説明

画像形成装置及び印刷制御方法並びに制御プログラム

【課題】データ本体に印刷設定情報を含む印刷データが送信された場合に、データ本体に付加された印刷設定情報に従って印刷が実行されない。
【解決手段】画像形成装置に、印刷データに含まれ文書データ本体外に記述された第1の印刷設定情報を解析する第1の解析部と、前記文書データ本体に含まれる第2の印刷設定情報を解析する第2の解析部と、印刷設定情報を記憶する所定の記憶領域を有する記憶部と、前記第1の印刷設定情報に基づき前記記憶領域に予め記憶されたデフォルトの印刷設定情報を設定項目毎に更新した後、前記第2の印刷設定情報に基づき前記更新された印刷設定情報のうち前記第1の印刷設定情報により更新された項目以外について更に更新することを許容する印刷設定制御部と、前記所定の記憶領域に記憶された印刷設定情報に従って前記文書に基づく印刷を制御する印刷制御部と、を少なくとも設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び印刷制御方法並びに制御プログラムに関し、特に、XPS(XML Paper Specification)データを印刷する画像形成装置及びその印刷制御方法並びに制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタやデジタル複合機などの印刷装置(以下、画像形成装置と呼ぶ。)が普及している。この画像形成装置をネットワークプリンタとして利用する場合、まず、ネットワークに接続されているホストにインストールされているアプリケーションを用いて文書データを作成する。次に、ホストにインストールされているデバイスドライバ(プリンタドライバ)を用いて文書データをページ記述言語(PDL:Page Description Language)形式の印刷データに変換して画像形成装置に送信する。そして、画像形成装置では、印刷データを解析して紙媒体に出力する。
【0003】
ここで、文書を作成するアプリケーションとして、XML(Extensible Markup Language)形式で文書を記述するXPSと呼ばれる規格に基づいて動作するアプリケーションが知られている。このXPSに基づいて作成された文書データ(以下、XPSデータと呼ぶ。)はダイレクト印刷が可能であり、近年では、XPSデータを扱える画像形成装置も提供されている。なお、上記XPSに関しては、例えば、下記非特許文献1にその詳細が開示されている。
【0004】
【非特許文献1】XML Paper Specification Version 1.0(http://www.microsoft.com/japan/whdc/xps/xpsspec.mspx)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常のアプリケーションで作成した文書データを用いて印刷を指示する場合、ホストは、文書データの先頭に印刷部数、両面印刷指定、用紙サイズなどの印刷設定情報が記述されたPJL(Printer Job Language)コマンドを付加した印刷データを作成して画像形成装置に送信する。そして、画像形成装置では、PJLコマンドを解析して印刷設定情報を所定の記憶領域に記憶した後、その印刷設定情報を参照して印刷を実行する。
【0006】
一方、XPSデータを用いてダイレクト印刷する場合、ホストは、XPSデータの先頭に印刷設定情報が記述されたPJLコマンドを付加した印刷データを作成して画像形成装置に送信する。ここで、XPSデータは複数のパートで構成され、その中にPrint Ticketと呼ばれるパートがあり、Print Ticketには、上記PJLコマンドと同様に、印刷部数、両面印刷指定、用紙サイズなどの印刷設定情報を記述することができる。そのため、Print Ticketに印刷設定情報が記述されたXPSデータにPJLコマンドを付加した場合、印刷データには、PJLコマンドで指定される印刷設定情報とPrint Ticketで指定される印刷設定情報の2つが存在することになる。
【0007】
この場合、画像形成装置では、まず、PJLコマンドを解析してその印刷設定情報を所定の記憶領域に記憶した後、XPSデータを解析し、Print Ticketに記述された印刷設定情報を上記所定の記憶領域に上書きして記憶することになる。従って、PJLコマンドの印刷設定情報よりもXPSデータのPrint Ticketの印刷設定情報の方が優先されることになり、PJLコマンドで印刷設定を行っても、XPSデータのPrint Ticketの印刷設定に従って印刷が実行されてしまうという問題が生じる。
【0008】
具体的には、図8に示すように、XPSデータを用いたダイレクト印刷が可能な従来の画像形成装置は、データ解析部34aとPrint Ticket解析部34bと印刷制御部34dと印刷部34eとエンジン35と印刷設定情報保持領域33aとを備える。このような構成の画像形成装置において、印刷データ受信前は、印刷設定情報保持領域33aの各設定項目には、[1]に示すようなデフォルト値(内部で保持している値)が格納されている。ここでは、印刷部数を示す”Copies”が”1”、両面印刷指定を示す”Duplex”が”OFF”、用紙サイズを示す”paper”が”A4”になっているものとする。
【0009】
ここで、PJLコマンドが付加されたXPSデータが送信された場合は、図9及び図10のようになる。まず、図10のステップS201で、データ解析部34aは、ホスト20から印刷データを読み込むと、ステップS202で、印刷データを解析し、XPSデータの先頭にPJLコマンドが付加されているかを判断する。PJLコマンドが付加されている場合は、ステップS203で、データ解析部34aは、PJLコマンドを解析し、ステップS204で、PJLコマンドに記述された印刷設定情報を印刷設定情報保持領域33aに格納する。ここでは、PJLコマンドには、印刷部数を”3”、両面印刷指定を”ON”にする指示が書き込まれており、データ解析部34aは、その指示に従って、図9の[2]に示すように、”Copies”を”3”に、”Duplex”を”ON”に設定する。
【0010】
続いて、ステップS205で、データ解析部34aは、印刷データにXPSデータが含まれているかを判断し、XPSデータがない場合は印刷すべきデータが存在しないため、処理を終了する。一方、XPSデータがある場合は、ステップS206で、XPSデータ中にPrint Ticketが含まれているかを判断する。
【0011】
Print Ticketがある場合は、Print Ticket解析部34bにPrint Ticketを送信し、ステップS207で、Print Ticket解析部34bは、Print Ticketを解析し、ステップS208で、Print Ticketに記述された印刷設定情報を印刷設定情報保持領域33aに格納する。ここでは、Print Ticketには、印刷部数を”1”、両面印刷を”OFF”、用紙サイズを”Letter”にする指示が書き込まれており、Print Ticket解析部34bは、その指示に従って、図9の[3]に示すように、”Copies”を”1”、”Duplex”を”OFF”、”paper”を”Letter”に設定する。
【0012】
その後、ステップS209で、印刷制御部34dは、上記印刷設定情報保持領域33aに格納された印刷設定情報を参照して印刷部34eに印刷指示を行い、印刷部34eはエンジン35に印刷処理を実行させる。
【0013】
このように、印刷設定情報保持領域33aには、一旦PJLコマンドに記述された印刷設定情報が格納されるが、その後、Print Ticketに記述された印刷設定情報が上書きされてしまうため、PJLコマンドの指定が利かない印刷動作となる。
【0014】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、文書データ本体に印刷設定情報を含む印刷データが送信された場合であっても、文書データ本体外に記述された印刷設定情報に従って印刷を行うことができる画像形成装置及び印刷制御方法並びに制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は、印刷対象としての文書データを含む印刷データに基づいて印刷を行う画像形成装置において、前記印刷データに含まれ前記文書データ本体外に記述された第1の印刷設定情報を解析する第1の解析部と、前記文書データ本体に含まれる第2の印刷設定情報を解析する第2の解析部と、印刷設定情報を記憶する所定の記憶領域を有する記憶部と、前記第1の印刷設定情報に基づき前記記憶領域に予め記憶されたデフォルトの印刷設定情報を設定項目毎に更新した後、前記第2の印刷設定情報に基づき前記更新された印刷設定情報のうち前記第1の印刷設定情報により更新された項目以外について更に更新することを許容する印刷設定制御部と、前記所定の記憶領域に記憶された印刷設定情報に従って前記文書に基づく印刷を制御する印刷制御部と、を少なくとも備えるものである。
【0016】
本発明においては、前記印刷設定制御部は、前記第1の印刷設定情報に基づき前記デフォルトの印刷設定情報を、設定項目毎に更新すると共に更新された設定項目について更新可/更新不可を示すフラグを更新不可に設定若しくは更新不可を示すフラグを付加して前記更新された印刷設定情報とし、前記第2の印刷設定情報のうち前記フラグが更新可に設定されている設定項目若しくは前記更新不可を示すフラグが付加されていない設定項目について、前記更新された印刷設定情報所定の更なる更新を許容する構成とすることができる。
【0017】
また、本発明においては、前記印刷設定制御部は、各々の前記設定項目に対応する前記フラグを、デフォルト状態では更新可に設定する構成とすることができる。
【0018】
また、本発明においては、前記印刷設定制御部は、前記第1の印刷設定情報に含まれない設定項目に対して、前記フラグを更新不可に設定若しくは前記更新不可を示すフラグを付加する構成とすることができる。
【0019】
また、本発明においては、前記第1の印刷設定情報は、PJLコマンドに記述された情報とすることができる。
【0020】
また、本発明においては、前記文書データはXPSデータであり、前記第2の印刷設定情報は、前記XPSデータのPrint Ticketに記述された情報とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の画像形成装置及び印刷制御方法並びに制御プログラムによれば、データ本体に印刷設定情報を含む印刷データが送信された場合であっても、データ本体に付加された印刷設定情報に従って印刷を行うことができる。
【0022】
その理由は、印刷対象としての文書データを含む印刷データに基づいて印刷を行う画像形成装置の制御部に、ハードウェア又はソフトウェアとして、第1のデータ解析部と第2のデータ解析部と記憶部と印刷設定制御部と印刷制御部とを設ける。印刷設定制御部は、第1のデータ解析部で解析した、文書データ本体外に記述された第1の印刷設定情報(例えば、PJLコマンド)に基づき記憶部の所定の記憶領域に予め記憶されたデフォルトの印刷設定情報を設定項目毎に更新する。その後、第2のデータ解析部で解析した、文書データ本体に含まれる第2の印刷設定情報(例えば、XPSデータのPrint Ticket)に基づき更新された印刷設定情報のうち第1の印刷設定情報により更新された項目以外について更に更新する。そのため、文書データ本体外に記述された第1の印刷設定情報と文書データ本体に含まれる第2の印刷設定情報とが異なる場合であっても、第1の印刷設定情報が第2の印刷設定情報によって上書きされてしまうという不都合を防止することができるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
背景技術で示したように、ダイレクト印刷が可能な文書データとしてXPSデータが知られている。このXPSデータは、図7に示すように、必須な要素とオプションで追加可能な要素とで構成される。必須要素は、文書全体の情報を格納するFixed Document Sequenceと、ページ全体の情報を格納するFixed Documentと、各ページの情報を格納するFixed Pageと、フォントを格納するFontと、画像を格納するImageなどで構成される。また、オプション要素は、デジタル署名を格納するSignature Partと、job-level、Document-level、Page-levelの印刷設定情報を格納するPrint Ticketとで構成される。
【0024】
上記構造のXPSデータを用いてダイレクト印刷する場合、XPSデータに例えばPJL形式で記述されたコマンドが付加された印刷データが送信される。そして、画像形成装置では、PJLコマンドの印刷設定情報を所定の記憶領域に記憶した後、XPSデータを読み込んでPrint Ticketの印刷設定情報を上記所定の記憶領域に上書きして記憶する。そのため、PJLコマンドで印刷設定を行っても、XPSデータのPrint Ticketの印刷設定に従って印刷が実行されてしまうという問題が生じる。
【0025】
この問題に対して、XPSデータを作成する際に、Print Ticketを編集してPJLコマンドと同じ印刷設定情報を記述したり、Print Ticketを破棄したりするなどして、PJLコマンドの印刷設定情報が上書きされないようにする方法が考えられる。
【0026】
しかしながら、XPSデータは圧縮して作成されため、XPSデータを見ても、どのような印刷設定情報が記述されているかを判別することはできない。また、XPSデータのPrint Ticketを編集するためには、圧縮されたXPSデータを一旦解凍し、Print Ticketを編集した後、再びXPSデータを圧縮しなければならず、このような処理を実行するためには専用のアプリケーションを用いなければならない。更に、XPSデータは上述したように複雑な構造となっており、専用のアプリケーションを用いたとしても、XPSデータの中からPrint Ticketを見つけることは困難であり、このような操作をユーザに求めるのは酷である。
【0027】
そこで、本実施形態では、XPSデータを編集するのではなく、画像形成装置で、XPSデータのPrint Ticketの印刷設定情報よりもPJLコマンドの印刷設定情報の方が優先されるように制御する。
【0028】
この制御を行うために、画像形成装置に、ハードウェア又はソフトウェアとして、データ解析部とPrint Ticketデータ解析部と印刷設定制御部とを設け、印刷設定制御部では、PJLコマンドに記述された印刷設定情報を所定の記憶領域に書き込む際に、更新の許可/不許可を指示する更新フラグを付加する。そして、Print Ticketに記述された印刷設定情報を書き込む際に、この更新フラグを参照して書き込み制御を行う。これにより、PJLコマンドの印刷設定情報を書き込む際に、更新フラグを更新不可に設定しておけば、Print Ticketの印刷設定情報が上書きされないようにすることができるため、上記問題を回避することができる。
【実施例】
【0029】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の一実施例に係る画像形成装置及び印刷制御方法並びに制御プログラムについて、図1乃至図6を参照して説明する。図1は、本実施例の印刷制御システムの全体構成を模式的に示す図である。また、図2は、画像形成装置の具体的構造を示す図であり、図3は、画像形成装置の制御部の構成を示すブロック図である。また、図4及び図5は、本実施例の画像形成装置の動作を模式的に示す図であり、図6は、本実施例の画像形成装置における印刷制御手順を示すフローチャート図である。
【0030】
図1に示すように、本実施例の印刷制御システム10は、コンピュータ端末などのホスト20と、プリンタやデジタル複合機などの画像形成装置30とを備え、これらは、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)などの通信ネットワークを介して接続される。ホスト20は、XPSなどの規格に基づいて文書を作成するアプリケーションを備え、そのアプリケーションで文書を作成し、ページ記述言語で記述された印刷データを送信する。また、ダイレクトプリント機能を利用する場合においては、XPS形式の文書(XPS文書)或いはPDF(Portable Document Format)形式の文書(PDF文書)を文書データとして印刷データに含ませて送信する。画像形成装置30は、印刷データに含まれる文書データを印刷する。
【0031】
上記画像形成装置30の具体的な構造は図2のようになる。図2において、100は装置本体である。101はプリンタコントローラユニットであり、ホスト20から送信されたデータをビデオ信号に変換し、レーザユニット107に出力する。レーザユニット107は、ビデオ信号に応じてレーザ光を発射し、静電ドラム106上に静電潜像を作成する。この潜像は、プリントユニット105によりトナー像として顕像化された後、記録用紙に転写される。記録用紙は、用紙カセット102に格納されており、給紙ローラ103aによってピックされると、搬送ローラ103bおよび搬送ベルト104によって搬送され、トナー像が転写される。転写後は、トナー像が定着器108により記録用紙上に定着され、この記録用紙は搬送ローラ103cにより排出される。また、109は操作パネルであり、装置を操作するためのスイッチなどが配置されている。110は電源であり、装置に電源を供給する。
【0032】
なお、図2では、YMCK4色毎に静電ドラムを持つ構成(タンデム方式)の画像形成装置30を示しているが、静電ドラムを1つ搭載する構成(1ドラム方式)でも適用可能である。
【0033】
このような構造の画像形成装置30の主要部の構成をブロック図で示すと図3のようになり、プリンタコントローラユニット101に相当する制御部31と、印刷を実行するエンジン35とに分類される。
【0034】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)32と、RAM(Random Access Memory)33と、ROM(Read Only Memory)34などで構成され、CPU32はROM34に記憶されたプログラムをRAM33に展開しこれを実行する。
【0035】
RAM33には、画像形成装置30の動作に必要な各種データが記憶される。本実施例では、印刷設定情報保持領域33aには、画像形成装置30にデフォルト設定された印刷設定情報、PJLコマンドに記述された印刷設定情報、XPSデータのPrint Ticketに記述された印刷設定情報が格納される。
【0036】
ROM34には、画像形成装置30の動作に必要な各種プログラムが記憶される。本実施例では、コンピュータを、データ解析部34a、Print Ticket解析部34b、印刷設定制御部34c、印刷制御部34d、印刷部34eなどとして動作させるプログラムが記憶されている。
【0037】
データ解析部34aは、ホスト20から受信した印刷データを解析し、印刷データの先頭に位置する、印刷設定情報が記述されたコマンド(本実施例ではPJL形式で記述されたコマンドとし、以下においてPJLコマンドと称す。)を読み取り、その印刷設定情報を印刷設定制御部34cに送信する。また、文書データとしてのXPSデータを解析し、このXPSデータ中にPrint Ticketが付加されている場合は、Print TicketをPrint Ticket解析部34bに送信する。
【0038】
Print Ticket解析部34bは、データ解析部34aから受け取ったPrint Ticketを解析し、その印刷設定情報を印刷設定制御部34cに送信する。
【0039】
印刷設定制御部34cは、データ解析部34aから受け取ったPJLコマンドの印刷設定情報を印刷設定情報保持領域33aに格納する。その際、各設定項目に更新可/更新不可を規定する情報(更新フラグと呼ぶ。)を付加し、その更新フラグを更新不可に設定して格納する。また、Print Ticket解析部34bから受け取ったPrint Ticketの印刷設定情報を印刷設定情報保持領域33aに格納する。その際、各設定項目の更新フラグの更新可/更新不可を判断し、更新フラグが更新不可に設定されていない項目のみ、Print Ticketの印刷設定情報を格納する。
【0040】
印刷制御部34dは、印刷設定情報保持領域33aの印刷設定情報を参照して印刷部34eに印刷を指示する。
【0041】
印刷部34eは、各ページのビットマップ画像を作成し、エンジン35に印刷を実行させる。
【0042】
なお、図3では、上記各部をプログラムとして構成する場合を示しているが、上記各部は画像形成装置30にハードウェアとして設けてもよい。
【0043】
次に、上記制御部31の動作について、図4乃至図6を参照して説明する。
【0044】
図4は、印刷データ受信前(デフォルト状態)を示しており、印刷設定情報保持領域33aの各設定項目には、[1]に示すように、デフォルト値(内部で保持している値)が格納されている。ここでは、各設定項目として、印刷部数を規定する”Copies”と両面印刷を指示する”Duplex”と、用紙サイズを規定する”paper”とが規定され、”Copies”は”1”に、”Duplex”は”OFF”に、”paper”は”A4”に設定されている。また、各設定項目の更新可/更新不可を示す更新フラグには、「更新可」を示す”0”がデフォルト値として格納されている。これらのデフォルト値は、画像形成装置30の起動時等において、印刷設定制御部34cによって設定される。
【0045】
このようなデフォルト状態において、XPSデータにPJLコマンドが付加された印刷データを受信した場合の動作を図5及び図6に示す。
【0046】
まず、図6のステップS101で、データ解析部34aは、ホスト20から印刷データを読み込む。この印刷データは、画像形成装置30のHDD(Hard Disk Drive)などから読み込んでもよいし、ネットワークに接続される他のホストやサーバなどから読み込んでもよい。
【0047】
次に、ステップS102で、データ解析部34aは、印刷データにPJLコマンドが付加されているかを判断する。
【0048】
PJLコマンドが付加されていない場合はステップS106にスキップする。一方、PJLコマンドが付加されている場合は、ステップS103で、データ解析部34aは、PJLコマンドを解析し、その印刷設定情報を印刷設定制御部34cに送信する。
【0049】
次に、ステップS104で、印刷設定制御部34cは、図5の[2]に示すように、PJLコマンドの印刷設定情報を印刷設定情報保持領域33aに格納する。このとき、ステップS105で、PJLコマンドの各設定項目(ここでは、”Copies”と”Duplex”)の更新フラグを「更新不可」に変更する。これにより「更新不可」に設定された項目については、以降、印刷設定情報が指定されても反映されない動作となる。このように、XPSデータ本体外にPJLコマンドとして印刷設定情報が記述されている場合には、印刷設定情報保持領域33aに予め記憶されたデフォルトの印刷設定情報が、設定項目毎に、PJLコマンドで指定された印刷設定情報により更新されることとなる。
【0050】
続いて、ステップS106で、データ解析部34aは、印刷データにXPSデータがあるかを判断し、XPSデータがない場合は印刷できないため、処理を終了する。
【0051】
一方、XPSデータがある場合は、ステップS107で、データ解析部34aは、XPSデータの解析を行い、XPSデータ中にPrint Ticketがあるかを判断し、Print Ticketがない場合はステップS111にスキップする。
【0052】
一方、Print Ticketがある場合は、データ解析部34aは、Print TicketをPrint Ticket解析部34bに送信し、ステップS108で、Print Ticket解析部34bは、Print Ticketを解析し、その印刷設定情報を印刷設定制御部34cに送信する。
【0053】
次に、ステップS109で、印刷設定制御部34cは、印刷設定情報保持領域33aに格納された各設定項目の更新フラグをチェックし、更新フラグが「更新可」に設定されている設定項目があるかを判断し、更新フラグが「更新可」の設定項目がなければステップS111にスキップする。
【0054】
一方、更新フラグが「更新可」の設定項目があれば、ステップS110で、印刷設定制御部34cは、図5の[3]に示すように、Print Ticketの各設定項目の内、更新フラグが「更新可」の設定項目に対して、その印刷設定情報を印刷設定情報保持領域33aに格納する。
【0055】
ここでは、”Copies”と”Duplex”については、更新フラグが「更新不可」に設定されているため、Print Ticketの印刷設定情報は格納しない。一方、”paper”については、更新フラグが「更新可」に設定されているため、デフォルトで設定されている”A4”をPrint Ticketの印刷設定情報である”Letter”に更新する。
【0056】
次に、ステップS111で、印刷制御部34dは、上記印刷設定情報保持領域33aに格納された印刷設定情報を参照して、印刷部34eに印刷を指示し、印刷部34eはエンジン35に印刷処理を実行させる。
【0057】
このように、印刷設定情報保持領域33aは、PJLコマンドで先に指定された設定項目については、PJLコマンドの印刷設定情報が保持され、それ以外はPrint Ticketの印刷設定情報が保持されており、その設定に従った印刷動作となる。すなわち、PJLコマンドで”Copies”=”3”、”Duplex”=”ON”と指定し、Print Ticketで”Copies”=”1”、”Duplex”=”OFF”と指定したが、最終的に”Copies”=”3”、”Duplex”=”ON”で動作する。
【0058】
なお、図4及び図5では、印刷設定情報の設定項目として、”Copies”と”Duplex”と”paper”の3つを例にして説明したが、設定項目はPJLコマンド又はPrint Ticketで設定可能な項目を含んでいればよい。また、図4及び図5では、PJLコマンドで指定されていない設定項目(ここでは、”paper”)に関しては更新フラグをデフォルトのまま「更新可」としたが、PJLコマンドで指定されていない設定項目に対しても、ステップS105で、更新フラグを「更新不可」に設定し、デフォルトの設定値(ここでは、”A4”)で印刷されるようにしてもよい。
【0059】
また、上記説明では、印刷設定情報の各設定項目に対して、更新フラグをデフォルト値として「更新可」に設定する構成としたが、デフォルトでは印刷設定情報の各設定項目に対して更新フラグを付加せず、PJLコマンドの印刷設定情報を書き込む際に、その設定項目に対して更新フラグを付加してもよい。その場合、印刷設定制御部34cは、Print Ticketの各設定項目の内、更新フラグが付加されていない設定項目に対してのみ、その印刷設定情報を印刷設定情報保持領域33aに格納するようにすればよい。
【0060】
また、上記実施例では、XPSデータにPJLコマンドを付加した印刷データを送信する構成としたが、例えば、PJLコマンドで印刷設定情報を設定した後、その設定で複数のXPSデータの印刷を行う場合には、XPSデータとPJLコマンドとを別々に送信する構成としてもよい。その場合、印刷設定制御部34cは、印刷設定情報保持領域33aにPJLコマンドの印刷設定情報を格納した後、次のPJLコマンドを受信するまで、その印刷設定情報を保持すればよい。
【0061】
また、本実施例では、XPSデータにPJLコマンドを付加する構成としたが、コマンドの形式はPJLに限定されない。また、本実施例では、XPSデータの先頭にPJLコマンドを付加する構成としたが、PJLコマンドを付加する位置は先頭に限らず、画像形成装置30がXPSデータよりも先に読み込む位置に付加されていればよい。また、上記実施例では、XPSデータの印刷制御に関して記載したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、印刷設定情報が記述可能な任意の形式の文書データに対して同様に適用することができる。
【0062】
また、上記実施例では、画像形成装置30で印刷設定を行う構成としたが、例えば、ネットワークにRIP(Raster Image Processor)コントローラが接続されている場合は、画像形成装置30の制御部31の機能(特に、データ解析部34a、Print Ticket解析部34b、印刷設定制御部34c、印刷制御部34d)をRIPコントローラに持たせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、データ本体に印刷設定情報が含まれる文書データ、特に、XPSデータを用いた印刷を行う画像形成装置及びその印刷制御方法並びに制御プログラムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施例に係る印刷制御システムの構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施例に係る画像形成装置の具体的構造を示す図である。
【図3】本発明の一実施例に係る画像形成装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施例に係る画像形成装置の動作(デフォルト状態)を示す図である。
【図5】本発明の一実施例に係る画像形成装置の動作(印刷データ受信時)を示す図である。
【図6】本発明の一実施例に係る画像形成装置における印刷制御手順を示すフローチャート図である。
【図7】XPSデータの構成例を示す図である。
【図8】従来の画像形成装置の動作(デフォルト状態)を示す図である。
【図9】従来の画像形成装置の動作(印刷データ受信時)を示す図である。
【図10】従来の画像形成装置における印刷制御手順を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0065】
10 印刷制御システム
20 ホスト
30 画像形成装置
31 制御部
32 CPU
33 RAM
33a 印刷設定情報保持領域
34 ROM
34a データ解析部
34b Print Ticket解析部
34c 印刷設定制御部
34d 印刷制御部
34e 印刷部
35 エンジン
100 装置本体
101 プリンタコントローラユニット
102 用紙カセット
103a 給紙ローラ
103b、103c 搬送ローラ
104 搬送ベルト
105 プリントユニット
106 静電ドラム
107 レーザユニット
108 定着器
109 操作パネル
110 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象としての文書データを含む印刷データに基づいて印刷を行う画像形成装置において、
前記印刷データに含まれ前記文書データ本体外に記述された第1の印刷設定情報を解析する第1の解析部と、
前記文書データ本体に含まれる第2の印刷設定情報を解析する第2の解析部と、
印刷設定情報を記憶する所定の記憶領域を有する記憶部と、
前記第1の印刷設定情報に基づき前記記憶領域に予め記憶されたデフォルトの印刷設定情報を設定項目毎に更新した後、前記第2の印刷設定情報に基づき前記更新された印刷設定情報のうち前記第1の印刷設定情報により更新された項目以外について更に更新することを許容する印刷設定制御部と、
前記所定の記憶領域に記憶された印刷設定情報に従って前記文書に基づく印刷を制御する印刷制御部と、を少なくとも備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記印刷設定制御部は、
前記第1の印刷設定情報に基づき前記デフォルトの印刷設定情報を、設定項目毎に更新すると共に更新された設定項目について更新可/更新不可を示すフラグを更新不可に設定若しくは更新不可を示すフラグを付加して前記更新された印刷設定情報とし、
前記第2の印刷設定情報のうち前記フラグが更新可に設定されている設定項目若しくは前記更新不可を示すフラグが付加されていない設定項目について、前記更新された印刷設定情報所定の更なる更新を許容する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記印刷設定制御部は、各々の前記設定項目に対応する前記フラグを、デフォルト状態では更新可に設定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記印刷設定制御部は、前記第1の印刷設定情報に含まれない設定項目に対して、前記フラグを更新不可に設定若しくは前記更新不可を示すフラグを付加する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の印刷設定情報は、PJLコマンドに記述された情報である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記文書データはXPSデータであり、前記第2の印刷設定情報は、前記XPSデータのPrint Ticketに記述された情報である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の画像形成装置。
【請求項7】
印刷対象としての文書データを含む印刷データを送信するホストと、受信した前記印刷データに基づいて印刷を行う画像形成装置と、がネットワークで接続されるシステムにおける印刷制御方法であって、
前記画像形成装置は、
前記ホストから受信した前記印刷データに含まれ前記文書データ本体外に記述された第1の印刷設定情報を解析し、前記第1の印刷設定情報に基づき所定の記憶領域に予め記憶されたデフォルトの印刷設定情報を設定項目毎に更新する第1の処理と、
前記文書データ本体に含まれる第2の印刷設定情報を解析し、前記第2の印刷設定情報に基づき前記更新された印刷設定情報のうち前記第1の印刷設定情報により更新された設定項目以外について更に更新することを許容する第2の処理と、
前記所定の記憶領域に記憶された印刷設定情報に従って前記印刷データに基づく印刷を制御する第3の処理と、を少なくとも実行する、
ことを特徴とする印刷制御方法。
【請求項8】
前記第1の処理においては、前記第1の印刷設定情報に基づき前記デフォルトの印刷設定情報を、設定項目毎に更新すると共に更新された設定項目について更新可/更新不可を示すフラグを更新不可に設定若しくは更新不可を示すフラグを付加して前記更新された印刷設定情報とし、
前記第2の処理においては、前記第2の印刷設定情報のうち前記フラグが更新可に設定されている設定項目若しくは前記更新不可を示すフラグが付加されていない設定項目について、前記更新された印刷設定情報所定の更なる更新を許容する、
ことを特徴とする請求項7に記載の印刷制御方法。
【請求項9】
各々の前記設定項目に対応する前記フラグを、デフォルト状態では更新可に設定する、
ことを特徴とする請求項8に記載の印刷制御方法。
【請求項10】
前記第1の処理では、前記第1の印刷設定情報に含まれない設定項目に対して、前記フラグを更新不可に設定若しくは前記更新不可を示すフラグを付加する、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の印刷制御方法。
【請求項11】
前記第1の印刷設定情報は、PJLコマンドに記述された情報である、
ことを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一に記載の印刷制御方法。
【請求項12】
前記文書データはXPSデータであり、前記第2の印刷設定情報は、前記XPSデータのPrint Ticketに記述された情報である、
ことを特徴とする請求項7乃至11のいずれか一に記載の印刷制御方法。
【請求項13】
印刷対象としての文書データを含む印刷データに基づいて印刷を行う画像形成装置で動作する制御プログラムであって、
コンピュータを、
前記印刷データに含まれ前記文書データ本体外に記述された第1の印刷設定情報を解析する第1の解析部、
前記データ本体に含まれる第2の印刷設定情報を解析する第2の解析部、
印刷設定情報を記憶する所定の記憶領域を有する記憶部、
前記第1の印刷設定情報に基づき前記記憶領域に予め記憶されたデフォルトの印刷設定情報を設定項目毎に更新した後、前記第2の印刷設定情報に基づき前記更新された印刷設定情報のうち前記第1の印刷設定情報により更新された項目以外について更に更新することを許容する印刷設定制御部、
前記所定の記憶領域に記憶された印刷設定情報に従って印刷を制御する印刷制御部、
として機能させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項14】
前記印刷設定制御部は、
前記第1の印刷設定情報に基づき前記デフォルトの印刷設定情報を、設定項目毎に更新すると共に更新された設定項目について更新可/更新不可を示すフラグを更新不可に設定若しくは更新不可を示すフラグを付加して前記更新された印刷設定情報とし、
前記第2の印刷設定情報のうち前記フラグが更新可に設定されている設定項目若しくは前記更新不可を示すフラグが付加されていない設定項目について、前記更新された印刷設定情報所定の更なる更新を許容する、
ことを特徴とする請求項13に記載の制御プログラム。
【請求項15】
前記印刷設定制御部は、各々の前記設定項目に対応する前記フラグを、デフォルト状態では更新可に設定する、
ことを特徴とする請求項14に記載の制御プログラム。
【請求項16】
前記印刷設定制御部は、前記第1の印刷設定情報に含まれない設定項目に対して、前記フラグを更新不可に設定若しくは前記更新不可を示すフラグを付加する、
ことを特徴とする請求項14又は15に記載の制御プログラム。
【請求項17】
前記第1の印刷設定情報は、PJLコマンドに記述された情報である、
ことを特徴とする請求項13乃至16のいずれか一に記載の制御プログラム。
【請求項18】
前記文書データはXPSデータであり、前記第2の印刷設定情報は、前記XPSデータのPrint Ticketに記述された情報である、
ことを特徴とする請求項13乃至17のいずれか一に記載の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−179052(P2009−179052A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22788(P2008−22788)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】