説明

画像形成装置

【課題】記録ヘッドが長尺の場合や、長期使用によりインク吐出口形成面の撥水性が劣化して、拭き取り後に残るインク液滴による濡れ不吐と呼ばれる吐出不良を防止するインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】記録ヘッド22Kのインク吐出口305を除いたインク吐出口形成面22Ks周囲を毛細管力を持ったインク搬送部材404、インク保持部材405で覆うことにより、インク吐出口形成面22Ks上に残った余分なインク液滴を吸引し、さらに吸収、保持することで、付着したインク液滴を拡散除去して、不吐等を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク吐出口形成面から毛管作用によってインクを除去するキャッピング機
構、及びこのキャッピング機構が組み込まれた回復ユニット、並びにこの回復ユニットを
備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録紙などの記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置が広く使用されている。この画像形成装置は、インクを吐出するノズルやインク吐出口(ノズルの出口)が複数形成された印字ヘッド(記録ヘッド)を備えており、複数のインク吐出口は印字ヘッドのほぼ平らなインク吐出口形成面(フェイス面)に形成されている。なお、この印字ヘッドには、キャリッジと共に主走査方向に移動しながらインクを吐出するタイプと、固定されて停止した状態でインクを吐出するタイプとがある。
【0003】
上記した画像形成装置では、画像形成中(記録中)や待機中に、印字ヘッドのノズルやインク吐出口の周りに増粘したインクやゴミが溜まり、吐出不良や記録の乱れといった不具合が発生することがある。このような不具合を解決するものとして、印字ヘッドをクリーニングする際に、ノズルからインクを吸引した後、キャップを複数回開放することにより印字ヘッド内のクリーニングを可能とするインクジェットプリンタが開示されている(特許文献1参照)。しかし、上記の回復操作を行った場合、気泡だけでなくノズル内のインクが排出されて多量のインクがフェイス面に付着することがあるので、インクの吐出方向がずれて画像品位が低下するおそれがある。また、記録媒体から発生する紙粉や画像形成装置内に存在するゴミ・ちり等がフェイス面に付着し易くなり、インクの吐出方向のずれや不吐(インクを吐出しないこと)が発生し画像品位の低下を招く。
【0004】
上記のような不具合を解決する技術として、ノズル内のインクを吸引した後、弾性体からなるワイパーブレードでフェイス面を払拭する技術が開示されている(特許文献2参照)。この技術では、フェイス面に付着したインク量が比較的少ない場合には効果的(有効)である。しかし、印字ヘッドが長尺(長尺ヘッド)であったり長期間の使用によってフェイス面の撥水性が劣化したりした場合は、クリーニング後にフェイス面に残るインク滴が多くなるのでワイパーブレードだけでは払拭しきれなくなる。特に長尺ヘッドでは印字ヘッドの液室内の泡を排出させるために、加圧回復によってインクを排出させる機構が用いられることが多く、フェイス面上に多量のインクが残ってしまう。
【0005】
また、印字ヘッドのフェイス面を特定の方法で撥水処理することによりインクの飛翔のばらつきやインクの飛散を防止した印字ヘッドが知られている(特許文献3参照)。しかし、顔料インクを用いた場合、顔料や分散剤の影響でフェイス面と顔料インクとの濡れ性が良好となる。このため、加圧回復を行った直後にインクがフェイス面全体に広がってこのインクがキャップに転移されるので、フェイス面とキャップの間に隙間が形成されてインクがリークしてしまい、インク漏れが発生してしまうという不具合が生じるおそれがある。
【0006】
また、インク吐出口に対向するように複数の板状部を有するインク除去部材を回復処理系内に設けておき、これらのインク除去部材によって、加圧循環で排出されたインクをインク吐出口から除去するインクジェット方式の画像形成装置も知られている(特許文献4参照)。しかし、複数の板状部を有するインク除去部材とフェイス面の間隔が一定である場合、このインク除去部材が発生する毛管作用はノズル近傍とその他の部分で同じであり、フェイス面との濡れ性が悪いインクの場合にはインク除去に大きな効果を発揮するが、フェイス面との濡れ性が良いインクの場合にはその効果が十分に発揮されないことがある。
【特許文献1】特開平05−000517号公報
【特許文献2】特開平10−250087号公報
【特許文献3】特開平10−286967号公報
【特許文献4】特開平11−309871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、インク吐出口形成面(フェイス面)とインクとの濡れ性に拘らず、フェイス面からインクを除去できるキャッピング機構及び回復ユニット並びに画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明では、インクジェット記録装置のインク吐出口が複数形成されているインク吐出口形成面を有する記録ヘッドにおいて、該インク吐出口形成面上に付着したインク液滴を所定の方向に導くインク搬送面を具備することを特徴とするインクジェット記録装置。
【0009】
また、前記インク搬送面で所定の方向に導いたインクを保持するインク保持部材を具備することを特徴とするインクジェット記録装置。
【0010】
また、前記インク搬送面は、凹凸のある溝が複数形成されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【0011】
また、前記インク搬送面は、前記インク吐出口形成面上のインク液滴を前記インク保持部材に導く方向に溝が形成されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【0012】
また、前記記録ヘッドのインク吐出口は、前記インク搬送面に複数形成されている凹凸の凸部から出っ張っていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、記録等でインクを吐出するインク吐出口が複数形成されるインク吐出口形成面を有する記録ヘッドを備えるインクジェット記録装置において、記録ヘッドに、溝を設けたインク搬送面を具備することで、回復動作が行われる際に、インク吐出口形成面上に広がろうとするインク液滴を溝の毛細管力によって引っ張り、吸い上げることでインク吐出口形成面に残ったインク液滴を除去することが可能となる。したがって、安定した画質性能が得られ、記録ヘッドの信頼性を保持し、品質の良いインクジェット記録装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1を参照して、本発明のキャッピング機構をもつ回復ユニットが組み込まれた画像形成装置の一例を説明する。
【0016】
図1は、本発明のインクジェット方式の画像形成装置の一例を模式的に示す正面図である。
【0017】
画像形成装置10は、この画像形成装置10に画像情報を送るホストPC(パソコン)12に接続されている。画像形成装置10には、4つ(4本)の印字ヘッド22K、22C、22M、22Yが記録媒体(ここではロ−ル紙)Pの搬送方向(矢印A方向)に並んで配置されている。4つの印字ヘッド22K、22C、22M、22Yからはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローの各色のインクが吐出される。これら4つの印字ヘッド22K、22C、22M、22Yは、所謂ラインヘッドであり、図1の紙面に直交する方向(矢印A方向に直交する方向)に延びている。これら4つの印字ヘッド22K、22C、22M、22Yの長さは、画像形成装置10で印字できる記録媒体のうち最大の幅(図1の紙面に直交する方向の長さ)よりもやや長い。また、これら4つの印字ヘッド22K、22C、22M、22Yは、画像形成中は固定されて動かないが、後述する回復動作の際には、上下方向(矢印B方向)に移動する。
【0018】
4つの印字ヘッド22K、22C、22M、22Yから安定してインクを吐出できるように、画像形成装置10には、回復ユニット40が組み込まれている。この回復ユニット40には、回復動作のときに4つの印字ヘッド22K、22C、22M、22Yのインク吐出口形成面22Ks、22Cs、22Ms、22Ysからインクを除去するキャッピング機構50が備えられている。
【0019】
キャッピング機構50は各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yに独立して設けられており、図1の例では6色分(即ち、6つのキャッピング機構50)が示されているが、内2色分は印字ヘッド追加時の予備的な機構である。キャッピング機構50は、後述するワイパーブレード、インク除去部材、ワイパーブレード保持部材、キャップ等から構成されており、その詳細については後述する。
【0020】
ロ−ル紙Pはロール供給ユニット24から供給され、画像形成装置10に組み込まれた搬送機構26によって連続的に矢印A方向に搬送される。搬送機構26は、ロ−ル紙Pを載置して搬送する搬送ベルト26a、この搬送ベルト26aを回転させる搬送モータ26b、搬送ベルト26aに張力を与えるローラ26cなどから構成されている。
【0021】
ロ−ル紙Pに画像を形成する際には、搬送中のロ−ル紙Pの記録開始位置がブラックの印字ヘッド22Kの下に到達した後に、記録データに基づいて印字ヘッド22Kからブラックインクを選択的に吐出する。同様に印字ヘッド22C、印字ヘッド22M、印字ヘッド22Yの順に、各色のインクを吐出してカラー画像をロ−ル紙Pに形成する。画像形成装置10には、上記の部品・部材の他、各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yに供給されるインクを貯蔵するインクカートリッジ28K、28C、28M、28Yや、印字ヘッド22K、22C、22M、22Yにインクを供給したり回復動作をしたりするためのポンプユニット(図3参照)などから構成されている。
【0022】
図2を参照して、画像形成装置10の電気的な系統を説明する。
【0023】
図2は、図1の画像形成装置の電気的な系統を示すブロック図である。
【0024】
ホストPC12から送信された記録データやコマンドはインターフェイスコントローラ102を介してCPU100に受信される。CPU100は、画像形成装置10の記録データの受信、記録動作、ロ−ル紙Pのハンドリング等全般の制御を掌る演算処理装置である。CPU100では、受信したコマンドを解析した後に、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開して描画する。記録前の動作処理としては、出力ポート114、モータ駆動部116を介してキャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yをキャッピング機構50から離して記録位置(画像形成位置)に移動させる。
【0025】
続いて、出力ポート114、モータ駆動部116を介してロ−ル紙Pを繰り出すロールモータ(不図示)、及び低速度でロ−ル紙Pを搬送する搬送モータ120等を駆動してロ−ル紙Pを記録位置に搬送する。一定速度で搬送されるロ−ル紙Pにインクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)を決定するための先端検知センサ(図示せず)でロ−ル紙Pの先端位置を検出する。その後、ロ−ル紙Pの搬送に同期して、CPU100はイメージメモリ106から対応する色の記録データを順次に読み出し、この読み出したデータを各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yに印字ヘッド制御回路112経由して(介して)転送する。
【0026】
CPU100の動作はプログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、後述する制御フローに対応する処理プログラム及びテーブルなどが記憶されている。また、作業用のメモリとしてワークRAM108を使用する。各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yのクリーニングや回復動作時に、CPU100は、出力ポート114、モータ駆動部116を介してポンプモータ124を駆動し、インクの加圧、吸引等の制御を行う。
【0027】
図3から図5までを参照して、画像形成装置10に組み込まれている回復ユニットについて説明する。
【0028】
図3は、画像形成装置の回復ユニットを示す模式図である。図4は、印字中の印字ヘッドとキャッピング機構の位置関係を示す模式図である。図5は、回復動作中の印字ヘッドとキャッピング機構の位置関係を示す模式図である。図3では、印字ヘッド22Kにインクを供給し、この印字ヘッド22Kを回復させる回復ユニットを示すが、他の印字ヘッド22C、22M、22Yでも同じ構造の回復ユニットによって同じ手順で回復される。また、図3では、インクの動きを示す矢印は印字ヘッドの回復動作を実行しているときのインクの流れを示す。
【0029】
印字中は、図4に示すように、ロ−ル紙Pの上方の所定位置に各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yが固定されており、6つのキャッピング機構50は、インク吐出を妨げないように各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yの側方に位置している。一方、各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yの回復動作を行う際には、各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yが上方に移動し、6つのキャッピング機構50のうち4つのキャッピング機構50が、図5に示すように、各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yのインク吐出口形成面22Ks、22Cs、22Ms、22Ysの真下に位置する。
【0030】
印字ヘッド22Kからのインク吐出状態を初期の吐出状態に回復させる際には、先ず、CPU100の制御によってポンプモータ124(図2参照)が起動されて加圧ポンプ202が動作開始する。この動作開始以前に(先立って)回復弁204bは閉じており、リサイクル弁204cは開いている。なお、加圧ポンプ202とほぼ同時にCPU100は吸引ポンプ204も起動しておくように制御する。
【0031】
加圧ポンプ202が動作することにより、サブタンク206内のインクは加圧ポンプ202を経由して印字ヘッド22Kの共通液室22Kaに向かうが、出口側の回復弁204bが閉じているので、加圧されたインクの全ては印字ヘッド22Kのノズル22Kbからキャッピング機構50へ押し出される。これにより、印字ヘッド22Kのノズル22Kbは健全な状態(初期のインク吐出状態)に回復されることになる。
【0032】
キャッピング機構50内のインク溜り406(図7参照)に押し出されたインクは吸引ポンプ204が駆動することにより、フィルタ208、リサイクル弁204c、吸引ポンプ204を順に経由して吸引されてサブタンク206に戻るのでリサイクルされることとなる。また、サブタンク206には、その内部を大気を連通させる大気開放弁204dが取り付けられている。さらに、吸引ポンプ204とインクカートリッジ28Kの間のインク供給管210には、供給弁212やフィルタ214が取り付けられている。
【0033】
上記した回復動作とは別に回復弁204bを開いた状態でサブタンク206と印字ヘッド22Kとの間でインクを循環させることにより、共通液室22Kaの内部で成長した気泡を取り除く等を目的にした種々の動作があるが詳しくは省略する。
【0034】
なお、ラインヘッド等のように多くのノズルを有する印字ヘッドでは、多くのノズルを少ない数のノズルに分割してこの少ない数のノズルだけを分割開放状態にして上記の回復動作を複数回実行することにより、全ノズルに対して回復性能は高くなるので理に叶う。
【0035】
しかし、このような分割方法では、回復機構が複雑になること、回復に要する時間か掛かること等の弊害がある。したがって、多くは1回の回復で全ノズルの回復動作をしているのが実情である。
【0036】
図6を参照して、印字ヘッドを回復させる回復動作の手順を説明する。
【0037】
図6は、印字ヘッドの回復動作の手順を示すフロー図である。
【0038】
図6に示すフローは、プログラムROM104に記憶された制御プログラムに従ってCPU100により実行される。印字ヘッド22K、22C、22M、22Yの回復動作は同時に同じ手順で行われるので、ここでは印字ヘッド22Kを例に挙げて説明する。この回復動作を開始するにあたっては、先ず、印字ヘッド22Kをキャッピング位置から回復位置(図3や図5で示す状態の位置)へ移動する(S601)。回復位置では印字ヘッド22Kのフェイス面22Ksはインクガイド401(図7参照)に接するように設定されている。すなわち、印字ヘッド22Kが回復位置に位置するときは、インクガイド401がフェイス面22Ksに当接している。
【0039】
続いて、回復弁204b(図3参照)を閉じて(S602)、吸引ポンプ204及び加圧ポンプ202を駆動させる(ONする)(S603、S604)。これら2つのポンプ204,202を駆動させることにより、印字ヘッド22Kのノズルからインクが押し出されてキャップ402(図7参照)の下方のインク溜り406(図7参照)に導かれる。このときに、後述するキャッピング機構50になっているので、ノズルから押し出されたインクの種類(フェイス面22Ksとの濡れ性)に拘らず、フェイス面22Ksから毛管現象でインクが効率良く除去される。
【0040】
インク溜り406に溜まったインクは動作中の吸引ポンプ204によってサブタンク206に戻るので、インクはリサイクルされることとなる。
【0041】
上記の回復動作(印字ヘッド22Kを回復位置に位置させて、回復弁204bを閉じて吸引ポンプ204及び加圧ポンプ202をONする動作)を所定時間継続させる(S605)。この所定時間が経過後に、加圧ポンプ202を停止させる(Offする)(S606)。続いて、印字ヘッド22Kをキャッピング位置に戻し(S607)、予備的な吐出を所定発数行う(S608)。続いて、ワイパーブレード(図なし)によって印字ヘッド22Kのフェイス面22Ksを拭う(ワイプする)ことにより、フェイス面22Ksに付着しているインクを拭き取る(S609)。さらに所定時間経過したときに(S610)、吸引ポンプ204を停止して(Offして)(S611)、キャッピング機構50(図3参照)内のインク溜り406インク吸引動作を停止してこのフローを終了する。
【0042】
次に、図7を用いて本発明に係るインクジェット記録装置における印字ヘッドの実施例について、印字ヘッド22Kを一例として詳細に説明する。(他の印字ヘッド22C,22M、22Yの場合も同様となる)
【0043】
図8に示すように、従来印字ヘッド22Kのノズル22Kbのインク吐出口305から排出されたインク液滴は複数本のインクガイド401によって真下に落下しキャップ402内に収められる。しかし、長期間の使用によりインク吐出口形成面22Ksの撥水性が劣化すると、排出されたインク液滴の一部はインク吐出口形成面22Ks 上に広がろうとし、最悪の場合、インク液滴がインク吐出口形成面22Ks とキャップ402との間でブリッジし、キャップ402の外側に流れ落ち、インク漏れへと繋がってしまう。
【0044】
そこで、図7のように、本発明の実施例では、インク吐出口305を除いたインク吐出口形成面22Ks 上にインク搬送部材404を設ける。該インク搬送部材404には部材全面に溝(凹凸)が複数形成されており、インク吐出口形成面22Ks 上に残った余分なインク液滴を吸引し、さらに、インク搬送部材404に吸い上げられたインク液滴はインク液滴を吸収、保持することが可能なインク保持部材405によって吸収保持されることにより、インク漏れや画像不良といった問題の原因となるインク残滴を減少させ、インク吐出口形成面上は常に清浄な状態を維持することが可能となる。
【0045】
前述溝の幅は、例えば、5μm〜150μmであり、より好ましくは10μm〜100μmの範囲にあることが好適である。(図9参照)
【0046】
さらに溝の深さは溝の幅に応じて10μm〜100μmの範囲にあることが望ましい。
【0047】
前述のようなインク搬送部材がインクを所定の方向へ導くことができる理由としては溝によって発生する毛細管現象が挙げられる。したがって、溝が大きすぎると十分な毛管力が発揮されずにインクの速やかな移動ができず、インクの飛散、増粘インクによる弊害を解決することはできない。
【0048】
また溝が5μmより小さいと溝の壁に微小に残存しているインクが固着し溝を詰めてしまい、インクが速やかに所定の位置に移動しなくなるという不具合が生じる。
【0049】
さらに溝の形成ピッチは0.01mm〜1mm間隔であることが、特に長尺の記録ヘッドを長期間に渡って均一に清掃するために必要である。
【0050】
前述溝が形成されている方向として、インク吐出口形成面22Ks 上では記録ヘッドの長手方向に直行する方向(図中左右方向)であり、記録ヘッド側面ではインク液滴を保持させるインク保持部材405方向に向かって、図中上下方向に形成されている。これにより、インク吐出口形成面上に残るインク液滴をより早くインク保持部材405の方向へと移動することが可能となる。
【0051】
また、インク吐出口305は、画像形成のために吐出されたインクがインク搬送部材404に引っ張られ、正規の位置にインクが着弾しないという問題を防ぐために、インク吐出口形成面22Ks 上に具備されているインク搬送部材404の凹凸の凸部より出っ張るような構成となっている。
【実施例2】
【0052】
図10を用いて、本発明の第2実施例について、印字ヘッド22Kを一例として詳細に説明をする。(他の印字ヘッド22C,22M,22Yも同様となる)
【0053】
実施例2では、印字ヘッド22Kの製造時に、インク吐出口形成面22Ks上に、直接複数の溝を形成することで、実施例1で示したインク搬送部材404と印字ヘッドを一体にして構成する実施形態である。直接加工した複数の溝により吸い上げたインク液滴は、印字ヘッド22K側面に設けられたインク保持部材405に吸収され、保持される。
【0054】
前述複数の溝に関して、実施例1と同様に、溝の幅は、例えば、5μm〜150μmであり、より好ましくは10μm〜100μmの範囲、深さは溝の幅に応じて10μm〜100μm内、およびピッチ間0.01mm〜1mm間隔が最も効果的である。(図9参照)
【0055】
また、前述複数の溝が形成されている方向は、図に示す通りであり、インク保持部材405方向に向かって形成されている。
【0056】
さらに、インク吐出口305は正規の位置にインクを着弾させるため、前述印字ヘッド22Kのインク吐出口形成面22Ks上に直に形成される複数溝の凹凸の凸部より出っ張るような構成となっている。
【0057】
前述のような構成にすることにより、実施例1同様の効果が得られる。
【0058】
以上、本発明者によってなされた発明を本実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明のインクジェット方式の記録装置の一例を模式的に示す正面図である。
【図2】図1の画像形成装置の電気的な系統を示すブロック図である。
【図3】画像形成装置の回復ユニットを示す模式図である。
【図4】印字中の印字ヘッドとキャッピング機構の位置関係を示す模式図である。
【図5】回復動作中の印字ヘッドとキャッピング機構の位置関係を示す模式図である。
【図6】印字ヘッドの回復動作の手順を示すフロー図である。
【図7】本発明のインクジェット記録装置の印字ヘッドの実施例を表わす断面図である。
【図8】従来のインクジェット記録装置の印字ヘッドの実施例を表わす断面図である。
【図9】本発明のインク搬送部材の溝の例を示す断面図。
【図10】本発明の実施例2を表わす模式図である。
【符号の説明】
【0060】
10 画像形成装置
22K、22C、22M、22Y 印字ヘッド
22Ks、22Cs、22Ms、22Ys インク吐出口形成面(フェイス面)
22Kb ノズル
50 キャッピング機構
305 インク吐出口
401 インクガイド
402 キャップ
404 インク搬送部材
405 インク保持部材
406 インク溜り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録装置のインク吐出口が複数形成されているインク吐出口形成面を有する記録ヘッドにおいて、該インク吐出口形成面上に付着したインク液滴を所定の方向に導くインク搬送面を具備することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記インク搬送面で所定の方向に導いたインクを保持するインク保持部材を具備することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記インク搬送面は、凹凸のある溝が複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記インク搬送面は、前記インク吐出口形成面上のインク液滴を前記インク保持部材に導く方向に溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドのインク吐出口は、前記インク搬送面に複数形成されている凹凸の凸部から出っ張っていることを特徴とする請求項1、3、4に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−22008(P2007−22008A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210764(P2005−210764)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】