画像形成装置
【課題】 画像不良や印字不良を抑えるとともに、空吐出によるインクの消費量を低減することができる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 保湿キャップ41Y、41M、41Bk−1、41Bk−2、41Cと吸引キャップ42とをそれぞれ別に設ける。これにより、保湿キャップ41にインク滴が付着することがない。よって、保湿時に吐出口13aのインク粘度が上昇することが抑制される。その結果、印字開始前に行う空吐出において、インク粘度を調整するための空吐出を行う必要がない。
【解決手段】 保湿キャップ41Y、41M、41Bk−1、41Bk−2、41Cと吸引キャップ42とをそれぞれ別に設ける。これにより、保湿キャップ41にインク滴が付着することがない。よって、保湿時に吐出口13aのインク粘度が上昇することが抑制される。その結果、印字開始前に行う空吐出において、インク粘度を調整するための空吐出を行う必要がない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出する吐出口を備えたヘッド部と、該吐出口を塞いで該吐出口を保湿する保湿キャップと、該吐出口のインクを吸引する吸引手段とを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヘッドの吐出口からインク滴を吐出して記録媒体上に画像を形成する画像形成装置としてのインクジェットプリンタが知られている。このインクジェットプリンタに使用されるインク液として、湿潤剤(保湿剤)や浸透剤等が水に含有された溶媒と顔料とからなる水系インクが用いられている。このような、インク液が用いられるインクジェットプリンタにおいては、ヘッド吐出口のインク溶媒の蒸発によるインク粘度が上昇し吐出口が目詰まりしたり、吐出口にゴミ等が付着して吐出口が塞がれたりして画像不良を起こす問題があった。そこで、非画像形成時にヘッドをキャッピングしてヘッド吐出口を保湿するキャップ部材を設け、このキャップ部材に吐出口に付着したゴミなどをインクとともに吸い出す吸引ポンプなどの吸引機構を設けたものが知られている(特許文献1〜3)。このように、ヘッド吐出口をキャッピングすることで、ヘッド吐出口のインク溶媒の蒸発によるインク粘度の上昇を抑制することができ、吐出口の目詰まりを抑制している。また、吸引ポンプで吐出口に付着したゴミなどをインクとともに吸い出すことで、吐出口が塞がれることを抑制している。
【0003】
【特許文献1】特開2002−361905号公報
【特許文献2】特開2003−1839号公報
【特許文献3】特開2003−1832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吸引ポンプによって吸い出されたインクがキャップ部材の内壁面に付着してしまう。このように内壁面にインクが付着したままの状態でヘッドをキャッピングすると、キャップ部材でヘッド吐出口をキャッピングしているにも係わらず、ヘッド吐出口の粘度が上昇してしまっていた。これは、キャップ部材の内壁面に付着したインク滴の水などの蒸発成分がキャップ部材の開放時などに蒸発してしまう。すると、このキャップ部材の内壁面に付着した蒸発成分が蒸発してしまったインク滴がインク吐出口の蒸発成分を吸収してしまう。その結果、ヘッド吐出口の粘度が上昇してしまうということがわかった。特に、粘度の高いインク液の場合、多少のヘッド吐出口の粘度上昇でも画像に影響を与えてしまう。このため、従来では、印字開始前に吐出口の粘度とインクメニスカスを整えるために空吐出を行っている。しかしながら、吐出口の粘度を整えるためには、多くのインク滴を吐出する必要がある。このため、印字開始前の空吐出の度にひとつの吐出口から十数滴から数千滴のインク滴を吐出しており、インクの消費が増大するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、画像不良や印字不良を抑えるとともに、空吐出によるインクの消費量を低減することができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、インクを吐出する吐出口を備えたヘッド部と、該吐出口を覆って該吐出口を保湿する保湿キャップと、該吐出口のインクを吸引する吸引手段とを備えた画像形成装置において、該吐出口の保湿時に該吐出口を覆う該保湿キャップの閉塞面を、該吸引手段によって該吐出口から吐出したインクが付着しない位置に設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記吸引手段が上記保湿キャップに備えられていることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記吸引手段を備えた吸引キャップを上記保湿キャップとは別に備えることを特徴とした画像形成装置。
また、請求項4の発明は、請求項3の画像形成装置において、上記吸引手段の非動作時に吸引キャップの開口部を覆うシャッター部材を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の画像形成装置において、上記吸引キャップを移動させる移動手段を備え、該移動手段による該吸引キャップの移動により上記シャッター部材の開閉を行うことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1、2、3、4または5の画像形成装置において、上記インクの25℃におけるインク粘度が5[mPa・sec]以上であることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1、2、3、4、5または6の画像形成装置において、画像情報を読み取ることができる画像読取装置を備え、該画像読取装置により読み取られた画像に基づき記録紙に画像を形成する画像形成装置。
【発明の効果】
【0007】
請求項1乃至7の発明によれば、吸引手段によって吐出口から吐出したインクが吐出口の保湿時に吐出口を覆う保湿キャップの閉塞面に付着しない。従って、吐出口の保湿時に保湿キャップの閉塞面に付着して蒸発成分が蒸発したインク滴が吐出口のインクから蒸発成分を取り込むといったことが生じない。その結果、保湿時における吐出口のインク粘度の上昇が抑制される。また、吸引手段を設けて、吐出口に付着したゴミなどをインクとともに吸い出している。これにより、インク粘度の上昇による吐出口の目詰まりや、吐出口にゴミ等が付着することによる吐出不良が抑制され、良好な画像を得ることが出来る。また、吐出口の保湿時に吐出口のインク粘度の上昇が抑えられているので、印字開始前に行われる空吐出時に多くのインク滴を吐出させて吐出口のインク粘度を整える必要がなくなる。従って、インクメニスカスを整えるためだけの空吐出を行えばよいので、ヘッドのひとつ吐出口から数滴インク滴を吐出すればよく、空吐出によるインクの消費量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を適用した画像形成装置の一実施形態として、インクジェットプリンタ(以下、プリンタ)について説明する。
まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本実施形態に係るプリンタの概略構成を示す正面図である。このプリンタ100は、図示しない駆動手段により用紙の搬送方向に対して横切る方向(以下、主走査線方向)に移動可能に保持されたキャリッジ9を備えた印字機構部23を有している。また、プリンタ100は、印字機構部23と対向する位置を経由して給紙トレイ18の用紙を排紙トレイ26に搬送する搬送部21を備えている。
印字機構部23のキャリッジ9には、C(シアン)、B(ブッラク)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)色のそれぞれインク液を用紙に吐出する複数の吐出口を備えたヘッド13がそれぞれ設けられている。
搬送部21は、多数の用紙を積載した給紙トレイ18、給紙トレイ18内の用紙を搬送ローラ10へ送り出す給紙ローラ19、給紙トレイ18内の複数の用紙のうち一枚だけを搬送ローラ10に送り出すための分離パッド20、給紙トレイ18から給紙された用紙を案内する給紙ガイド27を備えている。搬送ローラ10は、テンションローラ11とで搬送ベルト12を張架している。搬送ベルト12は、搬送された用紙をヘッド13との対向位置に搬送する。搬送ローラ10は、図示しない駆動手段によって図中の時計周りに回転しており、これにより搬送ベルト12が図示Aの方向に無端移動する。また、搬送部21は、用紙を搬送ローラ10に押し付ける加圧ローラ16、用紙を案内する案内ガイド22および案内ローラ28、搬送ベルト12表面を帯電させる帯電ローラ15を有している。案内ガイド22は、ほぼ鉛直方向に上方に向けて搬送された用紙を搬送ローラ10の曲率に沿ってほぼ90°方向転換させるためのものである。加圧ローラ16は、搬送ベルト12を搬送ローラ10に押し付けているので、搬送ベルト12と搬送ローラ10との摩擦力が増加する。このため、搬送ベルト12が搬送ローラ10に対して滑ることが防止され、用紙を精度良く搬送させることができる。ヘッド13と対向する位置には、搬送ベルト12をガイドする搬送ガイド板14が搬送ベルト12の内周面側に設けられている。また、搬送部21は、画像が記録された用紙を搬送ベルト12から分離する分離爪17と、排紙トレイ26に排出するための排紙ローラ25および断面星型形状の拍車24を備えている。本実施形態のプリンタには、用紙を反転させる反転機構30が設けられており、用紙の両面にプリントができるようにしている。
【0009】
図2(a)は、キャリッジ9の正面図であり、図2(b)は、キャリッジ9の底面図である。図2(a)に示すように、キャリッジ9には、13C、13Bk−1、13Bk−2、13M、13Y(以下、C、Bk−1、Bk−2、M、Yの色表示については適宜省略)の5つのヘッドが設けられている。図2(b)に示すように、各ヘッド13には、吐出口13aが一列192個で2列設けられている。
【0010】
図3は、本実施形態に係るプリンタの概略構成を示す平面図である。図3に示すように、キャリッジ9を支持するガイドロッド31がキャリッジ9を貫通して本体両側面100a、100bに横架されている。また、この主ガイドロッド41と一定間隔をおいて並行に延在する図示しないキャリッジ支持部材を有しており、キャリッジ9は、主ガイドロッド41とキャリッジ支持部材とで主走査線方向に平行移動可能に支持されている。キャリッジ9には、各ヘッド13C、13Bk−1、13Bk−2、13M、13Yに各色のインク液を供給するためのサブタンク32C、32Bk−1、32Bk−2、32M、32Y(以下、C、Bk−1、Bk−2、M、Yの色表示については適宜省略)が設けられている。各サブタンクには、各色に対応した供給チューブ33C、33Bk−1、33Bk−2、33M、33Y(以下、各色のC、Bk−1、Bk−2、M、Yの色表示については適宜省略)の一端が接続されている。インク滴供給チューブ33の他端は、図3中の上側にある各色のインクカートリッジ34C、34Bk−1、34Bk−2、34M、34Y(以下、C、Bk−1、Bk−2、M、Yの色表示については適宜省略)を収容したカートリッジ装填部35の供給ポンプ35aに接続している。各色のインクカートリッジ34は、カートリッジ装填部35に対し着脱可能に取り付けられている。そして、供給ポンプ35aを適宜駆動して、インクカートリッジ34内のインク液を、供給チューブ33を介してサブタンク32に供給している。また、キャリッジ9には、図示しないプリンタの制御部と接続するハーネス47が取り付けられいる。
【0011】
搬送ベルト12の主走査線方向の一端側である図3中の上側には、各色のヘッド13C、13Bk−1、13Bk−2、13M、13Yにそれぞれ対応した保湿キャップ41C、41Bk−1、41Bk−2、41M、41Y(以下、C、Bk−1、Bk−2、M、Yの色表示については適宜省略)と吸引キャップ42とを備えた回復・維持装置40が設けられている。また、この回復・維持装置40は、第1の空吐出受け43と、ワイパーブレード44と、コロ45も有している。上記保湿キャップ41は、非画像形成時に各ヘッド13の吐出口13aをキャッピングして、吐出口13aを湿潤状態に保っている。また、保湿キャップ41には、図示してないが、大気と連通する微小な連通孔が開けられており、保湿室の圧力を常に大気圧に保つようにし、吐出口13aのメニスカスを一定に保っている。保湿キャップ41より印字領域側(図3中下側)に設けられた吸引キャップ42には、吸引孔42aが設けられており、この吸引孔42aには、後述する吸引手段が取り付けられている。この吸引キャップ42は、吸引キャップ42の吸引手段で気泡や吐出口13aに付着したゴミなどをインクとともに吸い出して、吐出不良を改善する機能を有している。第1の空吐出受け43は、例えば、記録開始前などに空吐出して吐出口13aのメニスカスを整えて安定した吐出性能を維持するために設けられている。ワイパーブレード44は、ヘッド13の吐出口13aを有する面に付着したインク液を清掃するために設けられている。コロ45は、ワイパーブレード44を第1の空吐出受け43の開口部に押し付け、ワイパーブレード44の汚れを第1の空吐出受け43の開口部に掻き落とさせるために設けられている。各保湿キャップ41、吸引キャップ42、ワイパーブレード44、ワイパーブレード44、コロ45は、後述するカム軸により、上下動可能となっている。なお、上記回復・維持装置40の詳細については、後述する。
【0012】
搬送ベルト12の図3中の下側には、各色のヘッド13に対応した第2の空吐出受け46C、46Bk−1、46Bk−2、46M、46Yが設けられている。この第2空吐出受け46は、画像形成途中で画像形成に使用されなかった色のインクを、使用された色のインクと同粘度の粘度を保つために設けられている。具体的には、画像形成途中で画像形成に使用されなかった色のインクをこの第2空吐出受け46に吐出させることで、使用された色のインクと同粘度の粘度を保つことができる。
【0013】
次に、本実施形態のプリンタのプリント動作について説明する。パーソナルコンピュータから画像情報などの信号が送られ、プリントを実行する。まず、給紙トレイ18から給紙ローラ19によって搬送ローラ10へ用紙が給紙される。給紙トレイ18から給紙された用紙は、ガイド部材22や加圧ローラ16に案内されて、ほぼ鉛直方向に搬送ベルト12に搬送される。搬送ベルト12の表面は帯電ローラ15により帯電させられており、用紙を静電的に搬送ベルト12に吸着させる。搬送ベルトに吸着した用紙は、案内ガイド22、加圧ローラに案内されてほぼ90°方向転換し、ほぼ水平状態でヘッド13と対向する位置に搬送される。搬送ベルト12に搬送された用紙がヘッド13と対向する位置に達したら、搬送ベルト12を停止して用紙の移動を停止する。画像信号入力前は、図3に示す回復・維持装置40上に、キャリッジ9が位置している(以下、ホームポジションという)。また、画像信号入力前は、キャリッジがホームポジションに位置してヘッド13と保湿キャップ41とが当接して吐出口13aを湿潤状態に保っている。画像信号が入力されると、保湿キャップ41が下降し、キャリッジの主走査線方向の移動を開始する。そして、各色に対応するヘッド13が第1の空吐出受け43に位置するたびにキャリッジ9の移動を停止し、第1の空吐出受け43に向けてインクを数滴吐出する。各色のヘッド13の空吐出が完了したら、再びキャリッジの主走査線方向の移動を開始する。そして、キャリッジ9が画像信号に応じて用紙P上を主走査線方向に移動しなが、停止した用紙Pの所定箇所に所定のインク液を吐出して一行分の画像を用紙Pに形成する。ここで、1行とは、ヘッド13が用紙へ記録可能な副走査線方向の範囲を言う。一行分の画像を形成したら、必要に応じ、キャリッジ9を第2の空吐出受け46の位置に移動させ、第2の空吐出受け46に使用されなかったインク色を数滴空吐出する。そして、用紙Pに主走査線方向一行分の記録が終了したら、搬送ベルト12を所定時間駆動させ、用紙Pを一行分排紙トレイ26方向に移動させて停止する。搬送ベルト12の移動が停止したら、上述同様、キャリッジ9が画像信号に応じて用紙P上を主走査線方向に移動しなが一行分の画像を形成する。このような工程を所定回数繰り返し行い、用紙Pに所望の画像をプリントする。このように用紙Pの搬送と停止を繰り返して用紙に画像を形成しているとき、用紙は、搬送ベルト12に静電吸着しているので、用紙を安定してヘッド13と対向する位置に搬送することができる。また、加圧ローラ16によって用紙を搬送ベルトに押し付けているので、用紙を搬送ベルト12に確実に静電吸着させることができる。所望の画像がプリントされた用紙は、分離爪17で搬送ベルト12から分離され、排紙ローラ25及び拍車24によって搬送され、排紙トレイ26に排出される。
両面プリントの場合は、用紙の一方の面に所望の画像をプリントしたら、搬送ベルト12を逆回転させ、用紙を反転機構30に搬送する。反転機構30で反転した用紙は、再びガイド部材22や加圧ローラ16に案内されて搬送ベルト12に搬送される。用紙がヘッド部13と対向する位置に達したら、上述同様の動作を行い用紙の他方の面に所望の画像をプリントする。そして、両面に所望の画像がプリントされた用紙は、分離爪17で搬送ベルト12から分離され、排紙ローラ25及び拍車24によって搬送されて排紙トレイ26に排出される。
画像形成が終わったら、キャリッジ9を再び回復・維持装置40上のホームポジションに移動させる。そして、保湿キャップ41を上昇させてヘッド13の吐出口13aを保湿する。
【0014】
上記吸引キャップ42は、クリーニングモード時に動作する。例えば、プリンタに予めクリーニングモード選択ボタンなどの選択手段がついており、ユーザがプリントされた画像を見て、画像の劣化を確認した場合、ユーザがこの選択手段によりこのクリーニングモードを選択するようにする。クリーニングモードが選択されると、キャリッジ9を保湿していた保湿キャップ41が下降する。そして、ヘッド13Cが吸引キャップ42上に位置するようにキャリッジ9を移動させる。ヘッド13Cが吸引キャップ42上に位置したら、キャリッジの移動を停止させる。次に、吸引キャップ42を上昇させて、ヘッド13と当接させ、後述する吸引手段で気泡や吐出口13aに付着したゴミなどをインクとともに吸い出す。吸引動作を終了すると、吸引キャップ42を下降させる。吸引キャップ42が下降すると同時に、ワイパーブレード44を上昇させる。ワイパーブレード44が上昇したら、キャリッジ9を移動させて、ヘッド13Cをワイパーブレード44と摺擦させる。このキャリッジ9の移動により、ワイパーブレード44は、C色のヘッド13Cを摺擦し付着したインク滴を除去することができる。ヘッド13Cのインク滴を除去したら、ワイパーブレード44を下降させる。このワイパーブレード44下降の際、コロ45を上昇させて、ワイパーブレード44を第1の空吐出受け43の開口部に押し付ける。これにより、ワイパーブレード44を下降させるとワイパーブレード44に付着したインク滴が空吐出受け43の開口部によって掻き落とされ、ワイパーブレード44が清掃される。
ワイパーブレード44が下降したら、キャリッジ9を移動させて、ヘッド13Cを第1の空吐出受け43上に位置させる。ヘッド13Cが第1の空吐出受け43上に位置したら、第1の空吐出受け43に空吐出を行う。
このような一連の動作が他の色のヘッド13Bk−1、13Bk−2、13M、13Yにも同様に行われることで、各色のヘッド13の吐出不良と各色のヘッド13に付着したインク滴をクリーニングすることができる。
【0015】
このように、本実施形態においては、保湿キャップと吸引キャップをそれぞれ備えているので、保湿キャップにインク滴が付着することがない。よって、保湿時に吐出口13aのインク粘度が上昇することが抑制される。これにより、印字開始前に行う空吐出において、インク粘度を調整するための空吐出を行う必要がない。
【0016】
なお、上述の説明ではユーザがクリーニングモードを選択する場合について説明したが、例えば、プリント枚数が一定数越えたら、上記クリーニングモードを実行するようにしてもよい。
【0017】
また、上記吸引動作はクリーニングモード時に限らず、例えば、大気開放充填モードにおける吸引動作でも同様に行われる。
【0018】
次に、回復・維持装置40について説明する。まず、回復・維持装置40の保湿キャップ41について説明する。図4(a)は、回復・維持装置40の概略構成を示す斜視図である。図4(b)は、図4(a)中のA方向からみた回復・維持装置40の概略構成を示す側面図である。図4(a)に示すように、C色のヘッド13Cをキャッピングする保湿キャップ41CとBk−1色のヘッド13Bk−1をキャッピングする保湿キャップ41Bk−1は、第1のホルダ50に保持されている。また、Bk−2色のヘッド13Bk−2をキャッピングする保湿キャップ41Bk−2は、第2のホルダ51に保持されている。さらに、M色のヘッド13Mをキャッピングする保湿キャップ41MとY色のヘッド13Yをキャッピングする保湿キャップ41Yは、第3のホルダ52に保持されている。そして、第1のホルダ50は、第1のスライダー60に支持される。具体的には、図4(b)に示すように、第1のホルダ50の手前側の側面と奥側の側面とにそれぞれの設けられた第1の突起50a、第2の突起50bが第1のスライダー60の手前側側面と奥側側面とにそれぞれの設けられた第1の凹部60a、第2の凹部60bに支持される。第2のホルダ51も同様に手前側側面と奥側側面とにそれぞれ設けられた突起51a、51bが第2のスライダー60の手前側側面と奥側側面とにそれぞれ設けられた凹部61a、61bにそれぞれ支持される。また、第3のホルダ52も同様に、第3のホルダ52に設けられた突起52aと52bが第3のスライダー62の凹部62a、62bに支持される。また、第1のスライダー60の手前側側面と奥側側面とには、突起60cがそれぞれ設けられており、図5に示すように回復・維持装置40のフレーム70の第1の切り欠き71aに挿入されている。また同様に、第2のスライダー61の側面にそれぞれ設けられた突起61cが、フレーム70の第2の切り欠き71bに、第3のスライダー62の手前側側面と奥側側面とにそれぞれ設けられた突起62cがフレーム70の第3の切り欠き部71cにそれぞれ挿入されている。
また、図4(b)に示すように、各スライダー60、61、62にはそれぞれ第1のカム80、第2のカム81、第3のカム82が取り付けられており、各カム80、81、82は、カム軸84に固定されている。カム軸84は第1ギヤ86a、第2のギヤ86bを介して駆動手段87に接続されている。
【0019】
図6は、第1のカム80の概略構成図である。なお、他のカムについても同様な構成であるので、省略する。第1のカム80は、カム軸84と嵌合する孔80aと、カム80の形状に沿って設けられたカム溝80bが設けられている。カム溝80bには、スライダー60から延びるカムピン60dが挿入されている。カム軸84が回転すると、カム軸84に固定しているカム80が回転し、カムピン60dがカム溝80bに支持されながら、カム溝対して相対的に移動する。すると、第1のスライダー60が図5に示す第1の切り欠き71aに案内され、上下動する。その結果、第1のスライダー60に支持されているY色の保湿キャップ41YとM色の保湿キャップ41Mが上下動する。
第1のカム80と、第2のカム81と、第3のカム82とは、それぞれ角度を変えてカム軸84に固定するようにしてもよい。角度を変えてカム軸84に取り付けることで、第1のスライダー60、第2のスライダー61、第3のスライダー62がそれぞれ時間差をおいて移動することとなり、トルクを低減することができる。
【0020】
次に、回復・維持装置40の吸引キャップ42について説明する。吸引キャップ42は、図4(a)に示すように吸引キャップ用ホルダ53に保持されている。吸引キャップ用ホルダ53は、図4(b)に示すように、ホルダ53の手前側側面と奥側側面とにそれぞれ設けられた第1の突部53aと第2の突部53bとが吸引キャップ用スライダー63の第1の凹部63aと第2の凹部63bとに支持されている。また、吸引キャップ42には、シャッター54が設けられており、通常時の吸引キャップ42が下降した状態の時には、シャッター54が閉じられ吸引キャップ42にゴミ等の異物が入らないようにしている。シャッター54の下部には、バネ54bの一端が取り付けられている。そして、該バネ54bの他端はフレーム70に取り付けられており、シャッター54を図中下側に付勢している。吸引キャップ42が下降した状態の時は、吸引キャップ用スライダー63の下面がシャッター54と当接して、バネ54bの付勢に抗してシャッター54を下方に押し付けている。
吸引キャップ用スライダー63の側面には、突部63cがそれぞれ設けられており、図5に示すように、突部63cがフレームの吸引キャップ用切り欠き72に支持されている。
また、吸引キャップ42は、図4(b)に示すように、吸引チューブ93と吸引ポンプ91からなる吸引手段90が取り付けられている。また、吸引手段90には、廃タンク92を有しており、吸引キャップ42で吸引したインク滴を収容している。
吸引キャップ用スライダー63には、カムピン63dが設けられており、このカムピン63dが吸引キャップ用カム83のカム溝に挿入されている。吸引キャップ用カム83は、カム軸84に固定されている。この吸引キャップ用カム83は、第1のカム80、第2のカム81、第3のカム82と同様な構成を有している。吸引キャップ用カム83は、上記第1、第2、第3のカム80、81、82と角度を変えてカム軸84に取り付けられている。保湿キャップ41のみが上下動するカム軸84の回転範囲、吸引キャップ42のみが上下動するカム軸84の回転範囲、保湿キャップ41と吸引キャップ42が上下動するカム軸84の回転範囲を求め、この結果に基づいて吸引キャップ用カム83の取り付け角度を決定している。そして、駆動手段87の駆動時間を制御することで、保湿キャップ41のみが上下動したり、吸引キャップ42のみが上下動したり、保湿キャップ41と吸引キャップ42が上下動したりする。
【0021】
図7は、シャッター54を示す斜視図である。シャッター54は、吸引キャップ42が下降した状態のとき吸引キャップ42の上方を覆う遮蔽部54aを有している。また、シャッター54の図中奥側と手前側には、アーム部54c、54dがそれぞれ設けられている。図中手前側アーム部54cの先端には、吸引キャップ用スライダー63と当接する当接部54gが設けられている。また、アーム部54c、54dの外側側面には、突部54e、54fがそれぞれ設けられている。これらの突部54e、54fは、図5に示すように、フレーム70の手前側側面と奥側側面とにそれぞれ設けられた孔部73に回転支持されている。
【0022】
次に、シャッター54の開閉について説明する。図8(a)は、吸引キャップ42が収納位置にある状態を示す図である。図8(b)は、吸引キャップ42が吸引位置にある状態を示す図である。図8(a)に示すように、吸引キャップ用スライダー63とともの吸引キャップ42が上方に移動を開始すると、この吸引キャップ用スライダー63の移動とともに、シャッター54が突部54f、54eを回転の支点として、図8(a)に示すようにの反時計回りに回転する。さらに吸引キャップ用スライダー63が上方に移動すると、スライダー63の下面と当接部54gとが離間する。すると、図8(b)に示すようにバネ54bの付勢力によりシャッター54が回転し、吸引キャップ42を開放する。
【0023】
ヘッド吐出口13aのインクの吸引が終了し、吸引キャップ用スライダー63とともの吸引キャップ42が下方へ移動を開始すると、吸引キャップ用スライダー63の底面と当接部54gが当接する。さらに吸引キャップ用スライダー63が下方へ移動し、当接部54gを押し下げる。すると、シャッター54が突部54f、54eを回転の支点として、時計回りに回転する。そして、吸引キャップ42が収納位置に移動し下降が停止すると、図8(a)に示すように、シャッター54の回転によりシャッター54の遮蔽部54aが吸引キャップ42の開口部上に移動して吸引キャップ42の開口部を閉じる。
【0024】
[変形例1]
次に、変形例1のシャッターについて説明する。図9(a)は、変形例1のシャッター150が吸引キャップ42の開口部を閉じている状態を示した図であり、図9(b)は、変形例1のシャッター150が吸引キャップ42の開口部を開いている状態を示した図である。なお、図9において、吸引キャップ用ホルダ53および吸引キャップ用スライダー63については便宜上省略する。図9(a)に示すように、シャッター150には、吸引キャップ42が下降した状態のとき吸引キャップ42の上方を覆う遮蔽部153を有している。また、シャッター150は、水平に延びるアーム部155を設け、該アーム部155の先端にはシャッターカム151が接続されている。シャッターカム151は、吸引キャップ用カム83と角度をずらしてカム軸84に固定されている。また、シャッター150の側面には、フレーム70に回転自在に支持される突部152がそれぞれ設けられている。
クリーニングモードが選択されると、カム軸84が回転して、最初にシャッターカム151が上方に移動する。すると、アーム部155の先端が上方に移動して、図9(b)に示すように、突部152を支点として、時計周りに回転する。そして、吸引キャップ42の開口部を閉じていたシャッター150の遮蔽部153が移動して、吸引キャップ42の開口部を開ける。次に少し遅れて、吸引キャップ用カム83上方に移動して吸引キャップ42を上方に移動させる。吸引キャップ42が上方に移動してヘッド13に当接したら、カム軸84の回転を停止してヘッド13の吐出口13aのインクを吸引する。インクを吸引したら、カム軸84をさらに回転させて、吸引キャップ用カム83を下方に移動させ、吸引キャップ42を収納位置まで移動させる。また、シャッターカム151も下方への移動を開始する。すると、シャッター150のアーム部154が下方に移動し、これにより突部152を支点として遮蔽部153が反時計周りに回転する。そして、図9(a)に示すようにシャッター150の遮蔽部153が吸引キャップ42の開口部に移動してきて、吸引キャップ42の開口部を閉じる。
【0025】
[変形例2]
次に、変形例2のシャッター250について説明する。図10(a)は、吸引キャップ42が収納位置にある状態を示す図である。図10(b)は、吸引キャップ42が待機位置にある状態を示し、図10(c)は、吸引キャップ42がヘッド13Yの吐出口吸引している状態を示す図である。図7に示すシャッター54は、吸引キャップ42の移動によりシャッターの開閉を行っている。また、図9に示す、変形1のシャッター150は、吸引キャップ42のカム軸84の駆動力をによってシャッターを開閉している。この図10に示す変形例2のシャッター250は、キャリッジ9の移動力によりシャッター250を開くようにしたものである。
【0026】
図10(a)に示すように、変形例2のシャッター250は、吸引キャップ42が下降した状態のときに吸引キャップ42の上方を覆う遮蔽部253を有している。また、キャリッジ9のシャッター当接部9aと当接する当接部251が遮蔽部253から上方に延びている。さらに、シャッター250は、遮蔽部253から下方に延びる足部254を備えており、該足部254には、フレーム70に支持される突部252がそれぞれ設けられている。フレーム70には、シャッターの突部252をガイドするガイド溝75が形成されている。
【0027】
10(a)に示すように、吸引キャップ42が収納位置にある場合、突部252は、支持溝75の最も下方にある点Aに位置しており、吸引キャップ42の開口部とシャッター250の遮蔽部253が当接して、吸引キャップ42の開口部を閉じている。クリーニングモードが選択されると、吸引キャップ42が図10(b)に示す待機位置まで上昇する。これに伴い、シャッター250も移動し、シャッター250の突部252がガイド溝75のB点の位置まで移動する。吸引キャップ42が待機位置まで移動したら、Y色のヘッド13Yが吸引キャップ42の上方に位置するように、キャリッジ9を矢印Y方向に移動する。このキャリッジ9が移動すると、図10(b)に示すように、シャッター250の当接部251がキャリッジ9のシャッター当接部9aと当接して、シャッター250がキャリッジ9とともに移動する。そして、シャッター250の突部252がガイド溝75に案内されて、C点の位置まで移動する。これにより、閉じていた吸引キャップ42の開口部が開かれる。また、ガイド溝75の案内により、突部252がC点に到達すると、シャッター250の自重で下降し、当接部251がキャリッジ9と離間する。そして、Y色ヘッド13Yが吸引キャップ42の上方に位置したら、図10(c)に示すように、吸引キャップを待機位置からさらに上昇させて、ヘッドと当接させる。吸引キャップ42がヘッド13と当接したら、ヘッド13の吐出口13aのインクを吸引する。一方、C点まで移動したシャッターは、自重によりC点からA点に移動しようとするが、図10(c)に示すように、遮蔽部253が吸引キャップ42と当接して移動できないようになっている。インクの吸引が終了したら、吸引キャップ42を図10(b)に示す、待機位置まで下降させる。なお、図示してないが、このときも遮蔽部253が吸引キャップ42と当接してシャッターが図中左側に移動できないようになっている。そして、再びキャリッジ9を移動してM色のヘッド13Mを吸引キャップ42の上方に位置させ、吸引キャップ42を上昇させてインクを吸引し、再び待機位置まで吸引キャップ42を下降させる。このような動作を他のヘッド13についても同様に行う。そして、全てのヘッド13について吸引を終了したら、吸引キャップ42を図10(b)に示す待機位置から図10(a)に示す収納位置まで下降させる。すると、吸引キャップ42とシャッター250との当接が解除され、ガイド溝75に案内されてシャッター250が自重によりA点に移動し、吸引キャップ42の開口部にシャッターの遮蔽部253が当接し、図10(a)に示すように、吸引キャップ42の開口部を閉じる。
【0028】
[変形例3]
上記実施形態のプリントにおいては、保湿キャップ41と吸引キャップ42とを別々に設けているが、キャップ内に保湿室201と吸引室202との2つの部屋を設けてひとつのキャップで保湿と吸引とを行うようにしても良い。図11は、保湿室201と吸引室202との2つの部屋を設けたキャップ200の変形例である。図11(a)は、吸引動作を行っているときの説明図であり、図11(b)は、ヘッド吐出口を保湿している状態の説明図である。また、図11(c)は、キャップの平面図である。図11(a)に示すように、キャップ200は、ヘッド13の吐出口13aを湿潤状態に保つ保湿室201と、気泡や吐出口13aに付着したゴミなどをインクとともに吸い出す吸引室202とを備えている。吸引室202には、第1の吸引孔202aと第2の吸引孔202bとが設けられている。第1の吸引孔202aおよび第2の吸引孔202bには、吸引チューブ204の一端が接続されており、吸引チューブ204の他端は、吸引ポンプ205が接続されている。吸引室202の外側壁面205の上端部にはゴムなどの可撓性部材で構成された外側密封部203が設けられている。外側密封部203は、屈曲部203aを有している。また、内側壁面206の上端部には、ゴムなどで構成された内側密封部207が設けられている。保湿室201の下面には、大気と連通する連通孔209が設けられており、保湿室201の圧力を常に大気圧に保たれるようにしている。このように、保湿室201の圧力を常に大気圧に保つことで、吐出口のメニスカスを一定に保つことができる。
【0029】
非画像形成時においては、図11(b)に示すように、外側密封部203がヘッドと当接して大きく屈曲するとともに、内側密封部207がヘッド13に当接している。そして、クリーニングモードなど、ヘッド吐出口13aのインクを吸引する場合、図11(a)に示すように、外側密封部203がヘッド13に当接し、内側密封部207がヘッド13から離間した位置となる吸引位置にくるまでキャップを下降させる。吸引位置にキャップ200が位置したら、吸引ポンプ208を駆動させ、気泡や吐出口13aに付着したゴミなどをインクとともに吸い出す。このとき、吐出口13aから出たインク滴は、吸引ポンプ208の吸引力やインクの濡れ性などの影響で、保湿室201に真直ぐに落下せず、両側に広がるようにして落下していく。この結果、保湿室201の壁面にインク滴が付着することがない。吸引動作が終了したら、キャップ200をさらに下降させ、キャップ200をヘッド13から離間させる。キャップ200がヘッド13から離間したら、キャリッジ9を移動して、ワイパーブレード44でヘッド面を清掃するとともに、適宜空吐出受け43に空吐出を行う。このような清掃作業を終了したら、キャリッジ9をホームポジションに移動させる。キャリッジ9がホームポジションに移動したら、図11(b)に示すように、内側密封部207がヘッドと接触する位置までキャップ200を移動させる。保湿室201の壁面には、インク滴が付着してないので、吐出口13aのインクの粘度が高まることが抑制される。また、吸引室202もヘッド13と当接して密閉状態となっている。その結果、吸引室202にゴミ等の異物が入ることが防止され、吸引チューブにゴミ等が流入して、流路を塞いで十分な吸引力が得られなくなることが防止される。なお、この変形例のキャップ200には、第1の吸引孔202aと第2の吸引孔202bとを設けているが、これに限定されない。例えば、吸引室202の底面に複数の吸引孔を均等に配置することで、吸引ポンプ208の吸引力を吐出口に均等に働かせることができ、吐出口13aから出たインク滴を確実に両側に広げることができる。よって、より確実に保湿室201へのインク滴の落下を抑制することができる。
【0030】
このように、キャップ内に保湿室201と吸引室202との2つの部屋を設けることで、保湿キャップと吸引キャップを別々に設けなくても、ヘッド吐出口の吸引と保湿を行うことができる。よって、回復・維持装置40をコンパクトにすることができる。
【0031】
次に、本実施形態のプリンタに用いるインクについて説明する。本プリンタに使用したインク液は、着色剤の成分を多くして高粘度とした水系インクである。この水系インクは、水を主成分とする水分散体に着色剤が分散したものである。この水系インクは、インク表面張力35[mN/cm]以下、25℃におけるインク粘度5[mPa・sec]以上としている。インク液のインク表面張力35[mN/cm]以下とすることで、紙への浸透速度を上げることができる。また、25℃におけるインク粘度5[mPa・sec]以上とすることで、画像濃度を上げることができる。
【0032】
着色剤としては、疎水性染料、顔料を用いることができ、特に有機顔料およびカーボンブラックが好ましい。
【0033】
上記水分散体は、ポリマー微粒子の水分散体が好ましく、用いられるポリマーとしては、ビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー等が挙げられる。該ポリマーの中では、ビニル系ポリマーが好ましい。
【0034】
また、上記インク液のインク表面張力35[mN/cm]以下とするため、本実施形態のインク液には、湿潤剤を添加している。湿潤剤としては、グリセリン、1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、およびトリメチロールエタンが挙げられ、少なくとも1種類以上をインク液に添加する。
【0035】
さらに、本実施形態のインク液には、炭素数8以上で11以下のポリオールまたはグリコールエーテル、アニオンまたはノニオン系界面活性剤が添加されている。
【0036】
その例としては、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、下記(I)ないし(VII)の構造の物質を挙げることができる。
【0037】
【化1】
(R1:炭素数6〜14の分岐してもよいアルキル基、m:3〜12、 M:アルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、アルカノールアミン)
【0038】
【化2】
(R2:炭素数5〜16の分岐したアルキル基、M:アルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、アルカノールアミン)
【0039】
【化3】
(Rは分岐しても良い6〜14の炭素鎖、k:5〜20)
【0040】
【化4】
(Rは分岐しても良い炭素数6から14の炭素鎖、n:5〜20)
【0041】
【化5】
(Rは炭素数6から14の炭素鎖、m,n:m、n≦20)
【0042】
【化6】
(Rは炭素数6から14の炭素鎖、m,n:m、n≦20)
【0043】
【化7】
(p、qは0〜40)
【0044】
上記インク液を得る方法としては、ポリマーを有機溶媒に溶解させ、顔料、水、湿潤剤、界面活性剤等を加えて混練しペーストとした後、該ペーストを必要に応じて水で希釈し、有機溶媒を留去して水系にする方法が好ましい。
【0045】
以下にインク液の実施例を説明するが、これらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0046】
〔シアンインク〕
下記処方のインク組成物を作成し、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行いインク組成物を得た。
フタロシアニン顔料含有ポリマー微粒子 10.0wt%(固形分として)
1,3−ブタンジオール 25.0wt%
グリセロール 8.5wt%
CH3(CH2)12O(CH2CH2O)3CH2COOH
の活性剤 2.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 1.8wt%
プロキセルLV(防腐剤) 0.1wt%
消泡剤 0.05wt%
イオン交換水 残量
これにより、ジメチルキナクリドン顔料を含有したポリマー微粒子水分散体としてのC色水系インク液を得た。
【実施例2】
【0047】
〔マゼンタインク〕
下記組成物を用いる以外はシアンインクと同様にし、pHを水酸化ナトリウムで9にしてインク組成物を調製した。
ジメチルキナクリドン顔料含有ポリマー微粒子 0.5wt%(固形分として)
1,3−ブタンジオール 22.0wt%
グリセロール 7.0wt%
ポリオキシアルキレン誘導体ディスパノール TOC 2.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0wt%
プロキセルLV(防腐剤) 0.05wt%
消泡剤 0.1wt%
イオン交換水 残量
これにより、ジメチルキナクリドン顔料を含有したポリマー微粒子水分散体としてのM色水系インク液を得た。
【実施例3】
【0048】
〔イエローインク〕
下記組成物を用いる以外はシアンインクと同様にし、pHを水酸化リチウムで9にしてインク組成物を調製した。
モノアゾ黄色顔料含有ポリマー微粒子 10.0wt%(固形分として)
1,3−ブタンジオール 23.5wt%
グリセロール 7.5wt%
ポリオキシアルキレン誘導体ディスパノール TOC 2.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0wt%
プロキセルLV(防腐剤) 0.05wt%
消泡剤 KM72F 0.1wt%
イオン交換水 残量
これにより、モノアゾ黄色顔料を含有したポリマー微粒子水分散体としてのY色水系インク液を得た。
【実施例4】
【0049】
〔黒インク〕
下記組成物を用いる以外はシアンインクと同様にし、pHを水酸化ナトリウムで9にしてインク組成物を調製した。
ジアゾ化合物処理したカーボンブラック分散液 10.0wt%
1,3−ブタンジオール 22.5wt%
グリセロール 7.5wt%
N−メチル−2−ピロリドン 2.0wt%
CH3(CH2)12O(CH2CH2O)3CH2COOH
の活性剤 2.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0wt%
プロキセルLV(防腐剤) 0.2wt%
消泡剤 0.1wt%
イオン交換水 残量
これにより、カーボンブラックを含有したポリマー微粒子水分散体としてのBk色水系インク液を得た。
【0050】
これらのインク物性は、表1のとおりであった。
【表1】
【0051】
なお、本実施形態の画像形成装置として、インクジェットプリントについて説明したが、これに限られず、スキャナーなどの画像情報を読み取ることができる画像読取装置を備え、該画像読取装置により読み取られた画像に基づき記録紙に画像を形成する複写装置や、ファクシミリ装置、プリンタやファックス、コピーなどを備えた複合機などにも適用することができる。
【0052】
[1]
以上、本実施形態の画像形成装置によれば、保湿キャップの内壁面にインクが付着することがない。よって、内壁面のインクが吐出口のインクの蒸発成分を取り込むことがなくなり、吐出口のインクの粘度が上昇することが抑制される。その結果、印字開始前に吐出口の粘度を整えるための空吐出をする必要がなくなり、インクの消費量を低減することができる。また、吸引手段を設けているので、吐出口に付着したゴミなどをインクとともに吸い出している。これにより、吐出口にゴミ等が付着することによりおこる吐出不良を防止することができる。特に、粘度の高いインク液を用いる場合に本実施形態の画像形成装置を用いれば効果的である。粘度の高いインク液は、多少のヘッド吐出口の粘度上昇でも画像に影響を与えてしまう。よって、上記のように吐出口の保湿時に吐出口を覆う保湿キャップの内壁面にインクを付着させないようにして、吐出口のインク粘度を抑えることで、画像不良を抑えることができる。また、印字開始前に行われる粘度調整のための空吐出時のインク滴の量を削減することができる。
[2]
また、変形例3は、吐出口を保湿する保湿室と吐出口のインクを吸引する吸引室をひとつのキャップに設けている。具体的には、キャップの内側に保湿室を設け、この保湿室の外壁面を囲うように吸引室が設けられている。そして、ヘッド吐出口の保湿時には、保湿室を形成する壁面の上端がヘッドと当接するように構成され、吐出口のインクを吸引時には、保湿室を形成する壁面がヘッドから離間し、吸引室を構成する外壁がヘッドと当接するようにしている。吸引時の吸引により、吐出口から吐出したインクは、吸引手段の吸引力やインクの濡れ性により、真下に落ちずに吐出口から広がるようにして落下する。このため、保湿時にヘッドの吐出口を覆うキャップの内側に設けられた保湿室の内壁面にインクが付着することなく、吐出口のインクを吸い出すことができる。保湿時には、保湿室を形成する壁面をヘッドに当接させて、吐出口を保湿室の内壁面によって塞いでいる。保湿室の内壁面にはインク滴が付着していないので、保湿時に吐出口のインクの粘度が上昇することがない。また、ひとつのキャップでキャップの保湿と吸引を兼ねることで、回復・維持装置40をコンパクトにすることができる。
[3]
また、本実施形態においては、吐出口を保湿する保湿キャップと、吐出口のインクを吸引する吸引キャップとを別々に設けている。これにより、保湿キャップの内壁面にインクが付着することが抑制され、吐出口の保湿時にインクの粘度が上昇することがない。
[4]
また、本実施形態においては、吸引手段90の非動作時に吸引キャップ42の開口部を覆うシャッター54を設けている。これにより、吸引キャップ54にゴミ等の異物が入ることが防止され、吸引チューブにゴミ等が流入して、流路を塞いで十分な吸引力が得られなくなることが防止される。
[5]
また、本実施形態においては、移動手段による吸引キャップ42の移動によりシャッター54を開閉している。具体的には、シャッター54にシャッター54を開く方向に付勢する付勢手段54bを設け、吸引キャップ42が収納位置にあるときは、この吸引キャップ42が上記付勢手段54bの付勢に抗してシャッター54を閉じる位置に止めるストッパーとして機能している。そして、吸引キャップ42が移動手段により上方に移動すると、吸引キャップ42のストッパー機能が解除され、シャッター54が付勢手段の付勢力により移動し、吸引キャップ42の開口部が開かれる。また、吸引キャップ42が移動手段により下方へ移動してくると、吸引キャップ42が付勢手段の負勢力に抗してシャッター54を閉じる位置に移動させる。そして、吸引キャップ42が収納位置に来ると、吸引キャップ42の開口部を閉じる位置にシャッター54が位置する。
このように、移動手段による吸引キャップ42の移動により、シャッター54の開閉が行われるようにすることで、シャッター54を開閉するための別の手段を備える必要がない。このため、画像形成装置のコスト低減やコンパクト化することができる。
[6]
また、インクの25℃におけるインク粘度が5[mPa・sec]以上とすることで、画像濃度を上げることができ、良好な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】インクジェットプリンタの概略構成を示す正面図。
【図2】(a)は、キャリッジの正面図。(b)は、キャリッジの下面図。
【図3】インクジェットプリンタプリンタの概略構成を示す平面図。
【図4】(a)は、回復・維持装置の概略構成斜視図。(b)は、(a)中のA方向からみた回復・維持装置40の側面概略図。
【図5】回復・維持装置のフレームを示す図。
【図6】第1のカム80の概略構成図
【図7】シャッターを示す概略図
【図8】(a)は、シャッターが吸引キャップの開口部を閉じている状態を示した図。(b)は、シャッターが吸引キャップの開口部を開いている状態を示した図。
【図9】(a)は、変形例1のシャッターが吸引キャップの開口部を閉じている状態を示した図。(b)は、変形例1のシャッターが吸引キャップの開口部を開いている状態を示した図。
【図10】(a)は、変形例2のシャッターが吸引キャップの開口部を閉じている状態を示した図。(b)は、変形例2のシャッターがキャリッジと当接した状態を示した図。(c)は、変形例1のシャッターが吸引キャップの開口部を開いている状態を示した図。
【図11】(a)は、吸引と保湿を兼ねたキャップが吸引動作を行っているときの概略図。(b)は、吸引と保湿を兼ねたキャップがヘッド吐出口を保湿している状態の概略図である。(c)は、吸引と保湿を兼ねたキャップの平面図。
【符号の説明】
【0054】
9 キャリッジ
10 搬送ローラ
12 搬送ベルト
13 ヘッド
34 インクカートリッジ
35 カートリッジ装填部
40 維持・回復装置
41 保湿キャップ
42 吸引キャップ
43 第1の空吐出受け
46 第2の空吐出受け
54、150、250 シャッター
70 フレーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出する吐出口を備えたヘッド部と、該吐出口を塞いで該吐出口を保湿する保湿キャップと、該吐出口のインクを吸引する吸引手段とを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヘッドの吐出口からインク滴を吐出して記録媒体上に画像を形成する画像形成装置としてのインクジェットプリンタが知られている。このインクジェットプリンタに使用されるインク液として、湿潤剤(保湿剤)や浸透剤等が水に含有された溶媒と顔料とからなる水系インクが用いられている。このような、インク液が用いられるインクジェットプリンタにおいては、ヘッド吐出口のインク溶媒の蒸発によるインク粘度が上昇し吐出口が目詰まりしたり、吐出口にゴミ等が付着して吐出口が塞がれたりして画像不良を起こす問題があった。そこで、非画像形成時にヘッドをキャッピングしてヘッド吐出口を保湿するキャップ部材を設け、このキャップ部材に吐出口に付着したゴミなどをインクとともに吸い出す吸引ポンプなどの吸引機構を設けたものが知られている(特許文献1〜3)。このように、ヘッド吐出口をキャッピングすることで、ヘッド吐出口のインク溶媒の蒸発によるインク粘度の上昇を抑制することができ、吐出口の目詰まりを抑制している。また、吸引ポンプで吐出口に付着したゴミなどをインクとともに吸い出すことで、吐出口が塞がれることを抑制している。
【0003】
【特許文献1】特開2002−361905号公報
【特許文献2】特開2003−1839号公報
【特許文献3】特開2003−1832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吸引ポンプによって吸い出されたインクがキャップ部材の内壁面に付着してしまう。このように内壁面にインクが付着したままの状態でヘッドをキャッピングすると、キャップ部材でヘッド吐出口をキャッピングしているにも係わらず、ヘッド吐出口の粘度が上昇してしまっていた。これは、キャップ部材の内壁面に付着したインク滴の水などの蒸発成分がキャップ部材の開放時などに蒸発してしまう。すると、このキャップ部材の内壁面に付着した蒸発成分が蒸発してしまったインク滴がインク吐出口の蒸発成分を吸収してしまう。その結果、ヘッド吐出口の粘度が上昇してしまうということがわかった。特に、粘度の高いインク液の場合、多少のヘッド吐出口の粘度上昇でも画像に影響を与えてしまう。このため、従来では、印字開始前に吐出口の粘度とインクメニスカスを整えるために空吐出を行っている。しかしながら、吐出口の粘度を整えるためには、多くのインク滴を吐出する必要がある。このため、印字開始前の空吐出の度にひとつの吐出口から十数滴から数千滴のインク滴を吐出しており、インクの消費が増大するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、画像不良や印字不良を抑えるとともに、空吐出によるインクの消費量を低減することができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、インクを吐出する吐出口を備えたヘッド部と、該吐出口を覆って該吐出口を保湿する保湿キャップと、該吐出口のインクを吸引する吸引手段とを備えた画像形成装置において、該吐出口の保湿時に該吐出口を覆う該保湿キャップの閉塞面を、該吸引手段によって該吐出口から吐出したインクが付着しない位置に設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記吸引手段が上記保湿キャップに備えられていることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記吸引手段を備えた吸引キャップを上記保湿キャップとは別に備えることを特徴とした画像形成装置。
また、請求項4の発明は、請求項3の画像形成装置において、上記吸引手段の非動作時に吸引キャップの開口部を覆うシャッター部材を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の画像形成装置において、上記吸引キャップを移動させる移動手段を備え、該移動手段による該吸引キャップの移動により上記シャッター部材の開閉を行うことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1、2、3、4または5の画像形成装置において、上記インクの25℃におけるインク粘度が5[mPa・sec]以上であることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1、2、3、4、5または6の画像形成装置において、画像情報を読み取ることができる画像読取装置を備え、該画像読取装置により読み取られた画像に基づき記録紙に画像を形成する画像形成装置。
【発明の効果】
【0007】
請求項1乃至7の発明によれば、吸引手段によって吐出口から吐出したインクが吐出口の保湿時に吐出口を覆う保湿キャップの閉塞面に付着しない。従って、吐出口の保湿時に保湿キャップの閉塞面に付着して蒸発成分が蒸発したインク滴が吐出口のインクから蒸発成分を取り込むといったことが生じない。その結果、保湿時における吐出口のインク粘度の上昇が抑制される。また、吸引手段を設けて、吐出口に付着したゴミなどをインクとともに吸い出している。これにより、インク粘度の上昇による吐出口の目詰まりや、吐出口にゴミ等が付着することによる吐出不良が抑制され、良好な画像を得ることが出来る。また、吐出口の保湿時に吐出口のインク粘度の上昇が抑えられているので、印字開始前に行われる空吐出時に多くのインク滴を吐出させて吐出口のインク粘度を整える必要がなくなる。従って、インクメニスカスを整えるためだけの空吐出を行えばよいので、ヘッドのひとつ吐出口から数滴インク滴を吐出すればよく、空吐出によるインクの消費量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を適用した画像形成装置の一実施形態として、インクジェットプリンタ(以下、プリンタ)について説明する。
まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本実施形態に係るプリンタの概略構成を示す正面図である。このプリンタ100は、図示しない駆動手段により用紙の搬送方向に対して横切る方向(以下、主走査線方向)に移動可能に保持されたキャリッジ9を備えた印字機構部23を有している。また、プリンタ100は、印字機構部23と対向する位置を経由して給紙トレイ18の用紙を排紙トレイ26に搬送する搬送部21を備えている。
印字機構部23のキャリッジ9には、C(シアン)、B(ブッラク)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)色のそれぞれインク液を用紙に吐出する複数の吐出口を備えたヘッド13がそれぞれ設けられている。
搬送部21は、多数の用紙を積載した給紙トレイ18、給紙トレイ18内の用紙を搬送ローラ10へ送り出す給紙ローラ19、給紙トレイ18内の複数の用紙のうち一枚だけを搬送ローラ10に送り出すための分離パッド20、給紙トレイ18から給紙された用紙を案内する給紙ガイド27を備えている。搬送ローラ10は、テンションローラ11とで搬送ベルト12を張架している。搬送ベルト12は、搬送された用紙をヘッド13との対向位置に搬送する。搬送ローラ10は、図示しない駆動手段によって図中の時計周りに回転しており、これにより搬送ベルト12が図示Aの方向に無端移動する。また、搬送部21は、用紙を搬送ローラ10に押し付ける加圧ローラ16、用紙を案内する案内ガイド22および案内ローラ28、搬送ベルト12表面を帯電させる帯電ローラ15を有している。案内ガイド22は、ほぼ鉛直方向に上方に向けて搬送された用紙を搬送ローラ10の曲率に沿ってほぼ90°方向転換させるためのものである。加圧ローラ16は、搬送ベルト12を搬送ローラ10に押し付けているので、搬送ベルト12と搬送ローラ10との摩擦力が増加する。このため、搬送ベルト12が搬送ローラ10に対して滑ることが防止され、用紙を精度良く搬送させることができる。ヘッド13と対向する位置には、搬送ベルト12をガイドする搬送ガイド板14が搬送ベルト12の内周面側に設けられている。また、搬送部21は、画像が記録された用紙を搬送ベルト12から分離する分離爪17と、排紙トレイ26に排出するための排紙ローラ25および断面星型形状の拍車24を備えている。本実施形態のプリンタには、用紙を反転させる反転機構30が設けられており、用紙の両面にプリントができるようにしている。
【0009】
図2(a)は、キャリッジ9の正面図であり、図2(b)は、キャリッジ9の底面図である。図2(a)に示すように、キャリッジ9には、13C、13Bk−1、13Bk−2、13M、13Y(以下、C、Bk−1、Bk−2、M、Yの色表示については適宜省略)の5つのヘッドが設けられている。図2(b)に示すように、各ヘッド13には、吐出口13aが一列192個で2列設けられている。
【0010】
図3は、本実施形態に係るプリンタの概略構成を示す平面図である。図3に示すように、キャリッジ9を支持するガイドロッド31がキャリッジ9を貫通して本体両側面100a、100bに横架されている。また、この主ガイドロッド41と一定間隔をおいて並行に延在する図示しないキャリッジ支持部材を有しており、キャリッジ9は、主ガイドロッド41とキャリッジ支持部材とで主走査線方向に平行移動可能に支持されている。キャリッジ9には、各ヘッド13C、13Bk−1、13Bk−2、13M、13Yに各色のインク液を供給するためのサブタンク32C、32Bk−1、32Bk−2、32M、32Y(以下、C、Bk−1、Bk−2、M、Yの色表示については適宜省略)が設けられている。各サブタンクには、各色に対応した供給チューブ33C、33Bk−1、33Bk−2、33M、33Y(以下、各色のC、Bk−1、Bk−2、M、Yの色表示については適宜省略)の一端が接続されている。インク滴供給チューブ33の他端は、図3中の上側にある各色のインクカートリッジ34C、34Bk−1、34Bk−2、34M、34Y(以下、C、Bk−1、Bk−2、M、Yの色表示については適宜省略)を収容したカートリッジ装填部35の供給ポンプ35aに接続している。各色のインクカートリッジ34は、カートリッジ装填部35に対し着脱可能に取り付けられている。そして、供給ポンプ35aを適宜駆動して、インクカートリッジ34内のインク液を、供給チューブ33を介してサブタンク32に供給している。また、キャリッジ9には、図示しないプリンタの制御部と接続するハーネス47が取り付けられいる。
【0011】
搬送ベルト12の主走査線方向の一端側である図3中の上側には、各色のヘッド13C、13Bk−1、13Bk−2、13M、13Yにそれぞれ対応した保湿キャップ41C、41Bk−1、41Bk−2、41M、41Y(以下、C、Bk−1、Bk−2、M、Yの色表示については適宜省略)と吸引キャップ42とを備えた回復・維持装置40が設けられている。また、この回復・維持装置40は、第1の空吐出受け43と、ワイパーブレード44と、コロ45も有している。上記保湿キャップ41は、非画像形成時に各ヘッド13の吐出口13aをキャッピングして、吐出口13aを湿潤状態に保っている。また、保湿キャップ41には、図示してないが、大気と連通する微小な連通孔が開けられており、保湿室の圧力を常に大気圧に保つようにし、吐出口13aのメニスカスを一定に保っている。保湿キャップ41より印字領域側(図3中下側)に設けられた吸引キャップ42には、吸引孔42aが設けられており、この吸引孔42aには、後述する吸引手段が取り付けられている。この吸引キャップ42は、吸引キャップ42の吸引手段で気泡や吐出口13aに付着したゴミなどをインクとともに吸い出して、吐出不良を改善する機能を有している。第1の空吐出受け43は、例えば、記録開始前などに空吐出して吐出口13aのメニスカスを整えて安定した吐出性能を維持するために設けられている。ワイパーブレード44は、ヘッド13の吐出口13aを有する面に付着したインク液を清掃するために設けられている。コロ45は、ワイパーブレード44を第1の空吐出受け43の開口部に押し付け、ワイパーブレード44の汚れを第1の空吐出受け43の開口部に掻き落とさせるために設けられている。各保湿キャップ41、吸引キャップ42、ワイパーブレード44、ワイパーブレード44、コロ45は、後述するカム軸により、上下動可能となっている。なお、上記回復・維持装置40の詳細については、後述する。
【0012】
搬送ベルト12の図3中の下側には、各色のヘッド13に対応した第2の空吐出受け46C、46Bk−1、46Bk−2、46M、46Yが設けられている。この第2空吐出受け46は、画像形成途中で画像形成に使用されなかった色のインクを、使用された色のインクと同粘度の粘度を保つために設けられている。具体的には、画像形成途中で画像形成に使用されなかった色のインクをこの第2空吐出受け46に吐出させることで、使用された色のインクと同粘度の粘度を保つことができる。
【0013】
次に、本実施形態のプリンタのプリント動作について説明する。パーソナルコンピュータから画像情報などの信号が送られ、プリントを実行する。まず、給紙トレイ18から給紙ローラ19によって搬送ローラ10へ用紙が給紙される。給紙トレイ18から給紙された用紙は、ガイド部材22や加圧ローラ16に案内されて、ほぼ鉛直方向に搬送ベルト12に搬送される。搬送ベルト12の表面は帯電ローラ15により帯電させられており、用紙を静電的に搬送ベルト12に吸着させる。搬送ベルトに吸着した用紙は、案内ガイド22、加圧ローラに案内されてほぼ90°方向転換し、ほぼ水平状態でヘッド13と対向する位置に搬送される。搬送ベルト12に搬送された用紙がヘッド13と対向する位置に達したら、搬送ベルト12を停止して用紙の移動を停止する。画像信号入力前は、図3に示す回復・維持装置40上に、キャリッジ9が位置している(以下、ホームポジションという)。また、画像信号入力前は、キャリッジがホームポジションに位置してヘッド13と保湿キャップ41とが当接して吐出口13aを湿潤状態に保っている。画像信号が入力されると、保湿キャップ41が下降し、キャリッジの主走査線方向の移動を開始する。そして、各色に対応するヘッド13が第1の空吐出受け43に位置するたびにキャリッジ9の移動を停止し、第1の空吐出受け43に向けてインクを数滴吐出する。各色のヘッド13の空吐出が完了したら、再びキャリッジの主走査線方向の移動を開始する。そして、キャリッジ9が画像信号に応じて用紙P上を主走査線方向に移動しなが、停止した用紙Pの所定箇所に所定のインク液を吐出して一行分の画像を用紙Pに形成する。ここで、1行とは、ヘッド13が用紙へ記録可能な副走査線方向の範囲を言う。一行分の画像を形成したら、必要に応じ、キャリッジ9を第2の空吐出受け46の位置に移動させ、第2の空吐出受け46に使用されなかったインク色を数滴空吐出する。そして、用紙Pに主走査線方向一行分の記録が終了したら、搬送ベルト12を所定時間駆動させ、用紙Pを一行分排紙トレイ26方向に移動させて停止する。搬送ベルト12の移動が停止したら、上述同様、キャリッジ9が画像信号に応じて用紙P上を主走査線方向に移動しなが一行分の画像を形成する。このような工程を所定回数繰り返し行い、用紙Pに所望の画像をプリントする。このように用紙Pの搬送と停止を繰り返して用紙に画像を形成しているとき、用紙は、搬送ベルト12に静電吸着しているので、用紙を安定してヘッド13と対向する位置に搬送することができる。また、加圧ローラ16によって用紙を搬送ベルトに押し付けているので、用紙を搬送ベルト12に確実に静電吸着させることができる。所望の画像がプリントされた用紙は、分離爪17で搬送ベルト12から分離され、排紙ローラ25及び拍車24によって搬送され、排紙トレイ26に排出される。
両面プリントの場合は、用紙の一方の面に所望の画像をプリントしたら、搬送ベルト12を逆回転させ、用紙を反転機構30に搬送する。反転機構30で反転した用紙は、再びガイド部材22や加圧ローラ16に案内されて搬送ベルト12に搬送される。用紙がヘッド部13と対向する位置に達したら、上述同様の動作を行い用紙の他方の面に所望の画像をプリントする。そして、両面に所望の画像がプリントされた用紙は、分離爪17で搬送ベルト12から分離され、排紙ローラ25及び拍車24によって搬送されて排紙トレイ26に排出される。
画像形成が終わったら、キャリッジ9を再び回復・維持装置40上のホームポジションに移動させる。そして、保湿キャップ41を上昇させてヘッド13の吐出口13aを保湿する。
【0014】
上記吸引キャップ42は、クリーニングモード時に動作する。例えば、プリンタに予めクリーニングモード選択ボタンなどの選択手段がついており、ユーザがプリントされた画像を見て、画像の劣化を確認した場合、ユーザがこの選択手段によりこのクリーニングモードを選択するようにする。クリーニングモードが選択されると、キャリッジ9を保湿していた保湿キャップ41が下降する。そして、ヘッド13Cが吸引キャップ42上に位置するようにキャリッジ9を移動させる。ヘッド13Cが吸引キャップ42上に位置したら、キャリッジの移動を停止させる。次に、吸引キャップ42を上昇させて、ヘッド13と当接させ、後述する吸引手段で気泡や吐出口13aに付着したゴミなどをインクとともに吸い出す。吸引動作を終了すると、吸引キャップ42を下降させる。吸引キャップ42が下降すると同時に、ワイパーブレード44を上昇させる。ワイパーブレード44が上昇したら、キャリッジ9を移動させて、ヘッド13Cをワイパーブレード44と摺擦させる。このキャリッジ9の移動により、ワイパーブレード44は、C色のヘッド13Cを摺擦し付着したインク滴を除去することができる。ヘッド13Cのインク滴を除去したら、ワイパーブレード44を下降させる。このワイパーブレード44下降の際、コロ45を上昇させて、ワイパーブレード44を第1の空吐出受け43の開口部に押し付ける。これにより、ワイパーブレード44を下降させるとワイパーブレード44に付着したインク滴が空吐出受け43の開口部によって掻き落とされ、ワイパーブレード44が清掃される。
ワイパーブレード44が下降したら、キャリッジ9を移動させて、ヘッド13Cを第1の空吐出受け43上に位置させる。ヘッド13Cが第1の空吐出受け43上に位置したら、第1の空吐出受け43に空吐出を行う。
このような一連の動作が他の色のヘッド13Bk−1、13Bk−2、13M、13Yにも同様に行われることで、各色のヘッド13の吐出不良と各色のヘッド13に付着したインク滴をクリーニングすることができる。
【0015】
このように、本実施形態においては、保湿キャップと吸引キャップをそれぞれ備えているので、保湿キャップにインク滴が付着することがない。よって、保湿時に吐出口13aのインク粘度が上昇することが抑制される。これにより、印字開始前に行う空吐出において、インク粘度を調整するための空吐出を行う必要がない。
【0016】
なお、上述の説明ではユーザがクリーニングモードを選択する場合について説明したが、例えば、プリント枚数が一定数越えたら、上記クリーニングモードを実行するようにしてもよい。
【0017】
また、上記吸引動作はクリーニングモード時に限らず、例えば、大気開放充填モードにおける吸引動作でも同様に行われる。
【0018】
次に、回復・維持装置40について説明する。まず、回復・維持装置40の保湿キャップ41について説明する。図4(a)は、回復・維持装置40の概略構成を示す斜視図である。図4(b)は、図4(a)中のA方向からみた回復・維持装置40の概略構成を示す側面図である。図4(a)に示すように、C色のヘッド13Cをキャッピングする保湿キャップ41CとBk−1色のヘッド13Bk−1をキャッピングする保湿キャップ41Bk−1は、第1のホルダ50に保持されている。また、Bk−2色のヘッド13Bk−2をキャッピングする保湿キャップ41Bk−2は、第2のホルダ51に保持されている。さらに、M色のヘッド13Mをキャッピングする保湿キャップ41MとY色のヘッド13Yをキャッピングする保湿キャップ41Yは、第3のホルダ52に保持されている。そして、第1のホルダ50は、第1のスライダー60に支持される。具体的には、図4(b)に示すように、第1のホルダ50の手前側の側面と奥側の側面とにそれぞれの設けられた第1の突起50a、第2の突起50bが第1のスライダー60の手前側側面と奥側側面とにそれぞれの設けられた第1の凹部60a、第2の凹部60bに支持される。第2のホルダ51も同様に手前側側面と奥側側面とにそれぞれ設けられた突起51a、51bが第2のスライダー60の手前側側面と奥側側面とにそれぞれ設けられた凹部61a、61bにそれぞれ支持される。また、第3のホルダ52も同様に、第3のホルダ52に設けられた突起52aと52bが第3のスライダー62の凹部62a、62bに支持される。また、第1のスライダー60の手前側側面と奥側側面とには、突起60cがそれぞれ設けられており、図5に示すように回復・維持装置40のフレーム70の第1の切り欠き71aに挿入されている。また同様に、第2のスライダー61の側面にそれぞれ設けられた突起61cが、フレーム70の第2の切り欠き71bに、第3のスライダー62の手前側側面と奥側側面とにそれぞれ設けられた突起62cがフレーム70の第3の切り欠き部71cにそれぞれ挿入されている。
また、図4(b)に示すように、各スライダー60、61、62にはそれぞれ第1のカム80、第2のカム81、第3のカム82が取り付けられており、各カム80、81、82は、カム軸84に固定されている。カム軸84は第1ギヤ86a、第2のギヤ86bを介して駆動手段87に接続されている。
【0019】
図6は、第1のカム80の概略構成図である。なお、他のカムについても同様な構成であるので、省略する。第1のカム80は、カム軸84と嵌合する孔80aと、カム80の形状に沿って設けられたカム溝80bが設けられている。カム溝80bには、スライダー60から延びるカムピン60dが挿入されている。カム軸84が回転すると、カム軸84に固定しているカム80が回転し、カムピン60dがカム溝80bに支持されながら、カム溝対して相対的に移動する。すると、第1のスライダー60が図5に示す第1の切り欠き71aに案内され、上下動する。その結果、第1のスライダー60に支持されているY色の保湿キャップ41YとM色の保湿キャップ41Mが上下動する。
第1のカム80と、第2のカム81と、第3のカム82とは、それぞれ角度を変えてカム軸84に固定するようにしてもよい。角度を変えてカム軸84に取り付けることで、第1のスライダー60、第2のスライダー61、第3のスライダー62がそれぞれ時間差をおいて移動することとなり、トルクを低減することができる。
【0020】
次に、回復・維持装置40の吸引キャップ42について説明する。吸引キャップ42は、図4(a)に示すように吸引キャップ用ホルダ53に保持されている。吸引キャップ用ホルダ53は、図4(b)に示すように、ホルダ53の手前側側面と奥側側面とにそれぞれ設けられた第1の突部53aと第2の突部53bとが吸引キャップ用スライダー63の第1の凹部63aと第2の凹部63bとに支持されている。また、吸引キャップ42には、シャッター54が設けられており、通常時の吸引キャップ42が下降した状態の時には、シャッター54が閉じられ吸引キャップ42にゴミ等の異物が入らないようにしている。シャッター54の下部には、バネ54bの一端が取り付けられている。そして、該バネ54bの他端はフレーム70に取り付けられており、シャッター54を図中下側に付勢している。吸引キャップ42が下降した状態の時は、吸引キャップ用スライダー63の下面がシャッター54と当接して、バネ54bの付勢に抗してシャッター54を下方に押し付けている。
吸引キャップ用スライダー63の側面には、突部63cがそれぞれ設けられており、図5に示すように、突部63cがフレームの吸引キャップ用切り欠き72に支持されている。
また、吸引キャップ42は、図4(b)に示すように、吸引チューブ93と吸引ポンプ91からなる吸引手段90が取り付けられている。また、吸引手段90には、廃タンク92を有しており、吸引キャップ42で吸引したインク滴を収容している。
吸引キャップ用スライダー63には、カムピン63dが設けられており、このカムピン63dが吸引キャップ用カム83のカム溝に挿入されている。吸引キャップ用カム83は、カム軸84に固定されている。この吸引キャップ用カム83は、第1のカム80、第2のカム81、第3のカム82と同様な構成を有している。吸引キャップ用カム83は、上記第1、第2、第3のカム80、81、82と角度を変えてカム軸84に取り付けられている。保湿キャップ41のみが上下動するカム軸84の回転範囲、吸引キャップ42のみが上下動するカム軸84の回転範囲、保湿キャップ41と吸引キャップ42が上下動するカム軸84の回転範囲を求め、この結果に基づいて吸引キャップ用カム83の取り付け角度を決定している。そして、駆動手段87の駆動時間を制御することで、保湿キャップ41のみが上下動したり、吸引キャップ42のみが上下動したり、保湿キャップ41と吸引キャップ42が上下動したりする。
【0021】
図7は、シャッター54を示す斜視図である。シャッター54は、吸引キャップ42が下降した状態のとき吸引キャップ42の上方を覆う遮蔽部54aを有している。また、シャッター54の図中奥側と手前側には、アーム部54c、54dがそれぞれ設けられている。図中手前側アーム部54cの先端には、吸引キャップ用スライダー63と当接する当接部54gが設けられている。また、アーム部54c、54dの外側側面には、突部54e、54fがそれぞれ設けられている。これらの突部54e、54fは、図5に示すように、フレーム70の手前側側面と奥側側面とにそれぞれ設けられた孔部73に回転支持されている。
【0022】
次に、シャッター54の開閉について説明する。図8(a)は、吸引キャップ42が収納位置にある状態を示す図である。図8(b)は、吸引キャップ42が吸引位置にある状態を示す図である。図8(a)に示すように、吸引キャップ用スライダー63とともの吸引キャップ42が上方に移動を開始すると、この吸引キャップ用スライダー63の移動とともに、シャッター54が突部54f、54eを回転の支点として、図8(a)に示すようにの反時計回りに回転する。さらに吸引キャップ用スライダー63が上方に移動すると、スライダー63の下面と当接部54gとが離間する。すると、図8(b)に示すようにバネ54bの付勢力によりシャッター54が回転し、吸引キャップ42を開放する。
【0023】
ヘッド吐出口13aのインクの吸引が終了し、吸引キャップ用スライダー63とともの吸引キャップ42が下方へ移動を開始すると、吸引キャップ用スライダー63の底面と当接部54gが当接する。さらに吸引キャップ用スライダー63が下方へ移動し、当接部54gを押し下げる。すると、シャッター54が突部54f、54eを回転の支点として、時計回りに回転する。そして、吸引キャップ42が収納位置に移動し下降が停止すると、図8(a)に示すように、シャッター54の回転によりシャッター54の遮蔽部54aが吸引キャップ42の開口部上に移動して吸引キャップ42の開口部を閉じる。
【0024】
[変形例1]
次に、変形例1のシャッターについて説明する。図9(a)は、変形例1のシャッター150が吸引キャップ42の開口部を閉じている状態を示した図であり、図9(b)は、変形例1のシャッター150が吸引キャップ42の開口部を開いている状態を示した図である。なお、図9において、吸引キャップ用ホルダ53および吸引キャップ用スライダー63については便宜上省略する。図9(a)に示すように、シャッター150には、吸引キャップ42が下降した状態のとき吸引キャップ42の上方を覆う遮蔽部153を有している。また、シャッター150は、水平に延びるアーム部155を設け、該アーム部155の先端にはシャッターカム151が接続されている。シャッターカム151は、吸引キャップ用カム83と角度をずらしてカム軸84に固定されている。また、シャッター150の側面には、フレーム70に回転自在に支持される突部152がそれぞれ設けられている。
クリーニングモードが選択されると、カム軸84が回転して、最初にシャッターカム151が上方に移動する。すると、アーム部155の先端が上方に移動して、図9(b)に示すように、突部152を支点として、時計周りに回転する。そして、吸引キャップ42の開口部を閉じていたシャッター150の遮蔽部153が移動して、吸引キャップ42の開口部を開ける。次に少し遅れて、吸引キャップ用カム83上方に移動して吸引キャップ42を上方に移動させる。吸引キャップ42が上方に移動してヘッド13に当接したら、カム軸84の回転を停止してヘッド13の吐出口13aのインクを吸引する。インクを吸引したら、カム軸84をさらに回転させて、吸引キャップ用カム83を下方に移動させ、吸引キャップ42を収納位置まで移動させる。また、シャッターカム151も下方への移動を開始する。すると、シャッター150のアーム部154が下方に移動し、これにより突部152を支点として遮蔽部153が反時計周りに回転する。そして、図9(a)に示すようにシャッター150の遮蔽部153が吸引キャップ42の開口部に移動してきて、吸引キャップ42の開口部を閉じる。
【0025】
[変形例2]
次に、変形例2のシャッター250について説明する。図10(a)は、吸引キャップ42が収納位置にある状態を示す図である。図10(b)は、吸引キャップ42が待機位置にある状態を示し、図10(c)は、吸引キャップ42がヘッド13Yの吐出口吸引している状態を示す図である。図7に示すシャッター54は、吸引キャップ42の移動によりシャッターの開閉を行っている。また、図9に示す、変形1のシャッター150は、吸引キャップ42のカム軸84の駆動力をによってシャッターを開閉している。この図10に示す変形例2のシャッター250は、キャリッジ9の移動力によりシャッター250を開くようにしたものである。
【0026】
図10(a)に示すように、変形例2のシャッター250は、吸引キャップ42が下降した状態のときに吸引キャップ42の上方を覆う遮蔽部253を有している。また、キャリッジ9のシャッター当接部9aと当接する当接部251が遮蔽部253から上方に延びている。さらに、シャッター250は、遮蔽部253から下方に延びる足部254を備えており、該足部254には、フレーム70に支持される突部252がそれぞれ設けられている。フレーム70には、シャッターの突部252をガイドするガイド溝75が形成されている。
【0027】
10(a)に示すように、吸引キャップ42が収納位置にある場合、突部252は、支持溝75の最も下方にある点Aに位置しており、吸引キャップ42の開口部とシャッター250の遮蔽部253が当接して、吸引キャップ42の開口部を閉じている。クリーニングモードが選択されると、吸引キャップ42が図10(b)に示す待機位置まで上昇する。これに伴い、シャッター250も移動し、シャッター250の突部252がガイド溝75のB点の位置まで移動する。吸引キャップ42が待機位置まで移動したら、Y色のヘッド13Yが吸引キャップ42の上方に位置するように、キャリッジ9を矢印Y方向に移動する。このキャリッジ9が移動すると、図10(b)に示すように、シャッター250の当接部251がキャリッジ9のシャッター当接部9aと当接して、シャッター250がキャリッジ9とともに移動する。そして、シャッター250の突部252がガイド溝75に案内されて、C点の位置まで移動する。これにより、閉じていた吸引キャップ42の開口部が開かれる。また、ガイド溝75の案内により、突部252がC点に到達すると、シャッター250の自重で下降し、当接部251がキャリッジ9と離間する。そして、Y色ヘッド13Yが吸引キャップ42の上方に位置したら、図10(c)に示すように、吸引キャップを待機位置からさらに上昇させて、ヘッドと当接させる。吸引キャップ42がヘッド13と当接したら、ヘッド13の吐出口13aのインクを吸引する。一方、C点まで移動したシャッターは、自重によりC点からA点に移動しようとするが、図10(c)に示すように、遮蔽部253が吸引キャップ42と当接して移動できないようになっている。インクの吸引が終了したら、吸引キャップ42を図10(b)に示す、待機位置まで下降させる。なお、図示してないが、このときも遮蔽部253が吸引キャップ42と当接してシャッターが図中左側に移動できないようになっている。そして、再びキャリッジ9を移動してM色のヘッド13Mを吸引キャップ42の上方に位置させ、吸引キャップ42を上昇させてインクを吸引し、再び待機位置まで吸引キャップ42を下降させる。このような動作を他のヘッド13についても同様に行う。そして、全てのヘッド13について吸引を終了したら、吸引キャップ42を図10(b)に示す待機位置から図10(a)に示す収納位置まで下降させる。すると、吸引キャップ42とシャッター250との当接が解除され、ガイド溝75に案内されてシャッター250が自重によりA点に移動し、吸引キャップ42の開口部にシャッターの遮蔽部253が当接し、図10(a)に示すように、吸引キャップ42の開口部を閉じる。
【0028】
[変形例3]
上記実施形態のプリントにおいては、保湿キャップ41と吸引キャップ42とを別々に設けているが、キャップ内に保湿室201と吸引室202との2つの部屋を設けてひとつのキャップで保湿と吸引とを行うようにしても良い。図11は、保湿室201と吸引室202との2つの部屋を設けたキャップ200の変形例である。図11(a)は、吸引動作を行っているときの説明図であり、図11(b)は、ヘッド吐出口を保湿している状態の説明図である。また、図11(c)は、キャップの平面図である。図11(a)に示すように、キャップ200は、ヘッド13の吐出口13aを湿潤状態に保つ保湿室201と、気泡や吐出口13aに付着したゴミなどをインクとともに吸い出す吸引室202とを備えている。吸引室202には、第1の吸引孔202aと第2の吸引孔202bとが設けられている。第1の吸引孔202aおよび第2の吸引孔202bには、吸引チューブ204の一端が接続されており、吸引チューブ204の他端は、吸引ポンプ205が接続されている。吸引室202の外側壁面205の上端部にはゴムなどの可撓性部材で構成された外側密封部203が設けられている。外側密封部203は、屈曲部203aを有している。また、内側壁面206の上端部には、ゴムなどで構成された内側密封部207が設けられている。保湿室201の下面には、大気と連通する連通孔209が設けられており、保湿室201の圧力を常に大気圧に保たれるようにしている。このように、保湿室201の圧力を常に大気圧に保つことで、吐出口のメニスカスを一定に保つことができる。
【0029】
非画像形成時においては、図11(b)に示すように、外側密封部203がヘッドと当接して大きく屈曲するとともに、内側密封部207がヘッド13に当接している。そして、クリーニングモードなど、ヘッド吐出口13aのインクを吸引する場合、図11(a)に示すように、外側密封部203がヘッド13に当接し、内側密封部207がヘッド13から離間した位置となる吸引位置にくるまでキャップを下降させる。吸引位置にキャップ200が位置したら、吸引ポンプ208を駆動させ、気泡や吐出口13aに付着したゴミなどをインクとともに吸い出す。このとき、吐出口13aから出たインク滴は、吸引ポンプ208の吸引力やインクの濡れ性などの影響で、保湿室201に真直ぐに落下せず、両側に広がるようにして落下していく。この結果、保湿室201の壁面にインク滴が付着することがない。吸引動作が終了したら、キャップ200をさらに下降させ、キャップ200をヘッド13から離間させる。キャップ200がヘッド13から離間したら、キャリッジ9を移動して、ワイパーブレード44でヘッド面を清掃するとともに、適宜空吐出受け43に空吐出を行う。このような清掃作業を終了したら、キャリッジ9をホームポジションに移動させる。キャリッジ9がホームポジションに移動したら、図11(b)に示すように、内側密封部207がヘッドと接触する位置までキャップ200を移動させる。保湿室201の壁面には、インク滴が付着してないので、吐出口13aのインクの粘度が高まることが抑制される。また、吸引室202もヘッド13と当接して密閉状態となっている。その結果、吸引室202にゴミ等の異物が入ることが防止され、吸引チューブにゴミ等が流入して、流路を塞いで十分な吸引力が得られなくなることが防止される。なお、この変形例のキャップ200には、第1の吸引孔202aと第2の吸引孔202bとを設けているが、これに限定されない。例えば、吸引室202の底面に複数の吸引孔を均等に配置することで、吸引ポンプ208の吸引力を吐出口に均等に働かせることができ、吐出口13aから出たインク滴を確実に両側に広げることができる。よって、より確実に保湿室201へのインク滴の落下を抑制することができる。
【0030】
このように、キャップ内に保湿室201と吸引室202との2つの部屋を設けることで、保湿キャップと吸引キャップを別々に設けなくても、ヘッド吐出口の吸引と保湿を行うことができる。よって、回復・維持装置40をコンパクトにすることができる。
【0031】
次に、本実施形態のプリンタに用いるインクについて説明する。本プリンタに使用したインク液は、着色剤の成分を多くして高粘度とした水系インクである。この水系インクは、水を主成分とする水分散体に着色剤が分散したものである。この水系インクは、インク表面張力35[mN/cm]以下、25℃におけるインク粘度5[mPa・sec]以上としている。インク液のインク表面張力35[mN/cm]以下とすることで、紙への浸透速度を上げることができる。また、25℃におけるインク粘度5[mPa・sec]以上とすることで、画像濃度を上げることができる。
【0032】
着色剤としては、疎水性染料、顔料を用いることができ、特に有機顔料およびカーボンブラックが好ましい。
【0033】
上記水分散体は、ポリマー微粒子の水分散体が好ましく、用いられるポリマーとしては、ビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー等が挙げられる。該ポリマーの中では、ビニル系ポリマーが好ましい。
【0034】
また、上記インク液のインク表面張力35[mN/cm]以下とするため、本実施形態のインク液には、湿潤剤を添加している。湿潤剤としては、グリセリン、1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、およびトリメチロールエタンが挙げられ、少なくとも1種類以上をインク液に添加する。
【0035】
さらに、本実施形態のインク液には、炭素数8以上で11以下のポリオールまたはグリコールエーテル、アニオンまたはノニオン系界面活性剤が添加されている。
【0036】
その例としては、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、下記(I)ないし(VII)の構造の物質を挙げることができる。
【0037】
【化1】
(R1:炭素数6〜14の分岐してもよいアルキル基、m:3〜12、 M:アルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、アルカノールアミン)
【0038】
【化2】
(R2:炭素数5〜16の分岐したアルキル基、M:アルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、アルカノールアミン)
【0039】
【化3】
(Rは分岐しても良い6〜14の炭素鎖、k:5〜20)
【0040】
【化4】
(Rは分岐しても良い炭素数6から14の炭素鎖、n:5〜20)
【0041】
【化5】
(Rは炭素数6から14の炭素鎖、m,n:m、n≦20)
【0042】
【化6】
(Rは炭素数6から14の炭素鎖、m,n:m、n≦20)
【0043】
【化7】
(p、qは0〜40)
【0044】
上記インク液を得る方法としては、ポリマーを有機溶媒に溶解させ、顔料、水、湿潤剤、界面活性剤等を加えて混練しペーストとした後、該ペーストを必要に応じて水で希釈し、有機溶媒を留去して水系にする方法が好ましい。
【0045】
以下にインク液の実施例を説明するが、これらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0046】
〔シアンインク〕
下記処方のインク組成物を作成し、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行いインク組成物を得た。
フタロシアニン顔料含有ポリマー微粒子 10.0wt%(固形分として)
1,3−ブタンジオール 25.0wt%
グリセロール 8.5wt%
CH3(CH2)12O(CH2CH2O)3CH2COOH
の活性剤 2.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 1.8wt%
プロキセルLV(防腐剤) 0.1wt%
消泡剤 0.05wt%
イオン交換水 残量
これにより、ジメチルキナクリドン顔料を含有したポリマー微粒子水分散体としてのC色水系インク液を得た。
【実施例2】
【0047】
〔マゼンタインク〕
下記組成物を用いる以外はシアンインクと同様にし、pHを水酸化ナトリウムで9にしてインク組成物を調製した。
ジメチルキナクリドン顔料含有ポリマー微粒子 0.5wt%(固形分として)
1,3−ブタンジオール 22.0wt%
グリセロール 7.0wt%
ポリオキシアルキレン誘導体ディスパノール TOC 2.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0wt%
プロキセルLV(防腐剤) 0.05wt%
消泡剤 0.1wt%
イオン交換水 残量
これにより、ジメチルキナクリドン顔料を含有したポリマー微粒子水分散体としてのM色水系インク液を得た。
【実施例3】
【0048】
〔イエローインク〕
下記組成物を用いる以外はシアンインクと同様にし、pHを水酸化リチウムで9にしてインク組成物を調製した。
モノアゾ黄色顔料含有ポリマー微粒子 10.0wt%(固形分として)
1,3−ブタンジオール 23.5wt%
グリセロール 7.5wt%
ポリオキシアルキレン誘導体ディスパノール TOC 2.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0wt%
プロキセルLV(防腐剤) 0.05wt%
消泡剤 KM72F 0.1wt%
イオン交換水 残量
これにより、モノアゾ黄色顔料を含有したポリマー微粒子水分散体としてのY色水系インク液を得た。
【実施例4】
【0049】
〔黒インク〕
下記組成物を用いる以外はシアンインクと同様にし、pHを水酸化ナトリウムで9にしてインク組成物を調製した。
ジアゾ化合物処理したカーボンブラック分散液 10.0wt%
1,3−ブタンジオール 22.5wt%
グリセロール 7.5wt%
N−メチル−2−ピロリドン 2.0wt%
CH3(CH2)12O(CH2CH2O)3CH2COOH
の活性剤 2.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0wt%
プロキセルLV(防腐剤) 0.2wt%
消泡剤 0.1wt%
イオン交換水 残量
これにより、カーボンブラックを含有したポリマー微粒子水分散体としてのBk色水系インク液を得た。
【0050】
これらのインク物性は、表1のとおりであった。
【表1】
【0051】
なお、本実施形態の画像形成装置として、インクジェットプリントについて説明したが、これに限られず、スキャナーなどの画像情報を読み取ることができる画像読取装置を備え、該画像読取装置により読み取られた画像に基づき記録紙に画像を形成する複写装置や、ファクシミリ装置、プリンタやファックス、コピーなどを備えた複合機などにも適用することができる。
【0052】
[1]
以上、本実施形態の画像形成装置によれば、保湿キャップの内壁面にインクが付着することがない。よって、内壁面のインクが吐出口のインクの蒸発成分を取り込むことがなくなり、吐出口のインクの粘度が上昇することが抑制される。その結果、印字開始前に吐出口の粘度を整えるための空吐出をする必要がなくなり、インクの消費量を低減することができる。また、吸引手段を設けているので、吐出口に付着したゴミなどをインクとともに吸い出している。これにより、吐出口にゴミ等が付着することによりおこる吐出不良を防止することができる。特に、粘度の高いインク液を用いる場合に本実施形態の画像形成装置を用いれば効果的である。粘度の高いインク液は、多少のヘッド吐出口の粘度上昇でも画像に影響を与えてしまう。よって、上記のように吐出口の保湿時に吐出口を覆う保湿キャップの内壁面にインクを付着させないようにして、吐出口のインク粘度を抑えることで、画像不良を抑えることができる。また、印字開始前に行われる粘度調整のための空吐出時のインク滴の量を削減することができる。
[2]
また、変形例3は、吐出口を保湿する保湿室と吐出口のインクを吸引する吸引室をひとつのキャップに設けている。具体的には、キャップの内側に保湿室を設け、この保湿室の外壁面を囲うように吸引室が設けられている。そして、ヘッド吐出口の保湿時には、保湿室を形成する壁面の上端がヘッドと当接するように構成され、吐出口のインクを吸引時には、保湿室を形成する壁面がヘッドから離間し、吸引室を構成する外壁がヘッドと当接するようにしている。吸引時の吸引により、吐出口から吐出したインクは、吸引手段の吸引力やインクの濡れ性により、真下に落ちずに吐出口から広がるようにして落下する。このため、保湿時にヘッドの吐出口を覆うキャップの内側に設けられた保湿室の内壁面にインクが付着することなく、吐出口のインクを吸い出すことができる。保湿時には、保湿室を形成する壁面をヘッドに当接させて、吐出口を保湿室の内壁面によって塞いでいる。保湿室の内壁面にはインク滴が付着していないので、保湿時に吐出口のインクの粘度が上昇することがない。また、ひとつのキャップでキャップの保湿と吸引を兼ねることで、回復・維持装置40をコンパクトにすることができる。
[3]
また、本実施形態においては、吐出口を保湿する保湿キャップと、吐出口のインクを吸引する吸引キャップとを別々に設けている。これにより、保湿キャップの内壁面にインクが付着することが抑制され、吐出口の保湿時にインクの粘度が上昇することがない。
[4]
また、本実施形態においては、吸引手段90の非動作時に吸引キャップ42の開口部を覆うシャッター54を設けている。これにより、吸引キャップ54にゴミ等の異物が入ることが防止され、吸引チューブにゴミ等が流入して、流路を塞いで十分な吸引力が得られなくなることが防止される。
[5]
また、本実施形態においては、移動手段による吸引キャップ42の移動によりシャッター54を開閉している。具体的には、シャッター54にシャッター54を開く方向に付勢する付勢手段54bを設け、吸引キャップ42が収納位置にあるときは、この吸引キャップ42が上記付勢手段54bの付勢に抗してシャッター54を閉じる位置に止めるストッパーとして機能している。そして、吸引キャップ42が移動手段により上方に移動すると、吸引キャップ42のストッパー機能が解除され、シャッター54が付勢手段の付勢力により移動し、吸引キャップ42の開口部が開かれる。また、吸引キャップ42が移動手段により下方へ移動してくると、吸引キャップ42が付勢手段の負勢力に抗してシャッター54を閉じる位置に移動させる。そして、吸引キャップ42が収納位置に来ると、吸引キャップ42の開口部を閉じる位置にシャッター54が位置する。
このように、移動手段による吸引キャップ42の移動により、シャッター54の開閉が行われるようにすることで、シャッター54を開閉するための別の手段を備える必要がない。このため、画像形成装置のコスト低減やコンパクト化することができる。
[6]
また、インクの25℃におけるインク粘度が5[mPa・sec]以上とすることで、画像濃度を上げることができ、良好な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】インクジェットプリンタの概略構成を示す正面図。
【図2】(a)は、キャリッジの正面図。(b)は、キャリッジの下面図。
【図3】インクジェットプリンタプリンタの概略構成を示す平面図。
【図4】(a)は、回復・維持装置の概略構成斜視図。(b)は、(a)中のA方向からみた回復・維持装置40の側面概略図。
【図5】回復・維持装置のフレームを示す図。
【図6】第1のカム80の概略構成図
【図7】シャッターを示す概略図
【図8】(a)は、シャッターが吸引キャップの開口部を閉じている状態を示した図。(b)は、シャッターが吸引キャップの開口部を開いている状態を示した図。
【図9】(a)は、変形例1のシャッターが吸引キャップの開口部を閉じている状態を示した図。(b)は、変形例1のシャッターが吸引キャップの開口部を開いている状態を示した図。
【図10】(a)は、変形例2のシャッターが吸引キャップの開口部を閉じている状態を示した図。(b)は、変形例2のシャッターがキャリッジと当接した状態を示した図。(c)は、変形例1のシャッターが吸引キャップの開口部を開いている状態を示した図。
【図11】(a)は、吸引と保湿を兼ねたキャップが吸引動作を行っているときの概略図。(b)は、吸引と保湿を兼ねたキャップがヘッド吐出口を保湿している状態の概略図である。(c)は、吸引と保湿を兼ねたキャップの平面図。
【符号の説明】
【0054】
9 キャリッジ
10 搬送ローラ
12 搬送ベルト
13 ヘッド
34 インクカートリッジ
35 カートリッジ装填部
40 維持・回復装置
41 保湿キャップ
42 吸引キャップ
43 第1の空吐出受け
46 第2の空吐出受け
54、150、250 シャッター
70 フレーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する吐出口を備えたヘッド部と、該吐出口を覆って該吐出口を保湿する保湿キャップと、該吐出口のインクを吸引する吸引手段とを備えた画像形成装置において、該吐出口の保湿時に該吐出口を覆う該保湿キャップの閉塞面を、該吸引手段によって該吐出口から吐出したインクが付着しない位置に設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、上記吸引手段が上記保湿キャップに備えられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1の画像形成装置において、上記吸引手段を備えた吸引キャップを上記保湿キャップとは別に備えることを特徴とした画像形成装置。
【請求項4】
請求項3の画像形成装置において、上記吸引手段の非動作時に吸引キャップの開口部を覆うシャッター部材を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4の画像形成装置において、上記吸引キャップを移動させる移動手段を備え、該移動手段による該吸引キャップの移動により上記シャッター部材の開閉を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5の画像形成装置において、上記インクの25℃におけるインク粘度が5[mPa・sec]以上であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6の画像形成装置において、画像情報を読み取ることができる画像読取装置を備え、該画像読取装置により読み取られた画像に基づき記録紙に画像を形成する画像形成装置。
【請求項1】
インクを吐出する吐出口を備えたヘッド部と、該吐出口を覆って該吐出口を保湿する保湿キャップと、該吐出口のインクを吸引する吸引手段とを備えた画像形成装置において、該吐出口の保湿時に該吐出口を覆う該保湿キャップの閉塞面を、該吸引手段によって該吐出口から吐出したインクが付着しない位置に設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、上記吸引手段が上記保湿キャップに備えられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1の画像形成装置において、上記吸引手段を備えた吸引キャップを上記保湿キャップとは別に備えることを特徴とした画像形成装置。
【請求項4】
請求項3の画像形成装置において、上記吸引手段の非動作時に吸引キャップの開口部を覆うシャッター部材を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4の画像形成装置において、上記吸引キャップを移動させる移動手段を備え、該移動手段による該吸引キャップの移動により上記シャッター部材の開閉を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5の画像形成装置において、上記インクの25℃におけるインク粘度が5[mPa・sec]以上であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6の画像形成装置において、画像情報を読み取ることができる画像読取装置を備え、該画像読取装置により読み取られた画像に基づき記録紙に画像を形成する画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−7455(P2006−7455A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184500(P2004−184500)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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