説明

画像形成装置及び画像形成装置のトレースデータ格納方法

【課題】プリンタ単体にてエラーの調査ができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録媒体を搬送する搬送機構と、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、第1の記憶装置であるRAM第1面及び第2の記憶装置であるRAM第2面と、書き換え可能な不揮発性記憶装置であるフラッシュROMと、トレースデータをRAM第1面に記憶させ、エラー発生時にRAM第2面にトレースデータを退避させ、退避させたトレースデータをフラッシュROMに格納する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プリンタなどの画像形成装置及び画像形成装置のトレースデータ格納方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタなどの画像形成装置は機械部分とソフトウエアとの協働によって動作している。従って、ソフトウエアのみならず様々なエラーや問題が起こりうる。これらの問題を解決するためには、画像形成装置の動作を記録したトレースデータが必要となる。
【0003】
従来の画像形成装置は、画像形成装置に接続されるパソコン、サーバなどの上位機種上で動作するプリンタドライバによってエラーの内容を記録している。
【0004】
また、ネットワークとプリンタとの間で送受信されるデータをサンプリングして格納する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−237913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上位機種上で動作するプリンタドライバによってエラーの内容を記録する方法は、通信エラーが伴うとエラーの記録が不可能となる。
【0007】
また、ネットワークとプリンタの間で送受信するデータをサンプリングする方法では、プリンタ内部で発生したエラーを記録できない。
【0008】
従って、プリンタ単体にてエラーの調査ができる画像形成装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態は記録媒体を搬送する搬送機構と、 記録媒体に画像を形成する画像形成部と、記憶装置であるRAMと、書き換え可能な不揮発性記憶装置であるフラッシュROMと、トレースデータをRAMに記憶させ、エラー発生時にトレースデータをフラッシュROMに格納する制御部と、を備える画像形成装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】画像形成装置の構成を表す図である。
【図2】画像形成装置の動作を示す図である。
【図3】トレースデータ格納サブルーチンの動作を示すフローチャートである。
【図4】トレースデータ書き出しサブルーチンの動作を示すフローチャートである。
【図5】データの格納領域を示す図である。
【図6】RAM第1面に格納するデータのうちヘッダの詳細を示した図である。
【図7】トレースデータの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明による画像形成装置及び画像形成装置のトレースデータ格納方法の一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
本実施形態の画像形成装置は、記録媒体を搬送する搬送機構と、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、記憶装置であるRAMと、書き換え可能な不揮発性記憶装置であるフラッシュROMと、トレースデータをRAMに記憶させ、エラー発生時にトレースデータをフラッシュROMに格納する制御部と、を備える。
【0013】
図1は、本実施形態の画像形成装置の構成を表す図である。ここで、画像形成装置には、レーザープリンタのような電子式画像形成装置、インクジェットプリンタ、ドットプリンタ、サーマルプリンタなどが含まれる。ここでは、サーマルプリンタを例にとって説明する。
【0014】
図1に示すように、画像形成装置は、制御部であるCPU101と、書き換え可能な不揮発性記憶装置であるフラッシュROM102と、第1の記憶装置であるRAM第1面501及び第2の記憶装置であるRAM第2面502を含む記憶装置であるRAM103と、書き換え可能な記憶装置であるEEPROM104と、を備える。
【0015】
さらに、画像形成装置は、記録媒体の有無を検出する用紙検出センサ105と、上位機種との通信インターフェースである入出力I/F106と、アナログデータをディジタルデータに変換するA/Dコンバータ107と、を備える。
【0016】
また、画像形成装置は、記録媒体を搬送する搬送機構を有する。画像形成装置は、記録媒体を搬送するための駆動力を記録媒体搬送機構に供給する搬送モータ109と、この搬送モータ109を制御する搬送モータドライバ108と、記録媒体に画像を形成する画像形成部であるサーマルヘッド111と、このサーマルヘッド111を制御するサーマルヘッドドライバ110と、記録媒体を切断するカッターに駆動力を供給するカッターモータ113と、このカッターモータ113を制御するカッターモータドライバ112と、を備える。
【0017】
図2は、画像形成装置の動作を示す図である。図2に示すように、ステップ201において、画像形成装置はパソコンなどの上位機種118から印字データを受信し、RAM103などの記憶装置の受信バッファ114に格納する。
【0018】
ステップ202において、画像形成装置は受信バッファ114から印字データを順次読み出し、コマンドを解析し、解析結果をRAM103などの記憶装置の編集バッファ115に出力する。
【0019】
ステップ203において、画像形成装置は編集バッファ115のデータを読み込み、受信データがコマンドであるかを判定する。画像形成装置は、受信データがコマンドであった場合はステップ204においてそのコマンドを実行し、ステップ201に戻る。画像形成装置は、受信データがコマンドでなかった場合はステップ205に進む。
【0020】
ステップ205において、画像形成装置は印字データを作成し、イメージデータをRAM103などの記憶装置のイメージバッファ116に、用紙送り指示などのメカ制御データをRAM103などの記憶装置のメカ制御用バッファ117に格納する。
【0021】
ステップ206において、画像形成装置はメカ制御用バッファ117からメカ制御データを読み出し、機械部分を動作させるメカ制御を行う。
【0022】
ステップ207において、画像形成装置はイメージバッファ116からイメージデータを読み出し、印字を行い、ステップ201に戻る。
【0023】
これらの動作は、ソフトウエアに制御される。このソフトウエアは重要となる動作の後に動作の記録であるトレースデータを記憶装置に出力するサブルーチンを有する。
【0024】
図3は、トレースデータ格納サブルーチンの動作を示すフローチャートである。図3に示すように、ステップ301において、画像形成装置はフラッシュROM102からユーザの設定データを読み出し、RAM第1面501に格納する。
【0025】
ステップ302において、画像形成装置はトレースデータをRAM第1面501に格納し、このトレースデータ格納サブルーチンを呼び出したプログラムに戻る。
【0026】
このRAM第1面に格納されたトレースデータは、エラーなどの問題が発生した場合に呼び出されるトレースデータ書き出しサブルーチンがフラッシュROM102に書き出す。
【0027】
図4は、トレースデータ書き出しサブルーチンの動作を示すフローチャートである。図4に示すように、ステップ401において、画像形成装置はRAM第1面501から設定データとトレースデータとを読み込む。
【0028】
ステップ402において、画像形成装置は読み出した設定データとトレースデータとをRAM第2面502に退避させる。従って、退避後から次のステップ403完了までの間のトレースデータもRAM第1面501に格納可能となる。
【0029】
ステップ403において、画像形成装置はRAM第2面502から設定データとトレースデータとをフラッシュROM102に格納する。
【0030】
フラッシュROM102からは、パソコンなどからのコマンドによって格納された設定データとトレースデータとが読み出され、エラーや問題の原因解明のための解析に利用される。すなわち、制御部は、上位機種118からの読み出しコマンドを受信したとき、フラッシュROM102に格納した設定データとトレースデータとを読み出して上位機種に送信する。
【0031】
図5は、データの格納領域を示す図である。図5に示すように、RAM第1面501は例えば64Kの記憶容量を持ち、ヘッダ、ディテイル、予備領域であるFillerを格納する。
【0032】
ディテイル領域は、トレースデータを書き出したモジュールごとに記憶領域が割り当てられる。モジュールは、例えば「Mcon」、「Feed」、「Editor」、「Builder」、「Interrupt」、「Realtime」などが挙げられるが、画像形成装置の組み込みソフトウエアの構成によってこれらは変化する。
【0033】
各モジュールに割り当てられた記憶領域の内部は複数のブロックに細分される。「Mcon」を例にとると、画像形成装置はMconのトレースデータが発生するたびに、第1ブロックから順に第nブロックにトレースデータを格納する。第nブロックまで格納した場合、次にトレースデータが発生したときは、第1ブロックから順に上書きする。従って、記憶領域が満杯となって書き込めなくなることはない。
【0034】
画像形成装置はエラーや問題が発生するたびに呼び出されるトレースデータ書き出しサブルーチンにより、RAM第1面501に記憶したデータ内容をRAM第2面502に退避させる。さらに、画像形成装置はRAM第2面502に退避させたデータをフラッシュROM102の第1格納領域に格納する。
【0035】
次にエラーや問題が発生した場合、画像形成装置はRAM第2面502に退避させたデータをフラッシュROM102の第2格納領域に格納する。
【0036】
第k格納領域まで格納した場合、次にエラーや問題が発生すると、画像形成装置はRAM第2面502に退避させたデータをフラッシュROM102の第1格納領域から順に上書きして格納する。
【0037】
従って、画像形成装置は直近k回のエラーや問題の設定データとトレースデータとを常に格納することができる。
【0038】
図6は、RAM第1面501に格納するデータのうちヘッダの詳細を示した図である。図6に示すように、画像形成装置はヘッダとして、例えば「IDコード」、「Boot Program バージョン」、「Main Program バージョン」、「CGバージョン」、「インデックステーブル」、「オプション」、EEPROMに格納された全情報である「EEPROM情報」を格納する。
【0039】
「インデックスデータ」は、各モジュールごとに割り当てられた格納場所の先頭アドレス、1ブロックあたりのサイズ、最新ブロック番号を含む。
【0040】
図7は、トレースデータの構成例を示す図である。図7に示すように、トレースデータは、例えば「モジュールIDコード」、「関数No.」、トレースデータの「全体通し番号」、タイムスタンプである「記録日時」、トレースデータの詳細情報である「固有情報」を含む。
【0041】
トレースデータは「記録日時」を含んでいるため、フラッシュROM102からトレースデータを読み出して解析するときは、「記録日時」によってソートすれば現象の発生順にトレースデータが並ぶ。
【0042】
以上述べたように、本実施形態の画像形成装置は、第1の記憶領域であるRAM第1面501及び第2の記憶装置であるRAM第2面502と、書き換え可能な不揮発性記憶装置であるフラッシュROM102と、トレースデータをRAM第1面501に記憶させ、エラー発生時にRAM第2面502にトレースデータを退避させ、退避させたトレースデータをフラッシュROM102に格納する制御部と、を備える。
【0043】
従って、画像形成装置は単体にてトレースデータを保持することができるという効果がある。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
101:CPU、
102:フラッシュROM、
501:RAM第1面、
502:RAM第2面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送機構と、
前記記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
記憶装置であるRAMと、
書き換え可能な不揮発性記憶装置であるフラッシュROMと、
トレースデータを前記RAMに記憶させ、エラー発生時に前記トレースデータをフラッシュROMに格納する制御部と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記RAMは、
第1の記憶装置であるRAM第1面と、
第2の記憶装置であるRAM第2面と、を備え、
前記制御部は、
前記トレースデータをRAM第1面に記憶させ、エラー発生時に前記RAM第1面に記憶させた前記トレースデータを前記RAM第2面に退避させ、退避させた前記トレースデータをさらにフラッシュROMに格納する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記RAMにタイムスタンプをさらに格納させ、エラー発生時に前記トレースデータとともに前記タイムスタンプをフラッシュROMに格納する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記RAMにユーザの設定情報をさらに格納させ、エラー発生時に前記トレースデータとともに前記設定情報をフラッシュROMに格納する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、
読み出しコマンドを受信したとき、フラッシュROMに格納した前記トレースデータを読み出して送信する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
制御部が、
トレースデータをRAMに記憶させ、
エラー発生時に前記トレースデータをフラッシュROMに格納する
画像形成装置のトレースデータ格納方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−51345(P2012−51345A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197938(P2010−197938)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】