説明

画像形成装置

【課題】電荷輸送層の上に保護層が形成された像担持体の光曝露されていない部分の濃度を変えることなく、光曝露位置の濃度を回復できる。
【解決手段】画像形成装置は、電荷輸送層上に電荷保護層が形成された感光体31と、感光体31を帯電する帯電器32と、帯電器32によって帯電された感光体31の帯電面を画像データに基づいて露光して静電潜像を形成する露光装置33と、感光体31に形成された静電潜像をトナーで現像する現像器34と、感光体31に圧接されトナーを転写する中間転写ベルト22と、転写後、感光体31上に残存するトナーを除去するクリーニング装置36と、感光体31に所定の波長領域の光を照射することにより、感光体31表面を加熱する加熱装置37と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸湿した際に潜像電位が低下する感光体を用いて画像形成を行う電子写真装置について、この吸湿対策に関する技術が開示されている(特許文献1参照)。特許文献1の電子写真装置は、感光体が吸湿することにより一定の電位レベルを維持し得なくなったとき、制御手段により一定の電位レベルを回復するまで加熱手段を作動させて感光体を加熱乾燥するものである。
【特許文献1】特公昭63−28301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、電荷輸送層の上に保護層が形成された像担持体の光曝露されていない部分の濃度を変えることなく、光曝露位置の濃度を回復できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明である画像形成装置は、電荷輸送層上に電荷保護層が形成された像担持体と、前記像担持体を帯電する帯電手段と、前記帯電手段によって帯電された前記像担持体の帯電面を画像データに基づいて露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記像担持体に形成された静電潜像をトナーで現像する現像手段と、前記像担持体に圧接されトナーを転写する転写手段と、前記転写後、前記像担持体上に残存するトナーを除去するトナー除去手段と、前記像担持体に所定の波長領域の光を照射することにより、前記像担持体表面を加熱する加熱手段と、を備えている。
【0005】
請求項2の発明である画像形成装置は、請求項1に記載の画像形成装置であって、前記加熱手段は、光を照射する光照射手段と、前記光照射手段から照射された所定波長の光の透過を制限する波長制限手段と、を備えている。
【0006】
請求項3の発明である画像形成装置は、請求項2に記載の画像形成装置であって、前記波長制限手段は、460nm以下の波長及び620〜680nmの波長の光の透過を制限する特性を有する。
【0007】
請求項4の発明である画像形成装置は、請求項2に記載の画像形成装置であって、前記波長制限手段は、480nm以下の波長及び580〜720nmの波長の光の透過を制限する特性を有する。
【0008】
請求項5の発明である画像形成装置は、請求項2に記載の画像形成装置であって、前記波長制限手段は、500nm以下の波長及び540〜760nmの波長の光の透過を制限する特性を有する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、電荷輸送層の上に保護層が形成された像担持体の光曝露されていない部分の濃度を変えることなく、光曝露位置の濃度を回復することができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、光の透過制限の程度に応じて、光曝露位置の濃度を回復させることができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、本発明の構成を備えないものに比べて、光曝露位置の濃度の回復具合を向上させることができる。
【0012】
請求項4に係る発明によれば、本発明の構成を備えないものに比べて、光曝露位置の濃度の回復具合を向上させることができる。
【0013】
請求項5に係る発明によれば、本発明の構成を備えないものに比べて、光曝露位置の濃度の回復具合を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
(画像形成装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。画像形成装置は、所謂タンデム型と称されるものであり、装置本体20の上方に原稿を読み取る画像読取りユニット26と、4つの色成分(本実施の形態ではY:イエロ、M:マゼンタ、C:シアン、K:ブラック)を用いてそれぞれ画像を形成する作像エンジン21(具体的には21a〜21d)と、を備えている。
【0016】
さらに、画像形成装置は、各作像エンジン21の配列方向に沿って循環搬送される中間転写ベルト22と、中間転写ベルト22上の画像を用紙等の記録材Pに転写させる二次転写装置23と、用紙等の記録材Pを収容する記録材供給カセット24と、を備えている。そして、この記録材供給カセット24からの記録材Pは、二次転写部位を経て定着器25へと搬送される。
【0017】
作像エンジン21は、像担持体である感光体31と、感光体31を帯電する帯電器32と、帯電された感光体31上に静電潜像を書き込むレーザ装置等を含む露光装置33と、感光体31上の静電潜像を各色成分トナーにて可視像化する現像器34と、感光体31上のトナー像(画像)を中間転写ベルト22に一次転写させる一次転写装置35と、感光体31上の残留トナーを除去するクリーニング装置36と、詳しくは後述する加熱装置37と、を備えている。
【0018】
なお、クリーニング装置36は、後述の図2に示すように、感光体31を除電するための清掃前除電器36aを備えている。
【0019】
中間転写ベルト22は、4つの張架ロール41〜44に掛け渡されている。張架ロール41は駆動ロールとして、張架ロール42は従動ロールとして機能する。張架ロール43は、傾動自在でベルトの幅方向の位置を補正するためのステアリングロールとして機能する。張架ロール44は、二次転写装置23に対向して中間転写ベルトを支持するためのバックアップロールとして機能する。ベルトクリーナ45は、中間転写ベルト22上の残留トナーを除去する。
【0020】
画像読取りユニット26は、原稿51が載置される原稿設置台(プラテン)52を有している。プラテン52の下方には原稿読取り用の走査ユニット53が配設されると共に、走査ユニット53にて読み取った光像をミラーやレンズなどの光学系54を介して画像読取り素子55(CCDイメージセンサ)に取り込むようにしたものである。
【0021】
(保護層の構成)
像担持体である感光ドラム31は、架橋構造を有する保護層を備えたものであり、例えば下記のように製造されたものである。
【0022】
下引き層
アセチルアセトンジルコニウムブトキシド 20重量部
(オルガチッククス ZC540 松本交商製)
γ−網のプロピルトリエトキシシラン 2重量部
(A1100 日本ユニカ(株)製)
ポリビニルブチラール樹脂 1.5重量部
(エスレックスBM−S 積水化学(株)製)
n−ブチルアルコール 70重量部
【0023】
上記成分からなる溶液を、アルミパイプ上の浸漬塗布した後、150°Cで10分間乾燥させて膜厚0.9μmの下引き層を形成した。
【0024】
電荷発生層
X型無金属フタロシアニン 5重量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(VMCH、ユニオンカーバイド社製)5重量部、酢酸、n−ブチル 200重量部を、1mmφのガラスビーズを用いたサンドミルで2時間分散して得られた分散液を、上記の下引き層上に浸漬塗布し、100°Cで10分間乾燥させて膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0025】
電荷輸送層
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン 45重量部及びビスフェノールZポリカーボネート樹脂(分子量:4万) 55重量部をクロルベンゼン800重量部に加えて溶解し、電荷輸送用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布し、130°C、45分間の乾燥を行って膜厚が22μmの電荷輸送層を形成した。
【0026】
保護層
下記の構造式(1)で表される化合物 3.5質量部、レジトップPL−4852(群栄化学製) 3質量部、ポリビニルフェノール樹脂(Aldrich製) 0.5質量部、イソプロピルアルコール 10質量部、並びに、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ(BHT) 0.2質量部を加えて保護層用塗膜液を調整した。この塗布液を電荷輸送層の上に浸漬塗布法により塗布し、室温で30分乾燥した後、150°Cで1時間加熱処理して硬化させ、膜厚約が4.0μmの保護層を形成して感光体31とした。
【0027】
【化1】

なお、感光体31を形成する各層の組成は上記に限られることなく、種々の組成を持つ材料を使用することができる。
【0028】
図2は、画像形成装置の作像エンジン21の要部構成図である。作像エンジン21は、感光体31の外周側の一次転写体35とクリーニング装置36の間に、感光体31の表面を加熱する加熱装置37を備えている。
【0029】
加熱装置37は、感光体31に光を照射するハロゲンランプ37aと、ハロゲンランプ37aの光を反射して感光体31に照射させるリフレクタ37bと、ハロゲンランプ37a又はリフレクタ37bからの光のうち所定帯域の光が透過するのを制限するフィルタ37cと、を備えている。
【0030】
以上のように構成された画像形成装置は、上述したような架橋構造を有する保護層を備えた感光体31を用いることにより、クリーニングブレードなどによる磨耗に対して耐性を持たせることができ、感光体31を長寿命化することができる。
【0031】
しかしながら、保護層を設けたことにより帯電時に発生するオゾンや窒素酸化物などの帯電生成物が付着しやすくなる。特に、高温、多湿の気中に帯電生成物が浮遊している環境で感光体31が停止していると、帯電生成物が気中の水分と結合して感光体31の抵抗値を変化させる現象を生じる。この結果、現像プロセスから転写プロセスでは前述の抵抗値の変化がトナー濃度の変化となって現れ面内濃度ムラが生じたりして画質を劣化させる。
【0032】
そこで、加熱装置37は、所定帯域の光の透過を制限して感光体31を加熱することにより、水分と結合して発生していたトラップ電荷を開放して、感光体31に形成される潜像の濃度ムラを抑制している。
【0033】
図3(A)はプロセススピードが52mm/sのときに発生する白抜けがどの程度改善されたかを示す図であり、(B)はプロセススピードが165208mm/sのときに発生する黒焦げがどの程度改善されたかを示す図である。なお、曝露条件は600Lux3分間であり、加熱は乾燥機で行い、画出しはKutani20%、60%ハーフトーンで行った。なお、丸印は「ムラとして識別されなくなるまで改善」したこと、三角印は「改善はしているがムラとして識別できる」こと、バツ印は「改善効果なし」を示している。
【0034】
白抜けの場合、昇温時間が40℃で昇温時間が1分のときを除いて、いずれの条件でも改善されている。黒焦げの場合、昇温時間が80℃で昇温時間が5分以上になると改善される。
【0035】
図4は、ハロゲンランプの相対強度と波長分布を示す図である。図5は、図4のハロゲンランプに2種類のフィルタを設けた場合、フィルタがない場合の感光体の表面温度を示す図である。図6は、フィルタ37cとして設けられたグリーンシートの透過率を示す図である。
【0036】
図5に示すように、感光体の表面昇温は、フィルタなし、短波長カットフィルタ、グリーンシートの順に高くなっている。また、図6に示すように、グリーンシートのフィルム数が1枚よりも3枚の方が所定の帯域を確実にカットすることができる。
【0037】
図7(A)はUVF現象の分光スペクトルを示す図、(B)は除電後の減衰度を示す図である。図7(A)及び(B)に示すように、400nm、700nmの帯域で濃度低下のピークが生じる。すなわち、中心帯域が約400nm、700nmの帯域を除外して、他の帯域(例えば緑色光の帯域)を感光体に照射すれば、濃度低下が抑制されることが分かる。また、露光電位の低下は、白抜けと同様に波長依存性があることが分かる。よって、露光電位の低下及び白抜けは、感光体31の保護層における光曝露による電荷の発生が原因であると推定される。
【0038】
図8は、光曝露有無による回復状態及び全面白抜けを示す図である。
【0039】
初期状態は明度81%である場合、露光装置によって曝露された位置は明度91%になり、曝露されなかった位置は明度81.5%になった。このとき、ハロゲンランプ単独で3分間、感光体の表面温度が40℃になるように加熱すると、曝露された位置は明度90%になり、曝露されなかった位置は明度88になった。
【0040】
一方、露光装置によって曝露された位置が明度90%の場合、グリーンシートを介してハロゲンランプから加熱すると、その位置の明度は85%になった。また、曝露されなかった位置の明度が81%の場合、グリーンシートを介してハロゲンランプから加熱すると、その位置の明度は80.5%になった。
【0041】
以上のことから、曝露された位置は、グリーンシートを介してハロゲンランプからの光によって加熱されると、明度が低下し、回復している。但し、ハロゲンランプ単独の光によって加熱された場合、明度はあまり低下していないため、回復していない。
【0042】
また、曝露されなかった位置は、グリーンシートを介してハロゲンランプからの光によって加熱されても、明度はほとんど変化せず、加熱による影響はほとんどない。但し、ハロゲンランプ単独の光によって加熱された場合、明度は上昇してしまい、加熱によって大きな影響(白抜け)が生じている。
【0043】
図9は、全面白抜けの発生程度を示す図である。○印は問題なし、△印は許容レベル、×印は許容できないことを示している。
【0044】
また、全面白抜け評価は、
1.所定時間ハロゲンランプ(グリーンシートあり)にて加熱し、
2.1秒間放置し、
3.HT30%画像の初期からの濃度低下ΔEを測定する
という条件で行われた。
【0045】
図9によると、感光体表面温度が30℃の場合、加熱時間は1、2、3分のいずれでも濃度低下ΔEはほとんどなく、問題はなかった。感光体表面温度が40℃の場合、加熱時間は1、2分のいずれでも濃度低下ΔEはほとんどなかったが、3分になると少し濃度低下ΔEが生じたが、許容レベルである。感光体表面温度が50℃の場合、加熱時間が1分のときは少し濃度低下ΔEが生じたが、許容レベルである。しかし、加熱時間が2分を超えると、濃度低下ΔEが大きくなり、許容できないレベルになった。
【0046】
図10は、フィルタ37cとして3つのフィルタA、B、Cを用いたときの全面白抜け抑制効果を示す図である。
【0047】
フィルタAは、500nm以下の波長及び540〜760nmの波長をカットする特性を有している。フィルタAによると、全面白抜け抑制効果は90%であった。フィルタBは、480nm以下の波長及び580〜720nmの波長をカットする特性を有している。フィルタBによると、全面白抜け抑制効果は80%であった。フィルタCは、460nm以下の波長及び620〜680nmの波長をカットする特性を有している。フィルタCによると、全面白抜け抑制効果は60%であった。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で設計上の変更をされたものにも適用可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。
【図2】画像形成装置の作像エンジン21の要部構成図である。
【図3】(A)はプロセススピードが52mm/sのときに発生する白抜けがどの程度改善されたかを示す図であり、(B)はプロセススピードが165208mm/sのときに発生する黒焦げがどの程度改善されたかを示す図である。
【図4】ハロゲンランプの相対強度と波長分布を示す図である。
【図5】図4のハロゲンランプに2種類のフィルタを設けた場合、フィルタがない場合の感光体の表面温度を示す図である。
【図6】フィルタとして設けられたグリーンシートの透過率を示す図である。
【図7】(A)はUVF現象の分光スペクトルを示す図、(B)は除電後の減衰度を示す図である。
【図8】光曝露有無による回復状態及び全面白抜けを示す図である。
【図9】全面白抜けの発生程度を示す図である。
【図10】フィルタとして3つのフィルタA、B、Cを用いたときの全面白抜け抑制効果を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
22 中間転写ベルト
31 感光体
32 帯電器
33 露光装置
34 現像器
36 クリーニング装置
37 加熱装置
37a ハロゲンランプ
37b リフレクタ
37c フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷輸送層上に電荷保護層が形成された像担持体と、
前記像担持体を帯電する帯電手段と、
前記帯電手段によって帯電された前記像担持体の帯電面を画像データに基づいて露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記像担持体に形成された静電潜像をトナーで現像する現像手段と、
前記像担持体に圧接されトナーを転写する転写手段と、
前記転写後、前記像担持体上に残存するトナーを除去するトナー除去手段と、
前記像担持体に所定の波長領域の光を照射することにより、前記像担持体表面を加熱する加熱手段と、
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、光を照射する光照射手段と、前記光照射手段から照射された所定波長の光の透過を制限する波長制限手段と、
を備えた請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記波長制限手段は、460nm以下の波長及び620〜680nmの波長の光の透過を制限する特性を有する
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記波長制限手段は、480nm以下の波長及び580〜720nmの波長の光の透過を制限する特性を有する
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記波長制限手段は、500nm以下の波長及び540〜760nmの波長の光の透過を制限する特性を有する
請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−86372(P2009−86372A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256859(P2007−256859)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】