説明

画像形成装置およびプログラム

【課題】捌き機構等により記録材に引張応力が生じる場合でも、形成される画像の倍率に変化が生じにくい画像形成装置等を提供する。
【解決手段】トナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像を感光体ドラム11を用いて用紙に転写する転写装置15と、トナー像を用紙に定着する定着部20と、用紙を収容し用紙を一枚ずつに捌いて転写部20に供給する用紙供給部30と、感光体ドラム11の回転速度を制御する制御部500とを備え、制御部500は、用紙の搬送方向先端部が定着部20に達する前は感光体ドラム11の表面の線速度を連続的に速くする制御を行なうことを特徴とする画像形成装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置では、例えばドラム状に形成された感光体を一様に帯電し、この感光体を画像情報に基づいて制御された光で露光して感光体上に静電潜像を形成する。そして、この静電潜像をトナーによって可視像(トナー像)とし、更にこのトナー像を記録材に転写し、これを定着装置によって定着して画像形成している。
【0003】
特許文献1には、回転により被担持体を次工程領域まで搬送する担持体を有し、両面転写モードの選択時に転写紙の第1面に画像を転写して定着手段で定着した後に転写紙の第2面に画像を転写して定着手段で定着する画像形成装置において、両面転写モードの選択時における、転写紙の第1面に画像を転写する時の第1の線速と、転写紙の第2面に画像を転写する時の第2の線速との関係を第1の線速>第2の線速とする手段を備えた画像形成装置が開示されている。
また特許文献2には、転写材の第2面に転写されるトナー像を形成するときの第1像担持手段の移動速度を、転写材の第1面に転写されるトナー像を形成するときの第1像担持手段の移動速度よりも遅くする画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−197727号公報
【特許文献2】特開平11−2927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、一般に記録材は、記録材収容部に複数枚収容され、記録材に画像を形成する場合は、記録材収容部から捌き機構により一枚ずつ捌かれて供給される。ところが記録材を捌く捌き機構等により生ずる負荷により供給された記録材に引張応力が生じ、これにより形成される画像の倍率に変化が生じる場合があった。
本発明は、捌き機構等により記録材に引張応力が生じる場合でも、形成される画像の倍率に変化が生じにくい画像形成装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、トナー像を形成するトナー像形成手段と、前記トナー像形成手段により形成された前記トナー像を回転体を用いて記録材に転写する転写手段と、前記転写手段により転写された前記トナー像を記録材に定着する定着手段と、記録材を収容し、記録材を一枚ずつに捌いて前記転写手段に供給する記録材供給部と、前記回転体の回転速度を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、記録材の搬送方向先端部が前記定着手段に達する前は前記回転体の表面の線速度を連続的に速くする制御を行なうことを特徴とする画像形成装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記制御部は、記録材の搬送方向先端部が前記定着手段に達した後は前記回転体の表面の線速度を連続的に遅くする制御を更に行なうことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置である。
請求項3に記載の発明は、前記記録材供給部は、記録材を収容する記録材収容部を複数有し、前記制御部は、前記転写手段に最も近い記録材収容部から記録材が当該転写手段に供給されるときに前記制御を行なうことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置である。
請求項4に記載の発明は、前記記録材供給部は、記録材を前記転写手段に向けて搬送する搬送手段を有し、前記転写手段に最も近い記録材収容部から記録材が当該転写手段に搬送されるときには記録材は前記搬送手段を通らず、当該転写手段に最も近い記録材収容部以外の記録材収容部から記録材が当該転写手段に搬送されるときには記録材は当該搬送手段を通ることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置である。
請求項5に記載の発明は、前記定着手段により記録材の第1面に前記トナー像が定着された後に記録材の当該第1面と第2面を反転させ、記録材を前記転写手段に再度供給する反転手段を更に備え、前記制御部は、前記反転手段を制御すると共に、記録材の前記第1面にトナー像を転写するときの前記回転体の表面の線速度よりも記録材の前記第2面にトナー像を転写するときの前記回転体の表面の線速度を遅くすることで転写されるトナー像の副走査方向の倍率の調整を行なうことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像形成装置である。
請求項6に記載の発明は、前記定着手段は、前記転写手段により転写された前記トナー像を回転しつつ記録材に定着する定着回転体を有し、前記制御部は、前記定着回転体の表面の線速度を前記回転体の線速度より速くする制御を更に行なうことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置である。
【0008】
請求項7に記載の発明は、コンピュータに、トナー像を形成するトナー像形成手段を制御する機能と、前記トナー像形成手段により形成された前記トナー像を回転体を用いて記録材に転写する転写手段を制御する機能と、前記転写手段により転写された前記トナー像を記録材に定着する定着手段を制御する機能と、記録材を収容し、記録材を一枚ずつに捌いて前記転写手段に供給する記録材供給部を制御する機能と、記録材の搬送方向先端部が前記定着手段に達する前は前記回転体の表面の線速度を連続的に速くする制御を行なう機能と、を実現させるプログラムである。
【0009】
請求項8に記載の発明は、記録材の搬送方向先端部が前記定着手段に達した後は前記回転体の表面の線速度を連続的に遅くする制御を行なう機能を更に有することを特徴とする請求項7に記載のプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、捌き機構等により記録材に引張応力が生じる場合でも、形成される画像の倍率に変化が生じにくい画像形成装置を提供することができる。
請求項2の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、定着手段により引張応力が生じる場合でも、形成される画像の倍率により変化が生じにくくなる。
請求項3の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、記録材を搬送手段を通さずに供給する場合でも、形成される画像の倍率により変化が生じにくくなる。
請求項4の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、記録材を搬送手段を通す場合と通さない場合とで形成される画像の倍率に差異が生じにくくなる。
請求項5の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、、記録材の第1面および第2面の両面に画像を形成する場合でも記録材の第1面に形成される画像と第2面に形成される画像の大きさに差異が生じにくくなる。
請求項6の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、予め定められた厚さ以上の記録材を使用するときでも画像の乱れがより生じにくくなる。
請求項7の発明によれば、捌き機構等により記録材に引張応力が生じる場合でも、形成される画像の倍率に変化が生じにくくするように画像形成を行なう機能をコンピュータにより実現することができる。
請求項8の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、定着手段により引張応力が生じる場合でも、形成される画像の倍率により変化が生じにくくなる機能をコンピュータにより行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態が適用された画像形成装置の概略構成を示した図である。
【図2】図1の一部分を拡大した拡大図である。
【図3】(a)〜(b)は、引き込みロールと捌き機構の部分を更に詳しく説明した図である。
【図4】本実施の形態による用紙に画像形成を行なう手順について説明したフローチャートである。
【図5】(a)〜(b)は、図4のステップ103およびステップ104の制御を行なわなかった場合と行なった場合について比較した図である。
【図6】(a)〜(b)は、両面印刷時の用紙の寸法の変化について説明した概念図である。
【図7】本実施の形態による用紙に両面印刷を行なう手順について説明したフローチャートである。
【図8】転写を行なう速度を第1面と第2面とで同じにした場合の用紙の含水率と用紙に形成される画像の副走査方向の倍率の関係について説明した図である。
【図9】本実施の形態による用紙が厚紙である場合に画像形成を行なう手順について説明したフローチャートである。
【図10】(a)〜(b)は、図9のステップ307の制御を行なわなかった場合と行なった場合について比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<画像形成装置全体の説明>
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用された画像形成装置1の概略構成を示した図である。また図2は、図1の一部分を拡大した拡大図である。以下、図1および図2を参照し画像形成装置1について説明を行なう。
図1および図2に示した画像形成装置1は、用紙(記録材)Pにトナー像を形成する画像形成部10と、画像形成部10により用紙Pに形成されたトナー像を用紙Pに定着する定着手段の一例としての定着部20と、用紙Pを収容し用紙Pを一枚ずつに捌いて画像形成部10に供給する記録材供給部の一例としての用紙供給部30と、用紙Pの表裏を反転させる用紙反転機構40とから主要部が構成されている。
【0013】
また画像形成装置1には、着脱可能に設けられ、画像形成部10に供給されるトナーを収容したトナーカートリッジTCと、定着部20を通過した用紙Pが積載される用紙積載部YSとが設けられている。
さらに画像形成装置1には、画像形成装置1の上部に設けられたスキャナ200(画像読み取り装置)や不図示のパーソナルコンピュータ(PC)等からの画像データを受信する受信部400が設けられている。そして画像形成装置1には、画像形成部10、定着部20、および用紙供給部30、用紙反転機構40の動作全般を制御する制御部500と、受信部400にて受信された画像データに画像処理を施した後に画像形成部10に画像データを出力する画像処理部600とが設けられている。
【0014】
さらに画像形成装置1には、表示パネルにより構成されユーザからの指示を受け付けるとともにユーザに対してメッセージ等を表示するユーザインタフェース(UI)700が設けられている。なお、制御部500は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、およびHDD(Hard Disk Drive)(何れも不図示)により構成されている。CPUでは、処理プログラムが実行される。ROMには、各種プログラム、各種テーブル、パラメータ等が記憶されている。RAMは、CPUによる各種プログラムの実行時におけるワークエリア等として用いられる。
【0015】
画像形成部10には、プロセスカートリッジ100が設けられている。プロセスカートリッジ100は、画像形成装置1のフロント側(図中手前側)に引き抜くことで画像形成装置1から取り外しできるようになっている。また本実施の形態では、プロセスカートリッジ100を取り外すことにより、他のプロセスカートリッジ100を装着可能となっている。
【0016】
ここで、プロセスカートリッジ100には、感光体ドラム11、帯電装置12、現像装置14、クリーニング装置16が設けられている。またプロセスカートリッジ100には、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)などにより構成されるメモリMが取り付けられている。このメモリMには、プロセスカートリッジ100の種類を示す情報や、感光体ドラム11の回転数などプロセスカートリッジ100の使用状況に関する情報が格納される。また本実施の形態における画像形成装置1には、露光装置13と、転写手段の一例であって感光体ドラム11と共に用紙Pを挟持しつつ回転することでトナー像を用紙Pに転写する転写装置15とが設けられている。さらに画像形成装置1には、上記メモリMから情報を読み出すとともにこのメモリMに情報を書き込む読み出し/書き込み装置YKが設けられている。
【0017】
ここで、プロセスカートリッジ100に設けられた感光体ドラム11は、その外周面に感光層を備えており、図示しない駆動源を駆動させることにより図中矢印方向に回転する。帯電装置12は、感光体ドラム11に接触する帯電ロールを有し感光体ドラム11を予め定められた電位に帯電する。露光装置13は、レーザを感光体ドラム11に照射し帯電装置12により帯電した感光体ドラム11を選択的に露光して感光体ドラム11に静電潜像を形成する。また現像装置14は、現像ロールを有し感光体ドラム11上にトナー像を形成する。
【0018】
より具体的に説明すると、現像装置14には、例えば、負極性に帯電するトナー及び正極性に帯電するキャリアからなる2成分現像剤が収容されている。そしてこの現像装置14は、感光体ドラム11上に形成された静電潜像をトナーで現像して感光体ドラム11上にトナー像を形成する。転写装置15は、ロール状部材を有し転写装置15と感光体ドラム11との間(転写部Tp)に電界を形成しつつ感光体ドラム11の回転に従って回転することで、感光体ドラム11上のトナー像を用紙Pに転写する。またクリーニング装置16は、感光体ドラム11に接触するクリーニングブレードを有しこのクリーニングブレードを用いて感光体ドラム11上に残留するトナー等を除去する。なお本実施の形態では、上記のプロセスカートリッジ100および露光装置13を、トナー像を形成させるトナー像形成手段の一例として捉えることができる。
【0019】
定着部20は、画像形成部10により用紙Pに形成されたトナー像を加熱することで用紙Pに定着する。本実施の形態では、定着部20は、内部に加熱源を備える加熱ロール21と、加熱ロール21と対向して配され加熱ロール21と共に用紙Pを挟持するための加圧ロール22とを備える。
【0020】
加熱ロール21は、加熱源として内部に例えばハロゲンヒータが配置され、これにより発生する熱により加熱ロール21の表面を予め定められた温度に上昇させることができる。そのため定着部20に用紙Pが搬送され、加熱ロール21に接触すると用紙Pは加熱され、これにより用紙Pに形成されたトナー像が定着される。本実施の形態では、加熱ロール21は、転写手段により転写されたトナー像を記録材に定着するのに用いられる定着回転体として捉えることができる。
【0021】
また加圧ロール22は、加熱ロール21との間で互いに密着し挟持部を形成する。ここで加熱ロール21には、モータ等の駆動源が接続されており、この駆動源により加熱ロール21が回転すると、それに従い加圧ロール22が回転する。そのためこの挟持部に用紙Pが搬送されると、用紙Pを挟み込み、挟持しつつ用紙Pを搬送することができる。
【0022】
用紙供給部30は、異なるサイズの用紙Pを画像形成部10に対して供給可能なように第1給紙部31〜第3給紙部33を備えている。第1給紙部31〜第3給紙部33は同様に構成されている。第1給紙部31を一例に説明すると、第1給紙部31は、用紙Pを収容する記録材収容部の一例としての用紙収容部41、引き込みロール43、および捌き機構44を備える。用紙収容部41は、上部に開口を有するとともに直方体状の形状を有しておりその内部に用紙Pを複数枚収容する。引き込みロール43は、用紙収容部41に収容される用紙束のうち最上位の用紙Pに接触しこの最上位の用紙Pを捌き機構44に向けて送り出す。捌き機構44は、例えば回転可能なフィードロールと回転が制限されたリタードロールとによって構成され、引き込みロール43により送り出された用紙Pを一枚ずつに捌く。
【0023】
また用紙供給部30には、レジストレーションロール(レジロール)852が設けられている。このレジロール852は、回転を停止した状態で用紙Pの搬送を一時的に止め、予め定められたタイミングにて回転を行うことにより、転写部Tpに対してレジストレーション調整を施しながら用紙Pを供給する。また用紙供給部30には、搬送手段の一例であって第2給紙部32から搬送されてきた用紙Pをレジロール852や転写部Tpに向けて搬送する第1搬送ロール55と、同様に搬送手段の一例であって第3給紙部33から搬送されてきた用紙Pを第1搬送ロール55に向けて搬送する第2搬送ロール65が設けられている。
【0024】
用紙反転機構40は、定着部20を通過した用紙Pの表裏を反転させてこの用紙Pを転写部Tpに再度供給する。つまり用紙反転機構40は、定着部20により用紙Pの第1面にトナー像が定着された後に用紙Pの第1面と第2面を反転させ、用紙Pを転写装置15に再度供給する反転手段の一例である。また用紙反転機構40には、反転用搬送経路SR上の用紙Pを搬送する搬送ロール48が設けられている。
【0025】
画像形成装置1の用紙搬送路としては、用紙供給部30に収容された用紙Pをレジロール852、転写部Tp、定着部20を通過させる用紙搬送経路YRが設けられている。また画像形成装置1では、用紙反転機構40に、定着部20の下流側にて用紙搬送経路YRから分岐し且つレジロール852の上流側にて用紙搬送経路YRに合流する反転用搬送経路SRが設けられている。この反転用搬送経路SRは、用紙Pの第1面のみならず第2面にも画像を形成する場合、即ち用紙Pの両面印刷時に使用される。
【0026】
<画像形成動作の説明>
ここで用紙Pに画像が形成される際には、図示しないパーソナルコンピュータ等にて形成された画像データが受信部400にて受信され、受信部400から画像処理部600へこの画像データが出力される。そして画像処理部600にて、画像データに対して画像処理が施される。そして画像処理が施された画像データは、露光装置13に出力される。画像データを取得した露光装置13は、帯電装置12により帯電した感光体ドラム11を選択的に露光して静電潜像を形成する。そして、形成された静電潜像は、現像装置14により例えば黒(K)のトナー像として現像される。つまり本実施の形態の画像形成装置1は、単色のトナー像を現像する。
【0027】
一方、用紙供給部30では、画像形成のタイミングに合わせて引き込みロール43が回転し、用紙収容部41から用紙Pが供給される。そして、捌き機構44により一枚ずつに捌かれた用紙Pは、レジロール852まで搬送され、一旦、停止される。その後、感光体ドラム11の回転タイミングに合わせてレジロール852が回転し、用紙Pが転写部Tpに供給される。そして、この転写部Tpにおいて感光体ドラム11に形成されたトナー像が用紙Pに転写される。この場合、感光体ドラム11は、転写を行なうために用いられる回転体として把握することができる。
その後、トナー像が転写された用紙Pは、定着部20にて定着処理を受け、排出ロール75によってスキャナ200の下部に位置する用紙積載部YSに排出される。
【0028】
なお用紙Pに両面印刷を行なう際には、定着部20を通過した用紙Pは、排出ロール75によっていったん用紙積載部YSに向けて搬送される。ただし排出ロール75は、用紙Pを完全には排出せず、用紙Pの途中で回転を停止する。そして画像形成部10による第2面の画像形成の開始タイミングに合わせて排出ロール75が用紙Pを排出する方向とは逆に回転し、用紙Pを反転用搬送経路SRに送り出す。更に用紙Pは、用紙反転機構40を通過することで表裏が反転されたうえで転写部Tpに再度供給される。そしてこの転写部Tpにて、感光体ドラム11に形成されたトナー像が用紙Pの第2面に転写される。更に第2面にトナー像が転写された用紙Pは、定着部20によって定着処理を受ける。そして画像が形成された用紙Pは用紙積載部YSに排出される。
【0029】
<用紙供給部の説明>
次に用紙供給部30の捌き機構について更に詳しく説明を行なう。
図3(a)〜(b)は、用紙供給部30の捌き機構について説明した図である。
ここで図3(a)は、図1および図2で説明した捌き機構である。図1および図2で説明した通り用紙供給部30は、第1給紙部31〜第3給紙部33を備え、第1給紙部31〜第3給紙部33は、それぞれ引き込みロール43、および捌き機構44を備える。ここで捌き機構44は、図3(a)に示すように回転可能なフィードロール44aと回転が制限されたリタードロール44bとによって構成される。
【0030】
用紙Pを用紙供給部30からレジロール852に向けて送り出す際には、まず用紙Pは、引き込みロール43により送り出される。そして用紙Pは、フィードロール44aにより最上位のものはそのまま送り出されるが、その下のものは回転が制限されるリタードロール44bにより最上位のものから分離される。つまりこれにより最上位の用紙Pの一枚のみを捌いてレジロール852に対し送り出すことができる。
【0031】
捌き機構44のこのような動作は、用紙Pが送り出された後も用紙Pに対し負荷となる。つまりリタードロール44bは回転が制限されるロールであるためこれが負荷となり、用紙Pの搬送方向とは逆向きの力を生じさせる。即ち用紙Pを引張る力である引張応力が生じる。これは用紙Pがレジロール852を通過し、転写部Tpに入った後も継続して働く力である。そのため転写部Tpにおいてトナー像が用紙Pに転写される際に、用紙Pと感光体ドラム11との間でスリップが生じやすくなる。そしてスリップが生じると、用紙Pに形成される画像は、用紙Pの搬送方向先端部に対し後端部に向かう方が、副走査方向の倍率が小さくなる。つまり用紙Pの搬送方向先端部から後端部に向かうに従い副走査方向で縮んだ画像となる。
【0032】
一方、用紙Pの搬送方向先端部が、定着部20に達すると、逆の現象が生じる場合がある。つまり定着部20の加熱ロール21と加圧ロール22により用紙Pが挟持されると、用紙Pは、加熱ロール21の回転力により搬送され始める。この際に加熱ロール21と加圧ロール22により用紙Pを引張る力は、リタードロール44bにより引張る力より大きい場合が多い。そのため用紙Pの搬送方向先端部が、定着部20に達した後は、用紙Pの後端部に向かって、副走査方向の倍率が大きくなりやすい。つまり用紙Pの後端部に向かうに従い副走査方向で伸びた画像となる。
【0033】
このような現象は、捌き機構として例えば、図3(b)に示したものを使用した場合に、より生じやすい。図3(b)の捌き機構44は、フィードロール44aとパッド45とからなる。この場合、用紙Pを用紙供給部30からレジロール852に向けて送り出す際には、まず用紙Pは、引き込みロール43により送り出される。そして用紙Pは、フィードロール44aにより最上位のものはそのまま送り出されるが、その下のものはパッド45との間で生ずる摩擦力により最上位のものから分離される。そのため用紙Pを一枚ずつ捌いて送り出すことができる。そしてこのような機構の捌き機構44は、パッド45との間に生じる摩擦力が大きいため、上述したリタードロール44bを使用した場合より更に用紙Pに対する負荷が大きく、用紙Pに作用する引張応力も大きい。
【0034】
またこのような現象は、本実施の形態の場合、最上段に配される第1給紙部31において生じやすい。つまり第2給紙部32から供給された用紙Pは、第1搬送ロール55によりレジロール852や転写部Tpに向けて搬送される。また第3給紙部33から供給された用紙Pは、第2搬送ロール65によりレジロール852や転写部Tpに向けて搬送される。そのため第1搬送ロール55および第2搬送ロール65の回転力によりリタードロール44b等により生ずる引張応力は、相殺されることになる。一方、第1給紙部31は、このような搬送ロールを設けるスペースがないことが多く、本実施の形態でも設けられていない。そのためリタードロール44b等により生ずる引張応力は、相殺されにくい。
【0035】
<用紙Pに画像形成を行なう際の制御の説明>
そこで本実施の形態では、以下の方法により上述した問題を抑制する。
図4は、本実施の形態による用紙Pに画像形成を行なう手順について説明したフローチャートである。
まず制御部500(図1参照)が、画像データを受信部400(図1参照)を通じて受信すると、画像処理部600(図1参照)に対し用紙Pの画像形成を行なう内容のコマンドを送信する(ステップ101)。
【0036】
次に制御部500は、画像形成部10および用紙供給部30を制御し、用紙供給部30から用紙Pを転写部Tpに搬送させ、用紙Pにトナー像を形成する。そしてこの際に用紙Pの搬送方向先端部が、定着部20に達したか否かを判定する(ステップ102)。そして用紙Pの搬送方向先端部が定着部20に達する前(ステップ102でNoの場合)は感光体ドラム11の表面の線速度を連続的に速くする制御を行なう(ステップ103)。
つまり感光体ドラム11の表面の線速度を連続的に速くした場合、トナー像形成手段により感光体ドラム11にトナー像を形成する速度は変化させないため、感光体ドラム11に形成されるトナー像は、用紙Pの搬送方向先端部に対し後端部の方が副走査方向に伸びたものとなる。つまりこの感光体ドラム11に形成されるトナー像は、搬送方向先端部に対し後端部の方が副走査方向の倍率が大きくなる。そしてこのトナー像を用紙Pに転写すると、上述した現象を相殺することができる。よって用紙Pに転写されるトナー像の副走査方向の倍率の調整を行なうことができる。結局用紙Pの搬送方向先端部が、定着部20に達する前に、用紙Pの先端部から後端部に向かって、副走査方向の倍率が小さくなる現象を抑制することができる。
【0037】
一方、制御部500は、用紙Pの搬送方向先端部が定着部20に達した後(ステップ102でYesの場合)は感光体ドラム11の表面の線速度を連続的に遅くする制御を行なう(ステップ104)。このようにステップ103とは逆の制御を行なうことで、用紙Pに転写されるトナー像の副走査方向の倍率の調整を行なうことができる。そのため用紙Pの搬送方向先端部が、定着部20に達した後で、用紙Pの後端部に向かって、副走査方向の倍率が大きくなる現象を抑制することができる。
【0038】
そして制御部500は、定着部20を制御して用紙Pに転写されたトナー像を定着し(ステップ105)、そして最後に画像形成が終了した用紙Pは、用紙積載部YSに排出される(ステップ106)。
【0039】
なお図4で制御部500が行なう処理は、本実施の形態ではコンピュータにより行なうが、この場合コンピュータが実行するプログラムは、コンピュータに、トナー像を表面に形成する感光体ドラム11を有するトナー像形成手段を制御する機能と、トナー像形成手段により形成されたトナー像を用紙Pに転写する転写装置15を制御する機能と、転写装置15により転写されたトナー像を用紙Pに定着する定着部20を制御する機能と、用紙Pを収容し、用紙Pを一枚ずつ捌いて転写手段に供給する用紙供給部30を制御する機能と、用紙Pの搬送方向先端部が定着部20に達する前は感光体ドラム11の表面の線速度を連続的に速くする制御を行なう機能と、用紙Pの搬送方向先端部が定着部20に達した後は感光体ドラム11の表面の線速度を連続的に遅くする制御を行なう機能と、を実現させるプログラムとして捉えることができる。
【0040】
図5(a)〜(b)は、図4のステップ103およびステップ104の制御を行なわなかった場合と行なった場合について比較した図である。
ここで図5(a)は、ステップ103およびステップ104の制御を行なわなかった場合について説明した図である。また図5(b)は、ステップ103およびステップ104の制御を行なった場合について説明した図である。ここで横軸は、用紙Pの搬送方向先端部からの距離である。そして縦軸は、用紙Pに形成される画像の副走査方向の倍率である。またここで点線は、用紙Pの搬送方向先端部が、定着部20に達する位置である。
図5(a)からわかるように用紙Pの搬送方向先端部が、定着部20に達する前は、用紙Pに形成される画像の副走査方向の倍率は、搬送方向先端部から後端部に向かい小さくなっていく。一方、用紙Pの搬送方向先端部が、定着部20に達した後は、用紙Pに形成される画像の副走査方向の倍率は、後端部に向かい大きくなっていく。
そして図5(a)〜(b)から、ステップ103およびステップ104の制御を行なった場合の方が、画像の副走査方向の倍率の変化を抑制できることがわかる。
【0041】
なお前述したように形成される画像の副走査方向の倍率の変化は、最上段に配される第1給紙部31において生じやすい。そのためこの第1給紙部31から用紙Pが転写部Tpに供給されるときにこのような制御を行ない、第2給紙部32と第3給紙部33から用紙Pが転写部Tpに供給されるときには行なわないようにすることもできる。つまり転写装置15に最も近い用紙収容部から用紙Pが転写装置15に供給されるときに上述した制御を行ない、他の用紙収容部から用紙Pが転写装置15に供給されるときには行なわないようにする。
【0042】
<両面印刷時の用紙Pの収縮の説明>
ここで用紙Pには、例えば、4wt%〜10wt%の割合で、水分が含まれている。つまり用紙Pは、大気中の水分を吸収することで、用紙Pが置かれる環境に応じた量の水分を保持している。しかし上述したように定着部20では、用紙Pに転写されたトナー像を加熱することで定着を行なっている。そのため用紙Pに含まれていた水分は、定着部20で付与される熱により蒸散し、用紙Pに含まれる水分は減少する。定着部20を通過後の用紙Pに含まれる水分は、例えば、2wt%となる。用紙Pに含まれる水分が減少すると用紙Pに収縮が生じる。この現象は特に用紙Pの長尺方向において顕著に表れる。
【0043】
図6(a)〜(b)は、両面印刷時の用紙Pの寸法の変化について説明した概念図である。
まず図6(a)に示すように転写装置15により用紙Pの第1面にトナー像が転写される。そして転写されたトナー像は定着部20により定着される。このとき図6(b)に示すように定着部20を通過後の用紙Pは、定着部20で付与される熱により収縮する。収縮する長さは、上述の通り用紙Pの短尺方向よりも長尺方向においてより大きい。またこの際に用紙Pの収縮に伴い、形成された画像も同様に縮小されたものとなる。
次に用紙Pは、用紙反転機構40により表裏が反転され、図6(c)に示すように転写装置15により用紙Pの第2面にトナー像が転写される。そして第2面のトナー像を定着するため用紙Pは再び定着部20を通過する。このとき図6(d)に示すように定着部20を通過後の用紙Pは、定着部20で付与される熱により収縮するが、用紙Pに含まれる水分の多くは第1面の定着時に蒸散しているため、その収縮率は第1面のときよりも小さい。結局用紙Pの第1面に形成される画像は、第2面に形成される画像より縮小したものとなる。
【0044】
なおこのような問題は、本実施の形態のように単色のトナーを使用し、この単色のトナー像を用紙Pに定着する場合に、より顕著に現れる。即ち、複数のトナーを使用するカラーの画像形成装置の場合は、定着部に圧力を加える加圧部が存在する。そしてこの加圧部においてトナー像に熱と圧力を加えることにより定着が行なわれる。この圧力は用紙Pを延伸する作用を生じさせる。そのため用紙の収縮と延伸がバランスし、上述した問題は生じにくい。対して本実施の形態の定着部20では、加熱ロール21と加圧ロール22との間には、大きな圧力はかかっておらず、用紙Pを延伸する作用はほとんど生じない。
【0045】
<用紙Pの第1面と第2面の画像の大きさの差異を抑制する方法の説明>
そこで本実施の形態では、以下の方法により上述した問題を抑制する。
図7は、本実施の形態による用紙Pに両面印刷を行なう手順について説明したフローチャートである。
まず制御部500(図1参照)が、画像データを受信部400(図1参照)を通じて受信すると、画像処理部600(図1参照)に対し用紙Pの第1面の画像形成を行なう内容のコマンドを送信する(ステップ201)。
更に制御部500は、画像形成装置1内の環境値を取得する(ステップ202)。この環境値は、本実施の形態では画像形成装置1内の温度と湿度であり、画像形成装置1内に予め設置されている温度センサや湿度センサから取得することができる。そして制御部500は、取得した温度と湿度により画像形成装置1内の絶対湿度を算出する(ステップ203)。この絶対湿度を算出する計算式は種々存在するが、例えば以下の(1)式により算出することができる。
【0046】
【数1】

【0047】
次に制御部500は、画像形成部10、定着部20、および用紙供給部30を制御し、用紙供給部30から用紙Pを転写部Tpに搬送させ、用紙Pの第1面にトナー像を形成し、更にこのトナー像を定着させることで用紙Pの第1面に画像を形成する(ステップ204)。一方、制御部500は、画像処理部600に対し用紙Pの第2面の画像形成のコマンドを送信する(ステップ205)。そして制御部500は、用紙反転機構40を制御し、用紙Pの表裏を反転させ、用紙Pを転写部Tpに搬送する(ステップ206)。次に制御部500は、画像形成部10および定着部20を制御し、用紙Pの第2面にトナー像を形成し、更にこのトナー像を定着させることで用紙Pの第2面に画像を形成する(ステップ207)。
【0048】
このとき制御部500は、この際に画像形成部10の感光体ドラム11の回転速度を制御し、用紙Pの第1面にトナー像を転写するときの感光体ドラム11の回転速度よりも用紙Pの第2面にトナー像を転写するときの感光体ドラム11の回転速度を遅くする。この場合トナー像形成手段によりトナー像を形成する速度は変化させないため、感光体ドラム11に形成され、第2面に転写されるトナー像は、第1面のときに比べ副走査方向に縮んだものとなる。即ち感光体ドラム11に形成されるトナー像は、副走査方向で倍率が小さくなる。
また詳しくは後述するが、感光体ドラム11の回転速度の制御は、ステップ203で算出した絶対湿度に対応して行なう。即ち、制御部500は、絶対湿度の値により感光体ドラム11の回転速度を変更する制御を行なう。そして最後に画像形成が終了した用紙Pは、用紙積載部YSに排出される(ステップ208)。
【0049】
このようにステップ207において、用紙Pの第1面にトナー像を転写するときの感光体ドラム11の回転速度よりも用紙Pの第2面にトナー像を転写するときの感光体ドラム11の回転速度を遅くすることで、第2面に形成されるトナー像が副走査方向(用紙Pの搬送方向)で縮小したものとなる。そのため用紙Pの第1面に形成される画像と、第2面に形成される画像の大きさに差異が生じにくくなる。つまり用紙Pの第1面の画像は、上述のように定着部20を通過する際に縮小するが、上述した制御を行うことで転写部Tpにおいて、この縮小した第1面の画像の画像に合わせて、第2面のトナー像を転写することができる。
【0050】
ただし本実施の形態では、第2面のトナー像を形成する際に、そのトナー像の大きさを変更できるのは、用紙Pの副走査方向である。よって本実施の形態で変更されるのは、副走査方向のトナー像の倍率であって、主走査方向のトナー像の倍率は変更できない。つまり本実施の形態では、第2面に転写されるトナー像の副走査方向の倍率の調整を行なうことで、用紙Pの第1面に形成される画像と第2面に形成される画像の大きさの差異を抑制している。しかしながら第1面の画像が縮小する長さが大きいのは副走査方向であるため、用紙Pの長尺方向を副走査方向として用紙Pを搬送するときには、上述した方法でも十分である場合が多い。なお本実施の形態において用紙Pの第1面に対し、第2面の転写を行なう際に感光体ドラム11の回転速度を遅くする割合は、例えば、0.1%〜0.5%である。
【0051】
<用紙Pの両面印刷時の制御の説明>
次に用紙Pの両面印刷時に制御部500が行なう感光体ドラム11の回転速度の制御について更に詳しく説明を行なう。
図8は、感光体ドラム11の回転速度を第1面と第2面とで同じにした場合の用紙Pの含水率と用紙Pに形成される画像の副走査方向の倍率の関係について説明した図である。
図8において横軸は、用紙Pの含水率であり用紙Pの全体の重量に対する水分の重量である。また縦軸は、用紙Pに形成される画像の副走査方向の倍率である。なおこの値は、含水率4.7%のときの第1面の副走査方向の倍率を0としたときの相対値である。
図8に示すように用紙Pに形成される画像は、第2面に対し第1面の方が小さくなる。更に副走査方向の倍率は、含水率と相関関係があり、含水率が増加するとこれに伴い減少する。つまり用紙Pの含水率が多いと、用紙Pの収縮率は大きい。
【0052】
ただし実際には用紙Pの含水率を直接測定するのは困難であるため、用紙Pの含水率と相関関係にある絶対湿度を利用する。つまりトナー像を用紙Pの第2面に転写するときの感光体ドラム11の回転速度の制御は、絶対湿度の値に応じて変更することが好ましい。具体的には、絶対湿度の値から、相関関係にある用紙Pの含水率を推定する。そしてその含水率に対応する図8の第2面の副走査方向の倍率の値と第1面の副走査方向の倍率の値との差の分だけ感光体ドラム11の回転速度を遅くする。
【0053】
なお以上説明した例では、絶対湿度の値に応じて感光体ドラム11の回転速度の制御を行なったが、他のパラメータを導入し、感光体ドラム11の回転速度の制御を行なってもよい。
例えば、転写部Tpにおいて電界を発生させるために転写装置15で印加される電圧の値により感光体ドラム11の回転速度を変更してもよい。この電圧の値は、用紙Pの含水率によりその値が変化する。つまり用紙Pの含水率が変化するとこれに応じて用紙Pの抵抗値が変化するため、この電圧の値を測定することで、用紙Pの含水率を求めることができる。
【0054】
またトナー像を形成するために使用するトナーを多く使用する場合は、用紙Pはより縮小しにくくなる。他にも用紙Pが厚紙であるときや、コート紙であるときは、用紙Pはより縮小しにくくなる。よって使用するトナー量や紙種により感光体ドラム11の回転速度の変更を行なってもよい。つまり画像形成装置1内の温度や湿度等の環境値のみならず、この環境値、上述した転写装置15で印加される電圧の値、使用するトナー量、紙種等を含む画像形成条件により感光体ドラム11の回転速度を変更してもよい。
更に上述した例では、用紙Pの第2面の転写を行なう際に感光体ドラム11の回転速度の制御を行なったが、第1面の転写の際に感光体ドラム11の回転速度の制御を行なってもよい。また更に第2面と第1面の両面において感光体ドラム11の回転速度の制御を行なってもよい。
【0055】
<用紙Pが厚紙である場合の副走査方向の倍率の変化の説明>
ここで用紙Pが予め定められた以上の厚紙であった場合、用紙Pの搬送方向先端部が定着部20に入るときに用紙Pが一瞬停止することがある。即ち、上述の通り定着部20は、加熱ロール21と加圧ロール22とからなり、加熱ロール21と加圧ロール22とは密着して挟持部を形成している。そのため用紙Pが厚紙のとき、定着部20の入口であるこの挟持部に突入したとき、挟持部が障害となり用紙Pが一瞬停止することがある。この場合、転写部Tpにおいても用紙Pは停止する。一方、感光体ドラム11は、回転するため用紙Pと感光体ドラム11との間でスリップが生じることになる。その結果、転写部Tpにおいて転写されるトナー像が副走査方向でにじむ像みだれ(いわゆるスミア)が生じる。
【0056】
本実施の形態では、このスミアが生じるのを抑制するため、制御部500によって、加熱ロール21の表面の線速度を感光体ドラム11の表面の線速度より速くする制御を行う。これにより用紙Pの搬送方向先端部が定着部20に入るときに用紙Pが一瞬停止する現象を抑制することができる。つまり用紙Pは、転写部Tpにおいて感光体ドラム11により搬送されるため、用紙Pの搬送方向先端部が、転写部Tpを通過後、定着部20へ向かう際の搬送速度は、感光体ドラム11の表面の線速度となる。一方加熱ロール21の表面の線速度は、この時の用紙Pの搬送速度より速い。そのため用紙Pの搬送方向先端部が、定着部20の挟持部に突入する際に、この挟持部に引き込まれることになるため、用紙Pの停止が生じにくくなる。なお本実施の形態では、加熱ロール21の表面の線速度は、感光体ドラム11の表面の線速度より例えば0.6%速くしている。
【0057】
なお本実施の形態では、レジロール852が回転する力によっても用紙Pは搬送される。そのため用紙Pの搬送方向後端部が、レジロール852から離間後は、用紙Pを搬送する力が弱まり、用紙Pの搬送速度が低下しやすくなる。そのためこれによっても上述したスミアが発生することがある。本実施の形態では、加熱ロール21の表面の線速度を感光体ドラム11の表面の線速度より速くする制御を行うことで、用紙Pの搬送方向後端部が、レジロール852から離間後も、用紙Pの搬送速度が低下することを抑制する。即ちこれにより加熱ロール21が回転することで、用紙Pを搬送方向に対し引っ張る引張応力を発生させることができる。そのため用紙Pの搬送方向後端部が、レジロール852から離間後も、用紙Pの搬送速度が低下しにくい。
【0058】
また本実施の形態では、制御部500によって、レジロール852の表面の線速度を感光体ドラム11の表面の線速度より速くする制御も併せて行なうことが好ましい。このような制御を行うことで用紙Pに対し、搬送方向に押し出すことになる。そのため用紙Pの搬送方向先端部が、定着部20の挟持部に突入する際に、挟持部に更に引き込まれやすくなる。そのため用紙Pの停止が生じにくくなる。お本実施の形態では、レジロール852の表面の線速度は、感光体ドラム11の表面の線速度より例えば0.6%速くしている。
【0059】
以上のようにして本実施の形態では、用紙Pが厚紙であった場合に生じやすいスミアを抑制しているが、加熱ロール21やレジロール852の表面の線速度を感光体ドラム11の表面の線速度より速くすると、用紙Pの副走査方向の倍率が、変化しやすくなる。つまり用紙Pは、レジロール852により搬送方向に押し込まれ、更に加熱ロール21により引っ張られる。そのため感光体ドラム11と用紙Pとの間でスリップが生じ、用紙Pの搬送方向先端部に対し後端部の方が副走査方向の倍率がより大きくなりやすい。つまり用紙Pの搬送方向先端部に対し後端部の方が副走査方向に伸びた画像となる。
【0060】
<用紙Pが厚紙である場合の制御の説明>
そこで本実施の形態では、以下の方法により上述した問題を抑制する。
図9は、本実施の形態による用紙Pが厚紙である場合に画像形成を行なう手順について説明したフローチャートである。
まず制御部500(図1参照)が、画像データを受信部400(図1参照)を通じて受信すると、画像処理部600(図1参照)に対し用紙Pの画像形成を行なう内容のコマンドを送信する(ステップ301)。
【0061】
更に制御部500は、用紙Pの種類の情報を取得する(ステップ302)。この用紙Pの種類の情報は、例えば、ユーザインタフェース700(図1参照)からユーザが入力を行なうことができる。そして制御部500は、用紙Pの種類により用紙Pの厚さが予め定められた厚さ以上であるかの判定を行ない(ステップ303)、用紙Pの厚さが予め定められた厚さ未満であった場合は、通常の画像形成動作を行なう(ステップ304)。通常の画像形成動作では、感光体ドラム11、加熱ロール21、レジロール852を等速で回転させる制御を行なうことで用紙Pに画像形成を行なう。一方、用紙Pの厚さが予め定められた厚さ以上であった場合は、制御部500は、加熱ロール21およびレジロール852の表面の線速度を感光体ドラム11の表面の線速度より速くする制御を開始する(ステップ305)。
【0062】
次に制御部500は、画像形成部10および用紙供給部30を制御し、用紙供給部30から用紙Pを転写部Tpに搬送させ、用紙Pにトナー像を形成する(ステップ306)。更に制御部500は、このトナー像を定着させることで用紙Pに画像を形成するために定着部20を制御する。この際に本実施の形態では、用紙Pの搬送方向先端部が定着部20に達した後に、即ち用紙Pの搬送方向先端部が加熱ロール21と加圧ロール22との間で形成される挟持部に突入した後に、感光体ドラム11の表面の線速度を連続的に遅くする制御を開始する(ステップ307)。なおこの際にステップ305で開始した加熱ロール21およびレジロール852の表面の線速度を感光体ドラム11の表面の線速度より速くする制御は共に行なわれる。つまり加熱ロール21およびレジロール852の表面の線速度についても連続的に遅くなる。そして最後に画像形成が終了した用紙Pは、用紙積載部YSに排出される(ステップ308)。
【0063】
このようにステップ307において、用紙Pの搬送方向先端部が定着部20に達した後に感光体ドラム11の表面の線速度を連続的に遅くする制御を行なうことで、用紙Pに形成される画像が、搬送方向先端部に対し後端部の方が副走査方向の倍率が大きくなる問題を抑制することができる。つまり感光体ドラム11の表面の線速度を連続的に遅くした場合、トナー像形成手段により感光体ドラム11にトナー像を形成する速度は変化させないため、感光体ドラム11に形成されるトナー像は、用紙Pの搬送方向先端部に対し後端部の方が副走査方向に縮んだものとなる。つまりこの感光体ドラム11に形成されるトナー像は、搬送方向先端部に対し後端部の方が副走査方向の倍率が小さくなる。そしてこのトナー像を用紙Pに転写すると、上述した現象を相殺することができる。よって用紙Pに転写されるトナー像の副走査方向の倍率の調整を行なうことができる。
【0064】
図10(a)〜(b)は、図9のステップ307の制御を行なわなかった場合と行なった場合について比較した図である。
ここで図10(a)は、ステップ307の制御を行なわなかった場合について説明した図である。また図10(b)は、ステップ307の制御を行なった場合について説明した図である。ここで横軸は、用紙Pの搬送方向先端部からの距離である。そして縦軸は、用紙Pに形成される画像の副走査方向の倍率である。
図10(a)〜(b)から、ステップ307の制御を行なった場合の方が、画像の副走査方向の倍率の変化を抑制できることがわかる。
【0065】
なお上述した例では、用紙Pの搬送方向先端部が定着部20に達した後に感光体ドラム11の表面線速度を連続的に遅くする制御を行なっていたが、これに限られるものではなく、用紙Pの搬送方向先端部が定着部20に達する前から同様の制御を行なってもよい。即ち、本実施の形態で、レジロール852の表面の線速度を感光体ドラム11の表面の線速度より速くする場合、これにより転写部Tpにおいて、同様に用紙Pに転写されるトナー像の副走査方向の倍率が変化するときがある。この場合は、用紙Pの搬送方向先端部が定着部20に達する前から同様の制御を行なうことが有効である。ただし本実施の形態では、加熱ロール21により用紙Pを引っ張る力より、レジロール852により用紙Pを押し込む力の方が弱いため、この制御は必ずしも必要ではない。また上述した図4の制御を行なうときは行なわない。
【0066】
なお本実施の形態において、図4、図7、図9で行なった処理をそれぞれ組み合わせて使用することも可能である。
【0067】
そして上述した例では、感光体ドラム11に駆動源が接続され、制御部500は感光体ドラム11の回転速度を制御したが、転写装置15に駆動源を接続し、制御部500は転写装置15の回転速度を制御してもよい。この場合、転写装置15を回転体の一例として捉えることができる。
更に上述した例では、加熱ロール21に駆動源が接続され、制御部500は加熱ロール21の回転速度を制御したが、加圧ロール22に駆動源を接続し、制御部500は加圧ロール22の回転速度を制御してもよい
【符号の説明】
【0068】
1…画像形成装置、10…画像形成部、11…感光体ドラム、15…転写装置、20…定着部、21…加熱ロール、22…加圧ロール、30…用紙供給部、40…用紙反転機構、41…用紙収容部、55…第1搬送ロール、65…第2搬送ロール、500…制御部、852…レジロール、P…用紙、Tp…転写部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記トナー像形成手段により形成された前記トナー像を回転体を用いて記録材に転写する転写手段と、
前記転写手段により転写された前記トナー像を記録材に定着する定着手段と、
記録材を収容し、記録材を一枚ずつに捌いて前記転写手段に供給する記録材供給部と、
前記回転体の回転速度を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、記録材の搬送方向先端部が前記定着手段に達する前は前記回転体の表面の線速度を連続的に速くする制御を行なうことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、記録材の搬送方向先端部が前記定着手段に達した後は前記回転体の表面の線速度を連続的に遅くする制御を更に行なうことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記記録材供給部は、記録材を収容する記録材収容部を複数有し、
前記制御部は、前記転写手段に最も近い記録材収容部から記録材が当該転写手段に供給されるときに前記制御を行なうことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記録材供給部は、記録材を前記転写手段に向けて搬送する搬送手段を有し、
前記転写手段に最も近い記録材収容部から記録材が当該転写手段に搬送されるときには記録材は前記搬送手段を通らず、当該転写手段に最も近い記録材収容部以外の記録材収容部から記録材が当該転写手段に搬送されるときには記録材は当該搬送手段を通ることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記定着手段により記録材の第1面に前記トナー像が定着された後に記録材の当該第1面と第2面を反転させ、記録材を前記転写手段に再度供給する反転手段を更に備え、
前記制御部は、前記反転手段を制御すると共に、記録材の前記第1面にトナー像を転写するときの前記回転体の表面の線速度よりも記録材の前記第2面にトナー像を転写するときの前記回転体の表面の線速度を遅くすることで転写されるトナー像の副走査方向の倍率の調整を行なうことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記定着手段は、前記転写手段により転写された前記トナー像を回転しつつ記録材に定着する定着回転体を有し、
前記制御部は、前記定着回転体の表面の線速度を前記回転体の線速度より速くする制御を更に行なうことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
コンピュータに、
トナー像を形成するトナー像形成手段を制御する機能と、
前記トナー像形成手段により形成された前記トナー像を回転体を用いて記録材に転写する転写手段を制御する機能と、
前記転写手段により転写された前記トナー像を記録材に定着する定着手段を制御する機能と、
記録材を収容し、記録材を一枚ずつに捌いて前記転写手段に供給する記録材供給部を制御する機能と、
記録材の搬送方向先端部が前記定着手段に達する前は前記回転体の表面の線速度を連続的に速くする制御を行なう機能と、
を実現させるプログラム。
【請求項8】
記録材の搬送方向先端部が前記定着手段に達した後は前記回転体の表面の線速度を連続的に遅くする制御を行なう機能を更に有することを特徴とする請求項7に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−98590(P2012−98590A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247240(P2010−247240)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】