説明

画像形成装置

【課題】第一に電荷輸送層(CTL)内を移動する電荷の反発で発生する画像ボケを防止すること、第二にCTLを薄くし下引き層(UL)を厚くしても十分な帯電電位が確保でき、十分な現像が行える画像形成装置を得ること。
【解決手段】少なくとも感光体、帯電手段、画像露光手段、現像手段を有し、かつ、該画像露光手段が原稿を露光した光の一部を光学レンズを通して感光体上に結像する画像形成装置において、該感光体が導電性支持体上に下引き層(UL)、電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)を有する機能分離型感光体であり、該CTLの厚み(Tctl)が20μm以下で、かつ、該TctlとULの厚み(Tul)がTul>Tctl/3の関係を満たすものであること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真技術を応用したデジタル複写機、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記画像形成装置に使用される電子写真感光体には、図3に示すような単一の感光層が導電性支持体上に設けられた単層感光体、また、図4に示すように感光層が電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)からなる積層構成を有するインコヒーレント光用機能分離型積層感光体、図5に示すようなコヒーレント光用積層感光体がある。単層感光体は簡単な構成でコストは安いが十分な感度が得難い。図4のインコヒーレント光用感光体は下引き層(UL)がないか、あるいは非常に薄い(1μm以下)下引き層(UL)がある。図5のコヒーレント光用感光体には下引き層があるが薄い。このコヒーレント光用感光体の下引き層(UL)は感光体の表層(CTLの表層)と導電性支持体の間で書き込み光(コヒーレント)が多重反射し、その干渉作用によって感度むらを起こし、画像上に不要な縞模様を発生させるため、この干渉作用を防止するために設けられるもので、厚さは数μm、好ましくは5μm以下とされている。また、電荷輸送層の厚さは通常20〜40μmである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した図3に示す単層感光体に対して図4および図5に示す機能分離型感光体は大きな光感度を持ち、有機感光体の主流をなしている。しかしながら、電荷発生層(CGL)が電荷輸送層(CTL)の下にあるため、書き込み光で発生した電荷がCTL内を移動する間に互いの電界で反発し横に拡散するために画像がボケる現象が起こる。本発明の第一の目的はこの画像ボケを解決することである。
【0004】
そこで、この画像ボケを解決するためCTLの厚みを20μm以下、望ましくは15μm以下にすることが考えられる。しかしながら、CTLの厚みを20μm以下に薄くすると感光体の静電容量が大きくなり、十分な電位ポテンシャルが得られない。特にこの現象はCTLの層厚が15μmより小さくなると顕著である。何故ならCTLの静電耐圧は40〜50V/μmであり、安全を見込むと30V/μm以下で使うのがよい。従って20μmの感光体は600V以下、15μmの感光体では450V以下に帯電して使うのが望ましく、ブレードクリーニングを行う装置(ほとんどの場合使用されている)では感光体がブレードで削られるため、そのマージンを取って感光体の厚みを30〜40μmとさらに厚くするのが一般的である。また、従来のコヒーレント光用感光体のUL層は帯電電荷による電圧の20%の分圧を分担する程度であり、静電破壊に対して十分な耐圧を付与することはなかった。本発明の第二の目的はUL層を厚くしてUL層に十分な耐圧を持たせて必要な帯電電位を確保し、十分な帯電、ひいては十分な現像を行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、第一に、少なくとも感光体、帯電手段、画像露光手段、現像手段を有し、かつ、該画像露光手段が原稿を露光した光の一部を光学レンズを通して感光体上に結像する画像形成装置において、該感光体が導電性基体上に下引き層(UL)、電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)を有する機能分離型感光体であり、該CTLの厚み(Tctl)が20μm以下で、かつ、該TctlとULの厚み(Tul)がTul>Tctl/3の関係を満たすものであることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0006】
第二に、少なくとも感光体、帯電手段、画像露光手段、現像手段を有し、かつ該画像露光手段が光像を微少な画素に分割してインコヒーレント光で露光する画像形成装置において、該感光体が導電性基体上に、下引き層(UL)、電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)を有する機能分離型感光体であり、該CTLの厚み(Tctl)が20μm以下で、かつ、該TctlとULの厚み(Tul)がTul>Tctl/3の関係を満たすものであることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0007】
第三に、少なくとも感光体、帯電手段、画像露光手段、現像手段、及び階調表現手段を有し、該画像露光手段は、階調情報を含む画像データを有するオリジナル画像に対応する光像を画素に分割してインコヒーレント光で該感光体に露光し、該感光体上に静電潜像を形成し、該階調表現手段は、階調に基づく画像形成方法を示し、該オリジナル画像の該画像データに基づき、該画像露光手段に対し所定の最小値を有する駆動信号を付与するものであり、該感光体は、導電性支持体上に、下引き層(UL)、電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)を有する機能分離型感光体であって、該CTLの厚さ(Tctl)が20μm以下で、かつ、該TctlとULの厚さ(Tul)がTul>Tctl/2の関係を満たし、該感光体は、該駆動信号の該所定の最小値において、該感光体表面上の露光分布における最大露光において、該感光体の最大微分感度の1/3以下の微分感度を有し、該露光分布は、該感光体表面上の座標(x、y)において、書き込みエネルギー分布P(x、y、t)[watt/m]を露光時間(t)について積分して得られるE(x、y)[joule/m]で表され、該駆動信号の該所定の最小値における該感光体表面上の該露光分布における最大露光の1/2以上の露光量における該感光体領域において、主走査方向又は副走査方向に測定した露光径のうち、小さい方の露光径を、露光径Dbとし、該露光径Dbは、Db>Tctlを満足することを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0008】
第四に、少なくとも感光体、帯電手段、画像露光手段、現像手段、及び階調表現手段を有し、該画像露光手段は、階調情報を含む画像データを有するオリジナル画像に対応する光像を画素に分割してコヒーレント光で該感光体に露光し、該感光体上に静電潜像を形成し、該階調表現手段は、階調に基づく画像形成方法を示し、該オリジナル画像の該画像データに基づき、該画像露光手段に対し所定の最小値を有する駆動信号を付与するものであり、該感光体は、導電性支持体上に、下引き層(UL)、電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)を有する機能分離型感光体であって、該CTLの厚さ(Tctl)が20μm以下で、かつ、該TctlとULの厚さ(Tul)がTul>Tctl/2の関係を満たし、該感光体は、該駆動信号の該所定の最小値において、該感光体表面上の露光分布における最大露光において、該感光体の最大微分感度の1/3以下の微分感度を有し、該露光分布は、該感光体表面上の座標(x、y)において、書き込みエネルギー分布P(x、y、t)[watt/m]を露光時間(t)について積分して得られるE(x、y)[joule/m]で表され、該駆動信号の該所定の最小値における該感光体表面上の該露光分布における最大露光の1/2以上の露光量における該感光体領域において、主走査方向又は副走査方向に測定した露光径のうち、小さい方の露光径を、露光径Dbとし、該露光径Dbは、Db>2Tctlを満足することを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0009】
第五に、上記第一に記載した画像形成装置において、該TctlとULの厚み(Tul)がTul>Tctl/2の関係を満たすものであることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0010】
第六に、上記第二に記載した画像形成装置において、該TctlとULの厚み(Tul)がTul>Tctl/2の関係を満たすものであることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0011】
第七に、上記第三に記載した画像形成装置において、該TctlとULの厚み(Tul)がTul>Tctlの関係を満たすものであることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0012】
第八に、上記第四に記載した画像形成装置において、該TctlとULの厚み(Tul)がTul>Tctlの関係を満たすものであることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の画像形成装置は、原稿からの反射光を結像させ、潜像を形成する露光手段を有する画像形成装置の感光体として、機能分離型積層感光体を用い、該感光体の電荷輸送層の厚み(Tctl)を20μm以下とし、かつ、該Tctlと下引き層(UL)の厚み(Tul)がTul>Tctl/3の関係を満たす構成とするものであり、これによれば十分な電位を確保することができ、従来のアナログ用感光体では得られなかった、低いコントラストの細線もくっきりと再現することができる。
【0014】
請求項2の画像形成装置は、光像を微少な画素に分割しインコヒーレント光で露光する露光手段を有する画像形成装置の感光体として、機能分離型積層感光体を用い、請求項1と同様、該感光体の電荷輸送層の厚み(Tctl)を20μm以下とし、かつ、該Tctlと下引き層(UL)の厚み(Tul)がTul>Tctl/3の関係を満たす構成とするものであり、これによれば十分な電位を確保することができ、ハイライト部分の比較的弱い光で書き込んだ部分もくっきりと現像することができる。
【0015】
請求項3の画像形成装置は、光像を微少な画素に分割しインコヒーレント光で露光する露光手段と階調表現手段を有する画像形成装置で、該露光手段と階調表現手段は、感光体の微分感度が十分小さくなる露光量が得られるもので、また使用する感光体として機能分離型積層感光体を用い、該感光体の電荷輸送層の厚み(Tctl)を20μm以下とし、かつ、該Tctlと下引き層(UL)の厚み(Tul)がTul>Tctl/2の関係を満たすと共に露光径DbとTctlがDb>Tctlの関係を満たす構成とするものであり、これによれば十分な現像を行うための電位ポテンシャルを確保し、電荷の広がりも小さくすることができるため、最小書き込みエネルギーの孤立ドットを安定して再現することができる。
【0016】
請求項4の画像形成装置は、光像を微少な画素に分割しコヒーレント光で露光する露光手段と階調表現手段を有する画像形成装置で、該露光手段と階調表現手段は、感光体の微分感度が十分小さくなる露光量が得られるもので、また使用される感光体として機能分離型積層感光体を用い、該感光体の電荷輸送層の厚み(Tctl)を20μm以下とし、かつ、該Tctlと下引き層(UL)の厚み(Tul)がTul>Tctl/2の関係を満たすと共に露光径DbとTctlがDb>2Tctlの関係を満たす構成とするものであり、これによれば十分な現像を行うための電位ポテンシャルを確保し、電荷の広がりも小さくすることができるため、最小書き込みエネルギーの孤立ドットを安定して再現することができる。
【0017】
請求項5の画像形成装置は、請求項1の画像形成装置において、該Tctl(電荷輸送層の厚み)とTul(下引き層の厚み)の関係をTul>Tctl/2とするものであり、請求項1の装置で得られる効果をより向上させることができる。
【0018】
請求項6の画像形成装置は、請求項2の画像形成装置において、該Tctl(電荷輸送層の厚み)とTul(下引き層の厚み)の関係をTul>Tctl/2とするものであり、請求項2の装置で得られる効果をより向上させることができる。
【0019】
請求項7の画像形成装置は、請求項3の画像形成装置において、該Tctl(電荷輸送層の厚み)とTul(下引き層の厚み)の関係をTul>Tctlとするものであり、請求項3の装置で得られる効果をより向上させることができる。
【0020】
請求項8の画像形成装置は、請求項4の画像形成装置において、該Tctl(電荷輸送層の厚み)とTul(下引き層の厚み)の関係をTul>Tctlとするものであり、請求項4の装置で得られる効果をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明を詳細に説明する。上述のようにCTLの厚みを薄くすることで、CGLで発生した電荷がCTLを移動する間に互いの電界で反発して電荷が拡散するのを防止することができるが、ただCTLを薄くしたために同じ電荷を付与したのでは感光体の表面電位が低くなり、十分な現像を行うことができない。従来のものでは特に低いコントラストの細い線がくっきりと再現することができず、場合によっては全く再現できないこともあった。従来のアナログ用感光体においては、UL層は導電性支持体からCGLおよびCTLへの電荷注入を防ぐためとCGLを均一に塗工するために導電性支持体を前処理する程度のものであった。従ってその厚みは非常に薄く、CTLの厚みに比べて無視できる程度であった。
【0022】
上記従来の感光体に対して、上記第一に記載した本発明の画像形成装置に使用される感光体は、CTLの厚み(Tctl)が20μm以下で、かつ、該TctlとULの厚み(Tul)とがTul>Tctl/3の関係を満たすものである。このような構成によれば十分な電位を確保することができ、低いコントラストの細い線もくっきりと再現することができる。
【0023】
上記第二に記載した本発明の画像形成装置はLEDアレイによるデジタル書き込み用として使用されるものである。上述のようにCTLを薄くしただけでは十分な現像を行うことはできない。特に従来のものでは比較的小さなエネルギーの光で書き込んだ細い線はくっきりと現像することができない。LED光はインコヒーレント光であるから、LEDアレイ書き込みヘッドを用いた複写機やプリンタに使用される感光体はUL層に光拡散機能を持たせる必要はなく、アナログ用感光体を用いることができる。従来のアナログ用感光体においては上記のごとくULの厚みはCTLの厚みに比べて無視できる程度のものであった。
【0024】
これに対して上記第二に記載した本発明の画像形成装置に使用される感光体は、CTLの厚み(Tctl)が20μm以下で、かつ、該TctlとULの厚み(Tul)とがTul>Tctl/3の関係を満たすものである。このような構成によれば十分な電位を確保ることができ、比較的小さなエネルギーの光で書き込んだ細い線もくっきりと現像することができる。
【0025】
上記第三に記載した本発明の画像形成装置は、インコヒーレント光によるデジタル書き込み用として使用され、かつ、上記のように特定された階調表現手段を有するものである。上述のようにCTLを薄くしただけでは十分な現像を行うことはできないが、上記第三に記載した本発明の画像形成装置に使用される感光体は、CTLの厚み(Tctl)が20μm以下で、かつ、該TctlとULの厚み(Tul)とがTul>Tctl/2の関係を満たし、さらに露光径DbとCTLの厚み(Tctl)とがDb>Tctlの関係を満たすものである。このような構成によれば十分な現像を行うための電位ポテンシャルを確保し、電荷の広がりも小さくすることができるため、最小書き込みエネルギーの孤立ドットを安定して再現することができる。
【0026】
上記第四に記載した本発明の画像形成装置は、コヒーレント光によるデジタル書き込み用として使用され、かつ、上記のように特定された階調表現手段を有するものである。上述のようにCTLを薄くしただけでは十分な現像を行うことはできないが、上記第四に記載した本発明の画像形成装置に使用される感光体は、CTLの厚み(Tctl)が20μm以下で、かつ、該TctlとULの厚み(Tul)とがTul>Tctl/2の関係を満たし、さらに露光径DbとCTLの厚み(Tctl)とがDb>2Tctlの関係を満たすものである。このような構成によれば十分な現像を行うための電位ポテンシャルを確保し、電荷の広がりも小さくすることができるため、最小書き込みエネルギーの孤立ドットを安定して再現することができる。
【0027】
上記第五に記載した画像形成装置は、上記第一に記載した画像形成装置に使用される感光体のTctlとULの厚み(Tul)との関係をTul>Tctl/2とし、Tulをさらに厚くするもので、上記第一の装置で得られる効果をより向上させることができる。
【0028】
上記第六に記載した画像形成装置は、上記第二に記載した画像形成装置に使用される感光体のTctlとULの厚み(Tul)との関係をTul>Tctl/2とし、Tulをさらに厚くするもので、上記第二の装置で得られる効果をより向上させることができる。
【0029】
上記第七に記載した画像形成装置は、上記第三記載した画像形成装置に使用される感光体のTctlとULの厚み(Tul)との関係をTul>Tctlとし、Tulをさらに厚くするもので、上記第三の装置で得られる効果をより向上させることができる。
【0030】
上記第八に記載した画像形成装置は、上記第四に記載した画像形成装置に使用される感光体のTctlとULの厚み(Tul)との関係をTul>Tctlとし、Tulをさらに厚くするもので、上記第四の装置で得られる効果をより向上させることができる。
【0031】
ここで、上記第三および第四の画像形成装置において規定した「Db」は、例えば露光ビームのパワー分布が主走査方向の1/2径が30μm、副走査方向の1/2径が50μmのガウス分布のレーザ露光装置で主走査方向に34μmの幅露光した場合の露光量分布は、半値径が近似的に主40μm、副50μmのガウス分布になるが、このような場合の露光径Dbを40μmとするのである。
【0032】
また「微分感度」は、感光体の減衰特性をイメージ露光装置に使用する波長の光そのもの、または同等の波長の光を用い、測定可能な大きさの面積を(実質的に)均一露光したときに得られる電位V(E)と露光量Eの関係で定義する。微分感度とはある露光量Eのときの感光体表面電位がV(E)であり、ここから露光量を微少な値ΔE増やしたときの感光体表面電位をV(E+ΔE)として、下記のように定義する。
【0033】
【数1】

一般に、微分感度は露光量が増加するに従い低減する。
【0034】
以下に本発明の画像形成装置に採用された感光体の構成および作用について詳述する。感光体の容量Cpcは、
【0035】
【数2】

(ここで、εctl、εul、εcglはそれぞれCTL、ULおよびCGLの誘電率(dielectric constant)である。)で与えられるが、一般に、
【0036】
【数3】

の関係がある。ところで、従来のアナログ用感光体では、
【0037】
【数4】

の関係があり、感光体の容量はほとんどCTLの厚み(Tctl)に反比例すると言ってもよい。従ってTctlを薄くすると感光体の容量Cpcが大きくなる。
【0038】
一方、感光体に与えられる電荷Qは種々の制約があり、余り大きくは取れない。従ってTctlを薄くすると、
【0039】
【数5】

で与えられる感光体表面電位Vpcが、作像プロセスに必要とされる大きさを確保できない場合がある。そこで、本発明の関係
【0040】
【数6】

を満たすことで、Tctlを薄くしてCTL内での電荷の拡散を少なくし、潜像のボケ量を小さくしても、Tulが無視できない大きさのため、静電容量は不必要に大きくならず必要最小限の電荷で現像に必要な電位を確保することができる。これにより現像に必要な電位ポテンシャルを確保し、かつ、再現性が難しいコントラストの少ない細い線等もきれいに複写することができる。
【0041】
次に、CTL、CGL、ULおよび導電性支持体からなる積層感光体をアナログ複写機に用いた場合で説明する。CTLをCGLの上に湿式塗工する過程で、CTL塗工液がCGLに染み込み、電荷発生物質(CGM)の周りに電荷輸送物質(CTM)が接触して、その界面が電荷発生サイトとなる。帯電器で感光体表面が一様に帯電(負帯電)されると、導電性支持体にこれに誘導された逆極性の電荷(正極性)が誘起される。有機感光体の暗抵抗は十分高く、導電性支持体の電荷(正孔(ホール))の注入は0と考えてよい。従ってCGL(CGMの周り)に真電荷はないと考えられる。つまり、CTLと導電性支持体にかかった電圧はCTLとULで分担される(CGLも分担するがその厚みが薄いので無視できる)。
【0042】
露光装置より光が照射されると、ある割合で光がCGMに吸収され励起子が発生する。励起子はCGM内を拡散し、電荷発生サイトに到達するとエレクトロンとホールが対生成する(図6、図7および後記両図の説明参照。ただし、図6にはUL層や導電性支持体を図示していない)。ホールは感光体表面電荷(−)に引かれてCTLの中を(CTM間をホッピング)伝導し、感光体表面に達し表面電荷を中和する。この伝導中にホール同士の電荷が反発し、横に広がり光のスポット径より大きな(ボケた)表面電荷分布を作る。また、対生成したもう一方の片割れであるエレクトロンも同様にUL層を横に拡散しながら伝導するものと考えられる。しかしながら、これがカウンターチャージのボケた広がりを作ることはない。何故ならカウンターチャージは導電性支持体内にあるため、チャージの再配置が生じホールで中和された表面電荷にのみ依存する分布になる。つまり、UL層での電荷の広がりは無視できる(CTLのみが電荷の広がりに寄与する)。
【0043】
図6中、MとG*は、それぞれCTM分子、光励起されたCGMを表わす。CGL中のCTM分子は、湿式塗工法により形成されるCTLが乾燥するまでにCTLからCGL中に染み込んだものである。光キャリア発生サイトは、CGL中の分子オーダーのCGM/CTM界面である。図7は積層感光体の光キャリア発生の模式図で、光子吸収とキャリア発生は別のサイトで起こり、またキャリア発生とキャリア注入は同時に起きることを示している。
【実施例】
【0044】
〔実施例1〕
(アナログ複写機、インコヒーレント光の場合)
図1は本発明の画像形成装置の概念図、図2は本発明の画像形成装置に使用される機能分離型感光体の一例を示す概略断面図である。CTLを20μmにし、CTLおよびCGLの下に10μmの下引き層(UL)を形成することで、−700Vの帯電電位にし、地肌部(原稿の反射濃度0.1)が−80Vになる露光量を与え、正帯電トナーを含有する二成分現像剤を用いる現像装置で、現像バイアス−200Vの現像バイアスで現像することにより、低コントラストの細線も良好に現像することができた。また、この条件で長時間使用しても問題なく使うことができた。
【0045】
〔実施例2〕
(デジタル複写機、インコヒーレント光の場合)
実施例1の書き込みをLEDアレイによるデジタル書き込みとし、書き込み密度は主副600dpi、多値書き込み:画像データによって相対点灯時間が0,1/4,2/4,3/4,4/4と調整可能にした。CTLを15μmにし、CTLおよびCGLの下に6μmの下引き層(UL)を形成することで、−600Vの帯電電位にし、感光体の光減衰特性が測定できる感光体の所定の大きさの領域において、最大相対露光時間4/4で画素を順次露光したときの電位が−120Vになるように露光量調整をした。負帯電トナーを含有する二成分現像剤を用いる現像装置で、現像バイアス−400Vの現像バイアスで、ネガポジ現像することにより、1/4の最小相対露光時間で1ドットラインを再生したときにも良好に現像することができた。また、この条件で長時間使用しても問題なく使うことができた。
【0046】
〔実施例3〕
(デジタル複写機、インコヒーレント光の場合)
実施例1の書き込みをLEDアレイによるデジタル書き込みとし、書き込み密度は主副とも600dpi、4値書き込み:画像データによってLEDの相対点灯時間を、OFF、1/3、2/3、3/3のいずれかとした。CTLを12μmにし、CTLおよびCGLの下に6μmの下引き層(UL)を形成することで、−500Vの帯電電位にし、感光体の光露光減衰特性が測定できる感光体の所定の大きさの領域において、最大相対露光時間3/3で画素を順次露光したときの電位が−60Vになるように露光量調整をした。負帯電トナーを含有する二成分現像剤を用いる現像装置で、現像バイアス−330Vの現像バイアスでネガポジ現像することにより、孤立1ドットも良好に現像することができた。また、この条件で長時間使用しても問題なく使うことができた。
【0047】
〔実施例4〕
実施例1の書き込みをLDラスタースキャンにし、書き込み密度は主副とも600dpi、2値書き込み:画像データによってLDの点灯がON/OFFのいずれかとした。CTLを10μmにし、CTLおよびCGLの下に10μmの下引き層(UL)を形成することで、−500Vの帯電電位にし、感光体の光減衰特性が測定できる感光体の測定の大きさの領域において、LDをONにして画素を順次露光したときの電位が−70Vになるように露光量調整をした。負帯電トナーを含有する二成分現像剤を用いる現像装置で、現像バイアス−350Vの現像バイアスでネガポジ現像することにより、孤立1ドットも良好に現像することができた。また、この条件で長時間使用しても問題なく使うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の画像形成装置の概念図。
【図2】本発明の画像形成装置に使用される機能分離型積層感光体の一例を示す概略断面図。
【図3】従来の単層感光体の一例を示す概略断面図。
【図4】従来の機能分離型積層感光体の一例を示す概略断面図。
【図5】従来の機能分離型積層感光体の一例を示す概略断面図。
【図6】湿式塗工法により作製された積層感光層の構造を示す模式図。
【図7】積層感光体の光キャリア発生を説明する模式図。
【符号の説明】
【0049】
1 普通紙
2 給紙装置
3 給送ベルト
4 定着装置
5 画像形成装置
6 感光体ドラム
7 帯電装置
8 現像装置
9 転写装置
10 クリーニング装置
11 露光装置
21 導電性支持体
23 感光層
25 下引き層
31 電荷発生層
33 電荷輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも感光体、帯電手段、画像露光手段、現像手段を有し、かつ、該画像露光手段が原稿を露光した光の一部を光学レンズを通して感光体上に結像する画像形成装置において、該感光体が導電性支持体上に下引き層(UL)、電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)を有する機能分離型感光体であり、該CTLの厚み(Tctl)が20μm以下で、かつ、該TctlとULの厚み(Tul)がTul>Tctl/3の関係を満たすものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
少なくとも感光体、帯電手段、画像露光手段、現像手段を有し、かつ、該画像露光手段が光像を微少な画素に分割してインコヒーレント光で露光する画像形成装置において、該感光体が導電性支持体上に、下引き層(UL)、電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)を有する機能分離型感光体であり、該CTLの厚み(Tctl)が20μm以下で、かつ、該TctlとULの厚み(Tul)がTul>Tctl/3の関係を満たすものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
少なくとも感光体、帯電手段、画像露光手段、現像手段、及び階調表現手段を有し、該画像露光手段は、階調情報を含む画像データを有するオリジナル画像に対応する光像を画素に分割してインコヒーレント光で該感光体に露光し、該感光体上に静電潜像を形成し、該階調表現手段は、階調に基づく画像形成方法を示し、該オリジナル画像の該画像データに基づき、該画像露光手段に対し所定の最小値を有する駆動信号を付与するものであり、該感光体は、導電性支持体上に、下引き層(UL)、電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)を有する機能分離型感光体であって、該CTLの厚さ(Tctl)が20μm以下で、かつ、該TctlとULの厚さ(Tul)がTul>Tctl/2の関係を満たし、該感光体は、該駆動信号の該所定の最小値において、該感光体表面上の露光分布における最大露光において、該感光体の最大微分感度の1/3以下の微分感度を有し、該露光分布は、該感光体表面上の座標(x、y)において、書き込みエネルギー分布P(x、y、t)[watt/m]を露光時間(t)について積分して得られるE(x、y)[joule/m]で表され、該駆動信号の該所定の最小値における該感光体表面上の該露光分布における最大露光の1/2以上の露光量における該感光体領域において、主走査方向又は副走査方向に測定した露光径のうち、小さい方の露光径を、露光径Dbとし、該露光径Dbは、Db>Tctlを満足することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
少なくとも感光体、帯電手段、画像露光手段、現像手段、及び階調表現手段を有し、該画像露光手段は、階調情報を含む画像データを有するオリジナル画像に対応する光像を画素に分割してコヒーレント光で該感光体に露光し、該感光体上に静電潜像を形成し、該階調表現手段は、階調に基づく画像形成方法を示し、該オリジナル画像の該画像データに基づき、該画像露光手段に対し所定の最小値を有する駆動信号を付与するものであり、該感光体は、導電性支持体上に、下引き層(UL)、電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)を有する機能分離型感光体であって、該CTLの厚さ(Tctl)が20μm以下で、かつ、該TctlとULの厚さ(Tul)がTul>Tctl/2の関係を満たし、該感光体は、該駆動信号の該所定の最小値において、該感光体表面上の露光分布における最大露光において、該感光体の最大微分感度の1/3以下の微分感度を有し、該露光分布は、該感光体表面上の座標(x、y)において、書き込みエネルギー分布P(x、y、t)[watt/m]を露光時間(t)について積分して得られるE(x、y)[joule/m]で表され、該駆動信号の該所定の最小値における該感光体表面上の該露光分布における最大露光の1/2以上の露光量における該感光体領域において、主走査方向又は副走査方向に測定した露光径のうち、小さい方の露光径を、露光径Dbとし、該露光径Dbは、Db>2Tctlを満足することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1記載の画像形成装置において、該TctlとULの厚み(Tul)がTul>Tctl/2の関係を満たすものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項2記載の画像形成装置において、該TctlとULの厚み(Tul)がTul>Tctl/2の関係を満たすものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項3記載の画像形成装置において、該TctlとULの厚み(Tul)がTul>Tctlの関係を満たすものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項4記載の画像形成装置において、該TctlとULの厚み(Tul)がTul>Tctlの関係を満たすものであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−256970(P2007−256970A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127610(P2007−127610)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【分割の表示】特願2000−191805(P2000−191805)の分割
【原出願日】平成12年6月26日(2000.6.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】