説明

画像形成装置およびその制御方法並びにプログラム

【課題】画像形成中のフラッシングをより効率よく行なう。
【解決手段】印刷中に定期フラッシングが必要となった場合(S110)、往動時にはキャリッジの往動を伴って1パス分の印刷を開始して(S140)、往動方向側のノズル列Aが往動方向側の縁なし印刷用のインク受け領域に対向したときにノズル列A〜Dから順次インクを吐出してフラッシングを行ない(S150,160)、復動時にはキャリッジの復動を伴って1パス分の印刷を開始して(S170)、復動方向側のノズル列Hが復動方向側の縁なし印刷用のインク受け領域に対向したときにノズル列H〜Eから順次インクを吐出してフラッシングを行なう(S180,190)。これにより、フラッシングのためにキャリッジが移動する量を少なくして、印刷中のフラッシングをより効率よく行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置およびその制御方法並びにプログラムに関し、詳しくは、ノズル列がその列方向に直交する直交方向に複数並んで形成された吐出ヘッドと該吐出ヘッドを搭載するキャリッジとを備え、前記直交方向に前記キャリッジを往復動しながら前記吐出ヘッドから液体を吐出して用紙に画像を形成する画像形成装置およびその制御方法並びに画像形成装置の制御方法をコンピューターに実現させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置としては、インクを吐出する吐出ヘッドを搭載したキャリッジを用紙の搬送方向と直交する方向に往復動させながら画像の形成を行なう装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、吐出ヘッドを封止可能なキャップ部材をキャリッジの移動方向に沿って配設し、フラッシングする際には、画像形成のために往復動しているキャリッジを途中で停止させることなくキャップ部材上まで移動させ、キャップ部材をフラッシング用の領域として吐出ヘッドからインクを吐出させる。これにより、キャリッジをよりスムーズにフラッシング用の領域まで移動させることができ、フラッシングに要する時間を短くすることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−276139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、画像形成中のフラッシングに要する時間を短くすることは、画像形成のスループットを向上させるための重要な課題として考えられている。
【0005】
本発明の画像形成装置およびその制御方法並びにプログラムは、画像形成中のフラッシングをより効率よく行なうことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成装置およびその制御方法並びにプログラムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の画像形成装置は、
ノズル列がその列方向に直交する直交方向に複数並んで形成された吐出ヘッドと該吐出ヘッドを搭載するキャリッジとを備え、前記直交方向に前記キャリッジを往復動しながら前記吐出ヘッドから液体を吐出して用紙に画像を形成する画像形成装置であって、
前記キャリッジを移動させる移動手段と、
前記用紙に縁なしの画像を形成する際に該用紙からはみ出る液体を受けるよう設けられ、前記キャリッジが往動する方向側の用紙端に対応する第1の受け領域と前記キャリッジが復動する方向側の用紙端に対応する第2の受け領域とからなる液体受け手段と、
前記用紙に画像を形成しながらフラッシングする場合、前記キャリッジの往復動を伴って、前記複数のノズル列から前記用紙の画像形成領域に液体を吐出し、往動方向側の第1のノズル列群から前記第1の受け領域に液体を吐出し、前記第1のノズル列群を除いた残余の復動方向側の第2のノズル列群から前記第2の受け領域に液体を吐出するよう、前記移動手段と前記吐出ヘッドとを制御する制御手段と
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の画像形成装置では、用紙に画像を形成しながらフラッシングする場合、吐出ヘッドを搭載するキャリッジの往復動を伴って、複数のノズル列から用紙の画像形成領域に液体を吐出し、用紙に縁なしの画像を形成する際にはみ出る液体を受けるようキャリッジが往動する方向側の用紙端に対応して設けられた第1の受け領域に往動方向側の第1のノズル列群から液体を吐出し、キャリッジが復動する方向側の用紙端に対応して設けられた第2の受け領域に第1のノズル列群を除いた残余の復動方向側の第2のノズル列群から液体を吐出するよう、移動手段と吐出ヘッドとを制御する。これにより、フラッシングのためにキャリッジが画像形成領域外に移動する量を少なくすることができ、画像形成中のフラッシングをより効率よく行なうことができる。
【0009】
こうした本発明の画像形成装置において、前記制御手段は、前記キャリッジの一往復動作中に前記第1のノズル列群から前記第1の受け領域への液体の吐出と前記第2のノズル列群から前記第2の受け領域への液体の吐出とを行なうよう制御する手段であるものとすることもできる。
【0010】
また、本発明の画像形成装置において、前記吐出ヘッドは、前記複数のノズル列として2n列(nは自然数)のノズル列が形成されてなり、前記制御手段は、往動方向を基準として1列目からn列目までのノズル列を前記第1のノズル列群とすると共に(n+1)列目から2n列目までのノズル列を前記第2のノズル列群として制御する手段であるものとすることもできる。あるいは、本発明の画像形成装置において、前記吐出ヘッドは、前記複数のノズル列として(2n+1)列(nは自然数)のノズル列が形成されてなり、前記制御手段は、往動方向を基準として1列目からn列目までのノズル列を前記第1のノズル列群とすると共に(n+1)列目から(2n+1)列目までのノズル列を前記第2のノズル列群として制御するか、または、往動方向を基準として1列目から(n+1)列目までのノズル列を前記第1のノズル列群とすると共に(n+2)列目から(2n+1)列目までのノズル列を前記第2のノズル列群として制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、キャリッジの往復動においてそれぞれ略半数ずつのノズル列からフラッシングすることができ、フラッシングに伴うキャリッジの移動量を最小限に抑えることができる。
【0011】
さらに、本発明の画像形成装置において、前記制御手段は、往動時には前記第1のノズル列群のうち往動方向側の先頭のノズル列から順に前記第1の受け領域に対向すると共に該対向するノズル列から順に液体を吐出するよう制御し、復動時には前記第2のノズル列群のうち復動方向側の先頭のノズル列から順に前記第2の受け領域に対向すると共に該対向するノズル列から順に液体を吐出するよう制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、第1のノズル列群や第2のノズル列群が一度に第1の受け領域や第2の受け領域に対向できない場合であっても、効率よくフラッシングすることができる。
【0012】
本発明の画像形成装置の制御方法は、
ノズル列がその列方向に直交する直交方向に複数並んで形成された吐出ヘッドと、該吐出ヘッドを搭載するキャリッジと、前記キャリッジを移動させる移動手段と、前記用紙に縁なしの画像を形成する際に該用紙からはみ出る液体を受けるよう設けられ前記キャリッジが往動する方向側の用紙端に対応する第1の受け領域と前記キャリッジが復動する方向側の用紙端に対応する第2の受け領域とからなる液体受け手段とを備え、前記直交方向に前記キャリッジを往復動しながら前記吐出ヘッドから液体を吐出して用紙に画像を形成する画像形成装置の制御方法であって、
前記用紙に画像を形成しながらフラッシングする場合、前記キャリッジの往復動を伴って、前記複数のノズル列から前記用紙の画像形成領域に液体を吐出し、往動方向側の第1のノズル列群から前記第1の受け領域に液体を吐出し、前記第1のノズル列群を除いた残余の復動方向側の第2のノズル列群から前記第2の受け領域に液体を吐出するよう、前記移動手段と前記吐出ヘッドとを制御する
ことを特徴とする。
【0013】
この本発明の画像形成装置の制御方法では、用紙に画像を形成しながらフラッシングする場合、吐出ヘッドを搭載するキャリッジの往復動を伴って、複数のノズル列から用紙の画像形成領域に液体を吐出し、用紙に縁なしの画像を形成する際にはみ出る液体を受けるようキャリッジが往動する方向側の用紙端に対応して設けられた第1の受け領域に往動方向側の第1のノズル列群から液体を吐出し、キャリッジが復動する方向側の用紙端に対応して設けられた第2の受け領域に第1のノズル列群を除いた残余の復動方向側の第2のノズル列群から液体を吐出するよう、移動手段と吐出ヘッドとを制御する。これにより、フラッシングのためにキャリッジが画像形成領域外に移動する量を少なくすることができ、画像形成中のフラッシングをより効率よく行なうことができる。なお、上述した画像形成装置のいずれかの機能を実現するステップを追加してもよい。
【0014】
本発明のプログラムは、上述した画像形成装置の制御方法をコンピューターに実現させるためのものである。このプログラムは、コンピューターが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピューターから別のコンピューターへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムをコンピューターに実行させれば、上述した画像形成装置の制御方法が実行されるため、該制御方法と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】インクジェットプリンター20の構成の概略を示す構成図。
【図2】印刷ヘッド24に形成されるノズル列の一例を示す説明図。
【図3】プラテン38の構成を示す構成図。
【図4】印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図5】印刷終了時のキャリッジ22の停止位置の一例を示す説明図。
【図6】ノズル列A〜Dをフラッシングする様子を示す説明図。
【図7】フラッシング終了位置と印刷終了位置とを比較する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の画像形成装置の一実施形態であるインクジェットプリンター20の構成の概略を示す構成図であり、図2は印刷ヘッド24に形成されるノズル列の一例を示す説明図であり、図3はプラテン38の構成を示す構成図である。
【0017】
本実施形態のインクジェットプリンター20は、図1に示すように、駆動モーター33による紙送りローラー35の駆動により用紙Sを図中奥から手前(搬送方向)に搬送する紙送り機構31と、紙送り機構31により給紙された用紙Sが載置されるプラテン38と、プラテン38上に載置された用紙Sに印刷ヘッド24からインク滴を吐出して印刷を行なうプリンター機構21と、プラテン38の図中右端に形成され印刷ヘッド24を封止すると共に必要に応じて印刷ヘッド24内のインクを吸引してクリーニングを行なうキャッピング装置40と、インクジェットプリンター20全体をコントロールするコントローラー70とを備える。なお、キャッピング装置40上の位置をホームポジションという。
【0018】
プリンター機構21は、メカフレーム80の図中右側に配置されたキャリッジモーター34aと、メカフレーム80の図中左側に配置された従動ローラー34bと、キャリッジモーター34aと従動ローラー34bとに架設されたキャリッジベルト32と、キャリッジモーター34aの駆動に伴ってキャリッジベルト32によりガイド28に沿って用紙Sの搬送方向に直交する図中左右方向(主走査方向)に往復動するキャリッジ22と、このキャリッジ22に搭載され溶媒としての水に着色剤としての染料または顔料を含有したシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の各色のインクを個別に収容したインクカートリッジ26と、インクカートリッジ26から供給されたインクを加圧してインク滴を吐出する印刷ヘッド24とを備える。なお、図1における左方向をキャリッジ22の往動方向とし、図1における右方向を復動方向とする。また、キャリッジ22の背面には、キャリッジ22の位置を検出するためのリニアエンコーダー36が配置されており、このリニアエンコーダー36によりキャリッジ22のポジションが管理されている。なお、インクカートリッジ26をキャリッジ22に搭載したオンキャリッジタイプを図示したが、キャリッジ22以外の場所に配置したオフキャリッジタイプとしてもよい。
【0019】
印刷ヘッド24は、図2に示すように、CMYKの各色のインク滴を吐出するノズル23が用紙Sの搬送方向に沿って複数配置されたノズル列を構成しており、これらのノズル列が主走査方向に並列となるよう形成されている。これらのノズル列は、本実施形態では、CMYKの各色のインク滴を吐出するノズル列が各2列ずつの計8列のノズル列からなり、キャリッジ22の往動方向側(図2中左側)から順にノズル列A〜Hと称する。なお、印刷ヘッド24は、圧電素子に電圧をかけることにより、その圧電素子を変形させてインクを加圧する方式を採用するものとした。
【0020】
プラテン38は、図3に示すように、用紙Sを載置するリブ38aと、リブ38aの周囲に設けられインクを吸収可能なスポンジやフェルトなどの材質で形成されたインク受け39とにより構成されている。リブ38aは、インクジェットプリンター20で使用可能なサイズの異なる複数種の用紙S(例えば、A4サイズやB5サイズ,ハガキサイズなど)を載置できるようにプラテン38の長手方向(図中主走査方向)に沿って複数形成されている。また、用紙Sに余白なしの印刷領域を設定して印刷するいわゆる縁なし印刷を行なう際に用紙Sの端部からはみ出たインクが付着しないよう、リブ38aは用紙Sの端部と重ならない位置に形成されている。そして、インク受け39は、縁なし印刷の際に用紙Sからはみ出て吐出されるインクなどを吸収可能となっている。ここで、本実施形態では、インクジェットプリンター20は、用紙Sの右端部(図中復動方向側の端部)をガイドする基準ガイド37を備えており、用紙Sは右端基準で搬送される。このため、インク受け39において用紙Sの右端から外れたインクを吸収する領域は、用紙Sのサイズによらずインク受け領域39aとなる。また、用紙Sの左端から外れたインクを吸収する領域は、用紙Sのサイズに応じて異なり、用紙Sがハガキのときにはインク受け領域39bとなり、B5サイズのときにはインク受け領域39cとなり、A4サイズのときにはインク受け領域39dとなる。
【0021】
コントローラー70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、各種処理プログラムや各種データを記憶したROM73と、一時的にデータを記憶したりするRAM74と、データを書き込み消去可能なフラッシュメモリー75と、外部機器との情報のやり取りを行なうインターフェース(I/F)76と、図示しない入出力ポートとを備える。RAM74には、印刷バッファー領域が設けられており、この印刷バッファー領域に汎用のパーソナルコンピューターであるユーザーPC10からI/F76を介して送られた印刷データが記憶される。このコントローラー70には、リニアエンコーダー36からのポジション信号などが入力ポートを介して入力される。また、コントローラー70からは、印刷ヘッド24への駆動信号や駆動モーター33への駆動信号,キャリッジモーター34aへの駆動信号などが出力ポートを介して出力される。
【0022】
こうして構成された本実施形態のインクジェットプリンター20では、ユーザーPC10側で展開されたドットデータを印刷データとして印刷実行指示と共に受け取ると、これをRAM74に設けられた印刷バッファー領域に出力する。そして、駆動モーター33により紙送りローラー35を回転させて用紙Sをプラテン38上に搬送すると共にキャリッジモーター34aによりキャリッジ22を往復動させ、同時に印刷ヘッド24の図示しない各色の圧電素子を駆動して各色インクを吐出してドットを形成することにより、用紙S上に画像を形成する。このインクジェットプリンター20は、印刷モードとして双方向印刷モードを有しており、双方向印刷モードにおいては、キャリッジ22の往動方向と復動方向との双方で印刷ヘッド24からインク滴を吐出して印刷を行なう。
【0023】
次に、こうして構成された本実施形態のインクジェットプリンター20の動作、特に、印刷処理時の動作について説明する。図4は、コントローラー70により実行される印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、双方向印刷モードでユーザーPC10から印刷データを入力したときに実行される。なお、用紙SはA4サイズとする。
【0024】
このルーチンが実行されると、コントローラー70のCPU72は、まず、紙送りローラー35の駆動を伴って用紙Sがプラテン38上に給紙されるようを駆動モーター33を制御して給紙処理を行ない(ステップS100)、定期フラッシングが必要か否かを判定する(ステップS110)。この判定は、所定のフラッシングタイミングとなったか否かに基づいて行なわれる。所定のフラッシングタイミングとしては、例えば、印刷処理を開始した時点や前回の全ノズル列A〜Hのフラッシングが完了した時点からの図示しないタイマーによる計時時間が所定時間を経過したタイミングなどとすることができる。
【0025】
ステップS110で定期フラッシングが必要でないと判定したときには、キャリッジ22の移動(往動または復動)を伴って1パス分の印刷を開始し(ステップS120)、キャリッジ22が停止位置まで移動したときに(ステップS200)、キャリッジ22を停止して1パス分の印刷を終了する(ステップS210)。ここで、印刷終了時のキャリッジ22の停止位置の一例を図5に示す。図5は、A4サイズの用紙Sに縁あり印刷する場合の停止位置を示した。また、図示の便宜上、ノズル列A〜Hを直線で示し、プラテン38やインク受け39の図示を省略してインク受け領域39a,39dを図示した。なお、後述する図6,7においても同様に図示するものとした。図5(a)に示すように、キャリッジ22の往動時には、ノズル列Hが用紙Sの印字領域の図中往動方向側の端部上となる位置をキャリッジ22の停止位置として印刷を終了する。また、図5(b)に示すように、キャリッジ22の復動時には、ノズル列Aが用紙Sの印字領域の図中復動方向側の端部上となる位置をキャリッジ22の停止位置として印刷を終了する。なお、図示は省略したが、縁なし印刷する場合には、往動,復動ともに全ノズル列A〜Hが用紙S上の領域からわずかに外れた位置をキャリッジ22の停止位置として印刷を終了する。
【0026】
こうして1パス分の印刷を終了すると、次パスで印刷すべき印刷データがあるか否かを判定し(ステップS220)、次パスで印刷すべきデータがないと判定したときには、紙送りローラー35の駆動を伴って用紙Sがプラテン38から排紙されるよう駆動モーター33を制御して(ステップS230)、本ルーチンを終了する。
【0027】
一方、ステップS220で印刷データがあると判定したときには、用紙Sを次パスの印刷のために所定量だけ搬送して(ステップS240)、ステップS110に戻って処理を繰り返す。このような処理を繰り返すうちに、所定のフラッシングタイミングとなりステップS110で定期フラッシングが必要と判定したときには、次パスのキャリッジ22の移動が往動であるか否かを判定する(ステップS130)。往動であると判定したときには、キャリッジ22の往動を伴って1パス分の印刷を開始して(ステップS140)、往動方向側のノズル列Aがインク受け領域39dに対向する位置までキャリッジ22が移動するのを待つ(ステップS150)。ノズル列Aがインク受け領域39dに対向する位置までキャリッジ22が移動すると、往動方向側のノズル列A〜Dが順次インク受け領域39dに対向するので、ノズル列A〜Dから順次インクを吐出するよう印刷ヘッド24を制御する(ステップS160)。これにより、ノズル列A〜Dをフラッシングすることができる。
【0028】
図6は、ノズル列A〜Dをフラッシングする様子を示す説明図である。図示するように、ノズル列Aがインク受け領域39dに対向したときにノズル列Aからインク受け領域39dにインクを吐出し(図6(a))、ノズル列Bがインク受け領域39dに対向したときにノズル列Bからインクを吐出し(図6(b))、ノズル列Cがインク受け領域39dに対向したときにノズル列Cからインクを吐出し(図6(c))、ノズル列Dがインク受け領域39dに対向したときにノズル列Dからインクを吐出する(図6(d))。なお、図6では、往動時の1パスの途中を示しているため、印刷に必要なノズル列からインクを吐出するよう印刷ヘッド24が制御されている。ここで、各ノズル列A〜Dからインク受け領域39dにインクを吐出する際のキャリッジ22の各ポジションは、キャリッジ22の移動速度とインクの飛翔速度とに基づいて予め定めてROM73に記憶しておくものとした。そして、キャリッジ22のポジションがROM73に記憶された各ポジションとなったときに、対応するノズル列A〜Dからインクを吐出するよう印刷ヘッド24を制御する。なお、用紙SとしてA4サイズの用紙を例示したが、B5サイズやハガキサイズの用紙Sであっても同様にフラッシングすることができる。B5サイズの場合にはインク受け領域39cにインクを吐出し、ハガキサイズの場合にはインク受け領域39bにインクを吐出するものとすればよい。こうしてノズル列A〜Dをフラッシングすると、ステップS200でキャリッジ22が停止位置まで移動したと判定したときにステップS210で1パス分の印刷を完了してステップS220以降の処理を実行する。
【0029】
一方、ステップS130で、次パスのキャリッジ22の移動が往動ではないと判定したときには、キャリッジ22の復動を伴って1パス分の印刷を開始して(ステップS170)、復動方向側のノズル列Hがインク受け領域39aに対向する位置までキャリッジ22が移動するのを待つ(ステップS180)。ノズル列Hがインク受け領域39aに対向する位置までキャリッジ22が移動すると、復動方向側のノズル列H〜Eが順次インク受け領域39aに対向するので、ノズル列H〜Eから順次インクを吐出するよう印刷ヘッド24を制御する(ステップS190)。これにより、ノズル列H〜Eをフラッシングすることができ、ステップS160の処理と合わせて全てのノズル列A〜Hをフラッシングすることができる。なお、ノズル列H〜Eのフラッシングは、上述したノズル列A〜Dのフラッシングと同様に、予め各ノズル列H〜E毎にインク受け領域39aにインクを吐出する際のキャリッジ22の各ポジションをROM73に記憶しておくものとし、キャリッジ22のポジションが該当するポジションとなったときに対応するノズル列H〜Eからそれぞれインクを吐出するよう刷ヘッド24を制御する。また、ステップS160の処理とステップS190の処理との先後は問わないが、全ノズルA〜Hのフラッシングが完了したときに、上述したタイマーの計時をリセットして次回のフラッシングタイミングを判定するための計時を開始するものとした。このため、全ノズル列A〜Hのうち、往動方向側または復動方向側のいずれかのノズル列からのフラッシングが完了していない場合には、ステップS110で定期フラッシングが必要と判定することになる。こうしてノズル列H〜Eをフラッシングすると、ステップS200でキャリッジ22が停止位置まで移動したと判定したときにステップS210で1パス分の印刷を完了してステップS220以降の処理を実行する。
【0030】
ここで、図7は、フラッシング終了位置と印刷終了位置とを比較する説明図である。図7(a)はフラッシング終了位置を示し、図7(b)は印刷終了位置即ち図5に示したキャリッジ22の停止位置を示す。上述したように、往動時にはノズル列A〜Dまでフラッシングするので図7(a)の左側に示すフラッシング終了位置となり、復動時にはノズル列H〜Eまでフラッシングするので図7(a)の右側に示すフラッシング終了位置となる。一方、印刷終了位置(キャリッジ22の停止位置)は、往動時には図7(b)の左側に示す位置となり、復動時は図7(b)の右側に示す位置となる。図示するように、往動時および復動時共にフラッシング終了位置が印刷終了位置よりも用紙Sの内側(中央側)に位置しており、フラッシングするためにキャリッジ22を印字領域から外れた位置まで移動させる必要がないことがわかる。また、キャリッジ22の往復動においてそれぞれ先頭側となる半数ずつのノズル列をフラッシングするから、フラッシングのためのキャリッジ22の移動量を印刷のための移動量の範囲内として最小限に抑えることができる。このため、例えば、印刷中にキャッピング装置40上まで移動させてフラッシングするものに比して、フラッシングする際のキャリッジ22の移動量を少なくすることができる。この結果、印刷中のフラッシングをより効率よく行なうことができる。なお、縁あり印刷の場合を例示したが、縁なし印刷の場合も同様にフラッシング終了位置が印刷終了位置よりも用紙Sの内側となるため、印刷中のフラッシングをより効率よく行なうことができる。
【0031】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のキャリッジ22を移動させるキャリッジベルト32、キャリッジモーター34a、従動ローラー34bが本発明の「移動手段」に相当し、インク受け領域39b〜39dを第1の受け領域としてインク受け領域39aを第2の受け領域とするインク受け39が「液体受け手段」に相当し、図4の印刷処理ルーチンを実行するコントローラー70が「制御手段」に相当する。
【0032】
以上詳述した本実施形態のインクジェットプリンター20によれば、印刷中に定期フラッシングが必要となった場合、往動時にはキャリッジ22の往動を伴って1パス分の印刷を開始して、往動方向側のノズル列Aが往動方向側の縁なし印刷用のインク受け領域39dに対向したときにノズル列A〜Dからインク受け領域39dに順次インクを吐出してフラッシングし、復動時にはキャリッジ22の復動を伴って1パス分の印刷を開始して、復動方向側のノズル列Hが復動方向側の縁なし印刷用のインク受け領域39aに対向したときにノズル列H〜Eからインク受け領域39aに順次インクを吐出してフラッシングするから、キャリッジ22の一往復動作中に印刷ヘッド24の全てのノズル列A〜Hをフラッシングすることができる。また、キャリッジ22の往復動においてそれぞれ先頭側となる半数ずつのノズル列をフラッシングするから、キャリッジ22の移動量を最小限に抑えることができる。この結果、フラッシングのためにキャリッジ22が移動する量を少なくして印刷中のフラッシングを効率よく行なうことができる。
【0033】
なお、本発明は上述した実施態様に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0034】
上述した実施形態では、印刷モードとして双方向印刷モードを用いて印刷する場合に適用して説明したが、双方向印刷モードを用いることなく片方向(例えば、往動方向)で印刷を行なうものとしてもよい。往動方向のみで印刷する場合には、図4の印刷処理ルーチンのステップS170の処理において、1パス分の印刷を省略して単にキャリッジ22の復動を行なうものなどとすればよい。
【0035】
上述した実施形態では、インク受け領域39a,39dに対向するノズル列から1列ずつ順に吐出することによりフラッシングするものとしたが、これに限られず、複数列まとめてインクを吐出することによりフラッシングするものとしてもよい。
【0036】
上述した実施形態では、印刷ヘッド24に8列のノズル列A〜Hが形成される場合を例示したが、これに限られず、複数列のノズル列が形成されるものであればよい。また、ノズル列は偶数列である必要はなく、奇数列であっても構わない。奇数列の場合、例えば、5列のノズル列a〜eが形成される場合には、往動時にノズル列a〜cをフラッシングし復動時にノズル列e,dをフラッシングするものとしてもよいし、往動時にノズル列a,bをフラッシングし復動時にノズル列e〜cをフラッシングするものとしてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、印刷ヘッド24に形成される8列のノズル列A〜Hのうち往動時と復動時とで同じ列数である4列ずつフラッシングするものとしたが、これに限られず、往動時と復動時とで異なる列数をフラッシングするものとしてもよい。例えば、往動時にはノズル列A,Bをフラッシングし、復動時にはノズル列H〜Cをフラッシングするものなどとしてもよい。
【0038】
上述した実施形態では、キャリッジ22の停止位置を固定としたが、これに限られるものではない。例えば、パス毎のキャリッジ22の移動量が最小となるようパス毎のキャリッジ22の停止位置を次のパスの印刷開始位置に応じて変更してキャリッジ22を制御する、いわゆるロジカルシークを行なうものとしてもよい。その場合、定期フラッシングが必要と判定したときには、ロジカルシークを一時的に解除してフラッシング可能なポジションまでキャリッジ22を移動してフラッシングを行ない、フラッシングが完了したときにロジカルシークを再開するものなどとすればよい。この際、ロジカルシーク中よりもキャリッジ22の移動量は増加するものの、キャッピング装置40上まで移動させてフラッシングするものに比してその移動量を少なくすることが可能となるから、本実施形態と同様に印刷中のフラッシングを効率よく行なうことができる。
【0039】
上述した実施形態では、キャリッジ22の一往復動作中にフラッシングするものとしたが、これに限られず、複数の往復動作に亘る往動時と復動時とにフラッシングするものとしてもよい。
【0040】
上述した実施形態では、所定のフラッシングタイミングとして印刷処理を開始した時点や前回のフラッシングが完了した時点から所定時間を経過したタイミングとしたが、これに限られず、前回のフラッシングが完了した時点から所定パス数の印刷を行なったタイミングなどとしてもよい。
【0041】
上述した実施形態では、用紙Sを基準ガイド37に沿って右端基準で搬送するものとしたが、これに限られず、用紙Sの中央位置を基準として搬送するものとしてもよい。この場合、用紙サイズ毎に定められる往動方向側のインク吸収領域と復動方向側のインク吸収領域とにインクを吐出してフラッシングするものとすればよい。
【0042】
上述した実施形態では、本発明の画像形成装置の一例としてインクジェットプリンター20を示したが、本発明は液体を吐出して用紙に画像を形成するものであればこれに限定されるものではなく、例えば、ファクシミリ装置や複合機などのOA機器に適用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 ユーザーPC、20 インクジェットプリンター、21 プリンター機構、22 キャリッジ、23 ノズル、24 印刷ヘッド、26 インクカートリッジ、28 ガイド、31 紙送り機構、32 キャリッジベルト、33 駆動モーター、34a キャリッジモーター、34b 従動ローラー、35 紙送りローラー、36 リニアエンコーダー、37 基準ガイド、38 プラテン、38a リブ、39 インク受け、39a〜39d インク受け領域、40 キャッピング装置、70 コントローラー、72 CPU、73 ROM、74 RAM、75 フラッシュメモリー、76 インターフェース(I/F)、80 メカフレーム、A〜H ノズル列、S 用紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル列がその列方向に直交する直交方向に複数並んで形成された吐出ヘッドと該吐出ヘッドを搭載するキャリッジとを備え、前記直交方向に前記キャリッジを往復動しながら前記吐出ヘッドから液体を吐出して用紙に画像を形成する画像形成装置であって、
前記キャリッジを移動させる移動手段と、
前記用紙に縁なしの画像を形成する際に該用紙からはみ出る液体を受けるよう設けられ、前記キャリッジが往動する方向側の用紙端に対応する第1の受け領域と前記キャリッジが復動する方向側の用紙端に対応する第2の受け領域とからなる液体受け手段と、
前記用紙に画像を形成しながらフラッシングする場合、前記キャリッジの往復動を伴って、前記複数のノズル列から前記用紙の画像形成領域に液体を吐出し、往動方向側の第1のノズル列群から前記第1の受け領域に液体を吐出し、前記第1のノズル列群を除いた残余の復動方向側の第2のノズル列群から前記第2の受け領域に液体を吐出するよう、前記移動手段と前記吐出ヘッドとを制御する制御手段と
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記キャリッジの一往復動作中に前記第1のノズル列群から前記第1の受け領域への液体の吐出と前記第2のノズル列群から前記第2の受け領域への液体の吐出とを行なうよう制御する手段である請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の画像形成装置であって、
前記吐出ヘッドは、前記複数のノズル列として2n列(nは自然数)のノズル列が形成されてなり、
前記制御手段は、往動方向を基準として1列目からn列目までのノズル列を前記第1のノズル列群とすると共に(n+1)列目から2n列目までのノズル列を前記第2のノズル列群として制御する手段である
画像形成装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の画像形成装置であって、
前記吐出ヘッドは、前記複数のノズル列として(2n+1)列(nは自然数)のノズル列が形成されてなり、
前記制御手段は、往動方向を基準として1列目からn列目までのノズル列を前記第1のノズル列群とすると共に(n+1)列目から(2n+1)列目までのノズル列を前記第2のノズル列群として制御するか、または、往動方向を基準として1列目から(n+1)列目までのノズル列を前記第1のノズル列群とすると共に(n+2)列目から(2n+1)列目までのノズル列を前記第2のノズル列群として制御する手段である
画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、往動時には前記第1のノズル列群のうち往動方向側の先頭のノズル列から順に前記第1の受け領域に対向すると共に該対向するノズル列から順に液体を吐出するよう制御し、復動時には前記第2のノズル列群のうち復動方向側の先頭のノズル列から順に前記第2の受け領域に対向すると共に該対向するノズル列から順に液体を吐出するよう制御する手段である請求項1ないし4いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
ノズル列がその列方向に直交する直交方向に複数並んで形成された吐出ヘッドと、該吐出ヘッドを搭載するキャリッジと、前記キャリッジを移動させる移動手段と、前記用紙に縁なしの画像を形成する際に該用紙からはみ出る液体を受けるよう設けられ前記キャリッジが往動する方向側の用紙端に対応する第1の受け領域と前記キャリッジが復動する方向側の用紙端に対応する第2の受け領域とからなる液体受け手段とを備え、前記直交方向に前記キャリッジを往復動しながら前記吐出ヘッドから液体を吐出して用紙に画像を形成する画像形成装置の制御方法であって、
前記用紙に画像を形成しながらフラッシングする場合、前記キャリッジの往復動を伴って、前記複数のノズル列から前記用紙の画像形成領域に液体を吐出し、往動方向側の第1のノズル列群から前記第1の受け領域に液体を吐出し、前記第1のノズル列群を除いた残余の復動方向側の第2のノズル列群から前記第2の受け領域に液体を吐出するよう、前記移動手段と前記吐出ヘッドとを制御する
ことを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項7】
請求項6記載の画像形成装置の制御方法をコンピューターに実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−143654(P2011−143654A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7227(P2010−7227)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】