説明

画像形成装置及び画像形成装置の節電方法

【課題】物理層部とメディアアクセス制御部との間のクロックを、通信するデータに応じて個別に制御することで、より大きな節電効果を得ること。
【解決手段】画像形成装置1は、ハブとの間でオートネゴシエーションを行う物理層部91と、物理層部から受信データ、受信データの受信クロック、応答データの送信クロックを受信するとともに、物理層部に対して応答データを送信するメディアアクセス制御部92と、受信クロックと送信クロックのクロック周波数を制御する通信クロック制御部95と、メディアアクセス制御部にシステムバスを介して接続され、画像形成に関する各種演算処理を行う処理部93と、処理部の処理クロックのクロック周波数を制御する処理クロック制御部94と、を備え、通信クロック制御部は、メディアアクセス制御部が応答データを物理層部に所定時間送信していない場合に、送信クロックを停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画像形成装置の節電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、コピー、ファックス等の機能を備えた複合機が知られている。複合機は、主に会社や学校に設置されており、複数のコンピュータにネットワーク接続されている。各コンピュータの使用者は、コンピュータで作成した書面等のデータをネットワーク回線により複合機に送信し、そのデータを受信した複合機は、メモリにデータを格納し、格納されたデータに基づいて紙等の記録媒体にその画像を定着させて出力する。
複合機は、電源がほぼ一日にわたってオンにされているため、消費電力が大きく、地球温暖化が大きな問題となっている今日においては、消費電力を下げることが望まれている。この問題を解決すべく、未使用時には省電力モードに切り替えることができる複合機がある。
また、省電力モード中において、更なる節電を図るため、通信速度がギガビットの機器に対するクロックを停止させたり、サポートしている通信速度のうち、最も遅い通信速度となる周波数のクロックを物理層部に与えたりしているものもある(例えば、特許文献1参照。)。これは、クロックの周波数を低く抑えることにより、通信に必要な電力も低く抑えることができるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−243533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、物理層部とメディアアクセス制御部との間においては、ネットワークを介して送られてきた印刷ジョブ等の受信データが物理層部からメディアアクセス制御部に送られ、ネットワークを介して送られてきたIPアドレス等の応答信号に対する応答データがメディアアクセス制御部から物理層部に送られる。
しかし、特許文献1においては、これらを通信するための各クロックを一括で制御しており、通信するデータに応じて各クロックの節電を行っていなかった。そのため、いずれかのデータの通信しか行っていなくても、他のデータの通信に用いられるクロックは動作したままであり、節電効率が悪かった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、物理層部とメディアアクセス制御部との間のクロックを、通信するデータに応じて個別に制御することで、より大きな節電効果を得ることができる画像形成装置及び画像形成装置の節電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、画像形成装置において、
ハブにネットワーク接続され、前記ハブとの間でオートネゴシエーションを行う物理層部と、
前記物理層部から受信データ、前記受信データの受信クロック、応答データの送信クロックを受信するとともに、前記物理層部に対して前記応答データを送信するメディアアクセス制御部と、
前記受信クロックと前記送信クロックのクロック周波数を制御する通信クロック制御部と、
前記メディアアクセス制御部にシステムバスを介して接続され、画像形成に関する各種演算処理を行う処理部と、
前記処理部の処理クロックのクロック周波数を制御する処理クロック制御部と、を備え、
前記通信クロック制御部は、前記メディアアクセス制御部が前記応答データを前記物理層部に所定時間送信していない場合に、前記送信クロックを停止させることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記処理クロック制御部は、オートネゴシエーションにより前記送信クロックが10MHz又は100MHzと決定された場合に、前記通信クロック制御部による前記送信クロックの停止に伴い、前記処理クロックのクロック周波数を前記送信クロックの停止前のクロック周波数よりも低下させることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記処理クロック制御部は、前記通信クロック制御部により前記送信クロックを停止させた後、前記メディアアクセス制御部が前記受信データを前記物理層部から所定時間受信していない場合に、前記処理クロックを停止させることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置による画像形成装置の節電方法において、
前記メディアアクセス制御部が前記応答データを前記物理層部に所定時間送信していないか否かを判定するステップと、
前記メディアアクセス制御部が前記応答データを前記物理層部に所定時間送信していない場合に、前記送信クロックを停止させるステップと、
を有することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の画像形成装置の節電方法において、
オートネゴシエーションにより前記送信クロックが10MHz又は100MHzと決定された場合に、前記送信クロックの停止に伴い、前記処理クロックのクロック周波数を前記送信クロックの停止前のクロック周波数よりも低下させるステップを有することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の画像形成装置の節電方法において、
前記送信クロックを停止させた後、前記メディアアクセス制御部が前記受信データを前記物理層部から所定時間受信していない場合に、前記処理クロックを停止させるステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、物理層部がハブとの間でオートネゴシエーションを行い、物理層部とメディアアクセス制御部との間で通信される受信データの受信クロック、応答データの送信クロックのクロック周波数が決定される。
そして、メディアアクセス制御部が応答データを物理層部に所定時間送信していない場合に、通信クロック制御部は送信クロックを停止させる。
これにより、ネットワークから応答データの要求を所定時間受信しない場合には、送信クロックのみを停止させることができる。すなわち、受信データの受信クロックは動作させながらも、応答データの送信クロックのみを個別に停止させることができる。
よって、物理層部とメディアアクセス制御部との間の通信のクロックを、通信するデータに応じて個別に制御することができ、従来よりも大きな節電効果を得ることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、オートネゴシエーションにより送信クロックが10MHz又は100MHzと決定された場合に、送信クロックの停止に伴い、処理クロック制御部は、処理クロックのクロック周波数を送信クロックの停止前のクロック周波数よりも低下させる。
これにより、送信クロックの節電に加え、さらに処理クロックの節電をすることができ、さらに大きな節電効果を得ることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、通信クロック制御部が送信クロックを停止させた後、メディアアクセス制御部が受信データを物理層部から所定時間受信していない場合に、処理クロック制御部は処理クロックを停止させる。
これにより、ネットワークから受信データを所定時間受信しない場合には、処理クロックを停止させることで、さらに大きな節電効果を得ることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、メディアアクセス制御部が応答データを物理層部に所定時間送信していないと判定された場合に、送信クロックを停止させる。
これにより、ネットワークから応答データの要求を所定時間受信しない場合には、送信クロックのみを停止させることができる。すなわち、受信データの受信クロックは動作させながらも、応答データの送信クロックのみを個別に停止させることができる。
よって、物理層部とメディアアクセス制御部との間の通信のクロックを、通信するデータに応じて個別に制御することができ、従来よりも大きな節電効果を得ることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、オートネゴシエーションにより送信クロックが10MHz又は100MHzと決定された場合に、送信クロックの停止に伴い、処理クロック制御部は、処理クロックのクロック周波数を送信クロックの停止前のクロック周波数よりも低下させる。
これにより、送信クロックの節電に加え、さらに処理クロックの節電をすることができ、さらに大きな節電効果を得ることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、送信クロックを停止させた後、メディアアクセス制御部が受信データを物理層部から所定時間受信していない場合に、処理クロックを停止させる。
これにより、ネットワークから受信データを所定時間受信しない場合には、処理クロックを停止させることで、さらに大きな節電効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】画像形成装置の概略を示す図。
【図2】画像形成装置の制御系についての構成を示すブロック図。
【図3】コントローラ部の制御系についての構成を示すブロック図。
【図4】PHYとMACとの間のクロックについて説明するブロック図。
【図5】第1の実施形態における節電モードを説明する図。
【図6】第1の実施形態における節電処理の流れを示すフローチャート。
【図7】第2の実施形態における節電モードを説明する図。
【図8】第2の実施形態における節電処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、画像形成装置及び画像形成装置の節電方法について説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
<画像形成装置の全体構成>
図1、図2に示すように、画像形成装置1は、スキャナ機能、コピー機能、プリンタ機能を備えた複合機である。画像形成装置1は、本体部2と、本体部2にオプション接続された後処理部3と、を備えている。画像形成装置1は、ハブ(HUB)10を介してネットワークNに接続されている。
図1、図2に示すように、本体部2は、スキャナ部4と、自動原稿給紙部(ADF部:Auto Document Feeder)5と、操作表示部6と、プリンタ部7と、制御部8と、コントローラ部9と、を備えている。
本体部2には、給紙機構を有する3つの給紙トレイFT1〜FT3、及び大容量トレイユニットFT4が設けられており、各給紙トレイFT1〜FT4の近傍には給紙された用紙を検知する給紙センサが設けられている。これらの給紙トレイFT1〜FT4には、記録媒体として、それぞれ普通紙、裏紙、再生紙、上質紙、タブ紙等の種類及びサイズが異なる用紙が収容可能となっている。
本体部2は、ネットワークNを介して複数のユーザ端末Pに接続されている。すなわち、本体部2は、接続されたユーザ端末Pからデータ(画像形成のためのデータ)を受信し、受信したデータによりプリントする画像を形成する。
後処理部3は、本体部2から搬送された用紙に各種後処理を行う、いわゆるフィニッシャーである。例えば、本体部2から搬送された用紙のソート処理を行うソートユニット、パンチ処理を行うパンチユニット、折り処理を行う折りユニット、断裁処理を行う断裁ユニット、カッティング処理行うカッティングユニット等を備える。また、後処理部3には、搬送された用紙が排紙される排紙トレイET1、ET2が設けられている。
各給紙トレイFT1〜FT4に収納された用紙に画像形成する際には、用紙が各給紙トレイFT1〜FT4から引き出され、途中のローラを介してプリンタ部7に搬送される。プリンタ部7においては、本体部2の制御の下、指示された画像が用紙に形成され、その後、ローラを介して排紙トレイET1、ET2に排出される。
【0021】
<スキャナ部>
図2に示すように、スキャナ部4は、CCD等のイメージセンサ41と、スキャナ制御部42とを備えている。スキャナ制御部42は、制御部8からの制御信号に基づいて、スキャナ部4の各部の駆動を制御する。具体的には、コンタクトガラスに載置された原稿面の露光走査を実行させ、反射光をイメージセンサ41において結像させて画像を読み取る。そして、この結像された光信号を光電変換してアナログ画像信号を生成させ、制御部8に送信する。
【0022】
<ADF部>
図2に示すように、ADF部5は、制御部8からの制御信号に基づいて、ADF部5の制御を行うADF制御部51を備えている。ADF部5は、原稿トレイ(図示略)に載置された原稿をスキャナ部4のコンタクトガラス上に1枚ずつ自動給送する。
【0023】
<操作表示部>
図2に示すように、操作表示部6は、表示部61と、操作表示制御部62と、操作部63と、その他図示しない操作キー群とを備えている。
表示部61は、操作表示制御部62からの表示制御信号に従って、画面上に各種設定画面や画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。また、表示部61の画面上には、例えば透明電極を格子状に配置した感圧式(抵抗膜圧式)のタッチパネル等からなる操作部63が構成されており、手指やタッチペン等で操作された力点のXY座標を電圧値で検出し、検出された位置信号を操作信号として操作表示制御部62に出力する。
【0024】
<プリンタ部>
図2に示すように、プリンタ部7は、LD部(Laser Diode)71と、プリンタ制御部72とを備えている。プリンタ部7は、制御部8から入力された画像データに基づいて用紙に画像を形成する。ここで、ユーザ端末Pから画像データが画像形成装置1に送信されてきた場合には、後述するコントローラ部9から受信したデータに基づいて画像を形成する。すなわち、プリンタ部7は、画像形成手段として機能する。
LD部71は、LD、感光体ドラム、帯電部、露光部、現像部、転写部、クリーニング部、及び定着部等を備えている。また、LD部71は、内部の搬送経路に従って用紙を搬送するための給紙ローラ、レジストローラ、排紙ローラをはじめとする各種ローラ、搬送路切換板、及び反転部等を備えている。LD部71の搬送部は、プリンタ制御部72からの制御に基づいて、当該ジョブで指定された用紙を給紙トレイFT1〜FT4の何れかから給紙して、給紙された用紙を搬送経路上に搬送する。LD部71の搬送経路上には、複数のセンサが設けられている。これらのセンサは、用紙が通過する際に検出信号を発生し、これをプリンタ制御部72に出力する。
プリンタ制御部72は、制御部8からの制御信号を受信して、LD部71の各部の動作を制御する。また、プリンタ制御部72は、搬送経路上に設けられたセンサからの検出信号に基づいて、ジョブ毎に給紙した用紙の枚数をカウントし、制御部8に出力する。
プリンタ部7では、プリンタ制御部72からの指示に基づいて、感光体ドラム表面を帯電部により帯電させ、制御部8から入力されたPWM信号に基づいてLDにより感光体ドラム表面にレーザ光を照射することにより静電潜像を形成する。そして、現像部において感光体ドラム表面の静電潜像を含む領域にトナーを付着させ、転写部により用紙にトナーを転写して画像を形成する。そして、転写された画像を定着部で定着させた後、画像形成済みの用紙を排紙ローラにより後処理部3へ搬送する。
【0025】
<制御部>
図2に示すように、制御部8は、CPU81、ROM82、RAM83、記憶部84等を備えている。制御部8は、ROM82に記憶されているシステムプログラムや画像形成処理プログラム、排紙処理プログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAM83に展開し、展開したプログラムに従って画像形成装置1の各部の動作を集中制御する。記憶部84は、例えば、EEPROMによって構成され、スキャナ部4又はコントローラ部9から入力された画像データを含むジョブのデータを一時的に記憶する。また、記憶部84は、操作表示部6を介するユーザの操作入力により設定される各種設定情報の表示に用いるために生成されるプレビュー画像に関する情報等を記憶する。
例えば、CPU81は、スキャナ部4又はコントローラ部9から入力された受信データ(画像情報)と、操作表示部6を介して入力された設定情報とに基づいてジョブを作成する。そして、このジョブを実行することで用紙に画像を形成する。
ここで、ジョブとは、画像形成に関する一連の動作を指し、例えば、複数枚の原稿をコピーする場合には、複数枚の原稿をコピーに関する一連の動作が1ジョブである。また、複数部数のコピーを行なう場合は、複数部数のコピーに関する一連の動作が1ジョブである。
他にも、CPU81は、画像データの圧縮処理や伸長処理を行い、画像データの送信等に関する処理を行う。
また、CPU81は、ネットワークNを介してコントローラ部9から入力されたIPアドレス等の応答信号に対する応答データを作成する。
【0026】
<コントローラ部>
図3に示すように、コントローラ部9は、ネットワークNに接続されたユーザ端末Pからプリントするためのデータ(画像情報)を受信すると共に、その受信データを制御部8に送信する。また、コントローラ部9は、ネットワークNに接続されたユーザ端末PからIPアドレス等の応答信号を受信すると共に、この応答信号に対するIPアドレス等の情報を含む応答データをユーザ端末Pに送信する。
コントローラ部9は、物理層部としてのPHY91と、メディアアクセス制御部としてのMAC92と、処理部としてのCPU93と、処理クロック制御部94と、通信クロック制御部95と、メモリ96等を備えている。
【0027】
(PHY)
PHY91は、ハブ10にネットワーク接続され、ハブ10との間でオートネゴシエーションを行う。オートネゴシエーションは、PHY91とハブ10との間における通信速度(10Mbps、100Mbps、1Gbps等)及び通信モード(全二重、半二重)を決定することであり、PHY91とハブ10の双方に対応する最も条件の良いものが決定される。通信速度であれば、1Gbpsが最も高速であるため最も条件が良く、10Mbpsが最も条件が悪いこととなる。通信モードであれば、全二重の方が半二重よりも条件が良い。
このように、PHY91がオートネゴシエーションを行うことにより、PHY91とハブ10との間の通信条件(具体的には、通信速度及び通信モード)が決まる。すなわち、コントローラ部9は、オートネゴシエーションで決まった通信条件でハブ10から印刷ジョブ等の受信データを受信する。また、コントローラ部9は、オートネゴシエーションで決まった通信条件で送られてくる応答信号に対して作成されたIPアドレス等の応答データをハブ10からユーザ端末Pに送信する。
【0028】
図3に示すように、PHY91の内部には、レジスタ部91aが備えられている。図3に示すように、レジスタ部91aには、フラグビットが集合したステータスレジスタ91bがあり、ここには、PHY91の通信に関する性能情報が格納されている。具体的には、ステータスレジスタ91bには、PHY91が対応可能な通信の性能情報(例えば、100BASE−T4、100BASE−TX FULL Duplex、100BASE−TX、10BASE−T FULL Duplex、10BASE−Tの5種類)に関する情報を書き込むビットを有している。ここで、「FULL Duplex」は、全二重を指し、これが記載されていないものは半二重である。
【0029】
PHY91がハブ10とオートネゴシエーションを行うことにより、ステータスレジスタ91bにある性能情報と共通する性能をハブ10が有していた場合、ステータスレジスタ91bのうち、PHY91とハブ10とで共通している性能情報に関するビットにフラグが立てられる。
PHY91は、オートネゴシエーションが終了したときに、終了した旨をCPU93に知らせる割り込み信号をCPU93に送信する。
【0030】
(MAC)
MAC92は、PHY91から受信データやIPアドレス等の応答信号を受信すると共に、その受信データや応答信号をCPU93、メモリ96に送信する。MAC92は、システムバス97に接続されている。
MAC92は、PHY91と通信を行うインターフェイス部92aと、インターフェイス部92aに接続され、送受信するデータを格納すると共に、送受信の制御を行う通信制御部92bと、を備えている。
インターフェイス部92aは、オートネゴシエーションを終えたPHY91から決定した通信速度を受信する。
通信制御部92bは、バッファとなるFIFO92cを備えている。FIFO92cには、PHY91から受信したデータを一定容量まで蓄え、一定容量に達したときに蓄えたデータを一気にメモリ96に送信する。
【0031】
(CPU)
CPU93は、メモリ96に記憶された画像形成に関する各種演算処理やデータ送信等の各制御を担う。CPU93は、システムバス97に接続されており、MAC92との間でデータのやり取りや指示が可能となっている。
CPU93は、メモリ96に記憶されたプログラムを実行することにより、受信データに基づく画像の形成や応答信号に基づく応答データの作成を行う。
【0032】
(処理クロック制御部)
処理クロック制御部94は、CPU93及びシステムバス97に接続され、CPU93及びシステムバス97のクロック周波数を増減させることでCPU93及びシステムバス97のクロック周波数を制御する。
例えば、処理クロック制御部94は、CPU93のクロック周波数を200MHz、システムバス97のクロック周波数を100MHzに設定する。もちろん、この設定は任意であり、変更可能である。
処理クロック制御部94は、通信クロック制御部95が送信クロックを停止させた後、MAC92が受信データをPHY91から所定時間受信していないと判断した場合に、処理クロックを停止させる。
【0033】
(通信クロック制御部)
通信クロック制御部95は、PHY91に接続され、オートネゴシエーションにより決定されたクロック周波数をPHY91に発振する。通信クロック制御部95は、2.5MHz及び25MHzのクロックを発振する25MHzクロック制御部95aと、125MHzのクロックを発振する125MHzクロック制御部95bの二つを有している。25MHzクロック制御部95aは、オートネゴシエーションにより決定された通信速度が10Mbps又は100Mbpsの場合に用いられ、125MHzクロック制御部95bは、オートネゴシエーションにより決定された通信速度が1Gbpsの場合に用いられる。
通信クロック制御部95は、MAC92が応答データをPHY91に所定時間送信していないと判断した場合に、送信クロックを停止させる。
【0034】
(メモリ)
メモリ96は、画像形成に用いるデータが格納される記憶手段として機能する。メモリ96には、CPU93により実行される通信速度の判断に関するプログラム等が記憶されている。
【0035】
<PHYとMAC間の通信について>
図4に示すように、PHY91には、25MHzクロック制御部95aと125MHzクロック制御部95bとが接続されており、オートネゴシエーションにより決定された通信速度が10Mbpsであれば、25MHzクロック制御部95aにより2.5MHzのクロック周波数で通信を行う。また、オートネゴシエーションにより決定された通信速度が100Mbpsであれば、25MHzクロック制御部95aにより25MHzのクロック周波数で通信を行う。また、オートネゴシエーションにより決定された通信速度が1Gbpsであれば、125MHzクロック制御部95bにより125MHzのクロック周波数で通信を行う。
以上のようにして決定されるクロック周波数は、受信クロックRX_CLK及び送信クロックTX_CLKのクロック周波数となる。
125MHzクロック制御部95bは、PHY91とセレクタ98に接続されており、双方にクロックを発振することができる。
【0036】
PHY91は、オートネゴシエーションで決定された通信速度により定まる受信クロックRX_CLKで、受信データ(画像形成に必要な印刷ジョブ)をMAC92に送信する。
PHY91は、オートネゴシエーションで決定された通信速度により定まる送信クロックTX_CLKで、応答信号に対する応答データ(IPアドレス等のデータ)をMAC92から受信する。
MAC92は、PHY91のレジスタ部91aにアクセスして、オートネゴシエーションにより決定された通信速度を読み取る。
【0037】
応答データの送信に用いられる送信クロックTX_CLKは、MAC92からセレクタ98に送信されるセレクト信号によって、PHY91からの送信クロックTX_CLK_ORGと125MHzクロック制御部95bからの送信クロックCLK125を選択してAND回路99に出力される。ここで、セレクト信号は、PHY91のレジスタ部91aから読み取った通信速度に基づき、セレクタ98に入力されるいずれのクロックをAND回路99に入力するかの指令となる信号である。オートネゴシエーションにより決定された通信速度が1Gbpsである場合には、125MHzクロック制御部95bからの送信クロックCLK125が選択される。
AND回路99では、応答データの送信に用いられる送信クロックTX_CLKの動作、停止の切り替え制御を行う。AND回路99には、送信クロックTX_CLKと、MAC92からの停止信号が入力される。停止信号が出力された場合、送信クロックTX_CLKは、MAC92に送信されず、送信クロックが停止する。
MAC92は、処理クロック制御部94によって制御される処理クロックSYS_CLKでCPU93とデータの送受信等の処理を行う。
【0038】
<画像形成装置の節電モード>
図5に示すように、画像形成装置1の節電は、二段階にわたって行われる。従って、画像形成装置1は、MAC92の受信データの受信、MAC92による応答データの送信、CPU93による処理の全てが可能な通常の状態(通常モード)、応答データの送信クロックTX_CLKのみが停止された状態(待機モード)、応答データの送信クロックTX_CLK及びCPU93の処理クロックSYS_CLKが停止された状態(省電力モード)の三つの状態に切り替えて節電することができる。
【0039】
<画像形成装置の節電方法>
図6を用いて、画像形成装置の節電方法について説明する。
図6に示すように、MAC92は、PHY91から応答信号を受信していないことにより、応答データをPHY91に送信していない時間が所定時間(事前に設定される任意の時間)経過したか否かを判断する(ステップS1)。
ステップS1において、MAC92は、所定時間経過したと判断した場合(ステップS1:YES)、通信クロック制御部95は、送信クロックTX_CLKを停止させる(ステップS2)。これで、画像形成装置1は、待機モードに移行する。
次いで、待機モードへの移行後、MAC92は、応答信号の受信があったか否かを判断する(ステップS3)。
【0040】
ステップS3において、MAC92が応答信号の受信があったと判断した場合(ステップS3:YES)、MAC92は、停止している送信クロックTX_CLKを起動させ(ステップS8)、ステップS1の判断に戻る。
ステップS3において、MAC92が応答信号の受信がないと判断した場合(ステップS3:NO)、MAC92は、待機モードに移行後に所定時間(事前に設定される任意の時間)経過したか否かを判断する(ステップS4)。
【0041】
ステップS4において、MAC92は、所定時間経過したと判断した場合(ステップS4:YES)、処理クロック制御部94は、処理クロックSYS_CLK及びCPU93を停止させる(ステップS5)。これで、画像形成装置1は、省電力モードに移行する。
ステップS4において、MAC92は、待機モードに移行後に所定時間経過していないと判断した場合(ステップS4:NO)、MAC92は、ステップS3の判断に戻る。
【0042】
次いで、省電力モードへの移行後、MAC92は、受信データ又は応答信号の受信があったか否かを判断する(ステップS6)。
ステップS6において、MAC92は、受信データ又は応答信号の受信があったと判断した場合(ステップS6:YES)、MAC92は、CPU93を起動させる(ステップS7)。さらに、MAC92は、処理クロックSYS_CLK及び送信クロックTX_CLKを起動させ、通常モードに移行させる(ステップS8,S9)。
通常モードになった後は、MAC92は、再びステップS1の判断に戻り、上記処理を繰り返す。
【0043】
<作用効果>
以上のように、画像形成装置1及び画像形成装置1の節電方法によれば、PHY91がハブ10との間でオートネゴシエーションを行い、PHY91とMAC92との間で通信される受信データの受信クロックRX_CLK、応答データの送信クロックTX_CLKが決定される。
そして、MAC92が応答データをPHY91に所定時間送信していないと判断した場合に、通信クロック制御部95は送信クロックTX_CLKを停止させる。
これにより、ネットワークNから応答データの要求を所定時間受信しない場合には、送信クロックTX_CLKのみを停止させることができる。すなわち、受信データの受信クロックRX_CLKは動作させながらも、応答データの送信クロックTX_CLKのみを個別に停止させることができる。
よって、PHY91とMAC92との間の通信のクロックを、通信するデータに応じて個別に制御することができ、従来よりも大きな節電効果を得ることができる。
【0044】
また、通信クロック制御部95が送信クロックTX_CLKを停止させた後、MAC92が受信データをPHY91から所定時間受信していない場合に、処理クロック制御部94は処理クロックSYS_CLKを停止させる。
これにより、ネットワークNから受信データを所定時間受信しない場合には、処理クロックSYS_CLKを停止させることで、さらに大きな節電効果を得ることができる。
【0045】
[第2の実施形態]
次に、画像形成装置1の節電の段階をより細分化した実施形態について説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態に節電モードを追加したものである。よって、画像形成装置の構成については、第1の実施形態とほぼ同じであるため、異なる部分についてのみ説明し、共通する構成には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態の特徴は、オートネゴシエーションにより送信クロックTX_CLKが10MHz又は100MHzと決定された場合に、通信クロック制御部95による送信クロックTX_CLKの停止に伴い、処理クロック制御部94は、処理クロックSYS_CLKを低下させる機能が付加された点である。すなわち、オートネゴシエーションによって、PHY91とMAC92との間の通信速度が1Gbps以外であると判定された場合には、処理クロックSYS_CLKのクロック周波数を通常モードの処理クロックSYS_CLKのクロック周波数よりも低下させてより節電効果を高めるものである。
【0046】
<画像形成装置の節電モード>
図7に示すように、画像形成装置1の節電は、三段階にわたって行われる。従って、画像形成装置1は、MAC92の受信データの受信、MAC92による応答データの送信、CPU93による処理の全てが可能な通常の状態(通常モード)、応答データの送信クロックTX_CLKのみが停止された状態(待機モード1)、応答データの送信クロックTX_CLKの停止とCPU93の処理クロックSYS_CLKのクロック周波数を通常モードよりも低下させた状態(待機モード2)、応答データの送信クロックTX_CLK及びCPU93の処理クロックSYS_CLKが停止された状態(省電力モード)の四つの状態に切り替えて節電することができる。
【0047】
<画像形成装置の節電方法>
図8を用いて、画像形成装置の節電方法について説明する。
図8に示すように、MAC92は、PHY91から応答信号を受信していないことにより、応答データをPHY91に送信していない時間が所定時間(事前に設定される任意の時間)経過したか否かを判断する(ステップS21)。
ステップS21において、MAC92は、所定時間経過したと判断した場合(ステップS21:YES)、通信クロック制御部95は、送信クロックTX_CLKを停止させる(ステップS22)。これで、画像形成装置1は、待機モード1に移行する。
次いで、MAC92は、PHY91のレジスタ部91aにアクセスして、通信速度を読み取り、通信速度が1Gbpsであるか否かを判断する(ステップS23)。
【0048】
ステップS23において、MAC92は、通信速度が1Gbpsでない、すなわち、通信速度が10Mbps又は100Mbpsであると判断した場合(ステップS23:NO)、処理クロック制御部94は、処理クロックSYS_CLKのクロック周波数を通常モードにおける処理クロックSYS_CLKのクロック周波数よりも低下させる(ステップS24)。具体的には、通常モードにおいて処理クロックSYS_CLKのクロック周波数が200MHzであった場合、ステップS23において、MAC92は、通信速度が1Gbpsでない、すなわち、通信速度が10Mbps又は100Mbpsであると判断した場合に、処理クロック制御部94は、処理クロックSYS_CLKのクロック周波数を通常モードにおける処理クロックSYS_CLKのクロック周波数200MHzよりも低い150MHzに低下させる。なお、処理クロックSYS_CLKのクロック周波数をどの程度低下させるかは任意であり、予め設定しておけばよい。これで、画像形成装置1は、待機モード2に移行する。
ステップS23において、MAC92は、通信速度が1Gbpsであると判断した場合(ステップS23:YES)、MAC92は、ステップS25の処理に進む。
ステップS24の後、又は、ステップS23においてMAC92が、通信速度が1Gbpsであると判断した場合(ステップS23:YES)、MAC92は、応答信号の受信があったか否かを判断する(ステップS25)。
【0049】
ステップS25において、MAC92が応答信号の受信があったと判断した場合(ステップS25:YES)、MAC92は、低下させた処理クロックSYS_CLKのクロック周波数(上記の例では、150MHz)を通常モードにおける処理クロックSYS_CLKのクロック周波数(上記の例では、200MHz)に戻し(ステップS30)、さらに、MAC92は、停止している送信クロックTX_CLKを起動させ(ステップS31)、ステップS21の判断に戻る。なお、ステップS23において、通信速度が1Gbpsであると判断された場合には、処理クロックSYS_CLKのクロック周波数は下げられることはないため、MAC92はステップS30において処理を行うことはなく、ステップS31に進む。すなわち、ステップS30においては、処理クロックSYS_CLKのクロック周波数を通常モードにおけるクロック周波数にすることが目的である。
ステップS25において、MAC92が応答信号の受信がないと判断した場合(ステップS25:NO)、MAC92は、待機モード2に移行後に所定時間(事前に設定される任意の時間)経過したか否かを判断する(ステップS26)。
【0050】
ステップS26において、MAC92は、所定時間経過したと判断した場合(ステップS26:YES)、処理クロック制御部94は、処理クロックSYS_CLK及びCPU93を停止させる(ステップS27)。これで、画像形成装置1は、省電力モードに移行する。
ステップS26において、MAC92は、待機モード2に移行後に所定時間経過していないと判断した場合(ステップS26:NO)、MAC92は、ステップS25の判断に戻る。
【0051】
次いで、省電力モードへの移行後、MAC92は、受信データ又は応答信号の受信があったか否かを判断する(ステップS28)。
ステップS28において、MAC92は、受信データ又は応答信号の受信があったと判断した場合(ステップS28:YES)、MAC92は、CPU93を起動させる(ステップS29)。さらに、MAC92は、処理クロックSYS_CLK及び送信クロックTX_CLKを起動させ、通常モードに移行させる(ステップS31,S32)。
通常モードになった後は、MAC92は、再びステップS21の判断に戻り、上記処理を繰り返す。
【0052】
<作用効果>
このように、オートネゴシエーションにより送信クロックTX_CLKが10MHz又は100MHzと決定された場合に、送信クロックTX_CLKの停止に伴い、処理クロック制御部94は処理クロックSYS_CLKを低下させる。
これにより、送信クロックTX_CLKの節電に加え、さらに処理クロックSYS_CLKの節電をすることができ、さらに大きな節電効果を得ることができる。
【0053】
<その他>
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の本質的部分を変更しない範囲内で自由に設計変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、複合機を例に挙げて説明したが、ネットワークに接続され、自発的にIPアドレス等の応答データを送信することができない機器であれば適用可能である。
また、画像形成装置に設けられたスイッチ等を入力することにより、手動で待機モード、省電力モードに移行させても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 画像形成装置
10 ハブ
91 PHY(物理層部)
92 MAC(メディアアクセス制御部)
93 CPU(処理部)
94 処理クロック制御部
95 通信クロック制御部
N ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブにネットワーク接続され、前記ハブとの間でオートネゴシエーションを行う物理層部と、
前記物理層部から受信データ、前記受信データの受信クロック、応答データの送信クロックを受信するとともに、前記物理層部に対して前記応答データを送信するメディアアクセス制御部と、
前記受信クロックと前記送信クロックのクロック周波数を制御する通信クロック制御部と、
前記メディアアクセス制御部にシステムバスを介して接続され、画像形成に関する各種演算処理を行う処理部と、
前記処理部の処理クロックのクロック周波数を制御する処理クロック制御部と、を備え、
前記通信クロック制御部は、前記メディアアクセス制御部が前記応答データを前記物理層部に所定時間送信していない場合に、前記送信クロックを停止させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記処理クロック制御部は、オートネゴシエーションにより前記送信クロックが10MHz又は100MHzと決定された場合に、前記通信クロック制御部による前記送信クロックの停止に伴い、前記処理クロックのクロック周波数を前記送信クロックの停止前のクロック周波数よりも低下させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記処理クロック制御部は、前記通信クロック制御部により前記送信クロックを停止させた後、前記メディアアクセス制御部が前記受信データを前記物理層部から所定時間受信していない場合に、前記処理クロックを停止させることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置による画像形成装置の節電方法において、
前記メディアアクセス制御部が前記応答データを前記物理層部に所定時間送信していないか否かを判定するステップと、
前記メディアアクセス制御部が前記応答データを前記物理層部に所定時間送信していない場合に、前記送信クロックを停止させるステップと、
を有することを特徴とする画像形成装置の節電方法。
【請求項5】
オートネゴシエーションにより前記送信クロックが10MHz又は100MHzと決定された場合に、前記送信クロックの停止に伴い、前記処理クロックのクロック周波数を前記送信クロックの停止前のクロック周波数よりも低下させるステップを有することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置の節電方法。
【請求項6】
前記送信クロックを停止させた後、前記メディアアクセス制御部が前記受信データを前記物理層部から所定時間受信していない場合に、前記処理クロックを停止させるステップを有することを特徴とする請求項4又は5に記載の画像形成装置の節電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−66678(P2011−66678A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215395(P2009−215395)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】