説明

画像形成装置及び画像形成システム

【課題】利用者がセキュリティレベル(機密性)を設定することなく、セキュリティレベルに応じた適切なジョブの消去を行う。
【解決手段】外部から受信した印刷ジョブを記憶する不揮発性の印刷ジョブ記憶部27aと、ウォーターマークと、上書き消去パターンとを関連づけて、マッピングテーブルとして記憶する不揮発性のマッピングテーブル記憶部27bと、印刷ジョブにウォーターマークが含まれているか否かを判定する判定部22と、ウォーターマークが含まれていると判定された場合に、マッピングテーブルに基づいて、印刷設定情報に含まれているウォーターマークに対応する上書き消去パターンを抽出する抽出部23と、抽出された上書き消去パターンに基づいて、印刷ジョブ記憶部27aに記憶された印刷ジョブを消去する消去部24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性の記憶媒体に記憶された印刷ジョブを、そのセキュリティレベルに応じて消去する画像形成装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ネットワークを介して端末と接続され、この端末から、利用者の操作に基づいて各種印刷条件が設定された印刷設定情報を含む印刷ジョブが送信された場合に、印刷ジョブを内蔵する記憶部に記憶させ、記憶部に記憶された印刷ジョブに基づいて、印刷を行う画像形成装置がよく知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、不揮発性の記憶媒体であるHDD(ハードディスクドライブ)と、揮発性の記憶媒体であるRAM(Random Access Memory)とを有し、ジョブの属性にセキュリティレベル(高)、(中)、(低)を付加し、その属性を判断し、適切なジョブ処理を行うキューへ送り、印刷を行う機密文書ジョブ制御装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−140409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された機密文書ジョブ制御装置では、ジョブ送信の際、ジョブの属性として、セキュリティレベル(高)、(中)、(低)を選択する必要があるので、利用者にとって、操作が煩わしかった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、利用者がセキュリティレベル(機密性)を設定することなく、セキュリティレベルに応じた適切なジョブの消去を行う画像形成装置及び画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置の第1の特徴は、外部から受信した印刷ジョブを記憶する不揮発性の印刷ジョブ記憶手段と、ウォーターマークと、当該ウォーターマークが示す機密性に応じて予め定められた上書き消去パターンとが関連づけられたマッピングテーブルを記憶する不揮発性のマッピングテーブル記憶手段と、前記印刷ジョブにウォーターマークが含まれているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によりウォーターマークが含まれていると判定された場合に、前記マッピングテーブルからウォーターマークに対応する前記上書き消去パターンを抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された上書き消去パターンに基づいて、前記印刷ジョブ記憶手段に記憶された印刷ジョブに上書き消去処理を実行する消去手段と、を備えたことにある。
【0008】
本発明に係る画像形成システムの第1の特徴は、印刷ジョブを生成する端末と、前記端末に接続された画像形成装置とを備えた画像形成システムであって、前記端末は、画像データを記憶する画像データ記憶手段と、前記画像データ記憶手段に記憶された画像データの印刷が要求された場合、ウォーターマークが付与されたか否かを判定するウォーターマーク判定手段と、前記ウォーターマーク判定手段によりウォーターマークが付与されていると判定された場合、ウォーターマークを含む印刷設定情報を前記画像データに付加して印刷ジョブを生成する印刷ジョブ生成手段と、前記印刷ジョブ生成手段により生成された印刷ジョブを前記画像形成装置へ送信する送信手段と、を有し、前記画像形成装置は、前記端末から受信した印刷ジョブを記憶する不揮発性の印刷ジョブ記憶手段と、前記ウォーターマークと、当該ウォーターマークが示す機密性に応じて予め定められた上書き消去パターンとが関連づけられたマッピングテーブルを記憶する不揮発性のマッピングテーブル記憶手段と、前記印刷ジョブにウォーターマークが含まれているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によりウォーターマークが含まれていると判定された場合に、前記マッピングテーブルからウォーターマークに対応する前記上書き消去パターンを抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された上書き消去パターンに基づいて、前記印刷ジョブ記憶手段に記憶された印刷ジョブに上書き消去処理を実行する消去手段と、を有することにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る画像形成装置の第1の特徴によれば、ウォーターマークが含まれていると判定された場合に、マッピングテーブルからウォーターマークに対応する上書き消去パターンを抽出し、抽出された上書き消去パターンに基づいて、印刷ジョブ記憶手段に記憶された印刷ジョブに上書き消去処理を実行するので、利用者が別途セキュリティレベル(機密性)を設定することなく、セキュリティレベルに応じた適切なジョブの消去を行うことができる。
【0010】
本発明に係る画像形成システムの第1の特徴によれば、上記画像形成装置に接続された 端末が、画像データ記憶手段に記憶された画像データの印刷実行の際にウォーターマークが付与されたか否かを判定し、ウォーターマークが付与されていると判定された場合、ウォーターマークを含む印刷設定情報を画像データに付加して印刷ジョブを生成し、生成された印刷ジョブを画像形成装置へ送信するので、利用者が別途セキュリティレベル(機密性)を設定することなく、画像形成装置側にてユーザの操作により埋め込まれたウォーターマークのセキュリティレベルに応じた適切なジョブの上書き消去処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態である画像形成システムの構成を示した構成図である。
【図2】本発明の一実施形態である画像形成システムが備えるマッピングテーブル記憶部が記憶しているマッピングテーブルの一例を示した説明図である。
【図3】本発明の一実施形態である画像形成システムの端末における印刷ジョブ送信処理の処理手順を示したフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態である画像形成システムのインクジェット印刷装置における印刷上書き処理の処理手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
本発明の一実施形態では、印刷設定情報を含む印刷ジョブを送信する端末に接続され、印刷ジョブに基づいて印刷し、印刷設定情報に基づいて、そのセキュリティレベルに応じて印刷ジョブを消去する画像形成装置を例に挙げて説明する。
【0014】
<画像形成システムの構成>
図1は、本発明の一実施形態である画像形成システムの構成を示した構成図である。
【0015】
図1に示すように、画像形成システム10は、端末1と、画像の読み取りや印刷を行う画像形成装置であるインクジェット印刷装置2とを備えている。
【0016】
インクジェット印刷装置2は、入出力インタフェース部21と、判定部22と、抽出部23と、消去部24と、印刷制御部25と、印刷部26と、記憶部27と、操作部30とを備えている。
【0017】
入出力インタフェース部21は、端末1と接続するための接続インタフェースであり、端末1から印刷ジョブを受信したり、インクジェット印刷装置2の状態を端末1へ送信したりする。
【0018】
判定部22は、端末1により送信された印刷ジョブの印刷設定情報にウォーターマークが含まれているか否かを判定する。
【0019】
抽出部23は、判定部22によりウォーターマークが含まれていると判定された場合に、マッピングテーブルに基づいて、印刷設定情報に含まれているウォーターマークに対応する上書き消去パターンを抽出する。
【0020】
消去部24は、抽出部23により抽出された上書き消去パターンに基づいて、後述する印刷ジョブ記憶部27aに記憶された印刷ジョブを消去する。
【0021】
印刷制御部25は、利用者の操作に基づいて生成された印刷ジョブ又は端末1から供給された印刷ジョブに基づいて、印刷部26に印刷させる。
【0022】
印刷部26は、印刷制御部25から供給される印刷ジョブに基づいて、インクジェットヘッド(図示しない)からシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の合計4色のインクを吐出することにより、長尺状のロール紙等の印刷媒体や所定の寸法に切断された印刷媒体に対してカラー印刷を行う。
【0023】
記憶部27は、ハードディスク等の不揮発性の記憶媒体であり、印刷制御部25が実行する各種制御プログラム等を記憶している。また、記憶部27は、記憶領域として、印刷ジョブ記憶部27aと、マッピングテーブル記憶部27bとを備えている。
【0024】
印刷ジョブ記憶部27aは、端末1から送信された印刷ジョブを記憶する。
【0025】
マッピングテーブル記憶部27bは、ウォーターマークと、印刷ジョブ記憶部27aに上書きするデータのパターンである上書き消去パターンとを関連づけて、マッピングテーブルとして記憶する。
【0026】
図2は、マッピングテーブル記憶部27bが記憶しているマッピングテーブルの一例を示した説明図である。
【0027】
図2に示すように、カラム名“ウォーターマーク”(符号101)と、カラム名“上書き消去パターン”(符号102)とが関連付けられてマッピングテーブルとして記憶されている。
【0028】
ここで、上書き消去パターン102は、セキュリティレベルが高い程、上書き消去する回数が多くなるように、予め設定されている。例えば、“機密”や“極秘”などのようにセキュリティレベルが高いウォーターマーク101に対応する上書き消去パターン102は、“00x0→0xFF→乱数”と設定されている。これは、1回目“00x0”、2回目“0xFF”、3回目“乱数”というように3回上書き消去することにより高い精度で消去を実行できるように設定されている。
【0029】
一方、ウォーターマーク101が、“無し”の場合、即ち、セキュリティレベルが低い場合には、消去する必要がないので、上書き消去パターン102は、“実行しない”と設定されている。
【0030】
操作部30は、表示/入力パネル(図示しない)と、読み取り部(図示しない)による読み取りや印刷等を開始させるためのスタートキー、読み取りや印刷等を停止させるためのストップキー、印刷枚数等を入力するためのテンキー(いずれも図示せず)等の各種操作キーとを備え、利用者操作に基づく操作信号を入出力インタフェース部21に供給する。
【0031】
操作部30の表示/入力パネルは、前面に配置された感圧式あるいは静電式の透明なタッチパネルと、このタッチパネルの裏面に配置され、各種表示画面を表示する液晶表示パネル(いずれも図示せず)とを有している。利用者は、液晶表示パネルの表示画面を見ながら、タッチパネルの表面を指などで直接触れることで、各種ボタンの押下操作を行うことができる。
【0032】
端末1は、入出力インタフェース部11と、ウォーターマーク判定部12と、印刷ジョブ生成部13と、画像データ記憶部15とを備えている。
【0033】
入出力インタフェース部11は、インクジェット印刷装置2と接続するための接続インタフェースであり、印刷ジョブ生成部13により生成されたインクジェット印刷装置2に印刷させるための印刷ジョブをインクジェット印刷装置2へ送信する。
【0034】
ウォーターマーク判定部12は、画像データ記憶部15に記憶された画像データの印刷が要求された場合、ウォーターマークが付与されたか否かを判定する。
【0035】
印刷ジョブ生成部13は、ウォーターマーク判定部12によりウォーターマークが付与されていると判定された場合、ウォーターマークを含む印刷設定情報を画像データに付加して印刷ジョブを生成する。
【0036】
画像データ記憶部15は、不揮発性の記憶媒体で構成され、画像データを記憶する。
【0037】
<端末1の作用>
本発明の一実施形態である画像形成システム10の端末1の作用について説明する。
【0038】
本発明の一実施形態である画像形成システム10の端末1は、主に、印刷ジョブ送信処理を実行し、端末1に接続されたインクジェット印刷装置2は、印刷上書き処理を実行する。そのため、各々の処理について以下に詳細に説明する。
【0039】
≪印刷ジョブ送信処理≫
図3は、本発明の一実施形態である画像形成システム10の端末1における印刷ジョブ送信処理の処理手順を示したフローチャートである。
【0040】
図3に示すように、印刷ジョブ生成部13は、印刷開始が要求されたか否かを判定する(ステップS101)。例えば、プリンタドライバの設定画面から、ユーザが、ウォーターマークを埋め込む操作を行った後、印刷を要求する操作を行った場合、印刷ジョブ生成部13は、印刷開始が要求されたと判定する。
【0041】
ステップS101において、印刷開始が要求されたと判定された場合(YESの場合)、ウォーターマーク判定部12は、ユーザにより操作された印刷設定の内容を読み込む(ステップS103)。
【0042】
次に、ウォーターマーク判定部12は、読み込んだ印刷設定に基づいて、ウォーターマークが付与されたか否かを判定する(ステップS105)。具体的には、ステップS101において、プリンタドライバの設定画面から、ユーザが、ウォーターマークを入力又は選択することにより埋め込む操作を行った場合、ウォーターマーク判定部12は、読み込んだ印刷設定に基づいて、ウォーターマークが付与されたと判定する。
【0043】
ステップS105において、ウォーターマークが付与されたと判定された場合(YESの場合)、印刷ジョブ生成部13は、ウォーターマーク記述命令をPDL(Page Description Language)に埋め込む(ステップS107)。具体的には、印刷ジョブ生成部13は、少なくともウォーターマークの埋め込みがあることを示すフラグと、入力又は選択されたウォーターマークの文字列とを印刷設定情報として、PDLに埋め込む。
【0044】
そして、印刷ジョブ生成部13は、印刷ジョブを生成する(ステップS109)。具体的には、印刷ジョブ生成部13は、ステップS109において印刷設定情報が埋め込まれたPDLに、画像データ記憶部15に記憶された画像データを埋め込むことにより、印刷ジョブを生成する。
【0045】
そして、印刷ジョブ生成部13は、印刷ジョブを送信する(ステップS111)。具体的には、入出力インタフェース部11が、印刷ジョブ生成部13により生成された印刷ジョブをインクジェット印刷装置2へ送信する。
【0046】
≪印刷上書き処理≫
図4は、本発明の一実施形態である画像形成システム10のインクジェット印刷装置2における印刷上書き処理の処理手順を示したフローチャートである。
【0047】
図4に示すように、インクジェット印刷装置2の判定部22は、端末1から印刷ジョブが送信された、即ち、印刷ジョブを受信したか否かを判定する(ステップS201)。
【0048】
ステップS201において、印刷ジョブを受信したと判定された場合(YESの場合)、印刷制御部25は、記憶部27の印刷ジョブ記憶部27aに、受信した印刷ジョブを記憶させる(ステップS202)。
【0049】
次に、判定部22は、印刷ジョブの印刷設定情報にウォーターマークが含まれているか否かを判定する(ステップS203)。例えば、判定部22は、端末1により送信された印刷ジョブにウォーターマーク記述命令が含まれているか否かを判定する。
【0050】
ステップS203において、印刷ジョブの印刷設定情報にウォーターマークが含まれていると判定された場合(YESの場合)、抽出部23は、上書き消去が必要か否かを判定する(ステップS205)。具体的には、抽出部23は、ウォーターマーク記述命令に、ウォーターマークの埋め込みがあることを示すフラグがオンになっている場合に、上書き消去が必要と判定する。
【0051】
ステップS203において、印刷ジョブの印刷設定情報にウォーターマークが含まれていないと判定された場合(NOの場合)、ステップS205において、上書き消去が必要ではないと判定された場合(NOの場合)、印刷制御部25は、印刷ジョブ記憶部27aに記憶された印刷ジョブに基づいて、印刷処理を開始する(ステップS221)。具体的には、印刷部26は、印刷制御部25から供給される印刷ジョブに基づいて、インクジェットヘッドからシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の合計4色のインクを吐出することにより、所定の寸法に切断された印刷媒体に対してカラー印刷を行う。
【0052】
そして、印刷制御部25は、印刷処理が完了したか否かを判定する(ステップS223)。具体的には、印刷制御部25は、ステップS202において記憶された印刷ジョブに基づいた印刷処理が全て終了した場合、印刷処理が完了したと判定する。
【0053】
一方、ステップS205において、上書き消去が必要と判定された場合(YESの場合)、抽出部23は、上書き消去パターンを決定する(ステップS207)。具体的には、抽出部23は、印刷設定情報からウォーターマークを抽出し、マッピングテーブル記憶部27bに記憶されているマッピングテーブルから、この抽出されたウォーターマークに対応する上書き消去パターンを決定する。例えば、抽出されたウォーターマークが“社外秘”であった場合、この“社外秘”に対応する上書きパターンは“0x00”と定められているので(図2参照)、抽出部23は、“0x00”を上書きパターンとして決定する。
【0054】
次に、消去部24は、印刷ジョブを記憶している印刷ジョブ記憶部27aの物理アドレスを特定する(ステップS209)。具体的には、消去部24は、inode及びファイルシステムの情報に基づいて、対象の印刷ジョブが記憶されているセクタの物理アドレスを算出する。ここで、inodeとは、印刷ジョブが記憶されている印刷ジョブ記憶部27a上のファイル・サイズや変更時刻などの管理情報のことである。
【0055】
次に、印刷制御部25は、印刷ジョブ記憶部27aに記憶された印刷ジョブに基づいて、印刷処理を開始する(ステップS211)。
【0056】
そして、印刷制御部25は、印刷処理が完了したか否かを判定する(ステップS213)。
【0057】
ステップS213において、印刷処理が完了したと判定された場合(YESの場合)、消去部24は、上書き消去パターンで上書き消去する(ステップS215)。具体的には、消去部24は、ステップS207において、抽出部23により決定された上書き消去パターンを用いて、ステップS209において算出された印刷ジョブ記憶部27aの物理アドレスに対して、上書きする。これにより、ステップS202において記憶された印刷ジョブに対して、上書き消去することができる。
【0058】
以上のように、本発明の一実施形態である画像形成システム10によれば、端末1が、ウォーターマークを含む印刷設定情報を画像データに付加して印刷ジョブを生成してインクジェット印刷装置2へ送信し、印刷ジョブにウォーターマークが含まれている場合に、マッピングテーブルに基づいて、インクジェット印刷装置2が、印刷設定情報に含まれているウォーターマークに対応する上書き消去パターンを抽出し、この抽出された上書き消去パターンに基づいて、印刷ジョブ記憶部27aに記憶された印刷ジョブを消去するので、利用者がセキュリティレベル(機密性)を設定することなく、機密性に応じた適切なジョブの消去を行うことができる。
【0059】
なお、本発明の一実施形態である画像形成システム10によれば、インクジェット印刷装置2は、印刷処理が完了したと判定された場合、直ちに、印刷ジョブ記憶部27aに記憶された印刷ジョブを上書き消去パターンで上書き消去したが、これに限らない。
【0060】
例えば、印刷処理が完了したと判定された場合、インクジェット印刷装置2の負荷に余裕があるときに、印刷ジョブ記憶部27aに記憶された印刷ジョブを上書き消去パターンで上書き消去するようにしてもよい。例えば、ユーザ認証していない、待機している印刷ジョブがない、及び印刷状態が待機中である等の条件を満たしている場合に、インクジェット印刷装置2が、印刷ジョブ記憶部27aに記憶された印刷ジョブを上書き消去パターンで上書き消去するようにしてもよい。
【0061】
なお、マッピングテーブル記憶部27bが記憶しているマッピングテーブルは、インクジェット印刷装置2が備える操作部30から利用者が操作することにより、変更可能である。また、図示しないが、インクジェット印刷装置2にWebサーバを搭載し、端末1からWebサーバを介して利用者が操作することにより、マッピングテーブルを変更するようにしてもよい。
【0062】
また、本発明の一実施形態である画像形成システム10では、印刷ジョブの印刷設定情報に、ユーザの埋め込み操作により埋め込まれたウォーターマークが含まれる否かを判定し、ウォーターマークが含まれる場合に、マッピングテーブルに基づいて、印刷設定情報に含まれているウォーターマークに対応する上書き消去パターンを抽出したが、これに限らない。
【0063】
例えば、本発明はスキャナにて読み取った原稿画像に、周知の画像処理技術を使ってウォーターマークが含まれる否かを判別し、ウォーターマークが含まれる場合に上記と同様の処理を実行させることも可能である。
【0064】
具体的には、インクジェット印刷装置2が、コンタクトガラス上に載置された原稿から画像データを読み込むスキャナに接続され、このスキャナが読み込んだ画像データを印刷ジョブとして受信する。そして、インクジェット印刷装置2は、受信した画像データに対して文字認識処理を実行することにより文字認識を行い、この文字認識された文字列にウォーターマークが含まれるか否かを判定する。または、受信した画像データ中に予め記憶部27に記憶されている所定の画像と相似する画像が含まれているか否かを判定する。インクジェット印刷装置2は、ウォーターマークが含まれると判定した場合に、マッピングテーブルに基づいて、印刷設定情報に含まれているウォーターマークに対応する上書き消去パターンを抽出する。
【0065】
これにより、ユーザがウォーターマークを埋め込む操作をすることなく、スキャナにより読み取られた画像データにウォーターマークが含まれる場合、機密性に応じた適切なジョブの消去を行うことができる。
【0066】
さらに、本発明の一実施形態である画像形成システム10では、ウォーターマークと、上書き消去パターンとを関連づけて、マッピングテーブルとして、印刷装置2のマッピングテーブル記憶部27bに記憶したが、これに限らない。
【0067】
例えば、マッピングテーブルを印刷装置2側ではなく、端末1に設けられた記憶部に記憶するようにしてもよい。そして、端末1のウォーターマーク判定部12が印刷ジョブにウォーターマークが含まれているか否かを判定し、ウォーターマーク判定部12により印刷ジョブにウォーターマークが含まれていると判定された場合、印刷ジョブ生成部13が、マッピングテーブルに基づいて、印刷設定情報に含まれているウォーターマークに対応する上書き消去パターンを抽出する。そして、印刷ジョブ生成部13は、この抽出された上書き消去パターンを印刷ジョブに付加して印刷装置2に送るようにしてもよい。
【0068】
また、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置2は、インクジェットヘッドから4色のインクを吐出することにより、所定の寸法に切断された印刷媒体に対してカラー印刷を行うインクジェット方式のプリンタを例に挙げて説明したが、これに限らず、レーザ方式、又は孔版印刷方式等の印刷装置であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…端末
2…インクジェット印刷装置
10…画像形成システム
11…入出力インタフェース部
12…ウォーターマーク判定部
13…印刷ジョブ生成部
15…画像データ記憶部
21…入出力インタフェース部
22…判定部
23…抽出部
24…消去部
25…印刷制御部
26…印刷部
27…記憶部
27a…印刷ジョブ記憶部
27b…マッピングテーブル記憶部
30…操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から受信した印刷ジョブを記憶する不揮発性の印刷ジョブ記憶手段と、
ウォーターマークと、当該ウォーターマークが示す機密性に応じて予め定められた上書き消去パターンとが関連づけられたマッピングテーブルを記憶する不揮発性のマッピングテーブル記憶手段と、
前記印刷ジョブにウォーターマークが含まれているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によりウォーターマークが含まれていると判定された場合に、前記マッピングテーブルからウォーターマークに対応する前記上書き消去パターンを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された上書き消去パターンに基づいて、前記印刷ジョブ記憶手段に記憶された印刷ジョブに上書き消去処理を実行する消去手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
印刷ジョブを生成する端末と、前記端末に接続された画像形成装置とを備えた画像形成システムであって、
前記端末は、
画像データを記憶する画像データ記憶手段と、
前記画像データ記憶手段に記憶された画像データの印刷が要求された場合、ウォーターマークが付与されたか否かを判定するウォーターマーク判定手段と、
前記ウォーターマーク判定手段によりウォーターマークが付与されていると判定された場合、ウォーターマークを含む印刷設定情報を前記画像データに付加して印刷ジョブを生成する印刷ジョブ生成手段と、
前記印刷ジョブ生成手段により生成された印刷ジョブを前記画像形成装置へ送信する送信手段と、を有し、
前記画像形成装置は、
前記端末から受信した印刷ジョブを記憶する不揮発性の印刷ジョブ記憶手段と、
前記ウォーターマークと、当該ウォーターマークが示す機密性に応じて予め定められた上書き消去パターンとが関連づけられたマッピングテーブルを記憶する不揮発性のマッピングテーブル記憶手段と、
前記印刷ジョブにウォーターマークが含まれているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によりウォーターマークが含まれていると判定された場合に、前記マッピングテーブルからウォーターマークに対応する前記上書き消去パターンを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された上書き消去パターンに基づいて、前記印刷ジョブ記憶手段に記憶された印刷ジョブに上書き消去処理を実行する消去手段と、を有する
ことを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−103371(P2013−103371A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247355(P2011−247355)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】