説明

画像形成装置及び情報処理装置

【課題】双方向印刷によって色差、位置ずれに伴って画像品質が低下するが、片方向印刷が多くなると印刷速度を向上できない。
【解決手段】当該スキャンの描画データを生成し、当該スキャンが双方向復路か否かを判別し、双方向復路であれば、当該スキャン及び次スキャンの同じ主走査方向位置に描画データがあれば、当該スキャンの描画データの反転を行わないで、往路用の描画データとし、当該スキャン及び次スキャンの同じ主走査方向位置に描画データがなければ、当該スキャンの秒画データの反転を行って復路用の描画データとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及び情報処理装置に関し、液滴を吐出する記録ヘッドを備える双方向印刷が可能な画像形成装置及びこの画像形成装置に対する印刷データを生成する情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを着弾させて画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体、樹脂などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。また、「用紙」とは、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
シリアル型画像形成装置においては、キャリッジの双方向走査で記録(双方向印刷)を行うことで、片方向走査だけで記録(片方向印刷)を行う場合よりも、キャリッジの移動距離を短くでき、また印刷速度(記録速度)の高速化を図れる。
【0005】
しかしながら、カラー印刷を行う場合、キャリッジの主走査方向に例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの順にインク滴を吐出するヘッド(又はノズル)を搭載しているとすると、往路の印刷ではシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの順のインクが重ね合わされるが、復路の印刷ではブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの順にインクが重ね合わされることになる。このようにインクの重ね合わせ順序が異なると、同じ4色を混ぜても色味が変化して見える(双方向色差が発生する。)
【0006】
そこで、従来、キャリッジの1走査(スキャン)単位のデータが単色か否かの判別結果に基づいて片方向印刷を行なうか双方向印刷を決定するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−249469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に開示の構成にあっては、カラー画像を印刷する場合には殆ど片方向印刷になって印刷速度が低下し、また、双方向印刷を行なう場合に主走査方向の滴着弾位置精度から生じる印字位置ずれ(例えば縦線が往路と復路を境にして数ドット分ずれる)が発生する。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、印字品質を保ちながら印刷速度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドが搭載されて移動走査されるキャリッジを備え、双方向印刷が可能な画像形成装置において、
前記キャリッジの当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータであるときには片方向印刷での印刷制御を行い、前記キャリッジの当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータでないときには双方向印刷での印刷制御を行う手段を備えている
構成とした。
【0011】
ここで、前記隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータであるか否かを、当該スキャンの最下1ラインと次スキャンの最上の1ラインのデータが同じ主走査位置にあるか否かで判定する構成とできる。
【0012】
また、前記隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータであるか否かを、当該スキャンの最上下1ラインにデータがあるか否かで判定する構成とできる。
【0013】
本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドが搭載されて移動走査されるキャリッジを備え、双方向印刷が可能な画像形成装置において、
印刷する描画オブジェクトの境目を検出し、前記検出した境目間のデータについて双方向印刷での印刷制御を行う手段を備えている
構成とした。
【0014】
本発明に係る情報処理装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドが搭載されて移動走査されるキャリッジを備え、双方向印刷が可能な画像形成装置に対する印刷データを生成する情報処理装置において、
前記キャリッジの当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータであるときには片方向印刷用の印刷データを生成し、前記キャリッジの当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータでないときには双方向印刷用の印刷データを生成する手段を備えている
構成とした。
【0015】
本発明に係る情報処理装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドが搭載されて移動走査されるキャリッジを備え、双方向印刷が可能な画像形成装置に対する印刷データを生成する情報処理装置において、
印刷する描画オブジェクトの境目を検出し、前記検出した境目間のデータについて双方向印刷用の印刷データを生成する手段を備えている
構成とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る画像形成装置によれば、キャリッジの当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータであるときには片方向印刷での印刷制御を行い、キャリッジの当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータでないときには双方向印刷での印刷制御を行う手段を備えている構成としたので、印字品質を保ちながら印刷速度を向上することができる。
【0017】
本発明に係る画像形成装置によれば、印刷する描画オブジェクトの境目を検出し、検出した境目間のデータについて双方向印刷での印刷制御を行う手段を備えている構成としたので、印字品質を保ちながら印刷速度を向上することができる。
【0018】
本発明に係る情報処理装置によれば、キャリッジの当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータであるときには片方向印刷用の印刷データを生成し、キャリッジの当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータでないときには双方向印刷用の印刷データを生成する手段を備えている構成としたので、印字品質を保ちながら印刷速度を向上することができる。
【0019】
本発明に係る情報処理装置によれば、印刷する描画オブジェクトの境目を検出し、検出した境目間のデータについて双方向印刷用の印刷データを生成する手段を備えている構成としたので、印字品質を保ちながら印刷速度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用する画像形成装置としてのインクジェット記録装置の概略構成を示す平面説明図である。
【図2】同じく正面説明図である。
【図3】同装置の制御部の概要を示すブロック説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態の説明に供するブロック説明図である。
【図5】同じくプリンタドライバの処理の説明に供するブロック説明図である。
【図6】隣り合うスキャン間に跨る画像の説明に供する説明図である。
【図7】同じく隣り合うスキャン間に跨る画像の説明に供する説明図である。
【図8】同実施形態のデータ生成処理の第1例の説明に供するフロー図である。
【図9】同例の説明に供する説明図である。
【図10】同実施形態のデータ生成処理の第2例の説明に供するフロー図である。
【図11】本発明の第2実施形態の説明に供する説明図である。
【図12】同じく同実施形態の作用説明に供する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明を適用する画像形成装置としてのインクジェット記録装置の概要について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同インクジェット記録装置の概略構成を示す平面説明図、図2は同じく正面説明図である。
このインクジェット記録装置は、左右の側板50L,50R間に横架した主ガイドロッド1及び図示しない従ガイド部材でキャリッジ3を摺動自在に保持し、主走査モータ5によって、駆動プーリ6と従動プーリ7間に渡したタイミングベルト8を介して主走査方向に移動走査する。
【0022】
このキャリッジ3には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド4y、4m、4c、4k(区別しないときは「記録ヘッド4」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0023】
記録ヘッド4を構成する液体吐出ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0024】
一方、用紙を搬送するために、用紙を静電吸着して記録ヘッド4に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト12を備えている。この搬送ベルト12は、無端状ベルトであり、搬送ローラ13とテンションローラ14との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成し、周回移動しながら帯電ローラ15によって帯電(電荷付与)される。
【0025】
また、搬送ベルト12は、副走査モータ16によってタイミングベルト17及びタイミングプーリ18を介して搬送ローラ13が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0026】
さらに、キャリッジ3の主走査方向の一方側には搬送ベルト12の側方に記録ヘッド4の維持回復を行う維持回復機構21が配置され、他方側には搬送ベルト12の側方に記録ヘッド4から空吐出を行う空吐出受け21がそれぞれ配置されている。
【0027】
なお、維持回復機構20は、例えば記録ヘッド4のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングする4個のキャップ部材31、ノズル面を払拭するワイパ部材32、画像形成に寄与しない液滴(空吐出滴)を受ける空吐出受け33などで構成されている。
【0028】
また、キャリッジ3の主走査方向に沿って両側板間に、所定のパターンを形成したエンコーダスケール23を張装し、キャリッジ23にはエンコーダスケール23のパターンを読取る透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ24を設け、これらのエンコーダスケール23とエンコーダセンサ24によってキャリッジ23の移動を検知するリニアエンコーダ(主走査エンコーダ)を構成している。
【0029】
また、搬送ローラ13の軸には高分解能のコードホール25を取り付け、このコードホイール25に形成したパターンを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ26を設けて、これらのコードホイール25とエンコーダセンサ26によって搬送ベルト12の移動量及び移動位置を検出するロータリエンコーダ(副走査エンコーダ)を構成している。
【0030】
このように構成したこの画像形成装置においては、図示しない給紙トレイから用紙が帯電された搬送ベルト12上に給紙されて吸着され、搬送ベルト12の周回移動によって用紙が副走査方向に搬送される。そこで、キャリッジ3を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド4を駆動することにより、停止している用紙にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙を図示しない排紙トレイに排紙する。
【0031】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図3を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部200は、この装置全体の制御を司るCPU201と、CPU201が実行する各種プログラム、その他の固定データを格納するROM202と、画像データ等を一時格納するRAM203と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ204と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC205とを備えている。
【0032】
また、この制御部200は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F206と、記録ヘッド7を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動波形を生成する駆動波形生成手段を含む印刷制御部207と、キャリッジ3側に設けた記録ヘッド7を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)208と、主走査モータ4及び副走査モータ31を駆動するためのモータ駆動部210と、帯電ローラ34にACバイアスを供給するACバイアス供給部212と、エンコーダセンサ43、35からの各検出信号、ドット形成位置のズレを来たす要因としての環境温度を検出する温度センサ215などの各種センサからの検出信号を入力するためのI/O213などを備えている。また、この制御部200には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル214が接続されている。
【0033】
ここで、制御部200は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの画像データ等をケーブル或いはネットを介してI/F206で受信する。
【0034】
そして、制御部200のCPU201は、I/F206に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC205にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データをヘッド駆動制御部207からヘッドドライバ208に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータ(印刷データ)の生成は、後述するようにホストとなる情報処理装置側のプリンタドライバで行っている。
【0035】
印刷制御部207は、上述した画像データをシリアルデータでヘッドドライバ208に転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッドドライバ208に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバに与える駆動波形選択手段を含み、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッドドライバ208に対して出力する。
【0036】
ヘッドドライバ208は、シリアルに入力される記録ヘッド7の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部207から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を選択的に記録ヘッド7の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば前述したような圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド7を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0037】
また、CPU201は、リニアエンコーダを構成するエンコーダセンサ24からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて主走査モータ5に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介して主走査モータ4を駆動する。同様に、ロータリエンコーダを構成するエンコーダセンサ26からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて副走査モータ16対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介しモータドライバを介して副走査モータ61を駆動する。
【0038】
なお、制御部200には、各種センサ215からの検知信号が入力され、また、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル214が接続されている。
【0039】
次に、本発明の第1実施形態について図4を参照して説明する。なお、図4同実施形態の説明に供する印刷を行うためのデータの流れの説明図である。
本発明に係る情報処理装置であるホスト101側のアプリケーションプログラム102から印刷データをプリンタドライバ103が受け取り、プリンタドライバ103はページレンダラ104を用いて印刷データのビットマップデータを作成し、IJレンダラ105はこのビットマップデータに基づいて前述した画像形成装置(プリンタ)111のヘッドのノズル列数や解像度、インターレース、マルチパスを考慮し、キャリッジ3の1走査での印写単位のデータを形成し、走査(スキャン)方向を判定して最終的なスキャンデータを生成して、このスキャンデータをUSBやセントロなどのI/Fを通じてプリンタ111に転送する。
【0040】
プリンタ111側では、制御部200で構成されるプリンタコントローラ112のパーサ部113で受け取ったデータが印刷データか否か、印刷ジョブの情報か否かなどを判別し、印刷するためにビットマップデータを、ビデオ転送部114を通じてプリンタエンジン115に転送し、ヘッドを駆動制御して印写を行わせる。
【0041】
ここで、プリンタドライバ103のIJレンダラ105は、図5に示すように、ページレンダラ104からのビットマップデータに基づいて、ライン検出131、インターレース132、オーバーラップ133、マルチパス134を考慮して、スキャン単位の4色分のビットマップイメージを作成した上で、双方向/片方向判断135を行って、この双方向/片方向判断135の判別結果に応じてスキャン反転136でそのビットマップイメージの反転(スキャン反転)を行う。
【0042】
このように、プリンタドライバ103内では画像データを最終的に1スキャン単位の描画データ(走査データ、スキャンデータ)として生成し、このとき当該スキャンデータが双方向印字で且つ復路印字の場合にはビットマップイメージを左右に反転して最終的なスキャンデータとするが、この実施形態では、ビットマップイメージを左右反転するか否かを、作成したビットマップイメージに各スキャン間に跨る描画オブジェクトのデータが存在するか否かの判別結果に基づいて、描画オブジェクトが当該スキャン(現スキャン)内に収まっている場合のみ当該スキャン単位のビットマップイメージの反転を行うようにしている。
【0043】
つまり、情報処理装置としてのホスト111のプログラムとしてのプリンタドライバ103では、キャリッジ3の当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータであるときには片方向印刷用の印刷データを生成し、キャリッジ3の当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータでないときには双方向印刷用の印刷データを生成する。
【0044】
これを受けて、画像形成装置であるプリンタ111は、キャリッジ3の当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータであるときには片方向印刷での印刷制御を行い、キャリッジ3の当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータでないときには双方向印刷での印刷制御を行う。
【0045】
すなわち、キャリッジ走査によって画像を形成する場合、キャリッジ走査の双方向走査で記録(双方向印刷)を行うことで、片方向走査だけで記録(片方向印刷)を行う場合よりも、キャリッジの移動距離を短くでき、また印刷速度(記録速度)の高速化を図れるが、反面、双方向印刷を行う場合、インク着弾順が異なることにより発生する色差、キャリッジ走査方向(主走査)のメカ的位置精度に由来する、印字位置ズレ等、画像品質上の問題が発生する。
【0046】
この場合、インクの着弾順による色差や、キャリッジのメカ的位置精度による、主走査方向の印字位置ズレは、通常かなり軽微である。しかし、人の目は、連続している物の変化には敏感なため、バラバラに存在していれば、同一と認識されていたオブジェクトも隣接した場合には、違う物として認識されてしまうことになる。
【0047】
例えば、図6(a)、(b)は、いずれも縦線300a、300bが真中付近で、左に1ドット分ずれている場合を示しているが、同図(a)に示すように、真中付近が途切れている場合は1ドット分ずれていることの判別が困難であるのに対し、同図(b)に示すように、連続している場合には縦線300が明らかに途中からずれていることを容易に認識できる。
【0048】
同様に、図7(a)に示すように、上下のオブジェクト301a、301bに色の差がある場合、オブジェクトが離れていれば、色の差は大きくなく(一見同じ色のオブジェクトに見える)が、同図(b)に示すように、隣接すると、容易に色の差が認識される。
【0049】
そこで、上述したように、隣り合うスキャンに跨る描画オブジェクトのデータについては片方向で印刷することによって印字品質を確保し、隣り合うスキャンに跨らない描画オブジェクトのデータについては双方向で印刷することで印刷速度を向上することができる。
【0050】
次に、描画オブジェクトのデータが隣り合うスキャン間に跨っているか否かの判定を含む描画データの生成処理の第1例について図8のフロー図を参照して説明する。
まず、当該スキャンの描画データを生成し、当該スキャンが双方向復路か否かを判別し、双方向復路であれば、次のようにして当該スキャンの描画データの反転を行うか否かの判定処理を行う。
【0051】
すなわち、当該スキャンの最下ライン上に描画データがあるか否かを判別し、当該スキャンの最下ライン上に描画データがあるときには次スキャンの描画データを生成して、次スキャンの最上ラインに描画データがあるか否かを判別し、次スキャンの最上ラインに描画データがあるときには、当該スキャン及び次スキャンの主走査方向位置が同じであるか否かを判別する。
【0052】
このようにして、当該スキャン及び次スキャンの同じ主走査方向位置に描画データがあれば、当該スキャンの描画データの反転を行わないで、往路用の描画データとし、当該スキャン及び次スキャンの同じ主走査方向位置に描画データがなければ、当該スキャンの秒画データの反転を行って復路用の描画データとする。
【0053】
例えば、図9に示すように、第1ないし第4スキャンで画像302、303を印刷するとき、画像302については、第1スキャンの最下ラインと第2スキャンの最上ラインに主走査方向位置が同じデータが存在することになるので、第1、第2スキャンに跨る画像(描画オブジェク)となる。また、画像303については第3スキャン内に収まっているので、隣り合うスキャンに跨る画像(描画オブジェクト)ではない。
【0054】
次に、描画オブジェクトのデータが隣り合うスキャン間に跨っているか否かの判定を含む描画データの生成処理の第2例について図10のフロー図を参照して説明する。
ここでは、当該スキャンの描画データの最上下ライン上に描画データがあるか否かを判別して、描画データがあれば、当該スキャンの描画データの反転を行わないで、往路用の描画データとし、描画データがなければ、当該スキャンの秒画データの反転を行って復路用の描画データとする。
【0055】
つまり、ここでは当該スキャン(1走査分)内に描画データが収まっているか否かによって片方向とすると双方向とするかを判定するようにしている。次スキャンの描画データの生成を行わないで済むことから、前記第1例に比べて、メモリ容量が少なくて済み、また処理速度の向上を図れる。
【0056】
次に、本発明の第2実施形態について図11及び図12を参照して説明する。
印刷データとして、ワープロ等の文字中心のデータを想定した場合、行間については、主走査方向にデータが存在していないが、通常の文書では、「行」と「行間」の幅では行間の方が狭く、前記第1実施形態のように、記録ヘッドの長さ(副走査方向の長さ)に合わせた固定のスキャン幅で主走査を行った場合、各スキャン間に跨った描画オブジェクト存在する確率が高くなる。
【0057】
そこで、この実施形態では、主走査方向にデータが存在しない領域を検索(検出)する。例えば、図11に示すように、スキャンデータは、通常のビットマップと同じく左上を原点とし主走査方向(ライン)毎に並んでいる。ここで、各ライン毎で、そのライン上に描画オブジェクトの有無を判断し、描画オブジェクトが存在しないラインから、次の描画オブジェクトが存在するラインまでを「主走査方向にデータが存在しない領域」とする。この図11に示す例では、下記の例では、「n+2ライン目」から「n+5ライン目」までを「主走査方向にデータが存在しない領域」と判定する。
【0058】
そして、「主走査方向にデータが存在しない領域」までを、当該スキャンで印刷することにより、双方向印刷で処理を行えるようにしている。
【0059】
つまり、情報処理装置は、印刷する描画オブジェクトの境目(主走査方向にデータが存在しない領域)を検出し、検出した境目間のデータについて双方向印刷用の印刷データを生成する。
【0060】
具体的には、図12(a)に示すように、スキャンデータの高さ(副走査方向の幅)を記録ヘッドの高さで固定すると、第2スキャンと第3スキャンの間、第3スキャンと第4スキャンとの間に、スキャン間に跨る描画オブジェクトが存在することになって、第2ないし第4スキャンは片方向印刷で印刷することになり、キャリッジの移動回数は双方向の往路印刷1回、片方向印刷3回と、片方向のためにキャリッジを戻す回数3回の合計7回の走査を行うことになる。
【0061】
これに対し、図12(b)に示すように、主走査方向にデータが存在しない領域までで描画データを分割してそれぞれ対応する第1ないし第5スキャンで印刷する(主走査方向のデータが存在しない位置をスキャンの高さとして処理した)場合は、キャリッジの走査回数は5回となり、スキャンの高さを固定した場合に比べてキャリッジの移動回数を3回減らすことができる。
【0062】
なお、スキャンの高さを変更することにより、スキャン回数が増えることもあるが、片方向印刷と双方向印刷では、キャリッジの移動量が2倍であることを考慮して、スキャンの高さを変更するときに、元のスキャンの高さの1/2以下の場合は、スキャンの高さを変更せずに片方向で印字するようにすれば、常に、キャリッジの移動回数は最小とすることができる。
【0063】
このように、印刷する描画オブジェクトの境目を検出し、検出した境目間のデータについて双方向印刷用のデータを生成することで、印字品質を保ちながら印刷速度を向上することができる。
【0064】
なお、印刷用のデータを画像形成装置側で生成する場合には、画像形成装置側で印刷する描画オブジェクトの境目を検出し、検出した境目間のデータについて双方向印刷での印刷制御を行うようにすれば、同ように、印字品質を保ちながら印刷速度を向上することができる。
【0065】
上述したように、画像形成装置における、キャリッジの当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータであるときには片方向印刷での印刷制御を行い、キャリッジの当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータでないときには双方向印刷での印刷制御を行う処理をコンピュータに行わせるプログラム、印刷する描画オブジェクトの境目を検出し、検出した境目間のデータについて双方向印刷での印刷制御を行う処理をコンピュータに行わせるプログラムを備えることで本発明を実施することができる。
【0066】
同様に、キャリッジの当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータであるときには片方向印刷用の印刷データを生成し、キャリッジの当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータでないときには双方向印刷用の印刷データを生成する処理をコンピュータに行わせるプログラム、印刷する描画オブジェクトの境目を検出し、検出した境目間のデータについて双方向印刷用の印刷データを生成する処理をコンピュータに行わせるプログラムを備えることで本発明を実施することができる。
【0067】
そして、これらのプログラムは、記憶媒体に記憶して提供することができ、或はインターネットネットなどのネットワークを通じてダウンロードすることで提供される。また、上記実施形態で説明した画像形成装置と本発明に係る情報処理装置とを組みあせて画像形成システムを構成することもできる。
【符号の説明】
【0068】
3 キャリッジ
4 記録ヘッド
103 プリンタドライバ
105 IJレンダラ。
200 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する記録ヘッドが搭載されて移動走査されるキャリッジを備え、双方向印刷が可能な画像形成装置において、
前記キャリッジの当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータであるときには片方向印刷での印刷制御を行い、前記キャリッジの当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータでないときには双方向印刷での印刷制御を行う手段を備えている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータであるか否かを、当該スキャンの最下1ラインと次スキャンの最上の1ラインのデータが同じ主走査位置にあるか否かで判定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータであるか否かを、当該スキャンの最上下1ラインにデータがあるか否かで判定することを特徴とする請求項1の画像形成装置
【請求項4】
液滴を吐出する記録ヘッドが搭載されて移動走査されるキャリッジを備え、双方向印刷が可能な画像形成装置において、
印刷する描画オブジェクトの境目を検出し、前記検出した境目間のデータについて双方向印刷での印刷制御を行う手段と、を備えている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
液滴を吐出する記録ヘッドが搭載されて移動走査されるキャリッジを備え、双方向印刷が可能な画像形成装置に対する印刷データを生成する情報処理装置において、
前記キャリッジの当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータであるときには片方向印刷用の印刷データを生成し、前記キャリッジの当該スキャンで印刷するデータが隣り合うスキャン間に跨る描画オブジェクトのデータでないときには双方向印刷用の印刷データを生成する手段を備えている
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
液滴を吐出する記録ヘッドが搭載されて移動走査されるキャリッジを備え、双方向印刷が可能な画像形成装置に対する印刷データを生成する情報処理装置において、
印刷する描画オブジェクトの境目を検出し、前記検出した境目間のデータについて双方向印刷用の印刷データを生成する手段を備えている
ことを特徴とする情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−56869(P2011−56869A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211005(P2009−211005)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】