説明

画像形成装置

【課題】印刷時の機器全体の消費電力を抑制することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】この昇華型プリンタ10(画像形成装置)は、画像データが印刷可能な用紙50を搬送する送りローラ14および押さえローラ16を駆動するためのステッピングモータ24と、用紙50を搬送開始時から印刷速度Vpに到達させるためのステッピングモータ24の加速期間Taccに、ステッピングモータ24に対して電流値I1を供給するとともに、用紙50が印刷速度Vpに到達されることに同期して、電流値I1より小さな電流値I2に切り換えて、電流値I2をステッピングモータ24に供給するように制御する制御部31aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置に関し、特に、画像データが印刷可能な用紙を搬送する搬送手段を駆動するための駆動源を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像データが印刷可能な用紙を搬送する搬送手段を駆動するための駆動源を備えた画像形成装置や、画像データの走査部(スキャナなど)を往復移動させる走査手段を駆動するための駆動源を備えた画像読み取り装置などが知られている(たとえば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
上記特許文献1には、原稿の画像データを読み取り、光電変換によって画像信号に変換するスキャナを搭載するとともに、スキャナを原稿上で往復移動させることが可能な走査手段と、走査手段の往復動作の駆動源として機能するパルスモータ(ステッピングモータ)とから構成された画像読取装置を備えた画像形成装置(デジタル複合機)が開示されている。この特許文献1に記載の画像形成装置(デジタル複合機)では、スキャナが読み取り速度(一定速度)に到達するまでの走査初期の加速駆動時において、走査手段を初期加速度と初期加速度より小さな第2の加速度とによって読み取り速度に到達させるようなパルスモータの駆動制御を行うように構成されている。
【0004】
また、上記特許文献2には、蓄積性蛍光体シート上を往復移動することによって、蓄積性蛍光体シートに記録された放射線エネルギを画像情報として読み取るとともに、読み取り後に残存する放射線エネルギを除去することが可能な読取・消去ユニットと、読取・消去ユニットの往復動作の駆動源として機能するパルスモータ(ステッピングモータ)とを備えた画像形成装置(放射線画像記録読取装置)が開示されている。この特許文献2に記載の画像形成装置(放射線画像記録読取装置)では、放射線エネルギの除去時に、放射線エネルギの残量に応じて消去時間および読取・消去ユニットの消去速度(走査速度)を決定した上で、パルスモータに必要なパルス速度に応じた駆動電流値をパルスモータに与える制御を行うように構成されている。
【0005】
また、上記特許文献3には、原稿の画像データを読み取り、光電変換によって画像信号に変換するラインセンサを搭載するとともに、ラインセンサを原稿上で往復移動させることが可能なキャリッジ(原稿走査部)と、キャリッジ(原稿走査部)の往復動作の駆動源として機能するステッピングモータとを備えた画像読み取り装置(デジタル複写機)が開示されている。この特許文献3に記載の画像読み取り装置(デジタル複写機)では、ステッピングモータの駆動電流値を、加速駆動時の電流値と、加速駆動時の電流値より低く設定された定速駆動時の電流値との2種類の電流値を用いてステッピングモータを駆動制御するように構成されている。なお、定速駆動時の所定の期間については加速駆動時の電流値を供給するとともに、所定期間が経過した後に、定速駆動時の電流値に切り換えて供給するように構成されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−227416号公報
【特許文献2】特開2005−92062号公報
【特許文献3】特開2000−196823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1による画像形成装置(デジタル複合機)では、走査手段が一定速度に到達するまでの加速駆動時については、パルスモータの駆動電流値を2段階に制御するものの、走査手段が一定速度に到達した後の、一定速度による読み取り動作においては、駆動電流値を変更することなどによるパルスモータの制御方法などについては、開示も示唆もされていない。したがって、一定速時における駆動電流が、パルスモータが走査手段を移動させるために必要とする駆動トルク以上の電流値として装置に供給されている場合もあると考えられる。この特許文献1によるパルスモータの制御方法を、印字ヘッドの発熱を利用して用紙に印刷を行う画像形成装置(たとえば昇華型プリンタなど)に適用した場合には、印刷時に、印刷のために印字ヘッドが発熱することによる消費電力に加えて、一定速度で用紙を搬送するパルスモータに必要以上の電力が供給されるために、印刷時の機器全体の消費電力が増加してしまうという問題点がある。
【0008】
また、上記特許文献2による画像形成装置(放射線画像記録読取装置)では、読取・消去ユニットが一定速に到達するまでの加速駆動時については、パルスモータの駆動電流値をパルス速度に応じて制御するものの、読取・消去ユニットが一定速度に到達した後の、一定速度による消去動作時においては、駆動電流値を変更することなどによるパルスモータの制御方法などについては、開示も示唆もされていない。したがって、一定速時における駆動電流が、パルスモータが読取・消去ユニットを移動させるために必要とする駆動トルク以上の電流値として装置に供給されている場合もあると考えられる。この特許文献2によるパルスモータの制御方法を、印字ヘッドの発熱を利用して用紙に印刷を行う画像形成装置(たとえば昇華型プリンタなど)に適用した場合には、印刷時に、印刷のために印字ヘッドが発熱することによる消費電力に加えて、一定速度で用紙を搬送するパルスモータに必要以上の電力が供給されるために、印刷時の機器全体の消費電力が増加してしまうという問題点がある。
【0009】
また、上記特許文献3による画像読み取り装置(デジタル複写機)では、キャリッジ(原稿走査部)が加速されて一定速度に到達した直後も、所定の期間については、加速時の駆動電流を下げることなくステッピングモータへの供給を継続しているために、その所定の期間の間、一定速時における駆動電流が、ステッピングモータが読取・消去ユニットを移動させるために必要とされる駆動トルク以上の電流値として装置に供給されている場合もあると考えられる。この特許文献3によるステッピングモータの制御方法を、印字ヘッドの発熱を利用して用紙に印刷を行う画像形成装置(たとえば昇華型プリンタなど)に適用した場合には、印刷時に、印刷のために印字ヘッドが発熱することによる消費電力に加えて、一定速度で用紙を搬送するステッピングモータに必要以上の電力が供給されるために、印刷時の機器全体の消費電力が増加してしまうという問題点がある。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、印刷時の機器全体の消費電力を抑制することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0011】
この発明の第1の局面における画像形成装置は、画像データが印刷可能な用紙を搬送する搬送手段を駆動するための駆動源を備えた画像形成装置において、用紙は、画像データが印刷される印刷部分と、画像データが印刷されない余白部分とを含み、用紙を搬送開始時から一定速度に到達させるための駆動源の加速期間に、用紙の余白部分を搬送するとともに、駆動源に対して駆動源が駆動可能な範囲における実質的に最大のエネルギ量である第1のエネルギ量を供給し、用紙が一定速度に到達されることに同期して、第1のエネルギ量より小さな、第1のエネルギ量の3分の2以下となる第2のエネルギ量に切り換えて、第2のエネルギ量を駆動源に供給するように制御する制御部をさらに備え、駆動源は、パルス数により回転角度の制御が可能なステッピングモータであり、駆動源に供給される第1のエネルギ量および第2のエネルギ量は、ともに電流である。
【0012】
この発明の第1の局面による画像形成装置では、上記のように、用紙を搬送開始時から一定速度に到達させるための駆動源の加速期間に、駆動源に対して第1のエネルギ量を供給するとともに、用紙が一定速度に到達されることに同期して、第1のエネルギ量より小さな第2のエネルギ量に切り換えて、第2のエネルギ量を駆動源に供給するように制御する制御部とを備えるように構成することによって、用紙が一定速度に到達するとともに、印字ヘッドが発熱して電力を消費する印刷開始時に同期させて、用紙を一定速度で搬送する駆動源へのエネルギ供給量を第1のエネルギ量から第1のエネルギ量より小さな第2のエネルギ量へと抑える制御を行うので、用紙搬送開始時における駆動源の加速期間に駆動源に供給するエネルギ量と、印刷時に一定速度で駆動するために供給するエネルギ量とを変更しない制御を行うか、または、加速期間を経過した後の、印刷時の所定の期間もエネルギ量を下げないような制御を行う場合と異なり、印刷時の機器全体の消費電力を抑制することができる。
【0013】
また、第1の局面による画像形成装置では、駆動源の加速期間に駆動源に供給される第1のエネルギ量を、駆動源が駆動可能な範囲における実質的に最大のエネルギ量であるように構成することによって、駆動源は最大の加速度で用紙の搬送を開始することができるので、用紙が一定速度に到達するまでの加速期間を最小とすることができる。したがって、用紙の搬送時間を含めた総印刷時間をより短縮することができる。また、一定速度において駆動源に供給されるエネルギ量を、加速期間において駆動源に供給される最大のエネルギ量の3分の2以下であるように構成することによって、3分の2以下で印刷中に用紙を一定速度で搬送することが可能な駆動トルクになるようなエネルギ量に設定すれば、駆動源の消費電力を効果的に抑制することができる。また、用紙は、画像データが印刷される印刷部分と、画像データが印刷されない余白部分とを含み、制御部を、用紙の余白部分を搬送する際に、駆動源の加速期間としての制御を行うように構成することによって、印刷に直接関係しない用紙の余白部分を利用して用紙の搬送速度を加速させることができるので、用紙の搬送時間を含めた総印刷時間をさらに短縮することができる。また、駆動源を、パルス数により回転角度の制御が可能なステッピングモータであるように構成することによって、パルス数の制御により駆動源の回転速度を制御することができるので、加速期間を含めた用紙の搬送速度の制御や、一定速度に到達した際に駆動源に供給するエネルギ量を切り換えるタイミングを、確実に行うことができる。また、駆動源に供給される第1のエネルギ量および第2のエネルギ量を、ともに電流であるように構成することによって、駆動源に供給する電圧を制御する定電流制御方式を行うための制御回路を設計する場合と比べて、駆動源に供給する電流を制御する定電圧制御方式を行うための制御回路を適用する場合の方が、電気回路上、容易に設計することができる。
【0014】
この発明の第2の局面による画像形成装置は、画像データが印刷可能な用紙を搬送する搬送手段を駆動するための駆動源と、用紙を搬送開始時から一定速度に到達させるための駆動源の加速期間に、駆動源に対して第1のエネルギ量を供給するとともに、用紙が一定速度に到達されることに同期して、第1のエネルギ量より小さな第2のエネルギ量に切り換えて、第2のエネルギ量を駆動源に供給するように制御する制御部とを備える。
【0015】
この発明の第2の局面による画像形成装置では、上記のように、用紙を搬送開始時から一定速度に到達させるための駆動源の加速期間に、駆動源に対して第1のエネルギ量を供給するとともに、用紙が一定速度に到達されることに同期して、第1のエネルギ量より小さな第2のエネルギ量に切り換えて、第2のエネルギ量を駆動源に供給するように制御する制御部とを備えるように構成することによって、用紙が一定速度に到達するとともに、印字ヘッドが発熱して電力を消費する印刷開始時に同期させて、用紙を一定速度で搬送する駆動源へのエネルギ供給量を第1のエネルギ量から第1のエネルギ量より小さな第2のエネルギ量へと抑える制御を行うので、用紙搬送開始時における駆動源の加速期間に駆動源に供給するエネルギ量と、印刷時に一定速度で駆動するために供給するエネルギ量とを変更しない制御を行うか、または、加速期間を経過した後の、印刷時の所定の期間もエネルギ量を下げないような制御を行う場合と異なり、印刷時の機器全体の消費電力を抑制することができる。
【0016】
上記第2の局面による画像形成装置において、好ましくは、駆動源の加速期間に駆動源に供給される第1のエネルギ量は、駆動源が駆動可能な範囲における実質的に最大のエネルギ量である。このように構成すれば、駆動源は最大の加速度で用紙の搬送を開始することができるので、用紙が一定速度に到達するまでの加速期間を最小とすることができる。したがって、用紙の搬送時間を含めた総印刷時間をより短縮することができる。
【0017】
上記第2の局面による画像形成装置において、好ましくは、一定速度において駆動源に供給されるエネルギ量は、加速期間において駆動源に供給される最大のエネルギ量の3分の2以下である。このように構成すれば、3分の2以下で印刷中に用紙を一定速度で搬送することが可能な駆動トルクになるようなエネルギ量に設定すれば、駆動源の消費電力を効果的に抑制することができる。
【0018】
上記第2の局面による画像形成装置において、好ましくは、用紙は、画像データが印刷される印刷部分と、画像データが印刷されない余白部分とを含み、制御部は、用紙の余白部分を搬送する際に、駆動源の加速期間としての制御を行う。このように構成すれば、印刷に直接関係しない用紙の余白部分を利用して用紙の搬送速度を加速させることができるので、用紙の搬送時間を含めた総印刷時間をさらに短縮することができる。
【0019】
上記第2の局面による画像形成装置において、好ましくは、駆動源は、パルス数により回転角度の制御が可能なステッピングモータである。このように構成すれば、パルス数の制御により駆動源の回転速度を制御することができるので、加速期間を含めた用紙の搬送速度の制御や、一定速度に到達した際に駆動源に供給するエネルギ量を切り換えるタイミングを、確実に行うことができる。
【0020】
上記第2の局面による画像形成装置において、好ましくは、駆動源に供給される第1のエネルギ量および第2のエネルギ量は、ともに電流である。このように構成すれば、駆動源に供給する電圧を制御する定電流制御方式を行うための制御回路を設計する場合と比べて、駆動源に供給する電流を制御する定電圧制御方式を行うための制御回路を適用する場合の方が、電気回路上、容易に設計することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態による昇華型プリンタの全体構成を示した斜視図である。図2は、図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタからインクシートカートリッジおよび給紙カセットを省略した状態を示した斜視図である。図3は、図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの回路構成を示すブロック図である。図4〜図12は、図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの詳細構成を示した図である。まず、図1〜図12を参照して、本発明の一実施形態による昇華型プリンタ10の構成について説明する。なお、本実施形態では、画像形成装置の一例である昇華型プリンタに本発明を適用した場合について説明する。
【0023】
本発明の一実施形態による昇華型プリンタ10は、図1および図2に示すように、金属製のシャーシ11と、印字を行うための印字ヘッド12と、印字ヘッド12に対向するように配置されたプラテンローラ13(図5参照)と、金属製の送りローラ14(図5参照)と、送りローラギア15と、送りローラ14(図5参照)に所定の押圧力で接触する金属製の押さえローラ16(図5参照)と、樹脂製の下部用紙ガイド17aと、樹脂製の上部用紙ガイド17bと、ゴム製の給紙ローラ18と、給紙ローラギア19と、ゴム製の排紙ローラ20と、排紙ローラギア21と、インクシート巻取リール22と、板金製のモータブラケット23と、用紙50(図1参照)を搬送するためのステッピングモータ24と、印字ヘッド12を回動させるための駆動源となるステッピングモータ25と、揺動可能な揺動ギア26と、複数の中間ギア27〜30(図6参照)と、昇華型プリンタ10の印刷動作を制御する制御回路部31(図3参照)と、シャーシ11を内部に収納する筐体32(図4参照)とを備えている。また、本実施形態による昇華型プリンタ10には、20枚の用紙50を印刷することが可能なインクシート71(図8参照)が収納されたインクシートカートリッジ70(図1参照)と、昇華型プリンタ10に供給する用紙50(図1参照)を収納するための給紙カセット60(図1参照)とが着脱可能に装着されている。なお、送りローラ14および押さえローラ16は、それぞれ、本発明の「搬送手段」の一例である。また、ステッピングモータ24は、本発明の「駆動源」の一例である。
【0024】
ここで、本実施形態では、図3に示すように、昇華型プリンタ10の制御回路部31は、印刷動作を制御するCPUからなる制御部31aを有している。また、制御部31aは、印刷開始時に、ステッピングモータ24を駆動させるとともに、図11に示すように、用紙50(図5参照)の搬送速度が予め指定された印刷速度Vpに到達するまで、ステッピングモータ24(図3参照)のパルス速度(回転速度)を加速させる制御を行うように構成されている。また、制御部31aは、ステッピングモータ24(図3参照)を駆動する際、図12に示すように、ステッピングモータ24(図3参照)へ供給する電流値を、ステッピングモータ24(図3参照)の駆動開始時から印刷速度Vp(パルス速度)に到達するまでの加速期間Taccに供給する電流値I1から、印刷速度Vpに到達した後に供給する電流値I2に切り換える(本実施形態では、電流値I2は電流値I1の3分の2とする)ことが可能なように構成されている。また、制御部31aは、加速期間Taccにおいて供給する電流値I1を、ステッピングモータ24(図3参照)が駆動可能な電流値の範囲において実質的に最大レベルで供給するような制御を行うように構成されている。この場合、図11の実線200で示すような速度曲線によって、ステッピングモータ24は時刻T1で印刷速度Vpに到達することが可能なように構成されている。また、電流値I1(図12参照)から電流値I2(図12参照)に切り換えるタイミングを、ステッピングモータ24(図3参照)のパルス速度が印刷速度Vp(図11参照)に到達したことに同期させた時刻T1(図11および図12参照)とするように構成されている。また、図12に示すように、印刷速度Vp(図11参照)において供給する電流値I2は、加速期間Taccに供給する電流値I1より低く抑えるような制御を行うように構成されている。なお、印刷速度Vpは、本発明の「一定速度」の一例である。また、電流値I1および電流値I2は、それぞれ、本発明の「第1のエネルギ量」および「第2のエネルギ量」の一例である。
【0025】
なお、比較例として、ステッピングモータ24の駆動開始時から印刷速度Vpに到達するまでに供給する電流値を、印刷速度Vpに到達した後に供給する電流値I2と等しくした場合には、図11の2点鎖線300で示すような速度曲線によって、ステッピングモータ24は時刻T1よりも遅い時刻T2で印刷速度Vpに到達することになる。したがって、時刻T2と時刻T1との差だけ、本実施形態では比較例に比べて印刷に要する時間が短縮されることが可能なように構成されている。
【0026】
また、制御回路部31は、図3に示すように、制御部31aの制御動作に基づいて、印字ヘッド12の発熱体12eの温度を制御するヘッドコントローラ31bと、電流を供給することによってステッピングモータ24および25を駆動するモータドライバ31cと、加速テーブル31dおよび色テーブル31eが格納されたROM31f(読取り専用記憶装置)と、RAM31g(読取り書込み記憶装置)とを含んでいる。また、ヘッドコントローラ31bは、印字ヘッド12の発熱体12eに電圧パルスを印加することによって、発熱体12eの温度を制御する機能を有している。また、加速テーブル31dは、図10に示すように、ステッピングモータ24(図3参照)のパルス速度を上昇させる複数の制御ステップと、各制御ステップに対応したパルス速度(回転速度)とから構成された加速パターン(速度曲線)を示しており、制御部31a(図3参照)は、選択された加速テーブル31dの加速パターンに従って、モータドライバ31c(図3参照)を介してステッピングモータ24および25(図3参照)を駆動させるように構成されている。また、図3に示すように、RAM31gには、ステッピングモータ24の回転制御を行う加速テーブル31dを展開するための領域を有しているとともに、印刷時の印字ヘッド12の発熱体12eに必要とされる温度データ(印加エネルギ値)が規定されている色テーブル31eを展開するための領域も有している。
【0027】
また、本実施形態では、図8および図9に示すように、用紙50は、約0.3mmの厚みを有するとともに、印刷部分50aと、余白部分50bとを含んでいる。なお、用紙50の両端部に設けられた余白部分50bは、用紙50の搬送方向(図9の矢印B方向)に所定の幅を有している。また、用紙50の印刷部分50aと余白部分50bとの境界部に沿って、所定のピッチ間隔で矢印A方向(図9参照)に複数のミシン目50cが形成されている。そして、用紙50は、ミシン目50cに沿って余白部分50bを切り取ることにより、余白部分50bのない写真などの印刷物(印刷部分50a)が得られるように構成されている。なお、上述のように、制御部31a(図3参照)は、印刷開始時に、用紙50の余白部分50b(図9参照)を搬送する際に、電流値I1(図12参照)をステッピングモータ24に供給して加速駆動させるとともに、印刷可能な印刷部分50aに到達すると同時に、電流値I1(図12参照)より小さな電流値I2(図12参照)に切り換えた上で、電流値I2(図12参照)を供給して印刷速度Vp(図11参照)で搬送させるように構成されている。
【0028】
また、図1および図2に示すように、金属製のシャーシ11は、一方側面11aと、他方側面11bと、一方側面11aと他方側面11bとを連結する底面11cとを有している。また、シャーシ11の一方側面11aには、上記した板金製のモータブラケット23が取り付けられている。また、シャーシ11の他方側面11bには、図1および図2に示すように、インクシートカートリッジ70を挿入するための挿入孔11dが設けられている。また、シャーシ11の底面11cには、用紙50の前端部50d(図5参照)および後端部50e(図5参照)を検出するための用紙センサ33aおよび33b(図5参照)が設けられている。
【0029】
また、印字ヘッド12は、図2および図5に示すように、一対の支持軸12aと、一対のアーム部12bと、ヘッド部12cと、ヘッド部12cに取り付けられる樹脂製のヘッドカバー12dとを含む。また、印字ヘッド12は、図2に示すように、シャーシ11の両側面の内側に、支持軸12aを中心として回動可能に取り付けられている。また、印字ヘッド12のヘッド部12cには、図8に示すように、電圧パルスが印加されて発熱する複数の発熱体12eが、ヘッド部12cの用紙50の幅方向(X方向)に沿って所定の間隔を隔てて一列に設けられている。また、発熱体12eは、印刷時に、1つの発熱体12eが1つのドットを形成するように構成されている。
【0030】
また、プラテンローラ13(図7参照)は、シャーシ11の両側面の内側に回転可能に配置されている。また、送りローラ14は、図6に示すように、送りローラギア15に挿入される送りローラギア挿入部14aを有する。また、送りローラ14は、シャーシ11に取り付けられた図示しない送りローラ軸受に回転可能に支持されている。また、図2および図7に示すように、押さえローラ16は、押さえローラ16の両端部が樹脂製の一対の押さえローラ軸受34により回転可能に支持されている。この押さえローラ軸受34は、金属製の軸受支持板35に取り付けられている。また、軸受支持板35は、シャーシ11の両側面の内側に、図示しないバネによる付勢力により押さえローラ16を送りローラ14(図5参照)に対して押圧するように配置されている。
【0031】
また、給紙ローラ18は、図2に示すように、ステッピングモータ24によって回転されることにより、昇華型プリンタ10に装着された給紙カセット60に収納された用紙50を1枚ずつ昇華型プリンタ10の内部に供給する機能を有している。また、排紙ローラ20は、ステッピングモータ24によって回転されることにより、昇華型プリンタ10の内部で印刷が行われた印刷済みの用紙50を昇華型プリンタ10の外部へ排出する機能を有している。
【0032】
また、図6に示すように、モータブラケット23に取り付けられたステッピングモータ24の軸部には、モータギア36が取り付けられている。また、ステッピングモータ24は、インクシート巻取リール22のギア部22aと、給紙ローラギア19と、排紙ローラギア21と、送りローラギア15とを駆動させるための駆動源としての機能を有する。また、ステッピングモータ25は、印字ヘッド12(図5参照)をプラテンローラ13(図5参照)に対して押圧するように、印字ヘッド12の上面を押圧する図示しない押圧部材などの駆動源としての機能を有する。
【0033】
また、インクシート巻取リール22(図6参照)は、図5に示すように、インクシートカートリッジ70の巻取部70aの内部に回転可能に配置された巻取ボビン70bに係合することによって、インクシート71を巻取ボビン70bに巻き取るように構成されている。また、インクシート巻取リール22のギア部22aは、図6に示すように、揺動ギア26が揺動することによって揺動ギア26と係合するように配置されている。
【0034】
また、図2および図5に示すように、下部用紙ガイド17aは、送りローラ14(図5参照)および押さえローラ16の近傍に設置されている。また、上部用紙ガイド17bは、図5に示すように、下部用紙ガイド17aの上部に取り付けられている。この上部用紙ガイド17bは、給紙時には、用紙50が下面側を通過するようにして印刷部(印字ヘッド12のヘッド部12cとプラテンローラ13とが対向する位置)への給紙経路に案内するとともに、排紙時には、用紙50が上面側を通過するようにして排紙経路に案内する機能を有する。
【0035】
また、筐体32は、図3に示すように、蓋部材32aおよび32bと、押しボタンスイッチ32cとを含んでいる。また、蓋部材32aおよび32bは、図3に示すように、下端部を中心として熱転写プリンタ20の外部側に回動可能に設けられている。また、筐体32の蓋部材32aは、図3に示すように、給紙カセット60を昇華型プリンタ10に装着するために開閉可能に設けられている。なお、給紙カセット60が取り外された状態においては、蓋部材32aを閉じることにより、昇華型プリンタ10の内部に埃などが侵入するのが抑制されるように構成されている。また、筐体32の蓋部材32bは、図3に示すように、インクシートカートリッジ70を昇華型プリンタ10に装着するために開閉可能に設けられている。なお、インクシートカートリッジ70の着脱時以外は、蓋部材32bを閉じることにより、昇華型プリンタ10の内部に埃などが侵入するのが抑制されるように構成されている。また、筐体32の押しボタンスイッチ32cは、図3に示すように、ユーザが印刷を開始する際の操作ボタンとして設けられている。
【0036】
また、インクシートカートリッジ70には、図5に示すように、インクシート71が巻き付けられた供給ボビン70cが回転可能に内部に配置された供給部70dが設けられている。また、インクシート71は、Y色(イエロー)印字シート、M色(マゼンダ)印字シートおよびC色(シアン)印字シートの3色のインクシートと、印刷された用紙50の印刷面を保護するための透明のOP(オーバコート)シートとが順に繋げられて構成されている。また、各色印字シート間、および、C色(シアン)印字シートとOP(オーバコート)シートとの接続部分には、それぞれ、印刷開始時にシート頭出しセンサ(図示せず)によって認識される印字シート頭出し識別部(図示せず)が設けられている。
【0037】
図13および図14は、図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの印刷動作を説明するための図である。図15および図16は、図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの印刷時における制御動作を説明するためのフローチャートである。次に、図1、図3〜図6および図8〜図16を参照して、本実施形態による昇華型プリンタ10の印刷動作について説明する。
【0038】
まず、図15に示すように、ステップS1では、印刷ボタン32c(図4参照)がユーザによって押されたか否かが判断され、印刷ボタン32c(図4参照)が押されていない場合は、印刷ボタン32c(図4参照)が押されるまでこの判断が繰り返される。ステップS1において、印刷ボタン(図4参照)が押されたと判断された場合には、ステップS2において、制御部31a(図3参照)により、画像データの読み込みが行われる。この後、ステップS3において、制御部31a(図3参照)により、読み込まれた画像データが、RGBデータ形式からCMYデータ形式に変換される。なお、RGBデータ形式は、光の三原色(R:レッド、G:グリーン、B:ブルー)から構成されており、CMYデータ形式は、色の三原色(C:シアン、M:マゼンダ、Y:イエロー)から構成されている。
【0039】
そして、ステップS4では、図5に示すように、給紙カセット60(図1参照)内の用紙50が、ステッピングモータ24に(図1参照)より印刷開始位置に向かって搬送(給紙)される。具体的には、図6に示すように、ステッピングモータ24が駆動するのに伴って、ステッピングモータ24に取り付けられたモータギア36が矢印C3方向に回転するとともに、中間ギア27および28を介して、送りローラギア15が矢印C1方向に回転する。そして、送りローラギア15が矢印C1方向に回転するのに伴って、中間ギア29および30を介して、給紙ローラギア19が矢印C4方向に回転する。これにより、図5に示すように、給紙ローラギア19の回転に伴って給紙ローラ18が矢印C4方向に回転するので、給紙ローラ18の下面側に接触する用紙50は給紙方向(矢印T1方向)に搬送される。このとき、用紙センサ33aにより用紙50の給紙方向の前端部50dが検出されることにより、用紙50の正常な給紙動作が認識される。また、用紙50の給紙方向(矢印T1方向)への搬送に伴い、用紙センサ33bによって用紙50の前端部50dが検知される。その後、用紙センサ33bの上を通過しながら、さらに給紙ローラ18によって搬送される用紙50は、給紙方向(矢印T1方向)に沿って進行するように下部用紙ガイド17aに案内されて、送りローラ14および押さえローラ16により、図13に示したような印刷開始位置まで搬送される。そして、用紙50が印刷開始位置まで搬送されることにより、用紙センサ33aにより用紙50の給紙方向の後端部50eが検出される。この時、揺動可能な揺動ギア26(図6参照)は、巻取リール22(図6参照)のギア22a(図6参照)に噛合しておらず、巻取リール22(図6参照)のギア22a(図6参照)は回転しない。これにより、給紙時には、巻取ボビン70b(図5参照)および供給ボビン70c(図5参照)に巻き付けられたインクシート71(図5参照)は巻き取られない。
【0040】
そして、ステップS5では、制御部31aにより、モータドライバ31c(図3参照)を介して、ステッピングモータ25(図6参照)が駆動される。そして、ステッピングモータ25(図6参照)により図示しない押圧部材が回動されることによって、図5の状態から図13に示すように、印字ヘッド12のヘッド部12cがプラテンローラ13を押圧する方向に回動される。これにより、印字ヘッド12の発熱体12e(図8参照)が、インクシート71および用紙50を介して、プラテンローラ13を押圧する。
【0041】
そして、ステップS6において、CMYデータ形式に変換された画像の印刷動作が、Y色(イエロー)、M色(マゼンタ)、C色(シアン)の各色毎にこの順番で行われる。以下、ステップS6の印刷処理動作の詳細について説明する。
【0042】
まず、図6に示すように、ステッピングモータ24が駆動するのに伴って、ステッピングモータ24に取り付けられたモータギア36が矢印D3方向に回転するとともに、中間ギア27および28を介して、送りローラギア15が矢印D1方向に回転する。これにより、送りローラ14は、矢印D1方向に回転する送りローラギア15の回転に伴って、図13の矢印D1方向に回転するので、用紙50は排紙方向(矢印U1方向)に搬送される。
【0043】
ここで、本実施形態では、制御部31aは、用紙50の排紙方向(図13の矢印U1方向)への搬送開始時に、図16に示すような搬送制御を行う。まず、ステップS21において、制御部31aは、高品質モードおよび標準モードなどの印刷モードに合わせて印刷時(印画時)の印刷速度Vp(図11参照)が決定される。そして、ステップS22では、用紙50の余白部分50b(図9参照)の長さ(送りしろ)と印刷速度Vp(図11参照)との関係からステッピングモータ24のパルス速度を上昇させる加速テーブル31d(図10参照)が決定される。そして、ステップS23において、制御部31aは、図12に示すように、ステッピングモータ24に供給される電流値I1を最大値に設定するとともに、ステップS24において、モータドライバ31c(図3参照)を介して、電流値I1を供給する。このとき、ステッピングモータ24は、図11に示すように、加速テーブル31d(図10参照)に従った加速パターン(速度曲線)でパルス速度を上昇させていく。そして、ステップS25では、ステッピングモータ24が印刷速度Vp(図11参照)に到達されたか否かが判断され、印刷速度Vp(図11参照)に到達されていないと判断された場合は、ステップS22で選択された加速テーブル31d(図10参照)に従って、ステッピングモータ24のパルス速度を順次上昇させる。ステップS25において、印刷速度Vp(図11参照)に到達されたと判断された場合には、制御部31aは、図12に示すように、ステッピングモータ24に供給される電流値I1を、電流値I1の3分の2の電流値I2に切り換えるとともに、ステップS27において、電流値I2をモータドライバ31c(図3参照)を介して、ステッピングモータ24に供給する。そして、図12に示すように、電流値I2を保持した状態で、印刷速度Vp(図11参照)でのY色(イエロー)の印刷が行われる。
【0044】
この際、用紙50を排紙方向(図10の矢印U1方向)に搬送するとともにインクシート71を巻き取りながら、印字ヘッド12の発熱体12eにより、Y色(イエロー)印字シート(図示せず)のインクが、RAM31gに保存されている画像データのY色(イエロー)に関する濃度信号に対応して、用紙50に印刷(熱転写)が行われる。そして、Y色(イエロー)印字シートの印刷が終了すると、図14に示すように、用紙50は、上部用紙ガイド17bに案内されながら、排紙ローラ20により搬送可能な位置まで搬送された状態となっている。
【0045】
また、揺動可能な揺動ギア26(図6参照)は、インクシート巻取リール22のギア部22aに係合する方向(矢印D2方向)に揺動されて、インクシート巻取リール22のギア部22aと係合する。これにより、図13に示すように、インクシート巻取リール22(図6参照)のギア部22aが矢印D4方向に回転するので、用紙50の搬送動作とともに、供給ボビン70cに巻き付けられたインクシート71が巻取ボビン70bに巻き取られる。
【0046】
また、上述したステップS6のY色(イエロー)に関する印刷に継続される印刷動作(印刷処理)として、ステッピングモータ25(図6参照)により図示しない押圧部材が上方向に回動されると、印字ヘッド12(図5参照)のヘッド部12cがプラテンローラ13(図5参照)から離間する方向に回動される。また、シート頭出しセンサ(図示せず)によってM色(マゼンダ)印字シート(図示せず)の先頭部分にある印字シート頭出し識別部(図示せず)が認識される。これにより、M色(マゼンダ)印字シートの頭出しが行われる。そして、図6に示すように、ステッピングモータ24が駆動するのに伴って、ステッピングモータ24に取り付けられたモータギア36が矢印C3方向に回転するとともに、中間ギア27および28を介して、送りローラギア15が矢印C1方向に回転する。これにより、図14に示すように、送りローラ14が矢印C1方向に回転するのに伴って、用紙50は、送りローラ14および押さえローラ16により印刷開始位置まで再び搬送される。
【0047】
ここで、本実施形態では、制御部31a(図3参照)は、上記Y色(イエロー)の印刷を行う際の用紙50の搬送動作と同様の制御をステッピングモータ24(図3参照)に対して行う。つまり、制御部31aは、用紙50の排紙方向(図13の矢印U1方向)への搬送開始時に、図16に示したステップS21〜ステップS27の制御を再び行う。そして、上記Y色(イエロー)印刷時の動作と同様の動作が行われることによって、M色(マゼンダ)印字シート(図示せず)のインクが、画像データのM色(マゼンタ)に関する濃度信号に対応して、用紙50に印刷(熱転写)が行われる。
【0048】
その後、上記Y色(イエロー)およびM色(マゼンタ)の印刷時と同様の動作によって、C色(シアン)印字シート(図示せず)のインクが、画像データのC色(シアン)に関する濃度信号に対応して、用紙50に印刷(熱転写)される。
【0049】
そして、ステップS7において、印刷された用紙50の表面を保護する目的で、透明のOP(オーバコート)シート(図示せず)のインクが用紙50に印刷(熱転写)される。
【0050】
この際、本実施形態では、制御部31a(図3参照)は、上記各色の印刷を行う際の用紙50の搬送動作と同様に、用紙50の排紙方向(図13の矢印U1方向)への搬送開始時に、図16に示したステップS21〜ステップS27の制御を再び行う。そして、上記各色の印刷時の動作と同様の動作が行われることによって、OP(オーバコート)シート(図示せず)のインクが印刷されるとともに、ステップS6およびステップS7に示した用紙50への印刷処理が終了する。
【0051】
そして、ステップS8では、ステッピングモータ25の駆動により図示しない押圧手段を用いて、印字ヘッド12を印刷待機位置まで上昇させる。
【0052】
さらに、図15のステップS9において、印刷が終了した用紙50は、図14に示すように、上部用紙ガイド17bに案内されながら、排紙ローラ20により排紙される。この際、ステッピングモータ24(図6参照)および各種ギアは、印刷時に用紙50を排紙方向(図13の矢印U1方向)に搬送する場合と同様の動作が行われる。
【0053】
次に、次回の印画の準備として、ステップS10において、Y色(イエロー)のインクシート71の頭出しが行われる。すなわち、シート頭出しセンサ(図示せず)によって印字シート頭出し識別部(図示せず)が認識されるまでインクシート71が巻き取られる。なお、インクシート71の巻き取り動作は、上記した用紙50の印刷時と同様の動作によって行われる。そして、Y色(イエロー)のインクシート71の頭出しが完了した段階で、印刷動作を終了するとともに、制御部31a(図3参照)は、ユーザによって印刷ボタン32c(図4参照)が再び押されるまで印刷動作を停止して待機する。
【0054】
本実施形態では、上記のように、用紙50を搬送開始時から印刷速度Vpに到達させるためのステッピングモータ24の加速期間Taccに、ステッピングモータ24に対して電流値I1を供給するとともに、用紙50が印刷速度Vpに到達されることに同期して、電流値I1より小さな電流値I2に切り換えて、電流値I2をステッピングモータ24に供給するように制御する制御部31aとを備えるように構成することによって、用紙50が印刷速度Vpに到達するとともに、印字ヘッド12が発熱して電力を消費する印刷開始時に同期させて、用紙50を印刷速度Vpで搬送するステッピングモータ24へのエネルギ供給量(電流値)を電流値I1から電流値I2へと抑える制御を行うので、用紙搬送開始時におけるステッピングモータ24の加速期間Taccにステッピングモータ24に供給するエネルギ量(電流値)と、印刷時に印刷速度Vpで駆動するために供給するエネルギ量(電流値)とを変更しない制御を行う場合か、または、加速期間Taccを経過した後の、印刷時の所定の期間もエネルギ量(電流値)を下げないような制御を行うと異なり、印刷時の昇華型プリンタ10の消費電力を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、ステッピングモータ24の加速期間Taccにステッピングモータ24に供給される電流値I1を、ステッピングモータ24が駆動可能な範囲における実質的に最大の電流値であるように構成することによって、ステッピングモータ24は最大の加速度で用紙50の搬送を開始することができるので、用紙50が印刷速度Vpに到達するまでの加速期間Taccを最小とすることができる。したがって、用紙50の搬送時間を含めた総印刷時間をより短縮することができる。
【0056】
また、本実施形態では、印刷速度Vpにおいてステッピングモータ24に供給される電流値I2を、加速期間Taccにおいてステッピングモータ24に供給される最大の電流値I1の3分の2となるように構成することによって、印刷中に用紙50を印刷速度Vpで搬送することが可能な駆動トルクを維持しながらステッピングモータ24の消費電力を効果的に抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、用紙50は、画像データが印刷される印刷部分50aと、画像データが印刷されない余白部分50bとを含み、制御部31aを、用紙50の余白部分50bを搬送する際に、ステッピングモータ24の加速期間Taccとしての制御を行うように構成することによって、印刷に直接関係しない用紙50の余白部分50bを利用して用紙50の搬送速度を加速させることができるので、用紙50の搬送時間を含めた総印刷時間をさらに短縮することができる。
【0058】
また、本実施形態では、駆動源を、パルス数により回転角度の制御が可能なステッピングモータ24であるように構成することによって、パルス数の制御により駆動源の回転速度(パルス速度)を制御することができるので、加速期間Taccを含めた用紙50の搬送速度の制御や、印刷速度Vpに到達した際に駆動源に供給するエネルギ量(電流値)を切り換えるタイミングを、確実に行うことができる。
【0059】
また、本実施形態では、ステッピングモータ24に供給される第1のエネルギ量および第2のエネルギ量を、ともに電流であるように構成することによって、ステッピングモータ24に供給する電圧を制御する定電流制御方式を行うための制御回路を設計する場合と比べて、ステッピングモータ24に供給する電流を制御する定電圧制御方式を行うための制御回路を適用する場合の方が、電気回路上、容易に設計することができる。
【0060】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0061】
たとえば、上記実施形態では、画像データが印刷可能な用紙50を搬送する送りローラ14および押さえローラ16を駆動するためのステッピングモータ24を備えた画像形成装置の一例として昇華型プリンタ10を示したが、本発明はこれに限らず、画像データが印刷可能な用紙を搬送手段を駆動するためのステッピングモータを備えた画像形成装置であれば、昇華型プリンタ以外の他の画像形成装置にも適用可能である。
【0062】
また、上記実施形態では、印刷速度Vpにおいてステッピングモータ24に供給される電流値I2を、加速期間Taccにおいてステッピングモータ24に供給される最大の電流値I1の3分の2として制御を行う例を示したが、本発明はこれに限らず、電流値I2を、印刷中に用紙50を印刷速度Vpで搬送することが可能な駆動トルクが得られる範囲であれば、電流値I1の3分の2未満の電流値としてもよく、印刷時の消費電力をさらに抑制することができる。
【0063】
また、上記実施形態では、定電圧制御方式によってステッピングモータ24に供給する電流値を制御する制御部の例を示したが、本発明はこれに限らず、定電流制御方式によってステッピングモータに供給する電圧値を制御する制御部を適用してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、印刷動作の際に、用紙50の余白部分50bの搬送時に、ステッピングモータ24に供給する電流値I1を最大値として用紙50の搬送速度を印刷速度まで加速させる制御を適用する例を示したが、本発明はこれに限らず、印刷される画像サイズ(印刷領域)に応じて、用紙に印刷されない領域を搬送する場合も、ステッピングモータに供給する電流値を最大値として用紙の搬送速度を印刷速度まで加速させるような制御を行うようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、印刷動作の際に、印字ヘッド12を押圧しながら用紙50にインクシート71の各色インクおよびオーバコート用のインクを転写(印刷)する印刷処理の直前において、用紙50の余白部分50bの搬送速度をステッピングモータに供給する電流値を最大値とし印刷速度まで加速させる制御を行う例を示したが、本発明はこれに限らず、給紙カセットから用紙を給紙する場合や、次の色を印刷するために用紙を印刷開始位置まで搬送する場合(たとえば、Y色印刷後のM色移行時、M色印刷後のC色移行時など)においても、搬送開始時に、ステッピングモータに供給する電流値を最大値として用紙の搬送速度を一定値まで加速させるような制御を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態による昇華型プリンタの全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタからインクシートカートリッジおよび給紙カセットを省略した状態を示した斜視図である。
【図3】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの回路構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの斜視図である。
【図5】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの内部構造を説明するための断面図である。
【図6】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタのステッピングモータおよび各種ギアの配置構成を示した側面図である。
【図7】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの平面図である。
【図8】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの印字ヘッドの詳細図である。
【図9】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの用紙を説明するための図である。
【図10】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの加速テーブルの一例を示した図である。
【図11】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの加速テーブルに伴うステッピングモータのパルス速度を説明するための図ある。
【図12】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの用紙搬送時にステッピングモータに供給する電流値制御を説明するための図ある。
【図13】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの印刷動作を説明するための図である。
【図14】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの印刷動作を説明するための図である。
【図15】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの印刷時における制御動作を説明するためのフローチャートである。
【図16】図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの用紙搬送に伴うステッピングモータの制御動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
14 送りローラ(搬送手段)
16 押さえローラ(搬送手段)
24 ステッピングモータ(駆動源)
31a 制御部
50 用紙
50a 印刷部分
50b 余白部分
I1 電流値(第1のエネルギ量)
I2 電流値(第2のエネルギ量)
Tacc 加速期間
Vp 印刷速度(一定速度)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データが印刷可能な用紙を搬送する搬送手段を駆動するための駆動源を備えた画像形成装置において、
前記用紙は、前記画像データが印刷される印刷部分と、前記画像データが印刷されない余白部分とを含み、
前記用紙を搬送開始時から一定速度に到達させるための前記駆動源の加速期間に、前記用紙の前記余白部分を搬送するとともに、前記駆動源に対して前記駆動源が駆動可能な範囲における実質的に最大のエネルギ量である第1のエネルギ量を供給し、前記用紙が前記一定速度に到達されることに同期して、前記第1のエネルギ量より小さな、前記第1のエネルギ量の3分の2以下となる第2のエネルギ量に切り換えて、前記第2のエネルギ量を前記駆動源に供給するように制御する制御部をさらに備え、
前記駆動源は、パルス数により回転角度の制御が可能なステッピングモータであり、
前記駆動源に供給される前記第1のエネルギ量および前記第2のエネルギ量は、ともに電流である、画像形成装置。
【請求項2】
画像データが印刷可能な用紙を搬送する搬送手段を駆動するための駆動源と、
前記用紙を搬送開始時から一定速度に到達させるための前記駆動源の加速期間に、前記駆動源に対して第1のエネルギ量を供給するとともに、前記用紙が前記一定速度に到達されることに同期して、前記第1のエネルギ量より小さな第2のエネルギ量に切り換えて、前記第2のエネルギ量を前記駆動源に供給するように制御する制御部とを備えた、画像形成装置。
【請求項3】
前記駆動源の前記加速期間に前記駆動源に供給される前記第1のエネルギ量は、前記駆動源が駆動可能な範囲における実質的に最大のエネルギ量である、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記一定速度において前記駆動源に供給される前記エネルギ量は、前記加速期間において前記駆動源に供給される前記最大のエネルギ量の3分の2以下である、請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記用紙は、前記画像データが印刷される印刷部分と、前記画像データが印刷されない余白部分とを含み、
前記制御部は、前記用紙の前記余白部分を搬送する際に、前記駆動源の前記加速期間としての制御を行う、請求項2〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記駆動源は、パルス数により回転角度の制御が可能なステッピングモータである、請求項2〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記駆動源に供給される前記第1のエネルギ量および前記第2のエネルギ量は、ともに電流である、請求項2〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−105193(P2008−105193A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287891(P2006−287891)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】