説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】複数の光ビームにより形成される画像の濃度のばらつきをより抑制することが可能な画像形成装置を提供すること。
【解決手段】レーザービームL1を発する第1発光素子を駆動させるためのデータに対し、レーザービームL2を発する第2発光素子を駆動させるためのデータの階調値を、レーザービームL1とL2とのビーム強度分布の違いから生じる濃度差を補正するための補正データを示すグラフ152を用いて補正して、補正後の階調値を示すデータに基づき、第2発光素子を変調駆動して、第2発光素子からレーザービームL2を出射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ビームにより同一の像担持体上を露光走査して当該像担持体上に静電潜像を形成する画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の光源から発せられる複数本のレーザービームを、回転するポリゴンミラーの反射面で偏向して、走査レンズ等を介して感光体ドラムなどの同一の像担持体上を同時にその複数本のレーザービームで露光走査して当該像担持体上に静電潜像を形成する、いわゆるマルチビーム露光方式の画像形成装置が開発されている。
マルチビーム露光方式の画像形成装置は、ポリゴンミラーの1つの反射面で複数本のレーザービームを同時に偏向するので、1本のレーザービームを用いる構成に比べて、レーザービームの本数倍の速さで像担持体上に静電潜像を形成することができ、画像形成に要する時間を短縮して、画像形成の生産性を大幅に向上することができる。
【0003】
特許文献1には、2つの光源LD1とLD2を備えるマルチビーム露光方式の画像形成装置において、LD1に流す電流を固定してLD2へ流す電流を変化させることにより、LD1の光量に対するLD2の光量の比率を異ならせて、各比率の孤立ドットの画像パターンを印刷する構成が開示されている。
各比率の画像パターンごとに、LD1による孤立ドットの濃度と、LD2による孤立ドットの濃度の差が最小になるときの比率を調整比率と決定し、決定された比率でLD1とLD2を発光させるように制御することにより、LD1とLD2からのレーザービームによるドットの再現が同じになるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−134326
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の構成では、2つの光源であるLD1とLD2による光量、例えば最大値の差を縮めることはできるが、光量の最大値の差を縮めることができても、それぞれのレーザービームの光強度分布が相互に異なる場合には、再現画像、特に中間調の濃度がLD1とLD2のレーザービーム間でばらつき易いという問題がある。
すなわち、光源から出射されるレーザービームは、それぞれが僅かとはいえ光強度分布が異なっており、レーザービーム間で光強度分布が異なれば、光量の最大値を同じに調整しても、感光体ドラム上のレーザービームによる1ドット分の露光領域のうち、光量の最大値(ピーク)を中心にその周辺部分における静電潜像の深さ(露光部と非露光部の電位差)がレーザービーム間で相互に異なることが生じてしまう。
【0006】
レーザービーム間で静電潜像の深さが異なれば、LD1とLD2からの各レーザービームにより、同じ濃度の中間調の画像を形成しようとしても、現像工程では、静電潜像の深さの差分の大きさに応じて、LD1からのレーザービームによる静電潜像に付着するトナー量と、LD2からのレーザービームによる静電潜像に付着するトナー量に差が生じてしまい、レーザービーム間で中間調の再現画像の濃度にばらつきが生じ易くなる。
【0007】
このようなレーザービーム間での再現画像の濃度ばらつきは、ディザ法や誤差拡散法などの中間調の階調再現やパルス幅変調方式による多値露光を行う場合に特に生じ易い。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、複数の光ビームにより形成される画像の濃度のばらつきをより抑制することが可能な画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、画像データに基づき第1と第2の光源から第1と第2の光ビームを発し、発せられた第1と第2の光ビームにより、同一の像担持体を露光走査して当該像担持体に静電潜像を形成し、形成された静電潜像を現像して画像を形成する画像形成装置であって、一方の光源を駆動するための画像データの、中間調を含む複数の異なる階調値のそれぞれを、他方の光源との光強度分布の違いにより生じる再現画像の濃度差を補正するための階調値に補正する補正データを生成する生成手段と、一方の光源を駆動するための画像データの階調値を前記補正データにより補正する補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記生成手段は、像担持体または記録シート上に、第1の光ビームによりn(1以上の整数)個の異なる階調値に対応するn個のパッチを含む第1のパターン画像を形成すると共に、第2の光ビームにより前記n個と同じ階調値に対応するn個のパッチを含む第2のパターン画像を形成するパターン形成手段と、形成された第1と第2のパターン画像を検出する検出手段と、を備え、形成された第1と第2のパターン画像のそれぞれに含まれるn個のパッチのうち、同じ階調値を示す画像データにより形成されたパッチ同士の検出結果に基づき、前記補正データを生成するとしても良い。
【0010】
ここで、前記補正データは、同じ階調値を示す画像データにより形成されたパッチ同士の検出結果の差分から得られる、一方の光源と他方の光源の相対的な光量差を示す特性の逆特性を示すデータであり、前記補正手段は、一方の光源を駆動するための画像データの階調値を、前記差分がなくなるように前記逆特性を示すデータを用いて補正するとしても良い。
【0011】
また、前記補正手段により補正された画像データの階調値を、さらに所定の階調再現方法を用いるスクリーン処理により補正するスクリーン処理手段と、スクリーン処理後の画像データに基づき前記一方の光源を駆動して、当該一方の光源から光ビームを発光させる光源駆動手段と、を備えるとしても良い。
さらに、一方の光源を駆動するための画像データの階調値をその駆動前に、所定の階調再現方法を用いるスクリーン処理により補正するスクリーン処理手段を備え、一方の光源を駆動するための画像データは、スクリーン処理後の画像データであり、スクリーン処理後の画像データの階調値は、前記一方の光源から発せられる光ビームの光量に相当する露光ステップであり、前記補正手段は、前記露光ステップの大きさに基づき前記一方の光源から発せられる光ビームの光量を可変する光源駆動手段であり、前記露光ステップを、前記補正データを用いて補正するとしても良い。
【0012】
また、前記nは、複数であり、前記複数のパッチのそれぞれは、前記像担持体上の一定領域内に複数個のドットが形成されてなり、異なる階調値ごとに、一定領域内におけるドットの発生比率と発生周波数の少なくとも一方が異なるとしても良い。
ここで、前記第1と第2のパターン画像のそれぞれは、主走査方向に沿って複数のドットが連結されてなる列が複数、副走査方向に間隔をおいて並んでなる線状の第1パッチと、複数のドットが連結してなる1つのブロックが複数、主走査方向と副走査方向にそれぞれ一定の間隔をおいて散在してなる点状の第2パッチと、孤立する1つのドットが複数、主走査方向と副走査方向にそれぞれ一定の間隔をおいて散在してなる点状の第3パッチのうち、少なくとも1つを含むとしても良い。
【0013】
また、前記第1のパターン画像は、階調値の異なるパッチごとに、そのパッチに含まれる1ドットを形成する際における第1の光ビームの発光量を異なせることにより形成され、前記第2のパターン画像は、階調値の異なるパッチごとに、そのパッチに含まれる1ドットを形成する際における第2の光ビームの発光量を異なせることにより形成され、前記第1と第2のパターン画像のそれぞれに含まれる複数のパッチのうち、同じ階調値を示す画像データにより形成されたパッチ同士について光ビームの発光量が同じに設定されるとしても良い。
【0014】
ここで、一方の光源を駆動するための画像データの階調値をその駆動前に、所定の階調表現方法を用いるスクリーン処理により補正するスクリーン処理手段を備え、前記複数のパッチに、点状のパッチが含まれる場合に、その点状のパッチにおけるドットのパターンが、同じ階調値をスクリーン処理により再現する場合の当該スクリーン処理後におけるドットのパターンと同じまたは近似するパターン形状になっているとしても良い。
【0015】
また、前記nは、1であり、1つの階調値は、最大濃度に相当する値、または最大濃度に相当する階調値から中間値までの間の範囲内の値であるとしても良い。
さらに、前記パッチ同士の検出結果に基づき、第1の光ビームと第2の光ビームの光量の差分を求め、その光量の差分が所定値よりも大きい場合に、その旨を示す警告を発する警告手段を備えるとしても良い。
【0016】
本発明は、画像データに基づき第1と第2の光源から第1と第2の光ビームを発し、発せられた第1と第2の光ビームにより、同一の像担持体を露光走査して当該像担持体に静電潜像を形成し、形成された静電潜像を現像して画像を形成する画像形成装置における画像形成方法であって、一方の光源を駆動するための画像データの、中間調を含む複数の異なる階調値のそれぞれを、他方の光源との光強度分布の違いにより生じる再現画像の濃度差を補正するための階調値に補正する補正データを生成する生成ステップと、一方の光源を駆動するための画像データの階調値を前記補正データにより補正する補正ステップと、を含むステップを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記のようにすれば、一方の光源を駆動するための画像データにおける中間調を含む複数の異なる階調値を、他方の光源との光強度分布の違いにより生じる再現画像の濃度差がなくなるように補正することができるようになり、第1と第2の光ビーム間において光量の最大値の差を縮めるように調整する構成に比べて、その光ビーム間の中間調を含む濃度ばらつきを抑制して、形成画像の再現性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1に係るプリンターの構成を示す概略構成図である。
【図2】プリンターに備えられる制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】Y色用の補正データ生成処理の内容を示すフローチャートである。
【図4】プリンターに備えられる中間転写ベルトの表面に形成されるトナーパターンの一例を示す図である。
【図5】トナーパターンを拡大して示す図である。
【図6】Y色用の補正データのグラフの例を示す図である。
【図7】制御部に備えられる階調補正部の構成を示すブロック図である。
【図8】比較例としての階調補正部の構成を示す図である。
【図9】実施の形態2に係るLD駆動部の構成を示すブロック図である。
【図10】Y色用の補正データをテーブル形式で示す図である。
【図11】実施の形態3に係るY色のトナーパターンの例を示す図である。
【図12】Y色のトナーパターンの別の例を示す図である。
【図13】Y色のトナーパターンのさらに別の例を示す図である。
【図14】実施の形態3に係るY色用の補正データ生成処理の内容を示すフローチャートである。
【図15】Y色用の補正データの例を示す図である。
【図16】変形例に係る補正データの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る画像形成装置および画像形成方法の実施の形態を、タンデム型カラープリンター(以下、単に「プリンター」という。)を例にして説明する。
<実施の形態1>
(1)プリンターの全体構成
図1は、プリンター1の全体構成を示す図である。
【0020】
同図に示すように、プリンター1は、周知の電子写真方式により画像を形成するものであり、画像形成部10と、給送部20と、制御部30と、定着部40を備え、ネットワーク(例えばLAN)に接続されて、外部の端末装置(不図示)からの印刷(プリント)ジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)色からなるカラーの画像形成を実行する。
【0021】
画像形成部10は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像部10Y,10M,10C,10K、中間転写ベルト16、プリントヘッド18などを備えている。
作像部10Yは、感光体ドラム11Yと、その周囲に配設された帯電器12、現像器13、一次転写ローラー14、感光体ドラム11を清掃するためのクリーナ15などを備えており、感光体ドラム11YにY色のトナー像を作像する。この構成は、他の作像部10M〜10Kについて同様であり、同図では符号が省略されている。作像部毎に対応する色のトナー像が感光体ドラム11M,11C,11K上にそれぞれ作像される。
【0022】
中間転写ベルト16は、無端状のベルトであり、駆動ローラー161と従動ローラー162に張架されて同図の矢印Aで示す方向に周回走行される。
プリントヘッド(光ビーム走査部)18は、作像部10Y〜10Kよりも下方であり、給送部20よりも上方に配置され、感光体ドラム11Y〜11Kのそれぞれに対して2本のレーザービームL1,L2を発する発光素子LD1Y,LD2Yと、LD1M,LD2Mと、LD1C,LD2Cと、LD1K,LD2Kを有する。
【0023】
発光素子LD1Y〜LD2Kから発せられたレーザービームL1,L2は、図示しないポリゴンミラーなどの偏向器により偏向された後、fθレンズなどの走査レンズを通過して反射ミラーなどにより反射され、対応する感光体ドラム11Y〜11Kを主走査方向(紙面垂直方向)に走査して、感光体ドラム11Y〜11K上に静電潜像を形成させる。
給送部20は、給紙カセット21に収容されている用紙Sを搬送路29上に1枚ずつ繰り出して、繰り出された用紙Sを二次転写位置26で中間転写ベルト16を挟んで駆動ローラー161に当接される二次転写ローラー25に搬送させる。
【0024】
定着部40は、定着ローラーと加圧ローラーなどを備え、所定の定着温度で用紙Sを加熱、加圧して用紙S上のトナー像を定着させる。
制御部30は、外部の端末装置からの画像信号をY〜K色用のデジタル信号に変換し、プリントヘッド18の発光素子LD1Y〜LD2Kを駆動させるための画像データを生成して、その画像データにより発光素子LD1Y〜LD2Kを駆動させる。これにより発光素子LD1Y〜LD2KからレーザービームL1,L2が発せられ、感光体ドラム11Y〜11KがレーザービームL1,L2により露光走査される。
【0025】
この露光走査を受ける前に、感光体ドラム11Y〜11Kのそれぞれは、帯電器12により一様に帯電されており、レーザービームL1,L2の露光により、感光体ドラム11Y〜11Kに静電潜像が形成される。
感光体ドラム11Y〜11K上の静電潜像は、対応する現像器13によりトナーで現像される。各色のトナー像は、対応する一次転写ローラー14により中間転写ベルト16上に一次転写される。この際、各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト16上の同じ位置に重ね合わせて転写されるようにタイミングをずらして実行される。
【0026】
上記の作像動作のタイミングに合わせて、給送部20からは、搬送路29上を用紙Sが給送されて来ており、その用紙Sは、周回走行する中間転写ベルト16と二次転写ローラー25の間に挟まれて搬送され、二次転写位置26において中間転写ベルト16上のトナー像が二次転写ローラー25により用紙S上に二次転写される。
二次転写位置26を通過した用紙Sは、定着部40に搬送され、ここでトナー像が加熱、加圧されて用紙Sに定着された後、排出ローラー27を介して排出され、収容トレイ28に収容される。
【0027】
作像部10Kから中間転写ベルト16の走行方向に二次転写位置26までの間の位置には、トナーパターン検出センサー19が配設されている。
トナーパターン検出センサー19は、中間転写ベルト16の表面に一次転写により形成されたパターン画像としてのトナーパターンP1,P2(図4参照)を検出する反射型の光学センサーである。トナーパターン検出センサー19は、中間転写ベルト16の表面に形成されたトナーパターンP1,P2に向けて光を照射し、その反射光を受光して、その受光量を示す電気信号に変換して、これを検出信号として制御部30に送る。
【0028】
制御部30は、受信した検出信号に基づいて、中間転写ベルト16の表面に実際に形成されたトナーパターンP1,P2の濃度を求め、求めたトナーパターンP1,P2の濃度から、中間調を含む複数の異なる階調値のそれぞれを、各発光素子の光強度分布の違いにより生じる再現画像の濃度差がなくなるように補正するための補正データを生成する。そして、実際のプリント動作の際に、その補正データを用いて階調値を補正することにより、出力された再現画像の階調再現性を向上させる。
【0029】
中間調としては、例えば256階調の場合、中間値である128を中心にその前後の所定範囲内に属する階調値とすることができるが、最小値と最大値を除いた中間の範囲内の階調値と捉えることもできる。補正データの生成の詳細については、後述する。
なお、中間転写ベルト16の表面に形成されたトナーパターンP1,P2は、トナーパターン検出センサー19による検出後に不図示のクリーナにより除去される。
【0030】
(2)制御部30の構成
図2は、制御部30の構成を示すブロック図である。
同図に示すように、制御部30は、主な構成要素として、CPU101、通信インターフェース(I/F)部102、画像処理部103、画像メモリ104、階調補正部105、スクリーン処理部106、LD駆動部107、ROM108、RAM109、パターンデータ格納部110、γ補正データ格納部111、補正データ生成部112、第1補正データ格納部113、第2補正データ格納部114などを備える。
【0031】
通信インターフェース部102は、LANカード、LANボードといったLANに接続するためのインターフェースであり、外部からのプリントジョブのデータを受信して、受信したデータを画像処理部103に送る。
画像処理部103は、通信インターフェース部102からのプリントジョブのデータをY〜Kの再現色の画像データに変換して、画像メモリ104に出力し、この画像データを再現色ごとに格納させる。
【0032】
CPU101は、プリント実行時には、画像メモリ104から画像データを読み出して、読み出した画像データを階調補正部105に送る。
階調補正部105は、プリント実行時に画像メモリ104から送られて来た画像データの各画素の階調値(例えば、256階調)を、補正データを用いて補正して、補正した後の画像データをスクリーン処理部106に送る。
【0033】
スクリーン処理部106は、階調補正部105からの画像データを、所定の多値階調再現方法、例えば8値のディザ法や誤差拡散法を用いて多値の画像データに変換して、変換した多値の画像データをLD駆動部107に送る。
LD駆動部107は、スクリーン処理部106からの多値の画像データに基づき、各色毎にプリントヘッド18のLD1Y〜LD2Kを変調駆動して、レーザービームL1,L2を発光させる。ここでは、多値の画像データが画素単位で8値からなり、1画素に対する発光時間(露光面積)を可変させる、いわゆるレーザーパルス幅変調方式(PWM)により、発光素子からの発光量がその8値に対応する8段階(ゼロ(消灯)と最大値を含む)の露光ステップに切り替えられる。
【0034】
露光ステップを各段階に切り替えることにより発光量(発光時間)が変わり、露光とは別の帯電、現像、転写などの画像形成条件を変えなければ、発光量を変えることにより再現画像の濃度を可変できることから、露光ステップを階調値と捉えることができる。
なお、多値階調を実現できる変調方式であれば、PWM方式に限られず、例えば1画素に対する露光時間を一定にして発光強度を可変させる、いわゆるレーザー強度変調方式を用いるとしても構わない。
【0035】
パターンデータ格納部110には、トナーパターンP1,P2を形成するためのパターンデータが格納されている。
補正データ生成部112は、レーザービームL1に対するレーザービームL2の光量を補正するための補正データをY〜K色毎に生成する補正データ生成処理を実行する。
図3は、Y色用の補正データ生成処理の内容を示すフローチャートである。
【0036】
同図に示すように、パターンデータ格納部110からパターンデータを読み出し(ステップS1)、発光素子LD1Yを用いてトナーパターンP1を中間転写ベルト16の表面に形成し(ステップS2)、発光素子LD2Yを用いてトナーパターンP2を中間転写ベルト16の表面に形成する(ステップS3)。
具体的には、パターンデータ格納部110に格納されているトナーパターン形成用の画像データがLD駆動部107に送られ(図2の信号ライン115)、その画像データに基づき、LD駆動部107と作像部10Yにより、プリント動作と同様の帯電、露光、現像、一次転写の各工程を経て、中間転写ベルト16の表面にトナーパターンP1,P2が形成される。
【0037】
図4は、中間転写ベルト16の表面に形成されるトナーパターンP1,P2の一例を示す図であり、図5は、トナーパターンP1,P2を拡大して示す図である。なお、両図ではY〜K色のうち、Y色のトナーパターンP1,P2だけを示し、他の色については図示していないが、Y色と同様のパターン形状になっている。
トナーパターンP1は、図5(a)に示すように発光素子LD1YからのレーザービームL1により形成され、トナーパターンP2は、図5(b)に示すように発光素子LD2YからのレーザービームL2により形成される。両図において破線で示す1つの矩形が1画素の大きさを示している。
【0038】
トナーパターンP1は、濃度の異なる複数のパッチ81,82,83からなり、パッチ81,82,83は、複数個の画素が主走査方向に沿って連続してなる直線部91,92,93が複数本、副走査方向に1走査ライン(1画素相当)分の間隔をおいて構成され、パッチ毎に発光素子LD1Yに対する露光ステップが可変されることにより形成される。
パッチ81は、露光ステップ6、パッチ82は、露光ステップ4、パッチ83は、露光ステップ1とされ、それぞれがその露光ステップに相当する光量のレーザービームL1により形成される。なお、同図では、パッチごとにレーザービームによる露光量に差があることを判り易く示すために便宜上、1画素分の全面積が露光されたとした場合のそのベタの濃淡の違いで示している。PWM方式の場合、実際には1画素(ここでは1ドット)単位でレーザービームの発光時間が階調値の大きさに応じて可変されることにより各パッチが形成される。このことは、後述する各図に記載のトナーパターンについて同じである。
【0039】
露光ステップの値が大きくなる方が再現画像の濃度が濃くなるので、パッチ83,82,81の順に段階的に濃度が濃くなっている。なお、レーザービームの光量が可変される以外の画像形成条件、例えば帯電や現像バイアス電圧などは同じ条件にされる。このことは、トナーパターンP2も同様である。
トナーパターンP2は、濃度の異なる複数のパッチ84,85,86からなり、パッチ84,85,86は、複数個の画素が主走査方向に沿って連続してなる直線部94,95,96が複数本、副走査方向に1走査ライン分の間隔をおいて構成され、パッチ毎に発光素子LD2Yに対する露光ステップが可変されることにより形成される。
【0040】
パッチ84は、パッチ81と同一の露光ステップ6、パッチ85は、パッチ82と同一の露光ステップ4、パッチ86は、パッチ83と同一の露光ステップ1とされ、それぞれがその露光ステップに相当する光量のレーザービームL2により形成される。パッチ86,85,84の順に段階的に濃度が濃くなっている。
図4に示すように中間転写ベルト16の表面に形成された各色のトナーパターンP1,P2のパッチ81〜86は、中間転写ベルト16の周回走行と共に、トナーパターン検出センサー19により同図の破線で示す検出ライン上で検出され、この検出信号が補正データ生成部112に送出される。
【0041】
補正データ生成部112は、図3に示すステップS4において、トナーパターン検出センサー19からの検出信号を受信し、ステップS5において、受信した検出信号から中間転写ベルト16の表面に形成されたトナーパターンP1,P2のパッチ81〜86のトナー濃度を求め、求めた各パッチ81〜86の濃度に基づき、Y色についてレーザービームL1に対するレーザービームL2の光量を補正するための補正データを生成する。
【0042】
図6は、Y色用の補正データのグラフの例を示す図である。同図のグラフの横軸は、補正前の階調値(0〜255)を示し、縦軸は補正後の階調値を示している。
レーザービームL1用の補正データを示すグラフ151は、レーザービームL2用の補正データの基準になるものであり、ここでは補正前と補正後とで階調値が同じになる正比例の直線形状のグラフで表されている。
【0043】
一方、レーザービームL2用の補正データを示すグラフ152は、2つのグラフ152a,152bの例が示されており、それぞれがグラフ151とは異なり、補正前の階調値と補正後の階調値とが異なる部分を含む曲線、いわゆるγ曲線で表されている。
仮に、レーザービームL1とL2が同じ光強度分布特性を示すものであれば、同じ階調値の画像を再現する場合にレーザービームL1とL2とで相対的な光量差が生じないので、レーザービームL1とL2で同じ形状のグラフになるはずであるが、本実施の形態では、ある程度の光強度分布特性の差があるために、レーザービームL2用のグラフ152がレーザービームL1用のグラフ151に対し異なる形状になっている。
【0044】
グラフ152aは、中間調、特に階調値で128の前後の範囲でレーザービームL2の光量がレーザービームL1に対して少なめになる特性を有する発光素子LD2Yが用いられている場合の例であり、その特性に対して逆特性、すなわち光量が少なめになる分だけ、階調レベルを上げる補正をかけるための補正データの例を示している。
逆に、グラフ152bは、中間調でレーザービームL2の光量がレーザービームL1に対して多めになる特性を有する発光素子LD2Yが用いられている場合の例であり、その特性に対して逆特性、すなわち光量が多めになる分だけ、階調レベルを下げる補正をかけるための補正データの例を示している。
【0045】
具体的に補正データは、次のようにして生成される。
すなわち、(a)トナーパターン検出センサー19の濃度検出結果から、同じ階調値同士のパッチ81とパッチ84の濃度差Δ1と、同じ階調値同士のパッチ82とパッチ85の濃度差Δ2と、同じ階調値同士のパッチ83とパッチ86の濃度差Δ3を求める。濃度差Δ1は、パッチ81よりもパッチ84の方が低濃度であればプラス、高濃度であればマイナスの大きさとされる。濃度差Δ2,Δ3についても同様である。
【0046】
(b)階調値と露光ステップの相関関係と、階調値と濃度差の相関関係を予めとっておき、破線で示す正比例のグラフ151上において、露光ステップ6に相当する階調値a(図6)に濃度差Δ1に相当する階調値a2(図6)を足し合わせた点a1(図6)と、露光ステップ4に相当する階調値b(図6)に濃度差Δ2に相当する階調値b2(図6)を足し合わせた点b1(図6)と、露光ステップ1に相当する階調値c(図6)に濃度差Δ3に相当する階調値c2(図6)を足し合わせた点c1(図6)の3点をスプライン補間や多項式近似などによって線で繋ぎ合わせる。
【0047】
(c)繋ぎ合わせた線を数式または補正前後の階調値を対応付けたテーブルで現し、その現した数式またはテーブルで示されるデータを補正データとするものである。
この補正データは、発光素子LD1YとLD2Yの相対的な光量差を示す特性の逆特性を示すデータであり、中間調を含む複数の異なる階調値が含まれるので、この補正データを用いれば、その相対的な差分がなくなるように階調値を補正することができ、最大濃度だけでなく中間調についてもレーザービームL1,L2のビーム強度分布の違いによる再現画像の濃度差を抑制することができる。
【0048】
図3に戻り、ステップS6では、生成された補正データをレーザービームL2用の補正データとして、第2補正データ格納部114に格納して、当該処理を終了する。
当該処理は、例えば電源スイッチがオンされたとき、所定枚数のプリントが実行される毎、装置周辺環境(温湿度など)の変動量が所定範囲を超えたとき、故障などのトラブルからの復帰時などにその都度、実行される。当該処理が実行される毎に、新たな補正データが生成され、第2補正データ格納部114に上書き保存される。
【0049】
なお、同じ階調値同士のパッチの濃度差Δを求めたときに、その濃度差Δが所定値よりも大きい場合に、ユーザに警告を発する構成をとるとしても良い。濃度差Δが大きいということは、それだけレーザービームL1,L2間に光量差があることになり、その光量差が大きすぎると、階調補正では補正しきれない場合があるからである。このことから濃度差をレーザービームL1,L2の光量の差分として、この光量の差分を求める構成と捉えることができる。所定値は、階調補正を行える範囲の濃度差Δの上限値とすることができ、実験などで予め求めることができる。ユーザへの警告は、例えば操作部(不図示)に警告メッセージを表示したり、警告を示す音声を出力したりすることで行うことができる。
【0050】
また、レーザービームL1用のグラフ151である正比例の直線を示すデータは、レーザービームL1用の補正データとして、予め第1補正データ格納部113に格納されている。上記では、Y色用の補正データについて説明したが、他のM〜K色についても同様の方法で、その色用の補正データが生成される。
補正データの生成方法は、上記の方法に限られず、他の近似式などを用いても良い。また、トナーパターンP1,P2として上記では3段階の露光ステップ(6,4,1)によるパッチ81〜83,84〜86を形成するとしたが、これに限られず、最大値の7を含める構成や、複数、例えば4段階以上の露光ステップによる階調値の異なるパッチを形成する構成などとしても良い。異なる階調値の数が多くなれば、それだけ図6に示す点a1,b1・・の数が増えて、γ曲線の形状をより実際の露光条件に近づけることができ、補正データによる補正の精度が向上する。
【0051】
上記では、Y色用の補正データの生成方法を説明したが、他のM〜K色についてもY色と同様の方法によりその色用の補正データが生成される。
図2に戻って、γ補正データ格納部111には、作像部10Y〜10Kごとのγ補正用のγ補正データが格納されている。γ補正は、再現すべき階調(濃度)と実際に再現される出力画像の階調(濃度)とが正確に比例しない場合に、本来の比例する直線のグラフからのずれた曲線のグラフに対して逆特性を示すグラフを求め、求めたグラフを用いて本来の直線とのずれを補正することで、階調再現性を向上させる処理である。
【0052】
この逆特性を示すグラフがγ補正データに相当し、γ補正データは、ここではY〜Kの色毎に、レーザービームL1だけを用いて階調値の異なる複数のトナーパターン(不図示)を中間転写ベルト16の表面に形成し、形成された複数のトナーパターンをトナーパターン検出センサー19で検出し、その検出結果から、本来の比例する直線に対して濃度値がずれた曲線のグラフを求め、求めたグラフの逆特性のグラフを求めることにより生成される。この逆特性のグラフとは、図6に示すグラフ152に類似する形状のものである。
【0053】
γ補正データの生成は、プリンター1の製造時にY〜Kの色毎に実行され、生成された各色用のγ補正データは、γ補正データ格納部111に格納される。
ROM108には、画像形成部10や給送部20における画像形成動作や給送動作に関するプログラム等が格納されている。CPU101は、ROM108から必要なプログラムを読み出して、画像形成部10や給送部20などの動作をタイミングを取りながら統一的に制御して円滑なプリント動作を実行させる。RAM109は、CPU101のワークエリアとなる。
【0054】
(3)階調補正部105の構成
図7は、階調補正部105の構成を示すブロック図である。
同図に示すように、階調補正部105は、Y補正部121と、M補正部122と、C補正部123と、K補正部124を備える。
Y補正部121は、Y色の画像データの階調値をY色用の補正データに基づき補正する補正部である。M補正部122は、M色の画像データの階調値をM色用の補正データに基づき補正する補正部であり、C補正部123は、C色の画像データの階調値をC色用の補正データに基づき補正する補正部であり、K補正部124は、K色の画像データの階調値をK色用の補正データに基づき補正する補正部である。Y補正部121〜K補正部124は、それぞれが基本的に同じ構成であるので、ここではY補正部121の構成について説明し、M補正部122〜K補正部124の構成については説明を省略する。
【0055】
Y補正部121は、γ補正部131と、データ分離部132と、第1階調補正部133と、第2階調補正部134と、データ合成部135とを備える。
γ補正部131は、Y色の画像データの階調値をγ補正データ格納部111に格納されているY色のγ補正データを用いて補正して、補正後の画像データをデータ分離部132に送る。
【0056】
データ分離部132は、Y色の画像データのうち、発光素子LD1Yを駆動させるための第1データと、発光素子LD2Yを駆動させるための第2データに分けて、第1データを第1階調補正部133に送り、第2データを第2階調補正部134に送る。
例えば、原稿1ページ分の画像データが、走査ライン単位で走査ラインの番号1,2,3・・の順に並ぶようなデータ構造である場合、第1データを1,3,5・・の奇数番目の走査ラインを露光走査するためのデータ、第2データを2,4,6・・の偶数番目の走査ラインを露光走査するためのデータとすることができる。
【0057】
第1階調補正部133は、第1データの各画素に対し、その階調値をY色のレーザービームL1用の補正データ(図6のグラフ151で示すデータ)を用いて補正する。この補正データは、第1補正データ格納部113から読み出される。
図6に示すグラフ151の場合、第1階調補正部133では補正前後で階調値が変わらないことになるが、γ補正部131でγ補正済みであるため、レーザービームL1を用いる場合の階調補正は、実際には実行されていることになる。
【0058】
第2階調補正部134は、第2データの各画素に対し、その階調値をY色のレーザービームL2用の補正データ(図6のグラフ152で示すデータ)を用いて補正する。この補正データは、第2補正データ格納部114から読み出される。
これにより、再現画像が出力される場合に生じる、レーザービームL1に対するレーザービームL2のビーム強度分布の違いにより生じる再現画像の濃度差がなくなるように、第2データの各画素の階調値がそれぞれ補正される。
【0059】
データ合成部135は、補正後の第1データと第2データを合成して、分離前のデータ構造の画像データに戻し、その画像データをスクリーン処理部106に送る。この合成では、同一ページ内における第1データと第2データを走査ライン単位でライン番号が順番になるように合成する構成がとられる。このため第1階調補正部133と第2階調補正部134からデータ合成部135への第1データと第2データの送信が走査ライン単位で略同じ速度で行われ、第1データと第2データの送信速度に差がある場合にその速い方のデータを遅い方のデータに合わせるために一時的にバッファメモリなどに格納させる構成をとらなくても良いようにしている。
【0060】
なお、バッファメモリを設ける構成をとる場合には、例えば、第1階調補正部133を設けずに、第1データをそのままデータ合成部135に送り、それをバッファメモリに一時的に格納しておき、第2データが第2階調補正部134で補正処理され、第2階調補正部134から出力されるタイミングで、バッファメモリから第1データを走査ライン単位でデータ合成部135に送るとしても良い。
【0061】
スクリーン処理部106は、Y色の画像データを多値階調再現方法、上記例では8値のディザ法や誤差拡散法を用いて多値の画像データに変換する。
Y色の多値の画像データは、LD駆動部107に送られ、LD駆動部107では第1データに相当する画像データに基づきY色用の発光素子LD1Yを変調駆動してレーザービームL1を発光させ、第2データに相当する画像データに基づきY色用の発光素子LD2Yを変調駆動してレーザービームL2を発光させる。
【0062】
図8は、比較例としての階調補正部190の構成を示す図である。
同図に示すように階調補正部190は、Y補正部〜K補正部を有し、Y補正部は、γ補正部195だけが設けられており、上記の第1階調補正部133と第2階調補正部134が設けられていない。γ補正部195は、上記のγ補正部131に相当し、いわゆるγ補正は行えるが、第1階調補正部133と第2階調補正部134が設けられていないことから、レーザービームL1,L2間の光強度分布の違いによる再現画像の濃度差を補正することができず、特に中間調の階調再現性を向上することができない。
【0063】
これに対し、本実施の形態では、レーザービームL1,L2間にビーム強度分布に違いがあっても、図7に示す第1階調補正部133と第2階調補正部134により、同一の濃度の画像を再現する場合にレーザービームL1に対するレーザービームL2のビーム強度分布の違いにより生じる再現画像の濃度差がなくなるように、中間調を含む階調値を補正することができ、出力画像の階調再現性をより向上することができる。
【0064】
<実施の形態2>
上記実施の形態1では、Y〜K色毎に画像データの階調値を補正データにより補正するとしたが、本実施の形態2では、発光素子LD1Y〜LD1Kに対し、発光素子LD2Y〜LD2Kの露光ステップを補正データにより補正するとしており、この点が実施の形態1と異なっている。以下、説明の重複を避けるため、実施の形態1と同じ内容についてはその説明を省略し、同じ構成要素については、同符号を付すものとする。
【0065】
図9は、本実施の形態2におけるLD駆動部207の構成を示すブロック図である。
同図に示すようにLD駆動部207は、Y補正部211と、M補正部212と、C補正部213と、K補正部214を有する。LD駆動部207には、画像メモリ104から階調補正部190、スクリーン処理部106を介してY〜K色の画像データが入力される。
なお、階調補正部190は、上記の図8で示すものに等しく、本実施の形態2では、実施の形態1の第1階調補正部133と第2階調補正部134が設けられていない。
【0066】
Y補正部211〜K補正部214は、それぞれが基本的に同じ構成であるので、ここではY補正部211の構成について説明し、M補正部212〜K補正部214の構成については説明を省略する。
Y補正部211は、データ分離部220と、第1露光ステップ変換部221と、第2露光ステップ変換部222と、補正部223を備える。
【0067】
データ分離部220は、Y色の画像データのうち、発光素子LD1Yを駆動させるための第1データと、発光素子LD2Yを駆動させるための第2データに分けて、第1データを第1露光ステップ変換部221に送り、第2データを第2露光ステップ変換部222に送る。このデータの分離方法は、実施の形態1のデータ分離部132と同じ方法とすることができる。
【0068】
第1露光ステップ変換部221は、第1データの各画素の階調値をLD1Yに対する露光ステップの値に変換して、変換した露光ステップに基づき、画素単位で発光素子LD1Yを変調駆動する。
第2露光ステップ変換部222は、第2データの各画素の階調値をLD2Yに対する露光ステップの値に変換して、変換した露光ステップの画素毎の値を補正部223に送る。
【0069】
補正部223は、画素毎にその変換後の露光ステップの値を、Y色用の補正データを用いて補正し、補正された後の露光ステップに基づき、画素単位で発光素子LD2Yを変調駆動する。
図10(a)は、Y色用の補正データをテーブル250の形式で示す図であり、露光ステップの補正前と補正後の数値を対応付けたデータになっており、露光ステップ0〜6の範囲で露光ステップの値が1ステップだけ大きな値に補正される例を示している。
【0070】
この補正データによれば、発光素子LD2Yに入力される第2データの画素に対する露光ステップの値は、露光ステップ0〜6の範囲内では補正前よりも補正後の方が1つ大きな値に変更されることになる。具体的には、例えば第2露光ステップ変換部222による変換後の露光ステップの値が「1」であれば、補正部223により「2」に補正される。
第1データの画素については、露光ステップの補正を行っていないので、第2データの画素に対して、露光ステップを元の「1」から「2」に上げるということは、発光素子LD2Yの方がLD1Yよりも同じ露光ステップで発光させたときの発光量が少なめになる特性を有することを意味し、露光ステップを1段階上げて、発光量が少なめになる分を補うものである。図10(a)の補正データは、発光素子LD2Yの特性に対して逆特性となる露光ステップを示すものであり、図6のグラフ152aに相当するものといえる。
【0071】
一方、図10(b)のテーブル250では、露光ステップ1〜7の範囲で露光ステップの値が1ステップだけ小さな値に補正される例を示している。これは、発光素子LD2Yの方がLD1Yよりも同じ露光ステップで発光させたときの発光量が多めになる特性を有することを意味し、露光ステップを1段階下げて、発光量が多めになる分を補うものであり、図6のグラフ152bに相当するものといえる。
【0072】
上記のように露光ステップは、階調を表すものともいえるので、画像データの階調値を補正する実施の形態1と同様に、階調値と露光ステップの相関関係をとっておくことにより、トナーパターンP1,P2の検出結果から、図10に示すような補正データを生成することができる。生成された補正データは、生成される毎に第2補正データ格納部114に上書き保存される。
【0073】
なお、上記ではY色の画像データに対する露光ステップの補正について説明したが、M〜K色の画像データに対する露光ステップの補正もY色と同様の方法で実行される。
このように発光素子LD2Y〜LD2Kの露光ステップを補正データにより補正する構成をとることにより、実施の形態1と同様に、レーザービームL1,L2間にビーム強度分布に違いがあっても、中間調を含む階調再現性をより向上することができる。
【0074】
<実施の形態3>
上記実施の形態では、トナーパターンP1,P2として、主走査方向に沿った直線状のパッチを形成するとしたが、実施の形態3では、線状だけでなく、点状をしたパッチを含むとしており、この点で異なっている。また、実施の形態1では、LD駆動部107の露光ステップを8段階としたが、本実施の形態3では、露光ステップが16段階に切り替え可能になっている。
【0075】
図11〜図13は、本実施の形態におけるY色のトナーパターンの構成例を示す図であり、図11は、Y色のトナーパターンA1,A2を、図12は、Y色のトナーパターンB1,B2を、図13は、Y色のトナーパターンC1,C2をそれぞれ示している。
〔トナーパターンA1,A2〕
図11(a)に示すようにトナーパターンA1は、濃度の異なるパッチ301〜304からなり、パッチ301〜304は、複数個の画素が主走査方向に沿って連続してなる直線部が複数本、副走査方向に1走査ライン分の間隔をおいて構成されており、パッチ毎に発光素子LD1Yに対する露光ステップが可変されることにより形成される。
【0076】
パッチ301は、露光ステップ4、パッチ302は、露光ステップ8、パッチ303は、露光ステップ12、パッチ304は、露光ステップ16とされ、それぞれがその露光ステップに相当する光量のレーザービームL1により形成される。
露光ステップの値が大きくなるほど再現画像の濃度が濃くなるので、パッチ301〜304の順に濃度が濃いパターン画像になる。なお、レーザービームの光量が可変される以外の帯電や現像バイアス電圧などの画像形成条件は同じにされる。このことは、以下のトナーパターンについて同様である。
【0077】
図11(b)に示すようにトナーパターンA2は、濃度の異なるパッチ305〜308からなり、パッチ305〜308は、複数個の画素が主走査方向に沿って連続してなる直線部が複数本、副走査方向に1走査ライン分の間隔をおいて構成されており、パッチ毎に発光素子LD2Yに対する露光ステップが可変されることにより形成される。
パッチ305は、パッチ301と同一の露光ステップ4、パッチ306は、パッチ302と同一の露光ステップ8、パッチ307は、パッチ303と同一の露光ステップ12、パッチ308は、パッチ304と同一の露光ステップ16とされ、それぞれがその露光ステップに相当する光量のレーザービームL2により形成される。トナーパターンA1,A2のパターンデータは、パターンデータ格納部110に予め格納されている。このことは、トナーパターンB1〜C2のパターンデータについて同様である。
【0078】
〔トナーパターンB1,B2〕
図12(a)に示すようにトナーパターンB1は、濃度の異なるパッチ311〜314からなり、パッチ毎に発光素子LD1Yに対する露光ステップを可変して形成される。
パッチ311は、主走査方向に隣接する2個の画素(ドット)からなるブロックを1つの単位として、そのブロックが主走査方向に2つの画素相当分の間隔をあけて並んでなる列が複数列、副走査方向に1画素分相当の間隔をおいて、かつ隣り合う2列の一方の列に含まれる各ブロックと、他方の列に含まれる各ブロックとが主走査方向に交互にずれた位置関係になる千鳥状に形成されてなる。パッチ312〜314についてもパッチ311と同様の千鳥状に形成されている。
【0079】
パッチ311は、露光ステップ6、パッチ312は、露光ステップ9、パッチ313は、露光ステップ12、パッチ314は、露光ステップ16とされ、それぞれがその露光ステップに相当する光量のレーザービームL1により形成される。
図12(b)に示すようにトナーパターンB2は、濃度の異なるパッチ315〜318からなり、パッチ毎に発光素子LD2Yに対する露光ステップを可変して形成される。
【0080】
パッチ315〜318は、パッチ311〜314と同形状の千鳥状に形成されてなり、パッチ315は、パッチ311と同一の露光ステップ6、パッチ316は、パッチ312と同一の露光ステップ9、パッチ317は、パッチ313と同一の露光ステップ12、パッチ318は、パッチ314と同一の露光ステップ16とされ、それぞれがその露光ステップに相当する光量のレーザービームL2により形成される。
【0081】
なお、トナーパターンB1,B2では、露光ステップの最小値が6であり、トナーパターンA1,A2に対する最小値4よりも大きくなっている。これは、次の理由による。
すなわち、トナーパターンB1,B2は、2個のドットが連続するだけであるのに対し、トナーパターンA1,A2は、多数のドットが直線状に連続する形状になっている。
トナーパターンA1,A2のように多数のドットが連続する形状では、ドット毎に1つのドットを露光するためのレーザービームによるビームスポットの一部が、そのドットの両隣に位置するそれぞれのドットを露光するためのレーザービームによるビームスポットと相互に重畳されて感光体ドラム11Y上の電位が下がり易くなり、露光ステップの最小値を下げても、その値に対応した濃度が再現され易い。
【0082】
これに対し、トナーパターンB1,B2のように2個のドットだけが連続する形状では、トナーパターンA1,A2に比べて、レーザービームによるビームスポットの重畳する面積が少ないために、露光ステップの最小値を下げすぎると、その値に対応した濃度を再現し難くなるからである。このことは、次のトナーパターンC1,C2についても同様である。なお、再現性に問題がなければ各トナーパターンについて露光ステップの最小値を同じにしても構わない。
【0083】
〔トナーパターンC1,C2〕
図13(a)に示すようにトナーパターンC1は、濃度の異なるパッチ321〜324からなり、パッチ毎に発光素子LD1Yに対する露光ステップを可変して形成される。
パッチ321は、孤立する1つの画素(ドット)が点状に散在してなり、1つのドットのそれぞれが主走査方向に3つの画素相当分の間隔をあけて並んでなる列が複数列、副走査方向に3画素分相当の間隔をおいて形成されてなる。パッチ322〜324についてもパッチ321と同じ形状になっている。
【0084】
パッチ321は、露光ステップ8、パッチ322は、露光ステップ10、パッチ323は、露光ステップ12、パッチ324は、露光ステップ16とされ、それぞれがその露光ステップに相当する光量のレーザービームL1により形成される。
図13(b)に示すようにトナーパターンC2は、濃度の異なるパッチ325〜328からなり、パッチ毎に発光素子LD2Yに対する露光ステップを可変して形成される。
【0085】
パッチ325〜328は、パッチ321〜324と同じ形状であり、パッチ325は、パッチ321と同一の露光ステップ8、パッチ326は、パッチ322と同一の露光ステップ10、パッチ327は、パッチ323と同一の露光ステップ12、パッチ328は、パッチ324と同一の露光ステップ16とされ、それぞれがその露光ステップに相当する光量のレーザービームL2により形成される。
【0086】
トナーパターンA1,A2では、多数のドットが連続して直線部を構成しており、トナーパターンB1,B2では、2つのドットが連続して1つのブロックを構成しており、トナーパターンC1,C2では、1つのドットだけで点が構成されている。この直線部、ブロック、点を画像部分とし、単位長さ当たりの画像部分の長さを発生比率とすると、発生比率はトナーパターンC,B,Aの順で大きくなる。また、隣り合う画像部分同士の間隔を発生周波数とすると、間隔が広いほど発生周波数が低くなるので、発生周波数はトナーパターンA,B,Cの順で低くなる。
【0087】
トナーパターンA1,A2は、256階調のうち、階調値64〜255の範囲Aに対する補正データを生成するためのものであり、トナーパターンB1,B2は、階調値16〜63の範囲Bに対する補正データを生成するためのものであり、トナーパターンC1,C2は、階調値0〜15の範囲Cに対する補正データを生成するためのものである。
このように256階調を3つの範囲に分けてその範囲ごとに、補正データを生成するためのトナーパターンの形状を異ならせるのは、より適した補正データを得るためである。
【0088】
すなわち、多値階調再現に用いるディザ法や誤差拡散法では、通常、低濃度の画像をトナーパターンC1,C2のように複数個のドットを点在させて人の目に淡く見えるように再現させ、高濃度の画像をトナーパターンA1,A2のように複数個のドットを連続させて人の目に濃く見えるように再現させる方法がとられる。
低濃度の画像が点状のドットで再現されるということは、その同じ点状のトナーパターンを検出して低濃度域の階調を補正する補正データを生成すれば、実際のプリント時の出力画像と同様の条件下で補正データを生成することができ、補正データによる補正をより実際の出力特性に合ったものにして、再現画像の濃度差をより抑制することができる。このことは、高濃度の画像についても同様である。この意味で、形成されるトナーパターンの各パッチの形状は、多値階調再現で実際に再現されるパターン(ドットの発生比率や発生周波数)と同じまたは近似した形状にすることが望ましい。
【0089】
具体的には、例えば淡い背景画像領域では低階調の画素が連続するので、これを多値階調再現する場合、階調値に応じて単位面積当たりのドットの発生比率や発生周波数が大体決まるので、これと同じ発生比率や発生周波数のドットが散在するパターンまたはこのパターンに近似する形状のパターンが用意される。近似する形状は、実際の出力特性に合わせることによる濃度差の抑制効果が得られるものを実験などから求めることができる。
【0090】
本実施の形態では、高、中、低の3段階の範囲A〜Cに分けて、それぞれの範囲に適した形状のトナーパターンを用いてその範囲に対する補正データを生成するものである。
図14は、本実施の形成におけるY色用の補正データ生成処理の内容を示すフローチャートである。
同図に示すように、トナーパターンA1,A2のパターンデータをパターンデータ格納部110から読み出し(ステップS31)、発光素子LD1Yを用いてトナーパターンA1を中間転写ベルト16の表面に形成し(ステップS32)、発光素子LD2Yを用いてトナーパターンA2を中間転写ベルト16の表面に形成する(ステップS33)。
【0091】
中間転写ベルト16の表面に形成されたトナーパターンA1,A2をトナーパターン検出センサー19で検出し(ステップS34)、トナーパターン検出センサー19の検出信号から中間転写ベルト16上に形成されたトナーパターンA1,A2のパッチ301〜308のトナー濃度を求め、求めた濃度に基づき、範囲Aにおける補正前の階調値a,b,c,dに対する補正後の階調値a1,b1,c1,d1を求める。ここで、補正前の階調値a,b,c,dとは、トナーパターンA1,A2を形成するときの露光ステップ16,12,8,4に相当する階調値を示す。階調値a,b,c,dとa1,b1,c1,d1の関係を図15を用いて説明する。
【0092】
図15は、Y色用の補正データを現すグラフ350の例を示す図である。
同図に示すグラフ350のうち、範囲Aに属するグラフ部分351が範囲Aにおける補正データを示している。
範囲Aにおいて、階調値a,b,c,dがトナーパターンA1,A2を形成する場合の露光ステップ16,12,8,4に相当する階調値を示す。破線の正比例を示すグラフ359上において、例えば露光ステップ16に相当する階調値aに、パッチ304と308との濃度差に相当する階調値a2(同図ではマイナスの値の例を示している。)を足し合わせた点a1が補正前の階調値aに対する補正後の階調値a1になる。同様に、例えば露光ステップ4に相当する階調値dに、パッチ301と305との濃度差に相当する階調値d2を足し合わせた点d1が補正前の階調値dに対する補正後の階調値d1になる。階調値の算出方法は、実施の形態1と同じである。
【0093】
このようにして範囲Aにおける補正後の階調値a1,b1,c1,d1がそれぞれ求められる。
図14に戻って、ステップS36では、トナーパターンB1,B2のパターンデータを読み出し、ステップS37とS38では、発光素子LD1Yを用いてトナーパターンB1を中間転写ベルト16の表面に形成し、発光素子LD2Yを用いてトナーパターンB2を中間転写ベルト16の表面に形成する。
【0094】
そして、中間転写ベルト16の表面に形成されたトナーパターンB1,B2をトナーパターン検出センサー19で検出し(ステップS39)、その検出信号からトナーパターンB1,B2のパッチ311〜318のトナー濃度を求め、求めた濃度に基づき、範囲Bにおける階調値a,b,c,d(図15)に対する補正後の階調値a1,b1,c1,d1を求める。範囲Bにおける階調値a,b,c,dは、トナーパターンB1,B2を形成するときの露光ステップ16,12,9,6に相当する階調値を示し、階調値a1,b1,c1,d1は、階調値a,b,c,dに対する補正後の階調値を示す(図15)。階調値a1〜d1の算出方法は、範囲Aと同じである。
【0095】
続いて、ステップS41では、トナーパターンC1,C2のパターンデータを読み出し、ステップS42とS43では、発光素子LD1Yを用いてトナーパターンC1を中間転写ベルト16の表面に形成し、発光素子LD2Yを用いてトナーパターンC2を中間転写ベルト16の表面に形成する。
そして、中間転写ベルト16の表面に形成されたトナーパターンC1,C2をトナーパターン検出センサー19で検出し(ステップS44)、その検出信号からトナーパターンC1,C2のパッチ321〜328のトナー濃度を求め、求めた濃度に基づき、範囲Cにおける階調値a,b,c,dに対する補正後の階調値a1,b1,c1,d1を求める(ステップS45)。この算出方法は、範囲A、Bと同じである。
【0096】
範囲A〜Cのそれぞれの範囲で算出した補正後の階調値a1,b1,c1,d1(全部で16点になる)をスプライン補間や多項式近似などによって線で繋ぎ合わせ、これを示すデータを補正データとして生成する(ステップS46)。
図15に示すグラフ350が、領域A〜Cの各領域における補正後の階調値a1,b1,c1,d1を繋ぎ合わせた結果の曲線に相当する。
【0097】
生成された補正データをレーザービームL2用の補正データとして第2補正データ格納部114に格納して(ステップS47)、当該処理を終了する。
このように256階調を複数、ここでは3つの範囲に分けて、その範囲ごとにその階調を再現するのに実際に用いられるドットパターンに近似したパターンでトナーパターンを形成することにより、実際のプリント時と同じ条件下で補正データを生成することができ、中間調を含む再現画像の濃度差をより抑制することができるようになる。
【0098】
なお、上記では256階調を3つの範囲に分けるとしたが、これに限られず、複数、例えば4以上の範囲に分けるとしても良い。
また、トナーパターンA1,A2に対し露光ステップを4段階に切り替えて、それぞれ4個のパッチを形成するとしたが、パッチの個数がこれに限られることはなく、1または複数、例えば露光ステップを5段階以上に切り替えて、5以上のパッチを形成するとしても良い。パッチの数が多くなるほど、より実際の出力特性に合った補正データを生成することができる。
【0099】
さらに、パッチ毎に、ドットの発生比率と発生周波数の両方を異ならせるとしたが、少なくとも一方が異なるとしても良い。また、発生比率と発生周波数の値が上記に限られず、装置構成に応じて適した値を設定するとしても良い。これらのことは、点状のパッチを含むトナーパターンB1,B2およびC1,C2について同様である。
本発明は、画像形成装置に限られず、補正データを生成する画像形成方法であるとしてもよい。さらに、その方法をコンピュータが実行するプログラムであるとしてもよい。また、本発明に係るプログラムは、例えば磁気テープ、フレキシブルディスク等の磁気ディスク、DVD−ROM、DVD−RAM、CD−ROM、CD−R、MO、PDなどの光記録媒体、フラッシュメモリ系記録媒体等、コンピュータ読み取り可能な各種記録媒体に記録することが可能であり、当該記録媒体の形態で生産、譲渡等がなされる場合もあるし、プログラムの形態でインターネットを含む有線、無線の各種ネットワーク、放送、電気通信回線、衛星通信等を介して伝送、供給される場合もある。また、一部または全部の処理を専用ハードウェアを利用して実行させたり、ソフトウェアにより実行させたりするようにすることができる場合もある。
【0100】
<変形例>
本発明を上記の実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記の実施の形態に限定されないのはもちろんである。以下のような場合も本発明に含まれる。
(1)上記実施の形態では、レーザービームL1,L2ごとに、n(2以上の整数)個の異なる階調値に対応するn個のパッチを形成して、形成されたn個のパッチの検出結果から各パッチの濃度に対するn個の補正後の階調値を求め、n個の補正後の階調値を補間することにより、補正データを生成するとしたが、中間調を含む複数の異なる階調値のそれぞれを補正するための補正データを生成することができれば、nの値が複数に限られず、例えば1であっても良い。
【0101】
図16は、本変形例に係るレーザービームL2用の補正データのグラフ401,402を示す図である。
同図では、レーザービームL1,L2ごとに、露光ステップ7に相当する光量のパッチだけを形成し、そのパッチの補正前の階調値aに対して補正後の階調値a1を求め、求めた階調値a1と原点0を結ぶ直線を補正データとする例である。
【0102】
グラフ401は、図6のグラフ152aと同様に、中間調でレーザービームL2の光量がレーザービームL1に対して少なめになる特性を有する発光素子LD2Yが用いられている場合の例であり、グラフ402は、図6のグラフ152bと同様に、中間調でレーザービームL2の光量がレーザービームL1に対して多めになる特性を有する発光素子LD2Yが用いられている場合の例を示す。
【0103】
本変形例の方法をとれば、レーザービームL1,L2ごとに1つのパッチを形成するだけで済み、階調値の異なる複数個のパッチを形成する構成よりも、パッチの形成に要する時間やトナー消費および補正データを生成するための演算処理を低減することができる。
なお、上記では特定の1つの階調値aとして、露光ステップ7に相当する階調値のパッチを形成するとしたが、これに限られず、例えば最大濃度に相当する階調値、または最大濃度に相当する階調値から中間値(128)までの間の範囲内の値などとしても良い。中間値よりも低い値をとると、誤差を含む場合に高濃度域においてばらつきが大きくなるので、できるだけ高濃度域に相当する階調値をとることが望ましい。
【0104】
(2)上記実施の形態では、多値露光として露光ステップを複数段に切り替えるとしたが、これに限られず、例えば2値(発光と消灯)の構成をとるとしても良い。2値の構成をとる場合、実際にプリント出力と同じ方法を用いて、画素単位で発光と消灯を階調値の大きさに応じて切り替えることにより、濃度の異なるパッチを形成することができる。
また、上記ではスクリーン処理部106により中間調の階調再現を行うとしたが、これを行わない構成としても良い。
【0105】
(3)上記実施の形態では、本発明に係る画像形成装置をタンデム型カラープリンターに適用した場合の例を説明したが、これに限られない。カラーやモノクロの画像形成に関わらず、複数本の光ビームにより、同一の像担持体を露光走査して静電潜像を形成し、これを現像して画像を形成する画像形成装置であれば、例えば複写機、FAX、MFP(Multiple Function Peripheral)等に適用できる。像担持体としては、感光体ドラムに限られず、ベルト状のものであっても良い。
【0106】
また、光ビームの数が2本に限られず、2以上であっても良い。発光素子としては、半導体レーザーに限られず、感光体ドラムなどの像担持体を露光するのに適した光ビームを出射可能な素子、例えばLED、面発光(2次元の多点発光)素子などを用いても良い。
さらに、上記では、感光体ドラム11Y〜11Kと中間転写ベルト16を像担持体として、中間転写ベルト16上に形成されたトナーパターンを検出するとしたが、これに限られず、例えば中間転写ベルト16が設けられていない装置では、感光体ドラムなどの像担持体に形成されたトナーパターンを検出センサーにより検出する構成としても良い。
【0107】
また、像担持体に形成されたトナーパターンを反射型の光学センサーで検出するとしたが、これに限られず、他のセンサーなどであっても構わない。また、トナーパターンに含まれるパッチの形状や数が上記のものに限られないことはいうまでもない。装置構成によっては、例えば実施の形態1のトナーパターンP1,P2に代えて、実施の形態3のトナーパターンB1、B2を用いたり、C1,C2を用いたりすることもできる。
【0108】
さらに、像担持体に形成されたトナーパターンを検出する構成に限られず、例えば記録シート上にトナーパターンを形成し、記録シート上に形成されたトナーパターンをプリンター1内において別のセンサーで検出する構成、トナーパターンが形成された記録シートがプリンター1から排出された後、その記録シート上のトナーパターンをスキャナーにより読み取ることにより検出する構成などとしても構わない。また、1画素を1ドットの露光単位で露光するとしたが、1画素を複数ドットで露光する構成としても良い。
【0109】
また、上記実施の形態及び上記変形例の内容をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、複数本の光ビームにより同一の像担持体を露光走査する画像形成装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 プリンター
11Y、11M、11C、11K 感光体ドラム
18 プリントヘッド
19 トナーパターン検出センサー
81〜86、301〜308、311〜318、321〜328 パッチ
105 階調補正部
106 スクリーン処理部
107 LD駆動部
110 パターンデータ格納部
112 補正データ生成部
113 第1補正データ格納部
114 第2補正データ格納部
131 γ補正部
133 第1階調補正部
134 第2階調補正部
221 第1露光ステップ変換部
222 第2露光ステップ変換部
223 補正部
L1、L2 レーザービーム
LD1Y、LD2Y、LD1M、LD2M、LD1C、LD2C、LD1K、LD2K
発光素子
P1、P2 トナーパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づき第1と第2の光源から第1と第2の光ビームを発し、発せられた第1と第2の光ビームにより、同一の像担持体を露光走査して当該像担持体に静電潜像を形成し、形成された静電潜像を現像して画像を形成する画像形成装置であって、
一方の光源を駆動するための画像データの、中間調を含む複数の異なる階調値のそれぞれを、他方の光源との光強度分布の違いにより生じる再現画像の濃度差を補正するための階調値に補正する補正データを生成する生成手段と、
一方の光源を駆動するための画像データの階調値を前記補正データにより補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記生成手段は、
像担持体または記録シート上に、第1の光ビームによりn(1以上の整数)個の異なる階調値に対応するn個のパッチを含む第1のパターン画像を形成すると共に、第2の光ビームにより前記n個と同じ階調値に対応するn個のパッチを含む第2のパターン画像を形成するパターン形成手段と、
形成された第1と第2のパターン画像を検出する検出手段と、を備え、
形成された第1と第2のパターン画像のそれぞれに含まれるn個のパッチのうち、同じ階調値を示す画像データにより形成されたパッチ同士の検出結果に基づき、前記補正データを生成することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記補正データは、
同じ階調値を示す画像データにより形成されたパッチ同士の検出結果の差分から得られる、一方の光源と他方の光源の相対的な光量差を示す特性の逆特性を示すデータであり、
前記補正手段は、
一方の光源を駆動するための画像データの階調値を、前記差分がなくなるように前記逆特性を示すデータを用いて補正することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記補正手段により補正された画像データの階調値を、さらに所定の階調再現方法を用いるスクリーン処理により補正するスクリーン処理手段と、
スクリーン処理後の画像データに基づき前記一方の光源を駆動して、当該一方の光源から光ビームを発光させる光源駆動手段と、
を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
一方の光源を駆動するための画像データの階調値をその駆動前に、所定の階調再現方法を用いるスクリーン処理により補正するスクリーン処理手段を備え、
一方の光源を駆動するための画像データは、スクリーン処理後の画像データであり、
スクリーン処理後の画像データの階調値は、前記一方の光源から発せられる光ビームの光量に相当する露光ステップであり、
前記補正手段は、
前記露光ステップの大きさに基づき前記一方の光源から発せられる光ビームの光量を可変する光源駆動手段であり、
前記露光ステップを、前記補正データを用いて補正することを特徴とする請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記nは、複数であり、
前記複数のパッチのそれぞれは、
前記像担持体上の一定領域内に複数個のドットが形成されてなり、
異なる階調値ごとに、一定領域内におけるドットの発生比率と発生周波数の少なくとも一方が異なることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1と第2のパターン画像のそれぞれは、
主走査方向に沿って複数のドットが連結されてなる列が複数、副走査方向に間隔をおいて並んでなる線状の第1パッチと、
複数のドットが連結してなる1つのブロックが複数、主走査方向と副走査方向にそれぞれ一定の間隔をおいて散在してなる点状の第2パッチと、
孤立する1つのドットが複数、主走査方向と副走査方向にそれぞれ一定の間隔をおいて散在してなる点状の第3パッチのうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1のパターン画像は、
階調値の異なるパッチごとに、そのパッチに含まれる1ドットを形成する際における第1の光ビームの発光量を異なせることにより形成され、
前記第2のパターン画像は、
階調値の異なるパッチごとに、そのパッチに含まれる1ドットを形成する際における第2の光ビームの発光量を異なせることにより形成され、
前記第1と第2のパターン画像のそれぞれに含まれる複数のパッチのうち、同じ階調値を示す画像データにより形成されたパッチ同士について光ビームの発光量が同じに設定されることを特徴とする請求項6または7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
一方の光源を駆動するための画像データの階調値をその駆動前に、所定の階調表現方法を用いるスクリーン処理により補正するスクリーン処理手段を備え、
前記複数のパッチに、点状のパッチが含まれる場合に、
その点状のパッチにおけるドットのパターンが、同じ階調値をスクリーン処理により再現する場合の当該スクリーン処理後におけるドットのパターンと同じまたは近似するパターン形状になっていることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記nは、1であり、
1つの階調値は、最大濃度に相当する値、または最大濃度に相当する階調値から中間値までの間の範囲内の値であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記パッチ同士の検出結果に基づき、第1の光ビームと第2の光ビームの光量の差分を求め、その光量の差分が所定値よりも大きい場合に、その旨を示す警告を発する警告手段を備えることを特徴とする請求項2〜10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
画像データに基づき第1と第2の光源から第1と第2の光ビームを発し、発せられた第1と第2の光ビームにより、同一の像担持体を露光走査して当該像担持体に静電潜像を形成し、形成された静電潜像を現像して画像を形成する画像形成装置における画像形成方法であって、
一方の光源を駆動するための画像データの、中間調を含む複数の異なる階調値のそれぞれを、他方の光源との光強度分布の違いにより生じる再現画像の濃度差を補正するための階調値に補正する補正データを生成する生成ステップと、
一方の光源を駆動するための画像データの階調値を前記補正データにより補正する補正ステップと、
を含むステップを実行することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−7799(P2013−7799A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138962(P2011−138962)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】