画像形成装置
【課題】メディア上の電気粘性効果を有する液体に対して確実に電気粘性効果を発現させ、被吐出媒体上における液同士の干渉を防止し、むらや混色などのない好ましい画像を形成する画像形成装置を提供する。
【解決手段】印字時に記録紙20を保持するベルト電極ユニット43には、副走査方向に長手方向を有する正の電極124と負の電極126とを交互に配列させた第1の電極群120を備えている。第1の電極群120に所定の電圧を供給すると主走査方向に電界が発生し、記録紙20上に着弾したインク滴は主走査方向の粘度が他の方向よりも高くなるように電気粘性効果を発現する。主走査方向のインク滴の合一を回避し、記録紙20には副走査方向のすじ、にじみ、混色などのない好ましい画像が形成される。第1の電極群120と互いに直交する第2の電極群を備え、2つの電極を切換可能に構成してもよい。
【解決手段】印字時に記録紙20を保持するベルト電極ユニット43には、副走査方向に長手方向を有する正の電極124と負の電極126とを交互に配列させた第1の電極群120を備えている。第1の電極群120に所定の電圧を供給すると主走査方向に電界が発生し、記録紙20上に着弾したインク滴は主走査方向の粘度が他の方向よりも高くなるように電気粘性効果を発現する。主走査方向のインク滴の合一を回避し、記録紙20には副走査方向のすじ、にじみ、混色などのない好ましい画像が形成される。第1の電極群120と互いに直交する第2の電極群を備え、2つの電極を切換可能に構成してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に係り、特に電気粘性効果を発現する液体を用いる画像形成装置における画像の形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像やドキュメント等のデータ出力装置としてインクジェット記録装置が普及している。インクジェット記録装置は印字ヘッドに備えられたノズルをデータに応じて駆動させ、該ノズルから吐出されるインクによって記録紙などのメディア上に画像(データ)を形成することができる。
【0003】
画像内にすじやむらなどが発生したり、また、カラー画像を形成する場合に各色のインクがメディア上で混ざり合う混色が発生したりすると、画像品質が著しく低下する。このような印字画像の品質低下を抑制するために、電界を作用させることで粘度が大きくなる電気粘性効果(ER効果)を持ったインクを用いて、メディア上に画像を形成する方法が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載された画像形成方法では、電気粘性効果を有する記録体に電気粘性流体を用い、記録体を記録部材に付着させた後に該記録部材に電界を印加することで、記録体の記録部材への浸透を防止し、にじみや記録濃度の低下などを防止するように構成されている。
【0005】
特許文献2に記載された記録装置では、記録ヘッドにより電気粘性効果を有する記録液を電界が形成された中間転写媒体に付着させ、中間転写媒体上で記録液の粘度を上昇させてドットの過剰な広がりや混色を防ぎ、記録液が乾燥してその粘度が大きくなった状態、又は記録液の電気粘性効果により記録液の粘度が大きくなった状態で中間転写媒体から被転写媒体への転写が行われるように構成されている。
【0006】
また、特許文献3に記載された記録装置では、記録ヘッドにより電気粘性効果を有する記録液滴を電界が印加された被転写媒体上に付着させて被転写媒体上での記録液の粘度を大きくし、この記録液によって形成されたドットのひげ、にじみ、混色を防ぎ、記録液の乾燥及び被転写媒体への浸透が進み、にじみ及び混色が起こらなくなるまで電界を維持するように構成されている。
【特許文献1】特開平2−212149号公報
【特許文献2】特開平5−4342号公報
【特許文献3】特開平5−4343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された画像形成方法、特許文献2及び特許文献3に記載された記録装置では、記録部材、中間転写媒体、被転写媒体に対して電界を付与することにより、記録体、記録液の電気粘性効果を発現させるものであり、このような方式では記録体、記録液自体に電界が発生せず、記録体及び記録液に効果的な電気粘性効果を発現させることができないと考えられる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、メディア上の電気粘性効果を有する液体に対して確実に電気粘性効果を発現させ、被吐出媒体上におる隣接する液滴同士が合一し、所定の着弾位置よりドット形成位置がずれたり、ドットの形状が崩れたりする着弾干渉を防止し、むらや混色などのない好ましい画像を形成する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために請求項1に係る発明は、被吐出媒体へ電気粘性効果を有する液体を吐出させて、前記被吐出媒体に画像を形成する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドの液体吐出面と対向する面に前記被吐出媒体を保持する保持手段と、前記吐出ヘッドと前記保持手段に保持される前記被吐出媒体とを相対的に搬送させる搬送手段と、前記保持手段に備えられ、前記搬送手段の搬送方向と略平行方向である副走査方向に長手方向を有し、前記副走査方向と略直交する主走査方向に並ぶように配置され、少なくとも一対の正の電極及び負の電極を含んだ第1の電極群と、前記第1の電極群に所定の電圧を供給する電圧供給手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、吐出ヘッドから液体が吐出される際に被吐出媒体を保持する保持手段には、搬送手段の搬送方向と略平行な副走査方向に長手方向を有する第1の電極群が備えられ、吐出ヘッドから吐出された電気粘性効果を有する液体に第1の電極群から副走査方向と略直交する方向(主走査方向)の電界が与えられる。
【0011】
一般に、電気粘性効果を有する液体では与えられる電界の方向の粘度が他の方向の粘度に比べて最も大きくなる性質を有しており、該液体には主走査方向の電界を与えられるので、主走査方向の粘度が他の方向の粘度よりも高くなり、主走査方向に発生する液体の着弾干渉が抑制され、被吐出媒体上には、むらなどを回避した好ましい画像を形成することができる。
【0012】
液体にはインク、レジスト、薬液、処理液など、吐出ヘッドが有する吐出孔(ノズル)から液滴化して吐出させることができる様々な液体を含んでいる。
【0013】
吐出ヘッドには、被吐出媒体の全幅に対応する長さにわたって吐出孔が並べられたフルライン型吐出ヘッドや、被吐出媒体の全幅に対応する長さよりも短い長さにわたって吐出孔が並べられた短尺ヘッドを被吐出媒体の幅方向(主走査方向)に走査させながら被吐出媒体上に液体を吐出させるシリアル型吐出ヘッド(シャトルスキャン型記録ヘッド)などがある。
【0014】
被吐出媒体は、吐出ヘッドから吐出される液体を受ける媒体であり、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、その他材質や形状を問わず様々な媒体を含み、記録媒体、記録メディア、印字媒体、被画像形成媒体などと呼ばれるものを含む。
【0015】
なお、ここでいう画像には、絵や写真だけでなく、文字、線画、ドットなどを含んだ広い意味での画像を示し、基板上に形成される配線パターンなどを含んでいてもよい。
【0016】
また、正の電極、負の電極はそれぞれの相対的な関係を表しており、正の電極の電位が負の電極の電位に比べて相対的に大きくなることを意味する。
【0017】
なお、第1の電極群と被吐出媒体との間に所定の導電性能(第1の電極群から発生された電界の少なくとも一部を透過させる性能)及び所定の絶縁性能を有する微導電部材(微導電層)を備える態様が好ましい。
【0018】
保持手段には、ベルト形状及びドラム形状、板状形状など様々な形状の部材を適用することができる。
【0019】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置の一態様に係り、前記吐出ヘッドは、前記被吐出媒体の画像形成可能幅に対応した長さの吐出孔列を少なくとも1列有するフルラインヘッドを含み、前記搬送手段の搬送方向と略平行な副走査方向に前記吐出ヘッドと前記被吐出媒体上とを1回だけ走査させて、前記被吐出媒体上に液体を吐出させるシングルパス駆動を行うことを特徴とする。
【0020】
フルライン型の吐出ヘッドを用いてシングルパス駆動によって画像を形成する場合には、被吐出媒体上の液体に主走査方向の着弾干渉が発生すると、被吐出媒体上に形成される画像には、副走査方向に沿ったすじ、むらが発生する。したがって、被吐出媒体上の液体に主走査方向の電界を与えて、この方向に粘度を高くすることで主走査方向の液体の着弾干渉を回避する。
【0021】
フルライン型の吐出ヘッドには、被吐出媒体の全幅に対応する長さに満たない短尺の吐出孔列を有する短尺ヘッドを千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、被吐出媒体の全幅に対応する長さとしてもよい。
【0022】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の画像形成装置の一態様に係り、前記吐出ヘッドは、前記吐出孔列を前記副走査方向に複数並べた2次元配置を有することを特徴とする。
【0023】
2次元配置には、副走査方向と所定の角度θ(但し、0<θ≦90度)をなす斜め方向に吐出孔を配列させる態様を含んでいてもよい。
【0024】
請求項4記載の発明は、請求項1、2又は3記載の画像形成装置の一態様に係り、前記第1の電極群のうち少なくとも一部は、前記正の電極と前記負の電極とを前記主走査方向に沿って交互に並ぶように配置される構造を有することを特徴とする。
【0025】
正の電極と負の電極とを主走査方向に沿って交互に配置させると、第1の電極群から発生させる主走査方向の電界を密にすることができる。なお、正の電極数及び負の電極数は同一数でもよいし、異なる数でもよいが、正の電極数と負の電極数とは同一数である態様が好ましい。
【0026】
また、第1の電極群と第2の電極群とを複数備える態様では、第1の電極群と第2の電極群とを等間隔(対称)に配置してもよいし、異なる間隔(非対称)に配置してもよい。
【0027】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の画像形成装置の一態様に係り、前記第1の電極群と互いに略直交するように配置され、少なくとも1対の正の電極及び負の電極を含んだ第2の電極群と、前記第2の電極群に所定の電圧を供給する第2の電圧供給手段と、前記第1の電極群へ所定の電圧を供給するか或いは前記第2の電極群へ所定の電圧を供給するかを切り換える電極群切換手段と、を備えたことを特徴とする。
【0028】
第1の電極群と互いに直交するように配置される第2の電極群を備えたので、被吐出媒体上の液体に、副走査方向の粘度が他の方向の粘度よりも高くなるように電気粘性効果を発現させることができ、副走査方向の着弾干渉が抑制される。
【0029】
また、第1の電極群へ所定の電圧を供給するか(第1の電極群から電界を発生させるか)或いは第2の電極群へ所定の電圧を供給するか(第2の電極群から電界を発生させるか)を切り換える電極群切換手段を備えたので、被吐出媒体上の液体に付与する電界の方向を切り換えて、液体に他の方向よりも強く電気粘性効果を発現させる方向を切り換えることができる。
【0030】
第2の電圧供給手段は、請求項1に記載した第1の電圧供給手段と兼用してもよい。更に、電極切換手段を電源供給手段に内蔵してもよい。
【0031】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の画像形成装置の一態様に係り、前記電極群切換手段は、前記被吐出媒体の種類及び前記被吐出媒体に形成される画像データのうち少なくとも何れか一方に応じて、前記第1の電極群へ所定の電圧を供給するか或いは前記第2の電極群へ所定の電圧を供給するかを切り換えることを特徴とする。
【0032】
被吐出媒体の種類によって液体の定着特性、浸透特性が異なるので、これに応じて電界を発生させる方向を切り換えるとよい。
【0033】
被吐出媒体の定着時間或いは浸透時間が短い (定着速度或いは浸透速度が早い)場合には第2の電極群を用いて副走査方向に電界を発生させ、定着時間或いは浸透時間が長い(定着速度或いは浸透速度が遅い)場合には第1の電極群を用いて主走査方向に電界を発生させる態様がある。
【0034】
また、搬送手段の搬送速度 (搬送制御)や、吐出ヘッドの吐出周期 (吐出制御)に応じて電界の発生方向(何れの電極群を用いるか)を切り換えてもよい。
【0035】
請求項7記載の発明は、請求項5記載の画像形成装置の一態様に係り、異なる吐出孔から吐出される液体の被吐出媒体上における着弾干渉を抑制する場合には前記第1の電極群へ所定の電圧を供給し、同一吐出孔から吐出される液体の被吐出媒体上における着弾干渉を抑制する場合には前記第2の電極群へ所定の電圧を供給するように前記電極群切換手段を制御する電極群切換制御手段を備えたことを特徴とする。
【0036】
特に、請求項3に記載されたマトリクス配置された吐出孔列を有する吐出ヘッドでは、同一吐出孔から吐出される液体間で副走査方向に着弾干渉が発生する。一方、異なるノズル (隣り合うノズル)から吐出される液体では、主走査方向に着弾干渉が発生する。
【0037】
例えば、搬送手段の搬送速度が遅い場合や高密度画像が形成される場合など、同一吐出孔から連続して液体の吐出が行われる場合には、副走査方向に液体の粘度を上げ、異なる吐出孔(隣り合う吐出孔)から連続して吐出が行われる場合には、主走査方向に液体の粘度を上げるとよい。
【0038】
なお、主走査方向及び副走査方向の両方向に対して着弾干渉が起こり得る場合には、主走査方向に液体の粘度を上げるように制御するとよい。
【0039】
請求項8記載の発明は、請求項5、6又は7記載の画像形成装置の一態様に係り、前記第2の電極群を構成する前記正の電極及び前記負の電極の平面形状は、それぞれ複数の櫛歯部を有する櫛歯形状を有し、前記第2の電極群は、前記正の電極の櫛歯部と前記負の電極の櫛歯部とを交互に配設させる構造を有することを特徴とする。
【0040】
櫛歯状に形成された正の電極及び負の電極の各櫛歯部をそれぞれ交互に配設することによって、被吐出媒体上に着弾した液体に強い強度を有する電界を付与することが可能になる。
【0041】
請求項9記載の発明は、請求項5乃至8のうち何れか1項に記載の画像形成装置の一態様に係り、前記保持手段は、前記第1の電極群と前記第2の電極群とを積層させた積層構造を有することを特徴とする。
【0042】
第1の電極群と第2の電極群とを積層させると、保持手段内に第1の電極群と第2の電極群とを効率よく配置することができる。なお、第1の電極群と第2の電極群との間の絶縁性を確保するために、所定の絶縁性能を有する非導電部材(非導電層)が備えられる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、被吐出媒体を保持する保持手段は、搬送手段の搬送方向と略平行な副走査方向に少なくとも1対の正の電極及び負の電極を有する第1の電極群を備え、該第1の電極群から発生される電界によって被吐出媒体上の液体は副走査方向と略直交する主走査方向の粘度が他の方向の粘度に比べて最も高くなるので、主走査方向の液体の着弾干渉を抑制し、被吐出媒体上には副走査方向に沿ったすじやむらなどが発生しない好ましい画像が形成される。
【0044】
また、第1の電極群と互いに略直交する方向に第2の電極群を備え、第2の電極群によって副走査方向の電界を発生させることができ、第1の電極群と第2の電極群とを切り換え可能に構成するので、被吐出媒体の種類や被吐出媒体に形成される画像に応じて液体の粘度が最も高くなる方向を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0046】
〔第1の実施形態;インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すように、このインクジェット記録装置10は、各インク色に対応して設けられた複数の印字ヘッド12K,12M,12C,12Yと、各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yに供給するインク(本例では電気粘性効果を有する紫外線硬化型インク)を貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、インク滴に紫外線光を照射して固化させる紫外線光源16と、印字ヘッド12K,12M,12C,12Yによる印字結果を読み取る印字検出部18と、記録紙(被吐出媒体)20を供給する給紙部22と、記録紙20のカールを除去するデカール処理部24と、印字ヘッド12K,12M,12C,12Yのノズル面(インク吐出面)及び紫外線光源16の光出射面に対向して配置され、記録紙20の平面性を保持しながら記録紙20を搬送する搬送部26と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部28と、を備えている。
【0047】
インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンク14K,14M,14C,14Yを有し、各タンクは所要の管路30を介して印字ヘッド12K,12M,12C,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0048】
本実施形態では描画インクとして、紫外線硬化型のインクに電気粘性(Electro Rheological)効果を持たせた電気粘性流体を用いる。電気粘性流体とは、電界を付与(電圧印加)することにより瞬間的に見かけ上の粘度が上昇する液体であり、電界のオン/オフにより粘度が可逆的に変化するものである。このような電気粘性流体には、分散型と、均一系の2種類がある。
【0049】
分散型は、電気絶縁性溶媒中に誘電体微粒子が液体内に分散させられたもので、電界が付与されない状態では、微粒子が分散されたままの状態で、粘性の低い状態であるが、電界を付与すると、分極した粒子が電界方向に繋がった鎖状構造(橋)を形成し、この橋が流体の粘度を増大させる働きをするため流体の粘度が上昇したような挙動をとるものである。分散型の電気粘性流体には、含水系と非含水系がある。
【0050】
また、均一系は、液晶などのように分子やドメインが電界方向に配向し、異方性を示すものである。本例では、この電気粘性流体の異方性を利用して液体の粘度が最も高くなる方向を制御して、液滴間に起こる合一や凝集といった干渉現象を抑制する。
【0051】
本実施形態では、紫外線硬化型のインクに電気粘性効果を持たせるようにしているが、このようなインクの製造方法としては、例えば、少なくとも放射線硬化モノマー、重合開始剤を含む液体に固体微粒子(シリカゲル、澱粉、デキストリン、カーボン、石膏、ゼラチン、アルミナ、セルロース、マイカ、ゼオライト、カオライト等)を分散させる方法や、顔料微粒子そのものを電気粘性効果の分散剤として利用する方法や、染料または顔料をマイクロカプセル化し、その表面を絶縁処理することにより電気粘性効果の分散剤として利用する方法、或いは、均一系電気粘性流体を混合させる方法などが考えられる。
【0052】
図1において、給紙部22の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジン32が示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0053】
複数種類のメディアを利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用されるメディアの種類を自動的に判別し、メディア種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0054】
給紙部22から送り出される記録紙20はマガジン32に装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部24においてマガジン32の巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム34で記録紙20に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0055】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター38が設けられており、該カッター38によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター38は、記録紙20の搬送路幅以上の長さを有する固定刃38Aと、該固定刃38Aに沿って移動する丸刃38Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃38Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃38Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター38は不要である。
【0056】
デカール処理後、カットされた記録紙20は、搬送部26へと送られる。搬送部26は、ローラ41,42間に無端状のベルト状電極ユニット(静電吸着ベルト)43が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yのノズル面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0057】
直流高圧発生器100によって直流高電圧がローラ41に印加されると、ローラ41に巻き掛けられているベルト状電極ユニット43は帯電し、静電吸着効果によって、記録紙20はベルト状電極ユニット43上に吸着保持される。
【0058】
ベルト状電極ユニット43が巻かれているローラ41,42の少なくとも一方にモータ(図1中不図示、図8中符号88として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト状電極ユニット43は図1上で反時計回り方向に駆動され、該ベルト状電極ユニット43上に保持された記録紙20は図1の右から左へと搬送される。
【0059】
なお、ベルト状電極ユニット43の内部構成については後述する。
【0060】
各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yは、当該インクジェット記録装置10が対象とする記録紙20の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録紙20の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。
【0061】
印字ヘッド12K,12M,12C,12Yは、記録紙20の送り方向に沿って上流側から黒(K)、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれの印字ヘッド12K,12M,12C,12Yが記録紙20の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
【0062】
搬送部26により記録紙20を搬送しつつ各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙20上にカラー画像を形成し得る。
【0063】
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型の印字ヘッド12K,12M,12C,12Yを色別に設ける構成によれば、記録紙搬送方向(副走査方向)について記録紙20を印字ヘッド12K,12M,12C,12Yに対して相対移動させる動作を一回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙20の全面に画像を記録することができる。このようなシングルパス方式の画像形成装置は、印字ヘッドを主走査方向に往復動作させながら描画を行うシャトルスキャン方式に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
【0064】
本例では、KMCYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせは本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。また、各色の印字ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0065】
印字ヘッド12Yの下流に配置されている紫外線光源16は、印字ヘッド12K,12M,12C,12Yと同様に記録紙20の最大紙幅に対応する長さを有し、記録紙20の搬送方向と略直交する方向に延在するように固定されている。例えば、紫外線光源16は、紫外線LED素子又は紫外線LD素子をライン状に配列させた構成から成る。かかる構成によれば、発光素子別に選択的に発光制御が可能であるため、点灯させる発光素子や発光光量を容易に調整でき、紫外線の照射エリアについて所望の照射範囲及び光量(強度)分布を実現できる。
【0066】
紫外線光源16は、上流側の印字ヘッド12K,12M,12C,12Yによる着弾インク滴の硬化を促進するための紫外線を照射する。紫外線光源16によって紫外線照射されたインク滴は、下流側工程のハンドリングによって画像劣化が起こらない程度に硬化・定着が進んでいることが好ましい。ここでいうハンドリングとは、[1] 紫外線光源16の下流側搬送工程におけるローラや搬送ガイド等と画像面との擦れ、[2] プリント集積部におけるプリント同士の擦れ、[3] 仕上がったプリントを実際に取り扱うときに種々の物体による擦れ、などを意味する。
【0067】
なお、紫外線光源16に代わり電子線など他の放射線源(輻射線源)を備え、当該放射線源によって硬化する性質を有するインクを用いる態様も可能である。
【0068】
また、本例では紫外線硬化型インクを用い、紫外線光源16によって記録紙20へインクを定着させる態様を示したが、インクの定着手段にはヒータなどの熱源(加熱手段)や空冷ファンなどの冷却手段などを用いてもよいし、浸透性を有するメディア(記録紙20)を用いる場合には、インク滴のメディアへの浸透を促進させる手段を用いてもよい。
【0069】
紫外線光源16の後段には、印字検出部18が備えられている。印字検出部18は、印字ヘッド12K,12M,12C,12Yの打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
【0070】
本例の印字検出部18は、少なくとも各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yによるインク吐出幅よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列と、からなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
【0071】
こうして、紫外線光源16、印字検出部18を通過した記録紙20(生成されたプリント物)は、ニップローラ47を介して排紙部28から排出される。なお、図1には示さないが、排紙部28にはオーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
【0072】
〔印字ヘッドの構造〕
次に、図1及び図2に示した印字ヘッド12K,12M,12C,12Yの構造について説明する。なお、インク色ごとに設けられている各印字ヘッド12K、12M、12C、12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
【0073】
図3は、印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図4はインク室ユニットの立体構造を示す断面図(図3中IV−IV線に沿う断面図)である。
【0074】
本例の印字ヘッド50は、図3及び図4に示すように、インク滴が吐出するノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等から成る複数のインク室ユニット53を主走査方向に1列並べた構造を有している。
【0075】
図4に示すように、各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。
【0076】
圧力室52の天面を構成している加圧板 (振動板)56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
【0077】
本例では、複数のノズル51が並べられた方向を主走査方向、この主走査方向と直交する方向を副走査方向とする。言い換えると、印字ヘッド50の長手方向となる記録紙20の幅方向を主走査方向とし、記録紙20の移動方向である記録紙搬送方向を副走査方向とする。
【0078】
本実施形態では、主走査方向に1列のノズル列を有するフルライン型の印字ヘッド50を示したが、印字ヘッド50のノズル配列はこれに限定されず、ノズル51を2次元状に並べた配列を適用してもよい。
【0079】
図5(a) 、(b) には、ノズル51を2次元状に配列したマトリクス配列の一例を示す。図5(a) に示す印字ヘッド50は、記録紙面上に印字されるドットピッチを高密度化するためにノズルピッチが高密度化されており、ノズル51及び圧力室52等を有するインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状に配置させた構造を有し、これにより見かけ上ノズルピッチの高密度化を達成している。
【0080】
また、図5(b) に示すように、短尺の2次元に配列された印字ヘッド50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、記録紙20の全幅に対応する長さとしてもよい。
【0081】
かかる構造を有する多数のインク室ユニット53を図6に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなる。
【0082】
すなわち、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0083】
上述したマトリクス構造を有する印字ヘッドでノズル51を駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、記録紙20の幅方向(記録紙20の搬送方向と直交する方向)に1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るラインを印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
【0084】
特に、図5(a) 、(b) に示すようなマトリクスに配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)記録紙20の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することで記録紙20の幅方向に1ラインを印字する。
【0085】
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るラインの印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
【0086】
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
〔インク供給系の説明〕
図7は、インクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。
【0087】
インク供給タンク60はインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御、インクの温度制御を行うことが好ましい。なお、図7のインク供給タンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
【0088】
図7に示したように、インク供給タンク60と印字ヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
【0089】
なお、図7には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
【0090】
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面の清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
【0091】
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
【0092】
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
【0093】
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、アクチュエータ58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
【0094】
このような状態になる前に(アクチュエータ58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)アクチュエータ58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。本インクジェット記録装置10では、予備吐出制御はインクの温度制御(詳細は後述)に連動して行われる。
【0095】
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、アクチュエータ58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合には印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
【0096】
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
【0097】
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構(ワイパー)により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル板表面)に摺動可能である。ノズル板にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル板に摺動させることでノズル板表面を拭き取り、ノズル板表面を清浄する。なお、該ブレード機構によりインク吐出面の汚れを清掃した際に、該ブレードによってノズル51内に異物が混入することを防止するために予備吐出が行われる。
【0098】
〔制御系の説明〕
図8はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0099】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0100】
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0101】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって印字後の記録紙20を乾燥させる後乾燥部等のヒータ89を駆動するドライバである。
【0102】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0103】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。
【0104】
なお、図8において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。もちろん、画像バッファメモリ82とは別に各ノズルの管理データを記録する記録手段を備えてもよい。
【0105】
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yのアクチュエータを駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0106】
プログラム格納部92には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。また、プログラム実行時には、メモリ74に記録されているシステムパラメータや動作パラメータ (設定値)などの読み出しが随時行われる。
【0107】
プログラム格納部92はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。
【0108】
印字検出部18は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙20に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
【0109】
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部18から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行う。
【0110】
また、図8では、システムコントローラ72とプリント制御部80を別に備えた態様を示したが、これらの一部又は全部を共通のプロセッサ(MPU、CPU)として構成してもよいし、メモリ74や画像バッファメモリ82などの記録手段(記憶手段)の一部又は全部を共通化してもよい。
【0111】
システムコントローラ72は直流高圧発生器100の制御(オンオフ制御等)などを行い、印字制御や記録紙20の搬送制御に合わせて、ローラ41(42)を介して、図1に示したベルト状電極ユニット43に設けられた第1の電極群120に電圧を供給する。
【0112】
なお、直流高圧発生器100から第1の電極群120に印加される電圧を可変可能の構成し、この電圧をシステムコントローラ72によって制御する態様も可能である。
【0113】
プリント制御部80は、インクの定着手段として機能する紫外線光源16の制御を行う。この制御には、紫外線光源16のオンオフ制御や、記録紙20の種類に合わせた紫外線光の光量 (紫外線強度)の制御や照射時間の制御などが含まれている。
【0114】
〔ベルト状電極ユニットの内部構造〕
次に、図1に示したベルト状電極ユニット43の内部構造について説明する。
【0115】
図9は、ベルト状電極ユニット43の平面透視図である。ベルト状電極ユニット43は、図9中破線で示す記録紙20を確実に吸着することができるように、記録紙20よりも幅広に形成されている。
【0116】
ベルト状電極ユニット43は、副走査方向に長手方向を持つ第1の電極群120を主走査方向に沿って等間隔に並べ、この第1の電極群120を記録紙20の直下に配置した構造を有している。また、第1の電極群120は正の電極122と負の電極124とを交互に並べた構造を有し、正の電極122と負の電極124との間には正の電極122及び負の電極124間の絶縁性能を確保するために非導電部材126が設けられている。
【0117】
第1の電極群120の副走査方向の長さは、記録紙20の印字可能範囲の副走査方向(搬送方向)の長さと同一又はこれ以上の長さであればよく、ベルト状電極ユニット43の副走査方向の全長にわたる長さでもよい。また、副走査方向に分割された分割構造を有していてもよい。
【0118】
なお、正の電極及び負の電極の電位は、負の電極に対して正の電極は電位が高くなる関係を有している。即ち、正の電極及び負の電極間の電位差(電圧)がインク滴に電気粘性効果を発現させ得る電位差であればよく、正の電極及び負の電極の電位が共に正電位でもよいし、負電位でもよい。もちろん、一方が0V(GND)でもよい。
【0119】
また、ベルト状電極ユニット43に備えられる正の電極122及び負の電極124は同数でもよいし、異なる数でもよい。正の電極122及び負の電極124のうち一方が1つ、もう一方が複数でもよい。但し、正の電極122の数と負の電極124の数が異なる場合には、両電極間に形成される電極に不均一が生じることがあるので、正の電極122と負の電極124とは同数であることが好ましい。
【0120】
図10は、図9に示したベルト状電極ユニット43の立体構造を示す断面図(図9中X
−X線に沿う断面図)である。
【0121】
図10に示すように、ベルト状電極ユニット43は2層から成り、図9に示した第1の電極群120(正の電極122、負の電極124)が形成される電極層140が設けられ、電極層140の上側の層には微導電層142を積層させた構造を有している。
【0122】
即ち、ベルト状電極ユニット43は記録紙20と接する最上位層には微導電層142が設けられ、微導電層142の記録紙20が置かれる面の反対側の面には、第1の電極群120及び非導電部材126が形成される電極層140が設けられている。
【0123】
電極層140のローラ41、42と接触する面は第1の電極群120がむき出しになる構造を有し、第1の電極群120は、図11に示す、ローラ41(42)のベルト状電極ユニット43と接触する面(表面)に設けられた給電部160と接触することで、直流高圧発生器100から電圧の供給を受けることができる。
【0124】
なお、電圧供給源である直流高圧発生器100と、直流高圧発生器100から供給される電圧をベルト状電極ユニット43(第1の電極群120)へ印加する電圧印加手段として機能するローラ41、42は、静電吸着によって記録紙20をベルト状電極ユニット43に保持させる静電気発生部への電圧印加手段と兼用される。
【0125】
また、給電部160は、正の電極122と接触して正の電極122と導通される正極162と、負の電極124と接触して負の電極124と導通される負極164と、を有している。
【0126】
直流高圧発生器100をローラ41(42)に内蔵すると、直流高圧発生器100と給電部160との配線構造を簡略化、配線長の短縮化をすることができ、感電等の人体への危険を防止することができると共に、該配線から放射される輻射ノイズを抑制することができる。
【0127】
直流高圧発生器100から正負の電極122、124に対して所定の電圧が印加されると、隣り合う正の電極122と負の電極124との間を結ぶようにした略円弧状の電気力線(図10中の2点破線)が形成される。
【0128】
電極層140の記録紙20側に設けられる微導電層142は、微小な導電性を有する薄層である。従って、直流高圧発生器100から正負の電極122、124に対して所定の電圧が印加されると、記録紙20上の着弾インク滴に微小電流が流れる。
【0129】
即ち、正負の電極122、124に対して所定の電圧が印加されると、記録紙20上の着弾インク滴に対して電界が印加されると共に、着弾インク滴に微導電層142を介して微小電流が流れる。このような作用は、電気粘性効果を有する着弾インク滴の粘度を上昇させるのに好適であり、これによりインク滴の合一、浸透滲み、色間滲み等の着弾干渉を防止できる。
【0130】
また電極層140は、記録紙20上の着弾インク滴に直接接触することなく、着弾インク滴の近傍に配置することができるので、より強い強度の電界を記録紙20上に印加することが可能となる。さらに、印字ヘッド12K、12M、12C、12Yと記録紙20とのクリアランスを一定に保つことができる。
【0131】
言い換えると、第1の電極群120の隣り合う電極間(隣り合う正負の電極122、124間)を橋渡すように、第1の電極群120の上部(記録紙20側)に電界を発生させ、記録紙20及び記録紙20上に着弾したインク滴自体に電界をかけるので、記録紙20上に着弾したインク滴に対して確実に電気粘性効果を発現させることができる。
【0132】
また、インク滴に印加される電界の方向に電気粘性効果が発現すること(電界の印加方向にインク滴の粘度が高くなること)が経験的に知られており、電界の印加方向と印字ヘッド50の長手方向とを一致させる(主走査方向に電界を発生させる)ことで、主走査方向にインク滴の粘度を高くすることができ、主走査方向のすじむら(副走査方向に沿ったすじむら)に対して強いシステムとすることができる。
【0133】
本実施形態では、微導電層142の電気抵抗率は10の8乗〜10の12乗Ωcmであることが好ましい。また微導電層142の厚さは、0.01mm〜1mm程度であることが好ましい。
【0134】
また微導電層142は、上述のように微小な導電性を有するので、電源オフ時等のように印字動作が行われない場合に、電極層140が帯電状態のまま維持されることを防止する。また、電極層140の記録紙20側の表面を覆っているので、正負の電極122、124を保護する役割を果たすと共に、感電等の人体に対する危害を防止する。
【0135】
記録紙20上に印加される電界の強度は、主走査方向に隣接して配置される正の電極122と、負の電極124との電極間距離W1 (図9参照)と反比例の関係にある。すなわち、直流高圧発生器100の印加電圧が等しい場合、電極間距離W1の小さい方が、記録紙20上の電界強度が大きくなる。
【0136】
従って、電極間距離W1 は小さいことが好ましく、0.1〜2mm程度であることがより好ましい。
【0137】
本例では各電極間の距離が等しい態様を示したが、各電極間距離が異なるように各電極を配置してもよい。
【0138】
また各電極122、124の電極幅W2 が狭い方が、記録紙20上に印加される電界の強度が一様となり、記録紙20上の着弾インク滴に対する電気粘性効果が大きくなる。各電極122、124の電極幅W2が広い場合、このとき印加される電界の電気力線の図10中上方に向かう鉛直成分が大きくなってしまい、記録紙20上の着弾インク滴に対する十分な電気粘性効果を得ることができない。
【0139】
したがって、電極幅W2 は狭いことが好ましく、針状形状の電極などを適用するとよい。なお、この電極幅は0.01mm〜1mm程度であることがより好ましい。
【0140】
本例では、ベルト状電極ユニット43に等しい幅の電極を備える態様を示したが、ベルト状電極ユニット43は異なる幅の電極を備えてもよい。
【0141】
記録紙20上に印加される電界の強度は、0.1kV/mm〜10kV/mmの範囲であるときが、記録紙20上の着弾インク滴に対する電気粘性効果が大きい。従って、記録紙20上に印加される電界の強度が0.1kV/mm〜10kV/mmの範囲になるように、直流高圧発生器100による印加電圧を制御することが好ましい。なお、電界強度が0.1kV/mm〜10kV/mmの範囲になるような印加電圧は数kV〜数十kVである。
【0142】
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10では、記録紙20の直下に正負の電極122、124を有する第1の電極群120を備え、記録紙20及び記録紙20上に着弾したインク自体にも第1の電極群120から発生される電界を与えるので、記録紙20上に着弾したインク滴に対して確実に電気粘性効果を発現させることができる。
【0143】
また、第1の電極群120が発生させる電界の方向と印字ヘッド50の長手方向である主走査方向とを一致させるように第1の電極群120が配設されるので、記録紙20上に形成される画像の主走査方向のすじむらに対して強いシステムとすることができる。
【0144】
〔第2の実施形態;ベルト状電極ユニットの構造〕
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態を説明する図において第1実施形態を説明する図を同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0145】
図12は、第2実施形態に係るベルト状電極ユニット200の構造を示す平面透視図である。ベルト状電極ユニット200は、第1実施形態に示したベルト状電極ユニット43の構成に加えて、第1の電極群120に略直交する主走査方向に櫛歯部を有する第2の電極群202を備えている。
【0146】
第2の電極群202に直流高圧発生器100から所定の電圧が印加されると、副走査方向と略平行な方向の電界が形成され、記録紙20上に着弾したインク滴は、副走査方向の粘度が高くなるように電気粘性効果が発現される。
【0147】
即ち、ベルト状電極ユニット200は、記録紙20の搬送方向である副走査方向に平行な第1の電極群120と、第1の電極群120に略直交する(主走査方向に平行な) 第2の電極群202と、直交する2方向に電極を持たせ、印字方法(画像形成方法)に応じて何れの電極から電界を発生させるかを切り換え可能に構成されている。
【0148】
また、図12及び図13に示すように、第2の電極群202は、正の電極204及び負の電極206から構成され、正の電極204及び負の電極206はそれぞれ主走査方向に略平行な複数の櫛歯部210、212と、を有する櫛歯状電極である。正の電極204及び負の電極206の間には非導電部材208が設けられている、なお、非導電部材208は図10に示した非導電部材126と同一部材でもよいし、異なる部材でもよい。
【0149】
更に、第2の電極群202は、正の電極204の櫛歯部 (正の櫛歯部)210と負の電極206の櫛歯部 (負の櫛歯部)212とを副走査方向に沿って交互に並べられる構造を有している。
【0150】
正の櫛歯部210は副走査方向に平行な共通電極部214で連結され、共通電極部214は第1の電極群120の形成領域に対応する領域よりも外側に配設される構造を有している。
【0151】
一方、負の櫛歯部212は副走査方向に平行な共通電極部216で連結され、共通電極部216は第1の電極群120の形成領域に対応する領域の共通電極部214と反対の外側に配設される構造を有している。
【0152】
なお、図9に示した第1の電極群120と同様に、正の櫛歯部210と、負の櫛歯部212との電極間距離W3 は0.1〜2mm程度であり、また、各櫛歯部210、212の電極幅W4 は0.01mm〜1mm程度である。
【0153】
一方、第2の電極群202は、図9に示した直流高圧発生器100より所定の電圧 (数kV〜数十kV)が供給され、記録紙20上のインク滴に対して電気粘性効果が大きい0
.1kV/mm〜10kV/mmの範囲の電界を発生させることができる。
【0154】
次に、ベルト状電極ユニット200の立体構造について説明する。図14は、ベルト状電極ユニット200の立体構造を示す断面図 (図12及び図13のXIV−XIV線に沿う断
面図)である。
【0155】
図14に示すベルト状電極ユニット200は、図10に示すベルト状電極ユニット43の最下層に第2の電極群202が形成される層を追加した構造を有している。
【0156】
即ち、図14に示すように、ベルト状電極ユニット200は記録紙20と接触する最上位層には、図10に示す微導電層142が設けられ、微導電層142の記録紙20との接触面と反対側には、図10に示す第1の電極群120が形成される第1の電極層140と、第1の電極層140の微導電層142と反対側には、非導電部材(図10中、符号126や図12中、符号208で示す部材)から成る非導電層220と、非導電層220の第1の電極層140と反対側には、図11及び図12に示す第2の電極群202が形成される第2の電極層222と、を備え、これらの4層を上から順に積層させた積層構造を有している。
【0157】
また、第1の電極群120の一部は、第2の電極群202が形成される領域を通らずに (避けて)、第2の電極群202と所定の絶縁距離を確保しながら非導電層220及び第2の電極層222を貫通するように構成されており、第2の電極層222の非導電層220と反対側の面は第1の電極群120の一部がむき出しになる構造を有している。
【0158】
一方、第2の電極層222は、第2の電極群202及び第2の電極群202の櫛歯部210、212の下側の設けられる支持部材224を有し、第2の電極層222の非導電層220と反対側の面は、正負の電極204、206の共通電極部214、216がむき出しになる構造を有している。
【0159】
なお、図15に示すように、第1の電極層140と第2の電極層222とを入れ換える構成でもよい。
【0160】
図16には、ベルト状電極ユニット200が巻かれているローラ240を示す。図16に示すローラ240は、図11に示すローラ41の構成に加えて、第2の電極群202の共通電極部214、216と接触して、第2の電極群202へ直流高圧発生器100から所定の電圧を供給する第2の給電部260、262を備えている。
【0161】
本例では、直流高圧発生器100からローラ240の各給電部への配線には、図8に示したシステムコントローラ72によって制御されるスイッチ部280が設けられ、直流高圧発生器100から第1の電極群120へ電圧を供給するか、或いは第2の電極群202へ電圧を供給するかを、システムコントローラ72の制御に応じて切り換えることができる。
【0162】
即ち、スイッチ部280を制御して実線に示すように回路を形成すると、直流高圧発生器100から第1の電極群120へ所定の電圧が供給される。一方、破線で示すように回路を形成すると、直流高圧発生器100から第2の電極群202へ所定の電圧が供給される。なお、スイッチ部280は直流高圧発生器100に内蔵してもよい。
【0163】
本例では、第1の電極群120及び第2の電極群202に対して共通の電圧供給源 (直流高圧発生器100)から電圧を供給する態様を示したが、第1の電極群120へ電圧を供給する電圧供給源と、第2の電極群202へ電圧を供給する電圧供給源とを別に備えてもよい。
【0164】
また、第1の電極群120と第2の電極群202との両方に電圧が供給されないように、スイッチ部280を構成する(又は制御する)態様が好ましい。
【0165】
〔電界の切り換え制御の説明〕
次に、図16に示したスイッチ部280による電界の発生方向の切り換え制御について詳説する。
【0166】
本インクジェット記録装置10では、記録紙20の種類 (メディア種)や、画像データに応じて、第1の電極群120と第2の電極群202とを切り換えて、記録紙20上のインク滴に主走査方向に電界を与えるか或いは、副走査方向に電界を与えるかを切り換えるようにスイッチ部280の切換制御が行われる。
【0167】
このようにして、インク滴に与える電界の方向を切り換えることで、インクに発現させる電気粘性効果によってインク滴の粘度上昇に指向性を持たせることができる。
【0168】
次に、本例における電界発生方向の切り換え制御の具体例を示す。
【0169】
あるノズルからインク滴が吐出され、このインク滴が記録紙20に着弾した後に定着或いは浸透が終わる(定着或いは浸透が進行して他のインク滴と干渉が起こらない程度になる)前に、主走査方向に隣り合うノズル(先に着弾したインク滴の着弾位置に対して、主走査方向に隣り合う着弾位置にインク滴を吐出させるノズル)からインク滴が吐出される場合には、両インク滴が重なる(少なくとも接触する)大きさを有すると、これらのインク滴間に着弾干渉が発生し、主走査方向の凝集による位置ずれなどが起こりやすくなる。
【0170】
このような場合には、第1の電極群120から電界を発生させると、主走査方向にインク滴の粘度が高くなり、主走査方向の凝集を抑制することができる。
【0171】
一方、あるノズルからインク滴が吐出され、このインク滴が記録紙20に着弾した後に定着或いは浸透が終わる前に、主走査方向に隣り合うノズルからインク滴が吐出されても、両インク滴に着弾干渉が発生しない場合には、主走査方向の凝集による位置ずれなどは起こらない。
【0172】
このような場合には、自ノズルからインク吐出が複数回行われた後に、他のノズルからインクの吐出が行われ、自ノズルの吐出されるインク滴同士が副走査方向の凝集を起こし得る場合には、第2の電極群202から電界を発生させて副走査方向にインク滴の粘度を高くすることで、副走査方向の凝集によるインク滴の位置ずれを防止する。
【0173】
また、インク滴の定着或いは浸透が比較的遅いメディア種を用いる場合には、第1の電極群120から電界を発生させ、インクの定着或いは浸透が比較的早いメディア種を用いる場合には、第2の電極群202から電界を発生させるように、インクの定着特性、浸透特性に応じて電界発生方向の切り換え制御が行われる。
【0174】
なお、図5 (a)、(b) に示すようなマトリクス配列されたノズルを有する印字ヘッド(マトリクスヘッド)では、主走査方向の距離が最も近いノズル(主走査方向に隣り合う着弾位置にインクを吐出させるノズル)は、副走査方向に所定の距離を有して配置されている。
【0175】
ノーマルモード印字のように記録紙20の搬送速度が速い場合には、先に着弾したインク滴の定着或いは浸透を待たずに、主走査方向に隣り合う着弾位置にインク滴が吐出され、主走査方向の凝集が起こり得るので、第1の電極群120を用いて主走査方向に電界を発生させて、主走査方向にインク滴の粘度を上げるように、図16に示したスイッチ部280の切り換え制御が行われる。
【0176】
例えば、図7に示すように、ノズル51がマトリクス配列された印字ヘッド50を用いて2400dpi×2400dpiの解像度で印字を行う場合、主走査方向に隣り合うドットを形成するインク滴を吐出させるノズル(例えば、図17のノズル51-11 とノズル51-12 )の副走査方向のノズル間ピッチPs =0.5mm、インクの浸透時間(記録紙20上にインクが着弾してから記録紙20内へ浸透するまでの時間)T=10msecとし、吐出周波数f=38kHz、記録紙16の搬送速度V=400mm/sのノーマルモードでは、主走査方向に隣り合うインク滴が吐出される吐出間隔 (主走査方向の吐出間隔)Δtは、Δt=Ps /V=1.25msecとなる。
【0177】
ここで、浸透時間Tと主走査方向の吐出間隔Δtは、次式〔数1〕を満たす。
【0178】
〔数1〕
T≧Δt
即ち、主走査方向に隣り合うドットを形成するインク滴において、先に着弾したインク滴が浸透する前に次のインク滴が着弾してしまう。
【0179】
一方、高画質モード印字のように記録紙20の搬送速度が遅い場合には、自ノズルから吐出された副走査方向に隣り合うインク滴間に凝集が起こり得るので、第2の電極群202を用いて副走査方向に電界を発生させて、副走査方向にインク滴に粘度を上げるように、図16に示したスイッチ部280の切り換え制御が行われる。
【0180】
例えば、図17において、V=40mm/secの高画質モードでは、Δt=12.5msecとなり、浸透時間Tと主走査方向の吐出間隔Δtは、次式〔数2〕を満たす。
【0181】
〔数2〕
T<Δt
即ち、主走査方向に隣り合うドットを形成するインク滴において、先に着弾したインク滴が浸透した後に次のインク滴が着弾する。
【0182】
なお、吐出周波数fは、2400dpiの吐出間隔(25.4/2400≒10.6μmを搬送速度400mm/secで搬送する時間)26.5μsecからf≒38kHzと一義的に求めることができる。
【0183】
したがって、上記〔数1〕を満たす場合には第1の電極群120から電界を発生させ、上記〔数2〕を満たす場合には第2の電極群202から電界を発生させるようにスイッチ部260の切換制御が行われる。
【0184】
インクの吐出周波数が早い場合には、主走査方向及び副走査方向の何れの方向にも凝集が起こり得るが、凝集による位置ずれに吐出方向の位置ずれが加算される主走査方向の凝集が、結果画像によりすじむらが発生しやすい(すじむらとして視認されやすい)ので、主走査方向の電界をインク滴に付与して主走査方向の粘度を高くし、主走査方向の凝集を防止するとよい。
【0185】
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10では、主走査方向に電界を発生させる第1の電極群120と、副走査方向に電界を発生させる第2の電極群202とを備え、直流高圧発生器100から第1の電極群120に電圧を供給するか、或いは第2の電極群202に電圧を供給するかを切り換えるスイッチ部280を備えたので、記録紙20(メディア種)の定着特性、浸透特性、記録紙20の搬送速度(搬送制御)、インク滴の吐出制御などに応じて電界発生方向を切り換えて、主走査方向及び副走査方向に発生する凝集を防止し、すじむらや混色などの画像劣化を防止した好ましい画像を得ることができる。
【0186】
なお、電界発生方向の切り換えは、画像単位(記録紙1枚ごと)でもよいし、印字単位 (画像の種類ごと)でもよい。更に、1つの画像内において電界発生方向を切り換えてもよい。
【0187】
〔変形例〕
図18には、上述した第1実施形態及び第2実施形態の変形例に係るインクジェット記録装置300を示す。なお、図18ではインクジェット記録装置300の主要部を示し、図1に示したインクジェット記録装置10の一部の構成は省略されている。また、図1と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0188】
図18に示すインクジェット記録装置300は、図1に示すインクジェット記録装置10のベルト状電極ユニット43に代わり、ローラ状電極ユニット302を備えている。ローラ状電極ユニット302は、支持軸304に軸支され、支持軸304を中心に図11中矢印の方向(反時計回り)に回動自在に構成されている。ローラ状電極ユニット302の回動方向の上流側から下流側にかけて、印字ヘッド12K,12M,12C,12Yが順番に配置され、印字ヘッド12Yの下流には紫外線光源16が設けられている。なお、印字ヘッド12Kの記録紙搬送方向上流側には、記録紙20をローラ状電極ユニット302へ導くガイドとして機能するニップローラ310が設けられている。
【0189】
図18では図示を省略するが、ローラ状電極ユニット302は、図15に示すベルト状電極ユニット43と同様に、微導電層、第1の電極層、非導電層、第2の電極層を最上位層から順に積層させた構造を有している。
【0190】
また第2の電極層に形成される電極は、図13に示す第2の電極群202と同様の櫛歯状の正の電極204及び負の電極206を有し、これらには直流高圧発生器100によって直流高電圧が印加される。
【0191】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、記録紙20上の着弾インク滴に対して印加される電界及び着弾インク滴を流れる電流は、電気粘性効果を有するインク滴の粘度を上昇させるのに好適である。これにより、着弾干渉、浸透滲み、色間滲み等を防止でき、良好な画像形成が可能となる。
【0192】
また、図18に示す変形例の他の態様を図19に示す。
【0193】
図19に示すインクジェット記録装置320は、図1に示すインクジェット記録装置10のベルト状電極ユニット43に代わり、固定設置された板状電極ユニット322上に保持された記録紙20に対して、印字ヘッド12K,12M,12C,12Y及び紫外線光源16が一体となって、図19の矢印で示すヘッド走査方向に移動しながら、記録紙20上にインク滴を着弾して画像形成を行う。画像形成された記録紙20は、紙吸着部324によって吸着され、不図示の紙排出部に移動させられる。
【0194】
図19では図示を省略するが、板状電極ユニット322は、図15に示すベルト状電極ユニット43と同様に、微導電層、第1の電極層、非導電層、第2の電極層を最上位層から順に積層させた構造を有している。
【0195】
また第2の電極層に形成される電極は、図13に示す第2の電極群202と同様の櫛歯状の正の電極204及び負の電極206を有し、これらには直流高圧発生器100によって直流高電圧が印加される。
【0196】
本変形例においても、第1及び第2の実施形態と同様に、記録紙20上の着弾インク滴に対して印加される電界及び着弾インク滴を流れる電流は、電気粘性効果を有するインク滴の粘度を上昇させるのに好適である。これにより、着弾干渉、浸透滲み、色間滲み等を防止でき、良好な画像形成が可能となる。
【0197】
本実施形態では、印字ヘッドに備えられたノズルから吐出されるインクによって記録メディア上に画像を記録するインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、被吐出媒体(ウエハ、プリント基板等)上に液体(水、処理液、レジスト等)を吐出させる液体吐出装置(ディスペンサ等)にも広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の基本構成図
【図2】図1に示したインクジェット記録装置の印字周辺の要部平面図
【図3】印字ヘッドの構造例を示す平面透視図
【図4】図3のIV−IV断面に沿った断面図
【図5】図3に示した印字ヘッドの他の構造例を示す平面透視図
【図6】図5に示す印字ヘッドのノズル配列を示す拡大図
【図7】本実施形態に係るインクジェット記録装置におけるインク供給系の構成を示す概要図
【図8】本実施形態に係るインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【図9】第1実施形態に係るベルト状電極ユニットの構造例を示す平面透視図
【図10】図9のX−X断面に沿った断面図
【図11】第1実施形態に係るローラの構成例を示す平面図
【図12】第2実施形態に係るベルト状電極ユニットの構造例を示す平面透視図
【図13】第2の電極群の構成例を示す平面図
【図14】図12のXIV−XIV断面に沿った断面図
【図15】図14に示したベルト状電極ユニットの他の態様を示す断面図
【図16】第2実施形態に係るローラの構成例を示す平面図
【図17】吐出周波数、搬送速度、インクの浸透時間の関係を説明する図
【図18】図1に示したインクジェット記録装置の変形例を示す基本構成図
【図19】図1に示したインクジェット記録装置の他の変形例を示す基本構成図
【符号の説明】
【0199】
10,300,320…インクジェット記録装置、12K,12M,12C,12Y,50…印字ヘッド、41…ローラ、43…ベルト状電極ユニット、72…システムコントローラ、100…直流高圧発生器、120,122,124…第1の電極群、142…微導電層、160,260…給電部、202,204,206…第2の電極群、280…スイッチ部
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に係り、特に電気粘性効果を発現する液体を用いる画像形成装置における画像の形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像やドキュメント等のデータ出力装置としてインクジェット記録装置が普及している。インクジェット記録装置は印字ヘッドに備えられたノズルをデータに応じて駆動させ、該ノズルから吐出されるインクによって記録紙などのメディア上に画像(データ)を形成することができる。
【0003】
画像内にすじやむらなどが発生したり、また、カラー画像を形成する場合に各色のインクがメディア上で混ざり合う混色が発生したりすると、画像品質が著しく低下する。このような印字画像の品質低下を抑制するために、電界を作用させることで粘度が大きくなる電気粘性効果(ER効果)を持ったインクを用いて、メディア上に画像を形成する方法が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載された画像形成方法では、電気粘性効果を有する記録体に電気粘性流体を用い、記録体を記録部材に付着させた後に該記録部材に電界を印加することで、記録体の記録部材への浸透を防止し、にじみや記録濃度の低下などを防止するように構成されている。
【0005】
特許文献2に記載された記録装置では、記録ヘッドにより電気粘性効果を有する記録液を電界が形成された中間転写媒体に付着させ、中間転写媒体上で記録液の粘度を上昇させてドットの過剰な広がりや混色を防ぎ、記録液が乾燥してその粘度が大きくなった状態、又は記録液の電気粘性効果により記録液の粘度が大きくなった状態で中間転写媒体から被転写媒体への転写が行われるように構成されている。
【0006】
また、特許文献3に記載された記録装置では、記録ヘッドにより電気粘性効果を有する記録液滴を電界が印加された被転写媒体上に付着させて被転写媒体上での記録液の粘度を大きくし、この記録液によって形成されたドットのひげ、にじみ、混色を防ぎ、記録液の乾燥及び被転写媒体への浸透が進み、にじみ及び混色が起こらなくなるまで電界を維持するように構成されている。
【特許文献1】特開平2−212149号公報
【特許文献2】特開平5−4342号公報
【特許文献3】特開平5−4343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された画像形成方法、特許文献2及び特許文献3に記載された記録装置では、記録部材、中間転写媒体、被転写媒体に対して電界を付与することにより、記録体、記録液の電気粘性効果を発現させるものであり、このような方式では記録体、記録液自体に電界が発生せず、記録体及び記録液に効果的な電気粘性効果を発現させることができないと考えられる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、メディア上の電気粘性効果を有する液体に対して確実に電気粘性効果を発現させ、被吐出媒体上におる隣接する液滴同士が合一し、所定の着弾位置よりドット形成位置がずれたり、ドットの形状が崩れたりする着弾干渉を防止し、むらや混色などのない好ましい画像を形成する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために請求項1に係る発明は、被吐出媒体へ電気粘性効果を有する液体を吐出させて、前記被吐出媒体に画像を形成する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドの液体吐出面と対向する面に前記被吐出媒体を保持する保持手段と、前記吐出ヘッドと前記保持手段に保持される前記被吐出媒体とを相対的に搬送させる搬送手段と、前記保持手段に備えられ、前記搬送手段の搬送方向と略平行方向である副走査方向に長手方向を有し、前記副走査方向と略直交する主走査方向に並ぶように配置され、少なくとも一対の正の電極及び負の電極を含んだ第1の電極群と、前記第1の電極群に所定の電圧を供給する電圧供給手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、吐出ヘッドから液体が吐出される際に被吐出媒体を保持する保持手段には、搬送手段の搬送方向と略平行な副走査方向に長手方向を有する第1の電極群が備えられ、吐出ヘッドから吐出された電気粘性効果を有する液体に第1の電極群から副走査方向と略直交する方向(主走査方向)の電界が与えられる。
【0011】
一般に、電気粘性効果を有する液体では与えられる電界の方向の粘度が他の方向の粘度に比べて最も大きくなる性質を有しており、該液体には主走査方向の電界を与えられるので、主走査方向の粘度が他の方向の粘度よりも高くなり、主走査方向に発生する液体の着弾干渉が抑制され、被吐出媒体上には、むらなどを回避した好ましい画像を形成することができる。
【0012】
液体にはインク、レジスト、薬液、処理液など、吐出ヘッドが有する吐出孔(ノズル)から液滴化して吐出させることができる様々な液体を含んでいる。
【0013】
吐出ヘッドには、被吐出媒体の全幅に対応する長さにわたって吐出孔が並べられたフルライン型吐出ヘッドや、被吐出媒体の全幅に対応する長さよりも短い長さにわたって吐出孔が並べられた短尺ヘッドを被吐出媒体の幅方向(主走査方向)に走査させながら被吐出媒体上に液体を吐出させるシリアル型吐出ヘッド(シャトルスキャン型記録ヘッド)などがある。
【0014】
被吐出媒体は、吐出ヘッドから吐出される液体を受ける媒体であり、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、その他材質や形状を問わず様々な媒体を含み、記録媒体、記録メディア、印字媒体、被画像形成媒体などと呼ばれるものを含む。
【0015】
なお、ここでいう画像には、絵や写真だけでなく、文字、線画、ドットなどを含んだ広い意味での画像を示し、基板上に形成される配線パターンなどを含んでいてもよい。
【0016】
また、正の電極、負の電極はそれぞれの相対的な関係を表しており、正の電極の電位が負の電極の電位に比べて相対的に大きくなることを意味する。
【0017】
なお、第1の電極群と被吐出媒体との間に所定の導電性能(第1の電極群から発生された電界の少なくとも一部を透過させる性能)及び所定の絶縁性能を有する微導電部材(微導電層)を備える態様が好ましい。
【0018】
保持手段には、ベルト形状及びドラム形状、板状形状など様々な形状の部材を適用することができる。
【0019】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置の一態様に係り、前記吐出ヘッドは、前記被吐出媒体の画像形成可能幅に対応した長さの吐出孔列を少なくとも1列有するフルラインヘッドを含み、前記搬送手段の搬送方向と略平行な副走査方向に前記吐出ヘッドと前記被吐出媒体上とを1回だけ走査させて、前記被吐出媒体上に液体を吐出させるシングルパス駆動を行うことを特徴とする。
【0020】
フルライン型の吐出ヘッドを用いてシングルパス駆動によって画像を形成する場合には、被吐出媒体上の液体に主走査方向の着弾干渉が発生すると、被吐出媒体上に形成される画像には、副走査方向に沿ったすじ、むらが発生する。したがって、被吐出媒体上の液体に主走査方向の電界を与えて、この方向に粘度を高くすることで主走査方向の液体の着弾干渉を回避する。
【0021】
フルライン型の吐出ヘッドには、被吐出媒体の全幅に対応する長さに満たない短尺の吐出孔列を有する短尺ヘッドを千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、被吐出媒体の全幅に対応する長さとしてもよい。
【0022】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の画像形成装置の一態様に係り、前記吐出ヘッドは、前記吐出孔列を前記副走査方向に複数並べた2次元配置を有することを特徴とする。
【0023】
2次元配置には、副走査方向と所定の角度θ(但し、0<θ≦90度)をなす斜め方向に吐出孔を配列させる態様を含んでいてもよい。
【0024】
請求項4記載の発明は、請求項1、2又は3記載の画像形成装置の一態様に係り、前記第1の電極群のうち少なくとも一部は、前記正の電極と前記負の電極とを前記主走査方向に沿って交互に並ぶように配置される構造を有することを特徴とする。
【0025】
正の電極と負の電極とを主走査方向に沿って交互に配置させると、第1の電極群から発生させる主走査方向の電界を密にすることができる。なお、正の電極数及び負の電極数は同一数でもよいし、異なる数でもよいが、正の電極数と負の電極数とは同一数である態様が好ましい。
【0026】
また、第1の電極群と第2の電極群とを複数備える態様では、第1の電極群と第2の電極群とを等間隔(対称)に配置してもよいし、異なる間隔(非対称)に配置してもよい。
【0027】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の画像形成装置の一態様に係り、前記第1の電極群と互いに略直交するように配置され、少なくとも1対の正の電極及び負の電極を含んだ第2の電極群と、前記第2の電極群に所定の電圧を供給する第2の電圧供給手段と、前記第1の電極群へ所定の電圧を供給するか或いは前記第2の電極群へ所定の電圧を供給するかを切り換える電極群切換手段と、を備えたことを特徴とする。
【0028】
第1の電極群と互いに直交するように配置される第2の電極群を備えたので、被吐出媒体上の液体に、副走査方向の粘度が他の方向の粘度よりも高くなるように電気粘性効果を発現させることができ、副走査方向の着弾干渉が抑制される。
【0029】
また、第1の電極群へ所定の電圧を供給するか(第1の電極群から電界を発生させるか)或いは第2の電極群へ所定の電圧を供給するか(第2の電極群から電界を発生させるか)を切り換える電極群切換手段を備えたので、被吐出媒体上の液体に付与する電界の方向を切り換えて、液体に他の方向よりも強く電気粘性効果を発現させる方向を切り換えることができる。
【0030】
第2の電圧供給手段は、請求項1に記載した第1の電圧供給手段と兼用してもよい。更に、電極切換手段を電源供給手段に内蔵してもよい。
【0031】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の画像形成装置の一態様に係り、前記電極群切換手段は、前記被吐出媒体の種類及び前記被吐出媒体に形成される画像データのうち少なくとも何れか一方に応じて、前記第1の電極群へ所定の電圧を供給するか或いは前記第2の電極群へ所定の電圧を供給するかを切り換えることを特徴とする。
【0032】
被吐出媒体の種類によって液体の定着特性、浸透特性が異なるので、これに応じて電界を発生させる方向を切り換えるとよい。
【0033】
被吐出媒体の定着時間或いは浸透時間が短い (定着速度或いは浸透速度が早い)場合には第2の電極群を用いて副走査方向に電界を発生させ、定着時間或いは浸透時間が長い(定着速度或いは浸透速度が遅い)場合には第1の電極群を用いて主走査方向に電界を発生させる態様がある。
【0034】
また、搬送手段の搬送速度 (搬送制御)や、吐出ヘッドの吐出周期 (吐出制御)に応じて電界の発生方向(何れの電極群を用いるか)を切り換えてもよい。
【0035】
請求項7記載の発明は、請求項5記載の画像形成装置の一態様に係り、異なる吐出孔から吐出される液体の被吐出媒体上における着弾干渉を抑制する場合には前記第1の電極群へ所定の電圧を供給し、同一吐出孔から吐出される液体の被吐出媒体上における着弾干渉を抑制する場合には前記第2の電極群へ所定の電圧を供給するように前記電極群切換手段を制御する電極群切換制御手段を備えたことを特徴とする。
【0036】
特に、請求項3に記載されたマトリクス配置された吐出孔列を有する吐出ヘッドでは、同一吐出孔から吐出される液体間で副走査方向に着弾干渉が発生する。一方、異なるノズル (隣り合うノズル)から吐出される液体では、主走査方向に着弾干渉が発生する。
【0037】
例えば、搬送手段の搬送速度が遅い場合や高密度画像が形成される場合など、同一吐出孔から連続して液体の吐出が行われる場合には、副走査方向に液体の粘度を上げ、異なる吐出孔(隣り合う吐出孔)から連続して吐出が行われる場合には、主走査方向に液体の粘度を上げるとよい。
【0038】
なお、主走査方向及び副走査方向の両方向に対して着弾干渉が起こり得る場合には、主走査方向に液体の粘度を上げるように制御するとよい。
【0039】
請求項8記載の発明は、請求項5、6又は7記載の画像形成装置の一態様に係り、前記第2の電極群を構成する前記正の電極及び前記負の電極の平面形状は、それぞれ複数の櫛歯部を有する櫛歯形状を有し、前記第2の電極群は、前記正の電極の櫛歯部と前記負の電極の櫛歯部とを交互に配設させる構造を有することを特徴とする。
【0040】
櫛歯状に形成された正の電極及び負の電極の各櫛歯部をそれぞれ交互に配設することによって、被吐出媒体上に着弾した液体に強い強度を有する電界を付与することが可能になる。
【0041】
請求項9記載の発明は、請求項5乃至8のうち何れか1項に記載の画像形成装置の一態様に係り、前記保持手段は、前記第1の電極群と前記第2の電極群とを積層させた積層構造を有することを特徴とする。
【0042】
第1の電極群と第2の電極群とを積層させると、保持手段内に第1の電極群と第2の電極群とを効率よく配置することができる。なお、第1の電極群と第2の電極群との間の絶縁性を確保するために、所定の絶縁性能を有する非導電部材(非導電層)が備えられる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、被吐出媒体を保持する保持手段は、搬送手段の搬送方向と略平行な副走査方向に少なくとも1対の正の電極及び負の電極を有する第1の電極群を備え、該第1の電極群から発生される電界によって被吐出媒体上の液体は副走査方向と略直交する主走査方向の粘度が他の方向の粘度に比べて最も高くなるので、主走査方向の液体の着弾干渉を抑制し、被吐出媒体上には副走査方向に沿ったすじやむらなどが発生しない好ましい画像が形成される。
【0044】
また、第1の電極群と互いに略直交する方向に第2の電極群を備え、第2の電極群によって副走査方向の電界を発生させることができ、第1の電極群と第2の電極群とを切り換え可能に構成するので、被吐出媒体の種類や被吐出媒体に形成される画像に応じて液体の粘度が最も高くなる方向を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0046】
〔第1の実施形態;インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すように、このインクジェット記録装置10は、各インク色に対応して設けられた複数の印字ヘッド12K,12M,12C,12Yと、各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yに供給するインク(本例では電気粘性効果を有する紫外線硬化型インク)を貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、インク滴に紫外線光を照射して固化させる紫外線光源16と、印字ヘッド12K,12M,12C,12Yによる印字結果を読み取る印字検出部18と、記録紙(被吐出媒体)20を供給する給紙部22と、記録紙20のカールを除去するデカール処理部24と、印字ヘッド12K,12M,12C,12Yのノズル面(インク吐出面)及び紫外線光源16の光出射面に対向して配置され、記録紙20の平面性を保持しながら記録紙20を搬送する搬送部26と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部28と、を備えている。
【0047】
インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンク14K,14M,14C,14Yを有し、各タンクは所要の管路30を介して印字ヘッド12K,12M,12C,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0048】
本実施形態では描画インクとして、紫外線硬化型のインクに電気粘性(Electro Rheological)効果を持たせた電気粘性流体を用いる。電気粘性流体とは、電界を付与(電圧印加)することにより瞬間的に見かけ上の粘度が上昇する液体であり、電界のオン/オフにより粘度が可逆的に変化するものである。このような電気粘性流体には、分散型と、均一系の2種類がある。
【0049】
分散型は、電気絶縁性溶媒中に誘電体微粒子が液体内に分散させられたもので、電界が付与されない状態では、微粒子が分散されたままの状態で、粘性の低い状態であるが、電界を付与すると、分極した粒子が電界方向に繋がった鎖状構造(橋)を形成し、この橋が流体の粘度を増大させる働きをするため流体の粘度が上昇したような挙動をとるものである。分散型の電気粘性流体には、含水系と非含水系がある。
【0050】
また、均一系は、液晶などのように分子やドメインが電界方向に配向し、異方性を示すものである。本例では、この電気粘性流体の異方性を利用して液体の粘度が最も高くなる方向を制御して、液滴間に起こる合一や凝集といった干渉現象を抑制する。
【0051】
本実施形態では、紫外線硬化型のインクに電気粘性効果を持たせるようにしているが、このようなインクの製造方法としては、例えば、少なくとも放射線硬化モノマー、重合開始剤を含む液体に固体微粒子(シリカゲル、澱粉、デキストリン、カーボン、石膏、ゼラチン、アルミナ、セルロース、マイカ、ゼオライト、カオライト等)を分散させる方法や、顔料微粒子そのものを電気粘性効果の分散剤として利用する方法や、染料または顔料をマイクロカプセル化し、その表面を絶縁処理することにより電気粘性効果の分散剤として利用する方法、或いは、均一系電気粘性流体を混合させる方法などが考えられる。
【0052】
図1において、給紙部22の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジン32が示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0053】
複数種類のメディアを利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用されるメディアの種類を自動的に判別し、メディア種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0054】
給紙部22から送り出される記録紙20はマガジン32に装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部24においてマガジン32の巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム34で記録紙20に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0055】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター38が設けられており、該カッター38によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター38は、記録紙20の搬送路幅以上の長さを有する固定刃38Aと、該固定刃38Aに沿って移動する丸刃38Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃38Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃38Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター38は不要である。
【0056】
デカール処理後、カットされた記録紙20は、搬送部26へと送られる。搬送部26は、ローラ41,42間に無端状のベルト状電極ユニット(静電吸着ベルト)43が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yのノズル面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0057】
直流高圧発生器100によって直流高電圧がローラ41に印加されると、ローラ41に巻き掛けられているベルト状電極ユニット43は帯電し、静電吸着効果によって、記録紙20はベルト状電極ユニット43上に吸着保持される。
【0058】
ベルト状電極ユニット43が巻かれているローラ41,42の少なくとも一方にモータ(図1中不図示、図8中符号88として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト状電極ユニット43は図1上で反時計回り方向に駆動され、該ベルト状電極ユニット43上に保持された記録紙20は図1の右から左へと搬送される。
【0059】
なお、ベルト状電極ユニット43の内部構成については後述する。
【0060】
各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yは、当該インクジェット記録装置10が対象とする記録紙20の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録紙20の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。
【0061】
印字ヘッド12K,12M,12C,12Yは、記録紙20の送り方向に沿って上流側から黒(K)、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれの印字ヘッド12K,12M,12C,12Yが記録紙20の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
【0062】
搬送部26により記録紙20を搬送しつつ各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙20上にカラー画像を形成し得る。
【0063】
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型の印字ヘッド12K,12M,12C,12Yを色別に設ける構成によれば、記録紙搬送方向(副走査方向)について記録紙20を印字ヘッド12K,12M,12C,12Yに対して相対移動させる動作を一回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙20の全面に画像を記録することができる。このようなシングルパス方式の画像形成装置は、印字ヘッドを主走査方向に往復動作させながら描画を行うシャトルスキャン方式に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
【0064】
本例では、KMCYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせは本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。また、各色の印字ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0065】
印字ヘッド12Yの下流に配置されている紫外線光源16は、印字ヘッド12K,12M,12C,12Yと同様に記録紙20の最大紙幅に対応する長さを有し、記録紙20の搬送方向と略直交する方向に延在するように固定されている。例えば、紫外線光源16は、紫外線LED素子又は紫外線LD素子をライン状に配列させた構成から成る。かかる構成によれば、発光素子別に選択的に発光制御が可能であるため、点灯させる発光素子や発光光量を容易に調整でき、紫外線の照射エリアについて所望の照射範囲及び光量(強度)分布を実現できる。
【0066】
紫外線光源16は、上流側の印字ヘッド12K,12M,12C,12Yによる着弾インク滴の硬化を促進するための紫外線を照射する。紫外線光源16によって紫外線照射されたインク滴は、下流側工程のハンドリングによって画像劣化が起こらない程度に硬化・定着が進んでいることが好ましい。ここでいうハンドリングとは、[1] 紫外線光源16の下流側搬送工程におけるローラや搬送ガイド等と画像面との擦れ、[2] プリント集積部におけるプリント同士の擦れ、[3] 仕上がったプリントを実際に取り扱うときに種々の物体による擦れ、などを意味する。
【0067】
なお、紫外線光源16に代わり電子線など他の放射線源(輻射線源)を備え、当該放射線源によって硬化する性質を有するインクを用いる態様も可能である。
【0068】
また、本例では紫外線硬化型インクを用い、紫外線光源16によって記録紙20へインクを定着させる態様を示したが、インクの定着手段にはヒータなどの熱源(加熱手段)や空冷ファンなどの冷却手段などを用いてもよいし、浸透性を有するメディア(記録紙20)を用いる場合には、インク滴のメディアへの浸透を促進させる手段を用いてもよい。
【0069】
紫外線光源16の後段には、印字検出部18が備えられている。印字検出部18は、印字ヘッド12K,12M,12C,12Yの打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
【0070】
本例の印字検出部18は、少なくとも各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yによるインク吐出幅よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列と、からなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
【0071】
こうして、紫外線光源16、印字検出部18を通過した記録紙20(生成されたプリント物)は、ニップローラ47を介して排紙部28から排出される。なお、図1には示さないが、排紙部28にはオーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
【0072】
〔印字ヘッドの構造〕
次に、図1及び図2に示した印字ヘッド12K,12M,12C,12Yの構造について説明する。なお、インク色ごとに設けられている各印字ヘッド12K、12M、12C、12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
【0073】
図3は、印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図4はインク室ユニットの立体構造を示す断面図(図3中IV−IV線に沿う断面図)である。
【0074】
本例の印字ヘッド50は、図3及び図4に示すように、インク滴が吐出するノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等から成る複数のインク室ユニット53を主走査方向に1列並べた構造を有している。
【0075】
図4に示すように、各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。
【0076】
圧力室52の天面を構成している加圧板 (振動板)56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
【0077】
本例では、複数のノズル51が並べられた方向を主走査方向、この主走査方向と直交する方向を副走査方向とする。言い換えると、印字ヘッド50の長手方向となる記録紙20の幅方向を主走査方向とし、記録紙20の移動方向である記録紙搬送方向を副走査方向とする。
【0078】
本実施形態では、主走査方向に1列のノズル列を有するフルライン型の印字ヘッド50を示したが、印字ヘッド50のノズル配列はこれに限定されず、ノズル51を2次元状に並べた配列を適用してもよい。
【0079】
図5(a) 、(b) には、ノズル51を2次元状に配列したマトリクス配列の一例を示す。図5(a) に示す印字ヘッド50は、記録紙面上に印字されるドットピッチを高密度化するためにノズルピッチが高密度化されており、ノズル51及び圧力室52等を有するインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状に配置させた構造を有し、これにより見かけ上ノズルピッチの高密度化を達成している。
【0080】
また、図5(b) に示すように、短尺の2次元に配列された印字ヘッド50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、記録紙20の全幅に対応する長さとしてもよい。
【0081】
かかる構造を有する多数のインク室ユニット53を図6に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなる。
【0082】
すなわち、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0083】
上述したマトリクス構造を有する印字ヘッドでノズル51を駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、記録紙20の幅方向(記録紙20の搬送方向と直交する方向)に1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るラインを印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
【0084】
特に、図5(a) 、(b) に示すようなマトリクスに配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)記録紙20の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することで記録紙20の幅方向に1ラインを印字する。
【0085】
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るラインの印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
【0086】
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
〔インク供給系の説明〕
図7は、インクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。
【0087】
インク供給タンク60はインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御、インクの温度制御を行うことが好ましい。なお、図7のインク供給タンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
【0088】
図7に示したように、インク供給タンク60と印字ヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
【0089】
なお、図7には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
【0090】
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面の清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
【0091】
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
【0092】
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
【0093】
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、アクチュエータ58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
【0094】
このような状態になる前に(アクチュエータ58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)アクチュエータ58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。本インクジェット記録装置10では、予備吐出制御はインクの温度制御(詳細は後述)に連動して行われる。
【0095】
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、アクチュエータ58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合には印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
【0096】
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
【0097】
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構(ワイパー)により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル板表面)に摺動可能である。ノズル板にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル板に摺動させることでノズル板表面を拭き取り、ノズル板表面を清浄する。なお、該ブレード機構によりインク吐出面の汚れを清掃した際に、該ブレードによってノズル51内に異物が混入することを防止するために予備吐出が行われる。
【0098】
〔制御系の説明〕
図8はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0099】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0100】
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0101】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって印字後の記録紙20を乾燥させる後乾燥部等のヒータ89を駆動するドライバである。
【0102】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0103】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。
【0104】
なお、図8において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。もちろん、画像バッファメモリ82とは別に各ノズルの管理データを記録する記録手段を備えてもよい。
【0105】
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yのアクチュエータを駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0106】
プログラム格納部92には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。また、プログラム実行時には、メモリ74に記録されているシステムパラメータや動作パラメータ (設定値)などの読み出しが随時行われる。
【0107】
プログラム格納部92はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。
【0108】
印字検出部18は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙20に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
【0109】
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部18から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行う。
【0110】
また、図8では、システムコントローラ72とプリント制御部80を別に備えた態様を示したが、これらの一部又は全部を共通のプロセッサ(MPU、CPU)として構成してもよいし、メモリ74や画像バッファメモリ82などの記録手段(記憶手段)の一部又は全部を共通化してもよい。
【0111】
システムコントローラ72は直流高圧発生器100の制御(オンオフ制御等)などを行い、印字制御や記録紙20の搬送制御に合わせて、ローラ41(42)を介して、図1に示したベルト状電極ユニット43に設けられた第1の電極群120に電圧を供給する。
【0112】
なお、直流高圧発生器100から第1の電極群120に印加される電圧を可変可能の構成し、この電圧をシステムコントローラ72によって制御する態様も可能である。
【0113】
プリント制御部80は、インクの定着手段として機能する紫外線光源16の制御を行う。この制御には、紫外線光源16のオンオフ制御や、記録紙20の種類に合わせた紫外線光の光量 (紫外線強度)の制御や照射時間の制御などが含まれている。
【0114】
〔ベルト状電極ユニットの内部構造〕
次に、図1に示したベルト状電極ユニット43の内部構造について説明する。
【0115】
図9は、ベルト状電極ユニット43の平面透視図である。ベルト状電極ユニット43は、図9中破線で示す記録紙20を確実に吸着することができるように、記録紙20よりも幅広に形成されている。
【0116】
ベルト状電極ユニット43は、副走査方向に長手方向を持つ第1の電極群120を主走査方向に沿って等間隔に並べ、この第1の電極群120を記録紙20の直下に配置した構造を有している。また、第1の電極群120は正の電極122と負の電極124とを交互に並べた構造を有し、正の電極122と負の電極124との間には正の電極122及び負の電極124間の絶縁性能を確保するために非導電部材126が設けられている。
【0117】
第1の電極群120の副走査方向の長さは、記録紙20の印字可能範囲の副走査方向(搬送方向)の長さと同一又はこれ以上の長さであればよく、ベルト状電極ユニット43の副走査方向の全長にわたる長さでもよい。また、副走査方向に分割された分割構造を有していてもよい。
【0118】
なお、正の電極及び負の電極の電位は、負の電極に対して正の電極は電位が高くなる関係を有している。即ち、正の電極及び負の電極間の電位差(電圧)がインク滴に電気粘性効果を発現させ得る電位差であればよく、正の電極及び負の電極の電位が共に正電位でもよいし、負電位でもよい。もちろん、一方が0V(GND)でもよい。
【0119】
また、ベルト状電極ユニット43に備えられる正の電極122及び負の電極124は同数でもよいし、異なる数でもよい。正の電極122及び負の電極124のうち一方が1つ、もう一方が複数でもよい。但し、正の電極122の数と負の電極124の数が異なる場合には、両電極間に形成される電極に不均一が生じることがあるので、正の電極122と負の電極124とは同数であることが好ましい。
【0120】
図10は、図9に示したベルト状電極ユニット43の立体構造を示す断面図(図9中X
−X線に沿う断面図)である。
【0121】
図10に示すように、ベルト状電極ユニット43は2層から成り、図9に示した第1の電極群120(正の電極122、負の電極124)が形成される電極層140が設けられ、電極層140の上側の層には微導電層142を積層させた構造を有している。
【0122】
即ち、ベルト状電極ユニット43は記録紙20と接する最上位層には微導電層142が設けられ、微導電層142の記録紙20が置かれる面の反対側の面には、第1の電極群120及び非導電部材126が形成される電極層140が設けられている。
【0123】
電極層140のローラ41、42と接触する面は第1の電極群120がむき出しになる構造を有し、第1の電極群120は、図11に示す、ローラ41(42)のベルト状電極ユニット43と接触する面(表面)に設けられた給電部160と接触することで、直流高圧発生器100から電圧の供給を受けることができる。
【0124】
なお、電圧供給源である直流高圧発生器100と、直流高圧発生器100から供給される電圧をベルト状電極ユニット43(第1の電極群120)へ印加する電圧印加手段として機能するローラ41、42は、静電吸着によって記録紙20をベルト状電極ユニット43に保持させる静電気発生部への電圧印加手段と兼用される。
【0125】
また、給電部160は、正の電極122と接触して正の電極122と導通される正極162と、負の電極124と接触して負の電極124と導通される負極164と、を有している。
【0126】
直流高圧発生器100をローラ41(42)に内蔵すると、直流高圧発生器100と給電部160との配線構造を簡略化、配線長の短縮化をすることができ、感電等の人体への危険を防止することができると共に、該配線から放射される輻射ノイズを抑制することができる。
【0127】
直流高圧発生器100から正負の電極122、124に対して所定の電圧が印加されると、隣り合う正の電極122と負の電極124との間を結ぶようにした略円弧状の電気力線(図10中の2点破線)が形成される。
【0128】
電極層140の記録紙20側に設けられる微導電層142は、微小な導電性を有する薄層である。従って、直流高圧発生器100から正負の電極122、124に対して所定の電圧が印加されると、記録紙20上の着弾インク滴に微小電流が流れる。
【0129】
即ち、正負の電極122、124に対して所定の電圧が印加されると、記録紙20上の着弾インク滴に対して電界が印加されると共に、着弾インク滴に微導電層142を介して微小電流が流れる。このような作用は、電気粘性効果を有する着弾インク滴の粘度を上昇させるのに好適であり、これによりインク滴の合一、浸透滲み、色間滲み等の着弾干渉を防止できる。
【0130】
また電極層140は、記録紙20上の着弾インク滴に直接接触することなく、着弾インク滴の近傍に配置することができるので、より強い強度の電界を記録紙20上に印加することが可能となる。さらに、印字ヘッド12K、12M、12C、12Yと記録紙20とのクリアランスを一定に保つことができる。
【0131】
言い換えると、第1の電極群120の隣り合う電極間(隣り合う正負の電極122、124間)を橋渡すように、第1の電極群120の上部(記録紙20側)に電界を発生させ、記録紙20及び記録紙20上に着弾したインク滴自体に電界をかけるので、記録紙20上に着弾したインク滴に対して確実に電気粘性効果を発現させることができる。
【0132】
また、インク滴に印加される電界の方向に電気粘性効果が発現すること(電界の印加方向にインク滴の粘度が高くなること)が経験的に知られており、電界の印加方向と印字ヘッド50の長手方向とを一致させる(主走査方向に電界を発生させる)ことで、主走査方向にインク滴の粘度を高くすることができ、主走査方向のすじむら(副走査方向に沿ったすじむら)に対して強いシステムとすることができる。
【0133】
本実施形態では、微導電層142の電気抵抗率は10の8乗〜10の12乗Ωcmであることが好ましい。また微導電層142の厚さは、0.01mm〜1mm程度であることが好ましい。
【0134】
また微導電層142は、上述のように微小な導電性を有するので、電源オフ時等のように印字動作が行われない場合に、電極層140が帯電状態のまま維持されることを防止する。また、電極層140の記録紙20側の表面を覆っているので、正負の電極122、124を保護する役割を果たすと共に、感電等の人体に対する危害を防止する。
【0135】
記録紙20上に印加される電界の強度は、主走査方向に隣接して配置される正の電極122と、負の電極124との電極間距離W1 (図9参照)と反比例の関係にある。すなわち、直流高圧発生器100の印加電圧が等しい場合、電極間距離W1の小さい方が、記録紙20上の電界強度が大きくなる。
【0136】
従って、電極間距離W1 は小さいことが好ましく、0.1〜2mm程度であることがより好ましい。
【0137】
本例では各電極間の距離が等しい態様を示したが、各電極間距離が異なるように各電極を配置してもよい。
【0138】
また各電極122、124の電極幅W2 が狭い方が、記録紙20上に印加される電界の強度が一様となり、記録紙20上の着弾インク滴に対する電気粘性効果が大きくなる。各電極122、124の電極幅W2が広い場合、このとき印加される電界の電気力線の図10中上方に向かう鉛直成分が大きくなってしまい、記録紙20上の着弾インク滴に対する十分な電気粘性効果を得ることができない。
【0139】
したがって、電極幅W2 は狭いことが好ましく、針状形状の電極などを適用するとよい。なお、この電極幅は0.01mm〜1mm程度であることがより好ましい。
【0140】
本例では、ベルト状電極ユニット43に等しい幅の電極を備える態様を示したが、ベルト状電極ユニット43は異なる幅の電極を備えてもよい。
【0141】
記録紙20上に印加される電界の強度は、0.1kV/mm〜10kV/mmの範囲であるときが、記録紙20上の着弾インク滴に対する電気粘性効果が大きい。従って、記録紙20上に印加される電界の強度が0.1kV/mm〜10kV/mmの範囲になるように、直流高圧発生器100による印加電圧を制御することが好ましい。なお、電界強度が0.1kV/mm〜10kV/mmの範囲になるような印加電圧は数kV〜数十kVである。
【0142】
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10では、記録紙20の直下に正負の電極122、124を有する第1の電極群120を備え、記録紙20及び記録紙20上に着弾したインク自体にも第1の電極群120から発生される電界を与えるので、記録紙20上に着弾したインク滴に対して確実に電気粘性効果を発現させることができる。
【0143】
また、第1の電極群120が発生させる電界の方向と印字ヘッド50の長手方向である主走査方向とを一致させるように第1の電極群120が配設されるので、記録紙20上に形成される画像の主走査方向のすじむらに対して強いシステムとすることができる。
【0144】
〔第2の実施形態;ベルト状電極ユニットの構造〕
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態を説明する図において第1実施形態を説明する図を同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0145】
図12は、第2実施形態に係るベルト状電極ユニット200の構造を示す平面透視図である。ベルト状電極ユニット200は、第1実施形態に示したベルト状電極ユニット43の構成に加えて、第1の電極群120に略直交する主走査方向に櫛歯部を有する第2の電極群202を備えている。
【0146】
第2の電極群202に直流高圧発生器100から所定の電圧が印加されると、副走査方向と略平行な方向の電界が形成され、記録紙20上に着弾したインク滴は、副走査方向の粘度が高くなるように電気粘性効果が発現される。
【0147】
即ち、ベルト状電極ユニット200は、記録紙20の搬送方向である副走査方向に平行な第1の電極群120と、第1の電極群120に略直交する(主走査方向に平行な) 第2の電極群202と、直交する2方向に電極を持たせ、印字方法(画像形成方法)に応じて何れの電極から電界を発生させるかを切り換え可能に構成されている。
【0148】
また、図12及び図13に示すように、第2の電極群202は、正の電極204及び負の電極206から構成され、正の電極204及び負の電極206はそれぞれ主走査方向に略平行な複数の櫛歯部210、212と、を有する櫛歯状電極である。正の電極204及び負の電極206の間には非導電部材208が設けられている、なお、非導電部材208は図10に示した非導電部材126と同一部材でもよいし、異なる部材でもよい。
【0149】
更に、第2の電極群202は、正の電極204の櫛歯部 (正の櫛歯部)210と負の電極206の櫛歯部 (負の櫛歯部)212とを副走査方向に沿って交互に並べられる構造を有している。
【0150】
正の櫛歯部210は副走査方向に平行な共通電極部214で連結され、共通電極部214は第1の電極群120の形成領域に対応する領域よりも外側に配設される構造を有している。
【0151】
一方、負の櫛歯部212は副走査方向に平行な共通電極部216で連結され、共通電極部216は第1の電極群120の形成領域に対応する領域の共通電極部214と反対の外側に配設される構造を有している。
【0152】
なお、図9に示した第1の電極群120と同様に、正の櫛歯部210と、負の櫛歯部212との電極間距離W3 は0.1〜2mm程度であり、また、各櫛歯部210、212の電極幅W4 は0.01mm〜1mm程度である。
【0153】
一方、第2の電極群202は、図9に示した直流高圧発生器100より所定の電圧 (数kV〜数十kV)が供給され、記録紙20上のインク滴に対して電気粘性効果が大きい0
.1kV/mm〜10kV/mmの範囲の電界を発生させることができる。
【0154】
次に、ベルト状電極ユニット200の立体構造について説明する。図14は、ベルト状電極ユニット200の立体構造を示す断面図 (図12及び図13のXIV−XIV線に沿う断
面図)である。
【0155】
図14に示すベルト状電極ユニット200は、図10に示すベルト状電極ユニット43の最下層に第2の電極群202が形成される層を追加した構造を有している。
【0156】
即ち、図14に示すように、ベルト状電極ユニット200は記録紙20と接触する最上位層には、図10に示す微導電層142が設けられ、微導電層142の記録紙20との接触面と反対側には、図10に示す第1の電極群120が形成される第1の電極層140と、第1の電極層140の微導電層142と反対側には、非導電部材(図10中、符号126や図12中、符号208で示す部材)から成る非導電層220と、非導電層220の第1の電極層140と反対側には、図11及び図12に示す第2の電極群202が形成される第2の電極層222と、を備え、これらの4層を上から順に積層させた積層構造を有している。
【0157】
また、第1の電極群120の一部は、第2の電極群202が形成される領域を通らずに (避けて)、第2の電極群202と所定の絶縁距離を確保しながら非導電層220及び第2の電極層222を貫通するように構成されており、第2の電極層222の非導電層220と反対側の面は第1の電極群120の一部がむき出しになる構造を有している。
【0158】
一方、第2の電極層222は、第2の電極群202及び第2の電極群202の櫛歯部210、212の下側の設けられる支持部材224を有し、第2の電極層222の非導電層220と反対側の面は、正負の電極204、206の共通電極部214、216がむき出しになる構造を有している。
【0159】
なお、図15に示すように、第1の電極層140と第2の電極層222とを入れ換える構成でもよい。
【0160】
図16には、ベルト状電極ユニット200が巻かれているローラ240を示す。図16に示すローラ240は、図11に示すローラ41の構成に加えて、第2の電極群202の共通電極部214、216と接触して、第2の電極群202へ直流高圧発生器100から所定の電圧を供給する第2の給電部260、262を備えている。
【0161】
本例では、直流高圧発生器100からローラ240の各給電部への配線には、図8に示したシステムコントローラ72によって制御されるスイッチ部280が設けられ、直流高圧発生器100から第1の電極群120へ電圧を供給するか、或いは第2の電極群202へ電圧を供給するかを、システムコントローラ72の制御に応じて切り換えることができる。
【0162】
即ち、スイッチ部280を制御して実線に示すように回路を形成すると、直流高圧発生器100から第1の電極群120へ所定の電圧が供給される。一方、破線で示すように回路を形成すると、直流高圧発生器100から第2の電極群202へ所定の電圧が供給される。なお、スイッチ部280は直流高圧発生器100に内蔵してもよい。
【0163】
本例では、第1の電極群120及び第2の電極群202に対して共通の電圧供給源 (直流高圧発生器100)から電圧を供給する態様を示したが、第1の電極群120へ電圧を供給する電圧供給源と、第2の電極群202へ電圧を供給する電圧供給源とを別に備えてもよい。
【0164】
また、第1の電極群120と第2の電極群202との両方に電圧が供給されないように、スイッチ部280を構成する(又は制御する)態様が好ましい。
【0165】
〔電界の切り換え制御の説明〕
次に、図16に示したスイッチ部280による電界の発生方向の切り換え制御について詳説する。
【0166】
本インクジェット記録装置10では、記録紙20の種類 (メディア種)や、画像データに応じて、第1の電極群120と第2の電極群202とを切り換えて、記録紙20上のインク滴に主走査方向に電界を与えるか或いは、副走査方向に電界を与えるかを切り換えるようにスイッチ部280の切換制御が行われる。
【0167】
このようにして、インク滴に与える電界の方向を切り換えることで、インクに発現させる電気粘性効果によってインク滴の粘度上昇に指向性を持たせることができる。
【0168】
次に、本例における電界発生方向の切り換え制御の具体例を示す。
【0169】
あるノズルからインク滴が吐出され、このインク滴が記録紙20に着弾した後に定着或いは浸透が終わる(定着或いは浸透が進行して他のインク滴と干渉が起こらない程度になる)前に、主走査方向に隣り合うノズル(先に着弾したインク滴の着弾位置に対して、主走査方向に隣り合う着弾位置にインク滴を吐出させるノズル)からインク滴が吐出される場合には、両インク滴が重なる(少なくとも接触する)大きさを有すると、これらのインク滴間に着弾干渉が発生し、主走査方向の凝集による位置ずれなどが起こりやすくなる。
【0170】
このような場合には、第1の電極群120から電界を発生させると、主走査方向にインク滴の粘度が高くなり、主走査方向の凝集を抑制することができる。
【0171】
一方、あるノズルからインク滴が吐出され、このインク滴が記録紙20に着弾した後に定着或いは浸透が終わる前に、主走査方向に隣り合うノズルからインク滴が吐出されても、両インク滴に着弾干渉が発生しない場合には、主走査方向の凝集による位置ずれなどは起こらない。
【0172】
このような場合には、自ノズルからインク吐出が複数回行われた後に、他のノズルからインクの吐出が行われ、自ノズルの吐出されるインク滴同士が副走査方向の凝集を起こし得る場合には、第2の電極群202から電界を発生させて副走査方向にインク滴の粘度を高くすることで、副走査方向の凝集によるインク滴の位置ずれを防止する。
【0173】
また、インク滴の定着或いは浸透が比較的遅いメディア種を用いる場合には、第1の電極群120から電界を発生させ、インクの定着或いは浸透が比較的早いメディア種を用いる場合には、第2の電極群202から電界を発生させるように、インクの定着特性、浸透特性に応じて電界発生方向の切り換え制御が行われる。
【0174】
なお、図5 (a)、(b) に示すようなマトリクス配列されたノズルを有する印字ヘッド(マトリクスヘッド)では、主走査方向の距離が最も近いノズル(主走査方向に隣り合う着弾位置にインクを吐出させるノズル)は、副走査方向に所定の距離を有して配置されている。
【0175】
ノーマルモード印字のように記録紙20の搬送速度が速い場合には、先に着弾したインク滴の定着或いは浸透を待たずに、主走査方向に隣り合う着弾位置にインク滴が吐出され、主走査方向の凝集が起こり得るので、第1の電極群120を用いて主走査方向に電界を発生させて、主走査方向にインク滴の粘度を上げるように、図16に示したスイッチ部280の切り換え制御が行われる。
【0176】
例えば、図7に示すように、ノズル51がマトリクス配列された印字ヘッド50を用いて2400dpi×2400dpiの解像度で印字を行う場合、主走査方向に隣り合うドットを形成するインク滴を吐出させるノズル(例えば、図17のノズル51-11 とノズル51-12 )の副走査方向のノズル間ピッチPs =0.5mm、インクの浸透時間(記録紙20上にインクが着弾してから記録紙20内へ浸透するまでの時間)T=10msecとし、吐出周波数f=38kHz、記録紙16の搬送速度V=400mm/sのノーマルモードでは、主走査方向に隣り合うインク滴が吐出される吐出間隔 (主走査方向の吐出間隔)Δtは、Δt=Ps /V=1.25msecとなる。
【0177】
ここで、浸透時間Tと主走査方向の吐出間隔Δtは、次式〔数1〕を満たす。
【0178】
〔数1〕
T≧Δt
即ち、主走査方向に隣り合うドットを形成するインク滴において、先に着弾したインク滴が浸透する前に次のインク滴が着弾してしまう。
【0179】
一方、高画質モード印字のように記録紙20の搬送速度が遅い場合には、自ノズルから吐出された副走査方向に隣り合うインク滴間に凝集が起こり得るので、第2の電極群202を用いて副走査方向に電界を発生させて、副走査方向にインク滴に粘度を上げるように、図16に示したスイッチ部280の切り換え制御が行われる。
【0180】
例えば、図17において、V=40mm/secの高画質モードでは、Δt=12.5msecとなり、浸透時間Tと主走査方向の吐出間隔Δtは、次式〔数2〕を満たす。
【0181】
〔数2〕
T<Δt
即ち、主走査方向に隣り合うドットを形成するインク滴において、先に着弾したインク滴が浸透した後に次のインク滴が着弾する。
【0182】
なお、吐出周波数fは、2400dpiの吐出間隔(25.4/2400≒10.6μmを搬送速度400mm/secで搬送する時間)26.5μsecからf≒38kHzと一義的に求めることができる。
【0183】
したがって、上記〔数1〕を満たす場合には第1の電極群120から電界を発生させ、上記〔数2〕を満たす場合には第2の電極群202から電界を発生させるようにスイッチ部260の切換制御が行われる。
【0184】
インクの吐出周波数が早い場合には、主走査方向及び副走査方向の何れの方向にも凝集が起こり得るが、凝集による位置ずれに吐出方向の位置ずれが加算される主走査方向の凝集が、結果画像によりすじむらが発生しやすい(すじむらとして視認されやすい)ので、主走査方向の電界をインク滴に付与して主走査方向の粘度を高くし、主走査方向の凝集を防止するとよい。
【0185】
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10では、主走査方向に電界を発生させる第1の電極群120と、副走査方向に電界を発生させる第2の電極群202とを備え、直流高圧発生器100から第1の電極群120に電圧を供給するか、或いは第2の電極群202に電圧を供給するかを切り換えるスイッチ部280を備えたので、記録紙20(メディア種)の定着特性、浸透特性、記録紙20の搬送速度(搬送制御)、インク滴の吐出制御などに応じて電界発生方向を切り換えて、主走査方向及び副走査方向に発生する凝集を防止し、すじむらや混色などの画像劣化を防止した好ましい画像を得ることができる。
【0186】
なお、電界発生方向の切り換えは、画像単位(記録紙1枚ごと)でもよいし、印字単位 (画像の種類ごと)でもよい。更に、1つの画像内において電界発生方向を切り換えてもよい。
【0187】
〔変形例〕
図18には、上述した第1実施形態及び第2実施形態の変形例に係るインクジェット記録装置300を示す。なお、図18ではインクジェット記録装置300の主要部を示し、図1に示したインクジェット記録装置10の一部の構成は省略されている。また、図1と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0188】
図18に示すインクジェット記録装置300は、図1に示すインクジェット記録装置10のベルト状電極ユニット43に代わり、ローラ状電極ユニット302を備えている。ローラ状電極ユニット302は、支持軸304に軸支され、支持軸304を中心に図11中矢印の方向(反時計回り)に回動自在に構成されている。ローラ状電極ユニット302の回動方向の上流側から下流側にかけて、印字ヘッド12K,12M,12C,12Yが順番に配置され、印字ヘッド12Yの下流には紫外線光源16が設けられている。なお、印字ヘッド12Kの記録紙搬送方向上流側には、記録紙20をローラ状電極ユニット302へ導くガイドとして機能するニップローラ310が設けられている。
【0189】
図18では図示を省略するが、ローラ状電極ユニット302は、図15に示すベルト状電極ユニット43と同様に、微導電層、第1の電極層、非導電層、第2の電極層を最上位層から順に積層させた構造を有している。
【0190】
また第2の電極層に形成される電極は、図13に示す第2の電極群202と同様の櫛歯状の正の電極204及び負の電極206を有し、これらには直流高圧発生器100によって直流高電圧が印加される。
【0191】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、記録紙20上の着弾インク滴に対して印加される電界及び着弾インク滴を流れる電流は、電気粘性効果を有するインク滴の粘度を上昇させるのに好適である。これにより、着弾干渉、浸透滲み、色間滲み等を防止でき、良好な画像形成が可能となる。
【0192】
また、図18に示す変形例の他の態様を図19に示す。
【0193】
図19に示すインクジェット記録装置320は、図1に示すインクジェット記録装置10のベルト状電極ユニット43に代わり、固定設置された板状電極ユニット322上に保持された記録紙20に対して、印字ヘッド12K,12M,12C,12Y及び紫外線光源16が一体となって、図19の矢印で示すヘッド走査方向に移動しながら、記録紙20上にインク滴を着弾して画像形成を行う。画像形成された記録紙20は、紙吸着部324によって吸着され、不図示の紙排出部に移動させられる。
【0194】
図19では図示を省略するが、板状電極ユニット322は、図15に示すベルト状電極ユニット43と同様に、微導電層、第1の電極層、非導電層、第2の電極層を最上位層から順に積層させた構造を有している。
【0195】
また第2の電極層に形成される電極は、図13に示す第2の電極群202と同様の櫛歯状の正の電極204及び負の電極206を有し、これらには直流高圧発生器100によって直流高電圧が印加される。
【0196】
本変形例においても、第1及び第2の実施形態と同様に、記録紙20上の着弾インク滴に対して印加される電界及び着弾インク滴を流れる電流は、電気粘性効果を有するインク滴の粘度を上昇させるのに好適である。これにより、着弾干渉、浸透滲み、色間滲み等を防止でき、良好な画像形成が可能となる。
【0197】
本実施形態では、印字ヘッドに備えられたノズルから吐出されるインクによって記録メディア上に画像を記録するインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、被吐出媒体(ウエハ、プリント基板等)上に液体(水、処理液、レジスト等)を吐出させる液体吐出装置(ディスペンサ等)にも広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の基本構成図
【図2】図1に示したインクジェット記録装置の印字周辺の要部平面図
【図3】印字ヘッドの構造例を示す平面透視図
【図4】図3のIV−IV断面に沿った断面図
【図5】図3に示した印字ヘッドの他の構造例を示す平面透視図
【図6】図5に示す印字ヘッドのノズル配列を示す拡大図
【図7】本実施形態に係るインクジェット記録装置におけるインク供給系の構成を示す概要図
【図8】本実施形態に係るインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【図9】第1実施形態に係るベルト状電極ユニットの構造例を示す平面透視図
【図10】図9のX−X断面に沿った断面図
【図11】第1実施形態に係るローラの構成例を示す平面図
【図12】第2実施形態に係るベルト状電極ユニットの構造例を示す平面透視図
【図13】第2の電極群の構成例を示す平面図
【図14】図12のXIV−XIV断面に沿った断面図
【図15】図14に示したベルト状電極ユニットの他の態様を示す断面図
【図16】第2実施形態に係るローラの構成例を示す平面図
【図17】吐出周波数、搬送速度、インクの浸透時間の関係を説明する図
【図18】図1に示したインクジェット記録装置の変形例を示す基本構成図
【図19】図1に示したインクジェット記録装置の他の変形例を示す基本構成図
【符号の説明】
【0199】
10,300,320…インクジェット記録装置、12K,12M,12C,12Y,50…印字ヘッド、41…ローラ、43…ベルト状電極ユニット、72…システムコントローラ、100…直流高圧発生器、120,122,124…第1の電極群、142…微導電層、160,260…給電部、202,204,206…第2の電極群、280…スイッチ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吐出媒体へ電気粘性効果を有する液体を吐出させて、前記被吐出媒体に画像を形成する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドの液体吐出面と対向する面に前記被吐出媒体を保持する保持手段と、
前記吐出ヘッドと前記保持手段に保持される前記被吐出媒体とを相対的に搬送させる搬送手段と、
前記保持手段に備えられ、前記搬送手段の搬送方向と略平行方向である副走査方向に長手方向を有し、前記副走査方向と略直交する主走査方向に並ぶように配置され、少なくとも一対の正の電極及び負の電極を含んだ第1の電極群と、
前記第1の電極群に所定の電圧を供給する電圧供給手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記吐出ヘッドは、前記被吐出媒体の画像形成可能幅に対応した長さの吐出孔列を少なくとも1列有するフルラインヘッドを含み、
前記搬送手段の搬送方向と略平行な副走査方向に前記吐出ヘッドと前記被吐出媒体上とを1回だけ走査させて、前記被吐出媒体上に液体を吐出させるシングルパス駆動を行うことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記吐出ヘッドは、前記吐出孔列を前記副走査方向に複数並べた2次元配置を有することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1の電極群のうち少なくとも一部は、前記正の電極と前記負の電極とを前記主走査方向に沿って交互に並ぶように配置される構造を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の電極群と互いに略直交するように配置され、少なくとも1対の正の電極及び負の電極を含んだ第2の電極群と、
前記第2の電極群に所定の電圧を供給する第2の電圧供給手段と、
前記第1の電極群へ所定の電圧を供給するか或いは前記第2の電極群へ所定の電圧を供給するかを切り換える電極群切換手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記電極群切換手段は、前記被吐出媒体の種類及び前記被吐出媒体に形成される画像データのうち少なくとも何れか一方に応じて、前記第1の電極群へ所定の電圧を供給するか或いは前記第2の電極群へ所定の電圧を供給するかを切り換えることを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
異なる吐出孔から吐出される液体の被吐出媒体上における着弾干渉を抑制する場合には前記第1の電極群へ所定の電圧を供給し、同一吐出孔から吐出される液体の被吐出媒体上における着弾干渉を抑制する場合には前記第2の電極群へ所定の電圧を供給するように前記電極群切換手段を制御する電極群切換制御手段を備えたことを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第2の電極群を構成する前記正の電極及び前記負の電極の平面形状は、それぞれ複数の櫛歯部を有する櫛歯形状を有し、
前記第2の電極群は、前記正の電極の櫛歯部と前記負の電極の櫛歯部とを交互に配設させる構造を有することを特徴とする請求項5、6又は7記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記保持手段は、前記第1の電極群と前記第2の電極群とを積層させた積層構造を有することを特徴とする請求項5乃至8のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
被吐出媒体へ電気粘性効果を有する液体を吐出させて、前記被吐出媒体に画像を形成する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドの液体吐出面と対向する面に前記被吐出媒体を保持する保持手段と、
前記吐出ヘッドと前記保持手段に保持される前記被吐出媒体とを相対的に搬送させる搬送手段と、
前記保持手段に備えられ、前記搬送手段の搬送方向と略平行方向である副走査方向に長手方向を有し、前記副走査方向と略直交する主走査方向に並ぶように配置され、少なくとも一対の正の電極及び負の電極を含んだ第1の電極群と、
前記第1の電極群に所定の電圧を供給する電圧供給手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記吐出ヘッドは、前記被吐出媒体の画像形成可能幅に対応した長さの吐出孔列を少なくとも1列有するフルラインヘッドを含み、
前記搬送手段の搬送方向と略平行な副走査方向に前記吐出ヘッドと前記被吐出媒体上とを1回だけ走査させて、前記被吐出媒体上に液体を吐出させるシングルパス駆動を行うことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記吐出ヘッドは、前記吐出孔列を前記副走査方向に複数並べた2次元配置を有することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1の電極群のうち少なくとも一部は、前記正の電極と前記負の電極とを前記主走査方向に沿って交互に並ぶように配置される構造を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の電極群と互いに略直交するように配置され、少なくとも1対の正の電極及び負の電極を含んだ第2の電極群と、
前記第2の電極群に所定の電圧を供給する第2の電圧供給手段と、
前記第1の電極群へ所定の電圧を供給するか或いは前記第2の電極群へ所定の電圧を供給するかを切り換える電極群切換手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記電極群切換手段は、前記被吐出媒体の種類及び前記被吐出媒体に形成される画像データのうち少なくとも何れか一方に応じて、前記第1の電極群へ所定の電圧を供給するか或いは前記第2の電極群へ所定の電圧を供給するかを切り換えることを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
異なる吐出孔から吐出される液体の被吐出媒体上における着弾干渉を抑制する場合には前記第1の電極群へ所定の電圧を供給し、同一吐出孔から吐出される液体の被吐出媒体上における着弾干渉を抑制する場合には前記第2の電極群へ所定の電圧を供給するように前記電極群切換手段を制御する電極群切換制御手段を備えたことを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第2の電極群を構成する前記正の電極及び前記負の電極の平面形状は、それぞれ複数の櫛歯部を有する櫛歯形状を有し、
前記第2の電極群は、前記正の電極の櫛歯部と前記負の電極の櫛歯部とを交互に配設させる構造を有することを特徴とする請求項5、6又は7記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記保持手段は、前記第1の電極群と前記第2の電極群とを積層させた積層構造を有することを特徴とする請求項5乃至8のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−95767(P2006−95767A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−282647(P2004−282647)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
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