説明

画像形成装置

【課題】 記録ヘッドとインクタンクを接続するときにシール部材が擦られて発生する異物を除去できず、記録ヘッドのノズル詰まりなどを生じる。
【解決手段】 シール部材211は、記録ヘッド34の供給口部205の外周面とサブタンク35の接続穴210の内周面との間を径方向でシールする径方向シール部212と、記録ヘッド34の供給口部205の先端面とサブタンク35の接続穴210の底面との間を圧縮方向でシールする圧縮方向シール部213とを有し、異物xが発生した場合でも接続穴210内に閉じ込めて記録ヘッド34側への流出を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に記録ヘッドと記録液供給手段との連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリンタ/ファックス/コピア或いはこれらの機能を複合した画像形成装置としては、例えば、記録液の液滴を吐出する液体吐出ヘッドで構成した記録ヘッドを用いて、被記録媒体(以下「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、また、記録媒体、転写材なども同義で使用する。)を搬送しながら、記録液の液滴(以下、インク滴ともいう。)を用紙に付着させて画像形成(記録、印刷、印写、印字も同義語で用いる。)を行なうインクジェット方式の画像形成部を搭載したものが知られている。
【0003】
このようなインクジェット記録方式の画像形成装置において、記録ヘッドに対して記録液を供給する方式には、記録ヘッドを搭載するキャリッジに記録液を収容した記録液供給手段であるインクカートリッジを着脱自在に装着し、このインクカートリッジから記録ヘッドに記録液を供給する方式と、キャリッジ上に記録ヘッドに記録液を供給する記録液供給手段である小容量のサブタンクを搭載し、記録液収容手段である大容量のメインカートリッジ(メインタンク)を装置本体側に設置し、サブタンクに装置本体側のメインカートリッジから記録液(インク)を補充供給する方式とが知られている。
【0004】
このような記録ヘッドと記録液供給手段との接続構造(連結構造)としては、記録ヘッドの連結部(ジョイント部)を記録液供給手段の連結部(ジョイント部)に挿入し(あるいは逆でもよい。)、各連結部間をシール部材でシールする構造が採用されている。
【0005】
ここで、シール部材としては、特許文献1に記載されているように、O−リングを用いるもの、特許文献2に記載されているように、複数のリング状部材またはテーパー形状にしたものを用いるものなどが知られている。
【特許文献1】特許第3161478号公報
【特許文献2】特開2000−229420号公報
【0006】
ここで、従来のO−リングを用いたシール構造について図11を参照して説明すると、記録ヘッド501のインク供給パイプ502をインクタンク503の接続穴504内に挿入し、インク供給パイプ502外周面と接続穴504内周面との間をO−リング505でシールしている。なお、記録ヘッド501のインク供給パイプ502は内部の流路506を通じてヘッド内にインクを供給し、またインクタンク503の接続穴504はインクタンク503内に収容されているインクを記録ヘッド501に供給するためのインク供給穴507に対応して設けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、インクジェット記録ヘッドは、被記録媒体に直接インク滴を吐出して文字や画像等の記録を行なうものであるので、記録ヘッドのインク吐出孔(ノズル)が異物等で塞がれてしまうと、吐出不良などを生じて異常画像が生じる。そのため、通常は、記録液供給手段側に異物を除去するためのフィルタを備えて、フィルタを介して記録液を記録ヘッドに供給するようにしている。
【0008】
ところが、記録ヘッドと記録液供給手段とを接続するときに、記録ヘッドと記録液供給手段との間をシールするシール材が接触し擦れ合うことで発生する異物は、記録液供給手段のフィルタよりも記録ヘッド側で発生するため、記録ヘッドへの流入を防ぐことができない。その結果、記録ヘッドのインク吐出孔に異物が詰まり、インク吐出不良などによって異常画像の発生要因となる。
【0009】
すなわち、図11に示すように、まずO−リング505を記録ヘッド501のインク供給パイプ502に装着すると、O−リング505の内周面とインク供給パイプ502の外周面とが擦れて、O−リング505の内周面が削れ、このとき発生するO−リング505の異物は、インクタンク503と接続する前に洗浄してしまえば除去することができる。
【0010】
しかしながら、その後、O−リング505を装着した記録ヘッド501のインク供給パイプ502をヘッドタンク503の接続穴504に挿入するとき、O−リング505の外周面と接続穴504の内周面とが擦れて、O−リング505の外周面が削れて異物xが発生することがある。このとき発生した異物xは、インクタンク503側に設ける異物除去のためのフィルタと記録ヘッド501との間にあるために洗浄して除去することは不可能であり、後にこの異物xが記録ヘッドのインク吐出孔に詰まり画像不良を生じることになる。
【0011】
また、先にO−リング505をインクタンク502の接続穴504の内周面に装着し、O−リング505の内周面にインク供給パイプ502を挿入する場合には、O−リング505の内周面側が擦られて削れ、異物が発生するおそれがあり、このときの異物も除去することはできない。
【0012】
さらに、記録ヘッドと記録液供給手段を接続するときに異物が発生しないよう、記録ヘッドと記録液供給手段のシールを圧縮方向だけにした場合、ネジやスナップフィットを用いて結合すると、シール材を充分加圧することが難しく、インク漏れが起き易いという課題を生じる。
【0013】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、記録ヘッドに記録液供給手段を接続するときに発生する異物を記録ヘッド側に流すことなく、確実なシール性を確保し、なおかつ記録液漏れのない信頼性の高い画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、記録ヘッド側と記録液供給手段側とをシールシール部材は少なくとも2箇所の異なる方向で記録ヘッド側と記録液供給手段側とをシールするシール部を有している構成とした。
【0015】
ここで、シール部材は少なくとも径方向と圧縮方向でシールするシール部を有していることが好ましい。また、シール部材は笠形の形状であることが好ましい。さらに、シール部材は径方向でシールするシール部の内周側及び外周側に少なくとも1つの環状の凸部を有していることが好ましく、この場合、シール部材の環状の凸部は断面が半円形状であることが好ましい。また、シール部材の硬度は50度〜70度であることが好ましく、また、フッ素ゴムからなることが好ましい。
【0016】
また、記録液供給手段としては内部に負圧を発生させる負圧発生手段を有しているもの、負圧発生手段を有していないもののいずれでもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る画像形成装置によれば、記録ヘッド側と記録液供給手段側とをシールシール部材は少なくとも2箇所の異なる方向で記録ヘッド側と記録液供給手段側とをシールするシール部を有しているので、記録ヘッドに記録液供給手段を連結するときに発塵する異物を記録ヘッド側に流すことがなく、確実なシール性を確保でき、記録液漏れもなく、信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置を前方側から見た斜視説明図である。
このインクジェット記録装置は、装置本体1と、装置本体1に装着された用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備えている。さらに、装置本体1の前面の一端部側(給排紙トレイ部の側方)には、前面から装置本体1の前方側に突き出し、上面よりも低くなったインクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部4を有し、このカートリッジ装填部4の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
【0019】
このカートリッジ装填部4には、色の異なる色材である記録液(インク)、例えば黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の記録液収容手段としての記録液カートリッジであるインクカートリッジ10k、10c、10m、10y(色を区別しないときは「インクカートリッジ10」という。)を、装置本体1の前面側から後方側に向って挿入して装填可能とし、このカートリッジ装填部4の前面側には、インクカートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)6を開閉可能に設けている。また、インクカートリッジ10k、10c、10m、10yは縦置き状態で横方向に並べて装填する構成としている。
【0020】
また、操作/表示部5には、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの装着位置(配置位置)に対応する配置位置で、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの残量がニアーエンド及びエンドになったことを表示するための各色の残量表示部11k、11c、11m、11yを配置している。さらに、この操作/表示部5には、電源ボタン12、用紙送り/印刷再開ボタン13、キャンセルボタン14も配置している。
【0021】
次に、このインクジェット記録装置の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図3は同機構部の概要を示す側面模式的説明図、図4は同じく要部平面説明図である。
フレーム21を構成する左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材であるガイドロッド31とステー32とでキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図3で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0022】
このキャリッジ33には、前述したようにイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド34を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0023】
記録ヘッド34を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0024】
この記録ヘッド34にはドライバICを搭載し、図示しない制御部との間でハーネス(フレキシブルプリントケーブル)22を介して接続している。
【0025】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34に各色のインクを供給するための各色のサブタンク35を搭載している。この各色のサブタンク35には各色のインク供給チューブ36を介して、前述したように、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填4にはインクカートリッジ10内のインクを送液するための供給ポンプユニット24が設けられ、また、インク供給チューブ36は這い回しの途中でフレーム21を構成する後板21Cに係止部材25にて保持されている。
【0026】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0027】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0028】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。さらに、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド34による印写領域に対応してガイド部材57を配置している。
【0029】
この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図3のベルト搬送方向に周回移動する。
【0030】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロ63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0031】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0032】
さらに、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構81を配置している。
【0033】
この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a〜82d(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84などを備えている。ここでは、キャップ82aを吸引及び保湿用キャップとし、他のキャップ82b〜82dは保湿用キャップとしている。
【0034】
そして、この維持回復機構81による維持回復動作で生じる記録液の廃液、キャップ82に排出されたインク、あるいはワイパーブレード83に付着してワイパークリーナ85で除去されたインク、空吐出受け94に空吐出されたインクは図示しない廃液タンクに排出されて収容される。
【0035】
また、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口89などを備えている。
【0036】
このように構成したインクジェット記録装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0037】
このとき、後述する制御部のACバイアス供給部から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0038】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0039】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ33は維持回復機構81側に移動されて、キャップ82で記録ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ82で記録ヘッド34をキャッピングした状態で図示しない吸引ポンプによってノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
【0040】
次に、この画像形成装置における記録ヘッド34に記録液であるインクを供給するサブタンク35の一例について図4ないし図7をも参照して説明する。なお、図4は同サブタンクの外観斜視説明図、図5は同サブタンクの分解斜視説明図、図6は同サブタンクの模式的側面説明図、図7は図6のA−A線に沿う概略断面説明図である。
【0041】
サブタンク35は、記録液であるインクを収容するインク収容部100を形成する容器本体(ケース本体)101に、インク収容部100の開口(サブタンク15の一面)を封止する可撓性を有するフィルム状部材(可撓性フィルム状部材)102を接着又は溶着などで貼り付け、更にインク収容部100内部にはケース本体101とフィルム状部材102との間にフィルム状部材102を外方に付勢するための弾性部材であるバネ(スプリング)103を設けている。
【0042】
ここで、フィルム状部材102は単層構成でもよいが、種類の異なる第1層と第2層とをラミネートした二層構成、例えばポリエチレンとナイロンのフィルム状部材をラミネートした構成としたり、第1層にシリカ蒸着層を形成した構成とすることができる。フィルム状部材102を種類の異なる2層以上の構成とすることで、収容するインクに対する耐液性の向上を図れる。この場合、ポリエチレンとナイロンの積層構成とすることによって、インクに対する耐液性を確実に確保することができる。また、フィルム状部材102にシリカ蒸着層を含むことでも収容するインクに対する耐液性の向上を図れる。
【0043】
さらに、フィルム状部材102にはバネ103に対応して凸部形状となる膨らみ部102aを形成してその外面に補強部材104を貼り付けている。このように、可撓性フィルム状部材102に凸部を設けることで弾性部材(ここではバネ)103を安定して保持することができる。この場合、可撓性フィルム状部材102は、シート状のフィルム部材を凸形状に成形して作製することで、容易に凸部を形成することができる。
【0044】
そして、フィルム状部材102の変位に応じて変位する満タン検知レバー106をケース101の側部に設けた支持部107,107に揺動可能に取り付けている。
【0045】
また、ケース101にはインク収容部100にインクを補充するためのインク導入路部111を設け、このインク導入路部111とインクカートリッジ10に接続された供給チューブ36とを接続するための連結手段112を着脱自在に装着できるようにしている。
【0046】
さらに、ケース101の下部にはインク収容部100から記録ヘッド34にインクを供給するための連結部材113を取り付け、この連結部材113には記録ヘッド34のインク供給路114を形成し、インク収容部100との間にはフィルタ115を介装している。
【0047】
そして、ケース101の上部分にはインク収容部100から空気を出すための空気流路121を形成している。この空気流路121は、インク収容部100に開口が臨む入口流路部分122と、この入口流路部分122に続く流路部分123とを含み、下流側でケース101に設けた大気開放穴131に連通し、更に大気開放穴131よりも使用状態で下側になる部分に蓄積部126を連続して形成している。
【0048】
この大気開放穴131にはサブタンク35内の密閉状態及び大気開放状態を切り替えるための大気開放手段である大気開放弁機構132を設けている。この大気開放弁機構132はホルダ133内に弁座134、弁体であるボール135及びこのボール135を弁座134側に付勢するスプリング136を収納して構成している。
【0049】
また、ケース101の上部にはサブタンク35内の気体(空気)の量が所定量以上になったこと(又はインク残量が所定量以下になったこと)を検知するための2本の検知電極141、142を装着している。検知電極141、142がいずれもインクに浸されている状態と少なくとも一方がインクに浸されていない状態とで検知電極141、142間の導通状態が変化することによって気体の量(又はインクの量)を検知することができる。
【0050】
そこで、この画像形成装置にける記録液供給手段であるサブタンク35と記録ヘッド34との接続部分(連結部分)の構造について図8及び図9を参照して説明する。なお、図8はサブタンクと記録ヘッドとを模式的に説明する断面説明図、図9は同じく接続部分の拡大断面説明図である。
【0051】
記録ヘッド34には液滴を吐出する複数のノズル201、各ノズル201が連通する液室202、液室202内のインクを加圧するエネルギーを発生する図示しないアクチュエータ手段、複数の液室202にインクを供給する共通液室203、この共通液室203に外部から流入するインクを供給するための供給路204などを形成し、この供給路204にサブタンク35と接続するための接続部(連結部)となる筒状の供給口部(インク供給パイプ)205を設けている。
【0052】
一方、サブタンク35のインク供給穴114の部分には記録ヘッド35の供給口部205を挿入するための接続穴(連結穴)210を形成している。そして、記録ヘッド34の供給口部205をサブタンク35の接続穴210内に挿入し、これらの記録ヘッド34の供給口部205とサブタンク35の接続穴210との間をシール部材211によってシールしている。なお、記録ヘッド34とサブタンク35とはネジ206などで固定している。
【0053】
このシール部材211は、記録ヘッド34の供給口部205の外周面205aとサブタンク35の接続穴210の内周面210aとの間を径方向でシールする径方向シール部212と、記録ヘッド34の供給口部205の先端面205bとサブタンク35の接続穴210の底面210bとの間を圧縮方向でシールする圧縮方向シール部213とを有し、全体として笠形の形状をしている。
【0054】
ここで、シール部材211の径方向シール部212は、内周面及び外周面には環状に凸部、例えば半円形状の凸部212a、212bを形成している。環状に凸部212a、212bを形成することで径方向のシール性が向上し、凸部212a、212bを半円形状にすることで当接点(シール点)が一点に集中してシール性が更に向上する。
【0055】
また、シール部材211の圧縮方向シール部213は、供給口部205の先端面205bに当接する当接部213aと接続穴210の底面21bに当接する当接部213bを強い力で押圧すると、シール部材211の反発によってサブタンク35又は記録ヘッド34が歪んでしまいシール不良の原因となる。そこで、シール部材211の圧縮方向シール部213のシール方向の寸法はサブタンク35の接続穴210底面210bと記録ヘッド34の供給口部205の先端面205bとの間の隙間と同じ又は若干大きくし、圧縮方向シール部213の当接部213a、213bが供給口部205の先端面205b、接続穴210の底面210bに軽く接触する程度としている。
【0056】
このシール部材211としては、硬度が50度〜70度の材質のもので形成することが好ましく、これによってシール部材211は接続部分の形状の微妙な変化にも追従できてよりシール性を高めることができる。また、シール部材211をフッ素ゴムで形成することによってインクに対する耐久性が高まる。
【0057】
このように構成したので、記録ヘッド34の供給口部205にシール部材211を装着した後サブタンク35の接続穴210に挿入して接続するとき、シール部材211の外面とサブタンク35の接続穴210の内面210aとが擦れることでシール部材211の外面が削れるおそれがある。
【0058】
このとき、削られることで図10に示すように異物xが発生した場合、この異物xは、記録ヘッド34の供給口部205の先端面205bとサブタンク35の接続穴210の底面210bとの間がシール部材211の圧縮方向シール部213でシールされているため、接続穴210内に保持された状態になり、記録ヘッド34の供給口部305から供給路304を通じてヘッド内に侵入することがなくなる。
【0059】
このように、シール部材は2箇所の異なる方向で記録ヘッド側(ここでは供給口部)と記録液供給手段側(ここでは接続穴)とをシールするシール部を有しているので、記録ヘッドに記録液供給手段を接続するときに発生する異物を閉じ込めて記録ヘッド側に流すことがなく、ノズル詰まりによる画像不良の発生を防止できる。また、確実なシール性を確保することができて記録液漏れも防止でき、信頼性が向上する。
【0060】
なお、上記実施形態では記録液供給手段が内部に負圧を発生させる負圧発生手段を備えたサブタンクである場合を例にして説明したが、記録液供給手段はこのような構成に限るものではない。
【0061】
すなわち、キャリッジに着脱自在に装着されるインクカートリッジないしインクタンクの構成であっても、上述したように装置本体側から補充供給されるサブタンクの構成のいずれであっても適用することができる。また、内部に負圧を発生させる手段を有するものでも、記録液を収容する収容部と負圧発生部とを分離した構成のもののいずれであっても適用できる。
【0062】
例えば、従来のインクカートリッジ、インクタンク、サブタンク等と称される記録液供給手段としては、特開2001−1539号公報、特開2001−58670号公報、特開2001−63091号公報、特開2003−53987号公報、特開2003−112435号公報などに記載されているものがあり、これらのいずれであっても本発明を適用することができる。なお、これらの記録液供給手段について、インク収容部(タンク)と負圧発生手段との関係及び負圧発生手段の構成をまとめると図12に示すようになる。
【0063】
なお、本発明に係る画像形成装置は、プリンタ単機能構成のものに限らず、プリンタ/ファクシミリ/複写などの複合機能を有する画像形成装置であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の前方側から見た斜視説明図である。
【図2】同装置の機構部の全体構成を説明する側面概略構成図である。
【図3】同機構部の要部平面説明図である。
【図4】同装置のサブタンクの一例を示す斜視説明図である。
【図5】同サブタンクの分解斜視説明図である。
【図6】同サブタンクの模式的側面説明図である。
【図7】図6のA−A線に沿う模式的断面説明図である。
【図8】同装置における記録ヘッドとサブタンクの接続部分の説明に供する模式的断面説明図である。
【図9】同じく図8の要部拡大説明図である。
【図10】同じく作用説明に供する要部拡大説明図である。
【図11】従来の接続構造の説明に供する要部拡大説明図である。
【図12】従来の記録液供給手段のタンク及び負圧発生手段との関係及び負圧発生手段の構成の説明に供する説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1…装置本体
2…給紙トレイ
3…排紙トレイ
4…カートリッジ装填部
10k、10c、10m、10y…インクカートリッジ
33…キャリッジ
34…記録ヘッド
35…サブタンク
36…インク供給チューブ
51…搬送ベルト
100…インク収容部
102…フィルム状部材
103…弾性部材
205…記録ヘッドの供給口部
210…サブタンクの接続穴
211…シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから記録液の液滴を吐出する記録ヘッドと、この記録ヘッドに前記記録液を供給する記録液供給手段とを接続し、この接続部分をシールするシール部材を設けた画像形成装置において、前記シール部材は少なくとも2箇所の異なる方向で前記記録ヘッド側と前記記録液供給手段側とをシールするシール部を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記シール部材は少なくとも径方向と圧縮方向でシールするシール部を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、前記シール部材は笠形の形状であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置において、前記シール部材は径方向でシールするシール部の内周側及び外周側に少なくとも1つの環状の凸部を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置において、前記シール部材の環状の凸部は断面が半円形状であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記シール部材の硬度は50度〜70度であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成装置において、前記シール部材はフッ素ゴムからなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成装置において、前記記録液供給手段は内部に負圧を発生させる負圧発生手段を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成装置において、前記記録液供給手段は内部に負圧を発生させる負圧発生手段を有していないことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−76218(P2007−76218A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268139(P2005−268139)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】