画像形成装置及び画像形成方法
【課題】中間転写ベルトを有する画像形成装置において、中抜けと飛び散りとを抑制して、感光ドラム上のトナー像を中間転写ベルトに忠実に転写する。
【解決手段】中間転写ベルトの表面微小硬度をトナーのそれよりも低くし、かつ中間転写ベルトの表面の微小硬度測定における、組成エネルギー成分と弾性エネルギー成分との和に対する弾性エネルギー成分の比率が50%以上となるようにすることで、中抜けを抑制する。また、転写部において像担持体と中間転写体とが1×102Pa以上の圧力で当接しており、トナーについての川北式付着力指数を110以上とすることで、飛び散りを抑制する。
【解決手段】中間転写ベルトの表面微小硬度をトナーのそれよりも低くし、かつ中間転写ベルトの表面の微小硬度測定における、組成エネルギー成分と弾性エネルギー成分との和に対する弾性エネルギー成分の比率が50%以上となるようにすることで、中抜けを抑制する。また、転写部において像担持体と中間転写体とが1×102Pa以上の圧力で当接しており、トナーについての川北式付着力指数を110以上とすることで、飛び散りを抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に接する中間転写体を用いる画像形成装置及び画像形成方法に関し、特に、像担持体から中間転写体へ転写されたトナー像の画質を向上させることが可能な画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中間転写体を使用した画像形成装置では、感光ドラム等の像担持体上にトナー像が形成される。そして、このトナー像は一次転写部において一旦、中間転写体に一次転写される。その後、中間転写体上のトナー像は、二次転写部において中間転写体から紙などの記録材上に二次転写される。
【0003】
中間転写体を構成する材料としては、樹脂材料が広く使用される。その具体例として、特許文献1ではポリフッ化ビニリデン(PVdF)、特許文献2ではポリカーボネート(PC)、特許文献3ではポリイミドが記載されている。
【0004】
これらの樹脂材料は、機械的特性には優れている。しかし、その反面、樹脂材料からなる中間転写体は、像担持体に圧接されたときの変形量が小さい。
【0005】
つまり、一次転写部における中間転写体の変形量が小さい。このため、一次転写部において、中間転写体からトナーに大きな圧力が作用することになる。
【0006】
更に、中間転写体51上においてトナー量が局所的に多い部分は、トナーが像担持体から中間転写体に転写される際に、中間転写からの圧力が集中する。
【0007】
すると、圧力が集中した部分のトナー像が潰れてしまう。たとえば、トナー像がライン形状の像である場合には、像担持体上でのライン幅が、中間転写体へ転写されることによって広がってしまう問題がある。
【0008】
この問題を解決するため、特許文献4では、弾性層を設けた中間転写体が提案されている。中間転写体に弾性層を設けると、中間転写体の硬度はトナーの硬度よりも小さくなる。すると、上述のように局所的にトナー量の多い部分が存在しても、中間転写体はトナーに沿って変形するため、トナー量の多い部分に圧力が集中することが緩和される。従って、圧力の集中によってトナー像が潰れることは抑制される。
【0009】
なお、上述の内容に関連する技術は、他に特許文献5〜9にも記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開平5−200904号公報
【特許文献2】特開平6−149081号公報
【特許文献3】特開昭63−311263号公報
【特許文献4】特開平10−97146号公報
【特許文献5】特開平11−212374号公報
【特許文献6】特開平11−212374号公報
【特許文献7】特開2000−47495号公報
【特許文献8】特開2001−235946号公報
【特許文献9】特開2004−198788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、弾性層を有する中間転写体を用いると、トナー像が像担持体から中間転写体へ転写される際、中間転写体へ転写されたトナー像の周囲にトナー粒子が飛散する所謂「飛び散り」が発生するという課題が生ずる。
【0012】
ここで、図7(a)〜(d)に飛び散りの発生のメカニズムを示す。
【0013】
(a)は、像担持体(感光ドラム)1上に存在するトナー像のトナーtを表す。
【0014】
(b)に示すように、トナーtが像担持体1から中間転写体51へ転写されるとき、弾性層の設けられた中間転写体はトナーtに沿って変形する。中間転写体51が変形することにより、感光ドラム1上のトナー像に局所的にトナー量の多い部分が存在しても、このトナー量の多い部分に圧力が集中することは抑えられる。
【0015】
ここで、像担持体1上のトナー像には、略均一に中間転写体51から圧力が掛かる。すると、像担持体1上のトナー像は、形状をほぼ維持した状態で、中間転写体51へ転写される。
【0016】
(c)は、中間転写体51に転写されたトナー像の模式図である。
【0017】
(c)に示すように、中間転写体51に転写されたトナー像の上層部分のトナーtは不安定になる。即ち、(c)に示すように、上層部のトナーtは矢印方向に移動しやすくなる。すると、(d)に示すように、飛び散りが発生する。
【0018】
そこで、本発明は、表面微小硬度がトナーよりも小さい中間転写体を用いる画像形成装置及び画像形成方法において、像担持体上のトナー像を中間転写体へ転写する際の飛び散りの発生を抑制することができる画像形成装置及び画像形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、静電像を担持する像担持体と、前記静電像をトナーで現像し、トナー像を形成する現像手段と、前記像担持体に接し、前記像担持体に形成された前記トナー像が転写される中間転写体とを備えた画像形成装置において、前記中間転写体の表面微小硬度は、前記トナーの表面微小硬度よりも小さく、前記トナーの川北式付着力指数は110以上である、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、画像形成方法において、像担持体に静電像を形成する工程と、前記静電像を川北式付着力指数が110以上のトナーで現像し、トナー像を形成する工程と、前記像担持体に接する中間転写体であって、表面微小硬度が前記トナーの表面微小硬度よりも小さい中間転写体へ、前記トナー像を転写する工程と、を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、中間転写体の表面微小硬度をトナーの表面微小硬度よりも小さくし、またトナーの川北式付着力指数を110以上にすることにより、トナー粒子とトナー粒子との付着力を大きくすることができるので、中間転写体上に転写された際の上層部分が、例えば図7中の矢印方向へ移動することを抑えることが可能となる。このようにして、飛び散りの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図面において同じ符号を付したものは、同様の構成あるいは同様の作用をなすものであり、これらについての重複説明は適宜省略した。
【0023】
<実施の形態1>
図1に、本発明を適用することができる画像形成装置を示す。同図に示す画像形成装置は、タンデム方式、中間転写方式、電子写真方式の4色フルカラーの画像形成装置であり、同図はこの画像形成装置の概略構成を模式的に示す、正面側から見た縦断面図である。
【0024】
図1を参照して、画像形成装置の概略を説明する。
【0025】
同図に示す画像形成装置は、4個のプロセスユニットPa,Pb,Pc,Pdと、その下方に配設された中間転写ベルト(中間転写体)51を備えている。これらプロセスユニットPa,Pb,Pc,Pdにおいて、帯電、露光、現像、転写、クリーニング等の画像形成プロセスにより、それぞれの感光ドラム1a,1b,1c,1d上にイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色のトナー像が形成される。これら各色のトナー像は、それぞれの一次転写部T1において、中間転写ベルト51上に順次に一次転写される。こうして中間転写ベルト51上で重ね合わされた4色のトナー像は、二次転写部T2において、紙等の記録材Sに二次転写される。トナー像の二次転写後の記録材Sは、定着装置81によって表面にトナー像が定着される。これにより、1枚の記録材Sの片面に対する画像形成が終了する。
【0026】
以下、上述の画像形成装置について詳述する。
【0027】
イエロー,マゼンタ,シアン,ブラックの各色の画像を形成する各プロセスユニットPa,Pb,Pc,Pdには、それぞれ像担持体としてドラム形の電子写真感光体(感光ドラム)1a,1b,1c,1dが配設されている。各感光ドラム1a,1b,1c,1dは、駆動手段(不図示)によって図1中の矢印方向(反時計回り)に回転駆動される。各感光ドラム1a,1b,1c,1dの周囲には、その回転方向に沿ってほぼ順に、帯電手段としての帯電ローラ(一次帯電装置)2a,2b,2c,2d、露光手段としての露光装置3a,3b,3c,3d、現像手段としての現像装置4a、4b、4c、4d、一次転写手段としての一次転写ローラ(転写装置)5a,5b,5c,5d、クリーニング手段としてのクリーニング装置6a,6b,6c,6dが配設されている。
【0028】
つづいて、図2を参照して、プロセスユニットPa,Pb,Pc,Pdについて詳述する。なお、これら4個のプロセスユニットPa,Pb,Pc,Pdは、同じ構成であるので、以下では、イエローのプロセスユニットPaについて説明し、他のプロセスユニットPb,Pc,Pdについては説明を省略する。
【0029】
プロセスユニットPaは、像担持体としてドラム形の電子写真感光体(感光ドラム)1aを備えている。感光ドラム1aは、アルミニウム等のドラム形の導電性基体11と、その外周に形成された光導電層12とを基本構成とする円筒状の電子写真感光体である。感光ドラム1aは、中心に支軸13を有しており、駆動手段(不図示)により、この支軸13を中心として矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)で回転駆動されるようになっている。
【0030】
感光ドラム1aの上方には、一次帯電ローラ2aが配設されている。一次帯電ローラ2aは、中心に配設された導電性の芯金21と、その外周に形成された低抵抗導電層22と中抵抗導電層23によって、全体としてローラ状に構成されていて、感光ドラム1aに対して平行に配設されている。芯金21はその長手方向の両端部が軸受部材(不図示)によって回転自在に支持されている。また軸受部材は、圧縮ばね等の付勢手段(不図示)によって感光ドラム1aに向けて付勢されている。これにより、一次帯電ローラ2aは、感光ドラム1a表面に所定の押圧力を持って圧接される。
【0031】
この圧接により、感光ドラム1aと一次転写ローラ2aとの間には帯状の一次転写部T1が形成される。一次帯電ローラ2aは、感光ドラム1aの矢印R1方向に回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。さらに、一次帯電ローラ2aは、電源24によって帯電バイアス電圧が印加され、これにより、感光ドラム1a表面を所定の極性・電位に一様に接触帯電するようになっている。
【0032】
感光ドラム1aの回転方向に沿っての一次帯電ローラ2aの下流側には、露光装置3aが配設されている。露光装置3aは、例えば画像情報に基づいてレーザ光をON/OFF制御するレーザスキャナによって構成される。帯電後の感光ドラム1a表面は、レーザ光によって走査露光され、露光部分の電荷が除去される。これにより感光ドラム1a上には、画像情報に応じた静電潜像が形成される。
【0033】
露光装置3aの下流側に配置された現像装置4aは、二成分現像剤を収容した現像容器41を有しており、この現像容器41の感光ドラム1aに対面した開口部には現像スリーブ42が回転自在に配設されている。現像スリーブ42内には現像スリーブ42上に現像剤を担持させるマグネットローラ43が、現像スリーブ42の回転に対して非回転に固定配置されている。現像容器41の現像スリーブ42の下方には、現像スリーブ42上に担持された現像剤を規制して薄層の現像剤層を形成する規制ブレード44が設置されている。さらに現像容器41内には、区画された現像室45及び撹拌室46が設けられ、その上方には補給用のトナーを収容した補給室47が設けられている。現像スリーブ42表面で薄層の現像剤層となった現像剤は、現像スリーブ42の回転に伴って感光ドラム1aと対向した現像領域へ搬送される。現像領域に搬送された現像剤は、マグネットローラ43の現像領域に配置された現像主極の磁気力によって穂立ちして、磁気ブラシを形成する。この磁気ブラシで感光ドラム1a表面を摺擦するとともに、現像スリーブ42に、電源48によって現像バイアス電圧を印加することにより、磁気ブラシの穂を構成するキャリヤに付着しているトナーが静電潜像の露光部分に付着される。これにより静電潜像は、トナー像として現像される。
【0034】
現像装置4aの下流側の感光ドラム1aの下方には、中間転写ベルト51を介して、一次転写ローラ5aが配設されている。一次転写ローラ5aは、電源54によってバイアス印加される芯金52と、その外周面に円筒状に形成された導電層53によって構成されている。一次転写ローラ5aは、長手方向両端部が圧縮ばね等の付勢部材(不図示)によって感光ドラム1aに向けて付勢されており、これにより一次転写ローラ5aの導電層53は、所定の押圧力で中間転写ベルト51を押して、中間転写ベルト51を感光ドラム1a表面に圧接させる。これにより、感光ドラム1aと中間転写ベルト51との間には、一次転写部(一次転写ニップ部)T1が形成される。一次転写ローラ5aには、感光ドラム1a上に形成されたトナー像の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加される。これにより、感光ドラム1a上のトナー像は、中間転写ベルト51表面に一次転写される。
【0035】
トナー像の一次転写後に、感光ドラム1a表面に残ったトナー(転写残トナー)は、クリーニング装置6aによって除去される。クリーニング装置6aは、感光ドラム1a表面に押圧されたクリーニングブレード62によって感光ドラム1a上の転写残トナーをクリーニング容器61内に掻き落とす。掻き落とされた転写残トナーは、搬送スクリュー63によって廃トナー容器(不図示)に搬送される。
【0036】
以上説明した画像形成プロセス、すなわち一次帯電、露光、現像、一次転写、クリーニングの一連のプロセスを、他のプロセスユニットPb,Pc,Pdにおいても行う。これにより、各プロセスユニットPa,Pb,Pc,Pdの感光ドラム1a,1b,1c,1d上に形成されたイエロー,マゼンタ,シアン,ブラックの各色のトナー像は、順次に中間転写ベルト51上に一次転写されて、中間転写ベルト51上で重ね合わされる。
【0037】
中間転写ベルト51は、従動ローラ55A、駆動ローラ55B、二次転写対向ローラ55Cに掛け渡されている。二次転写対向ローラ55Cは、二次転写ローラ57との間に中間転写ベルト51を挟みこんでいる。二次転写ローラ57と中間転写ベルト51との間には、二次転写部(二次転写ニップ部)T2が形成されている。上述のようにして、中間転写ベルト51上で重ね合わされた4色のトナー像は、図1に示すように、中間転写ベルト51の矢印R51方向に回転に伴って、二次転写部T2に搬送される。
【0038】
一方、このときまでに、給紙カセット71から取り出された記録材Pは、ピックアップローラ72を経て搬送ローラ73に供給され、さらに図1中の左方に搬送され、二次転写部T2に供給される。そして、二次転写対向ローラ55C、二次転写ローラ57のうちの少なくとも一方に印加される二次転写バイアスによって、上述の中間転写ベルト51上の4色のトナー像は、記録材P上に一括で二次転写される。本実施の形態では、二次転写対向ローラ55Cの芯金に、中間転写ベルト51上のトナーの帯電極性と同極性のバイアスを印加する方法を採用した。なお、中間転写ベルト51上の転写残トナー等は、転写ベルトクリーナ56によって除去、回収される。
【0039】
二次転写ローラ57に付着したトナー等の汚れは、接触部分が二次転写ローラ57の回転方向と反対方向に回転するファーブラシ58Aで掻きとるとともに、このファーブラシ58Aに印加されるバイアスによって、静電気的な作用によっても除去される。このファーブラシ58Aには、バイアスローラ58Bが当接されており、ファーブラシ58Aには、このバイアスローラ58Bにトナーと逆極性のバイアスを印加することによって、二次転写ローラ57表面に付着したトナーを清掃する。さらにこのファーブラシ58Aに付着したトナーは、バイアスローラ58Bにそのほとんどが回収され、このバイアスローラ58B表面には、ブレード58Cが当接されており、バイアスローラ58Bの表面のトナーをクリーニングする構成となっている。
【0040】
二次転写部T2において、表面にトナー像が転写された記録材Pは、定着装置81に搬送されて、表面にトナー像が定着される。定着装置81は、内側にハロゲンランプ等のヒータ82が配設された回転自在の定着ローラ83と、この定着ローラ83に圧接しながら回転する加圧ローラ84とを有している。定着装置81は、ヒータ82への電圧等を制御することにより表面の温度調節を行っている。この温度調整が行われた状態において、記録材Pは、一定速度で回転する定着ローラ82と加圧ローラ83との間を通過する際に表裏両面からほぼ一定の圧力、温度で加圧、加熱され、表面の未定着トナー像が溶融して定着される。これにより、記録材Pの片面に対する4色フルカラーの画像形成が終了する。
【0041】
本実施の形態においては、上述の画像形成装置は、図3に示すような中間転写ベルト51を使用している。中間転写ベルト51は、同図に示すように、裏面側に設けた弾性層51Aと、表面側に設けた表層51Bとによって構成されている。
【0042】
このうち弾性層51Aは、ゴムに代表されるような、合成樹脂よりも柔らかい材質によって形成することが好ましい。また、弾性層51Aの膜厚(層厚)は、中間転写ベルト51上に形成される最大トナー層厚よりも大きいことが好ましい。さらには、中間転写ベルト51上に形成される最大トナー層厚の2倍以上あるとより好ましい。本実施の形態では、弾性層51Aは、JISA硬度50〜70°、膜厚200〜500μm、引張り弾性率1×105〜107Pa(JIS K 7161)、圧縮弾性率1×106〜108Pa(JIS K 7181)、体積抵抗率1×108〜1012Ω・cm(上述同様の測定方法)の半導電クロロプレンゴムを採用している。
【0043】
表層51Bとしては、表面粗さが小さくて摺動性が良好であり、かつトナー離型性に優れた材質によって形成することが好ましい。本実施の形態では、表層51Bは、ダイキン社製ダイエルラテックスGLS−213Fを水系塗料とし、スプレーコートにより形成した。この表層51Bを、上述の弾性層51A表面にスプレーコートした後、150〜200℃で30分硬化し、厚さ5〜20μmの表層51Bを形成した。この結果、表層51B表面の静摩擦係数、つまり中間転写ベルト51表面の静摩擦係数は0.2〜0.6、表面粗さは1〜5μmとなった。
【0044】
スプレーコート後の2層構成の中間転写ベルト51のコート面の表面抵抗率を測定すると、1×109〜1014Ω/□となった。さらに、超微小押し込み硬さ試験ENT1100(株式会社エリオニクス社製)で測定した荷重と変位量の関係から求められた、全体エネルギー(塑性エネルギー成分+弾性エネルギー成分)に対する弾性エネルギー成分比率が50〜80%であった。
【0045】
測定方法としては、100μm×100μm角の圧子を用い、最大荷重10mgfまで押し込み、その後荷重を弱めていく際の荷重と変位量との関係のデータをとる。その結果、図4のようなヒステリシス曲線となる。塑性エネルギーは、斜線で示す部分の面積Saで表され、弾性エネルギーは、網点で示す部分の面積Sbで表される。
【0046】
したがって、それぞれの面積Sa,Sbを求め、弾性エネルギー成分比率を求める。
【0047】
なお、弾性エネルギー成分比率の具体的な測定方法については、さらに後に詳述する。
【0048】
また、本実施の形態では、一次転写ローラ5a〜5dとして、半導電ローラを採用している。この一次転写ローラ5a〜5dは、直径8mmの芯金と、この芯金の外周面を覆う厚さ4mmの導電性ウレタンスポンジ層とによって構成されている。
【0049】
この一次転写ローラ5a〜5dの硬度は、アスカーC硬度で25〜40°であり、また抵抗値は、芯金の両端に各々500g重の荷重の下で接地に対して一次転写ローラ5a〜5dを20mm/secの周速で回転させ、芯金に50Vの電圧を印加して測定された電流の関係から求められ、その値が約106Ω(温度23℃、湿度50%)ものを採用した。各一次転写部T1での圧力は、安定してニップ形成することができればよく、1×102Pa以上であるとよい。本実施の形態では、1×104Pa程度に設定した。
【0050】
次に、図5を参照して、トナーの表面微小硬度と中間転写ベルト51の表面微小硬度との大小関係についての測定方法についてに説明する。測定は、超微小押し込み硬さ試験ENT1100(株式会社エリオニクス社製)によって行う。
【0051】
図5に示すように、トナーtを試料台の金属テーブル112の上に1個載せる。
【0052】
ここで、使用されるトナーが、トナーの母粒子に外添剤が混ぜられているものである場合、金属テーブル112の上に載せられるトナーtは、外添剤の付着したトナーの母粒子でよい。
【0053】
圧子111のサイズは、水平方向の断面が100μm×100μmの方形であるものを選定する。最大押し込み荷重を10mgfに設定して、圧子111を下ろしていく。保持時間10msec、最大荷重までのステップ数を250分割して測定した。そのときの圧子111にかかる荷重と変位量の関係を求めた。さらに、最大荷重10mgfに到達後、同様に同じステップ間隔で荷重を弱めていき、荷重の増加時と減少時のヒステリシス曲線を作成する。
【0054】
次に、金属テーブル111の上に、ポリイミドベルト(不図示)や、本実施の形態で採用している上述の2層構成の中間転写ベルト51を置く。
【0055】
そして、ポリイミドベルト、及び中間転写ベルト51上に同様にトナーtを載せ、同様に圧子111にかかる荷重と変位量との関係を求めた。
【0056】
これらの結果を図6に示す。同図中、細い実線は、金属テーブル、太い実線はポリイミドベルト(PI)、点線は本実施の形態で使用した中間転写ベルト51を示している。同図から金属テーブル及びポリイミドは、トナーtよりも硬度が高いために、荷重を弱めていった場合でも変位量は変化しない。つまり、10mgfの加重をかけると、トナーtは、ほとんど塑性変形してしまっている。
【0057】
これに対し、本実施の形態で使用する中間転写ベルト51は、塑性変形分が非常に少なく、見かけ上のトナー硬度も下がって見えている。
【0058】
すなわち、本実施の形態で使用した中間転写ベルト51にあっては、
トナーの表面微小硬度>ベルトの表面微小硬度
の関係が成り立っているといえる。
【0059】
トナーの表面微小硬度>ベルトの表面微小硬度であるならば、トナーはベルトに入り込むことになるので、見かけ上のトナーの表面微小硬度が下がっているのである。
【0060】
例えば、上述のポリイミドベルト(PI)の場合のように、
トナーの表面微小硬度≦ベルトの表面微小硬度
であるならば、トナーはベルトに入り込むことができないので、見かけ上のトナーの微小
硬度は変わらない。
【0061】
このようにして、トナーの表面微小硬度とベルトの表面微小硬度との大小関係が確認される。
【0062】
トナーの表面微小硬度>ベルトの表面微小硬度
であるならば、一次転写部T1でのトナー凝集は大幅に緩和されるので、「中抜け」画像
はほとんど発生しなくなる。
【0063】
しかしながら、
トナーの表面微小硬度>ベルトの表面微小硬度
の関係を満たした場合において、新たな課題として「飛び散り」が悪化する場合があるということが、本発明にいたる検討の中で判明してきた。
【0064】
そこで、中間転写ベルトや中間転写ドラム等の中間転写体上のトナーの層形状から、「飛び散り」の悪化する要因として、トナーの物性値の中で特に「付着力」に着目した。そして、中間転写体上に転写されたトナーの「飛び散り」画像が、トナー「付着力」に依存していることがわかってきた。特に、トナーの表面微小硬度>ベルトの表面微小硬度、の関係が成り立つ場合には、中間転写体上のトナー像の形成が、前述の図7(c)に示されるようになるため、上層トナーは不安定になる。すると、上層トナーは図7(c)の矢印方向に崩れ、飛び散りが悪化する。
【0065】
本実施の形態では、トナーを帯電させる磁性体のキャリヤの種類やトナーとキャリヤの比率、さらには外添剤などを調整して、温度23℃、湿度50%環境下でトナー電荷密度を20〜40μC/gとした。
【0066】
ここで、トナーの母粒子は、ポリエステル樹脂で構成される。また、トナーの母粒子は、重量平均粒径が3乃至11μm程度に形成される。
【0067】
更に、トナーの流動性、付着力を調整するため、シリカ、アルミナ、酸化チタン等で構成された無機微粉体を、トナーの母粒子100質量部に対して、0.3乃至5.0質量部を外添させた。
【0068】
図8は、トナー付着力を表す指数としての「川北式付着力指数」と、画質を表す指数としてBlur値(ISO13660で定義される飛び散り指数)との関係を表している。
【0069】
同図から、Blur値は、「川北式付着力指数」が110より小さくなると、急激に悪化する傾向があることが分かる。
【0070】
ここでいう飛び散り指数は、QEA(クオリティ・エンジニアリング・アソシエイツ)社製のパーソナルIAS(イメージ・アナリシス・システム)で測定された値であり、Blur(ISO13660で定義されたラインのぼやけ方を表す数値)値のことである。
【0071】
以上より、中間転写ベルトとして、トナーの表面微小硬度より小さい表面微小硬度を有するベルトを採用し、トナーの「川北式付着力指数」を110以上にすることにより、トナー像の潰れや「飛び散り」少ない良好な画質を得ることができることがわかった。
【0072】
次に、図9に示すように、x軸(横軸)に「川北式流動性指数」、y軸(縦軸)に「川北式付着力指数」をとり、転写特性、現像特性や飛び散り以外の画像性について検討を行った。
【0073】
「川北式流動性指数」が0.6を超えると、現像特性が悪化し、ハーフトーンの画質(「がさつき」)が悪化した。また、「川北式流動性指数」が0.3を下回ると、トナー像が動きやすくなり、中間転写ベルト上に形成した画像に電荷が飛び込むという画像不良が発生しやすくなる。特に低湿環境下(本実施の形態では、温度23℃、湿度5%の環境)において、水玉状に飛び散る放電画像が発生したり、鳥足状の放電画像が発生したりした。以上のことから、より好ましくは、「川北式流動性指数」にも言及し、この「川北式流動性指数」を0.30〜0.60、より好ましくは0.40〜0.50にするとよい。
【0074】
さらに、「川北式付着力指数」が300を超えると、転写効率が低下する。これは、感光ドラム上に少しのトナーでも転写残が存在すると、そのトナーに付着したトナーも感光ドラム上に残りやすくなり、全体として転写効率が低下することになる。また、これと同じことは、二次転写での転写効率の場合にもいえるので、全体の転写利用率は大幅に低下してしまうことになる。したがって、「川北式付着力指数」は300以下に設定することが好ましい。一方、110以下の場合には、トナー像に飛び散りが発生する。したがって、「川北式付着力指数」は110〜300に設定するとよい。より好ましくは、120〜250に設定するとよい。
【0075】
上述の「川北式流動性指数」や「川北式付着力指数」はトナー設計をする上で、いくつかのパラメーターを振る(変化させる)ことによって調整することができる。例えば、トナーの体積平均粒径、トナー形状、トナーの外添剤量、トナーの外添剤の種類、トナーに含まれるワックス量などである。
【0076】
以上のことから、
トナーの表面微小硬度>ベルトの表面微小硬度
の関係が成り立つ中間転写ベルトを採用し、かつ1×102Pa以上の圧力下において一次転写を行う画像形成装置において、トナーの「川北式付着力指数」を110以上にすることによって、高画質を達成することができる。より好ましくは、「川北式流動性指数」が0.30〜0.60であるとよい。さらに、「川北式付着力指数」が300以下であるとよい。
【0077】
より好ましくは、「川北式流動性指数」が0.4〜0.5かつ「川北式付着力指数」が120〜250であるとよい。
【0078】
本実施の形態で示している「川北式流動性指数(流動性指数)」と「川北式付着力指数」の求め方について説明する(なお、詳細については、「材料」、第14巻144、702〜712頁(1965年) 粉体測定技術センター刊を参照)。
【0079】
図10に示すように、装置としては、粉体密度測定器タップデンサー(TAP DENSER)(KYT−3000)を使用する。タッピングセル211としては、100ccのものを採用。タッピングセルを落下させるストローク(落差)Dは、50mmに設定し、装置に取り付ける。トナーは、温度23℃、湿度50%環境下に24時間以上放置した状態ものを採用した。トナーtをタッピングセル211に流し込む。100ccのタッピングセル211いっぱいになった状態で準備が完了する。
【0080】
つづいて、タッピングセル211のタッピングを開始する。トナーの体積の測定はタッピング回数が100回までは20回毎に5回測定、100回を超えて300回までは50回毎に4回測定、300回を超えて500回までは100回毎に2回測定、500回を超えて1000回までは250回毎に2回測定と、合計13回の測定を行った。
【0081】
1000回のタッピングの終了後、タッピングセル211とトナーの合計の重量を測定し、さらにトナー洗浄後のタッピングセルの重量を測定する。
【0082】
上述の測定データから、タッピング回数N、タッピング回数T時におけるシリンダー内の粉体の体積Vt、初期体積V0(今回の実施の形態100cc)、量減り度C=(V0−Vt)/V0、初期から密度ρ0、最終タップ密度ρを求める。
【0083】
川北式の解析式
N/C=(1/a)×N+1/(a×b)
で表されるので、二次元空間にNをx軸、N/Cをy軸にした、(1/a)が傾きで、1/(a×b)がy切片になるようなグラフを作成する。この結果を図11に示す。同図から、近似直線(一次式)を求め、その傾きから、その逆数で表される「川北式流動性指数」が求まる。
【0084】
また、y切片の逆数は、「川北式流動性指数」と「川北式付着力指数」の積で表されるので、y切片に「川北式流動瀬指数」を乗じることによって、「川北式付着力指数」を求めることができる。
【0085】
<実施の形態2>
本実施の形態では、上述の実施の形態1とは、中間転写ベルト51の構成が異なる。すなわち、本実施の形態では、上述の中間転写ベルト51に、さらに基層を追加している。
【0086】
図12に、本実施の形態で使用した中間転写ベルト51を示す。同図に示すように、中間転写ベルト51は、裏面側から表面側に向かって、基層51C、弾性層51A、表層51を有する3層構造となっている。
【0087】
基層51Cは、ヤング率1〜6GPaの機械的強度を有する樹脂が好ましく、本実施の形態では、膜厚75〜95μm、引張り弾性率2〜4GPa、体積抵抗率1×108〜1×1012Ω・cm、表面抵抗率1×109〜1×1014Ω/□の半導電ポリイミドベルトを用いている。
【0088】
引張り弾性率は、JIS K 6251規定のダンベル状1号型形状に切断したものを、ORIENTEC STA−1225 テンシロン引張り試験機にて測定した。
【0089】
ヘッド速度は500mm/minで測定した。
【0090】
また体積抵抗率及び表面抵抗率は、JIS K 6911に準ずる電極(主電極外径50mm、ガード電極内径70mm、ガード電極外径80mm、重量1400±100g)を採用し、抵抗測定器としては、デジタル超高抵抗/微小電流計R8340A(株式会社アドバンテスト製)を用いて測定し、印加電圧100V、電圧印加後10秒後の値とする。
【0091】
弾性層51Aは、実施の形態1と同様のものを採用している。
【0092】
具体的には、JISA硬度50〜70°、膜厚200〜500μm、引張り弾性率1×105〜1×107Pa (JIS K 7161)、圧縮弾性率1×106〜1×108Pa(JIS K 7181)、体積抵抗率1×108〜1×1012Ω・cm(上述同様の測定方法)の半導電クロロプレンゴムを採用している。
【0093】
表層51Bも、実施の形態1と同様のものを採用している。具体的には、ダイキン社製ダイエルラテックスGLS−213Fを水系塗料とし、スプレーコートにより形成した。
【0094】
弾性層51A表面にスプレーコートした後、150〜200℃で30分硬化し、厚さ5〜20μmの表層51Bを形成した。この結果、表面は静摩擦係数が0.2〜0.6、表面粗さが1〜5μmとなった。
【0095】
スプレーコート後の3層構成の中間転写ベルト51のコート面の表面抵抗率を測定すると1×109〜1×1014Ω/□となった。さらに、超微小押し込み硬さ試験ENT1100(株式会社エリオニクス社製)で測定した荷重と変位量の関係から求められた、全体エネルギー(塑性エネルギー成分+弾性エネルギー成分)に対する弾性エネルギー成分
比率が50〜80%であった。
【0096】
以上のように、基層51Cを有する中間転写ベルト51でも、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。基層51Cがあることで、ベルトの伸縮を防止することができ、中間転写ベルト51が掛け渡されているローラ(例えば、図1中の従動ローラ55A、駆動ローラ55B、二次転写対向ローラ55C)を通過する際に発生するベルトの伸縮が要因のトナー飛び散りに効果があり、より高画質を達成できる。
【0097】
<実施の形態3>
図13に、本実施の形態を説明する画像形成装置を示す。同図に示す画像形成装置は4色フルカラーの画像形成装置であり、同図は、その概略構成を示す縦断面図である。
【0098】
同図に示す画像形成装置は、像担持体としてのドラム形の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という。)1、帯電手段としての一次帯電ローラ(帯電装置)2、露光手段としての露光装置3、現像手段としての現像装置4、転写手段としての転写装置5、クリーニング手段としてのクリーニング装置6、定着手段としての定着装置81を備えている。また、中間転写体として中間転写ベルト91を備え、記録材Sを搬送する転写ベルト95を備えている。
【0099】
感光ドラム1は、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)を持って回転駆動され、その回転過程で一次帯電ローラ2により所定の極性・電位に一様に帯電処理される。帯電後の感光ドラム1は、露光装置(例えば、カラー原稿画像の色分解・結像光学系、画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビームを出力するレーザスキャナによる走査露光系など)3による画像露光Lを受けることにより、目的のカラー画像の第1の色成分(例えばイエロー成分像)に対応した静電潜像が形成される。
【0100】
この静電潜像は、現像装置4のイエロー(Y)の現像器(第1の現像器)4aにより第1色であるイエロートナーにより現像される。現像装置4は、イエローの現像器4a、マゼンタ(M)の現像器(第2の現像器)4b、シアン(C)の現像器(第3の現像器)4c、ブラック(K)の現像器(第4の現像器)4dを備えている。これら現像器4a〜4dは、回転自在なロータリ4Aに搭載されており、ロータリ4Aの矢印b方向の回転によって、現像に供される現像器が感光ドラム1に対向する現像位置に配置される。
【0101】
転写装置5は、一次転写を行う中間転写体としての中間転写ドラム91と二次転写を行う転写ベルト(転写部材)95とを有している。中間転写ドラム91は、矢印R91方向に感光ドラム1と同じ周速度を持って回転駆動されている。本実施の形態においては、中間転写体として、ドラム状の中間転写ドラム91を使用している。
【0102】
感光ドラム1上に形成された第1色のイエロートナー像は、感光ドラム1と中間転写ドラム91との間の一次転写部(一次転写ニップ部)T1を通過する過程で、一次転写バイアス印加電源92によって中間転写ドラム91に印加される一次転写バイアスにより形成される電界と圧力とで、中間転写ドラム91の外周面に一次転写(中間転写)される。
【0103】
以下、同様にしてマゼンタの現像器4b,シアンの現像器4c,ブラックの現像器4dにより感光ドラム1上に形成された第2色のマゼンタトナー像,第3色のシアントナー像,第4色のブラックトナー像が順次に中間転写ドラム91上に重畳転写される。
【0104】
上述の第1色から第4色のトナー像の一次転写に際して、一次転写バイアス印加電源92から印加される一次転写バイアスは、トナーと逆極性(プラス)である。なお、感光ドラム1から中間転写ドラム91への第1色から第4色のトナー像の順次転写工程において、転写ベルト95及び中間転写体クリーニングクローラ97は中間転写ドラム91から離間されている。
【0105】
転写ベルト95は、中間転写ドラム91に対して平行に軸受けさせて中間転写ドラム91の下方に当接・離間自在に設置されている。転写ベルト95は、二次転写ローラ95Aと駆動ローラ95Bに掛け渡されており、矢印R95方向に回転する。二次転写ローラ95Aには、二次転写バイアス印加電源96により所望の二次転写バイアスが印加され、駆動ローラ95Bも等電位にしている。そして、転写ベルト95が中間転写ドラム91に当接されて二次転写部(二次転写ニップ部)T2を構成している。一方、記録材Pは、給紙カセット(不図示)からレジストローラ93A,93B、転写前ガイド94を通過して二次転写部T2に所定のタイミンクで給紙される。このとき、二次転写バイアス印加電源92から二次転写ローラ95Aに二次転写バイアスが印加され、中間転写ドラム91上の4色のトナー像が転写材P上に一括で二次転写される。トナー像が転写されて記録材Pは、定着装置81に搬送され、ここで加熱・加圧されて表面のトナー像が溶融され定着される。一方、転写材Pに二次転写されないで中間転写ドラム91上に残ったトナー(二次転写残トナー)は、電源98から直流電圧が重畳されたバイアスか印加された中間転写体クリーニングローラ97によって、正規の極性とは逆極性(プラス)に転換されることで、一次転写部T1を介して静電気的に感光ドラム1に吸着され、中間転写ドラム91表面は清浄化される。こうして感光ドラム1上に吸着された二次転写残トナーは、その後、感光ドラム1のクリーニング装置6によって除去され、回収される。
【0106】
本実施の形態の画像形成装置では、中間転写ドラム91として、図14に示すように、円筒形の厚み3mmのアルミニウムの芯金91A上に、450μmの弾性層91Bを設け、さらに弾性層91Bの上に15μmの表層(離型層)91Cを形成したものを採用した。
【0107】
弾性層91B及び表層91Cの材料は、前述の実施の形態1,2と同様のものを採用し、中間転写ドラム91の外径は、トータルで186mmとした。
【0108】
またトナーとしては、「川北式付着力指数」が110以上のものを使うと高画質が得られるのは、上述実施の形態と同様である。また、「川北式流動性指数」が0.3以上0.6以下、「川北式付着力指数」が110以上300以下のものを採用するとより好ましいことも同様である。
【0109】
さらに、中間転写体をドラム構成の中間転写ドラム91にすることによって、ベルト構成に比べて、中間転写体の表面の曲率が比較的一定であるので、中間転写体の表面速度に対して、弾性層91Bの厚みを比較的自由に設計することができるという利点がある。
【0110】
また、弾性層91Bの局所的な伸縮はほぼ無視できるため、より高画質を実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明を適用することができる画像形成装置の概略構成を模式的に示す前側から見た縦断面図である。
【図2】イエローのプロセスユニット近傍の拡大図である。
【図3】実施の形態1における、中間転写ベルトの層構成を模式的に示す図である。
【図4】弾性エネルギー成分比率を求めるときの表面微小硬度測定結果を示す図である。
【図5】表面微小硬度を測定するようすを説明する斜視図である。
【図6】トナーの表面微小硬度とベルトの表面微小硬度との関係を見つける手法を説明する図である。
【図7】(a),(b),(c),(d)は、中間転写体が柔らかい場合の、一次転写部におけるトナーの挙動を説明する図である。
【図8】川北式付着力指数と飛び散り指数との関係を説明する図である。
【図9】川北式流動性指数及び川北式付着力指数と、現像特性,転写特性,画像特性との関係を説明する図である。
【図10】川北式流動性指数、川北式付着力指数を測定する方法を説明する図である。
【図11】川北式流動性指数、川北式付着力指数を求める方法を説明する図である。
【図12】実施の形態2における、中間転写ベルトの層構成を模式的に示す図である。
【図13】実施の形態3における、画像形成装置の概略構成を模式的に示す前側から見た縦断面図である。
【図14】実施の形態3における、中間転写ドラムの層構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0112】
1,1a,1b,1c,1d
感光ドラム(像担持体)
4a,4b,4c,4d
現像装置(現像手段)
5a,5b,5c,5d
一次転写ローラ
51 中間転写ベルト(中間転写体)
91 中間転写ドラム(中間転写体)
T1 一次転写部(転写部)
t トナー
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に接する中間転写体を用いる画像形成装置及び画像形成方法に関し、特に、像担持体から中間転写体へ転写されたトナー像の画質を向上させることが可能な画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中間転写体を使用した画像形成装置では、感光ドラム等の像担持体上にトナー像が形成される。そして、このトナー像は一次転写部において一旦、中間転写体に一次転写される。その後、中間転写体上のトナー像は、二次転写部において中間転写体から紙などの記録材上に二次転写される。
【0003】
中間転写体を構成する材料としては、樹脂材料が広く使用される。その具体例として、特許文献1ではポリフッ化ビニリデン(PVdF)、特許文献2ではポリカーボネート(PC)、特許文献3ではポリイミドが記載されている。
【0004】
これらの樹脂材料は、機械的特性には優れている。しかし、その反面、樹脂材料からなる中間転写体は、像担持体に圧接されたときの変形量が小さい。
【0005】
つまり、一次転写部における中間転写体の変形量が小さい。このため、一次転写部において、中間転写体からトナーに大きな圧力が作用することになる。
【0006】
更に、中間転写体51上においてトナー量が局所的に多い部分は、トナーが像担持体から中間転写体に転写される際に、中間転写からの圧力が集中する。
【0007】
すると、圧力が集中した部分のトナー像が潰れてしまう。たとえば、トナー像がライン形状の像である場合には、像担持体上でのライン幅が、中間転写体へ転写されることによって広がってしまう問題がある。
【0008】
この問題を解決するため、特許文献4では、弾性層を設けた中間転写体が提案されている。中間転写体に弾性層を設けると、中間転写体の硬度はトナーの硬度よりも小さくなる。すると、上述のように局所的にトナー量の多い部分が存在しても、中間転写体はトナーに沿って変形するため、トナー量の多い部分に圧力が集中することが緩和される。従って、圧力の集中によってトナー像が潰れることは抑制される。
【0009】
なお、上述の内容に関連する技術は、他に特許文献5〜9にも記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開平5−200904号公報
【特許文献2】特開平6−149081号公報
【特許文献3】特開昭63−311263号公報
【特許文献4】特開平10−97146号公報
【特許文献5】特開平11−212374号公報
【特許文献6】特開平11−212374号公報
【特許文献7】特開2000−47495号公報
【特許文献8】特開2001−235946号公報
【特許文献9】特開2004−198788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、弾性層を有する中間転写体を用いると、トナー像が像担持体から中間転写体へ転写される際、中間転写体へ転写されたトナー像の周囲にトナー粒子が飛散する所謂「飛び散り」が発生するという課題が生ずる。
【0012】
ここで、図7(a)〜(d)に飛び散りの発生のメカニズムを示す。
【0013】
(a)は、像担持体(感光ドラム)1上に存在するトナー像のトナーtを表す。
【0014】
(b)に示すように、トナーtが像担持体1から中間転写体51へ転写されるとき、弾性層の設けられた中間転写体はトナーtに沿って変形する。中間転写体51が変形することにより、感光ドラム1上のトナー像に局所的にトナー量の多い部分が存在しても、このトナー量の多い部分に圧力が集中することは抑えられる。
【0015】
ここで、像担持体1上のトナー像には、略均一に中間転写体51から圧力が掛かる。すると、像担持体1上のトナー像は、形状をほぼ維持した状態で、中間転写体51へ転写される。
【0016】
(c)は、中間転写体51に転写されたトナー像の模式図である。
【0017】
(c)に示すように、中間転写体51に転写されたトナー像の上層部分のトナーtは不安定になる。即ち、(c)に示すように、上層部のトナーtは矢印方向に移動しやすくなる。すると、(d)に示すように、飛び散りが発生する。
【0018】
そこで、本発明は、表面微小硬度がトナーよりも小さい中間転写体を用いる画像形成装置及び画像形成方法において、像担持体上のトナー像を中間転写体へ転写する際の飛び散りの発生を抑制することができる画像形成装置及び画像形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、静電像を担持する像担持体と、前記静電像をトナーで現像し、トナー像を形成する現像手段と、前記像担持体に接し、前記像担持体に形成された前記トナー像が転写される中間転写体とを備えた画像形成装置において、前記中間転写体の表面微小硬度は、前記トナーの表面微小硬度よりも小さく、前記トナーの川北式付着力指数は110以上である、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、画像形成方法において、像担持体に静電像を形成する工程と、前記静電像を川北式付着力指数が110以上のトナーで現像し、トナー像を形成する工程と、前記像担持体に接する中間転写体であって、表面微小硬度が前記トナーの表面微小硬度よりも小さい中間転写体へ、前記トナー像を転写する工程と、を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、中間転写体の表面微小硬度をトナーの表面微小硬度よりも小さくし、またトナーの川北式付着力指数を110以上にすることにより、トナー粒子とトナー粒子との付着力を大きくすることができるので、中間転写体上に転写された際の上層部分が、例えば図7中の矢印方向へ移動することを抑えることが可能となる。このようにして、飛び散りの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図面において同じ符号を付したものは、同様の構成あるいは同様の作用をなすものであり、これらについての重複説明は適宜省略した。
【0023】
<実施の形態1>
図1に、本発明を適用することができる画像形成装置を示す。同図に示す画像形成装置は、タンデム方式、中間転写方式、電子写真方式の4色フルカラーの画像形成装置であり、同図はこの画像形成装置の概略構成を模式的に示す、正面側から見た縦断面図である。
【0024】
図1を参照して、画像形成装置の概略を説明する。
【0025】
同図に示す画像形成装置は、4個のプロセスユニットPa,Pb,Pc,Pdと、その下方に配設された中間転写ベルト(中間転写体)51を備えている。これらプロセスユニットPa,Pb,Pc,Pdにおいて、帯電、露光、現像、転写、クリーニング等の画像形成プロセスにより、それぞれの感光ドラム1a,1b,1c,1d上にイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色のトナー像が形成される。これら各色のトナー像は、それぞれの一次転写部T1において、中間転写ベルト51上に順次に一次転写される。こうして中間転写ベルト51上で重ね合わされた4色のトナー像は、二次転写部T2において、紙等の記録材Sに二次転写される。トナー像の二次転写後の記録材Sは、定着装置81によって表面にトナー像が定着される。これにより、1枚の記録材Sの片面に対する画像形成が終了する。
【0026】
以下、上述の画像形成装置について詳述する。
【0027】
イエロー,マゼンタ,シアン,ブラックの各色の画像を形成する各プロセスユニットPa,Pb,Pc,Pdには、それぞれ像担持体としてドラム形の電子写真感光体(感光ドラム)1a,1b,1c,1dが配設されている。各感光ドラム1a,1b,1c,1dは、駆動手段(不図示)によって図1中の矢印方向(反時計回り)に回転駆動される。各感光ドラム1a,1b,1c,1dの周囲には、その回転方向に沿ってほぼ順に、帯電手段としての帯電ローラ(一次帯電装置)2a,2b,2c,2d、露光手段としての露光装置3a,3b,3c,3d、現像手段としての現像装置4a、4b、4c、4d、一次転写手段としての一次転写ローラ(転写装置)5a,5b,5c,5d、クリーニング手段としてのクリーニング装置6a,6b,6c,6dが配設されている。
【0028】
つづいて、図2を参照して、プロセスユニットPa,Pb,Pc,Pdについて詳述する。なお、これら4個のプロセスユニットPa,Pb,Pc,Pdは、同じ構成であるので、以下では、イエローのプロセスユニットPaについて説明し、他のプロセスユニットPb,Pc,Pdについては説明を省略する。
【0029】
プロセスユニットPaは、像担持体としてドラム形の電子写真感光体(感光ドラム)1aを備えている。感光ドラム1aは、アルミニウム等のドラム形の導電性基体11と、その外周に形成された光導電層12とを基本構成とする円筒状の電子写真感光体である。感光ドラム1aは、中心に支軸13を有しており、駆動手段(不図示)により、この支軸13を中心として矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)で回転駆動されるようになっている。
【0030】
感光ドラム1aの上方には、一次帯電ローラ2aが配設されている。一次帯電ローラ2aは、中心に配設された導電性の芯金21と、その外周に形成された低抵抗導電層22と中抵抗導電層23によって、全体としてローラ状に構成されていて、感光ドラム1aに対して平行に配設されている。芯金21はその長手方向の両端部が軸受部材(不図示)によって回転自在に支持されている。また軸受部材は、圧縮ばね等の付勢手段(不図示)によって感光ドラム1aに向けて付勢されている。これにより、一次帯電ローラ2aは、感光ドラム1a表面に所定の押圧力を持って圧接される。
【0031】
この圧接により、感光ドラム1aと一次転写ローラ2aとの間には帯状の一次転写部T1が形成される。一次帯電ローラ2aは、感光ドラム1aの矢印R1方向に回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。さらに、一次帯電ローラ2aは、電源24によって帯電バイアス電圧が印加され、これにより、感光ドラム1a表面を所定の極性・電位に一様に接触帯電するようになっている。
【0032】
感光ドラム1aの回転方向に沿っての一次帯電ローラ2aの下流側には、露光装置3aが配設されている。露光装置3aは、例えば画像情報に基づいてレーザ光をON/OFF制御するレーザスキャナによって構成される。帯電後の感光ドラム1a表面は、レーザ光によって走査露光され、露光部分の電荷が除去される。これにより感光ドラム1a上には、画像情報に応じた静電潜像が形成される。
【0033】
露光装置3aの下流側に配置された現像装置4aは、二成分現像剤を収容した現像容器41を有しており、この現像容器41の感光ドラム1aに対面した開口部には現像スリーブ42が回転自在に配設されている。現像スリーブ42内には現像スリーブ42上に現像剤を担持させるマグネットローラ43が、現像スリーブ42の回転に対して非回転に固定配置されている。現像容器41の現像スリーブ42の下方には、現像スリーブ42上に担持された現像剤を規制して薄層の現像剤層を形成する規制ブレード44が設置されている。さらに現像容器41内には、区画された現像室45及び撹拌室46が設けられ、その上方には補給用のトナーを収容した補給室47が設けられている。現像スリーブ42表面で薄層の現像剤層となった現像剤は、現像スリーブ42の回転に伴って感光ドラム1aと対向した現像領域へ搬送される。現像領域に搬送された現像剤は、マグネットローラ43の現像領域に配置された現像主極の磁気力によって穂立ちして、磁気ブラシを形成する。この磁気ブラシで感光ドラム1a表面を摺擦するとともに、現像スリーブ42に、電源48によって現像バイアス電圧を印加することにより、磁気ブラシの穂を構成するキャリヤに付着しているトナーが静電潜像の露光部分に付着される。これにより静電潜像は、トナー像として現像される。
【0034】
現像装置4aの下流側の感光ドラム1aの下方には、中間転写ベルト51を介して、一次転写ローラ5aが配設されている。一次転写ローラ5aは、電源54によってバイアス印加される芯金52と、その外周面に円筒状に形成された導電層53によって構成されている。一次転写ローラ5aは、長手方向両端部が圧縮ばね等の付勢部材(不図示)によって感光ドラム1aに向けて付勢されており、これにより一次転写ローラ5aの導電層53は、所定の押圧力で中間転写ベルト51を押して、中間転写ベルト51を感光ドラム1a表面に圧接させる。これにより、感光ドラム1aと中間転写ベルト51との間には、一次転写部(一次転写ニップ部)T1が形成される。一次転写ローラ5aには、感光ドラム1a上に形成されたトナー像の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加される。これにより、感光ドラム1a上のトナー像は、中間転写ベルト51表面に一次転写される。
【0035】
トナー像の一次転写後に、感光ドラム1a表面に残ったトナー(転写残トナー)は、クリーニング装置6aによって除去される。クリーニング装置6aは、感光ドラム1a表面に押圧されたクリーニングブレード62によって感光ドラム1a上の転写残トナーをクリーニング容器61内に掻き落とす。掻き落とされた転写残トナーは、搬送スクリュー63によって廃トナー容器(不図示)に搬送される。
【0036】
以上説明した画像形成プロセス、すなわち一次帯電、露光、現像、一次転写、クリーニングの一連のプロセスを、他のプロセスユニットPb,Pc,Pdにおいても行う。これにより、各プロセスユニットPa,Pb,Pc,Pdの感光ドラム1a,1b,1c,1d上に形成されたイエロー,マゼンタ,シアン,ブラックの各色のトナー像は、順次に中間転写ベルト51上に一次転写されて、中間転写ベルト51上で重ね合わされる。
【0037】
中間転写ベルト51は、従動ローラ55A、駆動ローラ55B、二次転写対向ローラ55Cに掛け渡されている。二次転写対向ローラ55Cは、二次転写ローラ57との間に中間転写ベルト51を挟みこんでいる。二次転写ローラ57と中間転写ベルト51との間には、二次転写部(二次転写ニップ部)T2が形成されている。上述のようにして、中間転写ベルト51上で重ね合わされた4色のトナー像は、図1に示すように、中間転写ベルト51の矢印R51方向に回転に伴って、二次転写部T2に搬送される。
【0038】
一方、このときまでに、給紙カセット71から取り出された記録材Pは、ピックアップローラ72を経て搬送ローラ73に供給され、さらに図1中の左方に搬送され、二次転写部T2に供給される。そして、二次転写対向ローラ55C、二次転写ローラ57のうちの少なくとも一方に印加される二次転写バイアスによって、上述の中間転写ベルト51上の4色のトナー像は、記録材P上に一括で二次転写される。本実施の形態では、二次転写対向ローラ55Cの芯金に、中間転写ベルト51上のトナーの帯電極性と同極性のバイアスを印加する方法を採用した。なお、中間転写ベルト51上の転写残トナー等は、転写ベルトクリーナ56によって除去、回収される。
【0039】
二次転写ローラ57に付着したトナー等の汚れは、接触部分が二次転写ローラ57の回転方向と反対方向に回転するファーブラシ58Aで掻きとるとともに、このファーブラシ58Aに印加されるバイアスによって、静電気的な作用によっても除去される。このファーブラシ58Aには、バイアスローラ58Bが当接されており、ファーブラシ58Aには、このバイアスローラ58Bにトナーと逆極性のバイアスを印加することによって、二次転写ローラ57表面に付着したトナーを清掃する。さらにこのファーブラシ58Aに付着したトナーは、バイアスローラ58Bにそのほとんどが回収され、このバイアスローラ58B表面には、ブレード58Cが当接されており、バイアスローラ58Bの表面のトナーをクリーニングする構成となっている。
【0040】
二次転写部T2において、表面にトナー像が転写された記録材Pは、定着装置81に搬送されて、表面にトナー像が定着される。定着装置81は、内側にハロゲンランプ等のヒータ82が配設された回転自在の定着ローラ83と、この定着ローラ83に圧接しながら回転する加圧ローラ84とを有している。定着装置81は、ヒータ82への電圧等を制御することにより表面の温度調節を行っている。この温度調整が行われた状態において、記録材Pは、一定速度で回転する定着ローラ82と加圧ローラ83との間を通過する際に表裏両面からほぼ一定の圧力、温度で加圧、加熱され、表面の未定着トナー像が溶融して定着される。これにより、記録材Pの片面に対する4色フルカラーの画像形成が終了する。
【0041】
本実施の形態においては、上述の画像形成装置は、図3に示すような中間転写ベルト51を使用している。中間転写ベルト51は、同図に示すように、裏面側に設けた弾性層51Aと、表面側に設けた表層51Bとによって構成されている。
【0042】
このうち弾性層51Aは、ゴムに代表されるような、合成樹脂よりも柔らかい材質によって形成することが好ましい。また、弾性層51Aの膜厚(層厚)は、中間転写ベルト51上に形成される最大トナー層厚よりも大きいことが好ましい。さらには、中間転写ベルト51上に形成される最大トナー層厚の2倍以上あるとより好ましい。本実施の形態では、弾性層51Aは、JISA硬度50〜70°、膜厚200〜500μm、引張り弾性率1×105〜107Pa(JIS K 7161)、圧縮弾性率1×106〜108Pa(JIS K 7181)、体積抵抗率1×108〜1012Ω・cm(上述同様の測定方法)の半導電クロロプレンゴムを採用している。
【0043】
表層51Bとしては、表面粗さが小さくて摺動性が良好であり、かつトナー離型性に優れた材質によって形成することが好ましい。本実施の形態では、表層51Bは、ダイキン社製ダイエルラテックスGLS−213Fを水系塗料とし、スプレーコートにより形成した。この表層51Bを、上述の弾性層51A表面にスプレーコートした後、150〜200℃で30分硬化し、厚さ5〜20μmの表層51Bを形成した。この結果、表層51B表面の静摩擦係数、つまり中間転写ベルト51表面の静摩擦係数は0.2〜0.6、表面粗さは1〜5μmとなった。
【0044】
スプレーコート後の2層構成の中間転写ベルト51のコート面の表面抵抗率を測定すると、1×109〜1014Ω/□となった。さらに、超微小押し込み硬さ試験ENT1100(株式会社エリオニクス社製)で測定した荷重と変位量の関係から求められた、全体エネルギー(塑性エネルギー成分+弾性エネルギー成分)に対する弾性エネルギー成分比率が50〜80%であった。
【0045】
測定方法としては、100μm×100μm角の圧子を用い、最大荷重10mgfまで押し込み、その後荷重を弱めていく際の荷重と変位量との関係のデータをとる。その結果、図4のようなヒステリシス曲線となる。塑性エネルギーは、斜線で示す部分の面積Saで表され、弾性エネルギーは、網点で示す部分の面積Sbで表される。
【0046】
したがって、それぞれの面積Sa,Sbを求め、弾性エネルギー成分比率を求める。
【0047】
なお、弾性エネルギー成分比率の具体的な測定方法については、さらに後に詳述する。
【0048】
また、本実施の形態では、一次転写ローラ5a〜5dとして、半導電ローラを採用している。この一次転写ローラ5a〜5dは、直径8mmの芯金と、この芯金の外周面を覆う厚さ4mmの導電性ウレタンスポンジ層とによって構成されている。
【0049】
この一次転写ローラ5a〜5dの硬度は、アスカーC硬度で25〜40°であり、また抵抗値は、芯金の両端に各々500g重の荷重の下で接地に対して一次転写ローラ5a〜5dを20mm/secの周速で回転させ、芯金に50Vの電圧を印加して測定された電流の関係から求められ、その値が約106Ω(温度23℃、湿度50%)ものを採用した。各一次転写部T1での圧力は、安定してニップ形成することができればよく、1×102Pa以上であるとよい。本実施の形態では、1×104Pa程度に設定した。
【0050】
次に、図5を参照して、トナーの表面微小硬度と中間転写ベルト51の表面微小硬度との大小関係についての測定方法についてに説明する。測定は、超微小押し込み硬さ試験ENT1100(株式会社エリオニクス社製)によって行う。
【0051】
図5に示すように、トナーtを試料台の金属テーブル112の上に1個載せる。
【0052】
ここで、使用されるトナーが、トナーの母粒子に外添剤が混ぜられているものである場合、金属テーブル112の上に載せられるトナーtは、外添剤の付着したトナーの母粒子でよい。
【0053】
圧子111のサイズは、水平方向の断面が100μm×100μmの方形であるものを選定する。最大押し込み荷重を10mgfに設定して、圧子111を下ろしていく。保持時間10msec、最大荷重までのステップ数を250分割して測定した。そのときの圧子111にかかる荷重と変位量の関係を求めた。さらに、最大荷重10mgfに到達後、同様に同じステップ間隔で荷重を弱めていき、荷重の増加時と減少時のヒステリシス曲線を作成する。
【0054】
次に、金属テーブル111の上に、ポリイミドベルト(不図示)や、本実施の形態で採用している上述の2層構成の中間転写ベルト51を置く。
【0055】
そして、ポリイミドベルト、及び中間転写ベルト51上に同様にトナーtを載せ、同様に圧子111にかかる荷重と変位量との関係を求めた。
【0056】
これらの結果を図6に示す。同図中、細い実線は、金属テーブル、太い実線はポリイミドベルト(PI)、点線は本実施の形態で使用した中間転写ベルト51を示している。同図から金属テーブル及びポリイミドは、トナーtよりも硬度が高いために、荷重を弱めていった場合でも変位量は変化しない。つまり、10mgfの加重をかけると、トナーtは、ほとんど塑性変形してしまっている。
【0057】
これに対し、本実施の形態で使用する中間転写ベルト51は、塑性変形分が非常に少なく、見かけ上のトナー硬度も下がって見えている。
【0058】
すなわち、本実施の形態で使用した中間転写ベルト51にあっては、
トナーの表面微小硬度>ベルトの表面微小硬度
の関係が成り立っているといえる。
【0059】
トナーの表面微小硬度>ベルトの表面微小硬度であるならば、トナーはベルトに入り込むことになるので、見かけ上のトナーの表面微小硬度が下がっているのである。
【0060】
例えば、上述のポリイミドベルト(PI)の場合のように、
トナーの表面微小硬度≦ベルトの表面微小硬度
であるならば、トナーはベルトに入り込むことができないので、見かけ上のトナーの微小
硬度は変わらない。
【0061】
このようにして、トナーの表面微小硬度とベルトの表面微小硬度との大小関係が確認される。
【0062】
トナーの表面微小硬度>ベルトの表面微小硬度
であるならば、一次転写部T1でのトナー凝集は大幅に緩和されるので、「中抜け」画像
はほとんど発生しなくなる。
【0063】
しかしながら、
トナーの表面微小硬度>ベルトの表面微小硬度
の関係を満たした場合において、新たな課題として「飛び散り」が悪化する場合があるということが、本発明にいたる検討の中で判明してきた。
【0064】
そこで、中間転写ベルトや中間転写ドラム等の中間転写体上のトナーの層形状から、「飛び散り」の悪化する要因として、トナーの物性値の中で特に「付着力」に着目した。そして、中間転写体上に転写されたトナーの「飛び散り」画像が、トナー「付着力」に依存していることがわかってきた。特に、トナーの表面微小硬度>ベルトの表面微小硬度、の関係が成り立つ場合には、中間転写体上のトナー像の形成が、前述の図7(c)に示されるようになるため、上層トナーは不安定になる。すると、上層トナーは図7(c)の矢印方向に崩れ、飛び散りが悪化する。
【0065】
本実施の形態では、トナーを帯電させる磁性体のキャリヤの種類やトナーとキャリヤの比率、さらには外添剤などを調整して、温度23℃、湿度50%環境下でトナー電荷密度を20〜40μC/gとした。
【0066】
ここで、トナーの母粒子は、ポリエステル樹脂で構成される。また、トナーの母粒子は、重量平均粒径が3乃至11μm程度に形成される。
【0067】
更に、トナーの流動性、付着力を調整するため、シリカ、アルミナ、酸化チタン等で構成された無機微粉体を、トナーの母粒子100質量部に対して、0.3乃至5.0質量部を外添させた。
【0068】
図8は、トナー付着力を表す指数としての「川北式付着力指数」と、画質を表す指数としてBlur値(ISO13660で定義される飛び散り指数)との関係を表している。
【0069】
同図から、Blur値は、「川北式付着力指数」が110より小さくなると、急激に悪化する傾向があることが分かる。
【0070】
ここでいう飛び散り指数は、QEA(クオリティ・エンジニアリング・アソシエイツ)社製のパーソナルIAS(イメージ・アナリシス・システム)で測定された値であり、Blur(ISO13660で定義されたラインのぼやけ方を表す数値)値のことである。
【0071】
以上より、中間転写ベルトとして、トナーの表面微小硬度より小さい表面微小硬度を有するベルトを採用し、トナーの「川北式付着力指数」を110以上にすることにより、トナー像の潰れや「飛び散り」少ない良好な画質を得ることができることがわかった。
【0072】
次に、図9に示すように、x軸(横軸)に「川北式流動性指数」、y軸(縦軸)に「川北式付着力指数」をとり、転写特性、現像特性や飛び散り以外の画像性について検討を行った。
【0073】
「川北式流動性指数」が0.6を超えると、現像特性が悪化し、ハーフトーンの画質(「がさつき」)が悪化した。また、「川北式流動性指数」が0.3を下回ると、トナー像が動きやすくなり、中間転写ベルト上に形成した画像に電荷が飛び込むという画像不良が発生しやすくなる。特に低湿環境下(本実施の形態では、温度23℃、湿度5%の環境)において、水玉状に飛び散る放電画像が発生したり、鳥足状の放電画像が発生したりした。以上のことから、より好ましくは、「川北式流動性指数」にも言及し、この「川北式流動性指数」を0.30〜0.60、より好ましくは0.40〜0.50にするとよい。
【0074】
さらに、「川北式付着力指数」が300を超えると、転写効率が低下する。これは、感光ドラム上に少しのトナーでも転写残が存在すると、そのトナーに付着したトナーも感光ドラム上に残りやすくなり、全体として転写効率が低下することになる。また、これと同じことは、二次転写での転写効率の場合にもいえるので、全体の転写利用率は大幅に低下してしまうことになる。したがって、「川北式付着力指数」は300以下に設定することが好ましい。一方、110以下の場合には、トナー像に飛び散りが発生する。したがって、「川北式付着力指数」は110〜300に設定するとよい。より好ましくは、120〜250に設定するとよい。
【0075】
上述の「川北式流動性指数」や「川北式付着力指数」はトナー設計をする上で、いくつかのパラメーターを振る(変化させる)ことによって調整することができる。例えば、トナーの体積平均粒径、トナー形状、トナーの外添剤量、トナーの外添剤の種類、トナーに含まれるワックス量などである。
【0076】
以上のことから、
トナーの表面微小硬度>ベルトの表面微小硬度
の関係が成り立つ中間転写ベルトを採用し、かつ1×102Pa以上の圧力下において一次転写を行う画像形成装置において、トナーの「川北式付着力指数」を110以上にすることによって、高画質を達成することができる。より好ましくは、「川北式流動性指数」が0.30〜0.60であるとよい。さらに、「川北式付着力指数」が300以下であるとよい。
【0077】
より好ましくは、「川北式流動性指数」が0.4〜0.5かつ「川北式付着力指数」が120〜250であるとよい。
【0078】
本実施の形態で示している「川北式流動性指数(流動性指数)」と「川北式付着力指数」の求め方について説明する(なお、詳細については、「材料」、第14巻144、702〜712頁(1965年) 粉体測定技術センター刊を参照)。
【0079】
図10に示すように、装置としては、粉体密度測定器タップデンサー(TAP DENSER)(KYT−3000)を使用する。タッピングセル211としては、100ccのものを採用。タッピングセルを落下させるストローク(落差)Dは、50mmに設定し、装置に取り付ける。トナーは、温度23℃、湿度50%環境下に24時間以上放置した状態ものを採用した。トナーtをタッピングセル211に流し込む。100ccのタッピングセル211いっぱいになった状態で準備が完了する。
【0080】
つづいて、タッピングセル211のタッピングを開始する。トナーの体積の測定はタッピング回数が100回までは20回毎に5回測定、100回を超えて300回までは50回毎に4回測定、300回を超えて500回までは100回毎に2回測定、500回を超えて1000回までは250回毎に2回測定と、合計13回の測定を行った。
【0081】
1000回のタッピングの終了後、タッピングセル211とトナーの合計の重量を測定し、さらにトナー洗浄後のタッピングセルの重量を測定する。
【0082】
上述の測定データから、タッピング回数N、タッピング回数T時におけるシリンダー内の粉体の体積Vt、初期体積V0(今回の実施の形態100cc)、量減り度C=(V0−Vt)/V0、初期から密度ρ0、最終タップ密度ρを求める。
【0083】
川北式の解析式
N/C=(1/a)×N+1/(a×b)
で表されるので、二次元空間にNをx軸、N/Cをy軸にした、(1/a)が傾きで、1/(a×b)がy切片になるようなグラフを作成する。この結果を図11に示す。同図から、近似直線(一次式)を求め、その傾きから、その逆数で表される「川北式流動性指数」が求まる。
【0084】
また、y切片の逆数は、「川北式流動性指数」と「川北式付着力指数」の積で表されるので、y切片に「川北式流動瀬指数」を乗じることによって、「川北式付着力指数」を求めることができる。
【0085】
<実施の形態2>
本実施の形態では、上述の実施の形態1とは、中間転写ベルト51の構成が異なる。すなわち、本実施の形態では、上述の中間転写ベルト51に、さらに基層を追加している。
【0086】
図12に、本実施の形態で使用した中間転写ベルト51を示す。同図に示すように、中間転写ベルト51は、裏面側から表面側に向かって、基層51C、弾性層51A、表層51を有する3層構造となっている。
【0087】
基層51Cは、ヤング率1〜6GPaの機械的強度を有する樹脂が好ましく、本実施の形態では、膜厚75〜95μm、引張り弾性率2〜4GPa、体積抵抗率1×108〜1×1012Ω・cm、表面抵抗率1×109〜1×1014Ω/□の半導電ポリイミドベルトを用いている。
【0088】
引張り弾性率は、JIS K 6251規定のダンベル状1号型形状に切断したものを、ORIENTEC STA−1225 テンシロン引張り試験機にて測定した。
【0089】
ヘッド速度は500mm/minで測定した。
【0090】
また体積抵抗率及び表面抵抗率は、JIS K 6911に準ずる電極(主電極外径50mm、ガード電極内径70mm、ガード電極外径80mm、重量1400±100g)を採用し、抵抗測定器としては、デジタル超高抵抗/微小電流計R8340A(株式会社アドバンテスト製)を用いて測定し、印加電圧100V、電圧印加後10秒後の値とする。
【0091】
弾性層51Aは、実施の形態1と同様のものを採用している。
【0092】
具体的には、JISA硬度50〜70°、膜厚200〜500μm、引張り弾性率1×105〜1×107Pa (JIS K 7161)、圧縮弾性率1×106〜1×108Pa(JIS K 7181)、体積抵抗率1×108〜1×1012Ω・cm(上述同様の測定方法)の半導電クロロプレンゴムを採用している。
【0093】
表層51Bも、実施の形態1と同様のものを採用している。具体的には、ダイキン社製ダイエルラテックスGLS−213Fを水系塗料とし、スプレーコートにより形成した。
【0094】
弾性層51A表面にスプレーコートした後、150〜200℃で30分硬化し、厚さ5〜20μmの表層51Bを形成した。この結果、表面は静摩擦係数が0.2〜0.6、表面粗さが1〜5μmとなった。
【0095】
スプレーコート後の3層構成の中間転写ベルト51のコート面の表面抵抗率を測定すると1×109〜1×1014Ω/□となった。さらに、超微小押し込み硬さ試験ENT1100(株式会社エリオニクス社製)で測定した荷重と変位量の関係から求められた、全体エネルギー(塑性エネルギー成分+弾性エネルギー成分)に対する弾性エネルギー成分
比率が50〜80%であった。
【0096】
以上のように、基層51Cを有する中間転写ベルト51でも、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。基層51Cがあることで、ベルトの伸縮を防止することができ、中間転写ベルト51が掛け渡されているローラ(例えば、図1中の従動ローラ55A、駆動ローラ55B、二次転写対向ローラ55C)を通過する際に発生するベルトの伸縮が要因のトナー飛び散りに効果があり、より高画質を達成できる。
【0097】
<実施の形態3>
図13に、本実施の形態を説明する画像形成装置を示す。同図に示す画像形成装置は4色フルカラーの画像形成装置であり、同図は、その概略構成を示す縦断面図である。
【0098】
同図に示す画像形成装置は、像担持体としてのドラム形の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という。)1、帯電手段としての一次帯電ローラ(帯電装置)2、露光手段としての露光装置3、現像手段としての現像装置4、転写手段としての転写装置5、クリーニング手段としてのクリーニング装置6、定着手段としての定着装置81を備えている。また、中間転写体として中間転写ベルト91を備え、記録材Sを搬送する転写ベルト95を備えている。
【0099】
感光ドラム1は、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)を持って回転駆動され、その回転過程で一次帯電ローラ2により所定の極性・電位に一様に帯電処理される。帯電後の感光ドラム1は、露光装置(例えば、カラー原稿画像の色分解・結像光学系、画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビームを出力するレーザスキャナによる走査露光系など)3による画像露光Lを受けることにより、目的のカラー画像の第1の色成分(例えばイエロー成分像)に対応した静電潜像が形成される。
【0100】
この静電潜像は、現像装置4のイエロー(Y)の現像器(第1の現像器)4aにより第1色であるイエロートナーにより現像される。現像装置4は、イエローの現像器4a、マゼンタ(M)の現像器(第2の現像器)4b、シアン(C)の現像器(第3の現像器)4c、ブラック(K)の現像器(第4の現像器)4dを備えている。これら現像器4a〜4dは、回転自在なロータリ4Aに搭載されており、ロータリ4Aの矢印b方向の回転によって、現像に供される現像器が感光ドラム1に対向する現像位置に配置される。
【0101】
転写装置5は、一次転写を行う中間転写体としての中間転写ドラム91と二次転写を行う転写ベルト(転写部材)95とを有している。中間転写ドラム91は、矢印R91方向に感光ドラム1と同じ周速度を持って回転駆動されている。本実施の形態においては、中間転写体として、ドラム状の中間転写ドラム91を使用している。
【0102】
感光ドラム1上に形成された第1色のイエロートナー像は、感光ドラム1と中間転写ドラム91との間の一次転写部(一次転写ニップ部)T1を通過する過程で、一次転写バイアス印加電源92によって中間転写ドラム91に印加される一次転写バイアスにより形成される電界と圧力とで、中間転写ドラム91の外周面に一次転写(中間転写)される。
【0103】
以下、同様にしてマゼンタの現像器4b,シアンの現像器4c,ブラックの現像器4dにより感光ドラム1上に形成された第2色のマゼンタトナー像,第3色のシアントナー像,第4色のブラックトナー像が順次に中間転写ドラム91上に重畳転写される。
【0104】
上述の第1色から第4色のトナー像の一次転写に際して、一次転写バイアス印加電源92から印加される一次転写バイアスは、トナーと逆極性(プラス)である。なお、感光ドラム1から中間転写ドラム91への第1色から第4色のトナー像の順次転写工程において、転写ベルト95及び中間転写体クリーニングクローラ97は中間転写ドラム91から離間されている。
【0105】
転写ベルト95は、中間転写ドラム91に対して平行に軸受けさせて中間転写ドラム91の下方に当接・離間自在に設置されている。転写ベルト95は、二次転写ローラ95Aと駆動ローラ95Bに掛け渡されており、矢印R95方向に回転する。二次転写ローラ95Aには、二次転写バイアス印加電源96により所望の二次転写バイアスが印加され、駆動ローラ95Bも等電位にしている。そして、転写ベルト95が中間転写ドラム91に当接されて二次転写部(二次転写ニップ部)T2を構成している。一方、記録材Pは、給紙カセット(不図示)からレジストローラ93A,93B、転写前ガイド94を通過して二次転写部T2に所定のタイミンクで給紙される。このとき、二次転写バイアス印加電源92から二次転写ローラ95Aに二次転写バイアスが印加され、中間転写ドラム91上の4色のトナー像が転写材P上に一括で二次転写される。トナー像が転写されて記録材Pは、定着装置81に搬送され、ここで加熱・加圧されて表面のトナー像が溶融され定着される。一方、転写材Pに二次転写されないで中間転写ドラム91上に残ったトナー(二次転写残トナー)は、電源98から直流電圧が重畳されたバイアスか印加された中間転写体クリーニングローラ97によって、正規の極性とは逆極性(プラス)に転換されることで、一次転写部T1を介して静電気的に感光ドラム1に吸着され、中間転写ドラム91表面は清浄化される。こうして感光ドラム1上に吸着された二次転写残トナーは、その後、感光ドラム1のクリーニング装置6によって除去され、回収される。
【0106】
本実施の形態の画像形成装置では、中間転写ドラム91として、図14に示すように、円筒形の厚み3mmのアルミニウムの芯金91A上に、450μmの弾性層91Bを設け、さらに弾性層91Bの上に15μmの表層(離型層)91Cを形成したものを採用した。
【0107】
弾性層91B及び表層91Cの材料は、前述の実施の形態1,2と同様のものを採用し、中間転写ドラム91の外径は、トータルで186mmとした。
【0108】
またトナーとしては、「川北式付着力指数」が110以上のものを使うと高画質が得られるのは、上述実施の形態と同様である。また、「川北式流動性指数」が0.3以上0.6以下、「川北式付着力指数」が110以上300以下のものを採用するとより好ましいことも同様である。
【0109】
さらに、中間転写体をドラム構成の中間転写ドラム91にすることによって、ベルト構成に比べて、中間転写体の表面の曲率が比較的一定であるので、中間転写体の表面速度に対して、弾性層91Bの厚みを比較的自由に設計することができるという利点がある。
【0110】
また、弾性層91Bの局所的な伸縮はほぼ無視できるため、より高画質を実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明を適用することができる画像形成装置の概略構成を模式的に示す前側から見た縦断面図である。
【図2】イエローのプロセスユニット近傍の拡大図である。
【図3】実施の形態1における、中間転写ベルトの層構成を模式的に示す図である。
【図4】弾性エネルギー成分比率を求めるときの表面微小硬度測定結果を示す図である。
【図5】表面微小硬度を測定するようすを説明する斜視図である。
【図6】トナーの表面微小硬度とベルトの表面微小硬度との関係を見つける手法を説明する図である。
【図7】(a),(b),(c),(d)は、中間転写体が柔らかい場合の、一次転写部におけるトナーの挙動を説明する図である。
【図8】川北式付着力指数と飛び散り指数との関係を説明する図である。
【図9】川北式流動性指数及び川北式付着力指数と、現像特性,転写特性,画像特性との関係を説明する図である。
【図10】川北式流動性指数、川北式付着力指数を測定する方法を説明する図である。
【図11】川北式流動性指数、川北式付着力指数を求める方法を説明する図である。
【図12】実施の形態2における、中間転写ベルトの層構成を模式的に示す図である。
【図13】実施の形態3における、画像形成装置の概略構成を模式的に示す前側から見た縦断面図である。
【図14】実施の形態3における、中間転写ドラムの層構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0112】
1,1a,1b,1c,1d
感光ドラム(像担持体)
4a,4b,4c,4d
現像装置(現像手段)
5a,5b,5c,5d
一次転写ローラ
51 中間転写ベルト(中間転写体)
91 中間転写ドラム(中間転写体)
T1 一次転写部(転写部)
t トナー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電像を担持する像担持体と、前記静電像をトナーで現像し、トナー像を形成する現像手段と、前記像担持体に接し、前記像担持体に形成された前記トナー像が転写される中間転写体とを備えた画像形成装置において、
前記中間転写体の表面微小硬度は、前記トナーの表面微小硬度よりも小さく、
前記トナーの川北式付着力指数は110以上である、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記トナーについての川北式付着力指数が300以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トナーについての川北式流動性指数が0.3以上0.6以下である、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
像担持体に静電像を形成する工程と、
前記静電像を川北式付着力指数が110以上のトナーで現像し、トナー像を形成する工程と、
前記像担持体に接する中間転写体であって、表面微小硬度が前記トナーの表面微小硬度よりも小さい中間転写体へ、前記トナー像を転写する工程と、を有する、
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項5】
前記トナーについての川北式付着力指数が300以下である、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記トナーについての川北式流動性指数が0.3以上0.6以下である、
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項1】
静電像を担持する像担持体と、前記静電像をトナーで現像し、トナー像を形成する現像手段と、前記像担持体に接し、前記像担持体に形成された前記トナー像が転写される中間転写体とを備えた画像形成装置において、
前記中間転写体の表面微小硬度は、前記トナーの表面微小硬度よりも小さく、
前記トナーの川北式付着力指数は110以上である、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記トナーについての川北式付着力指数が300以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トナーについての川北式流動性指数が0.3以上0.6以下である、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
像担持体に静電像を形成する工程と、
前記静電像を川北式付着力指数が110以上のトナーで現像し、トナー像を形成する工程と、
前記像担持体に接する中間転写体であって、表面微小硬度が前記トナーの表面微小硬度よりも小さい中間転写体へ、前記トナー像を転写する工程と、を有する、
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項5】
前記トナーについての川北式付着力指数が300以下である、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記トナーについての川北式流動性指数が0.3以上0.6以下である、
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−146187(P2006−146187A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303533(P2005−303533)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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