説明

画像形成装置用部材

【課題】高温高湿環境での圧縮永久歪に優れる画像形成装置用部材を提供する。
【解決手段】ポリウレタンフォーム層成形材料として、ポリエーテルポリオールを式(1)で表される末端構造をもつポリエーテルポリオールを少なくとも1種以上含有するものを使用する。


(式(1)中、*はポリオール鎖への結合を示し、Rは炭素数1〜20の直鎖、分岐あるいは環状のアルキル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置用高分子部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術の進歩に伴い、乾式電子写真装置等の画像形成装置には、感光体の帯電、感光体上の潜像の現像、感光体のトナー顕像の転写、現像用のトナー供給、感光体のクリーニングなどに供される種々の部品の軟質部材として、ポリウレタンフォームからなるものが注目されており、例えば、ポリウレタンフォームを弾性層とする帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラ、クリーニングローラなどの弾性を有する画像形成装置用部材等の形態で用いられている。
【0003】
これらポリウレタンフォームからなる部材の多くは金型内で製造することができる。
【0004】
例えば、トナー供給ローラは次のような方法で製造される。ポリイソシアネート、ポリオール、水、触媒等のポリウレタンフォーム用の原料を混合攪拌し、芯金を供えたトナー供給ローラ成形型内に注入する。これを型内で発泡させ、ついで成形物を脱型することによりトナー供給ローラを製造することができる。ここでは通常ポリオールとして、エチレンオキシドを末端に付加させたポリエーテルポリオールを使用する。その使用する理由は、エチレンオキシドを末端に付加させたポリエーテルポリオールは、エチレンオキシドからのOH基が殆ど末端の1級OH基となり、イソシアネート基との反応性に優れ、小型の型内成形に適しているからである(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ポリウレタン成形の際には、ポリイソシアネートの他の成分、ポリオール、整泡剤、触媒、水などを予め混合してプレミックスポリオールとして使用する。しかし、このプレミックスポリオールを製造する際に、ポリオールとしてエチレンオキシドを末端に付加したポリオールでは、そのエチレンオキシド付加部に水分子が吸着し易く、プレミックスポリオール中ですでにエチレンオキシド付加部に水分子が付着しており、型内でポリオールとポリイソシアネートが反応する際に、ポリオールの水酸基が反応するよりも速く、エチレンオキシド付加部の水分子とイソシアネート基が反応し、硬く脆い化学構造である芳香族ポリ尿素を生成するため、ポリウレタンフォームの圧縮永久歪、特に、温度40℃湿度95%のような高温高湿環境での圧縮永久歪を悪化させるという問題があった。
【特許文献1】特開平9−274373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、高温高湿環境での圧縮永久歪に優れる画像形成装置用部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、この課題を達成するため、ポリウレタン原料を種々検討し、ポリオール成分として特定端末を有するポリエーテルポリオールが良好な結果が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(7)を提供するものである。
【0009】
(1)ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートから製造された画像形成装置用部材において、ポリエーテルポリオールが下記一般式(1)で表される末端構造をもつポリエーテルポリオールを少なくとも1種含有することを特徴とする画像形成装置用部材。
【化1】

(式(1)中、*はポリオール鎖への結合を示し、Rは炭素数1〜20の直鎖、分岐あるいは環状のアルキル基である。)
【0010】
(2)ポリエーテルポリオールが、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するプロピレンオキシドを付加重合したものであることを特徴とする上記の画像形成装置用部材。
【化2】

(式(2)中、*は繰り返し位置を示し、nは0以上の整数である。)
【0011】
(3)ポリエーテルポリオール中のOH基のうち、1級OH基の割合が50モル%以上であることを特徴とする上記の画像形成装置用部材。
【0012】
(4)ポリエーテルポリオールの平均官能基数が2〜4であることを特徴とする上記の画像形成装置用部材。
【0013】
(5)ポリエーテルポリオールが、質量平均分子量2000〜10000であることを特徴とする上記の画像形成装置用部材。
【0014】
(6)ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート及びそれらの誘導体から選らばれたものである上記の画像形成装置用部材。
【0015】
(7)トナー供給ローラであることを特徴とする上記の画像形成装置用部材。
【発明の効果】
【0016】
本発明の画像形成装置用部材は、上記一般式(1)で表される末端構造を有するポリエーテルポリオール使用しているので、ポリウレタンフォーム部が高温高湿環境での圧縮永久歪に優れるので画像成形装置に用いたときにその信頼性が極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の画像形成装置用部材は、ポリウレタンフォームからなるものであって、このポリウレタンフォームは、所要の各原料成分を含むポリウレタンフォーム形成材料を攪拌混合し、成形型内で発泡硬化させることにより、あるいは発泡効果されたものを所定の形状にトリミングすることにより得られる。
【0018】
ポリウレタンフォーム形成材料は、ポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート、触媒、発泡剤及び所望の各種添加物を混合して得られるものであり、本発明では、前記ポリエーテルポリオールとして、下記の一般式(1)で表される末端構造をもつポリエーテルポリオールを少なくとも1種以上含有するポリエーテルポリオールであることが必須である。
【0019】
【化3】

(式(1)中、*はポリオール鎖への結合を示し、Rは炭素数1〜20の直鎖、分岐あるいは環状のアルキル基である。)
【0020】
従来、ポリウレタンフォームを金型内で製造する際に頻繁に使用されているエチレンオキシドを末端に結合したポリエーテルポリオールの代わりに、エチレンオキシドを末端に結合していないポリエーテルポリオールを使用することが特徴である。
【0021】
エチレンオキシドを末端に結合させないポリエーテルポリオールは、従来は2級OH基であることが多く、ポリウレタン原料としては反応性が低く、使用が困難であるが、本発明で用いるポリエーテルポリオールは末端が特殊な化学構造であり、含まれるOH基が1級であるものが含まれているので、反応性に優れ、小型の型内成形に適している。さらに、ポリエーテルポリオール中のOH基付近に水分子が吸着し難いという特性から、水とイソシアネート基が反応するよりも、ポリエーテルポリオールとイソシアネート基が優先的に反応し、芳香族ポリ尿素の生成が抑えられる。従って、得られるポリウレタンフォームは高温高湿環境での圧縮永久歪に優れるのである。
【0022】
[ポリエーテルポリオール]
本発明で使用するポリエーテルポリオールは、例えば、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールにプロピレンオキシド等の炭素数3〜22のアルキレンオキシドを付加重合した付加重合物で、その際に使用する触媒、圧力、温度等を適宜選択して、一般式(1)で表される末端構造を多くしたものを少なくとも1種含むものであり、好ましくは1級OH基の含有率が50モル%以上である。
【0023】
なお、本発明を損なわない範囲において、一般式(1)で表される末端構造が多くなったポリエーテルポリオールとともに従来公知のポリエーテルポリオールを併用しても差し支えはない。
【0024】
従来公知のポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキシドを末端に5モル%以上付加させたポリエーテルポリオールが挙げられる。前記エチレンオキシドを末端に5モル%以上含有するポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、また、シュークローズ、グルコース等のシュガー系アルコール、ビスフェノールA、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等のような、活性水素を2個以上有する化合物の一種又はそれ以上を開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アミレンオキシド、グリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のモノマーの一種又はそれ以上を公知の方法により付加することによって製造される。これらポリエーテルポリオールは単独で用いても複数種を併用しても良い。
【0025】
また、ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は2000〜10000であることが好ましい。すなわち、重量平均分子量が2000以上であるとソフトセグメントが不足せず画像形成装置が低硬度化し、10000以下であると反応性低下による成形不良が起こらないばかりでなく、高温高湿下での圧縮永久歪が向上する。さらに、重量平均分子量は2500〜8000であることがより好ましい。
【0026】
また、ポリエーテルポリオールの平均官能基数は2〜4であることが好ましい。ポリエーテルポリオールの平均官能基数がこれらの範囲内にあることによって、画像形成装置としての使用に好適な硬度を有し、高温高湿環境下での圧縮永久歪が向上したポリウレタンフォームを得ることができる。
【0027】
[ポリイソシアネート]
本発明で使用するポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)などの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などの脂環式ポリイソシアネート及びそれらの誘導体などが挙げられる。好ましくは、MDI、TDI及びそれらの誘導体を、単独、又は混合したものが好ましい。ここで、ポリイソシナートの誘導体とは、多核体、ポリオールなどで変性したウレタン変性物(含むウレタンプレポリマー)、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物などを意味する。なお、MDI及びその誘導体を全ポリイソシアネート100質量部に対して5〜80質量部を含有するポリイソシアネートがより好ましい。
【0028】
ポリイソシアネートの平均官能基数は2以上であることが好ましい。ポリイソシアネートの平均官能基数がこれらの範囲内にあることによって、低硬度で優れた圧縮永久歪性を有するポリウレタンフォームを得ることができる。
【0029】
ローラ成形用の組成物中のこれらポリイソシアネートの配合量としては特に制限は無いが、NCOインデックスが60〜120になるように配合量を設定することが好ましい。すなわち、NCOインデックスが60〜120であると、ポリウレタン骨格が十分に形成され、脱型時に破断など生じないばかりでなく、画像形成装置の硬度が低下しない。前記画像形成装置用部材を例えばトナー供給ローラとして用いる場合、前記NCOインデックス範囲内にすることで、トナー供給性や掻き取り性などのトナー供給ローラとしての性能を十分に発揮することができる。
【0030】
なお、NCOインデックスとは、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の総数を、ポリオール、架橋剤、水等の水酸基やアミノ基等のイソシアネート基と反応する活性水素の総数で除した値である。即ち、イソシアネート基と反応する活性水素数とポリイソシアネート中のイソシアネート基が化学量論的に等しい場合にそのNCOインデックスは100となる。
【0031】
[発泡剤]
ポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート等と共に用いられる発泡剤として、水が挙げられる。その使用量は、好ましくは全ポリオール100質量部に対して0.5〜5.0質量部であり、1.0〜3.0質量部がより好ましい。なお、この「全ポリオール100質量部」とするときのポリオールとは、ポリウレタンスポンジ層形成のために原料として使用した全てのポリオールを表す。例えば、本発明のポリウレタン発泡成形用の原料としてプレポリマーを使用した場合、該プレポリマー製造のために使用したポリオールも上記ポリオールとして算入する。
【0032】
また、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、メチレンクロライド、トリクロロフルオロメタン、二酸化炭素などの発泡剤を単独で又は二種以上を水に混合して使用しても何ら差し支えない。
【0033】
[触媒]
ウレタン化の触媒としては、トリエチルアミン等のアミン系触媒、オクチル酸スズ等の有機金属系触媒が知られており、これらは何れでも使用できる。アミン系触媒としては、1,2−ジメチルイミダゾール、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−オクタデシルモルホリン、ジエチレントリアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルブタンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ブタンアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス〔2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル〕エーテル、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、トリエチレンジアミンの塩類、第一及び第二アミンのアミノ基のオキシアルキレン付加物、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、N,N−ジアルキルピペラジン類のようなアザシクロ化合物、種々のN,N′,N″−トリアルキルアミノアルキルヘキサヒドロトリアミン類等があり、有機金属系触媒としては、酢酸錫、オクチル酸錫、オクテン酸錫、オレイン酸錫、ラウリン酸錫、ジブチル錫ジクロリド、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等があり、前記アミン系触媒及び有機金属系触媒の初期活性を低下させた有機酸塩触媒(カルボン酸塩やホウ酸塩等)などがある。これらの触媒は、単独で、又は混合して使用される。また、その使用量は、前記ポリウレタンフォーム形成材料における全ポリオール100質量部に対し、0.02〜3.0質量部であることが好ましい。これにより、長時間使用してもトナー融着が少なく、良好な画像を与えるポリウレタンからなる画像形成装置用高分子部材が得られる。
【0034】
[整泡剤]
ここで用いられる整泡剤としては、ポリジメチルシロキサンとエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合物からの水溶性ポリエーテルシロキサン、スルホン化リシノール酸のナトリウム塩やこれらとポリシロキサン・ポリオキシアルキレンコポリマーとの混合物などが挙げられる。この中で、水溶性ポリエーテルシロキサンが、用途別に多岐にわたり使用されている。これらの整泡剤は単独で又は複数種を使用することができる。
【0035】
本発明のポリウレタンフォームのようなホットモールドフォームは、スラブフォームに比べてゲル化が速いこと、型にオーバーパックされることからフォームの通気性が低くなる傾向にある。このため、スラブフォーム用の整泡剤と基本的には類似しているが、やや整泡力が弱くフォームの通気性を高くする整泡剤が好ましい。また、高弾性フォームは系の粘度が高いことや反応性が高いことから、通常の軟質フォーム用整泡剤を使用すると泡の安定化が過剰となり、連通化度が低下してフォームの収縮を生じる場合がある。このため、整泡剤としては分子量の小さいコポリマーが用いることが好ましい。また、ポリエーテル鎖の代わりに有機官能基を付加した整泡剤を使用することが好ましい。
【0036】
[その他の助剤]
その他助剤として、導電剤、ポリマーポリオール(商品名:三井武田ケミカル)、架橋剤、難燃剤、着色剤、老化防止剤、酸化防止剤などを必要に応じて使用することができる。
【0037】
導電剤としては公知の物を使用することができ、例えば、カーボンブラック、グラフアイト等の導電性カーボン、酸化チタン、酸化錫などの導電性の金属酸化物、Cu、Agなどの金属、非導電性の粒子の表面にこれら導電性材料を被覆して導電化した粒子などが挙げられる。これらの導電付与剤は単独、あるいは複数種を組み合わせて用いることができる。特に、カーボンブラックは、比較的少量(質量比)の添加によって、所望の導電性を付与できる点で好ましい。
【0038】
ポリマーポリオールとは、ポリエーテルポリオール中で該ポリエーテルポリオールの少なくとも一部をエチレン性不飽和単量体と重合させることにより変性したものである。前記ポリマーポリオールを一部併用することによりフォームの湿熱耐久性を低下させることなく、通気性向上、硬度向上などを図ることができる。なお、エチレン性不飽和単量体は、特に限定されないが、アクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸メチル、塩化ビニリデンなどであり、これらの重合体は通常直径0.1〜10μmの微粒子状でポリマーポリオール中に分散されている。
【0039】
前記架橋剤としては、例えば、アルキレングリコール、1,4−ブタンジオール(14BD)などのジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン(TMP)などのトリオール類、ペンタエリスルトールなどのテトラオール類、エチレンジアミン(EDA)などのジアミン類、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)などのアミノアルコール類などが挙げられる。これらを、単独、又は混合して使用することが出来る。
【0040】
本発明の画像形成装置用部材は、ローラ形状のものが好ましく、トナー供給ローラとして特に好ましく使用できる。
【0041】
本発明の画像形成装置用部材がトナー供給ローラであるとき、例えば次のようにして製造できる。
【0042】
まず、棒状芯金を配したトナー供給ローラ用成形型内に、ポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒及びその他原料を混合した組成物を注入し、ポリウレタンフォーム成形材料を注入した後の成形型を25〜80℃に加熱して発泡成形する。なお、その後80〜250℃の加熱炉で反応を促進させても差し支えない。発泡成形が完了した、成形物を成形型から取り出すことにより、トナー供給ローラを製造する。この製法によれば、高温高湿環境での圧縮永久歪に優れる画像形成装置用部材が提供される。
【実施例】
【0043】
以下、本発明について実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。また、実施例中の「部」及び「%」は断りがない限り質量部、質量%である。
【0044】
まず、以下の実施例、比較例で使用する原料を示す。
【0045】
1)ポリエーテルポリオール
・ポリオールA:一般式(1)で表される末端構造(但し、R=CH3)を有するポリエーテルポリオール。OH価=67mgKOH/g、平均官能基数=2、質量平均分子量=2000、主鎖部=プロピレンオキシド。なお、1級OH基は50モル%以上である。
・ポリオールB:一般式(1)で表される末端構造(但し、R=CH3)を有するポリエーテルポリオール。OH価=34mgKOH/g、平均官能基数=3、質量平均分子量=5000、主鎖部=プロピレンオキシド。なお、1級OH基は50モル%以上である。
・ポリオールC:一般式(1)で表される末端構造(但し、R=CH3)を有するポリエーテルポリオール。OH価=17mgKOH/g、平均官能基数=3、質量平均分子量=10000、主鎖部=プロピレンオキシド。なお、1級OH基は50モル%以上である。
・EP−551C:エチレンオキシドを末端に15%結合したポリエーテルポリオール。OH価=55mgKOH/g、平均官能基数=3、質量平均分子量=3000、主鎖部=プロピレンオキシド。三井武田ケミカル社製、商品名:アクトコールEP−551C。
・EP−505S:エチレンオキシドを末端及び主鎖部にランダムに約70%結合したポリエーテルポリオール。OH価=55mgKOH/g、平均官能基数=3、質量平均分子量=3500。三井武田ケミカル社製、商品名:アクトコールEP−505S。
・GS−92:エチレンオキシドを末端に19%結合したポリエーテルポリオール。OH価=40mgKOH/g、平均官能基数=3、質量平均分子量=4000、主鎖部=プロピレンオキシド。三井武田ケミカル社製、商品名:アクトコールGS−92。
・GP−3000:下記式(3)で表される末端構造をもつポリエーテルポリオール。OH価=56mgKOH/g、平均官能基数=3、質量平均分子量=3000、主鎖部=プロピレンオキシド。三洋化成工業社製、商品名:サンニックスGP−3000。
【0046】
【化4】

式(3)中、*はポリエーテル鎖への結合を示す。
【0047】
2)ポリイソシアネート
・TM−20:ポリイソシアネート混和物。NCO=45%、MDI=20%含有。三井武田ケミカル社製。商品名:コスモネートTM−20。
・TM−50:ポリイソシアネート混和物。NCO=40%、MDI=50%含有。三井武田ケミカル社製。商品名:コスモネートTM−50。
・T−80:TDI。NCO=48%、MDI非含有。三井武田ケミカル社製。商品名:コスモネートT−80。
【0048】
3)ウレタン化触媒
・ET:アミン系触媒(ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルの70%ジプロピレングリコール溶液)。東ソー社製。商品名:TOYOCAT ET。
・33LV:アミン系触媒(トリエチレンジアミンの33%ジプロピレングリコール溶液)。日本乳化剤社製。商品名:Dabco 33LV。
【0049】
4)整泡剤
・SZ−1313:シリコーン系整泡剤。日本ユニカー社製。商品名。
【0050】
5)架橋剤
・DEA:ジエタノールアミン。キシダ化学社製の試薬特級。
【0051】
実施例1〜7、比較例1〜5
芯金として、径5mm、長さ240mmのSUS製棒の表面にウレタン用接着剤を塗布したものを用意し、トナー供給ローラ成形型(内径16mm、弾性層長220mm)にセットした。次いで、この成形型を50℃に加熱し、その中に、表1に示す組成でポリウレタンフォーム成形材料を25℃で調整したものを注入し、50℃,15分発泡硬化して、型から成形物を取り出し、さらに、130℃の炉中に1時間おいて後硬化を完了し、密度0.10g/cm3、外径16mmのトナー供給ローラを得た。なお、ポリウレタンフォーム成形材料の調整は、ポリイソシアネート以外の成分を予め25℃で混和し、インジェクション装置の原料タンクに入れ、成形型への注入前にポリイソシアネートとNCOインデックスが100となるようにミキシングチャンバーで5秒間撹拌によった。得られたトナー供給ローラの弾性層の硬度及び高温高湿下での湿熱圧縮永久歪を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
[弾性層の硬度測定]
トナー供給ローラの弾性層の硬度は、図2に示すようにして測定した。なお、図2(a)は正面図であり、図2(b)は側面図を表す。すなわち、トナー供給ローラ1をその両端の芯金2部分において支持台(不図示)で支持し、ポリウレタンフォーム層3を50mm幅(厚さ:10mm)の板状押圧面を有する治具4にて、10mm/minの速度で押圧し、1mm変位(圧縮)時の荷重(g)を長手方向3ヶ所、周方向に90°毎の4ヶ所(計12ヶ所)で測定し、その平均を弾性層の硬度とする。この数値が大きくなるほど、ポリウレタンフォーム層の硬さが高い、すなわち、弾性層が硬い。この硬度は350g以下であることが好ましい。
【0053】
[高温高湿下での湿熱圧縮永久歪Cset]
トナー供給ローラの高温高湿状況下での外径変形Csetは図3に示すようにして測定した。すなわち、トナー供給ロール1を、その両端の芯金2部分において支持し、そしてそのポリウレタンフォーム層3に、径16mmの円筒状の鉄棒5を1.5mm変位(圧縮)させた状態で固定する。この固定したものを温度50℃湿度95%環境下で72時間放置した後、円筒状の鉄棒を取り出し、その30分後にポリウレタンフォーム層の復元度合いを下記計算式(I)により求める。そして、その値から10%未満を「○」、10%以上を「×」と判定した。なお、トナー供給ローラはこの値が10未満であることが望ましい。
Cset=((t0−t1)/1.5)×100 (I)
式(I)において、Cset:湿熱圧縮永久歪率(%)、t0:初めの成形品のポリウレタンフォームの厚み(mm)、t1:試験後のポリウレタンフォームの厚み(mm)。
【0054】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の画像成形装置用部材の一例であるトナー供給ローラの斜視図である。
【図2】トナー供給ローラの弾性層(ポリウレタンフォーム層)の硬度を測定する方法を示す図であって、(a)は正面図、(b)側面図である。
【図3】トナー供給ローラの湿熱圧縮永久歪を測定する方法を示す正面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 トナー供給ローラ
2 芯金
3 ポリウレタンフォーム層(弾性層)
4 硬度測定用治具
5 湿熱圧縮永久歪測定用鉄棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートから製造された画像形成装置用部材において、ポリエーテルポリオールが下記一般式(1)で表される末端構造をもつポリエーテルポリオールを少なくとも1種含有することを特徴とする画像形成装置用部材。
【化1】

(式(1)中、*はポリオール鎖への結合を示し、Rは炭素数1〜20の直鎖、分岐あるいは環状のアルキル基である。)
【請求項2】
ポリエーテルポリオールが、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するプロピレンオキシドを付加重合したものであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置用部材。
【化2】

(式(2)中、*は繰り返し位置を示し、nは0以上の整数である。)
【請求項3】
ポリエーテルポリオール中のOH基のうち、1級OH基の割合が50モル%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置用部材。
【請求項4】
ポリエーテルポリオールの平均官能基数が2〜4であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置用部材。
【請求項5】
ポリエーテルポリオールが、質量平均分子量2000〜10000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置用部材。
【請求項6】
ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート及びそれらの誘導体から選らばれたものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置用部材。
【請求項7】
トナー供給ローラであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置用部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−153951(P2006−153951A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340499(P2004−340499)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】