説明

画像形成装置

【課題】帯電ローラの両端部のギャップ部材を像担持体に圧接して設定された帯電ギャップによる像担持体の非接触帯電において、軸方向により均一な高精度の帯電ギャップを容易に得ることで安定した良好な帯電を行うことのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】ギャップ部材3d,3eおよびこのギャップ部材3d,3eにそれぞれ内側に隣接する帯電ローラ3aの抵抗層3cの部分3c1,3c2が、それぞれ左右一対の押圧部材8,9により所定の力で感光体2の方向に押圧されている。これにより、帯電ローラ3aおよび感光体2を互いに同方向に撓ませることができ、帯電ローラ3aと感光体2との間の帯電ギャップGを軸方向にほぼ一定にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真、静電複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置であって、帯電ローラの両端部に固定されたリング状のギャップ部材で像担持体に対して所定の帯電ギャップを設定して、この帯電ローラで像担持体を非接触帯電する画像形成装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置として、像担持体に対して所定の帯電ギャップを置いて、この像担持体を非接触帯電する帯電ローラを備える画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1等参照)。図6に示すように、この特許文献1に開示の画像形成装置に用いられる帯電ローラaは、芯金bの外周面に導電性を有する弾性部材からなる抵抗層cを設けるとともに、この抵抗層cの両端部外周面に、それぞれ、絶縁性を有するテープ状のフィルム部材からなるギャップ部材d,eをリング状に巻き付けて固着し、これら一対のギャップ部材d,eを像担持体である感光体ドラムfの外周面に当接させることにより、所定の帯電ギャップGを設定している。その場合、芯金bの両端面からそれぞれ軸方向に同軸に突設された回転軸g,hをスプリング(不図示)の付勢力で感光体ドラムfの方へ押圧することで、両ギャップ部材d,eを感光体ドラムfの外周面に圧接させている。
【0003】
そして、帯電ローラaが帯電ギャップにより感光体ドラムfを非接触帯電することで、オゾンの発生を抑制することができるとともに、感光体ドラムfに付着しているトナー等の異物が帯電ローラaに付着したり、帯電ローラaの抵抗層c中に含まれる物質が感光体ドラムfに付着したりすることが防止できるので、帯電ローラaによる感光体ドラムfの帯電性能を向上することができる。
【特許文献1】特開2001−296723号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1に開示の画像形成装置に用いられる非接触帯電用の帯電ローラaでは、一対のギャップ部材d,eの外側(本明細書では一対のギャップ部材d,eの間をギャップ部材d,eの内側といい、各ギャップ部材d,eの関して内側と反対側をギャップ部材d,eの外側という)に位置する回転軸g,hを感光体ドラムfの方へ押圧する構造であるため、ギャップ部材d,eの感光体fとの当接点が支点に、またギャップ部材d,eの外側にある回転軸g,hのスプリング力付勢部が力点になって、一対のギャップ部材d,eの内側における帯電ローラaの部分a1が感光体ドラムfから遠ざかる方向に撓み(曲げ変形)Drを生じるようになる。通常、この帯電ローラaの撓みDrは一対のギャップ部材d,eの間の軸方向中央点で最大となる。
【0005】
また、感光体ドラムfの両端面からそれぞれ軸方向に同軸に突設された回転軸i,jが図示しない装置本体に軸受を介して回転可能に支持されているため、感光体ドラムfは一対のギャップ部材d,eで押圧されることから、前述の帯電ローラaの撓みDrと逆方向である帯電ローラaから遠ざかる方向に撓み(曲げ変形)Doを生じるようになる。通常、この感光体ドラムfの撓みDoは軸方向中央点で最大となる。
【0006】
このように、帯電ローラaおよび感光体ドラムfが互いに逆方向に撓むと、帯電ローラaと感光体ドラムfとの間の帯電ギャップGが軸方向に変化してしまい、一定にならなくなる。このため、帯電ローラaによる感光体ドラムfの帯電が軸方向に均一にならなくなり、安定した良好な帯電を得ることが難しいという問題がある。
【0007】
特に、近年は電子写真方式のプリンターを始め、電子写真方式の画像形成装置が小型化、および省スペース化をますます強く求められていることから、その内部のプロセスユニットおよび機能部品等をより小さく高精度に構成するとともにそれらを最適に配置することが必要なっている。そこで、感光体ドラムおよび帯電ローラにも小型化が求められているが、感光体ドラムの外径や肉厚を小さくしたり、あるいは帯電ローラの外径を小さくしたりした場合、前述の問題が大きくなっている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、帯電ローラの両端部に固定されたギャップ部材を像担持体に圧接して設定された帯電ギャップによる像担持体の非接触帯電において、軸方向により均一な高精度の帯電ギャップを容易に得ることで安定した良好な帯電を行うことのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するために、請求項1の発明の画像形成装置は、両端に設けられた回転軸が装置本体に軸受を介して回転可能に支持された像担持体と、両端部にそれぞれギャップ部材が固定された帯電ローラとを少なくも備え、前記ギャップ部材が前記像担持体の外周面に圧接されることで前記像担持体と前記帯電ローラとの間に帯電ギャップが設定されるとともに、前記帯電ローラが前記帯電ギャップにより前記像担持体を非接触帯電する画像形成装置において、前記帯電ローラの前記ギャップ部材内側の非帯電領域部分をそれぞれ前記像担持体の方へ押圧する押圧部材を備え、前記押圧部材により前記帯電ローラの前記ギャップ部材内側の非帯電領域部分を前記像担持体の方へ押圧することにより、前記ギャップ部材が前記像担持体の外周面に圧接されることを特徴としている。
【0010】
また、請求項2の発明の画像形成装置は、前記押圧部材が、前記ギャップ部材も前記像担持体の方へ押圧するように設けられていることを特徴としている。
更に、請求項3の発明の画像形成装置は、前記押圧部材が、前記ギャップ部材を前記像担持体の方へ押圧する第1押圧部材と、この第1押圧部材とは別体に設けられ、前記帯電ローラの前記ギャップ部材内側の非帯電領域部分を前記像担持体の方へ押圧する第2押圧部材とからなることを特徴としている。
【0011】
更に、請求項4の発明の画像形成装置は、前記第2押圧部材が前記帯電ローラの前記ギャップ部材内側の非帯電領域部分を押圧する押圧力が、前記第1押圧部材が前記ギャップ部材を押圧する押圧力より大きく設定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
このように構成された本発明の画像形成装置によれば、帯電ローラの両端部に固定されたギャップ部材の内側の帯電ローラの部分をそれぞれ押圧部材により像担持体の方へ押圧しているので、帯電ローラを像担持体の外周面に圧接させて帯電ギャップを設定しながら、帯電ローラおよび像担持体を互いに同方向に撓ませることができる。これにより、帯電ローラと像担持体との間の帯電ギャップを一定値(50μm)以下でかつ軸方向にほぼ一定にすることができる。したがって、帯電ローラによる像担持体の帯電を軸方向に均一にでき、長期的に安定した良好な帯電を得ることができる。特に、帯電ローラおよび像担持体の各撓みを一対のギャップ部材の間の中央点の同じ位置で最大にできるため、帯電ギャップを軸方向により一層高精度に一定にでき、像担持体に対してより一層安定した良好な帯電を行うことができる。
【0013】
また、押圧部材が押圧する、ギャップ部材の内側の帯電ローラの押圧部位が、帯電ローラの非帯電領域であるため、押圧部材と帯電ローラとの接触により例えば摩擦帯電等の像担持体の帯電に不都合な問題が生じても、この問題に影響されることなく、像担持体に対して安定した良好な帯電を行うことができる。
【0014】
更に、帯電ローラおよび像担持体に撓みが生じても帯電ギャップを軸方向に一定にすることができることから、帯電ローラの外径を小さくできるとともに、像担持体の外径および肉厚を小さくできる。したがって、前述のように近年画像形成装置にますます強く求められている小型化および省スペース化の要求に対しても、より効果的に対応することが可能となる。
更に、一対の押圧部材がギャップ部材の内側の帯電ローラの部分のみを押圧するようにすることで、押圧部材の構成を簡単にすることができる。
【0015】
特に、請求項2の発明の画像形成装置によれば、押圧部材がギャップ部材も像担持体の方へ押圧するので、ギャップ部材の像担持体への圧接をより一層確実に行うことができる。これにより、帯電ギャップをより安定して形成することができる。その場合、押圧部材によりギャップ部材を押圧しても、従来のようなギャップ部材の外側の帯電ローラの回転軸を押圧する場合に比べて、帯電ローラを像担持体から遠ざかる方へ撓み難くすることができる。したがって、帯電ギャップを更に一層一定値(50μm)以下に設定することができ、長期的により安定した帯電を行うことができる。
【0016】
また、請求項3の発明の画像形成装置によれば、ギャップ部材を像担持体の方へ押圧する第1押圧部材と、帯電ローラのギャップ部材内側の非帯電領域部分を像担持体の方へ押圧する第2押圧部材とを別体に設けているので、ギャップ部材を押圧する押圧力と帯電ローラのギャップ部材内側の非帯電領域部分を押圧する押圧力とを、それぞれ個別に制御することができる。これにより、一対のギャップ部材の内側における帯電ローラの部分の撓みを、像担持体の撓みにより正確に倣って制御することができる。したがって、帯電ギャップをより高精度に軸方向に一定にすることができる。
【0017】
更に、請求項4の発明の画像形成装置によれば、第2押圧部材が帯電ローラのギャップ部材内側の非帯電領域部分を押圧する押圧力を、第1押圧部材がギャップ部材を押圧する押圧力より大きく設定しているので、一対のギャップ部材の内側における帯電ローラの部分を像担持体の撓みに倣ってより効果的に撓ませることができる。これにより、帯電ギャップを更に効果的に軸方向に一定にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の一例を模式的にかつ部分的に示す図である。
【0019】
図1に示すように、この例の画像形成装置1は静電潜像およびトナー像が形成される像担持体である感光体2を備えているとともに、この感光体2の周囲に感光体2の回転方向(図1では、時計回り)上流側から、順次、帯電装置3、光書込み装置4、現像装置5、転写装置6、およびクリーニング装置7を備えている。
【0020】
この例の感光体2は感光体ドラムからなり、従来公知の感光体ドラムと同様に円筒状の金属素管の外周面に所定膜厚の感光層が形成されている。この感光体2における金属素管には、例えばアルミニウム等の導電性の管が用いられるとともに、感光層には、従来公知の有機感光体が使用される。そして、感光体2は、その両端面からそれぞれ軸方向に同軸に突設された回転軸2a,2b(図3に図示)が図示しない装置本体に軸受を介して回転可能に支持されて設けられている。
【0021】
帯電装置3は、この例の非接触の帯電ローラ3aを有している。図2に示すように、この非接触の帯電ローラ3aは芯金3bを備えており、この芯金3bは導電性を有する、例えば金属シャフト等からなる導電性シャフトとして構成されている。この導電性シャフトとしては、例えばSUM22の表面にNiめっきを施したものを用いることができる。
【0022】
芯金3bの外周面には、導電性塗装材を例えばスプレー塗装で塗装することにより抵抗層3cが形成されている。この抵抗層3cの両端部の外周面には、テープ状の所定膜厚のフィルム部材からなるギャップ部材3d,3eがリング状に固定されている。帯電ローラ3aが芯金3bの両端面からそれぞれ軸方向に同軸に突設された回転軸3f,3gを備えており、これらの回転軸3f,3gが装置本体に軸受を介して回転可能に支持されている。
【0023】
図3に示すように、これらのギャップ部材3d,3eは感光体2の外周面に圧接されて抵抗層3cと感光体2との間にフィルム部材の所定膜厚に基づいた所定の帯電ギャップGを設定している。その場合、ギャップ部材3d,3eおよびこのギャップ部材3d,3eにそれぞれ内側に隣接する帯電ローラ3aの抵抗層3cの部分3c1,3c2が、それぞれ左右一対の押圧部材8,9により所定の力で感光体2の方向に押圧されることで、ギャップ部材3d,3eが感光体2の外周面に圧接されている。押圧部材8,9で押圧される抵抗層3cの部分3c1,3c2は、感光体2の帯電に寄与しない抵抗層3cの非帯電領域とされている。この帯電ローラ3aの非帯電領域は、感光体2の非画像領域に対向しており、したがって一対の押圧部材8,9は感光体2の画像領域に影響しない帯電ローラ3aの部分が押圧されるようになる。
【0024】
一対の押圧部材8,9はそれぞれ例えばゴムから左右対称に形成されており、それぞれギャップ部材3d,3eを感光体2の方へ押圧する第1押圧部8a,9aと両ギャップ部材3d,3eの内側の抵抗層3cの部分3c1,3c2を感光体2の方へ押圧する第2押圧部8b,9bとからなっている。そして、両ギャップ部材3d,3eの間の抵抗層3cは、感光体2を所定の帯電ギャップGを有する非接触で一様帯電する帯電部を構成している。
【0025】
光書込み装置4は、例えばレーザ光等により感光体2に静電潜像を書き込む。また、現像装置5は、現像ローラ5a、トナー供給ローラ5bおよびトナー層厚規制部材5cを有している。そして、トナー供給ローラ5bによって現像ローラ5a上に現像剤であるトナーTが供給されるとともに、この現像ローラ5a上のトナーTがトナー層厚規制部材5cによりその厚みを規制されて感光体2の方へ搬送され、搬送されたトナーTで感光体2上の静電潜像が現像されて感光体2上にトナー像が形成される。
【0026】
転写装置6は転写ローラ6aを有し、この転写ローラ6aにより感光体2上にトナー像が転写紙や中間転写媒体等の転写媒体13に転写される。そして、トナー像が転写媒体13である転写紙に転写された場合には、転写紙上のトナー像が図示しない定着装置によって定着され、転写紙に画像が形成され、また、トナー像が転写媒体13である中間転写媒体に転写された場合には、中間転写媒体上のトナー像が更に転写紙に転写された後、転写紙上のトナー像が図示しない定着装置によって定着され、転写紙に画像が形成される。
【0027】
クリーニング装置7は例えばクリーニングブレード等のクリーニング部材7aを有し、このクリーニング部材7aにより感光体2がクリーニングされて、感光体2上の転写残りトナーが除去されかつ回収される。
【0028】
このように構成されたこの例の画像形成装置1においては、回転軸3f,3gが装置本体に回転可能に支持された帯電ローラ3aの一対のギャップ部材3d,3eおよびこれらのギャップ部材3d,3eの内側の帯電ローラ3aの抵抗層3cの部分3c1,3c2を、それぞれ押圧部材8,9で感光体2の方へ押圧することで、ギャップ部材3d,3eを感光体2の外周面に圧接しているので、図3に示すように一対のギャップ部材3d,3eの内側における帯電ローラaの部分a1が感光体2に近づく方向に撓み(曲げ変形)Drを生じるようになる。通常、この帯電ローラ3aの撓みDrは一対のギャップ部材3d,3eの間の軸方向中央点(一対のギャップ部材3d,3eの間の中央点)で最大となる。
【0029】
また、感光体2は、前述の従来の画像形成装置と同様にして、感光体2が一対のギャップ部材3d,3eで押圧されるため、前述の帯電ローラ3aの撓みDrと同方向に撓み(曲げ変形)Doを生じるようになる。通常、この感光体2の撓みDoは軸方向中央点(一対のギャップ部材3d,3eの間の中央点)で最大となる。
【0030】
このように帯電ローラ3aおよび感光体2が互いに同方向に撓んだ場合、帯電ローラ3aと感光体2との間の帯電ギャップGは、帯電ローラ3aおよび感光体2に撓みが生じても軸方向に大きく変化しなく、軸方向にほぼ一定で50μm以下に設定される。このため、帯電ローラ3aによる感光体2の帯電が軸方向に均一になって、長期にわたって安定した良好な帯電が行われるようになる。特に、帯電ローラ3aおよび感光体2の各撓みが一対のギャップ部材3d,3eの間の中央点の同じ位置で最大となってほぼ平行になるため、帯電ギャップGは軸方向により一層高精度に一定になり、更に一層安定した良好な帯電が行われる。
【0031】
この例の画像形成装置1によれば、帯電ローラ3aの一対のギャップ部材3d,3eおよびこれらのギャップ部材3d,3eの内側の帯電ローラ3aの抵抗層3cの部分3c1,3c2をそれぞれ感光体2の方へ押圧しているので、帯電ローラ3aおよび感光体2を互いに同方向に撓ませることができる。これにより、帯電ローラ3aと感光体2との間の帯電ギャップGを一定値(50μm)以下でかつ軸方向にほぼ一定にすることができる。したがって、帯電ローラ3aによる感光体2の帯電を軸方向に均一にでき、長期的に安定した良好な帯電を得ることができる。特に、帯電ローラ3aおよび感光体2の各撓みを一対のギャップ部材3d,3eの間の中央点の同じ位置で最大にできるため、帯電ギャップGを軸方向により一層高精度に一定にでき、感光体2に対してより一層安定した良好な帯電を行うことができる。
【0032】
また、押圧部材8,9の第2押圧部8b,9bが押圧する帯電ローラ3aの部分3c1,3c2が抵抗層3cの非帯電領域であるため、押圧部材8,9と帯電ローラ3aとの接触により例えば摩擦帯電等の感光体2の帯電に不都合な問題が生じても、この問題に影響されることなく、感光体2に対して安定した良好な帯電を行うことができる。
【0033】
更に、帯電ローラ3aおよび感光体2に撓みが生じても帯電ギャップGを軸方向に一定にすることができることから、帯電ローラ3aの外径を小さくできるとともに、感光体2の外径および肉厚を小さくできる。したがって、前述のように近年画像形成装置にますます強く求められている小型化および省スペース化の要求に対しても、より効果的に対応することが可能となる。
【0034】
更に、押圧部材8,9がギャップ部材3d,3eを感光体2の方へ押圧するので、ギャップ部材3d,3eの感光体2への圧接をより一層確実に行うことができる。これにより、帯電ギャップGをより安定して形成することができる。また、押圧部材8,9によりギャップ部材3d,3eが押圧されることで、従来のようなギャップ部材d,eの外側の帯電ローラaの回転軸を押圧する場合に比べて、帯電ローラ3aを感光体2から遠ざかる方へ撓み難くすることができる。したがって、帯電ギャップGを更に一層一定値(50μm)以下に設定することができ、長期的により安定した帯電を行うことができる。
【0035】
図4は、本発明の画像形成装置の実施の形態の他の例における感光体と帯電ローラとを模式的に示す図である。なお、以下の各例の説明において、その例より前の例と同じ構成要素には同じ符号を付すことでその詳細な説明は省略する。
【0036】
前述の図3に示す例の画像形成装置1では、帯電ローラ3aの両端部を押圧する一対の押圧部材8,9が、それぞれギャップ部材3d,3eを押圧する第1押圧部8a,9aと抵抗層3cの部分3c1,3c2を押圧する第2押圧部8b,9bとを一体に有する1ピースで形成されているが、この例の画像形成装置1では、帯電ローラ3aの両端部を押圧する一対の押圧部材8,9が、それぞれ2ピースで形成されている。
【0037】
すなわち、図4に示すように一方の押圧部材8は、ギャップ部材3dを押圧する第1押圧部材8′と、この第1押圧部材8′とは別体に形成されて、帯電ローラ3aの抵抗層3cの部分3c1を押圧する第2押圧部材8″との2ピースで構成されている。同様に、他方の押圧部材9は、ギャップ部材3eを押圧する第1押圧部材9′と、この第1押圧部材9′とは別体に形成されて、帯電ローラ3aの抵抗層3cの部分3c2を押圧する第2押圧部材9″との2ピースで構成されている。
【0038】
そして、第2押圧部材8″,9″が帯電ローラ3aの抵抗層3cの部分3c2を押圧する押圧力が第1押圧部材8′,9′がそれぞれギャップ部材3d,3eを押圧する押圧力より大きく設定されている。
【0039】
この例の画像形成装置1によれば、ギャップ部材3d,3eを押圧する押圧力と抵抗層3cの各部分3c1,3c2を押圧する押圧力とを、それぞれ個別に制御することができる。これにより、一対のギャップ部材3d,3eの内側における帯電ローラaの部分a1の撓みを、感光体2の撓みGoにより正確に倣って制御することができる。したがって、帯電ギャップGをより高精度に軸方向に一定にすることができる。
【0040】
また、第2押圧部材8″,9″が帯電ローラ3aのギャップ部材3d,3e内側の非帯電領域部分を押圧する押圧力を、第1押圧部材8′,9′がギャップ部材3d,3eを押圧する押圧力より大きく設定しているので、一対のギャップ部材3d,3eの内側における帯電ローラ3aの部分3a1を感光体2の撓みに倣ってより効果的に撓ませることができる。これにより、帯電ギャップGを更に効果的に軸方向に一定にすることができる。
この例の画像形成装置の他の構成および他の作用効果は、前述の図1ないし図3に示す例のそれらと同じである。
【0041】
図5は本発明の画像形成装置の実施の形態の更に他の例における感光体と帯電ローラとを模式的に示す図である。
前述の図4に示す例の画像形成装置1では、帯電ローラ3aの両端部を押圧する一対の押圧部材8,9が、それぞれギャップ部材3d,3eを押圧する第1押圧部材8′,9′と抵抗層3cの部分3c1,3c2を押圧する第2押圧部材8″,9″とから形成されているが、図5に示すように画像形成装置1では、帯電ローラ3aの両端部を押圧する一対の押圧部材8,9が、それぞれ帯電ローラ3aの抵抗層3cの部分3c1,3c2を押圧する第2押圧部材8″,9″のみで形成されている。したがって、この画像形成装置1では、一対の押圧部材8,9によって、それぞれギャップ部材3d,3eは押圧されない。
【0042】
この例の画像形成装置1によれば、一対の第2押圧部材8″,9″が抵抗層3cの部分3c1,3c2のみを押圧するだけであるので、押圧部材の構成を簡単にすることができる。この例の場合には、ギャップ部材3d,3eを押圧しないので、ギャップ部材3d,3eを押圧する前述の各例の作用効果は得られない。
この例の画像形成装置の他の構成および他の作用効果は、前述の図1ないし図3に示す例のそれらと同じである。
【0043】
ところで、ギャップ部材3d,3eによって設定された帯電ギャップGで非接触帯電を行う場合、ギャップ部材3d,3eが撓むこと等によって帯電ローラ3aが感光体2に部分的にあるいはすべて接触する場合があるが、このような場合であっても、帯電ギャップGの軸方向における最大値がギャップ部材3d,3eの膜厚以下(つまり、0≦ギャップGの最大値≦ギャップ部材3d,3eの膜厚)であれば、特に問題はなく、本発明の所期の作用効果を奏するものである。したがって、本発明において、ギャップ部材3d,3eによって設定された帯電ギャップGで行われる非接触帯電とは、このような場合も含むものである。
【0044】
次に、本発明に属する実施例および本発明に属さない比較例について、本発明の画像形成装置が前述の作用効果を得ることができることを実証するために行った実験について説明する。
実験で用いた実施例および比較例の画像形成装置における感光体2の条件および帯電ローラ3aの条件および実験結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1において、実験No. 1〜20にそれぞれ用いた感光体2は、いずれもアルミニウムの素管の外周面に、セイコーエプソン株式会社製のプリンタLP−9000Cの感光体の感光層に用いられている有機感光体と同じものを膜厚25μmに塗装して感光層を形成した感光体である。その場合、実験No. 1〜6における感光体2は外径が40φmmであり、そのうちNo. 1〜3の感光体2のアルミニウム素管の厚みは、1.5mmであり、No. 4〜6の感光体2のアルミニウム素管の厚みは、1.0mmである。また、No. 7〜12における感光体2は外径が30φmmであり、そのうちNo. 7および8の感光体2のアルミニウム素管の厚みは、1.5mmであり、No. 9および10の感光体2のアルミニウム素管の厚みは、1.0mmであり、No. 11および12の感光体2のアルミニウム素管の厚みは、0.75mmである。更に、No. 13〜20における感光体2は外径が24φmmであり、そのうちNo. 13および14の感光体2のアルミニウム素管の厚みは、1.5mmであり、No. 15および16の感光体2のアルミニウム素管の厚みは、1.0mmであり、No. 17ないし20の感光体2のアルミニウム素管の厚みは、0.75mmである。また、各感光体2は、いずれも振れ精度が0.01以下のものを選択して用いた。
【0047】
実験No. 1〜20にそれぞれ用いた帯電ローラ3aは、芯金としてSUM22の表面にNiめっきを施した金属シャフトを用い、前述のプリンタLP−9000Cの改造機に搭載できる形状に加工した。これらの金属シャフトはセンタレス研磨を行って、振れ精度が0.01以下に加工されている。表1に示すように、実験No. 1、5、7、11、13、および14の金属シャフトは外径が12φmmであり、No. 3、4、9、15、17、および19の金属シャフトは外径が10φmmであり、No. 2、6、8、10、12、16、18,および20の金属シャフトは外径が8φmmである。
【0048】
そして、これらの金属シャフトの外周面に、導電性酸化スズ(SnO2)とポリウレタン(PU)樹脂とを1:9の重量比(wt比)で混合して、イオン導電材および水内に分散させて得られた塗装液をスプレー塗装して、膜厚20μmの抵抗層を形成した。導電性SnO2は、表2に示す株式会社ジェムコ製のものがあり、それらの詳細は株式会社ジェムコのホームページ(http://www.jemco-mmc.co.jp/corporate/index.html)に掲載されている。
【0049】
【表2】

【0050】
本実施例および本比較例で用いた導電性SnO2は、株式会社ジェムコの商品名「T−1」であり、この「T−1」はスズ−アンチモン系酸化物である。もちろん、本発明では、他の導電性SnO2を用いることができる。また、イオン導電材は導電性塗装材に導電性を持たせるためのものであり、本実施例および本比較例で用いたイオン導電材は「YYP−12」(丸菱油化工業株式会社製)である。なお、実験に使用した前述の塗装液をアルミニウム板に20μmの膜厚で塗装して、体積抵抗率を測定したところ、(1.0〜5.0)×1010Ωcmであった。
【0051】
ギャップ部材3d,3eは、帯電ローラ3aの両端部の外周面に膜厚20μmおよび幅5mmのポリイミド(PI)樹脂製テープを貼り付けて形成した。
押圧部材8,9;8′,9′;8″,9″は、硬度アスカーC65°品で、外径10φmmかつ内径5φmmの筒状のウレタンゴムを作製し、この筒状のウレタンゴムの孔に外径φ6mmのSUS製シャフトを貫通させることにより形成した。
【0052】
そして、表1に示すように実験No. 1ないし3、7、8,15ないし18では、図3に示すように第1および第2押圧部8a,8b;9a,9bが一体となった第1および第2押圧部材8,9で、両ギャップ部材3d,3eおよび両ギャップ部材3d,3eの内側の抵抗層3cの部分3c1,3c2を押圧した。このとき、全押圧力は、No. 1が500gfであり、No. 2、8、16,および18が200gfであり、No. 3、7,15、および17が800gfである。各押圧力はその都度荷重を計算して調整した(この荷重調整は、他の実験例も同じである)。
【0053】
また、実験No. 5、6、9、13および14では、図4に示すように第1および第2押圧部材8,9が、それぞれ別体からなる第1および第2押圧部材8′,9′;8″,9″の2ピースからなり、第1押圧部材8′,9′でギャップ部材3d,3eをそれぞれ押圧し、第2押圧部材8″,9″で抵抗層3cの部分3c1,3c2を押圧した。このとき、全押圧力は、No. 6、9、および14が200gfであり、No. 5および13が800gfであり、これらの全押圧力は感光体2を実際に押圧する実押圧力である。また、第1押圧部材8′,9′と第2押圧部材8″,9″との押圧比は、いずれの実験でも1:2であり、抵抗層3cの部分3c1,3c2を押圧する第2押圧部材8″,9″の押圧力がギャップ部材3d,3eを押圧する第1押圧部材8′,9′の押圧力より大きく設定される。
【0054】
更に、実験No. 4では、図5に示すように第1および第2押圧部材8,9が、それぞれ第2押圧部材8″,9″のみからなり、第2押圧部材8″,9″で抵抗層3cの部分3c1,3c2のみを押圧した。このとき、全押圧力は800gfである。
【0055】
更に、実験No. 10ないし12、19、および20では、図6に示すようにギャップ部材d,eの外側の回転軸g,hの軸受部(ギャップ部材d,eから10mmの位置)にスプリングによる荷重を加えて帯電ローラを押圧した。このとき、全押圧力は、No. 10が800gfであり、No. 11および19が500gfであり、No. 12および20が200gfである。これらの実験での各押圧力はスプリング荷重である。
以上のことから明らかなように、実験No. 1ないし9,13ないし18が本発明の実施例であり、実験No. 10ないし12,19および20が本発明の比較例である。
【0056】
画像形成装置の実験装置は、前述のプリンタLP−9000Cを本実験ができるように部分的に改造したものを使用した。その場合、プリンタLP−9000Cは外径40φmmの感光体を使用しているため、外径が40φmm以外の感光体を用いて実験を行う際には、このプリンタLP−9000Cと同じ機械構成でスケールの異なる画像形成装置を作成し、プリンタLP−9000Cと同じエンジンで画像形成の実験を行った。
【0057】
画像形成の実験を行うにあたり、感光体2の周速はいずれの実験においても約210mm/secに設定した。また、帯電ローラ3aの印加電圧VC(V)は、いずれの実験においても直流電圧DC成分VDC(V)に交流電圧AC成分VAC(V)を重畳して、
C = VDC + VAC = −650 + (1/2)VPP・sin2πft
(ここで、VPP=1750V、f=1.3kHzであり、VACはsin波である。)
に設定した。実験は温度23℃で湿度50%の室内環境で、A3の普通紙に5%濃度のハーフトーンのモノクロ印字を50枚連続で行った。
【0058】
そして、10、20、30、40、および50枚目の印字物をピックアップして目視観察で判断し、これらの印字物のすべてに画像斑がない場合のみ、良好な帯電であると判断して表1に○で表し、これらの印字物のいずれか1にでも画像斑がある場合は、帯電不良であると判断して表1に×で表した。
【0059】
実験No. 1ないし9,13ないし18の各実施例の画像形成装置では、いずれも○で良好な帯電が得られた。また、実験No. 10ないし12,19および20の各比較例では、いずれも×で帯電不良の結果が得られた。
この実験により、帯電ローラ3による感光体2の非接触帯電において、ギャップ部材3d、3eの内側の帯電ローラ3における抵抗層3cの部分3c1,3c2を感光体2の方へ押圧することで、前述の本発明の作用効果が得られることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の画像形成装置は、電子写真、静電複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置であって、帯電ローラの両端部に固定したリング状のギャップ部材を感光体に圧接してこの感光体に対して所定の帯電ギャップを設定することにより、帯電ローラにより感光体を非接触帯電する画像形成装置に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態の一例を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図2】図1に示す例の画像形成装置に用いられる帯電ローラを、その一部を切り欠いて模式的に示す図である。
【図3】図1に示す例の画像形成装置に用いられる帯電ローラおよび感光体の挙動を模式的に示す図である。
【図4】本発明の画像形成装置の実施の形態の他の例における感光体と帯電ローラの挙動を模式的に示す図である。
【図5】本発明の画像形成装置の実施の形態の更に他の例における感光体と帯電ローラの挙動を模式的に示す図である。
【図6】従来の画像形成装置における感光体と帯電ローラの挙動を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1…画像形成装置、2…感光体、3…帯電装置、3a…帯電ローラ、3c…抵抗層、3c1,3c2…抵抗層の押圧される部分、3d,3e…ギャップ部材、8,9…押圧部材、8a,9a…第1押圧部、8b,9b…第2押圧部、8′,9′…第1押圧部材8″,9″…第2押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に設けられた回転軸が装置本体に軸受を介して回転可能に支持された像担持体と、両端部にそれぞれギャップ部材が固定された帯電ローラとを少なくも備え、前記ギャップ部材が前記像担持体の外周面に圧接されることで前記像担持体と前記帯電ローラとの間に帯電ギャップが設定されるとともに、前記帯電ローラが前記帯電ギャップにより前記像担持体を非接触帯電する画像形成装置において、
前記帯電ローラの前記ギャップ部材内側の非帯電領域部分をそれぞれ前記像担持体の方へ押圧する押圧部材を備え、前記押圧部材により前記帯電ローラの前記ギャップ部材内側の非帯電領域部分を前記像担持体の方へ押圧することにより、前記ギャップ部材が前記像担持体の外周面に圧接されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記押圧部材は、前記ギャップ部材も前記像担持体の方へ押圧するように設けられていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記ギャップ部材を前記像担持体の方へ押圧する第1押圧部材と、この第1押圧部材とは別体に設けられ、前記帯電ローラの前記ギャップ部材内側の非帯電領域部分を前記像担持体の方へ押圧する第2押圧部材とからなることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2押圧部材が前記帯電ローラの前記ギャップ部材内側の非帯電領域部分を押圧する押圧力が、前記第1押圧部材が前記ギャップ部材を押圧する押圧力より大きく設定されていることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−41136(P2007−41136A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222907(P2005−222907)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】