判断する純正品判断方法であって、
前記消耗品に固有の固体識別情報と、前記消耗品が純正品であるか否かを判別するための判別情報を含む付加情報とが記憶された前記記憶媒体から、前記固体識別情報および前記付加情報を読み取る読取工程と、
読み取った前記固体識別情報を用いて演算を行う演算工程とを有し、
前記演算工程では、前記固体識別情報をマスク処理して得られる結果に応じて演算式を選択するとともに、選択した演算式に従って前記固体識別情報を用いて演算し、その演算結果と前記読取工程にて読み取った前記付加情報に含まれる前記判別情報とが一致するか否かを判断することにより、前記消耗品が純正品であるか否かを判断することを特徴とする純正品判断方法。
【請求項6】
前記演算工程では、第1の演算式に従って前記固体識別情報を用いて演算して得られる第1の演算結果が、前記付加情報に含まれる第1の判別情報と一致しているか否かを判断し、一致している場合に、前記固体識別情報をマスク処理して得られる結果に応じて、第2の演算式または第3の演算式を選択し、選択した演算式に従って前記固体識別情報を用いて演算して得られる第2の演算結果が、前記付加情報に含まれる第2の判別情報と一致しているか否かを判断することにより、前記消耗品が純正品であるか否かを判断することを特徴とする請求項5に記載の純正品判断方法。
【請求項7】
画像形成装置に装着される消耗品であって、
該消耗品に固有の固体識別情報と、前記画像形成装置にて該消耗品が純正品であるか否かを判別するために付加された付加情報とが記憶された記憶媒体を備え、
前記付加情報は、前記画像形成装置にて、前記固体識別情報をマスク処理した結果に応じて選択される演算式に従って前記固体識別情報を用いて演算したときに得られる演算結果と同じ情報を、判別情報として有していることを特徴とする消耗品。
【請求項8】
前記付加情報は、前記画像形成装置にて、第1の演算式に従って前記固体識別情報を用いて演算される第1の演算結果と同じ情報を第1の判別情報として有しているとともに、前記画像形成装置にて、前記固体識別情報をマスク処理して得られる結果に応じて、第2の演算式または第3の演算式が選択されるときに、選択される演算式に従って前記固体識別情報を用いて演算される第2の演算結果と同じ情報を第2の判別情報として有していることを特徴とする請求項7に記載の消耗品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−221454(P2011−221454A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93306(P2010−93306)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】