説明

画像形成装置

【課題】 トナー像担持体におけるトナー像が付着する画像部のみに非接触状態で定着液を付与することができ、画像の乱れを起こすことなく、定着液の消費量を必要最小限に止め、良好な画像を長期にわたって形成できる湿式定着方式の画像形成装置を提供することである。
【解決手段】 トナー像形成手段2と、トナー像担持体である中間転写ベルト21を有する中間転写手段3と、転写定着手段6と、記録媒体供給手段7と、排出手段8とを含む湿式定着方式の画像形成装置1において、定着液付与手段4と定着液回収手段5とを設け、定着液付与手段4から中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに対してほぼ平行に定着液29を吐出することにより、トナー像のみに定着液29を付与し、トナー像に付着しない定着液29を定着液回収手段5により回収し、再利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリなどに多く採用される、電子写真方式の画像形成装置においては、表面に光導電性物質を含む感光層を形成した感光体を用い、感光体表面に電荷を付与して均一に帯電させた後、種々の作像プロセスにて画像情報に対応する静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを含む現像剤を現像手段から供給して現像することによりトナー像とし、このトナー像を直接または中間転写媒体を介して紙などの記録媒体に転写し、記録媒体に転写されたトナー像を記録媒体に定着させることによって、記録媒体上に画像が形成される。
【0003】
トナー像の記録媒体への定着には、トナー像を加熱する熱定着方式、トナーを軟化および/または膨潤させる定着液をトナー像に付与する湿式定着方式などが知られる。このうち、湿式定着方式では、定着液の付与により軟化および/または膨潤状態にしたトナー像を記録媒体に付着させ、加圧することによって、トナー像を記録媒体に定着させる。湿式定着方式は、熱定着方式に比べて消費電力が非常に少ないという利点を有し、多くの提案がなされている。
【0004】
たとえば、トナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段により形成されるトナー像を担持するトナー像担持体と、トナーを溶解または膨潤させる定着液を、トナー像担持体のトナー像担持面に塗布ローラにより接触塗布する定着液塗布手段と、定着液塗布手段により溶解または膨潤されるトナー像を記録媒体上に転写する転写手段とを含み、定着液に対して撥液性を有する材料からなるトナー像担持体を用いる画像形成装置が提案される(たとえば、特許文献1参照)。この画像形成装置においては、定着液とトナーとの親和性およびトナー像担持体の定着液に対する撥液性を利用して、接触塗布される定着液は、トナー像担持体のトナー像担持面におけるトナー付着部分である画像部のみに付着し、トナーが付着しない非画像部には付着しないように構成される。
【0005】
特許文献1には、さらにトナー像担持体に接触する接触ローラを設け、トナー像担持体の非画像部に僅かに付着する定着液を接触ローラにより回収する構成も開示される。
【0006】
特許文献1によれば、前述のような構成を採ることによって、定着液の消費量を必要最小限に抑え、定着液の記録媒体への付着量が多すぎることにより記録媒体に発生するしわ、カールなどを防止している。
【0007】
しかしながら、特許文献1の画像形成装置によれば、トナー像担持体上のトナー像が塗布ローラ、接触ローラなどの部材と直接接触するので、塗布ローラ、接触ローラなどにトナーが付着し、また定着液によりトナー像の一部が流れ、最終的に形成される画像に乱れが生じることがある。
【0008】
したがって、定着液をトナー像に非接触下で塗布するのが望ましいけれども、非接触塗布では非画像部にも定着液が付着するという問題が起こる。定着液の非画像部への付着は、定着液の消費量の増大、記録媒体でのしわ、カールなどの発生につながる。非画像部の定着液を除去するには、たとえば、接触ローラを用いるのが最も現実的である。しかしながら、接触ローラの使用には、前述のように、トナーの接触ローラへの付着、それにともなう画像の乱れの発生という問題がある。また、エアーの吹き付けにより非画像部に付着する定着液を除去する方法も提案されている。しかしながら、この方法では、エアーにより非画像部から除去される定着液の飛翔方向の制御が難しく、画像形成装置内を定着液で汚染する可能性がある。また、画像形成装置内でのエアーの使用により、エアーの乱流が生じ、装置内でトナー飛散を起こし、記録媒体を汚す可能性もある。
【0009】
【特許文献1】特開2004−109747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、トナー像担持体におけるトナー像が付着する画像部のみに非接触状態で定着液を付与することができ、画像の乱れを起こすことなく、定着液の消費量を必要最小限に止め、良好な画像を長期にわたって形成できる湿式定着方式の画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
結着樹脂および着色剤を含むトナーからなるトナー像を形成するトナー像形成手段と、
トナー像形成手段により形成されるトナー像を担持して回転するトナー像担持体において、少なくともトナー像担持面がトナー像を軟化および/または膨潤させる定着液を浸透させない材料で構成されるトナー像担持体と、
トナー像担持体上のトナー像に、定着液を非接触下に付与する定着液付与手段と、
トナー像担持体に付着しない定着液を、トナー像担持体に対して非接触下に回収する定着液回収手段と、
定着液が付与されたトナー像を記録媒体に転写と同時に定着させる転写定着手段とを含むことを特徴とする画像形成装置である。
【0012】
また本発明の画像形成装置は、
定着液付与手段が、トナー像担持体のトナー像担持面に対してほぼ平行に定着液を吐出することを特徴とする。
【0013】
さらに本発明の画像形成装置は、
定着液付与手段が、複数の支持ローラに回転可能に張架される無端ベルトであるトナー像担持体における複数の支持ローラ当接部の少なくとも1箇所に定着液を吐出することを特徴とする。
【0014】
さらに本発明の画像形成装置は、
定着液付与手段が、定着液が大気に晒される定着液吐出口の近傍に設けられ、定着液中の液状成分が蒸発するのを防止する乾燥防止手段を含むことを特徴とする。
【0015】
さらに本発明の画像形成装置は、
乾燥防止手段が、開閉自在に設けられ、定着液吐出口と大気とを遮断するシャッター手段であることを特徴とする。
【0016】
さらに本発明の画像形成装置は、
トナー像担持体の少なくともトナー像担持面が、定着液に対して撥液性を有する材料で構成されることを特徴とする。
【0017】
さらに本発明の画像形成装置は、
定着液回収手段が、回収した定着液を、定着液付与手段に循環させる定着液循環手段を含むことを特徴とする。
【0018】
さらに本発明の画像形成装置は、
定着液回収手段が、定着液付与手段よりも高い位置に配置されることを特徴とする。
【0019】
さらに本発明の画像形成装置は、
定着液回収手段が、定着液付与手段から吐出される定着液のうち、トナー像担持体のトナー像担持面に付着しない定着液を付着させて回収するための板状の回収部材であって、水平面に対して傾斜して設けられる回収部材を含むことを特徴とする。
【0020】
さらに本発明の画像形成装置は、
定着液付与手段と定着液回収手段とが1つの筺体内に収容され、
該筺体は、トナー像担持体のトナー像担持面の少なくとも一部を該筺体内に装入し、定着液付与手段の定着液吐出口から該トナー像担持面に向けて定着液を吐出するための開口部を有することを特徴とする。
【0021】
さらに本発明の画像形成装置は、結着樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする。
【0022】
さらに本発明の画像形成装置は、トナーの体積平均粒径が2μm以上、7μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、トナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像を担持して回転するトナー像担持体において、少なくともトナー像担持面がトナー像を軟化および/または膨潤させる定着液を浸透しない材料で構成されるトナー像担持体と、トナー像担持体上のトナー像に定着液を非接触下に付与する定着液付与手段と、トナー像担持体に付着しない定着液を非接触下に回収する定着液回収手段と、トナー像を記録媒体に転写と同時に定着させる転写定着手段とを含む画像形成装置が提供される。
【0024】
本発明の画像形成装置は、非接触下でトナー像に定着液を付与する湿式定着方式を採用するにもかかわらず、画像の乱れを起こすことなく定着液をトナー像に選択的に付与することができ、定着液の消費量を必要最小限に止め、良好な画像を長期にわたって形成できる。また、定着液付与手段と定着液回収手段とを1つの工程として実施できるので、たとえば、両手段を1つのユニットとして形成することにより、装置の大型化、複雑化などをともなうことなく、定着液のトナー像への非接触下での選択的付与を容易に行うことができる。
【0025】
本発明によれば、定着液付与手段が、トナー像担持体のトナー像担持面に対してほぼ平行に定着液を吐出するように構成することによって、従来のように定着液をトナー像担持面に対して垂直に吐出するのに比べて、定着液の微小液滴のトナー像担持面に対する供給角度(微小液滴の入射角度)を小さくできるので、トナー像担持面が定着液を浸透しない材料で構成されることも相俟って、定着液の液滴をトナー像担持面から反発させて回収することができる。すなわち、定着液がトナーとの親和性に優れることを利用すれば、トナーの集合体であるトナー像に供給される定着液はそのままトナー像に付着し、トナー像以外の非画像部に供給される定着液はそのまま付着することなく、トナー像担持体から反発して離れるので、トナー像である画像部のみに選択的に定着液を付与することができ、それ以外の定着液は定着液回収手段により回収できる。したがって、定着液の消費量を必要最小限に抑えることができ、しかも定着液の付与および回収が非接触下に実施され、画像乱れを起こすことがない。また、トナー像担持面に対してほぼ平行に定着液を吐出すると、トナー像担持体に接触することなくその上部を通過する液滴が多くなるけれども、定着液回収手段が備わっているので、回収して再利用すれば無駄にはならない。さらに、定着液の吐出方向が一定方向であるから、トナー像担持体からの反発方向もほぼ一定になり、定着液の回収が容易である。
【0026】
本発明によれば、トナー像担持体を、複数の支持ローラで張架される無端ベルトとして構成し、このトナー像担持体における複数の支持ローラとの当接部の少なくとも1箇所に定着液を吐出することによって、定着液付与手段および定着液回収手段の配置が容易になり、装置の大型化、複雑化などを防止できる。すなわち、無端ベルトであるトナー像担持体と支持ローラとの当接部では、トナー像担持体は屈曲した状態にあり、トナー像担持体の一部分(トナー像が付着した部分)に定着液を付与する場合には、このような屈曲部があれば定着液の局部的な付与が可能になり、定着液付与手段および定着液回収手段の配置が容易になる。特に、定着液をトナー像担持面に対して平行に吐出して付与する場合には、前記のような屈曲部があれば、トナー像担持体の邪魔にならない位置に定着液付与手段および定着液回収手段を配置できる。
【0027】
本発明によれば、定着液付与手段の定着液吐出口近傍に乾燥防止手段を設けるのが好ましい。すなわち、定着液吐出口では、定着液が大気に晒されて、定着液の液状成分が蒸発して無駄に消費されるので、乾燥防止手段を設けて定着液の液状成分の蒸発を防止するのがよい。
【0028】
本発明によれば、前述の乾燥防止手段として、定着液吐出口の近傍に開閉自在のシャッター手段を設けることによって、画像形成を行わない時にはシャッター手段を閉じて大気と定着液吐出口とを遮断し、定着液の液状成分が蒸発するのを防止できる。
【0029】
本発明によれば、トナー像担持体の少なくともトナー像担持面を、定着液に対して撥液性を有する材料で構成することによって、非画像部に供給される定着液の液滴のトナー像担持体からの離反性が一層向上し、定着液のトナー像のみへの付与が一層効率良く実施できる。
【0030】
本発明によれば、定着液回収手段が回収した定着液を定着液付与手段に戻す定着液循環手段を含むことによって、定着液の無駄な消費がなくなり、有効利用が可能になる。その結果、画像形成装置内の定着液収容タンクの容量を小型化が可能になり、画像形成装置の大型化、複雑化などを引き起こすことがない。また、定着液の補充サイクルを延長でき、メンテナンス性が向上する。
【0031】
本発明によれば、本発明の画像形成装置において、定着液回収手段を定着液付与手段よりも高い位置に設けることによって、定着液回収手段で回収される定着液を定着液付与手段に戻す場合に、重力を利用して戻すことができるので、定着液を戻すための新たな動力が不要になる。
【0032】
本発明によれば、定着液回収手段を、定着液付与手段およびトナー像担持体の上部に、水平面に対して傾斜するように設けられ、トナー像担持体のトナー像担持面に付着しない定着液を付着させて回収する板状の回収部材を含んで構成することによって、回収部材に付着する定着液が傾斜に沿って一方向に流れるので、定着液の回収が容易になる。
【0033】
本発明によれば、定着液付与手段と定着液回収手段とを1つの筺体内に収容し、該筺体に、トナー像担持体のトナー像担持面の少なくとも一部を該筺体内に挿入し、定着液付与手段から該トナー像担持面に向けて定着液を吐出するための開口部を設けることによって、定着液のトナー像担持面以外への飛散、ひいては定着液による画像形成装置内部の汚染を防止できる。
【0034】
本発明によれば、本発明の画像形成装置において用いられるトナーの結着樹脂をポリエステルにするのが好ましい。ポリエステルは、安価で一般的な有機溶剤により軟化および/または膨潤し易いので、前記のような有機溶剤を定着液成分として使用でき、定着液のコストを下げることができる。また、ポリエステルは軟化または膨潤した状態で透明になるので、数種の色のトナー像を重ね合わせてカラートナー像を形成すると、減法混色による鮮やかな発色が得られる。
【0035】
本発明によれば、本発明の画像形成装置において用いられるトナーとして、体積平均粒径が2〜7μmのものを用いるのが好ましい。粒径が2μm未満では、トナーとしての流動性が低下し、現像装置内での攪拌および帯電ならびに静電潜像へのトナーの供給を円滑に実施できない。その結果、逆極トナーの増加、トナー量の不足などが起こり、静電潜像の現像時に高画質のトナー像が得られない。粒径が7μmを超えると、トナー粒子の中心まで膨潤し難くなり、定着画像の発色が悪化するとともに、OHPの透過画像が暗くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1は、本発明の実施の第1形態である画像形成装置1の構成を概略的に示す断面図である。図2は、図1に示す画像形成装置1の要部(後述のトナー像形成手段2)の構成を拡大して示す断面図である。図3は、図1に示す画像形成装置1の要部(後述の中間転写手段3、定着液付与手段4、転写定着手段5および排出部7)の構成を拡大して示す断面図である。
【0037】
画像形成装置1は、トナー像形成手段2と、中間転写手段3と、定着液付与手段4と、定着液回収手段5と、転写定着手段6と、記録媒体供給手段7と、排出手段8とを含んで構成される。
【0038】
トナー像形成手段2は、作像ユニット10y,10m,10c,10bを含み、これらは、各色相の画像情報に対応する静電潜像を形成し、該静電潜像を現像して各色のトナー像を形成するものである。すなわち、作像ユニット10yはイエロー色の画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10mはマゼンタ色の画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10cはシアン色の画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10bはブラック色の画像情報に対応するトナー像を形成する。
【0039】
作像ユニット10yは、感光体ドラム11yと、帯電ローラ12yと、光走査ユニット13と、現像装置14yと、ドラムクリーナ15yとを含んで構成される。
【0040】
感光体ドラム11yは、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない円筒状、円柱状または薄膜シート状(好ましくは円筒状)の導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含んで構成される。感光体ドラム11yには、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、導電性基体であるアルミニウム素管と、アルミニウム素管の表面に形成される有機感光層とを含む、GND電位に接続される直径30mmの感光体ドラムが挙げられる。有機感光層は、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層して形成される。有機感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質とを1つの層に含むものであってもよい。有機感光層の層厚は、たとえば、20μmである。また有機感光層と導電性基体との間に下地層を設けてもよい。さらに、有機感光層の表面に保護層を設けてもよい。有機感光層に代えて、酸化亜鉛、セレン、アモルファスシリコンなどからなる感光層を使用できる。感光体ドラム11yは、時計周りの方向に、たとえば、周速度100mm/sで回転駆動する。
【0041】
帯電ローラ12yは、感光体ドラム11yの表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電ローラ12yに代えて、ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、スコロトロンといったコロナ帯電器などが使用できる。本実施の形態では、感光体ドラム11yは−600Vに帯電される。
【0042】
光走査ユニット13は、帯電状態になる感光体ドラム11yの表面にイエロー色の画像情報に対応するレーザ光13yを照射し、感光体ドラム11yの表面に、イエロー色の画像情報に対応する静電潜像を形成する。レーザ光13yの光源には、半導体レーザなどが用いられる。本実施の形態では、露光電位−70Vの静電潜像が形成される。
【0043】
現像装置14yは、感光体ドラム11y表面に圧接し、図示しない固定磁極を内包しかつ軸線回りに回転駆動可能に設けられ、イエロー色トナー16yを感光体ドラム11y表面の静電潜像に供給する現像ローラ17yと、現像ローラ17yの表面に当接するように設けられ、現像ローラ17y表面のイエロー色トナー層を均一化(層規制)する現像ブレード18yと、イエロー色トナー16yを貯留するトナー貯留容器19yと、トナー貯留容器19yの内部に、互いに圧接しかつ軸線回りに回転駆動可能に設けられる攪拌ローラ20a,20bであって、攪拌ローラ20aが現像ローラ17yの表面に圧接しかつ現像ローラ17y表面にイエロー色トナー16yを供給する攪拌ローラ20a,20bとを含んで構成される。現像ローラ17yは、感光体ドラム11yに圧接(接触)する現像ニップ部において、感光体ドラム11yの回転駆動方向と同じ方向に回転駆動する。したがって、軸線回りの回転駆動方向としては、逆方向になる。本実施の形態では、現像ローラ17yの周速度は、たとえば、感光体ドラム11yに対して1.5倍の150mm/sである。また本実施の形態では、現像ローラ11yには、現像電位として−240Vの直流電圧が印加される。トナー貯留容器19y中のイエロー色トナー16yは、攪拌ローラ20a,20bによって現像ローラ17y表面に供給され、現像ブレード18yにより層厚を均一化された後、電位差などを利用して感光体ドラム11y表面の静電潜像にほぼ選択的に供給され、イエロー色の画像情報に対応するトナー像が形成される。なお、本実施の形態では、イエロー色トナー16yと磁性キャリアとを混合した2成分現像剤として用いられる。
【0044】
ドラムクリーナ15yは、後述するように、感光体ドラム11y表面のイエロー色トナー像が中間転写ベルト21に転写された後に、該表面に残存するイエロー色トナーを除去、回収する。
【0045】
作像ユニット10yによれば、感光体ドラム11yをその軸線回りに回転駆動させながら、まず帯電ローラ12yにより感光体ドラム11yの表面をたとえば−600Vに帯電する。次に、帯電状態にある感光体ドラム11yの表面に、光走査ユニット13からイエロー色の画像情報に対応する信号光を照射し、イエロー色の画像情報に対応する露光電位−70Vの静電潜像を形成する。次いで、感光体ドラム11yの表面に、現像ローラ16y表面に担持されるイエロー色トナー層が接触する。現像ローラ16yには現像電位として−240Vの直流電圧が印加されており、電位差により、静電潜像にイエロー色トナー16yが付着して現像され、感光体ドラム11yの表面にイエロー色のトナー像が形成される。このイエロー色トナー像は、後述するように、感光体ドラム11yの表面に接する中間転写ベルト21に中間転写される。感光体ドラム11yの表面に残留するイエロー色トナー16yはドラムクリーナ15yにより除去され、回収される。以後、同様のイエロー色トナー像形成動作が繰り返し実行される。
【0046】
作像ユニット10m,10c,10bは、それぞれマゼンタ色トナー16m、シアン色トナー16cまたはブラック色トナー16bを使用する以外は、作像ユニット10yに類似の構造を有するので、同一の参照符号を付し、さらに各参照符号の末尾に、マゼンタ色を示す「m」、シアン色を示す「c」またはブラック色を示す「b」を付し、説明を省略する。なお、作像ユニット10y,10m,10c,10bは、中間転写ベルト21の移動方向(副操作方向)、すなわち矢符27の方向の上流側からこの順番で一列に配列される。
【0047】
なお、各色トナー16y,16m,16c,16bは、結着樹脂、着色剤および必要に応じて離型剤を含有する。
【0048】
結着樹脂としては、後述する定着液29により軟化および/または膨潤する樹脂であれば特に制限されず、たとえば、ポリスチレン、スチレンの置換体の単独重合体、スチレン系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。結着樹脂は単独または2種以上の組合せで使用できる。これらの中でも、トナー自体の保存性、耐久性、定着液29の付与によるトナーの軟化および/または膨潤制御などの点から、軟化点が100〜150℃かつガラス転移点が50〜80℃である樹脂が好ましく、ポリエステルが特に好ましい。ポリエステルは、入手容易で安価な有機溶剤によって容易に膨潤および/または軟化し、透明になる。これによって、異なる単色のトナー像を重ね合わせたカラートナー像を記録媒体に定着させると、減法混色により充分な発色が得られる。また、前記の軟化点範囲の樹脂よりも軟化点(または分子量)の高い樹脂を用いると、現像時の負荷によるトナーの劣化が防止され、長期間にわたって安定した現像トナー像ひいては高水準で安定した画像が得られる。
【0049】
着色剤としては、従来から電子写真方式の画像形成技術において用いられるトナー用顔料および染料を使用できるけれども、定着液29による滲みを防止するために、定着液29に溶解しない顔料が好ましく、ニグロシン染料などの染料は好ましくない。顔料の具体例としては、たとえば、アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体系顔料などの有機系顔料、カーボンブラック、酸化チタン、モリブデンレッド、クロムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ベルリンブルーなどの無機系顔料、アルミニウム粉などの金属粉などが挙げられる。
【0050】
離型剤としては、後述する定着液29により軟化および/または膨潤するものであれば特に制限されず、たとえば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックスなどのワックス類が挙げられる。これらのワックスの中から、使用する結着樹脂に応じて、該結着樹脂よりもガラス転移点の低いワックスを用いるのが好ましい。ガラス転移点が結着樹脂よりも低いワックスは加熱により容易に軟化するので、トナー自体のガラス転移点よりも低温でも、トナー同士の結合力およびトナーのトナー像担持体、記録媒体などへの付着力が増加するので、定着液付与時にトナーの流れ、凝集などが発生するのを減少させることができる。さらに、ワックスの軟化により、トナー粒子におけるワックスの存在部分からトナー粒子内部に定着液29が浸透するので、定着液29の付与後、短時間でトナー全体が軟化および/または膨潤する。その結果、記録媒体への転写定着時に、充分な定着強度が得られるとともに、トナー像の重ね合わせにより充分な発色を得ることができる。
【0051】
トナーは、必要に応じて、帯電制御剤、流動性向上剤、定着促進剤、導電剤などの一般的なトナー用添加剤の1種または2種以上を含むことができる。
【0052】
トナーの体積平均粒径は、特に制限されないけれども、好ましくは2〜7μmである。このような小粒径トナーを用いると、単位重量当りのトナーの表面積が大きくなり、定着液29との接触面積が増加して定着し易くなる。これによって、定着液29の使用量の低減化を図り得るとともに、トナー像の記録媒体への定着および定着後の乾燥を短時間で実施できる。また、トナーの体積平均粒径が適度に小さい場合には、記録媒体9に対する被覆率が高くなるので、低付着量での高画質化およびトナー消費量の低減化を達成でき、ひいては定着液29の消費量のさらなる低減化を達成できる。
【0053】
トナーの体積平均粒径が2μm未満では、トナーの流動性が低下し、現像動作の際に、トナーの供給、攪拌および帯電が不充分になり、トナー量の不足、逆極トナーの増加などが起こり、高画質の画像が得られないおそれがある。一方、体積平均粒径が7μmを超えると、トナー粒子の中心まで軟化および/または膨潤し難い大粒径のトナー粒子が多くなるので、画像の記録媒体への定着性が低下するとともに、画像の発色が悪くなり、特にOPフィルムへの定着の場合には、画像が暗くなる。
【0054】
トナー自体の軟化点およびガラス転移点は特に制限されないけれども、軟化点が100〜130℃、ガラス転移点が50〜80℃であることが好ましい。このような軟化点の高いトナーは、現像時の負荷に対する耐久性は高いけれども、熱定着方式では充分に定着および発色しない。ところが、本発明では、定着液29を用いて化学的にトナーを軟化および/または膨潤させるので、定着および発色が充分で、高品位な画像が得られる。
【0055】
トナーは、公知の方法に従って製造できる。たとえば、結着樹脂に着色剤、離型剤などを分散して粉砕する方法、結着樹脂のモノマー溶液中に着色剤、離型剤などを分散させ、その後結着樹脂のモノマーを重合させる方法などが挙げられる。いずれの方法においても、トナーの表面積を大きくするために、トナーの形状が球形よりも不定形になるように調整するのが好ましい。これによって、定着液29と接触し易くなるので、定着液29の使用量を減らし、トナー像の定着および乾燥を短時間で実施できる。
【0056】
本実施の形態で用いられる各色トナー16y,16m,16c,16bは、顔料以外は次に示す同じ構成を有する。このトナーは結着樹脂、着色剤および離型剤を含み、体積平均粒径6μm、ガラス転移点60℃、軟化点120℃、顔料含有量がトナー全量の12重量%、離型剤としてのワックス含有量がトナー全量の7重量%および残部が結着樹脂である、負帯電性の絶縁性非磁性トナーである。結着樹脂は、ガラス転移点60℃および軟化点120℃のポリエステルである。ワックスは、ガラス転移点50℃および軟化点70℃の低分子ポリエチレンワックスである。このトナーを用いて、所定の画像濃度(X−Rite社製310による反射濃度測定値が1.4)を得るのに必要な単位面積当りのトナー量は0.5mg/cmである。
【0057】
中間転写手段3は、中間転写ベルト21と、中間転写ローラ22y,22m,22c,22bと、支持ローラ23,24,25と、ベルトクリーナ26とを含んで構成される。
【0058】
中間転写ベルト21はトナー像担持体であり、支持ローラ23,24,25との間に張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルトであり、感光体ドラム11y,11m,11c,11bとほぼ同じ速度で矢符27の方向に回転する。中間転写ベルト21の少なくともトナー担持面21aは、後述する定着液29を浸透させない材料、好ましくは定着液29を浸透させない樹脂材料、さらに好ましくは定着液29に対して撥液性を有する樹脂材料を用いて形成される。定着液29に対して撥液性を有する樹脂材料としては、たとえば、フッ素樹脂が挙げられる。フッ素樹脂としては公知のものを使用でき、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)などが挙げられる。本実施の形態では、厚さ100μmのポリイミド製基材の表面に、厚さ500μmのシリコン層、および、PTFEとPFAとを8:2(重量比)で混合したフッ素樹脂組成物からなる厚さ20μmの表面コート層をこの順番で積層したものを用いる。なお、ポリイミド製基材および表面コート層には、中間転写ベルトとしての電気抵抗値を調整するために、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、グラファイトカーボンなどの導電材を配合できる。
【0059】
中間転写ベルト21のトナー像担持面21aは、感光体ドラム11y,11m,11c,11bにこの順番で圧接する。中間転写ベルト21の感光体ドラム11y,11m,11c,11bに圧接する位置が、各色相のトナー像の中間転写位置である。トナー像担持体である中間転写ベルト21を介して感光体ドラム11y,11m,11c,11bに対向する位置に、中間転写ローラ22y,22m,22c,22bが配置される。
【0060】
中間転写ローラ22y,22m,22c,22bは、それぞれ、中間転写ベルト21におけるトナー像担持面21aの反対面に圧接し、かつ図示しない駆動手段によりその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、たとえば、金属製軸体と、該金属製軸体の表面に被覆される導電性層とを含んで構成される。軸体は、たとえば、ステンレス鋼などの金属により形成される。軸体の直径は特に制限されないけれども、好ましくは8〜10mmである。導電性層は、導電性弾性体などにより形成される。導電性弾性体としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、カーボンブラックなどの導電材を含むEPDM、発泡EPDM、発泡ウレタンなどが挙げられる。導電性層によって、中間転写ベルト21に高電圧が均一に印下される。
【0061】
中間転写ローラ22y,22m,22c,22bには、感光体ドラム11y,11m,11c,11bの表面に形成されるトナー像を中間転写ベルト21上に転写するために、トナーの帯電極性とは逆極性の中間転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム11y,11m,11c,11bに形成されるイエロー色、マゼンタ色、シアン色およびブラック色の各色相のトナー像が中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに順次重ね合わさって転写され、多色トナー像が形成される。
【0062】
支持ローラ23,24,25には、たとえば、直径30mmで、肉厚が1mmのアルミニウム製円筒体が用いられる。なお、中間転写ベルト21を介して、後述する転写定着ローラ28に圧接する支持ローラ24は、中間転写ベルト21を張架するだけでなく、転写定着手段としての機能をも有することから、電気的に接地される。
【0063】
ベルトクリーナ26は、中間転写ベルト21のトナー像担持面21a上のトナー像を後述の転写定着手段6において記録媒体9に転写した後に、トナー像担持面21a上に残存するトナーを除去する部材であり、中間転写ベルト21を介して支持ローラ25に対向するように設けられ、図示しない加圧手段により、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに圧接し、トナー像担持面21a上の残存トナーなどを掻き取るクリーニングブレード26aと、クリーニングブレード26aに掻き取られるトナーなどを貯留するトナー貯留容器26bとを含んで構成される。クリーニングブレード26aには、たとえば、弾性を有するゴム材料(たとえば、ウレタンゴム)などからなるブレードを使用できる。
【0064】
中間転写手段3によれば、感光体ドラム11y,11m,11c,11b上に形成される各色のトナー像が、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aの所定位置に重ね合わせて転写され、多色トナー像が形成される。
【0065】
定着液付与手段4は、中間転写ベルト21上に担持されるトナー像に、トナーを軟化および/または膨潤させる定着液を非接触状態で付与するものである。
【0066】
定着液付与手段4は、中間転写ベルト21の支持ローラ23に当接する屈曲部に定着液29を噴霧する定着液付与装置28と、定着液29を貯留する定着液貯留タンク30と、定着液貯留タンク30内の定着液29を定着液付与装置28に供給する定着液供給管31とを含んで構成される。定着液付与装置28は、そのほぼ真下に、中間転写ベルト21の支持ローラ23に当接する屈曲部が位置するように配置される。
【0067】
定着液付与装置28は、定着液29を外方に向けて吐出する定着液吐出部28aと、定着液29を一時的に貯留し、定着液吐出部28aに定着液29を供給する定着液溜28bとを含んで構成される。
【0068】
定着液付与装置28は、具体的には、図4および図5に示す構造を有する。図4は、定着液付与装置28の定着液吐出部28aの外観を示す斜視図である。図5は、図4に示す定着液付与装置28の構成を模式的に示す断面図である。
【0069】
定着液付与装置28は、電気的な制御信号に応じて定着液29の微小液滴をトナー像担持面21aに担持されるトナー像に向けて飛翔させる装置であり、前述のように、定着液吐出部28aと定着液溜28bとからなる。
【0070】
定着液吐出部28aは、中間転写ベルト21における支持ローラ23に当接する屈曲部のトナー担持面21aに対してほぼ平行に定着液29の液滴を吐出するノズルアレイ51がライン状に配置され、かつ内部にノズルアレイ51と後述の定着液カートリッジ53とを連通させるチャンバー52を有するインクジェットヘッド50と、インクジェットヘッド50の側面50bに接するように設けられて、その伸縮駆動によりチャンバー52内の定着液29を押出すピエゾ素子54と、ピエゾ素子54に伸縮駆動電圧を印加する電源55とを含んで構成される。インクジェットヘッド50のピエゾ素子54に接する部材56は、セラミックスで形成される。このようなインクジェットヘッド50は、プリンタ用インクジェットヘッドのように、ノズル毎に液滴の吐出量を制御する必要はなく、また、ノズル径を微細に形成する必要もないので、長尺であるにも関わらず安価に作成できる。
【0071】
また、定着液溜28bは、インクジェットヘッド50の側面50aに接するように設けられて、チャンバー52に定着液29を供給する定着液カートリッジ53を含んで構成される。
【0072】
定着液付与装置28は、そのノズルアレイ51のほぼ真下に、中間転写ベルト21の支持ローラ23に当接する屈曲部が位置するように配置される。定着液29はノズルアレイ51から放射角を有して吐出され、吐出方向に対して直交する方向における定着液の広がりを吐出幅と定義すると、吐出幅はノズルアレイ51から離反するほど徐々に大きくなる。したがって、定着液29の液滴は、前記屈曲部におけるトナー像担持体21aに対してほぼ平行にかつ該面21aをかすめるように通過し、一部はトナー担持面21aに浅い角度で入射して付着し、一部は該面21aに弾かれて落下し、一部はそのまま落下する。定着液29が放射角を有しないで吐出される場合でも、吐出幅はノズルアレイ51から離反するほど僅かではあるけれども大きくなるので、定着液29の液滴は放射角を有して吐出される場合と同様に通過する。なお、定着液付与装置28は、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aにトナー像が転写され、該トナー像が中間転写ベルト21の回転により屈曲部に搬送それるタイミングに同期して定着液29を吐出するように、定着液29の吐出タイミングを制御することができる。
【0073】
定着液付与装置28によれば、定着液カートリッジ53中の定着液29が、インクジェットヘッド50内部のチャンバー52に供給され、ピエゾ素子54の伸縮駆動によりチャンバー52中の定着液29がノズルアレイ51から液滴として吐出され、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに供給される。
【0074】
定着液貯留タンク30は、定着液29を貯留するタンクであり、定着液付与装置28よりも上方に設けられる。定着液貯留タンク30内の定着液29は、図示しない制御手段により定着液供給管31を介して、定着液付与装置28内の定着液量が一定になるように供給される。また、定着液付与装置28による定着液29の消費量の設定量に応じて、定着液供給管31の径を適宜調整することによっても、定着液付与装置28内の定着液量を一定にできる。
【0075】
ここで使用される定着液29は、トナーを軟化および/または膨潤させる液状物であり、たとえば、トナーを軟化および/または膨潤させる作用を有する有機化合物と水とを含む組成物である。前記有機化合物としては、トナーを軟化および/または膨潤させる作用を有し、かつ水に分散または溶解可能なものであれば特に制限されず、たとえば、高級グリコールエーテル、エチレングリコールモノエーテル、ジエチレングリコールモノエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−メトキシエタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルセロソルブエチルカルビトール、脂肪族二塩基酸エステルおよび不飽和二塩基酸エステル(たとえば、DBE、マレイン酸エステル、イタコン酸エステル)、多塩基酸エステル(たとえば、トリメリット酸エステル)、エステル系高沸点混合溶媒などが挙げられる。これらは1種または2種以上を使用できる。このような有機化合物の含有量は、有機化合物自体の種類、トナー成分などに応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは定着液29全量の10〜30重量%である。
【0076】
定着液29には、界面活性剤を添加できる。界面活性剤の具体例としては、たとえば、脂肪酸誘導体硫酸エステル、スルホン酸型陰イオン界面活性剤、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、四級アンモニウム塩、複素環アミン、アミン化合物などの陽イオン界面活性剤、アミノ酸エステル、アミノ酸、スルホベタインなどの両性イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。界面活性剤の含有量は、併用する有機化合物の種類および含有量、トナー成分、界面活性剤そのものの種類などに応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは定着液29全量の1〜10重量%である。
【0077】
本実施の形態では、高級グリコールエーテル(有機化合物)を20重量%およびスルホン酸型界面活性剤(界面活性剤)を5重量%含有する定着液29を使用する。
【0078】
定着液付与手段4によれば、定着液貯留タンク30内に充填される定着液29が定着液付与装置28に供給され、定着液付与装置28から液滴として吐出され、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに供給される。
【0079】
図1に戻り、定着液回収手段5は、定着液付与装置28のノズルアレイ51の真下でかつ支持ローラ23の斜め下方に、中間転写ベルト21の回転を妨げないように設けられ、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに付着しないで落下する定着液29の液滴を収容するための開口部33を有する定着液回収槽32を含んで構成される。定着液回収槽32に回収される定着液29は、図示しないカートリッジ方式の定着液収容タンクに送られる。定着液収容タンクが回収された定着液29で満杯になると、センサがそれを検知してその検知結果を図示しないCPUに送り、CPUは画像形成装置1の操作パネルに定着液収容タンクの交換時期を知らせる表示をする。
【0080】
定着液回収手段5によれば、定着液付与手段4から中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに付与される定着液29のうち、トナー像担持面21aに付着しない定着液29を回収する。
【0081】
図6〜図8は、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに定着液29が付与される状態を示す側面図である。図6は、トナー像担持面21aの非画像部(トナー像が付着しない部分)に定着液29が付与される状態を示す側面図である。図7は、トナー像担持面の画像部(トナー像が付着する部分)に定着液29が付与される状態を示す側面図である。図8は、トナー像担持面21aに定着液29が付着しないでそのまま通過する状態を示す側面図である。
【0082】
図6によれば、定着液付与装置28から吐出される定着液29の液滴が、中間転写ベルト21の屈曲部(支持ローラ23との当接部)において、トナー像担持面21aの非画像部に矢符57の方向で接触する。矢符57の方向は、トナー像担持面21aに対して比較的浅い角度である。この場合、液滴はトナー像担持面21aの反発を受け、トナー像担持面21aに付着することなく矢符58の方向に落下し、定着液回収槽32に回収される。定着液29が水性組成物であり、トナー像担持面21aがフッ素系樹脂などの撥水性を有する材料で被覆される場合、定着液29の非画像部への付着を一層確実に防止できる。
【0083】
図7によれば、定着液29の液滴が、中間転写ベルト21の屈曲部において、トナー像担持面21aの画像部21bに矢符57の方向で接触すると、定着液29はトナーと親和性を有するので、画像部21bに浸透し、トナーを軟化および/または膨潤させる。
【0084】
図8によれば、トナー像担持面21aに接触することなく矢符59の方向に落下する定着液29は、そのまま定着液回収槽32に回収される。定着液29の液滴をトナー像担持面21aに対して浅い角度で接触させるには、定着液29はある程度の放射角をもって吐出され、その吐出幅は、非接触付与装置28から離反するほど大きくなる。その結果、トナー像担持面21aに接触することなく落下する液滴量が増加するけれども、そのような液滴は定着液回収槽32に回収されるので、定着液29が徒らに消費され、また画像形成装置1内を汚染することがない。
【0085】
このようにして、トナー像担持面21aの画像部21bのみに定着液29が付与され、定着液29の消費量を必要最小限にすることができる。
【0086】
転写定着手段6は、支持ローラ24と、中間転写ベルト21を介して支持ローラ24に圧接し、かつ軸線方向に回転駆動可能に設けられる転写定着ローラ35とを含んで構成される。転写定着ローラ35には、たとえば、芯金の表面に厚さ3mmで硬度(JIS−A)が50度であるシリコンゴム層と、厚さ20mmのPFA層とをこの順番で設けたローラが用いられる。転写定着ローラ35は、たとえば、5N/cmの線圧で中間転写ベルト21および支持ローラ24を押圧するように配置され、電圧は印加されない。
【0087】
定着液付与手段4により定着液29を付与され、軟化および/または膨潤状態にある中間転写ベルト21上のトナー像は、中間転写ベルト21の回転によって、支持ローラ24と転写定着ローラ35との圧接部に搬送される。これに同期して、後述する記録媒体供給手段7から記録媒体9が送給され、中間転写ベルト21上のトナー像が記録媒体9の表面に押圧により転写され、定着される。
【0088】
このとき、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aがトナーとの付着力の低いフッ素樹脂材料で構成される場合には、トナーの全量が確実に記録媒体9に転写される。
【0089】
また、中間転写ベルト21が基材とフッ素樹脂材料からなる表面層との間にゴムなどからなる弾性層が介在する構成である場合には、表面層が記録媒体9表面の凹凸に倣って変形する。その結果、記録媒体9の凹部にもトナー像を接触させることが可能になり、均一な転写定着像が得られる。
【0090】
また、記録媒体9が紙類である場合には、トナー像が記録媒体9に押圧されると、トナー粒子が紙繊維に強く入り込むのと同時に、トナー粒子同士が融合し、記録媒体9に転写された画像の表面が均一になる。これによって、減法混色による発色性と表面の光沢性に優れた高品位のカラー画像が得られる。
【0091】
転写定着手段6によれば、定着液付与手段4により軟化および/または膨潤状態にあるトナー像が記録媒体9に押圧により転写定着される。
【0092】
記録媒体供給手段7は、記録媒体9を貯留する記録媒体カセット36と、記録媒体9を搬送路Pに1枚ずつ送給するピックアップローラ37と、中間転写ベルト21上の多色トナー像が転写定着ローラ35と支持ローラ24との圧接部に搬送されるのに同期して、該圧接部に記録媒体9を送給する1対のレジストローラ38,39とを含んで構成される。
【0093】
記録媒体供給手段7によれば、記録媒体カセット36内に貯留される記録媒体9が、ピックアップローラ37により1枚ずつ搬送路Pに送給され、さらに、レジストローラ38,39により、転写定着ローラ35と支持ローラ24との圧接部に送給される。
【0094】
排出手段8は、搬送ベルト40と、駆動ローラ41と、テンションローラ42と、排紙ローラ43とを含んで構成される。
【0095】
搬送ベルト40は、駆動ローラ41とテンションローラ42との間に張架されてループ状の搬送経路を形成する無端ベルトであり、転写定着手段6により画像が形成された記録媒体9を排紙ローラ43に搬送する。搬送ベルト40には、たとえば、導電剤を添加して導電性を付与した厚さ100μmのポリイミドフィルムの少なくとも記録媒体搬送面40aに、PTFEからなる厚さ10μmの被覆層を設けたものを使用できる。
【0096】
駆動ローラ41は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に設けられる。駆動ローラ41には、たとえば、アルミニウムなどの金属からなる中空ローラを使用できる。
【0097】
テンションローラ42は、搬送ベルト40が弛まないように、搬送ベルト40に所定の張力を付与する。テンションローラ42には、たとえば、金属製軸体と、金属製軸体の表面に形成される被覆層とを含んで構成される。また、金属製軸体のみからなるものでもよい。金属製軸体の材料には、たとえば、ステンレス鋼が使用され、被覆層の材料にはたとえばフッ素ゴムが使用される。
【0098】
排紙ローラ43は、搬送ベルト40により搬送される記録媒体9を画像形成装置1の外部側面に設けられる排紙トレイ44に排出する部材であり、互いに圧接するように設けられる1対のローラを含んで構成され、各ローラはそれぞれの軸線方向に回転駆動可能に支持される。
【0099】
画像形成装置1によれば、トナー像形成手段2により、トナー像担持体である中間転写ベルト21上に形成されるトナー像に、定着液付与手段4から非接触下に定着液29が付与され、トナー像を軟化および/または膨潤させ、これを転写定着手段6により記録媒体9に転写定着し、画像が形成される。そして、中間転写ベルト21に付着しない定着液29は、定着液回収手段5により回収され、再利用される。
【0100】
本実施の形態では、定着液付与手段4として定着液付与装置28を用いるけれども、それに限定されず、図9および図10に示す定着液付与装置60を用いることができる。図9および図10は、定着液付与装置60の構成を模式的に示す断面図である。定着液付与装置60は、定着液付与装置28に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付し、説明を省略する。
定着液付与装置60は、シャッター手段61,62を有することを特徴とする。
【0101】
シャッター手段61,62は、インクジェットヘッド50のノズルアレイ形成面51aを覆うようにかつ図示しない駆動手段により開閉自在に設けられ、定着液29の液滴の吐出口であるノズルアレイ51が大気に晒され、定着液29中の液状成分が蒸発して定着液29が消費され、さらにノズルアレイ51が定着液29の乾燥により目詰まりするのを防止する部材である。
【0102】
さらに、シャッター手段61,62は図示しない移動手段を有し、インクジェットヘッド50の長手方向に直交する方向において、ノズルアレイ形成面51aに対して平行移動できる。たとえば、開口部63を開けた状態でのシャッター手段61,62全体の平行移動が可能になる。これによって、定着液29の吐出時には、シャッター手段61,62により形成される開口部63とノズルアレイ51の位置が重なるように移動し、一方定着液29の非吐出時には開口部63とノズルアレイ51の位置が重ならないように移動する。また、シャッター手段61,62を移動させることなく、定着液29の吐出時にはシャッター手段61,62を開いて開口部63を形成し、非吐出時にはシャッター手段61,62を閉じることもできる。
【0103】
図11は、本発明の実施の第2形態である画像形成装置65の構成を模式的に示す断面図である。画像形成装置65は、画像形成装置1に類似し、同一部分の一部は図示および説明を省略する。また、図示した部分のうち画像形成装置1に対応する部分は同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0104】
画像形成装置65は、定着液付与手段4aが、定着液回収槽32に回収される定着液29を定着液付与装置28の定着液溜28aに循環させる定着液循環手段66を含むことを特徴とする。
【0105】
定着液循環手段66は、一端が定着液回収槽32に接続されかつもう一端が定着液溜28aに接続され、定着液29を流過させる定着液チューブ67と、定着液チューブ67の途中に設けられ、定着液チューブ67の定着液29を矢符69の方向に送給する汲み上げポンプ68とを含んで構成される。定着液循環手段66によれば、定着液回収槽32に回収される定着液29が定着液チューブ67を介して定着液付与装置28の定着液溜28aに送給され、再利用される。
【0106】
画像形成装置65によれば、トナー像形成手段2により、トナー像担持体である中間転写ベルト21上に形成されるトナー像に、定着液付与手段4から非接触下に定着液29が付与され、トナー像を軟化および/または膨潤させ、これを転写定着手段6により記録媒体9に転写定着し、画像が形成される。そして、中間転写ベルト21に付着しない定着液29は、定着液循環手段67により定着液回収手段5から定着液付与手段4に戻され、再利用される。
【0107】
図12は、本発明の実施の第3形態である画像形成装置70の構成を模式的に示す断面図である。画像形成装置70は、画像形成装置1に類似し、同一部分の一部は図示および説明を省略する。また、図示した部分のうち画像形成装置1に対応する部分は同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0108】
画像形成装置70は、定着液付与手段72と定着液回収手段73とが1つの筺体71内に、定着液付与手段72よりも定着液回収手段73の方が高い位置になるように配置され、該筺体71が、中間転写ベルト21の屈曲部を該筺体71内部に装入し、定着液付与手段72から該屈曲部に向けて定着液29を吐出するための開口部74を有することを特徴とする。
【0109】
筺体71は、支持ローラ23に対向し、中間転写ベルト21の屈曲部を筺体71内部に装入する開口部74を有する側壁71aと、側壁71aに対向する側壁71bと、側壁71a,71bにより水平面に対して傾斜するように支持される天板71cと、底面71dとを含んで構成される。側壁71a,71bは定着液29の画像形成装置1内部への飛散防止効果をも有する。また開口部74は、中間転写ベルト21の回転駆動を妨げない程度の大きさに形成される。
【0110】
定着液付与手段72は定着液付与装置28を含んで構成される。定着液付与装置28は、支持ローラ23よりも下方であって、図示しない定着液吐出口(ノズルアレイ51)から上方に向けて吐出される定着液29が筺体71内部に装入される中間転写ベルト21の屈曲部をかすめる位置になるように、その定着液溜28bを下側にして筺体71の底部71dに配置される。その際、定着液付与装置28の長手方向における一方の側面28xと筺体71の側壁71bとの間に空間75が設けられる。
【0111】
定着液回収手段73は、板状部材である天板71cを含んで構成される。天板71cは、側壁71aから離反するほど下方に位置するように、水平面に対して傾斜を持って配置される。したがって、中間転写ベルト21により跳ね返された定着液29および中間転写ベルト21に付着することなく該ベルト21周辺を通過する定着液29が天板71cに付着し、この定着液29が天板71cの傾斜と自重とによって下方に向けて天板71cの表面を流過する。この定着液29は天板71cから側壁71bの表面につたわり、側壁71b表面を流過して空間75に至り、定着付与装置28の側面28xに設けられる図示しない定着液収容手段により定着液溜28bに戻される。定着液収容手段としては、たとえば液体補給用のロータリーポンプなどが挙げられる。定着液溜28bと空間75の一部を前記ロータリーポンプでつなぎ、空間75から定着液溜28bへ定着液を移送する。
【0112】
定着液付与手段72から中間転写ベルト21の屈曲部に向けて吐出される定着液29は、一部が中間転写ベルト21上のトナー像に付着し、トナーを軟化および/または膨潤させる。中間転写ベルト21に付着しない定着液29は天板71c内壁に付着し、天板71cの傾斜に沿って流過し、さらに側壁71b表面を伝わって空間75に貯留される。
【0113】
画像形成装置75によれば、トナー像形成手段2により、トナー像担持体である中間転写ベルト21上に形成されるトナー像に、トナー像の下方に配置される定着液付与手段72から非接触下に定着液29が付与され、トナー像を軟化および/または膨潤させ、これを転写定着手段6により記録媒体9に転写定着し、画像が形成される。そして、中間転写ベルト21に付着しない定着液29は、定着液付与手段72と同じ筺体71内に配置される定着液回収手段73により回収される。
【0114】
また本実施の形態では、定着液付与手段72として定着液付与装置28を用いるけれども、それに限定されず、図13および図14に示す定着液付与装置80を用いることができる。図13は、定着液付与装置80の要部(第1および第2の供給ローラ82,83ならびに金属メッシュ板85)の外観を示す斜視図である。図14は、図13に示す定着液付与装置80の構成を模式的に示す断面図である。
【0115】
定着液付与装置80は、電気的な制御信号に応じて定着液29の微小液滴をトナー像担持面21aに担持されるトナー像に吐出する装置であり、定着液収容槽81と、第1供給ローラ82と、第2供給ローラ83と、液量規制ブレード84と、金属メッシュ板85と、超音波振動子86と、電源87とを含んで構成される。
【0116】
定着液収容槽81は、定着液29を収容する。定着液収容槽81では、その定着液面高さが常に一定になるように、定着液29の消費状況に応じて、図示しない定着液補充手段により定着液29が補充供給される。
【0117】
第1供給ローラ82は、その一部が定着液収容槽61の定着液29中に浸漬し、図示しない駆動手段により矢符88の方向に回転駆動可能に設けられる。第1供給ローラ82の回転によって、第1供給ローラ82の表面に定着液29が付着し、この定着液29が第2供給ローラ83に供給される。
【0118】
第2供給ローラ83は、第1供給ローラ82および金属メッシュ板85に圧接し、かつ図示しない駆動手段により矢符89の方向に回転駆動可能に設けられる。また、液量規制ブレード84は第2供給ローラ83の軸線方向に延びる板状部材であり、その短手方向の一端が第2供給ローラ83の表面に当接し、かつ短手方向のもう一端が定着液収容槽81に固定されるように設けられる。ここで、第2供給ローラ83および液量規制ブレード84は、金属メッシュ板85に供給される定着液29の液量を一定化するために設けられる。第2供給ローラ83は、その表面に、第1供給ローラ82との圧接部で定着液29の供給を受け、次いで液量規制ブレード84によってその表面における定着液29の液量を調整された後、金属メッシュ板85に圧接して定着液29を金属メッシュ板85に供給する。
【0119】
金属メッシュ板81は、支持ローラ23の回転軸線方向に延びるように設けられ、第2供給ローラ83が圧接する面と反対の面に、超音波振動子86が接するように設けられる。超音波振動子86は、電源87から電圧を印加されて超音波を発生し、振動および伸縮する。超音波振動子86の振動を受けて金属メッシュ板81が振動し、第2供給ローラ83の表面に付着する定着液29を液滴化し、この液滴90を中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに向けて吐出する。
【0120】
定着液付与装置80によれば、定着液収容槽81に収容される定着液29を、第1供給ローラ82および第2供給ローラ83を介して金属メッシュ板85に供給し、金属メッシュ板85を超音波振動子86によって振動させ、定着液29を液滴化して中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに向けて吐出する。このような定着液付与装置80によっても、定着液付与装置28と同様の効果を奏することができる。
【0121】
図15は、本発明の実施の第4形態である画像形成装置91の構成を模式的に示す断面図である。画像形成装置91は、画像形成装置70に類似し、同一部分の一部は図示および説明を省略する。また図示した部分のうち、対応する部分については同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0122】
画像形成装置91は、定着液付与装置28が支持ローラ23よりも下方であって、図示しない定着液吐出口(ノズルアレイ51)から上方に向けて吐出される定着液29が筺体71内部に装入される中間転写ベルト21の屈曲部をかすめる位置になるように、その定着液溜28bを下側にして筺体71の底部71dに接しかつその長手方向における一方の側面28xと筺体71の側壁71bとが接するように配置され、ならびに定着液回収手段73により回収される定着液29を定着液付与装置28の定着液溜28bに循環して再利用する定着液循環手段92を有することを特徴とする。
【0123】
定着液付与手段72を構成する定着液付与装置28は、その定着液溜28bの底面が筺体71の底面71dに接しかつその側面28xが筺体71の側壁71bと接するように配置され、開口部74から筺体71内部に装入される中間転写ベルト21の屈曲部をかすめるように下方から上方に向けて定着液29を吐出する。
【0124】
定着液循環手段92は、定着液回収手段73により回収される定着液29を定着液溜28bに循環する定着液循環管93と、定着液29が側壁71bの内壁をつたって落下するのを防止し、定着液循環管93に誘導する定着液落下防止部材94とを含んで構成される。
【0125】
定着液循環管93は、一端が筺体71の側壁71bに設けられる定着液排出口96に接続され、もう一端が側面28xの定着液溜28b部分に設けられる定着液受入口97に接続され、定着液輩出口96から流れ込む定着液29を自然落下により矢符95の方向に送給し、定着液溜28bに戻す。
【0126】
定着液落下防止部材94は、側壁71bの内壁であって定着液排出口96の真下に、側壁71bから離反するほど上方に向かうように傾斜をつけて設けられる。天板71cに付着し、天板71cの傾斜および自重により、天板71cおよび側壁71cの内壁をつたって落下する定着液29は、定着液落下防止部材94により受け止められて定着液排出口96から定着液循環管93に流入する。
【0127】
定着液循環手段94によれば、定着液回収手段73である天板71cに付着する定着液29は、定着液落下防止部材94に受け止められ、定着液循環管93を流下し、定着液溜28bに戻される。
【0128】
画像形成装置91によれば、トナー像形成手段2により、トナー像担持体である中間転写ベルト21上に形成されるトナー像に、トナー像の下方に配置される定着液付与手段72から非接触下に定着液29が付与され、トナー像を軟化および/または膨潤させ、これを転写定着手段6により記録媒体9に転写定着し、画像が形成される。そして、中間転写ベルト21に付着しない定着液29は、定着液付与手段72と同じ筺体71内に配置される定着液回収手段73により回収され、定着液循環手段92を介して定着液付与手段72に戻される。
【0129】
本実施の形態では、筺体71内に定着液付与手段72と定着液回収手段73とを設ける一体型を採用するけれども、筺体と定着付与手段72とを別々の部材とする構成を採ることもできる。その場合、たとえば、筺体は側壁71a,71bおよび天板71cにより形成し、さらに側壁71bの長手方向(紙面に対して垂直な方向)に対して垂直な方向の長さを、側壁71bの下端が定着液付与装置28における定着液吐出部28aの上面に接する程度に短くしたものを使用できる。
【0130】
前記の各実施形態の画像形成装置によれば、定着液29の消費量が低減化され、高品位な定着画像を安定的にかつ長期的に得ることができる。
【0131】
本発明の画像形成装置は、たとえば、複写機、プリンタ、ファクシミリなどとして使用できる。また、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能のうちの少なくとも2つの機能を有する複合機としても使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の実施の第1形態である画像形成装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図3】図1に示す画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図4】定着液付与装置の外観を示す斜視図である。
【図5】図4に示す定着液付与装置の構成を模式的に示す断面図である。定着液付与装置の要部の外観を示す斜視図である。
【図6】トナー像担持面の非画像部に定着液が付与される状態を示す側面図である。
【図7】トナー像担持面の画像部に定着液が付与される状態を示す側面図である。
【図8】トナー像担持面に定着液が付着しないでそのまま通過する状態を示す側面図である。
【図9】定着液付与装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図10】定着液付与装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図11】本発明の実施の第2形態である画像形成装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明の実施の第3形態である画像形成装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図13】定着液付与装置の要部の外観を示す斜視図である。
【図14】図13に示す定着液付与装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図15】本発明の実施の第4形態である画像形成装置の構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0133】
1,65,70,91 画像形成装置
2 トナー像形成手段
3 中間転写手段
4,4a,72,80 定着液付与手段
5,73 定着液回収手段
6 転写定着手段
7 記録媒体供給手段
8 排出手段
9 記録媒体
10y,10m,10c,10b 作像ユニット
11y,11m,11c,11b 感光体ドラム
12y,12m,12c,12b 帯電ローラ
13 光走査ユニット
13y,13m,13c,13b 信号光
14y,14m,14c,14b 現像装置
15y,15m,15c,15b ドラムクリーナ
16y,16m,16c,16b トナー
17y,17m,17c,17b 現像ローラ
18y,18m,18c,18b 現像ブレード
19y,19m,19c,19b トナー貯留容器
20a,20b 攪拌ローラ
21 中間転写ベルト
21a トナー像担持面
21b 画像部
22y,22m,22c,22b 中間転写ローラ
23,24,25 支持ローラ
26 ベルトクリーナ
26a クリーニングブレード
26b トナー貯留容器
27,57,58,69,88,89,95 矢符
28,60 定着液付与装置
28a 定着液吐出部
28b 定着液溜
28x 側面
29 定着液
30 定着液貯留タンク
31 定着液供給管
32 定着液回収槽
33,63,74 開口部
35 転写定着ローラ
36 記録媒体カセット
37 ピックアップローラ
38,39 レジストローラ
40 搬送ベルト
41 駆動ローラ
42 テンションローラ
43 排紙ローラ
44 排紙トレイ
50 インクジェットヘッド
50a,50b 側面
51 ノズルアレイ
51a ノズルアレイ形成面51a
52 チャンバー
53 定着液カートリッジ
54 ピエゾ素子
55,87 電源
61,62 シャッター手段
66,92 定着液循環手段
67 定着液チューブ
68 汲み上げポンプ
71 筺体
71a,71b 側壁
71c 天板
71d 底面
75 空間
81 定着液収容槽
82 第1供給ローラ
83 第2供給ローラ
84 液量規制ブレード
85 金属メッシュ板
86 超音波振動子
90 液滴
93 定着液循環管
94 定着液落下防止部材
96 定着液排出口
97 定着液受入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂および着色剤を含むトナーからなるトナー像を形成するトナー像形成手段と、
トナー像形成手段により形成されるトナー像を担持して回転するトナー像担持体において、少なくともトナー像担持面がトナー像を軟化および/または膨潤させる定着液を浸透させない材料で構成されるトナー像担持体と、
トナー像担持体上のトナー像に、定着液を非接触下に付与する定着液付与手段と、
トナー像担持体に付着しない定着液を、トナー像担持体に対して非接触下に回収する定着液回収手段と、
定着液が付与されたトナー像を記録媒体に転写と同時に定着させる転写定着手段とを含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
定着液付与手段は、
トナー像担持体のトナー像担持面に対してほぼ平行に定着液を吐出することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
定着液付与手段は、
複数の支持ローラに回転可能に張架される無端ベルトであるトナー像担持体における複数の支持ローラ当接部の少なくとも1箇所に定着液を吐出することを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
定着液付与手段は、
定着液が大気に晒される定着液吐出口の近傍に設けられ、定着液中の液状成分が蒸発するのを防止する乾燥防止手段を含むことを特徴とする請求項2または3記載の画像形成装置。
【請求項5】
乾燥防止手段は、
開閉自在に設けられ、定着液吐出口と大気とを遮断するシャッター手段であることを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
トナー像担持体の少なくともトナー像担持面は、
定着液に対して撥液性を有する材料で構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項7】
定着液回収手段は、
回収した定着液を、定着液付与手段に循環させる定着液循環手段を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項8】
定着液回収手段は、
定着液付与手段よりも高い位置に配置されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項9】
定着液回収手段は、
定着液付与手段から吐出される定着液のうち、トナー像担持体のトナー像担持面に付着しない定着液を付着させて回収するための板状の回収部材であって、水平面に対して傾斜して設けられる回収部材を含むことを特徴とする請求項8記載の画像形成装置。
【請求項10】
定着液付与手段と定着液回収手段とが1つの筺体内に収容され、
該筺体は、トナー像担持体のトナー像担持面の少なくとも一部を該筺体内に装入し、定着液付与手段の定着液吐出口から該トナー像担持面に向けて定着液を吐出するための開口部を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項11】
結着樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項12】
トナーの体積平均粒径が2μm以上、7μm以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−251527(P2006−251527A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69647(P2005−69647)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】