説明

画像形成装置

【課題】RAMの記憶領域を考慮しつつ印刷処理の高速化を図ることが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】印刷要求に対する印刷処理の実行前に、一旦、シリアルROM16に記録された印刷処理用プログラム16A及び印刷処理用データを、SDRAM17にコピーする。そして、印刷要求があった場合に、その印刷要求によって実行される印刷処理においてフォントデータ16Bやデモ印刷データ16Cが不要かどうかを判断し、不要であればその不要なデータのために確保されたフォントデータエリア17Bやデモ印刷データエリア17Cを、印刷データの展開処理のために開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に、印刷処理時のメモリ制御に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、プリンタの起動時に用いるプログラム及びプリンタの印刷処理に用いるプログラムを記録したシリアルROMと、CPUと、RAMとを備えたプリンタのコントローラに関する技術が開示されている。具体的には、上記CPUは、プリンタの起動時に用いるプログラムに従って、プリンタの印刷処理に用いるプログラムをシリアルROMから読み出してRAMにコピーし、そのコピーしたプログラムに従って印刷処理を行うようにしている。低速動作のシリアルROMからプログラムを直接取り込んでCPUを動かすと、印刷処理速度が遅くなるという問題が生じるが、上記技術では、高速なRAMにプログラムをコピーして、そのコピーされたプログラムに従って印刷処理を行うことで、印刷処理速度が遅くなることを抑制している。
【特許文献1】特開2004−240693公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記特許文献1の技術では、読み出し要求がされるごとに、それに対応した一部のプログラムデータ(具体的には1ページ分のデータ)だけをシリアルROMから読み出す構成になっている。従って、前回とは異なるページのプログラムデータに対する読み出し要求があったときには、当該ページプログラムデータをシリアルROMから読み出す必要があり、その分だけ処理速度が遅くなるという問題があった。また、プログラムデータがコピーされるRAMは、印刷データの展開処理時に広い記憶領域の確保が要求されるため、そのRAMの記憶領域を考慮する必要がある。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、RAMの記憶領域を考慮しつつ印刷処理の高速化を図ることが可能な画像形成装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明に係る画像形成装置は、印刷処理用プログラム及び印刷処理用データが記録されるシリアルROMと、RAMと、本画像形成装置の起動に基づき、前記シリアルROMに記録された前記印刷処理用プログラム及び前記印刷処理用データを読み出して前記RAMに複写する複写部と、前記RAMに複写された前記印刷処理用プログラム及び前記印刷処理用データに基づき印刷処理を実行する印刷部と、印刷要求があった場合に、前記RAMに複写された前記印刷処理用プログラム及び前記印刷処理用データのうち、当該印刷要求によって実行される印刷処理で不要な部分が有るか否かを判断する不要部分判断部と、前記不要部分判断部で不要な部分有りと判断された場合に、当該不要な部分を前記RAMから削除する削除部と、を備える。
なお、本発明の「画像形成装置」は、プリンタ(例えばレーザプリンタ)などの印刷装置だけでなく、ファクシミリ装置や、プリンタ機能及び画像読み取り機能(スキャナ機能)等を備えた複合機であってもよい。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、前記削除部で削除された不要な部分を、前記印刷要求によって実行される印刷処理が終了した後に前記前記シリアルROMから読み出して前記RAMに再複写する再複写部を備える。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において、前記不要部分判断部は、前記印刷処理用プログラム及び前記印刷処理用データに含まれる特殊機能用プログラムまたはデータが前記印刷要求によって実行される印刷処理で不要か否かに基づき判断する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像形成装置において、前記不要部分判断部は、前記印刷処理用プログラム及び前記印刷処理用データに含まれるフォントデータが前記印刷要求によって実行される印刷処理で不要か否かで判断する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記印刷要求があった場合に、当該印刷要求によって実行される印刷処理で前記RAMの空き容量が不足する可能性があるか否かを判断する空き容量判断部を備え、前記不要部分判断部は、前記空き容量判断部で空き容量が不足すると判断された場合に前記不要な部分が有る否かの判断を行う。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記複写部は、前記印刷処理用プログラムを優先して前記RAMに複写する。
【発明の効果】
【0011】
<請求項1の発明>
画像形成装置の起動に基づき、シリアルROMに記録された印刷処理用プログラム及び印刷処理用データを全てRAMに一旦複写する。そして、印刷要求があった場合に、その印刷要求によって実行される印刷処理において不要なプログラムまたは/及びデータがあれば、その不要な部分を上記RAMから削除(他のデータを上書きすることも含む)し、これにより、印刷処理中においてRAMの記憶領域の確保を図ることができる。
【0012】
<請求項2の発明>
一印刷要求による印刷処理が終了した後に不要な部分(プログラム又はデータ)がRAMに再複製されるから、次の印刷要求による印刷処理で上記不要な部分を利用する場合でも、高速な印刷処理が可能となる。
【0013】
<請求項3の発明>
特殊機能用データ(例えば、デモ印刷用データ、画像濃度調整や転写位置調整のためのテスト用データなど)は、特殊機能が指定されない限り不要な部分である。従って、印刷要求がこのような特殊機能実行のためのものでないときには、当該特殊機能用プログラム又は/及びデータを削除対象とする構成とした。
【0014】
<請求項4の発明>
例えば、印刷対象としての印刷データが、イメージデータである場合(例えばコピーデータ、スキャナデータやファクシミリデータなど)、フォントデータは通常不要である。従って、実行された機能(コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能、データ印刷機能)の種類や、印刷データのデータ種に応じてフォントデータが削除対象か否かを判断できる。
【0015】
<請求項5の発明>
RAMに空き容量が不足する可能性がある場合にだけ、不要な部分の有無判断を行って当該不要な部分の削除を行う構成が望ましい。
【0016】
<請求項6の発明>
印刷処理用プログラムを優先してRAMに複写すれば、印刷処理用データを優先的にRAMに複写する構成に比べて、印刷処理用プログラムに基づく印刷処理を早期に開始することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1〜図4を参照しつつ説明する。
1.プリンタの構成
図1は、本実施形態のプリンタ10(例えばレーザプリンタ 「画像形成装置」の一例)の構成を示すブロック図である。同図に示すように、プリンタ10は、プリンタ10の動作全般の制御を行う印刷制御部12を備える。この印刷制御部12は、CPU11、リセットコントローラ13、低速メモリコントローラ14及び高速メモリコントローラ15を備えて構成されている。
【0018】
このうち、高速メモリコントローラ15には、RAM(本実施形態ではSDRAM(Synchronous Dynamic Randam-Access Memory)17)が接続されている。具体的には、例えばCPU11で扱うデータ長が32bitの場合には、高速メモリコントローラ15とSDRAM17とが、アドレスバス15本、制御線8本、及び、データバスとして32本の信号線を介して接続され、これらの信号線によってデータのやり取りが並列(パラレル)伝送により高速で行われる。
【0019】
低速メモリコントローラ14には、シリアルROM(Read Only Memory)16が接続されている。一般に、シリアルROM16は、CS(チップセレクト)、SCK(クロック)、SI(シリアル入力)及びSO(シリアル出力)の4本の信号線によりデータのやり取りを行う。即ち、CSをアクティブにして、SCKの立上りエッジでSIにオペレーションコード、アドレスの順にビットデータをシリアル入力すると、読み出されたデータがSOから出力される。このように、シリアルROM16を利用すれば、ROMアクセス用の信号線を削減することができ、基板の小型化を図ることが可能となる。しかし、その反面、シリアルROM16は、シリアル伝送でデータのやり取りを行うため読出し速度が遅いというデメリットがある。
【0020】
そこで、本実施形態では、後述するように、シリアルROM16に記録した印刷処理用プログラム16A及び印刷処理用データ(本実施形態では、例えばフォントデータ16Bやデモ印刷データ16Cを含む)を読み出してSDRAM17にコピーし、この高速読出し書き込みが可能なSDRAM17にコピーされた印刷処理用プログラム16A等に従ってCPU11が印刷処理を行うようにしている。
【0021】
CPU11には、低速メモリコントローラ14、高速メモリコントローラ15、USBインターフェースコントローラ18、パラレルポートインターフェースコントローラ19、印刷エンジン20Aを制御する印刷エンジンコントローラ20及び操作パネル21Aを制御する操作パネルコントローラ21がバスを介して接続されている。プリンタ10は、外部のパーソナルコンピュータ30からの印刷データを、USBインターフェースコントローラ18またはパラレルポートインターフェースコントローラ19を介して受信し、受信した印刷データは、DMA(Direct Memory Access)により高速メモリコントローラ15にデータ転送される。受信した印刷データは、SDRAM17にコピーされた印刷処理用プログラム16Aに従ってCPU11が実行する制御に基づきデータ展開処理がされ、この展開データがSDRAM17から印刷エンジン20Aに転送される。これにより、印刷エンジン20Aは、転送された展開データに基づく画像を形成し、印刷媒体としての用紙上に転写する。
【0022】
また、リセットコントローラ13は、CPU11、低速メモリコントローラ14、高速メモリコントローラ15、USBインターフェースコントローラ18,パラレルポートインターフェースコントローラ19、印刷エンジンコントローラ20及び操作パネルコントローラ21それぞれに対してリセット信号を与えてリセット状態にすることが可能となっている。また、CPU11は、操作パネル21Aでの各操作に応じた操作信号に基づき各種制御を実行する。
【0023】
2.メモリマップ
(1)シリアルROM
図2には、シリアルROM16及びSDRAM17のメモリマップが示されている。シリアルROM16には、印刷処理用プログラム16A、フォントデータ16B及びデモ印刷データ16Cが格納されている。このうち、印刷処理用プログラム16Aは、印刷データの展開処理や、印刷エンジンAの制御処理等をCPU11に実行させるためのプログラムである。
【0024】
また、フォントデータ16Bは、印刷データの展開処理時に使用する文字の書体やそのデータであり、パーソナルコンピュータ30からの印刷データが、例えばPDL(Page Description Language)データなど、イメージ画像(例えばビットマップ)を形成するための言語データである場合に、その展開処理に使用される。一方、印刷データが例えばGDI(Graphics Device Interface)データなど、イメージデータとして受信されるものについては、フォントデータ16Bは使用されない。
【0025】
デモ印刷データ16C(「特殊機能用データ」の一例)は、例えば上記パーソナルコンピュータ30や操作パネルA21上でデモ印刷機能が指定されたときに使用されるデータである。従って、パーソナルコンピュータ30からの印刷データなどに対する通常の印刷処理時には使用されないデータである。
【0026】
(2)SDRAM
SDRAM17には、図2に示すように、印刷処理用プログラムエリア17A、フォントデータエリア17B、デモ印刷データエリア17C及び作業エリア17Dが予め確保されている。この作業エリア17Dには、更に、印刷データ展開エリア17E、インターフェース入力データバッファ17F、印刷データ出力バンドバッファ17G及びシステムワードエリア17Hが確保されている。印刷データ展開エリア17Eは、後述する印刷データの展開処理時に使用される記憶エリアであり、特に上記PDLデータなどの言語データについての展開処理時には広い記憶エリアが必要となる。インターフェース入力データバッファ17Fは、USBインターフェースコントローラ18またはパラレルポートインターフェースコントローラ19から転送された印刷データを一時的に格納しておくために使用される記憶エリアである。印刷データ出力バンドバッファ17Gは、展開処理された展開データを一時的に格納しておくために使用される記憶エリアであり、システムワードエリア17Hは、CPU11の動作のために使用される記憶エリアである。
【0027】
3.印刷制御部の動作
印刷制御部12の動作内容について図3,図4に示すフローチャートを参照しつつ説明する。なお、印刷制御部12は、上述したように、CPU11、リセットコントローラ13、低速メモリコントローラ14及び高速メモリコントローラ15を備え、これらが並列的に動作することがあるが、以下の説明では、これらを印刷制御部12の動作としてまとめて説明する。
【0028】
(1)プリンタの電源投入時
プリンタ10に電源投入がされると、印刷制御部12は、図3に示す制御を実行する。まず、S1で、リセットコントローラ13が、例えばハイレベルのリセット信号(図1では「reset、cpu_reset」として記載)を出力して、CPU11、低速メモリコントローラ14、高速メモリコントローラ15、USBインターフェースコントローラ18及びパラレルポートインターフェースコントローラ19を全てリセット状態にする。次いで、S2で、リセットコントローラ13が、CPU11だけリセット状態を保持させつつ、他のコントローラ14,15,18,19のリセット状態を解除する。これにより、CPU11以外は動作可能となる。
【0029】
次に、S3で低速メモリコントローラ14がSDRAM17に記録された印刷処理用プログラム16Aを読み出して、DMAにより高速メモリコントローラ15に転送し、この高速メモリコントローラ15が印刷処理用プログラム16AをSDRAM17の印刷処理用プログラムエリア17Aにコピーしていく。この印刷処理用プログラム16Aの転送が終了すると(S4:Y)、低速メモリコントローラ14が、印刷処理用プログラム16Aの転送が終了したことをリセットコントローラ13に伝える(S5)。このとき、本実施形態では、この後の印刷要求に対応する印刷処理で必要なプログラムかどうかにかかわらず、シリアルROM16に記録された印刷処理用プログラム16A全てを一旦SDRAM17にコピーし、上記この後の印刷要求を待つ。このとき、印刷制御部12は「複写部」として機能する。
【0030】
印刷処理用プログラム16Aの転送終了が伝えられたリセットコントローラ13は、S6でCPU11のリセット状態を解除する。要するに、リセットコントローラ13は、SDRAM17に印刷処理用プログラム16Aが全てコピーされない限り、CPU11が動作できないようにしているのである。そして、S7で、CPU11は、SDRAM17にコピーされた印刷処理用プログラム16Aに従って動作を開始し、印刷エンジン20Aの制御を開始する。ここでは、例えば定着器のヒータ昇温や、センサチェック(トナーカートリッジの有無やトナー残量/紙詰まりチェック/本体ケースのカバーオープンチェック/モータ動作チェックなど)などのオーミングアップ処理を実行する(S8)。ウオーミングアップ処理が完了すると(S9:Y)、図4のS12に移行する。
【0031】
また、上記S8,S9の処理に並行して、低速メモリコントローラ14がSDRAM17に記録されたフォントデータ16B及びデモ印刷データ16Cを読み出して、DMAにより高速メモリコントローラ15に転送し、この高速メモリコントローラ15がフォントデータ16BをSDRAM17のフォントデータエリア17Bに、デモ印刷データ16CをSDRAM17のデモ印刷データエリア17Cにそれぞれコピーしていく(S10)。このとき、印刷制御部12は「複写部」として機能する。
【0032】
この印刷処理用データの転送が終了すると(S11:Y)、図4の13に移行する。これにより、シリアルROM16に記録された印刷処理用プログラム16A及び印刷処理用データが全てSDRAM17にコピーされたことになり、印刷制御部12は、印刷処理の実行が可能となり、印刷要求の待機状態となる(図4のS20)。なお、この印刷要求には、例えば、パーソナルコンピュータ30からの印刷要求だけでなく、プリンタ10に直接接続された外部メモリ内のファイルを印刷する、いわゆるダイレクト印刷機能に対する操作パネル21Aでの実行要求も含まれる。また、プリンタ10がファックス機能、スキャニング機能、コピー機能などを有した複合機である場合には、各機能に対する操作パネル21Aでの実行要求も含まれる。
【0033】
例えば上記パーソナルコンピュータ30から印刷要求がされると(S21:Y)、S21でCPU11がシリアルROM16からSDRAM17への印刷処理用プログラム16A及び印刷処理用データのコピー処理が終了したかどうかを確認し、終了していれば(S21:Y)、S22で、印刷データを受信したUSBインターフェースコントローラ18またはパラレルポートインターフェースコントローラ19が、当該印刷データをDMAにより高速メモリコントローラ15に転送し、この高速メモリコントローラ15が上記印刷データをSDRAM17のインターフェース入力データバッファ17Fに一時的に格納する。
【0034】
(2)空き領域の有無判断
そして、S23で、CPU11は、インターフェース入力データバッファ17Fに格納された印刷データを高速メモリコントローラ15を介して随時読み出し、ビットマップへの展開処理を実行し、その展開データを、高速メモリコントローラ15を介して印刷データ出力バンドバッファ17Gへ転送する処理を開始する。このとき、印刷制御部12は、「印刷部」として機能する。ここで、上記印刷データの展開処理は、基本的には印刷データ展開エリア17Eを利用して行われるが、前述したように印刷データが例えばPDLデータである場合には、特に、展開処理用の記憶エリアを大きく確保しておかないと展開処理に時間がかかり、全体として印刷処理が遅くなってしまう。
【0035】
そこで、S24で、CPU11が高速メモリコントローラ15を介して、上記印刷データ展開エリア17Eに所定範囲以上の空き領域(空き容量)があるかどうかを判断する。このとき、印刷制御部12は、「空き容量判断部」として機能する。ある程度の空き領域があると判断したときには(S24:N)、現在の上記印刷データ展開エリア17Eを拡張することなく、このまま印刷データの展開処理を続行する。そして、S25で展開データを印刷データ出力バンドバッファ17Gへ転送する処理が終了すると、この印刷データ出力バンドバッファ17Gに格納された展開データを随時印刷エンジン20Aへと引き渡す処理が開始され、印刷エンジン20Aにより用紙への印刷が実行される。S27では、CPU11が、後述するデータ再取得フラグが立っているかどうかを確認し、立っていれば(S27:Y)、図3のS10に戻る。一方、立っていなければ(S27:N)、S20の印刷要求の待機状態に戻る。
【0036】
(3)空き領域がない場合
上記印刷データ展開エリア17Eに空き領域がほとんどないと判断したときには(S24:Y)、S28でデモ印刷データエリア17Cにデモ印刷データ16Cが格納されているかどうかを判断し、有れば(S28:Y)、そのデモ印刷データ16Cが今回受信した印刷データの展開処理において必要かどうかを判断する(S29)。この判断は、パーソナルコンピュータ30や操作パネル21A上でデモ印刷機能が指定され、その実行コマンドをCPU11が受けたかどうかで判断することが可能である。CPU11は、デモ印刷機能の実行コマンドを受けていないときは(S29:N)、今回の展開処理においてデモ印刷データ16Cは不要なデータであるから、S30でデモ印刷データエリア17Cを作業領域として開放する。即ち、印刷データ展開エリア17Eを、デモ印刷データエリア17Cまで拡張する。このとき、印刷制御部12は、「削除部、不要部分判断部」として機能する。これにより、デモ印刷データエリア17Cに格納されていたデモ印刷データ16Cに展開データが上書きされる。そのため、S31で、シリアルROM16からデータを再取得することを指示するためのデータ再取得フラグを立てる。
【0037】
例えばS30で既に印刷データ展開エリア17Eがデモ印刷データエリア17Cまで拡張されSDRAM17にデモ印刷データ16Cがなくなっている場合(S28:N)や、SDRAM17にデモ印刷データ16Cは有るがデモ印刷機能が指定されている場合(S28:Y、且つ、S29:Y)には、S32に進む。ここでは、今回の展開処理においてフォントデータ16Bが必要かどうかを判断する。例えばパーソナルコンピュータ30からの印刷データがGDIデータである場合には、その展開処理にフォントデータ16Bは不要である。また、プリンタ10が複合機であって、ファクシミリ機能、スキャニング機能、コピー機能のいずれかが指定できる場合、各ファクシミリデータ、スキャニングデータやコピーデータは既にイメージデータを構成しており、その展開処理においてやはりフォントデータ16Bは不要である。
【0038】
従って、受信した印刷データがGDIデータであった場合や、ファクシミリ機能、スキャニング機能、コピー機能のいずれかの実行コマンドをCPU11が受けた場合には(S32:N)、S33でフォントデータエリア17Bを作業領域として開放する。即ち、印刷データ展開エリア17Eを、フォントデータエリア17Bまで拡張する。このとき、印刷制御部12は、「削除部、不要部分判断部」として機能する。これにより、フォントデータエリア17Bに格納されていたフォントデータ16Bに展開データが上書きされる。そのため、S31で、シリアルROM16からデータを再取得することを指示するためのデータ再取得フラグを立てる。なお、今回の印刷処理でフォントデータ16Bを使用する場合には(S32:Y)、結局、印刷データ展開エリア17Eに空き領域ができるまで待ち(S34:Y)、空き領域ができたときに(S34:N)、S23へ進む。
【0039】
(4)データ再取得処理
S31でデータ再取得フラグを立てた後、S23の処理を更に進める。そして、に戻り、上記S30,S33での印刷データ展開エリア17Eの拡張により印刷データ展開エリア17Eに十分な空き領域が確保されたときには(S24:N)、今回の印刷要求に対応する印刷処理(S25,S26)の終了後、今度は、データ再取得フラグが立っているから(S27:Y)、図3のS10に戻る。即ち、S29,S32で不要とされたフォントデータ16Bやデモ印刷データ16Cを、再度シリアルROM16から読み出してSDRAM17にコピーするデータ再取得処理を実行する。このとき、印刷制御部12は、「再複写部」として機能する。
【0040】
4.本実施形態の効果
(1)本実施形態によれば、印刷要求に対する印刷処理の実行前に、一旦、シリアルROM16に記録された印刷処理用プログラム16A及び印刷処理用データを、SDRAM17にコピーする。そして、印刷要求があった場合に、その印刷要求によって実行される印刷処理においてフォントデータ16Bやデモ印刷データ16Cが不要かどうかを判断し、不要であればその不要なデータのために確保されたフォントデータエリア17Bやデモ印刷データエリア17Cを、印刷データの展開処理のために開放する。これにより、印刷データの展開処理中においてSDRAM17内の作業エリア17Dを広く確保できる。
【0041】
(2)また、一印刷要求による印刷処理において不要であると判断されたフォントデータ16Bやデモ印刷データ16Cを、当該印刷処理の終了直後にシリアルROM16から読み出してSDRAM17に再コピーし、その状態で次の印刷要求を待つ。従って、例えば、次の印刷要求に対する印刷処理が、フォントデータ16Bを使用する処理や、デモ印刷データ16Cを使用する処理(例えばデモ印刷機能の実行時)であっても、当該印刷処理を早期に開始することができる。
【0042】
(3)更に、印刷データ展開エリア17Eの拡張(S30,S33)を、当該印刷データ展開エリア17Eの空き領域が不足してきたときだけ行うようにすることで無駄にデータ再所得処理を行うことを回避できる。
【0043】
(4)印刷処理用プログラム16AがSDRAM17にコピーされた時点でCPU11のリセット状態を解除して(S6)、印刷処理用データのコピー処理完了前から印刷エンジン20Aの制御を可能とし、印刷処理の事前準備としてのウオーミングアップ処理を早期に開始させることで、印刷要求があったときにその印刷処理を迅速に開始することが可能となる。
【0044】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、印刷処理で不要な部分とされるものの例として、フォントデータ16Bを挙げたが、これ以外に、例えば、画像濃度調整や転写位置調整のためのテスト用データなど、特殊機能だけで使用され通常の印刷処理では使用されない特殊機能用データであってもよい。また、例えば画像濃度調整用プログラム、転写位置調整用プログラムやデモ印刷処理用プログラムなどがモジュール単位で印刷処理用プログラム16Aに含まれている場合には、それらのモジュール単位で不要な部分として印刷データ展開エリア17Eへの開放対象とする構成も可能である。更に、ファクシミリ機能、スキャニング機能やコピー機能のプログラムがモジュール単位で印刷処理用プログラム16Aに含まれている場合も、やはりモジュール単位で不要な部分として印刷データ展開エリア17Eへの開放対象とする構成も可能である。
【0045】
(2)上記実施形態では、印刷データ展開エリア17Eに空きエリアが有る場合に、不要部分判断処理(S28,S29,S32等)を実行する構成としたが、これに限らず、印刷データ展開エリア17Eの空きエリアの有無にかかわらず、データ種(例えば印刷データがPDLデータかGDIデータか)や、パーソナルコンピュータ30からの印刷データに対する、いわゆるPC印刷の実行か、ファクリミリ機能の実行か、スキャニング機能の実行か、コピー機能の実行かについて、操作パネル21A上の操作等に基づき判断し、例えばPC印刷時だけ不要部分判断処理を実行する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンタの構成を示すブロック図
【図2】シリアルROM及びSDRAMのメモリマップ
【図3】印刷制御部の動作内容を示すフローチャート(その1)
【図4】印刷制御部の動作内容を示すフローチャート(その2)
【符号の説明】
【0047】
10…プリンタ(画像形成装置)
12…印刷制御部(複写部、印刷部、不要部分判断部、削除部、再複写部、空き容量判断部)
16…シリアルROM
16A…印刷処理用プログラム
16B…フォントデータ(印刷処理用データ)
16C…デモ印刷データ(特殊機能用データ)
17…SDRAM(RAM)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷処理用プログラム及び印刷処理用データが記録されるシリアルROMと、
RAMと、
本画像形成装置の起動に基づき、前記シリアルROMに記録された前記印刷処理用プログラム及び前記印刷処理用データを読み出して前記RAMに複写する複写部と、
前記RAMに複写された前記印刷処理用プログラム及び前記印刷処理用データに基づき印刷処理を実行する印刷部と、
印刷要求があった場合に、前記RAMに複写された前記印刷処理用プログラム及び前記印刷処理用データのうち、当該印刷要求によって実行される印刷処理で不要な部分が有るか否かを判断する不要部分判断部と、
前記不要部分判断部で不要な部分有りと判断された場合に、当該不要な部分を前記RAMから削除する削除部と、を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記削除部で削除された不要な部分を、前記印刷要求によって実行される印刷処理が終了した後に前記前記シリアルROMから読み出して前記RAMに再複写する再複写部を備える請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記不要部分判断部は、前記印刷処理用プログラム及び前記印刷処理用データに含まれる特殊機能用プログラムまたはデータが前記印刷要求によって実行される印刷処理で不要か否かに基づき判断する請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記不要部分判断部は、前記印刷処理用プログラム及び前記印刷処理用データに含まれるフォントデータが前記印刷要求によって実行される印刷処理で不要か否かで判断する請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記印刷要求があった場合に、当該印刷要求によって実行される印刷処理で前記RAMの空き容量が不足する可能性があるか否かを判断する空き容量判断部を備え、
前記不要部分判断部は、前記空き容量判断部で空き容量が不足すると判断された場合に前記不要な部分が有る否かの判断を行う請求項1から請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記複写部は、前記印刷処理用プログラムを優先して前記RAMに複写する請求項1から請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−73955(P2008−73955A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255910(P2006−255910)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】