説明

画像形成装置形品

【課題】記録媒体を必要充分な熱容量かつ高速に加熱し、その後工程で転写定着を行う画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像転写がなされる無端ベルトよりなる転写定着ベルト1と、転写定着ベルト1とニップNを形成する加圧部材24とを具備しており、ニップNを通過する記録媒体P上に画像を転写するようになされており、ニップNを基準位置とした上流側に、加圧部材24と微小ギャップを形成し、かつ記録媒体Pの表面に接触するようになされる加熱手段101が設けられていることを特徴とする画像形成装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷に適用する転写定着装置を具備する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、像担持体(感光体)上に、現像手段により画像を形成し、その画像を1次転写手段により中間転写体へ転写し、さらに中間転写体上の画像を2次転写手段により転写材に転写し、かかる転写材上の画像を定着手段により定着するようになされている構成の画像形成装置が広く知られている。
また、上記各工程を段階的に行う構成の画像形成装置も汎用されているが、その他として、転写工程と定着工程を同時に行うことを可能とした、いわゆる転写定着工程を行うようになされている画像形成装置についても提案がなされている(例えば、下記特許文献1、2参照。)。特許文献1には、中間転写体から転写材に2次転写定着を行う構成の画像形成装置が示されており、特許文献2には、中間転写体から転写定着体に2次転写定着した後、転写定着体から転写材に3次転写定着する構成の画像形成装置が示されている。
【0003】
画像形成技術においては、トナー(樹脂を主体とした帯電性の粉体)が一般的に利用されている。
かかる画像形成において、画像品質の低下を招来しやすい工程は、転写工程である。
画像を形成する記録媒体としては、主に紙が用いられているが、普通紙から厚紙までさまざまな厚さのものがある。また表面性についても上質なものから粗いものまでさまざまである。
特に、表面性の粗い紙を適用すると、紙の表面性に追従できずに微小ギャップが形成されてしまい、かかる微小ギャップ部分で異常放電が発生し、画像が正常に転写されずに、全体としてぼそついた画像になりやすいという不具合が生じる。
【0004】
これに対し、転写工程と定着工程とが同時に行われる機能を具備する画像形成装置においては、表面性の粗い記録媒体(紙)を使用した場合においても画像品質の低下しにくくなるという利点を備えている。
これは、転写工程において、加圧と同時に加熱を行うため、トナーが軟化・溶融して粘弾性を帯びたブロック状の塊となり、紙の表面の微小ギャップ部分に相当する位置においても、転写できるようになるためである。
上述したことから、転写定着手段を具備する画像形成装置は、高画質達成に最適な手段を適用した構成を有していると言えるものである。
【0005】
更に、転写定着方式においては、記録媒体に粉体が乗った状態で走行するようなことがないため、転写定着部の直前まで通紙方向を狭く限定した構成の搬送ガイドを設置することができ、薄紙から厚紙まで、その他の紙種等、種々の条件に対応した搬送を行うことができるという利点がある。このように紙種対応の自由度が高いと、通紙詰まりの発生率を効果的に低減化することも可能となる。
【0006】
ところで、転写定着工程における熱効率を充分に高くするためには、記録媒体(紙)とトナーを融着する面、すなわち紙とトナーの界面の温度を高めることが必要である。
従来においては、トナーを十分に加熱し軟化した状態として紙に圧接させる方式を適用してきた。
しかしながら、この方式において充分な効果を得るためには、トナーを加熱するのみならず転写定着部材も加熱することを行っていたため、転写定着部材が例えば300μmと厚い場合、特に、4連タンデム作像方式等を採用し、周長が長い場合においては、充分な熱効率が確保できない場合があった。
また更には、後工程において冷却しなければならず、その結果、同一部材を一方で加熱し、一方で冷却する構成としなければならないので、エネルギー効率の観点からは非常に不利な構成であった。
【0007】
上述したような課題に鑑みて、記録媒体(紙)そのものを選択的に、トナーが接触する直前において加熱するという技術についての提案もなされた(例えば、下記特許文献3参照。)。
しかしながら、この方式においては、温度ムラが発生してしまうという課題が残っており、特に、多数枚印刷において、いわゆる地汚れが付着しやすくなるという欠点もあった。
【0008】
【特許文献1】特開平10−63121号公報
【特許文献2】特開2004−145260号公報
【特許文献3】特開2005−37879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑みて、転写定着方式を採用して画像形成を行う際、転写定着の直前の位置において、紙を発火等のおそれがない温度に加熱する手段を設け、更には、紙を低熱容量かつ高速で加熱しながら、同時に充分な熱容量を確保した画像形成装置を提供することとした。
本発明の画像形成装置の思想によれば、いわゆる装置のウォームアップ時間が著しい短縮が図られる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明においては、画像転写がなされる無端ベルトよりなる転写定着ベルトと、当該転写定着ベルトとニップを形成する加圧部材とを具備しており、前記ニップを通過する記録媒体上に画像を転写するようになされており、前記ニップを基準位置とした上流側に、前記加圧部材と微小ギャップを形成し、かつ前記記録媒体の表面に接触するようになされる加熱手段が設けられていることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0011】
請求項2の発明においては、前記加圧部材と前記加熱手段との微小ギャップが、前記記録媒体の最小厚さ以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置を提供する。
【0012】
請求項3の発明においては、前記加圧部材と前記加熱手段との微小ギャップの距離は可変であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置を提供する。
【0013】
請求項4の発明においては、前記加熱手段がローラ状回転部材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置を提供する。
【0014】
請求項5の発明においては、前記加熱手段が、板状体とローラ状回転部材により構成されており、前記板状体に熱源を有し、当該板状体から前記ローラ状回転部材に伝熱するようになされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置を提供する。
【0015】
請求項6の発明においては、前記加熱手段を構成するローラ状回転部材と、前記転写定着ベルトとのギャップが、前記加熱手段を構成するローラ状回転部材と前記加圧部材とのギャップよりも大であることを特徴とする請求項4又は5に記載の画像形成装置を提供する。
【0016】
請求項7の発明においては、前記転写定着ベルトの周面上であって、前記ニップを基準位置とした上流側に、感光体が配置されており、当該感光体上に、複数色のトナーを重ねる方式により、カラー画像の形成を行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置を提供する。
【0017】
請求項8の発明においては、ワーデル実用球形度φが、0.8以上の値のトナーを現像剤として用いることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、画像を効率良く熱溶着させることができ、同時に、トナーの表面温度は下げることができ、ホットオフセットを効果的に防止できた。
請求項2の発明によれば、加圧部材への伝熱と作像部への伝熱が効果的に防止されたので、熱による画像品質の劣化を効果的に回避することができた。
請求項3の発明によれば、記録媒体の種類や厚さに選定の自由度をもたせることが可能となり、良好な接触状態を確保しながら加熱することができ、特に厚い記録媒体を用いた場合にも高品質画像を形成することができた。
請求項4の発明によれば、加熱手段をローラ形状としたことにより、記録媒体との摩擦による悪影響を確実に回避でき、特に紙紛等による画像品質低下を防止できた。
請求項5の発明によれば、加熱手段が板状体とローラ状回転部材により構成されているものとしたことにより、加熱性能が高く、高速対応性の向上を図ることができた。
請求項6の発明によれば、作像部へ伝熱が構造上確実に回避でき、画像品質の劣化を効果的に防止できた。
請求項7の発明によれば、転写定着ベルト上に配置した感光体上に、複数色のトナーを重ねる方式によってカラー画像形成を行う構成としたことにより、画像形成装置の小型化を図ることができた。
請求項8の発明によれば、ワーデル実用球形度φが、0.8以上の値のトナーを適用したことにより、転写性が向上し、高画質化が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態について説明するが、本発明は、以下の例に限定されるものではない。
(第一の実施形態)
図1に、本発明に係る画像形成装置の一例として、タンデム型のカラー複写機の概略構成図を示す。
カラー複写機1は、本体中央部に位置する画像形成部1Aと、画像形成部1Aの下方に位置する給紙部1Bと、画像形成部1Aの上方に位置する画像読取部を有している。
本例における画像形成装置は、線速が200mm/sで、作像可能なものとなされている。
画像形成部1Aには、水平方向に延びる転写面を有する中間転写体としての転写定着ベルト2が配置されている。
転写定着ベルト2の上面には、色分解色と補色関係にある色の画像を形成するための構成が設けられている。具体的には、補色関係にある色のトナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)による像を担持可能な像担持体としての感光体3Y、3M、3C、3Bが転写定着ベルト2の転写面に沿って並置されている。
【0020】
転写定着ベルト2は、多層構造を有しているものとし、具体的には、基材となるポリイミド樹脂(膜厚40μm)、ゴム(膜厚60μm)、フッ素樹脂(膜厚6μm)の構成を有するものが好適な例として挙げられる。
前記ゴム層は、画像形成用の記録媒体の表面に凹凸がある場合に、確実に追従させるために必要なものであり、表面のフッ素樹脂層は、トナーや紙粉に対する離型性へ寄与するものである。
【0021】
感光体3Y、3M、3C、3Bは、それぞれ、同方向に回転可能なドラム構造を有している。前記感光体それぞれの周囲には、回転過程において画像形成処理を実行する帯電装置4Y、4M、4C、4B、光書き込み手段としての書き込み装置5Y、5M、5C、5B、色別にカラートナーが収容された現像装置6Y、6M、6C、6B、1次転写装置7Y、7M、7C、7B、及びクリーニング装置8Y、8M、8C、8Bが配置されている。
各符号に付記しているアルファベットは、感光体3と同様、トナーの色別に対応している。
【0022】
転写定着ベルト2は、駆動ローラ11と、従動機能を有するローラ9、10に掛け回されており、感光体3Y、3M、3C、3Bとの対峙位置において同方向に移動可能な構成を有している。
駆動ローラ11と対向する位置には、転写定着ベルト2の表面をクリーニングするクリーニング装置13が設けられている。
【0023】
次に、実際の画像形成工程について感光体を特定して説明する。
先ず、感光体3Yの表面が、帯電装置4Yにより一様に帯電され、画像読取部からの画像情報に基づいて感光体3Y上に静電潜像が形成される。
この静電潜像はイエローのトナーを収容した現像装置6Yによりトナー像として可視像化され、このトナー像は所定のバイアスが印加される1次転写装置7Yにより転写定着ベルト2上に1次転写される。
その他の感光体3M、3C、3Bについても、同様に画像形成がなされ、それぞれの色のトナー像が転写定着ベルト2上に順に転写されて重ね合わせられる。
【0024】
画像転写を行った後、各感光体3上に残留したトナーは、それぞれのクリーニング装置8により除去される。その後、除電ランプ(図示せず)により各感光体3の電位が初期化され、次の作像工程に備えられる。
【0025】
ローラ9に対向する位置には、加圧部材(以下、加圧ローラとも言う)24が設けられている。
加圧ローラ24は、転写定着ベルト2とニップN(以下、ニップ又は転写ニップともいう)を形成する機能を有している。
この加圧ローラ24は、例えばアルミニウムよりなる金属製のパイプ状構造を有し、表面には離型層がコーティングされている。
【0026】
加圧ローラ24側であって、記録媒体(紙)Pに転写定着を行う直前の位置には、記録媒体(紙)Pの表面を加熱する機能を有する加熱手段、例えばローラ状のヒーターが設けられている。
加熱手段101の、記録媒体(紙)Pとの接触面には、記録媒体と滑らかな摺動を行うための、フッ素樹脂等よりなる低摩擦材料層が設けられていてもよい。なお低摩擦材料層の厚さは、数μm程度が好適である。前記加熱手段101を140〜200℃程度に制御し、記録媒体(紙)の表面を加熱するようになされている。
紙を加熱する工程において、紙の裏面に直径20μmの熱電対を固定し測定を行ったところ、加熱手段101の接触後、0〜20msにおいては、紙裏面の温度変化は、5℃以内であったことが確かめられた。なお、紙は一般に汎用されているコピー用紙(リコー製 コピー用紙6200)を適用した。
また、転写定着ベルト2は加圧ローラ24との接触時間が短いほど、加圧ローラに熱を奪われることなく、効率的な転写定着が可能となる。
【0027】
給紙部1Bは、記録媒体としての用紙Pを積載収容する給紙トレイ14と、この給紙トレイ14内の用紙Pを最上のものから順に1枚ずつ分離して給紙する給紙コロ16と、給紙された用紙Pを搬送する搬送ローラ対17と、用紙Pが一旦停止され、斜めずれを修正された後転写定着ベルト2上の画像の先端と搬送方向の所定位置とが一致するタイミングでニップNに向けて送り出されるレジストローラ対18とを有している。
【0028】
ところで、前述した感光体3Y、3M、3C、3Bから転写定着ベルト2上に1次転写されたトナー像T(以下、単にトナーともいう)は、所定のバイアス印加手段によるバイアス(従動ローラ11に印加されるバイアス(AC、パルスなどの重畳を含む))により、転写定着ベルト2に静電気力で転写される。
【0029】
図1に示す画像形成装置においては、転写定着ベルト2に対する転写部と、最も上流側の感光体3Bに対する転写部との間に、転写定着ベルト2の温度を均等にするための均しローラ210が設けられている。
均しローラ210は、ヒートパイプや熱伝導率の高いグラファイト等の材料により構成されており、転写定着ベルト2に接触した状態で回転するようになされている。
均しローラ210については、駆動ローラ11にかかるヒートパイプの機能を具備させて兼用させてもよい。
【0030】
転写定着ベルト2に転写されたトナー像Tは、ニップNにおいて記録媒体(紙)Pに定着されるまで、紙からの熱量により加熱される。
従来公知のカラー画像形成装置においては、記録媒体(紙)による温度低下を考慮して白黒画像形成装置よりも1.5倍の熱量を与えることが必要とされていた。このために記録媒体(紙)が必要以上に加熱されてしまい、トナーとの密着性が高くなりすぎる傾向があった。
本実施形態においては、加熱手段101と均しローラ210によって、温度を制御できるので、充分な光沢を有する画像形成に好適な温度設定が可能である。
すなわち、記録媒体(紙)による温度低下を考慮して、必要以上に加熱してしまうことが回避され、前述のように記録媒体(紙)の過熱を防止できるだけでなく、転写定着ベルト2の温度(定着設定温度)を低く維持できるようになる。
【0031】
本実施形態の画像形成装置によれば、比較的低温定着が可能な構成となされているので、画像形成の際の、いわゆるウォームアップ時間の短縮が図られるとともに、省エネルギー性にも優れている。
また、作像部への伝熱も回避されているので、熱による部品の劣化が防止でき、装置の耐久性の向上が図られる。
【0032】
上述したように、本発明の画像形成装置は、未定着トナー像を保持した用紙を単に加熱・加圧する従来の定着装置に対し、「転写定着装置」として位置付けられるものである。
【0033】
次に、本発明の画像形成装置の、第2の実施形態について図2を参照して説明する。
図2の画像形成装置は、単一の感光体上に色重ねを行う、いわゆるIOI型のカラー複写機の一例である。
なお、図2の画像形成装置において、上述した図1の画像形成装置と共通箇所においては同一符号を付し、説明を省略する。
【0034】
感光体上色重ね方式においては、感光体上の作像動作として、1色のトナーに対する帯電、露光(書き込み)、現像までの工程を、多色のトナーについても一連の工程を単一の感光体上で行う。
図1のように、一色毎に1つの感光体上に作像工程を行い、各色分の感光体を設けた構成のものが、4連タンデム方式であるが、この感光体上色重ね方式は、4連タンデム方式に比較して高速対応性に優れており、また、装置全体としての省スペース化、低コスト化を図ることができる。
【0035】
次に、本発明の画像形成装置について、具体例を挙げて説明する。
〔実施例1〕
本例は、加圧部材としてローラ形状の回転体を用いて転写定着ローラ2と微小ギャップを構成した例である。
図1、図2、図4、図5に適用可能である。
なお、図4は、本発明の画像形成装置の他の一例の概略構成図であり、加熱手段が、板状体103とローラ状回転部材101により構成されている例である。詳細は後述する。
加熱手段を、ローラ状回転部材101のみで構成させる場合には、単に加熱手段101と表記することもある。
【0036】
また、図5は、図1、2、4共通の画像形成装置の加圧部材(加圧ローラ)24近傍における拡大図である。
これらにおいては、圧縮バネ102をローラ状回転部材101の軸両端部に設けることにより加圧ローラ24側に押し付けるようにしながら、一定の微小ギャップを形成されるようにストッパを設けられている。
すなわち、図5に示すように、微小ギャップAが形成されており、他方において、圧縮バネ102の機能により、ローラ状回転部材101は、かかるギャップAを拡げる方向にも移動可能となされている。これによりあらゆる紙種に対応可能となされている。
ギャップAは、50μm程度が好適である。これは、印刷に用いる記録媒体(紙)の最小厚さよりも小さくなる。例えば、最も薄い汎用紙として想定される45k紙は、厚さが70μm程度である。
また一般的に普通紙と言われるリコー製のコピー紙、タイプ6200は、厚さが約90μm程度である。リコー製のフルカラー用推奨紙70Wの厚さは約95μmである。更に、最も厚い紙として想定される220kの用紙の厚さが約220μmである。
更に、特殊な用途として想定される印刷用紙として厚さ300μm程度のものがある。
このような厚い用紙もギャップAを通過できるようにバネ圧を制御することにより、薄紙から厚紙まで、加熱手段に常に接触させて、走行させることができるようになる。
【0037】
〔実施例2〕
この例においては、ローラ状回転部材101が加熱機能を具備しているものとする。
図5の要部の概略構成図に示すように、加熱機能を有するローラ状回転部材101は、金属製のローラ軸101a、金属製のローラ外周101b、及び内部として半導体101cにより構成されている。
半導体101cの材料としては、公知の材料を適宜使用することができ、ヒーターとしての機能を有している。
具体的には、チタン酸バリウム系半導体磁気素体からなるサーミスタ、整磁合金等による材料が適用できる。
【0038】
〔実施例3〕
この例においては、加熱手段が板状体とローラ状回転部材により構成されており、板状体に熱源を有し、板状体からローラ状回転部材に伝熱するようになされているものとする。
図4に示す板状体103が発熱体であり、ローラ状回転部材101に接触させることにより伝熱させる構成となっている。
上述した例のように、ローラ状回転部材101のみに加熱機能を具備させる構成においては、ローラの大きさによっては所望の加熱容量が得られない場合があるため、本実施例のように、板状体の方に熱源を持たせることにより、充分な加熱容量を確保することができるようになる。これにより、特に、高速機等、多くの加熱容量を必要とする装置に適応した構成とすることができる。
【0039】
また、図1、図2中に明示されている記録媒体搬送用のガイド部材111として、板状加熱部材を兼用することもできる。
【0040】
次に、図1及び図2を示して説明した画像形成装置を用いて、実際に画像形成を行った。
<実験1>
図3Aに加熱手段(ヒーター)の概略構成図を示す。図3Bは、給紙側から見たときの加熱手段の拡大図を示す。
加熱手段(ヒーター)21としては、チタン酸バリウム系半導体磁器素体からなる正特性サーミスタ212を並列に10個具備しているものを適用した。
加熱手段(ヒーター)21の重量は約25gであり、伝熱板機能も兼ねている電極213には、厚さ0.2mmのSUS板を用いた。
これら両電極間にAC100Vを印加して加熱させた。
前記半導体はキュリー点を200℃とし、かかる温度を超えると、電極間の抵抗が急激に上昇する。例えば、210℃では電流が1/2、220℃では1/4であった。
1200Wの電力投入で6秒の昇温を行ったところ190〜200℃となり、210℃を超えることなく安全であった。
また、並列に接続した構成を有しているので、上記電力投入条件に従うことにより、各々のサーミスタが200℃に制御され、通紙幅方向の温度ムラも10℃以下程度に抑制できる。
また、ヒーターの記録媒体への接触時間を10〜20msとし、その2〜5ms後にニップにより加圧される条件としたことにより、充分な定着性と発色性を得ることができた。
なお、トナーは、ゼロックス社製EA-HGトナー、及びリコー製PxPトナーを適用した。
<実験2>
この例においては、図3の加熱手段(ヒーター)21として整磁合金を用いた。これはNiと鉄の合金であり、Niを40%程度含有しているものは、キュリー点200℃近傍で透磁率が急激に低下することが知られている。これを厚さ0.3mmの板バネ状とし、誘導コイル(図示せず)により20kHzの高周波による誘導加熱を行った。
1200Wの電力投入で3秒で昇温すると、190℃〜200℃となり、210℃を超えることなく安全であった。
温度均一性に関しては、各部位が200℃に自己制御されるため、通紙幅方向の温度ムラも10℃以下に抑制できた。
ヒーターの記録媒体への接触時間を10〜20msとし、その2〜5ms後にニップにより加圧される条件としたことにより、充分な定着性と発色性を得ることができた。
なお、トナーは、ゼロックス社製EA-HGトナーおよびリコー製PxPトナーを適用した。
【0041】
〔実施例4〕
本実施例においては、図5に示すように、加熱手段を構成するローラ状回転部材101と、転写定着ベルト2とのギャップBが、加熱手段を構成するローラ状回転部材101と加圧部材24とのギャップAよりも大であるものとした構成について説明する。
本例においては、転写定着ベルト2には作像工程によりトナーが転写されている。トナーの粒径は、5〜8μmであるものとし、フルカラー形成用の4色分が重ね合わせられた状態であるとすると、トナー層の厚さは、理論的にトナー粒径の3〜4倍となる。最大40μmであるものと想定する。なお、表示色を増加させると、このトナー層の厚さはさらに増加することになる。
よって、ローラ状回転部材101と転写定着ベルト2とのギャップBは、想定される最大厚さよりも大としなければならない。
また、転写定着ベルト2上のトナーは、熱の影響を受けて転写定着条件が変わってしまうと画質再現が不安定となるおそれがある。
また、転写定着ベルト2の走行状態による微細な位置関係が変動することも考慮すると、図5中のギャップBは、前記想定されるトナー層の最大厚さよりもさらに大きく設定する必要がある。
かかる観点から、ギャップBをギャップAより大きく設定する。例えばギャップBは2mm以上に設定することが望ましい。
【0042】
〔実施例5〕
本実施例においては、単一の感光体上に複数色のトナーを重ねる方式によって画像形成を行う場合について説明する。
図2に示すように、本発明の画像形成装置は、加熱手段101によって記録媒体が加熱されるようになされているので、感光体等の作像部への熱による悪影響が効果的に防止できる構成となっている。
かかる構成上の特徴を生かし、図2に示すような、単一の感光体を適用した、いわゆる上色重ね方式においても更なるメリットが得られる。
この方式は、感光体上の作像動作として、帯電、露光(書き込み)、現像までの工程を、多色のトナーについて一連の工程として、一つの感光体上で行うものである。
図1に示した4連タンデム方式と比較すると、高速対応性に優れており、更には装置全体として小型化、省スペース化が可能となるという利点を有している。
【0043】
上述した各実施例の構成においては、転写定着部におけるニップを構成する加圧部材がローラ状のものとして説明してきたが、本発明は、この例に限定されるものではない。
その他の例として、例えば、ベルト状形態のものが挙げられる。
また、記録媒体(紙)の搬送方向についても、図示の矢印方向に限定されるものではない。
例えば、作像および転写体回転方向や作像位置が転写体の下方に位置する構成の場合などは、搬送が図示の矢印方向とは反対方向になる。
【0044】
次に、球形トナーの実施形態を説明する。
トナーの転写性(転写効率、忠実性)は目的とする画像の画質に影響を及ぼし、このトナーの転写性はトナーの形状に関与していることが知られている。
高画質化を達成すべくトナー形状の最適化を図るために検討したところ、ワーデル実用球形度φが0.8以上の値をもつトナーは転写性が良好であることが確かめられた。
ワーデル実用球形度φは、下記式により示される。
φ=(粒子投影面積に等しい円の直径)/(粒子投影像に外接する円の直径)
具体的には、スライドグラス上にトナーを適当量とり、顕微鏡で拡大(500倍)し、任意の100個のトナーについて測定することで容易に計算できる。
このような条件を満たすトナーを適用することにより、2次転写効率を高められ、高画質化を図ることができる。
【0045】
トナーを構成する材料としては、従来公知のものをいずれも適用できる。
結着樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、 スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレンーイソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体がいずれも適用できる。
また、下記の樹脂を混合して用いてもよい。
すなわち、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスが挙げられる。ポリエステル樹脂を含有させると、充分な定着性を得るためには好適である。
特に結晶性ポリエステル樹脂は、紙接触時に十分に軟化溶融し、定着強度とともに色再現性の高い画像形成が可能となるため好適である。
ポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸との縮重合によって得られるが、用いられるアルコールとはポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等のジオール類、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリエキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノル類、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価のアルコール単体、その他の2価のアルコール単体を挙げることができる。
また、ポリエステル樹脂を得るために用いられるカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価の有機酸単量体、これらの酸無水物、低級アルキルエステルとリノレイン酸の2量体、その他の2価の有機酸単量体を挙げることができる。
【0046】
バインダー樹脂であるポリエステル樹脂を得るためには、以上の2官能性単量体のみによる重合体のみでなく、3官能以上の多官能性単量体による成分を含有する重合体を用いることも好適である。
かかる多官能性単量体である3価以上の多価アルコール単量体としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−サルビタン、ペンタエスリトール、ジペンタエスリトール、トリペンタエスリトール、蔗糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1.3.5−トリヒドロキシメチルベンゼン、その他を挙げることができる。
また3価以上の多価カルボン酸単量体としては、例えば1,2,4−ペンゼントリカルボン酸、1,2,5−ペンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンボール3量体酸、これらの酸無水物、その他を挙げることができる。
【0047】
また、トナーには、転写定着時の転写定着部材表面でのトナーの離型性を向上する目的で、離型剤を含有させることが好ましい。
離型剤としては、従来公知のものを適用できるが、例えば、脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス、モンタンワックス、及び酸化ライスワックス、エステルワックスを単独又は組み合わせて使用することができる。
カルナウバワックスとしては、微結晶のものが良く、酸価が5以下であり、トナーバインダー中に分散した時の粒子径が1μm以下の粒径であるものが好ましい。
モンタンワックスについては、一般に鉱物より精製されたモンタン系ワックスを指し、カルナウバワックス同様、微結晶であり、酸価が5〜14であることが好ましい。
酸化ライスワックスは、米ぬかワックスを空気酸化したものであり、その酸価は10〜30が好ましい。
各ワックスの酸価が各々の範囲未満であった場合、低温定着温度が上昇し低温定着化が不十分となる。逆に酸価が各々の範囲を超えた場合、コールドオフセット温度が上昇し低温定着化が不十分となる。
ワックスの添加量としてはバインダー樹脂100重量部に対して1〜15重量部、好ましくは3〜10重量部の範囲で用いられる。1重量部未満では、その離型効果が薄く所望の効果が得られにくい。又15重量部を超えた場合はキャリアへのスペントが顕著になる等の問題が生じることが確かめられた。
【0048】
また、その他の外添加剤として、トナーの流動性を向上させる目的で、シリカ、酸化チタン、アルミナ等、更には必要に応じて脂肪酸金属塩類やポリフッ化ビニリデン等を添加しても良い。
特に転写定着はトナーを十分に加熱することが可能なため、サブミクロンの大粒径シリカ等の添加剤を比較的多量に用いても定着性、定着温度に影響を与えないため、流動性・転写性を考慮した外添処方が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の画像形成装置の概略構成図を示す。
【図2】本発明の画像形成装置の他の一例の概略構成図を示す。
【図3】(a)加熱手段を構成するヒーターの概略構成図を示す。(b)ヒーターの拡大構成図を示す。
【図4】本発明の画像形成装置の他の一例の概略構成図を示す。
【図5】画像形成装置の要部の概略構成図を示す。
【符号の説明】
【0050】
1 カラー複写機
2 転写定着ベルト
3Y、3M、3C、3B 感光体
4Y、4M、4C、4B 帯電装置
5Y、5M、5C、5B 書き込み装置
6Y、6M、6C、6B 現像装置
7Y、7M、7C、7B 1次転写装置
8Y、8M、8C、8B クリーニング装置
9,10 ローラ
11 駆動ローラ
13 クリーニング装置
14 給紙トレイ
16 給紙コロ
17 搬送ローラ対
18 レジストローラ対
21 加熱手段
24 加圧部材(加圧ローラ)
101 ローラ状回転部材
101a 金属製のローラ軸
101b 金属製のローラ外周
101c 半導体
102 圧縮バネ
103 板状体
212 正特性サーミスタ
213 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像転写がなされる無端ベルトよりなる転写定着ベルトと、
当該転写定着ベルトとニップを形成する加圧部材とを具備しており、
前記ニップを通過する記録媒体上に画像を転写するようになされており、
前記ニップを基準位置とした上流側に、前記加圧部材と微小ギャップを形成し、かつ前記記録媒体の表面に接触するようになされる加熱手段が設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記加圧部材と前記加熱手段との微小ギャップが、前記記録媒体の最小厚さ以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記加圧部材と前記加熱手段との微小ギャップの距離は可変であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記加熱手段がローラ状回転部材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記加熱手段が、板状体とローラ状回転部材により構成されており、
前記板状体に熱源を有し、当該板状体から前記ローラ状回転部材に伝熱するようになされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記加熱手段を構成するローラ状回転部材と、前記転写定着ベルトとのギャップが、前記加熱手段を構成するローラ状回転部材と前記加圧部材とのギャップよりも大であることを特徴とする請求項4又は5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記転写定着ベルトの周面上であって、前記ニップを基準位置とした上流側に、感光体が配置されており、
当該感光体上に、複数色のトナーを重ねる方式により、カラー画像の形成を行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
ワーデル実用球形度φが、0.8以上の値のトナーを現像剤として用いることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−3380(P2009−3380A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166693(P2007−166693)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】