説明

画像形成装置

【課題】長期間の繰り返し画像出力においても、トナーの飛び散りや転写不良による画像欠陥が抑制され、良好な出力画像が得られる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明の画像形成装置は、像保持体と、該像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電された像保持体上に静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を中間転写体に転写する一次転写手段と、前記中間転写体に転写されたトナー像を、画像出力媒体に転写する二次転写手段と、を有し、且つ、式(1)〔0≦Log(R)−Log(6.0×1011×tanδ)〕、式(2)〔9.2≦Log(R)≦10.0〕、及び(3)〔1.0×10−3≦tanδ≦10.0×10−3〕の全てを満たす画像形成装置[式中、Log(R)は中間転写体の表面抵抗率の常用対数値(logΩ/□)を、tanδはトナーの1kHzにおける誘電正接を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、レーザープリンター、ファクシミリ等の電子写真方式を利用した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成装置は、無機又は有機の光導電性材料からなる潜像保持体上を一様な電位に帯電し、レーザーや発光ダイオードなどにより光画像信号を露光することで静電潜像を形成した後、帯電したトナーで前記静電潜像を現像して可視化したトナー像を形成する。そして、上記トナー像を、中間転写体を介して、或いは直接用紙やOHPなどの画像出力媒体に静電的に転写し、更にこれを過熱や加圧することで画像出力媒体に定着させて、所望の出力画像を得る。
【0003】
近年は、像保持体である電子写真感光体をプロセス方向に複数個並べ、画像各色を一度に形成することのできるタンデム方式によるフルカラー画像形成装置が多く実用化されている。このようなタンデム方式による画像形成装置においては、各色を一度に転写するための装置構成の自由度が高いベルト形状の中間転写体、所謂、中間転写ベルトが多く用いられている。
【0004】
中間転写ベルトの材料としては、ポリカーボネート樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリアルキレンフタレート樹脂、ポリカーボネート/ポリアルキレンフタレートのブレンド材料、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、などの熱可塑性樹脂からなる半導電性の無端ベルトなどが用いられる。
また、近年では、ポリイミド樹脂を主成分とし、カーボンブラックなどの導電性の粒子を分散させた中間転写ベルトが実用化されている。ポリイミド樹脂を主成分とした中間転写ベルトは、機械的強度の強さや高弾性率、更に耐クリープ性に優れることなどから、前述のタンデム方式によるフルカラー画像形成装置に特に好適に用いられている。
【0005】
また、中間転写ベルトには機械的強度だけでなはなく、電気抵抗の経時安定性が求められる。中でも、中間転写ベルトの表面抵抗率は、像保持体より転写されたトナー像を保持し、かつ、トナーの飛び散りを発生させることなく、画像出力媒体へトナー像を転写するため、極めて重要である。すなわち、経時などにより中間転写ベルトの表面抵抗率が低下すると、中間転写ベルト上のトナー像が乱れるだけではなく、画像出力媒体への転写においても、トナーが画像周辺に飛び散り、画像品質が劣化してしまう。したがって、トナーの飛び散りを防止するためには、中間転写ベルトの表面抵抗率を所定の範囲に維持する必要がある。
【0006】
一方、画像形成装置中のトナーにおいては、攪拌により所定の帯電量に帯電された後、現像工程において像保持体上の静電潜像を可視化し、転写工程において中間転写ベルト上に転写され、更に、画像出力媒体へ転写されるまで、所定の帯電量を保持することが求められる。すなわち、トナーの電荷保持能力が十分ではない場合、中間転写ベルト上でトナーの電荷が変化し、出力画像が劣化してしまう。このような、トナー帯電量の変化を防止する技術としては、例えば、特許文献1には、中間転写ベルトの表面抵抗率とトナーの外添剤の体積抵抗とをそれぞれ所定の範囲に制御する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平10−207245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、長期間の繰り返し画像出力においても、トナーの飛び散りや転写不良による画像欠陥が抑制され、良好な出力画像を得ることが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、中間転写体の表面抵抗率とトナーの1kHzにおける誘電正接とを所定の関係に制御することで、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の画像形成装置は、像保持体と、該像保持体を帯電させる帯電手段と、該帯電手段により帯電された像保持体上に静電潜像を形成する露光手段と、前記像保持体上の静電潜像をトナーにて現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を中間転写体に転写する一次転写手段と、前記中間転写体に転写されたトナー像を、画像出力媒体に転写する二次転写手段と、を有し、且つ、下記式(1)、式(2)、及び(3)の全てを満たすことを特徴とする画像形成装置である。
0≦Log(R)−Log(6.0×1011×tanδ) (1)
9.2≦Log(R)≦10.0 (2)
1.0×10−3≦tanδ≦10.0×10−3 (3)
[上記式(1)〜式(3)中、Log(R)は、中間転写体の表面抵抗率の常用対数値(logΩ/□)を表し、tanδは、トナーの1kHzにおける誘電正接を表す。]
【0010】
本発明において、中間転写体が中間転写ベルトであることが好ましい態様である。
また、トナーがカーボンブラックを含有することが好ましい。
更に、プロセススピードが50mm/sec以上500mm/sec以下であることが好ましい態様である。
【0011】
なお、本発明の画像形成装置により、上記の効果が得られる理由は必ずしも明確ではないが、本発明者は、以下のように推察する。
中間転写ベルト(中間転写体)の表面抵抗率が高い場合、中間転写ベルトと画像出力媒体との間で発生する剥離放電により中間転写ベルトの表面が変質し、長期間の繰り返し画像出力において、表面抵抗率が低下する。中間転写ベルトの表面抵抗率が低下すると、転写工程において転写電界がトナー周囲に回り込むことから、転写電界の分布が乱れることによりトナーの飛び散りが発生し、出力画像が劣化してしまう。
他方、一般にトナーは帯電する粒子であるため、その帯電状態は外部の電界の影響を受ける。外部の電界の影響の受け易さは、トナーの誘電的性質、とりわけ誘電正接(tanδ)の大きさで表すことができ、トナーの誘電正接が大きいほど、トナーの帯電状態は外部電界の影響を受け易い。転写工程においては、トナーには転写電界が印加される。ここで、トナーの誘電正接が大きい場合は、転写電界によりトナーの帯電量が変化(低下)してしまい、トナーの飛び散りが発生してしまう。また更には、トナーの周囲に回り込んだ転写電界により、トナーの帯電量分布は更に乱れ、結果として、トナーの飛び散りは更に悪化する。
【0012】
ここで、トナーの誘電正接が大きくならないようにを所定の範囲に制御すると、転写電界がトナー帯電量に及ぼす影響を小さくすることができる。更には、トナー周囲に回り込む転写電界に対しても影響を受け難くなり、そのため、中間転写ベルトの表面抵抗率が比較的低い場合であっても、トナーの飛び散りが発生せず、良好な出力画像を得ることができると考えられる。この点を考慮して、出力画像に対し、中間転写ベルトの表面抵抗率とトナーの静電正接との関係を実験的に調べたところ、前記式(1)、式(2)、及び式(3)で表される条件を全て満たすことで、長期間の繰り返し画像出力においても、トナーの飛び散りや転写不良による画像欠陥が抑制され、良好な出力画像を得ることが可能な画像形成装置が得られることを見出した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長期間の繰り返し画像出力においても、トナーの飛び散りや転写不良による画像欠陥が抑制され、良好な出力画像を得ることが可能な画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の画像形成装置について詳細に説明する。
本発明は、像保持体、帯電手段、露光手段、現像手段、一次転写手段、及び二次転写手段を有し、中間転写体を用いる中間転写方式による画像形成装置であれば、特に限定されるものではない。本発明の画像形成装置は、例えば、現像装置内に単色のトナーのみを有するモノカラー画像形成装置や、各色毎に現像器を備えた複数の像保持体をプロセス方向に直列に配置したタンデム方式によるフルカラー画像形成装置等であってもよい。
本発明の画像形成装置において、前記像保持体、及び前記各手段の配置の自由度の大きさや、画像出力の速度の点から、中間転写体として中間転写ベルトを備えることが好ましい。
【0015】
本発明においては、中間転写体の表面抵抗率の常用対数値Log(R)(logΩ/□)、及びトナーの1kHzにおける誘電正接tanδが、下記式(1)、式(2)、及び(3)の全てを満たすことを要する。
0≦Log(R)−Log(6.0×1011×tanδ) (1)
9.2≦Log(R)≦10.0 (2)
1.0×10−3≦tanδ≦10.0×10−3 (3)
【0016】
まず、本発明においては、中間転写体の表面抵抗率の常用対数値Log(R)と誘電正接tanδとの関係が、上記式(1)を満たす必要がある。
上記式(1)を満たすことで、トナーの帯電特性の維持と、長期にわたる使用における中間転写体の表面抵抗の変化を抑制し、良好な出力画像を長期にわたって提供することができる。
【0017】
また、中間転写体の表面抵抗率の常用対数値Log(R)は、9.2logΩ/□以上10.0logΩ/□以下であることを要し、中間転写体のトナー保持の能力と、画像出力媒体との間で発生する剥離放電による表面抵抗率の低下を防止する点から、9.3logΩ/□以上9.6logΩ/□以下であることが好ましい。
Log(R)が、9.2logΩ/□未満であると、中間転写体上に転写されたトナー像を保持することができず、画像に乱れが発生してしまう。また、10.0logΩ/□を超えると、画像出力媒体との間で発生する剥離放電により中間転写体の表面が変質し、表面抵抗率が低下することで、転写工程においてトナーの飛び散りが発生し、出力画像が劣化してしまう。
【0018】
更に、トナーの1kHzにおける誘電正接tanδは、1.0×10−3以上10.0×10−3以下であることを要し、トナーの帯電維持性をより高めるという観点から、1.0×10−3以上7.0×10−3以下であることが好ましい。
tanδが、1.0×10−3未満であると、トナー中に着色剤を極めて微細に分散する必要があり、多大な時間とコストを要するため製造が困難となり、また、10.0×10−3を超えると、トナーの帯電の維持性が低下することにより、転写不良が発生し出力画像が劣化する。
【0019】
なお、本発明における「誘電正接(tanδ)」とは、複素誘電率ε=ε’−iε”において(iは虚数単位)、実数部分ε’と虚数部分ε”の比で表され、誘電正接(tanδ)=ε”/ε’なる関係がある。誘電正接(tanδ)は、例えば、測定対象となるトナー5gを圧力成型機でペレット成型(直径50mm)し、LCRメーター(LCRメーター6440A型:東陽テクニカ社製)にて、周波数1kHz、電圧5Vの条件にて測定することで、求めることができる。
また、本発明における中間転写体(中間転写ベルト)の表面抵抗率は、円形電極(例えば、ハイレスターIP「HRプローブ」:三菱油化社製)を用い、JIS K6911(1995)によることで求めることができる。
【0020】
以下、図1を参照して、本発明の画像形成装置について説明する。ここで、図1は、中間転写体として中間転写ベルトを備えたフルカラー画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
図1において、電子写真感光体からなる像保持体101a〜101dの周囲には、その回転方向に沿って順次、帯電装置(帯電手段)102a〜102d、像露光装置(露光手段)114a〜114d、現像装置(現像手段)103a〜103d、一次転写ロール(一次転写手段)105a〜105d、像保持体クリーニング装置104a〜104dが配置されている。また、像保持体101a〜101d表面に接触しながら、像保持体101a〜101dと一次転写ロール105a〜105dとの間を、矢印の方向に移動する中間転写ベルト(中間転写体)107が、テンションロール106a〜106d、バックアップロール108、及びドライブロール112により張架されている。
【0021】
更に、中間転写ベルト107に接触するように、中間転写ベルトクリーニング装置111が配置されている。また、中間転写ベルト107を介してバックアップロール108に対向する位置に二次転写ロール(二次転写手段)109が配置されており、中間転写ベルト107表面に接触しながら中間転写ベルト107と二次転写ロール109との間を、画像出力媒体113が矢印の方向に移動し、その後、定着装置110を通過する。
【0022】
一次転写ロール105a〜105dが、中間転写ベルト107を介して像保持体101a〜101dに押圧する部位が一次転写部となり、像保持体101a〜101dと一次転写ロール105a〜105dとの間には一次転写電圧が印加される。また、二次転写ロール109が中間転写ベルト107を介してバックアップロール108に押圧する部位が二次転写部となり、二次転写ロール109とバックアップロール108との間には二次転写電圧が印加される。
【0023】
図1に示すフルカラー画像形成装置において、矢印方向に回転する像保持体101aの表面が帯電装置102aで一様に帯電された後、レーザー光等の像露光装置114aにより第1色目の静電潜像が形成される。形成された静電潜像はその色に対応するトナーを収容した現像装置103aにより、トナー像として可視化される。トナー像は、一次転写部を通過する際に、一次転写ロール105aによって中間転写ベルト107上に静電的に一次転写される。以降、同様にして、第1色目のトナー像を保持した中間転写ベルト107上に、第2色目、第3色目、第4色目のトナー像が順次重ね合わせられるよう一次転写され、最終的にフルカラーの多重トナー像が得られる。現像装置103a〜103dは、それぞれ各色の静電潜像に対応するトナー(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)を収容する。
【0024】
上記中間転写ベルト上107上に形成された多重トナー像は、二次転写部を通過する際に、画像出力媒体113に静電的に一括転写される。トナー像が転写された画像出力媒体113は、定着装置110に搬送され、定着処理された後、機外に排出される。
【0025】
一次転写後の像保持体101a〜101dは、像保持体クリーニング装置104a〜104dにより残留トナーが除去される。
また、二次転写後の中間転写ベルト107は、中間転写ベルトクリーニング装置111により残留トナーが除去され、次の画像作成プロセスに備える。
【0026】
なお、本発明の画像形成装置は、一次転写後の像保持体101a〜101d表面に残留している残留電位を除去するために、除電器を備えていてもよい。
【0027】
本発明の画像形成装置において、プロセススピードが50mm/s以上500mm/s以下であることが好ましく、50mm/s以上400mm/s以下であることが好ましい。
この範囲であると、中間転写体表面と画像出力媒体の間の剥離放電による、中間転写体の表面抵抗率の低下に起因する出力画像の劣化防止と、画像出力スピードとを好適に両立することが可能である。
なお、前記プロセススピードとは、単位時間当たりに中間転写体の表面が像保持体と摺擦する距離を表す。
【0028】
本発明の画像形成装置に用いられる中間転写ベルトについて詳細に説明する。
本発明における中間転写ベルトは、単層でも或いは多層構造でもよいが、多層構造のものでは層間の剥離は経時的に表面層が磨耗する等の問題があり、更に生産性や製造コストの点から見ても単層構造のものが好ましく用いられる。
【0029】
単層構造の中間転写ベルトの材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリアルキレンフタレート樹脂、ポリカーボネート/ポリアルキレンフタレートのブレンド材料、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体等の熱可塑性樹脂や、ポリイミド、ポリイミドとポリアミドの共重合体等の熱硬化性樹脂に、導電剤を溶解或いは分散させたものが用いられる。
導電剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、ニッケル、銅、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、チタン酸カリウム等の導電性粒子や、ポリアニリン、ポリチオフェン等の有機導電性物質などが用いられる。
中でも、ポリイミド樹脂を主成分(主成分とは、中間転写ベルト中のポリイミド樹脂含有量が50質量%を超えることを指す。)とし、カーボンブラックなどの導電性粒子を分散させた中間転写ベルト(以下、適宜、ポリイミドベルトと称する。)が、機械的強度の強さや高弾性率、更に耐クリープ性に優れることなどから、特に好適に用いられる。
【0030】
中間転写ベルトの膜厚としては、繰り返し画像出力においても寸法精度などの形状を維持する観点から、30〜200μmであることが好ましく、更には40〜150μmであることがより好ましい。
【0031】
ポリイミド樹脂を主成分とし、カーボンブラック等の導電性粒子を分散させた中間転写ベルトの製造方法としては、ポリイミド前駆体溶液を円筒成型管の外周面又は内周面へ軸方向に塗布して、ポリイミド前駆体塗膜を形成した後、加熱焼成することでイミド転化させてポリイミド皮膜を形成する方法が好適に用いられる。塗布の方法としては、ポリイミド前駆体溶液が円筒成型管の軸と平行な方向に塗布されていれば限定されるものではなく、具体的には、円筒成型管をポリイミド前駆体溶液に浸漬して引き上げる浸漬塗布法、或いは、ポリイミド前駆体溶液を円筒成型管内周面に軸方向に流し込む方法などが挙げられる。
【0032】
また、ポリイミド前駆体溶液は、円筒成型管への塗布に先立って、カーボンブラック等の導電性粒子を分散させておく。分散方法としては、ジェットミル、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の方法を用いることができる。
【0033】
ここで、ポリイミドを主成分とし、カーボンブラック等の導電性粒子を分散させた中間転写ベルトの場合、前記式(2)を満たすためには、上記のような分散方法を用い、ポリイミド前駆体溶液中の導電性粒子の分散状態を調整することが重要である。
すなわち、導電性粒子が過剰に微細に分散されている場合、イミド転化させて得られた中間転写ベルト表面における導電性粒子が導電パスを形成する割合が著しく低下するため、表面抵抗率が高くなり、前記式(2)を満たすことが困難となる。また、分散状態が悪く、導電性粒子が多く凝集した状態では、逆に、中間転写ベルト表面において凝集した導電性粒子同士が多数の導電パスを形成することから、表面抵抗率が低くなり、前記式(2)を満たすことが困難となる。更に、導電性粒子の分散状態が著しく悪い場合は、中間転写ベルト表面のみならず、その内部においても、多数の導電パスが形成されることから、体積抵抗率が低下したり、体積抵抗率の面内ムラが悪化したりすることから、良好な転写性を維持することができなくなる。
【0034】
上記のように、前記式(2)を満たすように、中間転写ベルトなどの中間転写体の表面抵抗率を制御するためには、トナー像が転写される面を構成する導電剤含有層(表面層)中の導電性粒子の分散状態を調整する方法が用いられる。
また、他の方法としては、導電剤含有層(表面層)中の導電性粒子の表面に表面処理を施して導電状態を調整する方法が挙げられる。表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性材等が挙げられる。
【0035】
本発明の画像形成装置に用いられるトナーは、例えば、結着樹脂と着色剤とを含んで構成される。
結着樹脂としては、スチレン類、モノオレフィン類、ビニルエステル類、α―メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体を例示することができ、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。更に、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等も挙げられる。
【0036】
着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして挙げられる。
なお、本発明におけるトナーの着色剤としては、誘電正接(tanδ)の制御が容易に行える観点から、カーボンブラックを用いることが好ましい。
【0037】
トナーには、帯電制御剤、離型剤、他の無機粒子等の公知の添加剤を内添加処理や外添加処理してもよい。
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして挙げられる。
帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプ等の帯電制御剤を用いることができる。
他の無機粒子としては、粉体流動性、帯電制御等の目的で、平均1次粒径が40nm以下の小径無機粒子を用い、更に必要に応じて、付着力低減の為、それより大径の無機或いは有機粒子を併用してもよい。これらの他の無機粒子は公知のものを使用できる。
また、小径無機粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性をあげる効果が大きくなるため有効である。
【0038】
本発明で用いられるトナーの製造方法としては、高い形状制御性を得られることから、乳化重合凝集法や溶解懸濁法等などの重合法が好ましく用いられる。また、これらの方法で得られたトナーをコアにして、更に凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法を行ってもよい。
なお、外添剤を添加する場合、トナー及び外添剤をヘンシェルミキサー或いはVブレンダー等で混合することによって製造することができる。また、トナーを湿式にて製造する場合は、湿式にて外添することも可能である。
【0039】
本発明で用いられるトナーの誘電正接(tanδ)は、前記式(3)を満たすことを要する。トナーの誘電正接(tanδ)を調整するためには、トナー中のカーボンブラック等の着色剤の分散状態を制御することが重要である。
すなわち、トナー中の着色剤の分散状態が悪い場合は、誘電正接(tanδ)が大きくなり、トナー中の分散状態がよい場合は逆に誘電正接(tanδ)は小さくなる。
ここで、着色剤の分散方法としては、ジェットミル、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の方法を用いることができるが、中でもジェットミルが分散力に優れることから、特に好適に用いられる。
【0040】
本発明の画像形成装置に用いられる一次転写ロールは、単層或いは多層のいずれでもよい。例えば、単層構造の場合は、発泡又は無発泡のシリコーンゴム、ウレタンゴム、EPDM等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。その抵抗値は10〜1010Ωの範囲にあることが好ましい。一次転写ロールには1.0〜5.5kVの電圧が印加され、像保持体との間に発生する電界により、トナーを転写する。
【0041】
本発明の画像形成装置に用いられる二次転写ロールの層構造は、特に限定されるものではないが、例えば、三層構造の場合、コア層と中間層とその表面を被覆するコーティング層とからなる。コア層は導電性粒子を分散したシリコーンゴム、ウレタンゴム、EPDM等の発泡体で、中間層はこれらの無発泡体で構成される。コーティング層の材料としては、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、パーフルオロアルコキシ樹脂などが挙げられる。二次転写ロールの体積抵抗率は10Ωcm以下であることが好ましい。また、中間層を除いた二層構造とすることも可能である。
【0042】
本発明の画像形成装置に用いられるバックアップロールは、二次転写ロールの対向電極を形成する。バックアップロールの層構造は、単層或いは多層のいずれでもよい。例えば単層構造の場合は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、EPDM等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。二層構造の場合は、上記のようなゴム材料で構成される弾性層の外周面を高抵抗層で被覆したロールから構成される。バックアップロールの表面抵抗率は10〜1011Ω/□の範囲にあることが好ましい。
【0043】
本発明の画像形成装置において、バックアップロールと二次転写ロールとのシャフトの間には、通常1〜6kVの電圧が印加される。また、バックアップロールのシャフトへの電圧印加に代えて、バックアップロールの押接させた電気良導性の電極部材と二次転写ロールの間に電圧を印加することもできる。電極部材としては、金属ロール、導電性ゴムロール、導電性ブラシ、金属プレート、導電性樹脂プレート等が挙げられる。
【0044】
本発明の画像形成装置に用いられる像保持体としては、従来公知の電子写真感光体を広く適用することができる。電子写真感光体としては、感光層が無機材料で構成される無機感光体や、感光層が有機材料で構成される有機感光体などを用いることができる。有機感光体においては、露光により電荷を発生する電荷発生層と、電荷を輸送する電荷輸送層を積層する機能分離型有機感光体や、電荷を発生する機能と電荷を輸送する機能を同一の層が果たす単層型有機感光体が好適に用いられる。また、無機感光体においては、感光層がアモルファスシリコンにより構成されているものが、好適に用いられる。
また、電子写真感光体の形状には特に限定はなく、例えば、円筒ドラム状、シート状或いはプレート状のいずれであってもよい。
【0045】
本発明の画像形成装置に用いられる帯電装置(帯電手段)としては、特に制限はなく、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器など、従来公知の帯電器を広く適用することができる。これらの中でも、オゾンの発生が少なく、効率的な帯電を行うことができる接触型帯電器が好ましい。
帯電手段は、電子写真感光体に対し、通常、直流電流を印加するが、交流電流を更に重畳させて印加してもよい。
【0046】
本発明の画像形成装置に用いられる像露光装置(露光手段)としては、特に制限はなく、例えば、電子写真感光体表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光源、或いはこれらの光源からポリゴンミラーを介して所望の像様に露光できる光学系機器など、従来公知の露光装置を広く適用することができる。
【0047】
本発明の画像形成装置に用いられる現像装置(現像手段)としては、目的に応じて、適宜選択することができるが、例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用い接触或いは非接触させて現像する公知の現像器などが挙げられる。
【0048】
本発明の画像形成装置に用いられる定着装置(定着手段)としては、特に制限はなく、例えば、熱ローラ定着器や加圧ローラ定着器、フラッシュ定着器など従来公知の定着器を広く適用することができる。
【0049】
上述のように、本発明の画像形成装置の一例として、中間転写ベルトを用いた画像形成装置について説明したが、この例に限定されるものではなく、中間転写体として中間転写ドラムを用いた画像形成装置であってもよい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0051】
〔中間転写ベルトの作製〕
(中間転写ベルト1の作製)
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリアミック酸のNMP溶液(イミド転化後の固形分率が18質量%)100質量部に、カーボンブラック(Special Black 4:Degussa社製)を9質量部添加し、ジェットミル分散機(Geanus PY[衝突部の最小部断面積0.032mm]:ジーナス社製)を用い、圧力180MPaで分散ユニット部を2回通過させて分散・混合を行った。
【0052】
得られた分散液100質量部に対して、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリアミック酸のNMP溶液(イミド転化後の固形分率が18質量%)を70質量部添加し、プラネタリー式ミキサー(アイコーミキサー:愛工舎製作所製)を用いて混合・攪拌することにより、カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液を調製した。
【0053】
得られたカーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液を用い、図2に示すような突き上げ環状塗布法により、ポリイミド前駆体塗膜を作製した。
円筒成形管として、外径364.5mm、長さ650mmのアルミニウム製円筒体を用意した。アルミニウム製円筒体は、外径377mm、長さ700mmのアルミニウム製素管を350℃で10分間加熱し、自然に冷却させた後、表面を切削して、外径を364.5mにし、更に、球形ガラス粒子によるブラスト処理により、表面をRa:1.5μmに粗面化したものである。このアルミニウム製円筒体の表面にシリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布し、300℃で1時間焼き付け処理を施して円筒成形管201を作製した。
【0054】
一方、環状体205として、外径445mm、最小部の内径366mm、高さ50mmのアルミニウム製のものを作製した。内壁は傾斜状である。
円筒成形管201(アルミニウム製円筒体)を、その底面に内径360mmの中心孔を有するポリエチレン製の環状シール材206が取り付けられている、内径370mm、高さ150mmの環状塗布槽203に通した。そして、その環状塗布槽203に前記カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液202を入れ、環状体205を配置して、円筒成形管201を1.0m/分で上昇させ、塗布を行った。これにより、円筒成形管201の表面には濡れ膜厚が約420μmのポリイミド前駆体塗膜204が形成された。
【0055】
次に、ポリイミド前駆体塗膜204が形成された円筒成形管201を水平にして、6rpmで回転させながら、170℃で60分間加熱乾燥させた。その後、360℃で30分間加熱して、イミド転化させ、カーボンブラックが分散されているポリイミド樹脂皮膜を形成した。
その後、円筒成型管201の温度が室温にまで冷えたところで、円筒成型管201よりポリイミド樹脂皮膜Aを剥離した。
【0056】
得られたポリイミド樹脂皮膜Aを369mmの幅で切断し、中間転写ベルト1を得た。
中間転写ベルト1の平均膜厚を測定したところ75μmであった。
ここで、膜厚の測定は、渦電流方式のフィルム膜厚測定器((株)フィッシャー・インストルメンツ製イソスコープMP30、プローブ:EAT3.3)を用いて行った。ベルトの幅方向・円周方向ともに30mm毎に測定ポイントを置き、全点の平均値をベルトの平均膜厚とした。また、ベルト幅方向の1測定ポイント列において膜厚の最大値と最小値の差を幅方向の変位とし、全ての幅方向の変位の中で最大のものを、該ベルトを代表する幅方向の膜厚変位とした。
【0057】
得られた中間転写ベルト1の平均表面抵抗率を測定したところ、9.23LogΩ/□であった。
ここで、平均表面抵抗率の測定は、ベルトの幅方向・円周方向ともに50mm毎に測定ポイントを置き、全点の平均値を平均表面抵抗率とした。また、表面抵抗率の測定は、三菱油化(株)製ハイレスターIP及びHRプローブを用い、JIS K6991に従い測定した。
【0058】
(中間転写ベルト2の作製)
中間転写ベルト1の作製において、ジェットミル分散機(Geanus PY[衝突部の最小部断面積0.032mm]:ジーナス社製)を用いた分散で、圧力を200MPa、分散ユニット部通過回数を2回とした以外は、中間転写ベルト1の作製と同様にして、中間転写ベルト2を得た。
得られた中間転写ベルト2の平均膜厚を測定したところ77μmであった。また、平均表面抵抗率を測定したところ、9.45LogΩ/□であった。
【0059】
(中間転写ベルト3の作製)
中間転写ベルト1の作製において、ジェットミル分散機(Geanus PY[衝突部の最小部断面積0.032mm]:ジーナス社製)を用いた分散で、圧力を200MPa、分散ユニット部通過回数を3回とした以外は、中間転写ベルト1の作製と同様にして、中間転写ベルト3を得た。
得られた中間転写ベルト3の平均膜厚を測定したところ73μmであった。また、平均表面抵抗率を測定したところ、9.67LogΩ/□であった。
【0060】
(中間転写ベルト4の作製)
中間転写ベルト1の作製において、ジェットミル分散機(Geanus PY[衝突部の最小部断面積0.032mm]:ジーナス社製)を用いた分散で、圧力を200MPa、分散ユニット部通過回数を4回とした以外は、中間転写ベルト1の作製と同様にして、中間転写ベルト4を得た。
得られた中間転写ベルト4の平均膜厚を測定したところ75μmであった。また、平均表面抵抗率を測定したところ、9.92LogΩ/□であった。
【0061】
(中間転写ベルト5の作製)
中間転写ベルト1の作製において、ジェットミル分散機(Geanus PY[衝突部の最小部断面積0.032mm]:ジーナス社製)を用いた分散で、圧力を160MPa、分散ユニット部通過回数を2回とした以外は、中間転写ベルト1の作製と同様にして、中間転写ベルト5を得た。
得られた中間転写ベルト5の平均膜厚を測定したところ76μmであった。また、平均表面抵抗率を測定したところ、9.18LogΩ/□であった。
【0062】
(中間転写ベルト6の作製)
中間転写ベルト1の作製において、ジェットミル分散機(Geanus PY[衝突部の最小部断面積0.032mm]:ジーナス社製)を用いた分散で、圧力を150MPa、分散ユニット部通過回数を2回とした以外は、中間転写ベルト1の作製と同様にして、中間転写ベルト6を得た。
得られた中間転写ベルト6の平均膜厚を測定したところ77μmであった。また、平均表面抵抗率を測定したところ、9.02LogΩ/□であった。
【0063】
(中間転写ベルト7の作製)
中間転写ベルト1の作製において、ジェットミル分散機(Geanus PY[衝突部の最小部断面積0.032mm]:ジーナス社製)を用いた分散で、圧力を200MPa、分散ユニット部通過回数を5回とした以外は、中間転写ベルト1の作製と同様にして、中間転写ベルト7を得た。
得られた中間転写ベルト7の平均膜厚を測定したところ74μmであった。また、平均表面抵抗率を測定したところ、10.40LogΩ/□であった。
【0064】
(中間転写ベルト8の作製)
中間転写ベルト1の作製において、ジェットミル分散機(Geanus PY[衝突部の最小部断面積0.032mm]:ジーナス社製)を用いた分散で、圧力を200MPa、分散ユニット部通過回数を8回とした以外は、中間転写ベルト1の作製と同様にして、中間転写ベルト8を得た。
得られた中間転写ベルト8の平均膜厚を測定したところ72μmであった。また、平均表面抵抗率を測定したところ、11.53LogΩ/□であった。
【0065】
(中間転写ベルト9の作製)
中間転写ベルト1の作製において、ジェットミル分散機(Geanus PY[衝突部の最小部断面積0.032mm]:ジーナス社製)を用いた分散で、圧力を220MPa、分散ユニット部通過回数を8回とした以外は、中間転写ベルト1の作製と同様にして、中間転写ベルト9を得た。
得られた中間転写ベルト9の平均膜厚を測定したところ78μmであった。また、平均表面抵抗率を測定したところ、12.01LogΩ/□であった。
【0066】
〔トナーの作製〕
(着色剤分散液1の作製)
・カーボンブラック(導電性粒子)顔料(モーガルL:キャボット社製) 40質量部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンRK:第一工業製薬社製) 6質量部
・イオン交換水 54質量部
上記成分を混合し、UltratarraxT50(IKA社製)で10分間混合分散した後、回転ローター式分散機Cavitron CD1010(大平洋機工社製)で100分間混合分散し、着色剤分散液1を得た。得られた分散液中のカーボンブラックの粒子径を、マイクロトラックUPA(HONEYWELL社製)を用いて測定したところ、D50粒子径は116nmであった。
【0067】
(着色剤分散液2の作製)
着色剤分散液1の作製において、回転ローター式分散機Cavitron CD1010(大平洋機工社製)での混合分散時間を120分とした以外は、着色剤分散液1の作製と同様にして、着色剤分散液2を得た。得られた分散液中のカーボンブラックの粒子径を、マイクロトラックUPA(HONEYWELL社製)を用いて測定したところ、D50粒子径は113nmであった。
【0068】
(着色剤分散液3の作製)
着色剤分散液1の作製において、回転ローター式分散機Cavitron CD1010(大平洋機工社製)での混合分散時間を55分とした以外は、着色剤分散液1の作製と同様にして、着色剤分散液3を得た。得られた分散液中のカーボンブラックの粒子径を、マイクロトラックUPA(HONEYWELL社製)を用いて測定したところ、D50粒子径は125nmであった。
【0069】
(着色剤分散液4の作製)
着色剤分散液1の作製において、回転ローター式分散機Cavitron CD1010(大平洋機工社製)での混合分散時間を20分とした以外は、着色剤分散液1の作製と同様にして、着色剤分散液4を得た。得られた分散液中のカーボンブラックの粒子径を、マイクロトラックUPA(HONEYWELL社製)を用いて測定したところ、D50粒子径は141nmであった。
【0070】
(着色剤分散液5の作製)
着色剤分散液1の作製において、回転ローター式分散機Cavitron CD1010(大平洋機工社製)での混合分散時間を15分とした以外は、着色剤分散液1の作製と同様にして、着色剤分散液5を得た。得られた分散液中のカーボンブラックの粒子径を、マイクロトラックUPA(HONEYWELL社製)を用いて測定したところ、D50粒子径は146nmであった。
【0071】
(着色剤分散液6の作製)
着色剤分散液1の作製において、回転ローター式分散機Cavitron CD1010(大平洋機工社製)での混合分散時間を10分とした以外は、着色剤分散液1の作製と同様にして、着色剤分散液6を得た。得られた分散液中のカーボンブラックの粒子径を、マイクロトラックUPA(HONEYWELL社製)を用いて測定したところ、D50粒子径は154nmであった。
【0072】
(着色剤分散液7の作製)
着色剤分散液1の作製において、回転ローター式分散機Cavitron CD1010(大平洋機工社製)での混合分散時間を5分とした以外は、着色剤分散液1の作製と同様にして、着色剤分散液7を得た。得られた分散液中のカーボンブラックの粒子径を、マイクロトラックUPA(HONEYWELL社製)を用いて測定したところ、D50粒子径は167nmであった。
【0073】
(トナー1の作製)
・樹脂分散液[スチレン−ブチルアクリレート−アクリル酸共重合体(共重合体モル比82:18:2)、Mw=23,000、Tg=65℃、粒径170μm](40質量%分散液) 260質量部
・着色剤分散液1 15質量部
・離型分散液(HNP0190:日本精蝋社製)(30質量%分散液) 20質量部
・ポリ水酸化アルミニウム(Paho2S:浅田化学社製) 0.5質量部
【0074】
上記成分を、丸型ステンレス製フラスコ中で、UltratarraxT50(IKA社製)を用いて混合分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら55℃まで加熱した。55℃で30分間保持した後、コールターカウンター(マルチサイザー2:コールター社製)で粒径を測定したところ、4.5μmの凝集体粒子が生成していることが確認された。更に、加熱用オイルバスの温度を上げて65℃で1時間保持した。粒径を測定したところ、5.3μmの凝集体粒子が生成していることが確認された。その後、この凝集体粒子を含む分散液に、アニオン性界面活性剤(ネオゲンRK:第一工業製薬社製)3質量部を追加した後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら97℃まで加熱し、4時間保持した。冷却後、コールターカウンターで体積平均粒径を測定したところ、5.4μmであることが確認された。
作製したトナー粒子含有液よりトナー粒子を濾別し、pH10.0の水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、イオン交換水洗浄を3回実施した。その後、トナー粒子を6時間凍結乾燥した後、24時間真空乾燥を実施し、篩分を行い体積平均粒径5.4μm、GSDv(平均体積粒度分布)が1.25で、形状係数が133の乾燥トナー粒子1を得た。
【0075】
得られた乾燥トナー粒子1、50質量部に対して、疎水性シリカ(TS720:キャボット社製)1.5質量部を添加し、サンプルミルでブレンドし、前記疎水性シリカが外添されたトナー1を得た。
得られたトナー1を5g測り取り、圧力成型機でペレット成型(直径50mm)し、LCRメーター(LCRメーター6440A型:東陽テクニカ社製)にて、周波数1kHz、電圧5Vの条件にて測定を行ったところ、誘電正接(tanδ)は2.59×10−3であった。
【0076】
なお、トナー粒子の平均形状係数は以下のようにして求めた。先ず、1000個のトナー粒子について、トナー粒子の画像を光学顕微鏡から画像解析装置(LUZEX III:ニレコ社製)に取り込み、トナー粒子の撮影像の最大長及び面積を求めた。次いで、得られた最大長及び面積から個々のトナー粒子について形状係数[(粒子の最大長)×π×100/(面積×4)]を求め、それらの平均値を平均形状係数(ML2/A)とした。
【0077】
(トナー2の作製)
トナー1の作製において、着色剤分散液1の代わりに、着色剤分散液2を用いた以外は、トナー1の作製と同様にして、乾燥トナー粒子2を得た。得られた乾燥トナー粒子2を測定したところ、体積平均粒径は5.8μm、GSDvは1.28、形状係数は132であった。得られた乾燥トナー粒子2、50質量部に対して、疎水性シリカ(TS720:キャボット社製)1.5質量部を添加し、サンプルミルでブレンドし、前記疎水性シリカが外添されたトナー2を得た。
得られたトナー2を5g測り取り、圧力成型機でペレット成型(直径50mm)し、LCRメーター(LCRメーター6440A型:東陽テクニカ社製)にて、周波数1kHz、電圧5Vの条件にて測定を行ったところ、誘電正接(tanδ)は1.28×10−3であった。
【0078】
(トナー3の作製)
トナー1の作製において、着色剤分散液1の代わりに、着色剤分散液3を用いた以外は、トナー1の作製と同様にして、乾燥トナー粒子3を得た。得られた乾燥トナー粒子3を測定したところ、体積平均粒径は5.6μm、GSDvは1.24、形状係数は136であった。得られた乾燥トナー粒子2、50質量部に対して、疎水性シリカ(TS720:キャボット社製)1.5質量部を添加し、サンプルミルでブレンドし、前記疎水性シリカが外添されたトナー3を得た。
得られたトナー3を5g測り取り、圧力成型機でペレット成型(直径50mm)し、LCRメーター(LCRメーター6440A型:東陽テクニカ社製)にて、周波数1kHz、電圧5Vの条件にて測定を行ったところ、誘電正接(tanδ)は3.86×10−3であった。
【0079】
(トナー4の作製)
トナー1の作製において、着色剤分散液1の代わりに、着色剤分散液4を用いた以外は、トナー1の作製と同様にして、乾燥トナー粒子4を得た。得られた乾燥トナー粒子4を測定したところ、体積平均粒径は5.2μm、GSDvは1.22、形状係数は133であった。得られた乾燥トナー粒子2、50質量部に対して、疎水性シリカ(TS720:キャボット社製)1.5質量部を添加し、サンプルミルでブレンドし、前記疎水性シリカが外添されたトナー4を得た。
得られたトナー4を5g測り取り、圧力成型機でペレット成型(直径50mm)し、LCRメーター(LCRメーター6440A型:東陽テクニカ社製)にて、周波数1kHz、電圧5Vの条件にて測定を行ったところ、誘電正接(tanδ)は7.26×10−3であった。
【0080】
(トナー5の作製)
トナー1の作製において、着色剤分散液1の代わりに、着色剤分散液5を用いた以外は、トナー1の作製と同様にして、乾燥トナー粒子5を得た。得られた乾燥トナー粒子5を測定したところ、体積平均粒径は5.9μm、GSDvは1.31、形状係数は141であった。得られた乾燥トナー粒子2、50質量部に対して、疎水性シリカ(TS720:キャボット社製)1.5質量部を添加し、サンプルミルでブレンドし、前記疎水性シリカが外添されたトナー5を得た。
得られたトナー5を5g測り取り、圧力成型機でペレット成型(直径50mm)し、LCRメーター(LCRメーター6440A型:東陽テクニカ社製)にて、周波数1kHz、電圧5Vの条件にて測定を行ったところ、誘電正接(tanδ)は9.89×10−3であった。
【0081】
(トナー6の作製)
トナー1の作製において、着色剤分散液1の代わりに、着色剤分散液6を用いた以外は、トナー1の作製と同様にして、乾燥トナー粒子6を得た。得られた乾燥トナー粒子6を測定したところ、体積平均粒径は6.0μm、GSDvは1.35、形状係数は142であった。得られた乾燥トナー粒子2、50質量部に対して、疎水性シリカ(TS720:キャボット社製)1.5質量部を添加し、サンプルミルでブレンドし、前記疎水性シリカが外添されたトナー6を得た。
得られたトナー6を5g測り取り、圧力成型機でペレット成型(直径50mm)し、LCRメーター(LCRメーター6440A型:東陽テクニカ社製)にて、周波数1kHz、電圧5Vの条件にて測定を行ったところ、誘電正接(tanδ)は1.28×10−2であった。
【0082】
(トナー7の作製)
トナー1の作製において、着色剤分散液1の代わりに、着色剤分散液7を用いた以外は、トナー1の作製と同様にして、乾燥トナー粒子7を得た。得られた乾燥トナー粒子7を測定したところ、体積平均粒径は6.1μm、GSDvは1.31、形状係数は140であった。得られた乾燥トナー粒子2、50質量部に対して、疎水性シリカ(TS720:キャボット社製)1.5質量部を添加し、サンプルミルでブレンドし、前記疎水性シリカが外添されたトナー6を得た。
得られたトナー7を5g測り取り、圧力成型機でペレット成型(直径50mm)し、LCRメーター(LCRメーター6440A型:東陽テクニカ社製)にて、周波数1kHz、電圧5Vの条件にて測定を行ったところ、誘電正接(tanδ)は1.83×10−2であった。
【0083】
〔実施例1〕
得られた中間転写ベルト1とトナー1とを、フルカラー複合機(DocuCentre C7550I:富士ゼロックス社製)に搭載した。トナー1は黒色用プロセスカートリッジにのみ搭載し、黒色のみでの画出しを行い、画質を評価した。画質評価にはA4用紙を用い、初期及び10万枚印字後の画質で行った。用紙はA4用紙を横向きにして印字をし、出力パターンは黒色のハーフトーン(トナー濃度30%)とした。
結果を表1に示す。
【0084】
〔実施例2〕
実施例1において、中間転写ベルト1の代わりに中間転写ベルト2を用いた以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
〔実施例3〕
実施例1において、中間転写ベルト1の代わりに中間転写ベルト3を用いた以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
〔実施例4〕
実施例1において、中間転写ベルト1の代わりに中間転写ベルト4を用いた以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
〔実施例5〕
実施例1において、中間転写ベルト1の代わりに中間転写ベルト3を、トナー1の代わりにトナー2を用いた以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
〔実施例6〕
実施例1において、中間転写ベルト1の代わりに中間転写ベルト3を、トナー1の代わりにトナー3を用いた以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
〔実施例7〕
実施例1において、中間転写ベルト1の代わりに中間転写ベルト3を、トナー1の代わりにトナー4を用いた以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
〔比較例1〕
実施例1において、中間転写ベルト1の代わりに中間転写ベルト3を、トナー1の代わりにトナー5を用いた以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
〔比較例2〕
実施例1において、中間転写ベルト1の代わりに中間転写ベルト3を、トナー1の代わりにトナー6を用いた以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
〔比較例3〕
実施例1において、中間転写ベルト1の代わりに中間転写ベルト3を、トナー1の代わりにトナー7を用いた以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
〔比較例4〕
実施例1において、中間転写ベルト1の代わりに中間転写ベルト5を、トナー1の代わりにトナー2を用いた以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
〔比較例5〕
実施例1において、中間転写ベルト1の代わりに中間転写ベルト6を、トナー1の代わりにトナー2を用いた以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
〔比較例6〕
実施例1において、中間転写ベルト1の代わりに中間転写ベルト7を用いた以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
〔比較例7〕
実施例1において、中間転写ベルト1の代わりに中間転写ベルト8を用いた以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
〔比較例8〕
実施例1において、中間転写ベルト1の代わりに中間転写ベルト9を用いた以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
〔比較例9〕
実施例1において、中間転写ベルト1の代わりに中間転写ベルト4を、トナー1の代わりにトナー6を用いた以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
表1に明らかなように、実施例1〜6においては、初期及び10万枚印字後においても、良好な出力画像が得られた。また、実施例7においては、10万枚印字後に転写不良による極軽微な画像カスレが発生したが、印字品質を著しく低下させるものではなかった。
これに対して、比較例1〜3、及び9においては、初期及び10万枚印字後の出力画像において、トナーの帯電維持性の不良によるカブリが発生した。また、比較例4〜5においては、初期及び10万枚印字後の出力画像において、トナーの飛び散りによる画像乱れが発生した。更に、比較例6〜8においては、初期は良好な出力画像が得られるものの、10万枚印字後では、トナーの飛び散りによる出力画像に画像乱れと部分的な濃度ムラが発生した。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明における中間転写ベルト作製するために用いられる、突き上げ環状塗布装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0102】
101a〜101d…像保持体、102a〜102d…帯電装置、103a〜103d…現像装置、104a〜104d…像保持体クリーニング装置、105a〜105d…一次転写ロール、106a〜106d…テンションロール、107…中間転写ベルト、108…バックアップロール、109…二次転写ロール、110…定着装置、111…中間転写ベルトクリーニング装置、112…ドライブロール、113…画像出力媒体、114…像露光装置、201…円筒成形管、202…ポリイミド前駆体溶液、203…環状塗布槽、204…ポリイミド前駆体塗膜、205…環状体、206…環状シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像保持体と、該像保持体を帯電させる帯電手段と、該帯電手段により帯電された像保持体上に静電潜像を形成する露光手段と、前記像保持体上の静電潜像をトナーにて現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を中間転写体に転写する一次転写手段と、前記中間転写体に転写されたトナー像を、画像出力媒体に転写する二次転写手段と、を有し、且つ、下記式(1)、式(2)、及び(3)の全てを満たすことを特徴とする画像形成装置。
0≦Log(R)−Log(6.0×1011×tanδ) (1)
9.2≦Log(R)≦10.0 (2)
1.0×10−3≦tanδ≦10.0×10−3 (3)
[上記式(1)〜式(3)中、Log(R)は、中間転写体の表面抵抗率の常用対数値(logΩ/□)を表し、tanδは、トナーの1kHzにおける誘電正接を表す。]
【請求項2】
前記中間転写体が中間転写ベルトであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トナーがカーボンブラックを含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
プロセススピードが50mm/sec以上500mm/sec以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−233511(P2008−233511A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72581(P2007−72581)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】