説明

画像形成装置

【課題】 塗工紙に対する定着におけるトナー像の乱れを防止するとともに、両面画像形成における搬送不良やトナー像の乱れを防止する。
【解決手段】 塗工紙に対しては、前処理手段を記録材に接近させて定着工程に塗工紙を導入するが、両面画像形成における裏面画像形成では、前処理手段を後退させて塗工紙を導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置における、トナー像を熱と圧力とにより記録材に定着する定着技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真プロセスを用いた画像形成技術に対して高画質化のニーズが高くなってきており、重合トナーを用いた画像形成プロセス等の高画質化技術が開発されている。また、記録材にも様々な用紙が用いられ、主として文字情報の記録を目的とした普通紙の他に、写真画像、特に、カラー写真画像を記録するために、光沢性のある画像を形成する塗工紙が用いられるなど、記録材が多様化している。そして、記録材の多様化に対応して、記録材の性質に合った画像形成技術が開発されている。特に、カラー画像形成における高画質化技術が開発されている。
【0003】
特許文献1では、定着工程において、定着を行うニップの前段において、記録材を予備加熱することにより、塗工紙からなる記録材に対する定着において発生するトナーブリスターやペーパーブリスターを防止することが提案されている。
【0004】
特許文献2では、流動性の高い重合トナーで形成したトナー像の定着において、予備加熱することにより、記録材がニップの突入する際に生ずるトナー像の乱れを防止することが提案されている。
【0005】
特許文献3では、トナーブリスターを防止するために、転写の前に記録材を加熱することが提案されている。
【特許文献1】特開平9−325631号公報
【特許文献2】特開平11−24463号公報
【特許文献3】特開2000−315031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3では、いずれも記録材に対して、定着位置であるニップを通過する前の段階で、加熱や圧接等の前処理を行っている。しかしながら、これらの技術には何れも問題がある。
【0007】
特許文献1では、前処理である予備加熱を、定着を行う加熱ローラ上で行っているために、トナー像の乱れを防止するのに限度があり、画質低下の防止に不十分である。
【0008】
特許文献2では、両面画像形成における裏面画像形成工程において、湾曲する傾向の強い記録材が搬送不良を起こすという問題がある。また、未定着のトナー像が前処理手段に接触してトナー像が乱れるという問題がある。
【0009】
特許文献3の方法では、転写部を通過する記録材の温度が高くなって、画像形成に悪影響を及ぼすという問題がある。
【0010】
本発明は、トナーブリスター等の画質低下を防止した従来技術では、両面画像形成において、不具合を起こすという問題を解決し、塗工紙等の記録材を用いた場合に良好な定着が行われるとともに、両面画像形成時に問題となる搬送不良やトナー像の乱れを防止し、高画質の両面画像を安定して形成する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的は下記の発明により達成される。
(請求項1)
加熱部材と加圧部材とを圧接させてニップを形成し、前記加熱部材と前記加圧部材とで記録材を挟持・搬送して定着を行う定着装置を備えた画像形成装置であって、
前記ニップの上流側において記録材を前記ニップへ案内する案内部材、
前記ニップの上流側において前記案内部材に対向して設けられた可動な前処理手段、
を有する画像形成装置において、
両面画像形成における第2面画像を定着する際に、前記前処理手段を前記案内部材から離間させ、両面画像形成における第1画像面を定着する際に、前記前処理手段を前記案内部材に近接させる制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
(請求項2)
前記前処理手段は記録材を予備加熱することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
(請求項3)
前記制御手段が、
片面画像形成における定着時及び両面画像形成における第1面画像の定着時に、前記前処理手段を前記案内部材に近接さ、両面画像形成における第2面画像の定着時に、前記前処理手段を前記案内部材から離間させる第1モードと、
前記制御手段が、片面画像形成及び両面画像形成の定着時に、前記前処理手段を前記案内部材から離間させる第2モードとを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
(請求項4)
前記制御手段は、画像を記録する記録材の情報に基づいて、記録材が塗工紙である場合には、前記第1モードで前記定着装置を作動させ、記録材が非塗工紙である場合には、前記第2モードで前記定着装置を作動させることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
(請求項5)
前記ニップは、ベルトと、該ベルトを張架する第1ローラと、前記ベルトに圧接する加圧ローラとにより形成され、
前記前処理手段は、前記ベルトと、該ベルトを張架し、変位可能な第2ローラとで構成され、
前記制御手段は、前記第2ローラを変位させることにより、前記前処理手段を移動させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
(請求項6)
前記第2ローラ内にヒータが設けられ、該ヒータにより前記ベルトを加熱し、定着を行うとともに、予備加熱を行うことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
(請求項7)
定着用のヒータとは別に予備加熱用のヒータが設けられ、前記前処理手段は、変位可能な前記予備加熱用のヒータからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜7のいずれかの発明により、塗工紙に対して良好な定着が行われ、塗工紙を用いた画像形成において発生しやすいトナーブリスター等のトナー像の乱れが良好に防止されるとともに、両面画像形成において起こりやすい搬送不良やトナー像の乱れが良好に防止され、高画質の画像を安定して出力する画像形成装置が実現される。
【0013】
請求項3の発明により、普通紙に対して高画質の画像を形成するとともに、塗工紙に対して高画質の画像を形成する画像形成装置が実現される。
【0014】
請求項6の発明により、定着用にヒータの他に予備加熱用にヒータを設ける必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、実施の形態により本発明を説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。
【0016】
図1は本発明の実施の形態の一例であるカラー画像形成装置の概略構成図である。
【0017】
画像形成装置GSは、画像形成装置本体GHと画像形成装置本体GHの上部に設けられた画像読取装置SCとから構成される。
【0018】
画像形成装置本体GHは、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、中間転写体の移動方向に沿ってイエロー、マゼンタ、シアンおよび黒色の各カラートナー像を形成する画像形成ユニットを配置し、各画像形成ユニットの像担持体上に形成したカラートナー像を中間転写体上に多重転写して重ね合わせた後、記録材上に一括転写するものである。
【0019】
図において、画像読取装置SC上に載置された原稿画像が光学系により走査露光され、ラインイメージセンサCCDに読み込まれ、ラインイメージセンサCCDにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、画像書込手段としての露光装置3に送られる。
【0020】
また図において、中間転写体である中間転写ベルト6の周縁部には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒色(K)の各色毎の画像形成用として4組のプロセスユニット100が図の矢印で示す鉛直方向の中間転写ベルト6の回転方向に、中間転写ベルト6に沿ってY、M、C、Kの順に縦列配置されている。
【0021】
4組のプロセスユニット100は何れも共通した構造であり、それぞれ、像担持体である感光体ドラム1と、帯電装置2と、露光装置3と、現像装置4と感光体クリーニング装置8とからなっている。
【0022】
感光体ドラム1は、例えば外径が40〜100mm程度のアルミニウム等の金属性の部材によって形成される円筒状の基体の外周に、感光体層として層厚(膜厚)20〜40μm程度の有機感光層(OPC)を形成したものである。感光体ドラム1は、矢印で示す方向に回転される。
【0023】
感光体ドラム1の周りには、帯電装置2、露光装置3、現像装置4を1組とした画像形成部が、図の矢印にて示す感光体ドラム1の回転方向に配置される。
【0024】
帯電装置2は、感光体ドラム1の移動方向に対して直交する方向(図において紙面垂直方向)に感光体ドラム1と対峙し近接して取り付けられる。帯電装置2は、感光体ドラム1の有機感光体層に対し所定の電位を与えるコロナ放電ワイヤを備え、トナーと同極性のコロナ放電によって帯電作用を行い、感光体ドラム1に対し一様な電位を与える。
【0025】
露光装置3は、不図示の半導体レーザ(LD)光源から発光されるレーザ光を、回転多面鏡(符号なし)により主走査方向に回転走査し、fθレンズ(符号なし)、反射ミラー(符号なし)等を経て感光体ドラム1上を画像信号に対応する電気信号による露光(画像書込)を行い、感光体ドラム1の表面の感光体層に原稿画像に対応する静電潜像を形成する。
【0026】
現像装置4は、感光体ドラム1の帯電極性と同極性に帯電されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)若しくは黒色(K)の各色の2成分現像剤をそれぞれ収容し、現像剤担持体である現像ローラ4aを備えている。現像ローラ4aは、突き当てコロ(不図示)により感光体ドラム1と所定の間隙に保たれ、感光体ドラム1の回転方向と順方向に回転するようになっており、現像時、現像ローラ4aに対してトナーと同極性の直流電圧或いは直流電圧に交流電圧を重畳する現像バイアス電圧を印加することにより、感光体ドラム1上の静電潜像を反転現像により現像する。
【0027】
中間転写ベルト6は、体積抵抗率が107〜109Ω・cm程度で、表面抵抗率が1010〜1012Ω/□程度の半導電性の無端状(シームレス)の樹脂ベルト部材が用いられる。中間転写ベルト6はテンションローラ6aを含む複数のローラ部材により巻回され、鉛直方法に回動可能に支持されている。中間転写体としてはドラム状のものを用いることも可能である。
【0028】
各色毎の第1の転写手段としての1次転写ローラ7は、例えばシリコンやウレタン等の発泡ゴムを用いたローラ状の導電性部材からなり、中間転写ベルト6を挟んで各色毎の感光体ドラム1に対向して設けられ、中間転写ベルト6の背面を押圧して感光体ドラム1との間に転写域を形成する。1次転写ローラ7には定電流制御によりトナーと反対極性の直流定電流が印加され、転写域に形成される転写電界によって、感光体ドラム1上のトナー像が中間転写ベルト6上に転写される。
【0029】
画像形成工程(画像形成プロセス)について以下に説明する。
【0030】
画像記録のスタートにより不図示の感光体駆動モータの始動によりYの感光体ドラム1が図の矢印で示す方向へ回転され、Yの帯電装置2によってYの感光体ドラム1に電位が付与される。Yの感光体ドラム1は電位を付与された後、Yの露光装置3によって第1の色信号すなわちYの画像データに対応する電気信号による露光(画像書込)が行われ、Yの感光体ドラム1上にイエロー(Y)の画像に対応する静電潜像が形成される。この潜像はYの現像装置4により反転現像され、Yの感光体ドラム1上にイエロー(Y)のトナーからなるトナー像が形成される。Yの感光体ドラム1上に形成されたYのトナー像は1次転写手段としての1次転写ローラ7により中間転写ベルト6上に転写される。
【0031】
同様のプロセスにより、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒色(K)のトナー像が順次中間転写ベルト6上に重ね合わせて形成される。
【0032】
転写後のそれぞれの感光体ドラム1の周面上に残ったトナーは感光体クリーニング装置8によりクリーニングされる。
【0033】
一方、給紙カセット20A、20B、20C内に収容された記録材Sは、給紙カセット20A、20B、20Cにそれぞれ設けられる送り出しローラ21および給紙ローラ22Aにより給紙され、搬送ローラ22B、22C、22Dにより搬送され、露光装置3の書き込みタイミングに同期してレジストローラ23により搬送され、トナーと反対極性の電圧が印加される2次転写手段としての2次転写ローラ7Aの転写域において、中間転写ベルト6上に形成された重ね合わせのカラートナー像が一括して転写される。
【0034】
カラートナーが転写された記録材Sは、定着装置9により定着処理され、排紙部18により搬送され排紙トレイ19に排紙される。
【0035】
両面画像形成においては、前記に説明した画像形成工程により第1面に画像が形成された記録材Sは、定着装置9を通過後に、排紙部18の切替ゲート18aにより下方に案内され、スイッチバック部27Bに進入し、スイッチバック部27Bでスイッチバックし表裏反転した後に、再給紙部27Cからレジストローラ23に供給される。
【0036】
レジストローラ23において、裏面画像形成と同期して搬送され、2次転写ローラ7Aにより裏面画像のカラトナー像が記録材Sの第2面に転写され、定着装置9により裏面画像のカラートナー像が記録材Sの第2面に定着される。記録材Sは定着後に、排紙部18から排紙トレイ19に排紙される。
【0037】
また、2次転写ローラ7Aにより記録材S上にカラー画像が転写された後、記録材Sを分離した中間転写ベルト6は、中間転写体クリーニング装置8Aにより残留トナーが除去される。
【0038】
図2は定着装置9を示す図である。
【0039】
エンドレスベルトからなる定着ベルト91は第2ローラとしての加熱ローラ92と第11ローラとしての定着ローラ94とに張架され、駆動ローラである定着ローラ94により駆動されて矢印で示すように循環移動する。
【0040】
加熱ローラ92内にはヒータ93が配置され、加熱ローラ92及び定着ベルト91を加熱する。
【0041】
95は定着ベルト91に圧接する加圧ローラである。なお、加圧ローラ95内には、補助ヒータを設けることもできる。
【0042】
96は進入する記録材Pを案内する進入ガイド、98は加熱ローラ92及び定着ベルト91を移動させる駆動レバーであり、加熱ローラ92及び定着ローラ94を支持する枠体97に接触する。枠体97は定着ローラ94の回転軸に可回転に支持されており、駆動レバー98により支持されており、図2(a)のように駆動レバー98の支持位置が高いときは、定着ベルト91及び加熱ローラ92は押し上げられて、進入ガイド96との間に広い進入空間を形成する。
【0043】
図2(b)のように、駆動レバー98の支持位置が低いときは、定着ベルト91及び加熱ローラ92はその自重で低い位置に設定され、進入ガイド6との間に狭い進入空間を形成する。
【0044】
定着ベルト91はニッケル等の金属又はポリイミド等の耐熱性樹脂からなり、表面にシリコンゴム層が形成される。また、シリコンゴム層の表面にフッ素樹脂からなる離型層を設けるのが好ましい。
【0045】
加熱ローラ92はアルミ又はステンレス製のパイプからなる。ヒータ93はハロゲンランプからなる。加熱ローラ94はアルミ又はステンレスの基体にシリコンゴム等の耐熱弾性層が設けられ、モータ(図示せず)により駆動される。
【0046】
加圧ローラ95はアルミ又はステンレスからなる基体にシリコンゴム等の耐熱弾性層が設けられたローラであり、表面にフッ素樹脂等の離型層を設けるのが好ましい。
【0047】
定着装置9は図2(a)に示す状態及び図2(b)に示す状態で定着を行う。
【0048】
本実施の形態においては、塗工紙に対して定着を行う第1モードと非塗工紙に対して定着を行う第2モードとで定着が行われる。
【0049】
塗工紙は白色顔料を含む塗料を塗布した紙や透明樹脂層を設けた紙であり、写真画像の記録等に用いられ、光沢のある画像が形成される等の特徴がある。以下第1モードを塗工紙モードと言う。
【0050】
非塗工紙は普通紙により代表され、通常の事務用書類等の作成に用いられる用紙などである。以下第2モードを普通紙モードという。
【0051】
非塗工紙に対する定着である普通紙モードでは図2(a)の状態で常に定着が行われ、塗工紙に対する定着である塗工紙モードでは、後に説明する両面画像形成の第2面の定着の場合を除いて、図2(b)の状態で定着が行われる。
【0052】
普通紙モードでは、未定着のトナー像Tを担持する記録材Pは定着ローラ94と加圧ローラ95とにより形成されたニップNにおいて、定着ベルト91により加熱され、トナー像Tを形成するトナーが定着温度にまで上昇して溶融し記録材Pに定着される。普通紙モードにおいては、ニップNの上流では、定着ベルト91が記録材Pから離れているので、
定着ベルト91により予備加熱されないが、後に説明する塗工紙の場合に生ずるペーパーブリスターやトナーブリスターを起こすことなく、良好な定着が行われる。また、記録材Pに多少の波打ちやカールがあっても、ニップNの上流で未定着のトナー像Tが定着ベルト91に接触することはない。
【0053】
塗工紙は前記に説明したとおりの特徴を有するが、定着工程においては、ニップNを通過する際に急速に加熱されるために、画像を形成しているトナー像に乱れが生ずるトナーブリスターやコート層が剥離するペーパブリスターが起こるという問題がある。
【0054】
塗工紙モードにおいては、未定着のトナー像Tを担持する記録材PはニップNに到達する前に、定着ベルト91からの輻射熱により予備加熱される。この予備加熱により、記録材Pに含まれる水分の一部が水蒸気となって記録材Pの外に放出される。その結果、ペーパーブリスターやトナーブリスターを良好に防止することができる。
【0055】
即ち、図2(b)に示すように、定着ニップNの前段階において、予備加熱することにより、記録材P及びトナー像Tの急激な加熱が緩和される。その結果、記録材中の水分が急速に蒸発することにより生ずる、トナーブリスタやペーパーブリスターが防止される。
【0056】
このように、本実施の形態においては、塗工紙モードと普通紙モードとにおいて、定着装置が異なる作動をすることにより、塗工紙、非塗工紙のそれぞれに対して適切な定着が行われる。
【0057】
塗工紙モードにおいては、基本的には、図2(b)の状態、即ち、定着ベルト91を記録材Pに接近させた状態で記録材Pを搬送し、定着が行われる。
【0058】
これにより前記に説明したように、ペーパーブリスターやトナーブリスターが防止される。そして、塗工紙は一般に塗工層を設けていることにより、普通紙よりも平面性が高く、平板状を保持して、定着装置に導入される。従って、図2(b)のように、定着ベルト91を記録材Pに近接させた状態で記録材Pを導入した場合でも、未定着のトナー像Tが定着ベルト91に接触することはない。また、塗工紙モードにおける定着ベルト91の位置も、未定着のトナー像Tに接触せず、且つ、予備加熱が可能なように設定される。
【0059】
しかしながら、塗工紙に対する両面画像形成において、第2面画像に対する定着においては、記録材Pが一度定着装置を通過して熱処理されているために、湾曲する傾向がある。このために、両面画像形成の場合の第2面画像の定着においては、図2(b)のように定着ベルト01を記録材Pに接近させた状態で記録材Pを搬送すると、未定着のトナー像Tが定着ベルト91に接触してトナー像が乱されるおそれがある。
【0060】
これを防止するために、本実施の形態においては、塗工紙モードでの両面画像形成における第2面の定着時に、定着ベルト91を記録材Pから離間させる、即ち、下案内部材96から離間させた状態で記録材Pを定着装置9に導入し、定着を行っている。
【0061】
なお、第2面の定着工程では、第1面の定着工程において加熱処理され、含有水分の一部が蒸発した記録材Pが定着装置9に導入されるので、予備加熱を行わなくとも、ペーパーブリスターやトナーブリスターは発生しない。
【0062】
次に、塗工紙モード及び普通紙モードでの定着を図3、4により説明する。
【0063】
図3は本発明の実施の形態における制御系のブロック図、図4は本発明の実施の形態における定着工程選択フローチャートである。
【0064】
STEP1において、塗工紙に対する画像形成か否かを見る。STEP1では、制御手段CRが操作部OP又は通信部IFからの情報に基づいて判断する。即ち、操作部OPにおいてはオペレータにより画像を形成する用紙の設定が行われ、塗工紙に対する画像形成の場合には、塗工紙の指定が操作パネルにおいて設定される。また、ネットワークを介して外部機器からの画像形成指令に従ったプリントにおいては、画像形成指令に含まれる用紙の指定情報から塗工紙に対する画像形成であることを示す情報が通信部IFを介して入手される。
【0065】
塗工紙でない場合(SITEP1のno)STEP5に移行して、定着ベルト91を上げた状態で定着が行われる。この場合の定着は図2(a)に示す状態、即ち、第2モードでの定着である。
【0066】
STEP1の塗工紙に対する画像形成の場合には、STEP2に移行して、両面画像形成か否かを判断する。STEP2における判断も操作部OP又は通信部IFからの情報に基づいて行われる。即ち、操作部OPにおいて両面画像形成が設定されるるか又は通信部IFにおいて受信した画像形成指令が両面画像形成であるか否かに基づいてSTEP2の判断が行われる。
【0067】
両面画像形成でない場合には、STEP4に移行して、定着ベルト98を下げた図2(b)に示す状態で行われる。即ち、塗工紙に対する画像形成であって、片面画像形成においては、図2(b)に示す状態での定着が行われる。
【0068】
両面画像形成の場合(STEP2のyes)、第1面の画像形成か否かを判断する(STEP3)。第1面の画像形成工程における定着の場合は(STEP3のyes)、図2(b)の状態で定着が行われ(STEP4)、第1面の画像形成でない場合、即ち、第2面の画像形成の場合には、図2(a)の状態で定着が行われる(STEP5)。
【0069】
両面画像形成におけるSTEP4の定着とSTEP5の定着の使い分けにより、第1面画像の定着においては、塗工紙のように、急激な加熱によりペーパーブリスターやトナーブリスターが発生する可能性のある記録媒体に対しては予備加熱によりペーパーブリスターやトナーブリスターを防止した定着が行われる。
【0070】
他方、両面画像形成における第2面画像の定着においては、記録材Pが1度定着装置を通過しているために、変形する場合が少なくない。従って、図2(a)のように、定着装置における進入部の空間が狭い場合には、記録材がスムーズに搬送されなかったり、記録材が部分的に定着ベルトに接触して光沢むらが発生する場合がある。STEP3において、第2面の定着時に、図2(a)の定着モードに切り換えることにより、このような搬送上の問題が解消される。
【0071】
なお、第2面の定着時には、定着装置9に進入する記録材Pが第1面の定着により熱処理されているので、第2面の定着時に水分の蒸発が少なく、また、記録材Pの温度が上昇しているので、ニップNにおける急激な温度上昇が緩和され、塗工紙に対する定着においても、トナーブリスターやペーパーブリスターが発生する確率がきわめて低い。
【0072】
図4に示す制御は、レジストセンサRSの紙先端検知信号に基づいて開始される。そして、図4の制御において、STEP4、5の制御は、図2における駆動レバー98を回転駆動するモータM(図3に示す)を制御することにより選択される。
【0073】
即ち、レジストセンサRSが紙先端を検知した信号により、制御手段CRは図4の制御を開始し、STEP4では、モータMにより駆動レバー98を図2(a)に位置に設定し、STEP5では、駆動レバー98を図2(b)の位置に設定する。
【0074】
以上状説明したように、普通紙に対する定着、塗工紙に対する定着及び塗工紙の両面に画像を形成する場合の定着が良好に行われ、紙種による画質の差がない高画質、高品位の画像が安定して形成される。
【0075】
本実施の形態は、定着用のヒータ93を予備加熱用に使用しているので、予備加熱用のヒータを別に設けるなくともよいという利点がある。
【0076】
図5は本発明の実施の形態2に係る画像形成装置における定着装置を示す。
【0077】
図5の定着装置においては、前処理手段として、上下に移動可能な予備加熱用のヒータ104を、定着用のヒータ103とは別に設けている。
【0078】
図5において、加熱ローラ100に加圧ローラ101が圧接し、加熱ローラ100と加圧ローラ101とにより形成されるニップNに記録材Pが搬送され、ニップNにおいて記録材P上のトナー像Tが定着される。
【0079】
記録材Pは進入ガイド102により案内されるが、進入ガイド102に対向して、これから離間した位置{図5(a)の位置}と、これに接近した位置{図5(b)}の位置とに変位可能な予備加熱用のヒータ104が配置される。
【0080】
予備加熱用のヒータ104は図4に説明した通りの制御により、図5(a)の位置又は図5(b)の位置に変位する。
【0081】
即ち、片面画像形成における定着時及び両面画像形成における第1面画像の定着時に、予備加熱用ヒータ104を進入ガイド102に近接さ、両面画像形成における第2面画像の定着時に、予備加熱用ヒータ104を進入ガイド102から離間させる塗工紙モードと、片面画像形成及び両面画像形成の定着時に、予備加熱用ヒータ104を進入ガイド102から離間させる普通紙モードとがあり、予備加熱用ヒータ104は図4に関して前記に説明したとおり変位する。
【0082】
但し、本実施の形態においては、図4のSTEP4が、「予備加熱用のヒ−タを下に設定」となり、図4のSTEP5が、「予備加熱用のヒータを上に設定」となる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施の形態に係るカラー画像形成装置の全体概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る画像形成装置に使用される定着装置を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る画像形成装置における制御系のブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態における定着工程選択フローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2に係る画像形成装置に使用される定着装置を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
9 定着装置
91 定着ベルト
92、100 加熱ローラ
93、 ヒータ
94 定着ローラ
95、101 加圧ローラ
96、102 進入ガイド
97 支持枠
98 駆動レバー
103 定着用のヒータ
104 予備加熱用のヒータ
CR 制御手段
P 記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部材と加圧部材とを圧接させてニップを形成し、前記加熱部材と前記加圧部材とで記録材を挟持・搬送して定着を行う定着装置を備えた画像形成装置であって、
前記ニップの上流側において記録材を前記ニップへ案内する案内部材、
前記ニップの上流側において前記案内部材に対向して設けられた可動な前処理手段、
を有する画像形成装置において、
両面画像形成における第2面画像を定着する際に、前記前処理手段を前記案内部材から離間させ、両面画像形成における第1画像面を定着する際に、前記前処理手段を前記案内部材に近接させる制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記前処理手段は記録材を予備加熱することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段が、
片面画像形成における定着時及び両面画像形成における第1面画像の定着時に、前記前処理手段を前記案内部材に近接さ、両面画像形成における第2面画像の定着時に、前記前処理手段を前記案内部材から離間させる第1モードと、
前記制御手段が、片面画像形成及び両面画像形成の定着時に、前記前処理手段を前記案内部材から離間させる第2モードとを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、画像を記録する記録材の情報に基づいて、記録材が塗工紙である場合には、前記第1モードで前記定着装置を作動させ、記録材が非塗工紙である場合には、前記第2モードで前記定着装置を作動させることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ニップは、ベルトと、該ベルトを張架する第1ローラと、前記ベルトに圧接する加圧ローラとにより形成され、
前記前処理手段は、前記ベルトと、該ベルトを張架し、変位可能な第2ローラとで構成され、
前記制御手段は、前記第2ローラを変位させることにより、前記前処理手段を移動させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第2ローラ内にヒータが設けられ、該ヒータにより前記ベルトを加熱し、定着を行うとともに、予備加熱を行うことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
定着用のヒータとは別に予備加熱用のヒータが設けられ、前記前処理手段は、変位可能な前記予備加熱用のヒータからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−259479(P2006−259479A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79130(P2005−79130)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】