説明

画像形成装置及び画像形成装置のサーマルヘッド冷却方法

【課題】サーマルヘッドに蓄積された熱を効率的に放熱する。
【解決手段】用紙を所定の速度で搬送する印字媒体搬送部31と、サーマルヘッド20の温度を検出する温度検出サーミスタ18と、温度検出サーミスタからの検出温度を所定の温度と比較する温度判定部と、印字データを印字しない余白領域にサーマルヘッド20が位置付けられていることを判定する余白判定部を有し、温度判定部によりサーマルヘッドの高温状態を判定したとき、余白領域では用紙を低速で搬送するよう印字媒体搬送部31を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーマルヘッドを搭載した画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、サーマルプリンタは印字媒体の搬送方向に直角に配置されたサーマルヘッドを有する。このサーマルヘッドは複数の発熱抵抗素子がライン状に配置され、当該発熱抵抗素子に選択的に電流を流して発熱させる。これによって、熱転写用のインクリボンを選択的に溶かして印字媒体に転写させることにより、又は印字媒体としての感熱紙を発色させることによって画像形成を行う。
【0003】
しかしながら連続して印刷動作を行う場合、発熱抵抗素子で発生した熱がサーマルヘッドに蓄熱され、当該サーマルヘッドの温度が上昇する。この蓄積された温度がサーマルヘッドの保証温度を超えると、印字品質の劣化又はヘッドの寿命低下を招くことがある。
【0004】
そのため、サーマルヘッドにサーミスタを載置することによりサーマルヘッドの温度を検出することが行われている。印刷動作中の検出温度が所定の温度を超えた場合、一旦印字動作を停止し発熱抵抗素子を放熱することにより、検出温度が保証温度を下回るまで待機する技術がある。ここで、放熱のためにサーマルヘッドを待機させるタイミングは、印刷開始位置で待機させるものであり、サーミスタの検出温度が保証温度を下回ったときに直ちに印字を再開するのが一般的である。そして、放熱のための印字待機時は、サーマルヘッドのヒートシンクを通じて自然冷却を行っているのも一般的である。また、従来のヒートシンクによる自然冷却では、放熱時間がかかることから冷却ファン及び水冷装置を装着し、強制冷却により放熱時間を短縮する方法がある。
【0005】
なお、特開2009−202419(特許文献1)には、サーマルヘッドの冷却のための印画待機中に発生するローラ跡が印字媒体としてのロール紙の印画領域内に発生するのを防止する技術が記載されている。特許文献1によると、温度検知部により検知した温度が所定温度以上であるとき、ロール紙上のインクの転写が開始される転写開始位置を、ローラにより挟持される位置までずらした後、印画を停止し、印画領域内におけるローラ跡の発生を防止するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−202419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の冷却ファン及び水冷装置を装着し、強制冷却により放熱時間を短縮する方法は、コストアップ又は装置の大型化を招くことから小型サーマルプリンタで採用することは困難であるという問題がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、コストアップ又は装置の大型化を生じることなく、サーマルヘッドに蓄積された熱を効率的に放熱することを可能にした画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、印字媒体に位置付けられ、発熱抵抗素子を選択的に発熱駆動させて印字データの印字を行うサーマルヘッドを有する画像形成装置において、前記印字媒体を所定の速度で搬送する印字媒体搬送部と、前記サーマルヘッドの温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部からの検出温度を所定の温度と比較する温度判定部と、印字データを印字しない前記印字媒体の余白領域に前記サーマルヘッドが位置付けられていることを判定する余白判定部を有し、更に、前記温度判定部により前記サーマルヘッドの高温状態を判定したとき、前記余白領域では前記印字媒体を低速で搬送するよう前記印字媒体搬送部を制御する制御部を有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を有する本発明によれば、サーマルヘッドの高温状態を判定したとき、印字データを印字しない印字媒体の余白領域では印字媒体を低速で搬送するよう印字媒体搬送部を制御するようにしたので、冷却ファン及び水冷装置を装着することによるコストアップ又は装置の大型化を生じることなく、サーマルヘッドに蓄積された熱を効率的に放熱することを可能にした画像形成装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施の形態に関する画像形成装置のブロック図である。
【図2】第1の実施の形態に関する画像形成装置の印字機構の概略図である。
【図3】第1の実施の形態に関する画像形成装置の主制御部の機能ブロック図である。
【図4】第1の実施の形態に関する用紙ラベルの印字状態を示す説明図である。
【図5】第1の実施の形態に関する画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】同じく第1の実施の形態に関する画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施の形態に関する画像形成装置の主制御部の機能ブロック図である。
【図8】第2の実施の形態に関する画像形成装置に使用する温度−放熱時間テーブルである。
【図9】第2の実施の形態に関する画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態について説明する。図2は第1の実施の形態に関する画像形成装置1の印字機構の概略図である。画像形成装置1は印字媒体としての用紙ラベル2に所定の印字データを印字するための装置である。用紙ラベル2は長尺状の台紙3と、台紙3に等間隔に仮貼付されたラベル5からなる。用紙ラベル2がサーマルヘッド20に向かって順次搬送されることにより、感熱紙からなるラベル5がサーマルヘッド20によって感熱印字される。所定の画像が印字された用紙ラベル2が画像形成装置1より排出されることにより、ラベル5は用紙ラベル2から剥離され、利用可能となる。
【0013】
印字前の用紙ラベル2はローラ回転軸37にロール紙32として巻回されている。巻回された用紙ラベル2は、ガイドローラ33を介して矢印A方向に所定の速度で搬送される。用紙ラベル2の搬送は、サーマルヘッド20に対向して配置されたプラテンローラ31によって行われる。プラテンローラ31は用紙搬送モータ19の回転により、駆動ベルト30を介して行われる。印字媒体搬送部としてのプラテンローラ31は、用紙ラベル2をサーマルヘッド20に対し相対的にライン毎に搬送する。
【0014】
サーマルヘッド20は図示しない発熱抵抗素子が、用紙ラベル2の搬送方向に直角にライン状に配置される。サーマルヘッド20の印字位置は、プラテンローラ31に対向する位置である。そして、サーマルヘッド20の発熱抵抗素子は、後述するヘッド駆動部16によって選択的に電流が流され発熱駆動される。こうして感熱紙からなる印字媒体としてのラベル5を発色させることによって、印字データの印字を行う。
【0015】
サーマルヘッド20には、サーマルヘッド20の温度を検出するヘッド温度検出サーミスタ18が載置される。更に、用紙ラベル2の搬送方向におけるサーマルヘッド20の印字位置手前には、用紙ラベル2の先端及び後端を検出する用紙検出センサ17が設けられる。
【0016】
図1は第1の実施の形態に関する画像形成装置1のブロック図である。データ受信部11は図示しない上位装置から制御データ、印字データ及び制御信号を受信し、上位装置に対し制御信号を送信する。主制御部10はデータ受信部11が受信した制御データ、印字データ及び制御信号の解釈を行い、用紙ラベル2の1ページ分、即ちラベル5の1枚分の印字データを図示しないイメージバッファへ展開する。そして、イメージバッファからサーマルヘッド20へ印加するドットパターンを生成するとともに、後述する各部を制御する。
【0017】
機構制御部15は前記用紙搬送モータ19を駆動し、駆動ベルト30を介してプラテンローラ31を回転させる。これにより、用紙ラベル2を搬送方向に所定の速度で搬送するよう制御する。ここでいう所定の速度とは、1ライン毎に後述する待機時間を挿入することなく搬送する通常搬送及び1ライン毎に待機時間を挿入して低速で搬送する間欠搬送をいう。また、ヘッド駆動部16は主制御部10が生成したドットパターンに従って、選択的に電流をサーマルヘッド20へ印加する。これにより、1ライン毎にサーマルヘッド20を発熱するよう制御する。検出回路部13は用紙ラベル2の先端及び後端を検出する用紙検出センサ17からの検出信号を受信する。同じく検出回路部13は、サーマルヘッド20の温度を検出するヘッド温度検出サーミスタ18からの温度情報を受信する。
【0018】
そして、記憶回路部12はデータ受信部11が上位装置から受信した制御データ、印字データ及び制御信号を記憶する。また、記憶回路部12は、用紙ラベル2の1ページ分の印字データを展開するためのイメージバッファを有する。そして、記憶回路部12は操作パネル部14の操作によって設定された各種動作のセットアップモードを記憶する。更に、記憶回路部12は、主制御部10によって実行されるプログラム及び固定的なデータを予め記憶する。更に、操作パネル部14は各種動作モード情報等をセットアップするための操作キー及び操作状況を表示するLCD表示パネル及びLEDランプを有する。
【0019】
図3は第1の実施の形態に関する画像形成装置1の主制御部10の機能ブロック図である。同図に示す機能ブロック図は、主制御部10が記憶回路部12に記憶されたプログラムによって実現される機能を示す。印刷制御部21はヘッド駆動部16による1ページ分の印刷動作と、機構制御部15による用紙ラベル2の搬送動作を制御する。サーマルヘッド駆動制御部22は、ヘッド駆動部16に対し、サーマルヘッド20に1ライン分の印加を行うよう指示する。ヘッドサーミスタ検出部23は、検出回路部13に対し、ヘッド温度検出サーミスタ18からの温度情報を検出するよう指示する。
【0020】
ヘッド温度高温判定部24−1は、ヘッド温度検出サーミスタ18からの検出回路部13の温度情報より、サーマルヘッド20の温度と高温閾値とを比較することにより高温状態を判定するよう動作する。このヘッド温度高温判定部24−1による高温状態の判定により、後述するサーマルアラーム状態となる。なお、この高温閾値は搭載されているサーマルヘッド20の記録品質保証仕様から実験等により求める。一方、ヘッド温度低温判定部24−2はヘッド温度検出サーミスタ18からの検出回路部13の温度情報より、サーマルヘッド20の温度と低温閾値とを比較することにより低温状態を判定するよう動作する。
【0021】
用紙通常搬送制御部25は、ヘッド温度検出サーミスタ18からの検出回路部13の温度情報が平常状態のとき、機構制御部15に対し、用紙搬送モータ19を動作させて用紙ラベル2を通常搬送、即ち後述する待機時間の挿入なしに1ライン分搬送するよう指示する。用紙間欠搬送制御部26は、ヘッド温度検出サーミスタ18からの検出回路部13の温度情報が高温状態のとき、機構制御部15に対し、用紙搬送モータ19を動作させて用紙ラベル2を間欠搬送、即ち所定時間待機後に1ライン分搬送するよう指示する。
【0022】
余白計算部27は印字制御部21の制御により、用紙ラベル2の1ページ分の印字データを基に、サーマルヘッド20が存在する用紙ラベル2上の位置から残りの余白領域の長さ、即ち印字しないライン数を計算する。余白判定部28は印字制御部21の制御により、余白計算部27の計算結果から、用紙ラベル2の余白領域にサーマルヘッド20が位置付けられていることを判定する。
【0023】
図4は第1の実施の形態に関する用紙ラベル2の印字状態を示す説明図である。用紙ラベル2は前述の通り長尺状の台紙3と、台紙3に等間隔に仮貼付されたラベル5−1、5−2、5−3からなる。ラベル5−1の印字データは印字領域41−1と余白領域42−1からなり、ラベル5−2の印字データは印字領域41−2と余白領域42−2からなるものとする。用紙ラベル2は矢印A方向に搬送される。そして通常の印字状態ではラベル5−1は用紙通常搬送制御部25の制御により、通常の搬送速度で搬送される。なお、51−1はラベル5−1の印字開始位置であり、51−2はラベル5−2の印字開始位置であり、51−3はラベル5−3の印字開始位置である。
【0024】
ここで、同図は印字領域41−1、41−2、41−3が印字された後を示すものであるが、同図には示していないサーマルヘッド20が仮に矢印44の位置で高温になったものとする。即ち、ラベル5−2の印字データの印字領域41−2を印字中に、ヘッド温度高温判定部24−1が高温を判定したものとする。印刷制御部21はラベル5−2の印字領域41−2は通常搬送で印字を継続する。しかしながら、印刷制御部21は、ラベル5−2の余白領域42−2においては、矢印Bに示すように通常搬送の速度より低速で間欠搬送を行う。これにより、サーマルヘッド20に蓄積された熱を効率的に放熱することができるものである。間欠搬送の後、サーマルヘッド20はラベル5−3の印字開始位置51−3に位置付けされる。
【0025】
図5及び図6は第1の実施の形態に関する画像形成装置1の動作を示すフローチャートである。まず用紙ラベル2の1ページ分のイメージバッファへの展開が完了した後、印刷制御部21は機構制御部15に対し、用紙搬送モータ19を駆動してサーマルヘッド20をラベル5−1の印字開始位置51−1に位置付けるよう指示する。そして、印刷制御部21は、余白計算部27に対し、イメージバッファに展開された印字データから、余白領域42−1のライン数を計算するよう指示する。
【0026】
S101:主制御部10のサーマルヘッド駆動制御部22は、ヘッド駆動部16に対し、サーマルヘッド20に1ライン分の印加を行うよう指示する。印加されたサーマルヘッド20は用紙ラベル2のラベル5−1の印字開始位置51−1において、1ライン分の印字を行う。
S102:主制御部10の印刷制御部21は、ヘッド温度高温判定部24−1によるサーマルアラーム状態かどうか判定する。サーマルアラーム状態であれば、ステップ106へ移行し、サーマルアラーム状態でなければS103へ進む。
【0027】
S103:サーマルアラーム状態でないとき、主制御部10のヘッドサーミスタ検出部23は検出回路部13に対し、ヘッド温度検出サーミスタ18から温度情報を検出するよう指示する。
S104:主制御部10の印刷制御部21は、ヘッド温度高温判定部24−1に対し、検出回路部13が検出した温度情報が、高温閾値を超えているかどうか判定するよう指示する。高温閾値を超えていれば、ステップ105へ進み、高温閾値を超えていなければ、ステップ108へ移行する。
【0028】
S105:高温閾値を超えているとき、主制御部10の印刷制御部21は、サーマルアラーム状態であることを設定する。
S106:主制御部10の用紙通常搬送制御部25は、機構制御部15に対し、用紙搬送モータ19を駆動し用紙ラベル2を1ライン分搬送するよう指示する。
【0029】
S107:主制御部10の余白判定部28は、余白計算部27の計算結果から、用紙ラベル2の余白領域42−1にサーマルヘッド20が位置付けられているかどうか判定する。余白領域42−1まで搬送されているときは、ステップ110(図6Cへ)へ進み、余白領域42−1まで搬送されていないときは、ステップ101へ戻り、余白領域42−1へ搬送されるまで繰り返す。
S108:一方、ステップ104において高温閾値を超えていないときは、主制御部10の用紙通常搬送制御部25は、機構制御部15に対し、用紙搬送モータ19を駆動し用紙ラベル2を1ライン分搬送するよう指示する。
【0030】
S109:主制御部10の印刷制御部21は、用紙ラベル2の1ページ分の印字データの印字が完了したかどうか、即ち、印字開始位置51−2にサーマルヘッド20が位置付けられているかどうか判定する。1ページ分の印字データの印字の完了したときは、終了とし(図6Bへ)、1ページ分の印字データの印字が完了していなければステップ101に戻り、1ページ分の印字が完了するまで繰り返す。
S110(図6Cより):ステップ107において、余白領域42−1まで搬送されているときは、主制御部10のヘッドサーミスタ検出部23は、検出回路部13に対し、ヘッド温度検出サーミスタ18から温度情報を検出するよう指示する。
【0031】
S111:主制御部10の印刷制御部21は、ヘッド温度低温判定部24−2に対し、検出回路部13が検出した温度情報が、低温閾値を下回っているかどうか判定するよう指示する。低温閾値を下回っていればステップ113へ進み、低温閾値を下回っていなければ、即ち、高温状態が継続していればステップ112へ移行する。
S112:ヘッド温度検出サーミスタ18からの温度が高温状態を継続していれば、主制御部10の用紙間欠搬送制御部26は、機構制御部15に対し、用紙搬送モータ19を駆動し、用紙ラベル2を間欠搬送、即ち所定時間待機後に1ライン分搬送するよう指示する。ここで、所定の待機時間は、図示しない搬送間隔監視タイマにより1ライン搬送する毎に挿入する時間であり、例えば0.1秒間である。
【0032】
S113:ヘッド温度検出サーミスタ18からの温度が低温閾値を下回っていれば、主制御部10の用紙通常搬送制御部25は、機構制御部15に対し、用紙搬送モータ19を動作させて用紙ラベル2を通常搬送、即ち、待機時間の挿入なしで1ライン分搬送するよう指示する。
S114:主制御部10の印刷制御部21は、用紙ラベル2の1ページ分の印字データの印字が完了したかどうか、即ち、印字開始位置51−2にサーマルヘッド20が位置付けられているかどうか判定する。1ページ分の印字データの印字の完了したときは、ステップ115へ進み、1ページ分の印字データの印字が完了していなければステップ110に戻り、1ページ分の印字が完了するまで繰り返す。これにより用紙ラベル2の間欠搬送を行う。即ち、1ライン毎に待機時間を挿入することにより通常の搬送速度より低速で搬送することになる。
【0033】
S115:ステップ114において、1ページ分の印字データの印字が完了したときは、主制御部10のヘッドサーミスタ検出部23は、検出回路部13に対し、ヘッド温度検出サーミスタ18から温度情報を検出するよう指示する。
S116:主制御部10の印刷制御部21は、ヘッド温度低温判定部24−2に対し、検出回路部13が検出した温度情報が、低温閾値を下回っているかどうか判定するよう指示する。低温閾値を下回っていればステップ117へ進み、低温閾値を下回っていなければ、即ち、高温状態が継続していれば、ステップ115へ戻り低温状態になるまで繰り返す。
S117:低温閾値を下回っているときは、主制御部10の印刷制御部21は、サーマルアラーム状態を解除する。
【0034】
以上、第1の実施の形態によれば、サーマルヘッド20が高温状態の場合は、サーマルヘッド20が印字データの余白領域42にあるとき、通常の搬送速度より低速で、即ち間欠搬送するので、高温状態となっている発熱抵抗素子が直接接触している用紙ラベル2の位置を間欠的にずらすことになり、熱伝導率が高まり、放熱効果を向上させることができる。これにより、冷却ファン及び水冷装置を装着することによるコストアップ又は装置の大型化を生じることなく、サーマルヘッド20に蓄積された熱を効率的に放熱することができる。
【0035】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態に関する画像形成装置1のブロック図と画像形成装置1の印字機構の概略図は、前記第1の実施の形態の図1と図2と同じであるので説明を省略する。
【0036】
図7は第2の実施の形態に関する画像形成装置1の主制御部の機能ブロック図である。同図に示す機能ブロック図は、前記第1の実施の形態における図3と同様、主制御部10が記憶回路部12に記憶されたプログラムによって実現される機能を示す。第1の実施の形態と異なるところは、待機時間算出部38を有する点である。待機時間算出部38は、サーマルヘッド20が高温状態の場合、サーマルヘッド20が用紙ラベル2の余白領域42に位置するとき、間欠搬送を行う際に搬送ライン毎の待機時間を算出するものである。前記第1の実施の形態では、間欠搬送を行う際の所定の待機時間は、図示しない搬送間隔監視タイマにより、例えば0.1秒間であり、一定である(ステップ112)。これに対し、本実施の形態ではヘッド温度と余白領域42の距離(ライン数)により最適な待機時間を算出するものである。
【0037】
図8は第2の実施の形態に関する画像形成装置1に使用する温度−放熱時間テーブルである。温度−放熱時間テーブル50は、ヘッド温度検出サーミスタ18が検出したサーマルヘッド20の温度52と、その温度52に対応するサーマルヘッド20の放熱に必要な放熱時間53からなる。なお、この温度−放熱時間テーブル50の放熱時間53は、搭載されているサーマルヘッド20の記録品質保証仕様から実験等により求めるものとする。
【0038】
図7に戻り、主制御部10の待機時間算出部38は検出回路部13に対し、ヘッド温度検出サーミスタ18からサーマルヘッド20の温度情報を検出するよう指示する。ヘッド温度検出サーミスタ18からサーマルヘッド20の温度52を取得すると、待機時間算出部38は温度−放熱時間テーブル50から、温度52に対応する放熱時間53を読み取る。更に、待機時間算出部38は余白計算部27から、印字しない余白領域42の残りライン数を取得する。そして、待機時間算出部38は、次式より放熱時間53と残りライン数から、搬送ライン毎の待機時間を搬送間隔監視タイマ値として計算する。
待機時間(搬送間隔監視タイマ値)=放熱時間(ms)/残りライン数
【0039】
例えば、ヘッド温度検出サーミスタ18からサーマルヘッド20の温度52が、80℃であれば、必要な放熱時間53は15秒(15,000ms)と読み取る。そして、余白計算部27は余白領域42の残りライン数が400ラインであると計算したとする。すると、
15,000(ms)/400(ライン)=37.5(ms/ライン)
であり、搬送ライン毎の待機時間は搬送間隔監視タイマ値37.5(ms/ライン)となる。なお、ここで余白計算部27は、印字しない余白領域42を印字しないライン数で取得することを説明したが、余白領域42を実際の長さ(インチ)で取得してもよい。この場合、画像形成装置1の1ライン搬送間隔は1/200インチとし、仮に2インチであれば400ラインとなる。
【0040】
次に、第2の実施の形態に関する画像形成装置1の動作を説明する。第2の実施の形態に関する画像形成装置1の動作のうち、前記第1の実施の形態に関する画像形成装置1の動作の図5に相当する動作は、第1の実施の形態の説明と同じであるので説明を省略する。図9は第2の実施の形態に関する画像形成装置1の動作を示すフローチャートであり、前記第1の実施の形態に関する画像形成装置1の動作の図6に相当する。
【0041】
S210:前記ステップ107において、余白領域42−1まで搬送されているときは、主制御部10のヘッドサーミスタ検出部23は、検出回路部13に対し、ヘッド温度検出サーミスタ18から温度情報を検出するよう指示する。
S211:主制御部10の印刷制御部21は、ヘッド温度低温判定部24−2に対し、検出回路部13が検出した温度情報が、低温閾値を下回っているかどうか判定するよう指示する。低温閾値を下回っていればステップ214へ進み、低温閾値を下回っていなければ、即ち、高温状態が継続していればステップ212へ移行する。
【0042】
S212:ヘッド温度検出サーミスタ18からの温度が高温状態を継続していれば、主制御部10の待機時間算出部38は、前述の通りサーマルヘッド20の温度情報と、余白領域42の残りライン数から、搬送ライン毎の待機時間を搬送間隔監視タイマ値として計算する。
S213:主制御部10の用紙間欠搬送制御部26は、機構制御部15に対し、用紙搬送モータ19を駆動し、用紙ラベル2を間欠搬送するよう指示する。即ち、待機時間算出部38が算出した待機時間後に1ライン分搬送するよう指示する。
【0043】
S214:ステップ211において、ヘッド温度検出サーミスタ18からの温度が低温閾値を下回っていれば、主制御部10の用紙通常搬送制御部25は、機構制御部15に対し、用紙搬送モータ19を動作させて用紙ラベル2を通常搬送、即ち、待機時間の挿入なしで1ライン分搬送するよう指示する。
S215:主制御部10の印刷制御部21は、用紙ラベル2の1ページ分の印字データの印字が完了したか、即ち、印字開始位置51−2にサーマルヘッド20が位置付けられているかどうか判定する。1ページ分の印字データの印字の完了したときは、ステップ216へ進み、1ページ分の印字データの印字が完了していなければステップ210に戻り、1ページ分の印字が完了するまで繰り返す。これにより用紙ラベル2の間欠搬送を行う。即ち、搬送ライン毎に待機時間を挿入することにより通常の搬送速度より低速で搬送することになる。
【0044】
S216:ステップ215において、1ページ分の印字データの印字が完了したときは、主制御部10のヘッドサーミスタ検出部23は、検出回路部13に対し、ヘッド温度検出サーミスタ18から温度情報を検出するよう指示する。
S217:主制御部10の印刷制御部21は、ヘッド温度低温判定部24−2に対し、検出回路部13が検出した温度情報が、低温閾値を下回っているかどうか判定するよう指示する。低温閾値を下回っていればステップ218へ進み、低温閾値を下回っていなければ、即ち、高温状態が継続していれば、ステップ216へ戻り低温状態になるまで繰り返す。
S218:低温閾値を下回っているときは、主制御部10の印刷制御部21は、サーマルアラーム状態を解除する。
【0045】
以上、第2の実施の形態によれば、サーマルヘッド20が高温状態の場合は、サーマルヘッド20が印字データの余白領域42にあるとき、サーマルヘッド20の温度情報と、余白領域42の残りライン数から、搬送ライン毎に待機時間を計算し、温度情報と残りライン数に基づいた低速の搬送速度で搬送するので、高温状態となっている発熱抵抗素子が直接接触している用紙ラベル2の位置を間欠的にずらすことになり、熱伝導率が高まり、放熱効果を向上させることができる。これにより、冷却ファン及び水冷装置を装着することによるコストアップ又は装置の大型化を生じることなく、サーマルヘッド20に蓄積された熱を効率的に放熱することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 画像形成装置
2 用紙ラベル
3 台紙
5 ラベル
10 主制御部
18 ヘッド温度検出サーミスタ
20 サーマルヘッド
41 印字領域
42 余白領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字媒体に位置付けられ、発熱素子を選択的に発熱駆動させて印字データの印字を行うサーマルヘッドを有する画像形成装置において、
前記印字媒体を所定の速度で搬送する印字媒体搬送部と、
前記サーマルヘッドの温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部からの検出温度から前記サーマルヘッドの高温状態を判定する温度判定部と、印字データを印字しない前記印字媒体の余白領域に前記サーマルヘッドが位置付けられていることを判定する余白判定部を有し、
更に、前記温度判定部により前記サーマルヘッドの高温状態を判定したとき、前記余白領域では前記印字媒体を前記所定の速度より低速で搬送するよう前記印字媒体搬送部を制御する制御部を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記印字媒体の一頁分の前記印字データを格納する印字データ記憶部と、
前記印字データ記憶部に格納した前記一頁分の前記印字データから、印字しない前記余白領域を計算する余白計算部とを有し、
前記余白判定部は、前記余白計算部の計算結果から、前記余白領域に前記サーマルヘッドが位置付けられていることを判定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記サーマルヘッドは、複数の前記発熱素子が前記印字媒体の搬送方向に直角にライン状に配置され、
更に、前記印字媒体を搬送する前記低速とは、印字中の搬送速度より低速で、かつ一定であることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記印字媒体を搬送する前記低速とは、前記温度検出部で検出した温度と、前記印字媒体の前記サーマルヘッドが存在する位置から残りの前記余白領域の長さの関係より定められた速度であることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ライン状に配置された前記サーマルヘッドに対し、前記印字媒体搬送部は前記印字媒体を相対的にライン毎に搬送するものであり、
前記印字媒体を搬送する前記低速とは、前記ライン毎の搬送の間に待機時間を挿入することにより行われることを特徴とする請求項3又は4記載の画像形成装置。
【請求項6】
印字媒体を印字媒体搬送部により所定の速度で搬送する媒体搬送工程と、
前記印字媒体に位置付けられたサーマルヘッドの発熱素子を選択的に発熱駆動して前記印字媒体に印字データの印字を行う印字工程と、
前記サーマルヘッドの温度を検出する温度検出部により前記サーマルヘッドの温度を検出する温度検出工程と、
前記温度検出部により検出した前記サーマルヘッドの温度から前記サーマルヘッドの高温状態を判定する温度判定工程と、
前記印字データを印字しない前記印字媒体の余白領域に前記サーマルヘッドが位置付けられていることを判定する余白判定工程と、
前記温度判定工程により前記サーマルヘッドの高温状態を判定した後、前記余白判定工程により判定する前記余白領域では、前記印字媒体搬送部により前記印字媒体を前記所定の速度より低速で搬送する媒体低速搬送工程を含むことを特徴とする画像形成装置のサーマルヘッド冷却方法。
【請求項7】
前記印字媒体の一頁分の前記印字データを印字データ記憶部に格納する印字データ記憶工程と、
前記印字データ記憶部に格納した前記一頁分の前記印字データから、印字しない前記余白領域を計算する余白計算工程とを含み、
更に、前記余白判定工程は、前記余白計算工程の計算結果から、前記余白領域に前記サーマルヘッドが位置付けられていることを判定することを特徴とする請求項6記載の画像形成装置のサーマルヘッド冷却方法。
【請求項8】
前記サーマルヘッドは、複数の前記発熱素子が前記印字媒体の搬送方向に直角にライン状に配置され、
更に、前記印字媒体を搬送する前記低速とは、印字中の搬送速度より低速で、かつ一定であることを特徴とする請求項7記載の画像形成装置のサーマルヘッド冷却方法。
【請求項9】
前記印字媒体を搬送する前記低速とは、前記温度検出部で検出した温度と、前記印字媒体の前記サーマルヘッドが存在する位置から残りの前記余白領域の長さの関係より定められた速度であることを特徴とする請求項8記載の画像形成装置のサーマルヘッド冷却方法。
【請求項10】
前記ライン状に配置された前記サーマルヘッドに対し、前記印字媒体搬送部は前記印字媒体を相対的にライン毎に搬送するものであり、
前記印字媒体を搬送する前記低速とは、前記ライン毎の搬送の間に待機時間を挿入することにより行われることを特徴とする請求項8又は9記載の画像形成装置のサーマルヘッド冷却方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−148526(P2012−148526A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10426(P2011−10426)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】