説明

画像形成装置

【課題】要送風対象物である装置内機器を効率的に冷却することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】ハウジング2aの正面に形成された吸気口42と、吸気口42から導かれ内部の要冷却対象物を冷却するための空気流を生じさせる送風用ファン700とを備える。吸気口42がハウジング2aの正面の適所に形成された凹部40内に設けられる。この凹部40内には吸気口42の正面側を覆った状態で凹部40に対応した形状のカバー部材20が嵌合される。このカバー部材20の全周縁と凹部40との間に、吸気口42に連通する隙間60が設けられる。カバー部材20と凹部40の底部との間に、吸気口42に導入される空気が案内される吸気案内口33を有する吸気案内部材30が設けられ、この吸気案内口33が正面視において吸気口42とずらした位置に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、スキャナー装置およびファクシミリ装置などの画像形成装置に関し、特に内部機構を送風する必要がある画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機等の画像形成装置においては、その作動に伴い内部雰囲気を高温にする装置内機器が存在する。例えば、用紙への画像印刷は、まず画像形成部において給紙部から搬送された用紙上に電子写真プロセスによって所定のトナー像を形成し、次いで定着部においてこのトナー像に熱と圧力を加えて定着した後、排紙トレイ上に排出するという工程により行われるが、上記定着部においては高温の加熱ローラにより熱と圧力とが加えられ、この加熱ローラにより内部の雰囲気が高温となる。
【0003】
そして、装置内部をこのような高温の雰囲気のまま放置していると、この温度の影響が周辺の装置内機器に及んで不具合を生じる虞があり、このため装置内部にファンを設け、装置内の高温の空気を排出するとともに外気を取り込んで、装置内の雰囲気を変えることにより装置内機器の空冷を行っている(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
具体的に、この特許文献1には、外気を装置内に取り入れる吸気口が画像形成装置の一側面に設けられるとともに、装置内の空気を外部に排気する排気口が装置の他側面に設けられ、上記吸気口と排気口との間に該吸気口から排気口への空気流を形成するための軸流ファンが設けられ、該空気流により装置内機器に対して送風することにより該機器を空冷する画像形成装置が開示されている。
【0005】
また、この種の画像形成装置においては、装置内機器が画像形成装置の正面側から背面側に細長く配設され、これらの装置内機器が画像形成装置内の用紙搬送方向である左右方向に並設されているのが一般的である。
【0006】
従って、上記吸気口から流入した空気は、装置内の略中央部に設けられた定着部を含む各装置内機器を用紙の搬送方向に沿って順次冷却した後、排気口から排気されるものとなされている。
【特許文献1】特開2003−76253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような画像形成装置においては、装置内機器が左右方向に沿って並設され、用紙を順次搬送し得るものとなされているので、搬送方向手前側の装置内機器が邪魔になって装置内機器を正面側または背面側に迂回した状態で通気され、効率的に送風して装置内機器を冷却することが困難であった。
【0008】
しかも、近年、画像形成装置の両側方に、ソート、ステープル等の後処理を実行するフィニッシャーや大容量の給紙ユニットが設置されることがあり、これらのユニットの関係上、吸・排気口の位置が制約され、一層効率的な送風が困難となっている。
【0009】
一方において、画像形成装置の正面側に吸気口を設ける画像形成装置も知られているが、画像形成装置の正面に吸気口を設けると外観を損ねるばかりか、吸気口を通じて内部装置の作動音がユーザにダイレクトに伝わり、ユーザに不快感を与える原因となる。特に、吸気口の周辺は埃等が付着して黒ずむとともに、この装置に付着した埃等が装置操作中のユーザに付着することがあった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、要送風対象物である装置内機器に対して効率的に送風することができ、外観に優れ、ユーザに与える不快感を軽減することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明に係る画像形成装置は、ハウジングの正面に形成された吸気口を有する吸気部と、上記吸気口から内部の要送風対象物へ送風するための空気流を生じさせる送風用ファンとを備えた画像形成装置において、上記吸気部は、上記ハウジングの正面の適所に設けられ、底部に上記吸気口が形成された凹部と、この凹部内に嵌合され、上記吸気口を覆った状態で上記凹部の外周形状に対応した外周形状を有するカバー部材とを有し、かつ上記カバー部材の全周縁と上記凹部との間に、上記吸気口に連通する隙間が設けられ、上記カバー部材と上記凹部の底部との間に、上記吸気口に導入される空気が案内される吸気案内口を有する吸気案内部材が設けられ、この吸気案内口が正面視において上記吸気口とずらした位置に形成されることを特徴とするものである。
【0012】
この発明によれば、ハウジングの正面に形成された吸気口を有する吸気部からの空気流を送風用ファンにより生じさせるので、正面側から取り入れられた外気が要送風対象物である装置内機器間の隙間を縫って満遍なく行き渡り、要送風対象物に対して効率的に送風することができる。しかも、画像形成装置の正面側にはフィニッシャーや給紙ユニットが設置されることが常時ないので、吸気口を設ける位置について制約を受けることがなく、装置内機器との関係で送風効率を向上させるために自由に設定することができ、その結果例えば冷却効率を高めることができる。
【0013】
ここで、吸気口を画像形成装置の正面側に設けた場合には、内部の作動音がユーザに直接伝達され、また外観を損ねることが懸念されるが、本発明では、上記吸気口がハウジングの正面側に形成された凹部内に形成され、この凹部内には吸気口の前面側を覆った状態で上記凹部の外周形状に対応した外周形状のカバー部材が嵌合されているので、該カバー部材が遮音することにより内部の作動音がユーザに直接伝達されることがなく、これによりユーザに与える不快感を軽減することができる一方、該カバー部材が凹部内に収納されて目立たなくされているので、外観体裁を良好なものとすることができる。また、カバー部材の全周縁と該凹部との間に吸気口に連通する隙間が設けられているので、外気を十分に取り込むことができるとともに、隙間に埃等が付着してもカバー部材の外縁に溶け込んで目立たず、良好な外観を比較的長期にわたって維持することができる。さらに、カバー部材が凹部内に配設され、埃等は凹部の奥底部に付着することから、ユーザが画像形成装置の正面に触れても該埃等がユーザに付着することがない。
【0014】
さらに、この発明において、上記カバー部材と上記凹部の底部との間に、上記吸気口に導入される空気が案内される吸気案内口を有する吸気案内部材が設けられ、この吸気案内口が正面視において上記吸気口とずらした位置に形成される。このように構成すれば、吸気案内口が正面視において上記吸気口とずらした位置に形成されているので、カバー部材の周縁部から導入された空気が直接吸気口に流入することがなく、折れ曲がった空気流が形成され、このため装置内部に埃等が導入されることが軽減される。しかも、吸気案内部材の存在により装置内部の作動音に対する遮音効果が向上する。
【0015】
上記送風用ファンの設置位置や吸気口の形成位置を特に限定するものではないが、例えば上記送風用ファンが上記要冷却対象物に対して少なくとも同一高さまたはその上方に配設される一方、上記吸気口がこの送風用ファンに対応した高さに設けられているのが好ましい(請求項2)。このように構成すれば、装置内部の高温の空気等を効果的に排出することができ、装置内機器に対して効率よく送風することができる。
【0016】
また、この発明において、上記排気部は、ハウジングの背面側に形成されたダクトを有し、このダクトはその一端が上記吸気口に略対向する位置に設置される一方、他端がハウジングの底面に形成された上記排気口に略対向する位置に設置されてなるのが好ましい(請求項3)。このように構成すれば、装置内部の送風効率を高水準に維持したまま、排気口の形成位置をハウジングの底面に設定することができる。
【0017】
さらに、この発明は、上記要送風対象物が用紙上に形成されたトナー像を加熱により定着させる定着部である場合や感光体ドラムを帯電させる帯電部である場合に好適に採用される(請求項4、請求項5)。すなわち、定着部では用紙上に形成されたトナー像を加熱することにより定着するため、この定着部周辺に効率よく送風して該周辺の雰囲気を冷却する必要がある。また、帯電部では帯電する際に発生する放電生成ガスが発生するため、これを除去する必要がある。従って、要送風対象物がこれらの装置内機器である場合に、効率的に送風することができる。
【0018】
また、この発明において、上記吸気口は、正面視において、用紙上に所定のトナー像を形成する画像形成部と、正面視において上記画像形成部に隣接して配置された用紙上のトナー像を加熱により定着させる定着部との間の略中央部に位置しているのが好ましい(請求項6)。このように構成すれば、定着部周辺の高温の空気が画像形成部に流入することがなく、該送風がいわゆるエアーカーテンとして機能する。従って、画像形成部における熱の影響を可及的に抑制することができ、しかも定着部周辺の雰囲気を効率よく冷却することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる画像形成装置によれば、画像形成装置内部における要送風対象物の周りに効果的に空気流を発生させることができ、要送風対象物に対しいて効率的に送風することができ、例えば要送風対象物を効率的に冷却したり、作動過程で生成されるガス等を効率的に排出したりすることができる。しかも、吸気口を設ける位置について制約を受けることがほとんどなくなり、送風効率を向上する観点から自由に設定することができる。
【0020】
また、吸気口の正面側に設けられたカバー部材により送風用ファンの作動音等が効果的に遮断され、これによりユーザに与える不快感を軽減することができる。
【0021】
さらに、該カバー部材が凹部内に収納されて目立たなくされているので、外観体裁を良好なものとすることができる。しかも、カバー部材の全周縁と凹部との間の隙間から外気を取り込むものとなされているので、カバー部材の全周から外気を十分に取り込むことができるとともに、外気の取り込みにあたって埃等が付着してもカバー部材の外周縁に溶け込んで目立たず、比較的長期にわたって良好な外観を維持することができる。
【0022】
また、上記使用に伴う埃等は、装置の正面壁から凹んだ凹部の奥底部に専ら付着するので、該装置を操作中のユーザにこの埃等が付着することがほとんどなくなり、これによりユーザに与える不快感を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1及び図2は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す全体概略図である。なお、本実施形態では、本発明に係る画像形成装置をコピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能等の機能を兼ね備えた複合機について説明するが、例えば複写機、プリンタ装置、ファクシミリ装置、スキャナ装置等に対しても適用可能である。
【0024】
この画像形成装置1は、ハウジング2a内に画像形成部300を備えた装置本体部2と、装置本体部2の側方(図2では右側方)に設置された給紙装置3と、給紙装置3が設置されている側とは他方の側方に設置されているフィニッシャー6とからなる。
【0025】
装置本体部2には、該装置本体部2の下部に配設された給紙部100と、この給紙部100の側方及び上方に配設された用紙搬送部200と、給紙部100の上方に配設された画像形成部300と、この画像形成部300の側方に配設された定着部400と、これら画像形成部300及び定着部400の上方に配設された画像読取部500とが備えられている。これらの装置内機器、すなわち画像形成部300、定着部400等は装置本体部2の内部に用紙搬送方向と直交する幅方向に沿って細長く配設され、ハウジング2a内の上部においては画像形成部300、定着部400が用紙の搬送方向(左右方向)に沿って順次並設されている。
【0026】
給紙部100は、給紙カセット111に積層載置された用紙の束を、給紙ローラ112の回転動作によって最上位の用紙から1枚ずつ用紙搬送部200に給紙するものである。用紙搬送部200は、給紙部100または給紙装置3から給紙された用紙を、各種ローラ対202,203によって画像形成部300に搬送し、さらに画像形成部300及び定着部400において画像形成がなされた用紙を搬送ローラ対205によってフィニッシャー6に搬送するようになっている。なお、両面印刷時には、用紙はスイッチバック部206によって画像転写面が反転された後に、再び画像形成部300に搬送される。また、フィニッシャー6が設置されていない場合には、搬送ローラ対205(排出ローラ対)によって、装置本体部2の側部に設けられた排出トレイに用紙を排出されるものとなされている。
【0027】
画像読取部500は、コンタクトガラス501上に載置された原稿に、露光ランプから光を照射し、その反射光を反射鏡を介してCCDラインセンサ等からなる光電変換部に導くことにより、原稿の画像情報を読み取るものである。
【0028】
画像形成部300は、上記画像読取部500の下方に配設され、電子写真プロセスによって、用紙上に所定のトナー像を形成するものであり、回転可能に軸支された光導電性を有する感光体ドラム301と、この感光体ドラム301の周囲にその回転方向に沿って、帯電ユニット302、露光ユニット303、現像ユニット304、転写ユニット305、クリーニングユニット306および除電ユニット307を備えている。
【0029】
定着部400は、上記画像形成部300の用紙搬送方向の下流側に配置され、画像形成部300においてトナー像が転写された用紙を、加熱ローラ401と加圧ローラ402からなる一対の定着ローラによって挟んで加熱し、用紙上にトナー像を定着させるものである。
【0030】
給紙装置3は、大量の用紙を収容し、装置本体部2の用紙搬送部200に向けて用紙を給送するものである。給紙装置3内では、大量の用紙が積載されるリフト部310が上下移動し、積載された用紙の最上部が捌きローラ320及び搬送ローラ対330によって用紙を装置本体部2側に搬送するようになっている。
【0031】
フィニッシャー6は、上記装置本体部2の搬送ローラ対205から搬送されてきた用紙に対して、パンチ処理及びステープル処理等の後処理や、用紙を中央で折りたたんでブック綴じするブック綴じ処理等を行った後、用紙を排出トレイ622、623に排出するものである。
【0032】
この画像形成装置1の基本的な作動状態を簡単に説明すると、帯電ユニット302により図2で時計方向に回転する感光体ドラム301が一様に帯電され、上記画像読取部500で読み取られた画像情報に基づいて露光ユニット303(レーザー操作ユニット等)からのレーザービームにより感光体ドラム301上に静電潜像が形成され、現像ユニット304により静電潜像に現像剤(トナー)が付着されてトナー像が形成される。
【0033】
上記のようにトナー像が形成された感光体ドラム301に向けて、給紙装置3または給紙部100から用紙搬送部200を通って用紙が画像形成部300に搬送され、この画像形成部300において転写ローラ等からなる転写ユニット305により感光体ドラム301の表面におけるトナー像が用紙に転写される。そして、トナー像が転写された用紙は感光体ドラム301から分離され、定着部400に搬送されてトナー像が定着される。定着部400を通過した用紙は、搬送ローラ205を経てフィニッシャー6に搬送され、ステープル、パンチ等の所定の後処理後に用紙排出トレイ622,623に排出される。
【0034】
そして、転写ユニット305による転写後に感光体ドラム301はクリーニングユニット306及び除電部307で残留トナー、残留電荷を除去して、必要に応じて再び帯電ユニット302で帯電される。
【0035】
そして、画像形成装置1は、上記のように作動することにより、画像形成部300や定着部400等の各装置内機器、特に定着部400から発熱し、装置本体部2のハウジング2a内が比較的高温の雰囲気となる。しかも、帯電ユニット302により感光体ドラム301を帯電させる際に放電生成ガスが発生する。
【0036】
この高温の雰囲気をそのまま放置すると、装置内機器に悪影響を来す虞がある一方、放電生成ガスを除去する必要があるので、この画像形成装置1では、ハウジング内の雰囲気を入換えるとともに各装置内機器に対して送風するものとなされている。
【0037】
すなわち、この画像形成装置1は、装置本体部2におけるハウジング2aの正面に吸気部10が設けられる一方、ハウジングの背面に排気部50(図8、図9参照)が設けられ、この吸気部10と排気部50との間に軸流ファンからなる送風用ファン700が設けられ、送風用ファン700により空気流を形成して、吸気部10から外気を取り入れつつ、排気部50からハウジング2a内の空気を排出し得るものとなされている。
【0038】
図3は吸気部10の配設位置を示す斜視図であり、図4は吸気部10の配設位置を示す概略正面図である。図5は、吸気部10を分解して示す斜視図である。
【0039】
吸気部10は、装置本体部2のハウジング2aの正面における所定位置に設けられている。具体的には、吸気部10は、上記ハウジング2aの正面であって、上記画像形成部300における感光体ドラム301及び定着部400に対応した位置に設けられている。
【0040】
この吸気部10は、ハウジング2aの上記所定位置に設けられた凹部40と、この凹部40の奥底部40aにハウジング2aを前後に貫通して設けられた吸気口42と、上記凹部40内に嵌合された吸気案内部材30と、この吸気案内部材30を介設して上記凹部40内に嵌合されたカバー部材20とを有して構成されている。そして、送風用ファン700の作動により、カバー部材20の外周縁と凹部40との間に形成された隙間60から外気を吸い込み、吸気案内部材30に設けられた吸気案内口33、吸気口42を通してハウジング2a内に外気を取り入れるものとなされている(図8参照)。
【0041】
具体的には、カバー部材20は、少なくとも外周縁が所定の模様や記号等の装飾形状に形成され、このカバー部材20自体で装飾効果を奏するものが採用されている。本実施形態では、カバー部材20は、図4ないし図6に示すように、外周縁が6角形の盾型板状形状に形成され、これ自体がエンブレムとして機能するものである。またカバー部材20は、幅方向中央部に向かうにつれ前方に膨出して形成された板状体として構成されている。特に、本実施形態では、カバー部材20表面の内側領域に社名や商品名等の所定の文字や記号等が表示されている。また、このカバー部材20は、明度の高い色で着色されていてもよく、或いはカバー部材20に発光手段を内蔵させて発光させるように構成してもよい。
【0042】
このカバー部材20の外周縁における所定箇所(本実施形態では7箇所)には、後方に突出する係止片21が設けられている。この係止片21は、先端部に外方に突出する係止爪21aを有し、この係止爪21aが吸気案内部材30の後述する係止孔34に係止されることにより、カバー部材20が吸気案内部材30の後述する凹陥空間内に嵌合された状態で固定されるものとなされている。
【0043】
また、カバー部材20は、その裏面側における幅方向中央部の上下2箇所に、後方に突出する円柱状の押圧突起部22が設けられている。この押圧突起部22は、上記吸気案内部材30を凹部40内の適正箇所に押し付けるとともにカバー部材20と吸気案内部材30との奥行き方向の間に通気路としての隙間を設けるためのものであり、吸気案内部材30の後述する位置規制突起部32に対向して設けられている。この押圧突起部22の先端面には、雌ネジ孔22aが設けられ、カバー部材20を嵌合した状態で図示しない雄ねじにより吸気案内部材30とともにハウジング2aに固定されるものとなされている。
【0044】
なお、この押圧突起部22の個数や突設箇所は、特に限定するものではなく、吸気案内部材30の取付を考慮して適宜設定することができる。また、カバー部材20の裏面(背面)側の適所には、該カバー部材20を補強するための補強リブが適宜設けられている。
【0045】
一方、吸気案内部材30は、上記カバー部材20の背面側(後方側)に配設され、正面側がカバー部材20の形状に対応して凹陥した皿状体として構成されるとともに、カバー部材20を皿状体の凹陥空間内に収納した状態で吸気案内部材30の周壁部とカバー部材20との間に通気用の隙間60が設けられるように構成される。この隙間60の総開口面積は、特に限定するものではないが、吸気口42の総開口面積と同等ないしは若干広く形成されるのが好ましい。このように構成すれば、効率良く吸気することができ、しかも吸気に伴う音の発生を効果的に抑制することができる。
【0046】
そして、この皿状体の開口縁には、その全周に亘って外方に突出するフランジ部31が設けられている。このフランジ部31が凹部40の周縁部に係止されることにより、吸気案内部材30の底部と凹部40の奥底部40aとの間に通気路としての隙間が設けられる。すなわち、吸気案内部材30の底部と凹部40の奥底部40aは、所定間隔を離間した状態で配置される。
【0047】
また、吸気案内部材30の幅方向中央部における上下2箇所には、正面側に突出する円柱状の位置規制突起部32が設けられている。この位置規制突起部32は、上記カバー部材20の押圧突起部22と協働してカバー部材20と吸気案内部材30との間に通気路としての隙間を設けるためのものであり、カバー部材20が吸気案内部材30内に収納された状態でフランジ部31の正面とカバー部材20の正面とが略面一となるように設定されている。
【0048】
この位置規制突起部32は、図7に示すように、後方(背面側)に開口する中空形状となされ、後方から凹部40の後述する位置決め突出部41が緊密状態に嵌合し得るものとなされている。一方、位置規制突起部32の先端面には、雌ネジ孔32aが吸気案内部材30を貫通した状態で設けられ、上記したように、ハウジング2a内から差し込まれた図示しない雄ねじによりカバー部材20とともにハウジング2aに固定されるものとなされている。
【0049】
吸気案内部材30の底部における上記位置規制突起部32の周囲には、所定数(本実施形態では7個)の吸気案内口33が底部を貫通して形成され、カバー部材20とフランジ部31(凹部40)との間の隙間60から流入する外気を吸気案内部材30の裏面側(吸気口42側)に導入するものとなされている。この吸気案内口33は、円形状に形成され、正面視において凹部40に設けられた吸気口42とずらした位置に形成されている。すなわち、吸気案内口33は、吸気口42に対して千鳥状に配置され、空気がハウジング2aの正面側から背面側に直線的に通気しないように形成されている。全ての吸気案内口33の開口面積の総和である総開口面積は、特に限定するものではないが、吸気口42の総開口面積と同等ないしは若干広く形成されるのが好ましい。
【0050】
また、吸気案内部材30における上記吸気案内口33の周囲であって、上記カバー部材20の係止片21に対応する部位(7箇所)には、略矩形状の係止孔34が設けられ、係止片21の係止爪21aが係止孔の周縁部に係止されるものとなされている。この係止状態においては、カバー部材20は、吸気案内部材30の凹陥空間内に上記隙間60を形成した状態で仮止めされる。
【0051】
さらに、上記吸気案内部材30は、着色剤が添加された合成樹脂材料により製造され、全体が明度の低い色(例えば、黒色、紺色、焦げ茶色等)により着色されている。この色の選定にあたっては、明度の低い色、例えば明度が96以下の色に設定するのが好ましく、さらに好ましくは明度を48以下に設定するのがよい。色相は特に限定するものではないが、彩度は比較的高いものが好ましい。このように、吸気案内部材30が明度の低い色により着色されているので、カバー部材20が際立って目立つようになる一方、吸気案内部材30においてカバー部材20の周縁部がカバー部材20の縁取りとして機能する。
【0052】
なお、着色の手法としては、上記のように着色された合成樹脂により形成されるものだけではなく、塗料を塗布するものであってもよい。また、吸気案内部材30の全体を着色するものでなくても、フランジ部31を含むその周辺だけ着色するものであってもよい。
【0053】
凹部40は、ハウジング2aの正面壁が凹陥した状態で形成され、カバー部材20及び吸気案内部材30に対応した形状を有する。具体的には、カバー部材20に対応した6角形の盾型形状を呈し、吸気案内部材30におけるフランジ部31の外周縁よりも若干小さく、かつ吸気案内部材30の周壁の外周縁よりも若干大きく形成されている。
【0054】
この凹部40の奥底部40aにおける幅方向中央部の上下2箇所には、正面側に突出する円柱状の位置決め突出部41が設けられている。この位置決め突出部41は、上記吸気案内部材30の位置規制突起部32の中空空間に嵌合され、吸気案内部材30の中央部を支持するとともに、その位置決めを行うものとなされている。そして、位置決め突出部41が、吸気案内部材30と凹部40の奥底部40aとの間に通気路としての隙間が形成されるように高さ調整されている。
【0055】
また、位置決め突出部41は、円柱状の形状を呈し、その軸心部に雌ネジ孔41aが貫通した状態で設けられている。この雌ネジ孔41aは、カバー部材20及び吸気案内部材30の雌ネジ孔22a、32aと同径、同心軸となるように設定され、これらの雌ネジ孔を1本の雄ねじが螺合し得るように構成されている。
【0056】
この位置決め突出部41の周囲には、複数個(図例では5個)の吸気口42がハウジング2aの正面壁を貫通して形成されている。この吸気口42の形状は、特に限定するものではないが、本実施形態では、円形状に形成されている。なお、本実施形態では、複数個の吸気口42が設けられているが、吸気口の数は特に限定するものではなく、例えば単一の吸気口を設けるものとしてもよい。
【0057】
さらに、凹部40の内周面には、凹部40内に膨出する当接部43が設けられ、吸気案内部材30の周壁の外面が当接して吸気案内部材30ががたつかない状態で保持されるものとなされている。なお、この当接部43の少なくとも先端部を弾性部材により形成してもよく、この場合にはこれらの当接部が吸気案内部材30を弾性的に保持してその保持力が向上する。
【0058】
次に、この吸気部10の組み立てについて説明する。
【0059】
まず、カバー部材20を吸気案内部材30に組み付ける。すなわち、係止片21を吸気案内部材30の係止孔34に対向させた状態で、カバー部材20を吸気案内部材30の凹陥空間内に収納嵌合する。このとき、係止片21が係止孔34の周縁部に当接し、この状態でさらにカバー部材20を吸気案内部材30側に押し付けると係止片21が弾性変形して上記周縁部を乗り越え、係止爪21aが係止孔34を通過した時点で係止片21が弾性回復し、これにより係止爪21aが係止孔34の背面側周縁部に係止される。
【0060】
次に、カバー部材20が取り付けられた吸気案内部材30をハウジング2aの凹部40に嵌合し、この状態でハウジング2aの背面側から各部材の雌ネジ孔22a,32a,41aに雄ねじを螺合し、これによりカバー部材20及び吸気案内部材30をハウジング2aに固定する。
【0061】
而して、吸気部10に、図8に示すように、カバー部材20の外周縁と凹部40との間に、具体的にはカバー部材20の外周縁と吸気案内部材30のフランジ部31との間に隙間60が形成される。この隙間60は、カバー部材20と吸気案内部材30との隙間、吸気案内口33、吸気案内部材30と凹部40の奥底部との隙間、吸気口42を通じて、ハウジング2a内の空間に連通する。
【0062】
一方、排気部50は、図8及び図9に示すように、ハウジング2aの背面側に設けられ、ハウジング2aの背面側底面部にもうけられた排気口51と、一端が上記吸気部10に略対位して開口し他端が上記排気口51に連通する排気ダクト52とを備える。この排気口51にはルーバー(図示せず)が取り付けられている。この排気部50の具体的構成は、特に限定するものではなく、公知の機構が採用されている。
【0063】
また、送風用ファン700は、具体的には、2個の軸流ファンがハウジング2aの内部であって、吸気部10の背面側に左右方向(用紙搬送方向)に沿って並設され、該一方の軸流ファンの配設位置が感光体ドラム301の上方に位置するものとなされている一方、他方の軸流ファンの配設位置が定着部400の上方に位置するものとなされている。従って、この軸流ファン700により感光体ドラム301を含む画像形成部300及び定着部400の上方に比較的流れの速い空気流を形成することができる。なお、送風用ファン700は、個数や種類等の具体的構成を特に限定するものではなく、単一のその他の公知のファンを設けるものとしてもよい。
【0064】
次に、この画像形成装置1の作用について説明する。
【0065】
画像形成装置1の電源がオンにされると、動作準備として加熱ローラ401等が加熱され、ハウジング2a内が高温の雰囲気となるとともに、複写動作が実行されると画像形成部300における帯電ユニット302周辺に放電生成ガスが発生する。一方、画像形成装置1の電源オンに伴い送風用ファン700が駆動し、空気流が形成される。
【0066】
具体的には、送風用ファン700が駆動すると、図8に矢印で示すように、外気が、カバー部材20の外周縁と吸気案内部材30のフランジ部31との間の隙間60からカバー部材20と吸気案内部材30との隙間、吸気案内口33、吸気案内部材30と凹部40の奥底部との隙間、吸気口42を通じて、ハウジング2a内に吸引され、ハウジング2a内の装置内機器、特に感光体ドラム301、帯電ユニット302を含む画像形成部300と定着部400との間を通過して、これらの装置内機器を効率的に冷却するとともに放電生成ガスを効率よくハウジング2a外に排出する。吸気部10内部の空気流は、吸気口42と吸気案内口33とをずらして配置しているために、屈曲した流れとなり、埃等がダイレクトにハウジング2a内に導かれることが効果的に防止される。そして、ハウジング2a
に導入された空気は、これらの装置内機器により暖められた空気とともに排気部50を通じてハウジング2a外部に排気される。このように、吸気口42を含む吸気部10が、ハウジング2aの正面で、かつハウジング2a内で比較的高温になる画像形成部300及び定着部400の近傍に設けたので、装置内機器を効率的に冷却することができる。
【0067】
しかも、吸気部10を装置本体部2の正面に設けることにより、比較的大型のフィニッシャー6や給紙装置3等を設置した場合でも吸気部10を設ける位置について制約されることがなく、このため冷却及び放電生成ガスの排出のための送風効率を考慮して最適な位置に吸気部10を設けることができる。
【0068】
また、送風用ファン700の回転作動に伴い、比較的耳障りな作動音を生じるが、この画像形成装置1では、吸気口42の正面側に、該吸気口42の正面側を覆って吸気案内部材30及びカバー部材20が設けられるので、作動音が直接外部に漏れることがなく、装置本体部2の内部作動音が効果的に遮られる。従って、上記作動音によってユーザに与える不快感を軽減することができる。
【0069】
さらに、カバー部材20が吸気案内部材30を介して凹部40内に嵌合収納され、装置本体部2の正面が略面一となるので、外観を損ねることがないばかりか、装飾されたカバー部材20が配設され、明度の低いフランジ部31により該カバー部材20が縁取りされているので、却って外観構成が向上する。
【0070】
使用に伴い、吸気部10のフランジ部31の周りに埃等が付着して黒ずんでも、明度の低い上記フランジ部31により装飾されたカバー部材20の縁取り部と溶け込み目立たない。
【0071】
しかも、埃等は専ら隙間60周りの吸気案内部材30の底部に付着するが、この底部はハウジング2aの正面よりも若干凹んで位置するので、該埃等が装置操作中のユーザに付着することもない。
【0072】
なお、以上に本実施形態に係る画像形成装置について説明したが、この発明に係る画像形成装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、以下のような変更が可能である。
【0073】
1)上記実施形態では、カバー部材20の外周縁が装飾的効果を有する6角形の盾型形状に形成されているが、カバー部材20の外周縁の形状は特に限定するものではない。
【0074】
ただし、カバー部材20の外周縁を円形、正方形等の単純な形状でなく、装飾的効果を有する装飾形状とすれば、埃等が付着しても一層目立たなくなるという点で有利である。装飾形状としては、上記実施形態のようにエンブレム形状の他、例えば動物や植物等のものの形状をかたどった象形形状等のそれ自体で装飾的効果があるものであれば特に限定するものではない。
【0075】
2)上記実施形態では、ハウジング2aの背面側から差し込まれた雄ねじによりカバー部材20及び吸気案内部材30をハウジング2aに固定するものとなされているが、この組み立て構造を特に限定するものではない。
【0076】
例えば、カバー部材20における係止片21の係止爪21aを吸気案内部材30の係止孔34で係止させるものではなく、係止片21を該係止孔34に挿通させるとともに、係止爪21aを凹部40に新たに設けた第2係止孔に係止させるものとしてもよい。このように構成すれば、雄ねじを省略することができ、これに伴って部品点数及び組み立て行程を削減することができ、コスト、手間の点で有利である。
【0077】
3)また、上記カバー部材、吸気案内部材の裏面(背面)に発泡合成樹脂等の音を吸収する防音材を装着し、遮音効果を向上させるものとしてもよい。ただし、防音材を設ける場合には、吸気部10の周辺は比較的高温となるので耐熱性の防音材を設けるのが好ましい。
【0078】
4)上記実施形態では排気口51をハウジング2aの底面部に設け、該排気口51に排気ダクト52を通じて排気するものとなされているが、図10に示すように必要に応じて排気ダクト52を省略し、ハウジング2aの背面に排気口51を設けるようにしてもよい。
【0079】
また、排気ダクト52の上部或いは排気口51の周辺部等の適宜位置に排気流形成のためのファンを設けるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同画像形成装置の一実施形態を示す概略図である。
【図3】同画像形成装置の吸気部の配設位置関係を示す斜視図である。
【図4】同画像形成装置の吸気部の配設位置関係を示す概略正面図である。
【図5】同画像形成装置の吸気部を分解した状態で示す斜視図である。
【図6】同画像形成装置のカバー部材を背面側から示す斜視図である。
【図7】同画像形成装置の吸気案内部材を背面側から示す斜視図である。
【図8】同画像形成装置における空気の流れを示す説明図である。
【図9】同画像形成装置における空気の流れを示す説明図である。
【図10】他の実施形態に係る同画像形成装置における空気の流れを示す説明図である。
【符号の説明】
【0081】
1 画像形成装置
2a ハウジング
3 給紙装置
6 フィニッシャー
10 吸気部
20 カバー部材
30 吸気案内部材
33 吸気案内口
34 係止孔
40 凹部
40a 奥底部
42 吸気口
51 排気口
60 隙間
300 画像形成部
301 感光体ドラム
400 定着部
700 送風用ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの正面に形成された吸気口を有する吸気部と、上記吸気口から内部の要送風対象物へ送風するための空気流を生じさせる送風用ファンとを備えた画像形成装置において、
上記吸気部は、上記ハウジングの正面の適所に設けられ、底部に上記吸気口が形成された凹部と、この凹部内に嵌合され、上記吸気口を覆った状態で上記凹部の外周形状に対応した外周形状を有するカバー部材とを有し、かつ上記カバー部材の全周縁と上記凹部との間に、上記吸気口に連通する隙間が設けられ、
上記カバー部材と上記凹部の底部との間に、上記吸気口に導入される空気が案内される吸気案内口を有する吸気案内部材が設けられ、この吸気案内口が正面視において上記吸気口とずらした位置に形成されていることを特徴とすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
上記送風用ファンが上記要送風対象物に対して少なくとも同一高さまたはその上方に配設される一方、上記吸気口がこの送風用ファンに対応した高さに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
上記画像形成装置には、排気口を有しかつハウジングの背面側に形成された排気部が備えられ、
上記排気部は、ハウジングの背面側に形成されたダクトを有し、このダクトはその一端が上記吸気口に略対向する位置に設置される一方、他端がハウジングの底面に形成された上記排気口に略対向する位置に設置されてなることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項4】
上記要送風対象物が用紙上に形成されたトナー像を加熱により定着させる定着部であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
上記要送風対象物が感光体ドラムを帯電させる帯電部であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
上記吸気口は、正面視において、用紙上に所定のトナー像を形成する画像形成部と、正面視において上記画像形成部に隣接して配置された用紙上のトナー像を加熱により定着させる定着部との間の略中央部に位置していることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−225512(P2008−225512A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164552(P2008−164552)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【分割の表示】特願2003−184982(P2003−184982)の分割
【原出願日】平成15年6月27日(2003.6.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】