説明

画像形成装置

【課題】画像形成動作を開始または終了する際に、感光体ドラムにトナーかぶりおよびキャリア付着が発生することを防止する。
【解決手段】感光体ドラム11Kの表面を帯電器12Kによって帯電して、プリントヘッド13Kによって静電潜像を形成し、現像器14Kから供給されるトナーによって現像する。帯電器12Kには帯電電源部60Kによって帯電バイアス電圧が印加され、現像器14Kの現像スリーブ141Kには現像電源部63Kによって現像バイアス電圧が印加される。画像形成動作を開始また終了する際には、現像電源部63Kの出力が所定電圧にそれぞれ達する時間を算出して、算出された時間に帯電電源部60Kの出力が所定電圧に達するように帯電電源部60Kを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高画質のトナー画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機等の一般的な画像形成装置では、通常、帯電器によって所定の表面電位になるように一様に帯電された感光体ドラムに、画像データに対応したレーザ光を照射して静電潜像を形成し、形成された静電潜像を現像器によってトナー現像してトナー画像を形成し、形成されたトナー画像を記録シートに転写するようになっている。現像器には、例えば、トナーと、磁性粒子であるキャリアとを有する二成分系現像剤が用いられる。
【0003】
二成分系現像剤を用いる現像器には、二成分系現像剤が収容されるハウジング内に、現像マグネットローラが感光体ドラムと対向するように配置されている。現像マグネットローラは、回転可能になった円筒状の現像スリーブと、この現像スリーブ内に固定的に配置された円柱状のマグネット体とを備えており、現像スリーブが回転することによって現像スリーブの外周面(表面)にキャリアによる磁気ブラシが形成され、磁気ブラシによってハウジング内のトナーが搬送される。現像スリーブには、現像電源部から出力される現像バイアス電圧が印加されるようになっており、感光体ドラムの表面電位と、現像バイアス電圧が印加された現像スリーブの表面電位との電位差によって、現像スリーブの外周面を搬送されるトナーが、感光体ドラム表面の静電潜像の部分に付着して、静電潜像がトナーによって現像される。
【0004】
感光体ドラムの表面を帯電させる帯電器には、例えば、帯電電源部から出力される−900V程度の高電圧が帯電バイアス電圧として印加される。現像スリーブには、例えば、現像電源部から−700V程度の直流電圧に周波数4〜7kHzの矩形波交流電圧が重畳されることによって、ピークtoピーク電圧が1.2〜1.4kVpp程度になった現像バイアス電圧が印加される。このように、直流電圧成分に矩形波交流電圧成分を重畳した現像バイアス電圧を現像スリーブに印加することにより、現像スリーブの表面に形成される磁気ブラシを揺動させることができ、トナーによる現像効率を向上させることができるとともに、感光体ドラムに形成されるトナー画像の画質を向上させることができる。なお、現像電源部から直流成分のみのバイアス電圧を出力して現像スリーブに印加する場合もある。現像器におけるハウジング内のトナーは、現像によって消費されるために、ハウジング内には適宜トナーが補給される。
【0005】
静電潜像に付着するトナーの濃度は、感光体ドラムの表面電位と、現像バイアス電圧が印加された現像スリーブの表面電位との電位差によって調整される。感光体ドラムの表面電位は、現像スリーブの表面電位よりも絶対値が大きくなるように設定されており、その絶対値の電位差の最大値は200数十V程度になっている。従って、感光体ドラムの表面電位と現像スリーブの表面電位との電位差を、絶対値で数十〜200数十Vの範囲で調整することによって、静電潜像に付着するトナーの濃度を調整することができる。
【0006】
このような現像器では、感光体ドラムの表面電位と現像スリーブの表面電位との関係によっては、感光体ドラムに形成されるトナー画像に画像欠陥が生じるおそれがある。すなわち、感光体ドラムの表面電位の絶対値と現像スリーブの表面電位の絶対値との差が小さい場合には、感光体ドラムにおける非画像領域にトナーが付着する「トナーかぶり」が発生する。「トナーかぶり」によるトナーの付着量が多くなると画質が著しく低下し、記録シートに形成されるトナー画像として許容できない画質になる。
【0007】
現像バイアス電圧として直流成分のみが印加される場合には、現像スリーブの表面電位が感光体ドラムの表面電位の絶対値に対して100V程度以上小さくなることによって、また、現像バイアス電圧として交流電圧成分が直流電圧に重畳されている場合には、現像スリーブの表面電位が感光体ドラムの表面電位に対して絶対値で少しでも小さくなることによって、「トナーかぶり」によって許容できない画質のトナー画像が形成されるおそれがある。なお、このような「トナーカブリ」は、二成分系現像剤を用いる場合に限らず、トナーのみを用いる一成分系現像剤を用いる場合にも発生する。
【0008】
感光体ドラムにおける表面電位の絶対値が、現像スリーブの表面電位の絶対値よりも非常に大きくなると、磁気ブラシを形成するキャリアが感光体ドラムに付着する「キャリア付着」が発生し、画質が低下するおそれがある。現像器内のキャリアは補給されないために、「キャリア付着」によって消費されるキャリア量が多くなって現像器内のキャリア量が少なくなると、キャリアが形成する磁気ブラシによるトナー搬送効率が低下し、静電潜像におけるトナー濃度が低下するおそれがある。さらにキャリアが消費されると、感光体ドラム表面の静電潜像をトナーによって確実に現像できなくなり、現像器として機能できる期間(寿命)が短くなる。
【0009】
現像バイアス電圧として直流成分のみが印加される場合には、現像スリーブの表面電位の絶対値に対して感光体ドラムの表面電位の絶対値が約500V以上大きくなることにより、また、交流電圧成分が重畳されている場合には、現像スリーブの表面電位の絶対値に対して感光体ドラムの表面電位の絶対値が約300V以上大きくなることにより、「キャリア付着」によって許容できない画質のトナー画像が形成されるおそれがある。
【0010】
特に、画像形成を開始する場合および終了する場合には、感光体ドラムの表面電位の絶対値と現像スリーブの表面電位の絶対値との差が大きくなるおそれがある。例えば、スコロトロン方式の帯電器の場合、電源仕様、回路構成等の要因により、帯電電源部は、数msの短時間で、感光体ドラムを所定の表面電位に帯電させるために必要な電圧(帯電バイアス電圧)を出力し得る状態に立ち上がることができるのに対して、現像スリーブに現像バイアス電圧を印加する現像電源部は、現像バイアス電圧として必要な電圧を出力し得る状態に立ち上がるまでに数十ms程度の時間を要する。このことから、画像形成動作を開始するために、帯電電源部および現像電源部を同時に起動させると、感光体ドラムが所定の表面電位になっても、その時点では、現像スリーブには、現像バイアス電圧よりも低い電圧しか印加されていないことになり、両者の電位差が大きくなって、「キャリア付着」が発生する確率が高くなる。
【0011】
現像電源部を帯電電源部よりも先に起動することによって、感光体ドラム表面の帯電電位の絶対値が現像スリーブの表面電位の絶対値よりも大きくなることを抑制でき、「キャリア付着」を抑制することができる。しかし、この場合には、感光体ドラムの帯電が開始されるまでの間は現像スリーブに印加される電圧が上昇し、現像スリーブの表面電位の方が、感光体ドラムの表面電位よりも高くなり、現像スリーブの表面電位と感光体ドラムの表面電位との電位差によっては、「トナーかぶり」が発生するおそれがあり、それにより、許容することができない画質のトナー画像になるおそれがある。「トナーかぶり」が発生することを抑制するために、現像電源部の立ち上がり時に、現像スリーブに印加される現像バイアス電圧を、矩形波交流電圧が重畳されていない直流電圧のみとして、現像スリーブに短時間で高電圧を印加することにより「キャリア付着」を防止することも行われているが、この場合にも、「トナーかぶり」が発生することを確実に防止することができない。
【0012】
画像形成終了時においても、帯電電源部は、帯電バイアス電圧が出力される状態から短時間で待機状態になるのに対して、現像電源部は現像バイアス電圧が出力される状態から待機状態になるまでに比較的長い時間を要するために、感光体ドラムと現像スリーブとの電位差が大きくなって「キャリア付着」、「トナーかぶり」が発生するおそれがある。
特許文献1には、画像形成動作の開始時および終了時に、帯電ローラに連続的または断続的に帯電バイアス電圧を印加するとともに、帯電バイアス電圧に連動させて、現像スリーブに印加される現像バイアス電圧を連続的または断続的に変動させることにより、感光体ドラムの表面電位と、現像スリーブの現像バイアス電位とのそれぞれの絶対値の差を300V以下とし、感光体ドラムの表面にキャリアが付着する「キャリア付着」を防止する構成が開示されている。また、特許文献2には、感光体ドラムの帯電電位および現像バイアス電位の立ち上げ時または立ち下げ時に、いずれか一方を、他方の立ち上がりまたは立ち下がり時の電位に基づいて段階的に制御することによって、感光体ドラムにトナーおよびキャリアが付着することを防止する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−92197号公報
【特許文献2】特開2001−235913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、帯電電源部および現像電源部は、立ち上がり時および立ち下がり時において、個々の性能のばらつき、負荷側抵抗値の変動、環境変動等によって、所定の電圧を安定的に出力できるまでの時間が一定せず出力電圧が不安定であるために、特許文献1および2に記載されているように、帯電ローラ、帯電チャージャー等の帯電器に印加される帯電バイアス電圧と現像スリーブに印加される現像バイアス電圧とを、画像形成開始時および終了時に段階的に制御する構成では、帯電バイアス電圧および現像バイアス電圧をそれぞれ所望の電位に制御することが容易でなく、感光体ドラムに対する「トナーかぶり」および「キャリア付着」を確実に防止することができないおそれがある。
【0015】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、画像形成動作を開始および終了する際に、「トナーかぶり」が発生することを確実に防止することができる画像形成装置を提供すること、および、「トナーかぶり」および「キャリア付着」の両方が発生することも確実に防止することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面を帯電させる帯電器と、前記帯電器に帯電バイアス電圧を印加する帯電電源部と、帯電された前記像担持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記像担持体に対向して配置された現像剤担持体を有し、当該現像剤担持体によって搬送される現像剤により前記静電潜像を現像する現像器と、前記現像剤担持体に現像バイアス電圧を印加する現像電源部と、前記帯電バイアス電圧が出力されるように前記帯電電源部を制御するとともに、前記現像バイアス電圧が出力されるように前記現像電源部を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、画像形成動作を開始または終了する際に、前記現像電源部の出力がそれぞれ所定電圧に達すると想定される到達予想時間を算出して、算出されたそれぞれの到達予想時間に前記帯電電源部の出力がそれぞれ所定電圧に達するように当該帯電電源部を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の画像形成装置では、画像形成動作を開始する際または終了する際において、現像バイアス電圧を印加する現像電源部が、現像バイアス電圧を安定的に出力する状態または所定の待機状態になると同時に、帯電バイアス電圧を印加する帯電電源部も、帯電バイアス電圧を安定的に出力する状態または所定の待機状態になるために、像担持体(感光体)表面の電位と現像剤担持体(現像スリーブ)表面の電位との差をそれぞれ所定の範囲にすることができる。これにより、画像形成動作開始時または終了時に「トナーかぶり」が生じることを確実に防止することができ、また、二成分系現像剤を用いる場合には、感光体にキャリアが付着する「キャリア付着」も確実に防止することができる。
【0018】
好ましくは、前記制御手段は、前記現像電源部の出力がそれぞれ所定電圧に達するまでの間に、予め設定された測定時間における当該現像電源部の出力に基づいて、前記到達予想時間を算出し、前記測定時間が経過した時点で前記帯電電源部の制御を開始することを特徴とする。
好ましくは、前記制御手段は、前記測定時間において、所定の時間間隔毎に前記現像電源部の出力を測定し、測定された出力に基づいて、前記到達予想時間を算出することを特徴とする。
【0019】
好ましくは、前記帯電器は、スコロトロン方式の帯電器であることを特徴とする。
好ましくは、前記現像剤が二成分系現像剤であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例であるタンデム型カラーデジタルプリンタの概略構成を示す模式図である。
【図2】そのプリンタにおける黒色のトナー画像を形成する画像形成ユニットの概略構成を示す模式図である。
【図3】その画像形成ユニットの制御系の主要部を示すブロック図である。
【図4】画像形成動作開始時に帯電現像制御部において実行される処理を示すタイムチャートである。
【図5】その画像形成動作開始時における帯電電源部および現像電源部の出力電圧と時間との関係を示すグラフである。
【図6】その画像形成動作開始時に帯電現像制御部において実行される処理を示すフローチャートである。
【図7】画像形成動作終了時に帯電現像制御部において実行される処理を示すタイムチャートである。
【図8】その画像形成動作終了時における帯電電源部および現像電源部の出力電圧と時間との関係を示すグラフである。
【図9】その画像形成動作終了時に帯電現像制御部において実行される処理を示すフローチャートである。
【図10】比較例における画像形成動作開始時の制御を示すタイムチャートである。
【図11】比較例における画像形成動作終了時の制御を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る定着装置および画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタルプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)を例にして説明する。図1は、プリンタ1の全体の概略構成を示す模式図である。プリンタ1は、周知の電子写真方式によりトナー画像を形成する画像プロセス部10と、プリンタ1の下部に設けられた給紙カセット31内の記録シートSを画像プロセス部10へ搬送するシート搬送部30とを備えている。シート搬送部30にて搬送される記録シートSは、画像プロセス部10においてトナー画像が転写された後に定着装置40に搬送され、定着装置40において記録シートSに転写されたトナー画像が定着される。
【0022】
画像プロセス部10は、プリンタ1の上下方向の略中央部において矢印Xで示す水平方向に周回移動する中間転写ベルト18と、水平方向に周回移動する中間転写ベルト18の上方に、周回移動方向に沿って順番に配置された画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kとを備えている。画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、主制御部70によって制御されるようになっている。主制御部70は、ネットワーク(例えばLAN)を介して、外部の端末装置等からの印刷(プリント)ジョブの実行指示を受け付けると、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kのそれぞれに対して、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各色のトナーによるトナー画像の形成動作を実行する。
【0023】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、トナー画像を形成するためのトナーの色のみがそれぞれ異なっていること以外は概略同様の構成になっていることから、画像形成ユニット10Kの構成のみを説明して、他の画像形成ユニット10Y、10M、10Cの構成の説明は省略する。画像形成ユニット10Kは、像担持体である感光体ドラム11Kと、その周囲に配置された帯電器12K、静電潜像形成手段としてのプリントヘッド(PH)13K、現像器14Kとを備えており、公知の帯電、露光、現像の各工程を経て感光体ドラム11K上にK色のトナー画像を形成する。感光体ドラム11Kに形成されたトナー画像は、中間転写ベルト18に転写され、トナー画像が転写された感光体ドラム11Kは、除電ランプ17Kによって除電されて、クリーナ16Kによってクリーニングされる。
【0024】
各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kの下方には、水平方向に走行する中間転写ベルト18を介して、1次転写ローラ15Y、15M、15C、15Kがそれぞれ配置されており、各感光体ドラム11Y、11M、11C、11K上のトナー画像が、1次転写ローラ15Y、15M、15C、15Kそれぞれと感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kそれぞれとの間に生じる電界の静電力によって中間転写ベルト18の外周面上に1次転写される。この場合、各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kにおけるトナー画像の形成動作は、中間転写ベルト18上の同じ領域に多重転写されるように、それぞれの画像形成動作タイミングをずらした状態で実行される。
【0025】
各色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト18は、下側の周回移動域において、上側の周回移動域とは反対方向へ周回移動する。中間転写ベルト18の下側の周回移動域における搬送方向下流側端部近傍には、中間転写ベルト18の外周面に対向して2次転写ローラ19が配置されており、中間転写ベルト18と2次転写ローラ19との間に、給紙カセット31から繰り出された記録シートSが搬送される搬送経路32が通過している。搬送経路32に沿って搬送される記録シートSは、中間転写ベルト18と2次転写ローラ19との間を通過する間に、中間転写ベルト18の外周面に多重転写されたトナー画像が2次転写される。トナー画像が転写された記録シートSは、搬送経路32に沿って搬送される間に、中間転写ベルト18から分離されて、2次転写ローラ19に対して中間転写ベルト18の下側の周回移動方向側に配置された定着装置40内へ供給される。トナー画像が2次転写された記録シートSは、定着装置40に設けられた加熱ローラ41と加圧ローラ42との間を通過する間に、トナー画像が定着され、各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kの上方に設けられた排紙トレイ33上に排出される。
【0026】
図2は、K色のトナー画像を形成する画像形成ユニット10Kの概略構成を示す模式図である。感光体ドラム11Kは、感光体モータ65Kによって、矢印Zで示す方向に回転される。感光体ドラム11Kの上部近傍には、感光体ドラム11Kの軸方向に沿って配置されたスコロトロン方式の帯電器12Kが設けられており、この帯電器12Kによって、感光体ドラム11Kの表面が一様に帯電される。スコロトロン方式の帯電器12Kは、断面矩形状の中空直方体形状であって感光体ドラム11K側の一側面が開口したシールド122Kと、このシールド122Kの内部に感光体ドラム11Kの軸方向に沿って設けられた針状電極121Kと、シールド122Kの開口内に設けられたグリッド電極123Kとを有している。
【0027】
帯電器12Kは、帯電電源部60Kから出力される電流および電圧によって制御される。帯電電源部60Kは、針状電極121Kに接続された針状電極電源部61Kと、シールド122Kに接続されたシールド電圧生成部62Kとを有している。針状電極電源部61Kは、針状電極121Kに−700μA程度の定電流を供給し、シールド電圧生成部62Kは、−200V〜−1100Vの範囲から選択された所定の電圧を帯電バイアス電圧としてシールド122Kに印加する。シールド122Kに帯電バイアス電圧が印加された状態で、針状電極121Kに−700μA程度の定電流が供給されることによってコロナ放電が生じ、感光体ドラム11Kの表面が所定の電位に帯電される。シールド122Kに発生する定電圧は、シールド電圧生成部62Kから供給される帯電バイアス電圧を変更することによって変更される。
【0028】
所定の電位に帯電された感光体ドラム11Kの表面には、露光手段であるプリントヘッド13Kから照射されるレーザ光によって静電潜像が形成される。感光体ドラム11Kの表面に形成された静電潜像は、感光体ドラム11Kに対して中間転写ベルト18の周回移動方向の上流側の側方に設けられた現像器14KにおいてK色(黒色)のトナーにより現像される。現像器14Kでは、磁性粒子であるキャリアとK色(黒色)のトナーとによって構成された二成分現像剤が使用されており、現像器14Kにおけるハウジングの内部に二成分現像剤が収容されている。ハウジング内には、感光体ドラム11Kに対向して配置された現像マグネットローラ140Kが設けられている。現像マグネットローラ140Kは、現像剤担持体である円筒状の現像スリーブ141Kと、現像スリーブ141Kの内部に固定状態で配置された円柱状のマグネット体142Kとを有しており、現像スリーブ141Kが現像モータ66Kによって所定方向に回転駆動される。現像スリーブ141Kには、現像電源部63Kの出力端子が接続されており、現像電源部63Kからは、−100V〜−800Vの範囲から選択された所定の電位(本実施形態では−700V)の直流電圧と、周波数が4〜7kHzの交流電圧とが重畳されることによって、ピークtoピーク電圧が1200〜1400Vppの範囲から選択された所定の現像バイアス電圧が出力され、この現像バイアス電圧が現像スリーブ141Kに印加される。
【0029】
現像バイアス電圧が印加された現像スリーブ141Kが現像モータ66Kによって回転されると、現像スリーブ141Kの表面にはキャリアによって磁気ブラシが形成され、磁気ブラシによって、ハウジング内のトナーが搬送されて、感光体ドラム11Kの表面の静電潜像に付着する。これにより、静電潜像がトナー現像されて、感光体ドラム11Kの表面にK色のトナー画像が形成される。
【0030】
感光体ドラム11Kの表面のトナー画像は、感光体ドラム11Kの下方において中間転写ベルト18を挟んで対向配置された1次転写ローラ15Kによって、中間転写ベルト18の外周面上に転写される。1次転写ローラ15Kには、転写電源部64Kから、+500V〜+3000Vの範囲から選択された所定の転写バイアス電圧が印加されており、感光体ドラム11Kの表面に形成されたK色のトナー画像が、中間転写ベルト18の外周面に密着すると、1次転写ローラ15Kに印加される所定の正極性の転写バイアス電圧によって、中間転写ベルト18の外周面上に転写される。
【0031】
転写ローラ15Kに印加される転写バイアス電圧は、感光体ドラム11Kの表面に形成されたトナー画像が効率的に中間転写ベルト18に転写されるように所定の電位に予め設定されているが、感光体ドラム11Kの表面に形成されたトナー画像の全てのトナーを中間転写ベルト18に転写することができず、十数%程度のトナーが感光体ドラム11Kの表面に残留する。感光体ドラム11Kの表面に残留するトナーは、クリーナ16Kによって掻き落とされて、図示しない廃トナーボトルに回収される。残留トナーが掻き落とされた感光体ドラム11Kは、除電ランプ17Kによって表面の電荷が消去される。トナー画像が転写された中間転写ベルト18は、前述したように、中間転写ベルト18の周回移動域の下側において、給紙カセット31から搬送される記録シートSに2次転写され、トナー画像が転写された記録シートSは、定着装置40にてトナー画像が定着された後に、排紙トレイ33上に排出される。
【0032】
図3は、画像プロセス部10におけるK色のトナーによるトナー画像を形成する画像形成ユニット10Kの制御系の主要部を示すブロック図である。画像形成ユニット10Kは、主制御部70における帯電現像制御部50Kによって制御される。帯電現像制御部50KはCPU(図示せず)を備えており、CPUのソフトウェアに基づいて、画像形成ユニット10Kにおける感光体ドラム11Kを回転させる感光体モータ65Kおよび現像器14Kの現像スリーブ141Kを回転させる現像モータ66Kを制御するとともに、帯電電源部60Kの針状電極電源部61Kおよびシールド電圧生成部62K、現像電源部63K、転写電源部64K等を制御する。従って、帯電現像制御部50Kには、誤差アンプ等のハードウェア要素は設けられていない。なお、他の画像形成ユニット10Y、10M、10Cにも同様の構成の帯電現像制御部が設けられており、それぞれの画像形成ユニット10Y、10M、10Cにおいても、それぞれ帯電現像制御部によって同様の制御が実行される。
【0033】
帯電現像制御部50Kは、感光体ドラム11Kを回転させる感光体モータ65Kに制御信号を出力して、感光体ドラム11Kが所定のタイミングで回転および停止するように感光体モータ65Kを制御する。同様に、帯電現像制御部50Kは、現像器14Kにおける現像スリーブ141Kを回転させる現像モータ66Kに制御信号を出力して、現像スリーブ141Kが所定のタイミングで回転および停止するように現像モータ66Kを制御する。
【0034】
帯電電源部60Kの針状電極電源部61Kには、針状電極電流生成部611Kが設けられており、針状電極電流生成部611Kには、帯電現像制御部50Kから出力される制御信号が制御信号線54を介して入力されている。針状電極電流生成部611Kは、制御信号線54を介して入力される制御信号に基づいて−700μAの定電流を生成し、出力端子613Kを介して帯電器12Kの針状電極121Kに供給する。針状電極電流生成部611Kの出力端子から出力される電流は、電流電圧変換部612Kによって所定のレベルの電圧とされ、モニター信号線55を介して帯電現像制御部50Kにモニター信号として与えられている。帯電現像制御部50Kは、モニター信号線55を介して入力されるモニター信号に基づいて、針状電極電流生成部611Kにて生成される電流が−700μAになるように、制御信号線54を介して制御信号を針状電極電流生成部611Kに出力する。
【0035】
シールド電圧生成部62Kは、制御信号線57を介して入力される制御信号に基づいて、−200V〜−1100Vの範囲において選択された所定の電位の帯電バイアス電圧を生成し、生成された帯電バイアス電圧を、出力端子622Kを介して帯電器12Kのシールド122Kに供給し、グリッド電極123Kを所定の電位に制御する。シールド電圧生成部62Kから出力される帯電バイアス電圧は分圧されており、分圧された電圧が、モニター信号としてモニター信号線56を介して帯電現像制御部50Kに与えられている。帯電現像制御部50Kでは、モニター信号線56を介して入力されるモニター信号に基づいて、シールド電圧生成部62Kにて所定の電位の帯電バイアス電圧が生成されるように、シールド電圧生成部62Kに制御信号線57を介して制御信号を供給する。シールド電圧生成部62Kからは、例えば−900Vの帯電バイアス電圧が出力される。
【0036】
現像器14Kの現像電源部63Kには、矩形波交流電圧生成部631Kと、直流電圧生成部632Kとが設けられている。矩形波交流電圧生成部631Kは、予め設定されたピークtoピーク電圧であって、帯電現像制御部50Kからクロック信号線51を介して入力されるクロック信号に基づく周波数の矩形波交流電圧を生成する。矩形波交流電圧生成部631Kの出力を停止する場合には、クロック信号をハイレベルまたはローレベルに固定すればよく、画像形成を開始する際および終了する際には、矩形波交流電圧生成部631Kの出力は停止される。直流電圧生成部632Kは、制御信号線53を介して入力される制御信号に基づいて、所定電位の電圧を生成して、矩形波交流電圧生成部631Kに供給する。直流電圧生成部632Kから出力される直流電圧は分圧されて、分圧された電圧が、モニター信号としてモニター信号線52を介して帯電現像制御部50Kに与えられている。
【0037】
帯電現像制御部50Kでは、モニター信号線52を介して入力されるモニター信号に基づいて、直流電圧生成部632Kにて所定の電位(本実施形態では−700V)の直流電圧が生成されるように、直流電圧生成部632Kに制御信号線53を介して制御信号を供給する。矩形波交流電圧生成部631Kは、生成した所定周波数の交流電圧に、直流電圧生成部632Kから供給される所定電位の直流電圧を重畳することにより、ピークtoピーク電圧が1200Vpp〜1400Vpp程度の現像バイアス電圧を生成して、出力端子633Kを介して現像スリーブ141Kに印加する。
【0038】
帯電現像制御部50Kは、転写電源部64Kが1次転写ローラ15Kに印加する正極性の転写バイアス電圧を、例えば、プリンタ1の電源スイッチがオンされた直後の初期動作において決定する。転写バイアス電圧は、転写電源部64Kによって1次転写ローラ15Kに対する定電流制御を行うことにより得られた中間転写ベルト18の電圧に基づいて求められる中間転写ベルト18の抵抗成分と、プリンタ1の使用環境を検出するためにプリンタ1内に設けられた温度、湿度等を検出する環境センサによって得られた環境情報とに基づいて、例えば、帯電現像制御部50Kに記憶されたテーブルを用いて決定される。帯電現像制御部50Kは、このようにして決定された転写バイアス電圧が転写電源部64Kにおいて生成されるように、転写電源部64Kに制御信号を出力する。転写電源部64Kにて生成された転写バイアス電圧は、1次転写ローラ15Kに印加される。
【0039】
このような構成のプリンタ1におけるK色トナー用の現像器10Kが画像形成動作を開始する場合における帯電現像制御部50Kによる制御を、図4に示すタイムチャートに基づいて説明する。帯電現像制御部50Kは、プリントジョブを受け取ると制御を開始し、感光体モータ65Kに制御信号を出力して感光体ドラム11Kを回転させるとともに、現像器14Kの現像モータ66Kに制御信号を出力して現像スリーブ141Kを回転させる。感光体ドラム11Kおよび現像スリーブ141Kは、所定時間(0.4s(秒))が経過することによって、それぞれ、一定の回転数で安定回転する安定回転状態になる。
【0040】
帯電現像制御部50Kは、感光体ドラム11Kおよび現像スリーブ141Kのそれぞれが安定回転状態になったとみなされる所定時間が経過すると、現像器14Kの現像電源部63Kから現像バイアス電圧を出力させる現像バイアス制御の実行と、帯電電源部60Kにおけるシールド電圧生成部62Kから帯電バイアス電圧を出力させる帯電バイアス制御の実行とを開始する。この制御開始時には、現像電源部63Kにおける現像バイアス電圧の制御が開始されてから、予め設定された測定時間t1が経過した時点で、帯電電源部60Kにおける帯電バイアス電圧の制御が開始され、それぞれから出力される電圧値が、予め設定された−700Vおよび−900Vという絶対値の大きな電圧に同時に達するように、シールド電圧生成部62Kが制御される。
【0041】
この場合の帯電現像制御部50Kにおける制御の詳細について、帯電電源部60Kおよび現像電源部63Kのそれぞれにおける出力電圧と時間との関係を示す図5のグラフおよび図6のフローチャートに基づいて説明する。帯電現像制御部50Kは、まず、現像器14Kの現像電源部63Kにおける矩形波交流電圧生成部631Kおよび直流電圧生成部632Kにそれぞれ制御信号を出力して、矩形波交流電圧生成部631Kを出力停止状態にするとともに、直流電圧生成部632Kから−700Vの直流電圧が出力されるように立ち上げる制御を開始する(図6のステップS1参照)。
【0042】
直流電圧生成部632Kから出力される直流電圧は、矩形波交流電圧生成部631Kからの出力(この場合は出力停止状態)と重畳されて現像スリーブ141Kに印加される。これと同時に、帯電現像制御部50Kは、直流電圧生成部632Kから出力される直流電圧のモニター信号に基づいて、例えば、予め設定された測定時間t1にわたって、直流電圧生成部632Kから出力される直流電圧の電位を所定時間間隔Δt毎に測定する(ステップS2)。帯電現像制御部50Kは、測定時間t1にわたって所定時間間隔Δt毎に直流電圧の電位を測定すると、所定時間間隔Δtにおける直流電圧の変化(増加)量を算出して平均化処理し、得られた平均化処理値に基づいて、直流電圧生成部632Kから出力される直流電圧が、測定時間t1の終了後に、−700Vの現像バイアス電圧に達するまでに要する時間を、制御時間t2として算出する(ステップS3)。測定時間t1が終了すると(ステップS4)、帯電電源部60Kにおける針状電極電流生成部611Kおよびシールド電圧生成部62Kの立ち上げを開始する(ステップS5)。
【0043】
例えば、所定時間間隔Δtを200μsとし、測定時間t1を1msとした場合に、所定時間間隔Δtにおける電圧の増加量の平均として−10Vが得られると、現像電源部63Kの制御開始から14ms後に−700Vに達することになり、測定時間t1が終了した時点から−700Vに達するまでに要する制御時間t2は13msになる。なお、この場合には、測定時間t1に達するまで、所定時間間隔Δt毎に電圧変化の平均化処理を繰り返す必要はなく、例えば、新たに得られた平均化処理値と前回に得られた平均化処理値との差が所定の範囲になると、以後は、所定時間間隔Δt毎の直流電圧の電位測定を中止して、最終的に得られた平均化処理値に基づいて制御時間t2を算出するようにしてもよい。あるいは、所定時間間隔Δt毎の直流電圧の電位測定によって、現像電源部63Kから出力される直流電圧の変化を1次関数、2次関数等として近似することができる場合には、その関数が求められた時点で電位測定を中止し、求められた関数に基づいて制御時間t2を算出するようにしてもよい。
【0044】
帯電現像制御部50Kは、制御時間t2(=13ms)後に、シールド電圧生成部62Kから−900Vの帯電バイアス電圧が出力されるように、シールド電圧生成部62Kを制御する(ステップS6)。この場合、帯電現像制御部50Kは、モニター信号線56を介して入力されるモニター信号に基づいて、シールド電圧生成部62Kから出力される電圧値を測定しており、例えば、1msの時間間隔毎にシールド電圧生成部62Kから出力される電圧値を測定し、1ms時間当たりの電圧増加量が、900V/13ms(=約69.2)になるように、シールド電圧生成部62Kに所定の制御信号を出力する。これにより、現像電源部63Kの制御開始から、測定時間t1(1ms)が経過した後に、制御時間t2(13ms、制御開始から14ms)が経過すると(ステップS7において「YES」)、現像電源部63Kの直流電圧生成部632Kからの出力が−700Vに達すると同時に、シールド電圧生成部62Kからの出力が−900Vの帯電バイアス電圧に達することになる。
【0045】
なお、制御時間t2の算出に際して、感光体ドラム11Kにおける帯電器12Kによる帯電位置と、現像器14Kによる現像位置とが異なっており、両者が距離Lだけ離れていることから、この距離Lを感光体ドラム11Kの表面が移動する時間Tが考量される。また、この距離Lにより、帯電器12Kに対向する位置における感光体ドラム11Kの表面の帯電電位と、現像器14Kに対向する位置における感光体ドラム11Kの表面の帯電電位とに電位差が生じることになるが、この電位差は許容範囲であり、無視することができる。
【0046】
このようにして、帯電電源部60Kから−900Vの帯電バイアス電圧が出力される状態になるとともに、現像電源部63Kから−700Vの電圧が出力される状態になると、現像電源部63Kにおける矩形波交流電圧生成部631Kから所定の矩形波交流電圧が出力されて(ステップS8)、現像スリーブ141Kに対して、−700Vの直流電圧に矩形波交流電圧が重畳された所定の現像バイアス電圧が印加される。これにより、画像形成動作開始時における制御が終了し、以降は、所定の現像バイアス電圧および帯電バイアス電圧が出力されるように、帯電電源部60Kおよび現像電源部63Kがそれぞれ制御されることになる(ステップS9)。画像プロセス部10では、画像形成動作が実行されることにより、感光体ドラム11Kに形成される静電潜像が、現像器17Kによってトナー現像されて、形成されたトナー画像が記録シートSに転写されて定着される。
【0047】
以上のように、画像形成動作を開始する際に、感光体ドラム11Kの表面を所定の電位に帯電させるための帯電電源60Kの立ち上げの開始を、現像スリーブ141Kに現像バイアス電圧を印加するための現像電源部63Kの立ち上げの開始よりも遅らせて、しかも、それぞれからの出力が、それぞれ所定電圧に同時に達するように制御しているために、帯電電源60Kから出力される電圧の絶対値が、現像電源部63Kから出力される電圧の絶対値に対して、所定の電位差以上に上回るおそれがない。その結果、感光体ドラム11Kにキャリアが付着する「キャリア付着」を確実に防止することができる。また、帯電電源60Kから出力される電圧の絶対値が、現像電源部63Kから出力される電圧の絶対値に対して所定の電位差以上に下回るおそれもなく、感光体ドラム11Kにおける非画像領域にトナーが付着する「トナーかぶり」も確実に防止することができる。
【0048】
さらには、感光体ドラム11Kおよび現像スリーブ141Kの回転制御を同時に開始してそれぞれが安定回転状態になった後に、帯電電源部60Kおよび現像電源部63Kが同時にそれぞれの出力が所定電圧に達するために、感光体ドラム11Kの回転開始から、画像形成動作が可能な状態になるまでの時間が短くなる。その結果、感光体ドラム11Kが回転される時間を短くすることができ、感光体ドラム11Kを高寿命化することができる。
【0049】
次に、画像形成動作を終了させる場合における帯電現像制御部50Kによる制御を図7のタイムチャートに基づいて説明する。帯電現像制御部50Kは、画像形成動作の終了が通知されると、矩形波交流電圧生成部631Kを出力停止状態にして、−700Vの直流電圧が出力されている現像電源部63Kの出力を、−200V(待機状態における現像バイアス電圧の電位)とする立ち下げを開始する。この場合、予め設定された測定時間t3が経過した時点で、−900Vの帯電バイアス電圧が出力された状態になっている帯電電源部60Kを−300V(待機状態における出力電圧の電位)とする立ち下げを開始する。そして、現像電源部63Kおよびシールド電圧生成部62Kのそれぞれの出力が、同時に、−200Vおよび−300Vの待機状態に達するように、シールド電圧生成部62Kを制御する。現像電源部63Kおよびシールド電圧生成部62Kのそれぞれが−200Vおよび−300Vの待機状態になると、所定の回転数で安定回転している感光体ドラム11Kおよび現像スリーブ171Kの回転を停止させるために、感光体モータ65Kおよび現像モータ66Kに制御信号を出力する。これにより、感光体ドラム11Kおよび現像スリーブ171Kは、例えば0.5s(500ms)後に回転停止状態になる。
【0050】
この場合の帯電現像制御部50Kにおける制御の詳細について、帯電電源部60Kおよび現像電源部63Kのそれぞれにおける出力電圧と時間との関係を示す図8のグラフおよび図9に示すフローチャートに基づいて説明する。帯電現像制御部50Kは、まず、現像器14Kの現像電源部63Kにおける矩形波交流電圧生成部631Kおよび直流電圧生成部632Kにそれぞれ制御信号を出力して、矩形波交流電圧生成部631Kを出力停止状態に制御するとともに、直流電圧生成部632Kを待機状態にする立ち下げを開始する(図9のステップS11参照)。これと同時に、帯電現像制御部50Kは、直流電圧生成部632Kから出力される直流電圧のモニター信号に基づいて、直流電圧生成部632Kから出力される直流電圧値を所定時間間隔Δt毎に測定する(ステップS12)。そして、測定時間t3にわたって得られた所定時間間隔Δt毎の直流電圧値に基づいて、所定時間間隔Δtにおける直流電圧の変化(減少)量を算出して平均化処理し、得られた平均化処理値に基づいて、現像電源部63Kから出力される電圧が、測定時間t3の終了から−200Vの待機状態に達するまでに要する時間を制御時間t4として算出する(ステップS13)。その後、予め設定された測定時間t3が経過すると(ステップS14)、シールド電圧生成部62Kを−300Vの待機状態にする立ち下げを開始する(ステップS15)。
【0051】
例えば、所定時間間隔Δtを200μsとし、測定時間t3を1msとした場合に、所定時間間隔Δtにおける電圧変化の平均として−10Vが得られると、現像電源部63Kの立ち下げ開始から10ms後に−200Vの待機状態に達することになり、測定時間t3が終了した時点から−200Vの待機状態に達するまでに要する制御時間t4は9msになる。なお、この場合にも、測定時間t3に達するまで、所定時間間隔Δt毎に電圧変化の平均化処理を繰り返す必要はなく、例えば、新たに得られた平均化処理値と前回に得られた平均化処理値との差が所定の範囲になれば、以後は、所定時間間隔Δt毎の直流電圧の測定を中止して、最終的に得られた平均化処理値に基づいて制御時間t4を算出するようにしてもよい。あるいは、所定時間間隔Δt毎の直流電圧の電位測定によって、現像電源部63Kから出力される直流電圧の変化を、1次関数、2次関数等として近似することができる場合には、その関数が求められた時点で電位測定を中止し、求められた関数に基づいて制御時間t4を算出するようにしてもよい。
【0052】
帯電現像制御部50Kは、制御時間t4(=9ms)後に、シールド電圧生成部62Kから−300Vの電圧が出力される待機状態になるように、シールド電圧生成部62Kを制御する(ステップS16)。この場合、帯電現像制御部50Kは、モニター信号線57を介して入力されるモニター信号に基づいて、シールド電圧生成部62Kから出力される電圧を測定しており、例えば、1ms時間間隔毎にシールド電圧生成部62Kから出力される電圧を測定して、1ms時間当たりの電圧減少値が、600V/9ms(=約66.7)になるように、シールド電圧生成部62Kに所定の制御信号を出力する。これにより、現像電源部63Kの立ち下げの開始から、測定時間t3(1ms)と制御時間t4(9ms)との合計時間t3+t4(=10ms)が経過すると(ステップS17)、現像電源部63Kの直流電圧生成部632Kから−200Vの直流電圧が出力される待機状態になると同時に、シールド電圧生成部62Kから−300Vの電圧が出力される待機状態になり、現像電源部63Kおよび帯電電源部60Kの制御が終了する。
【0053】
このように、画像形成動作を終了させる際において、感光体ドラム11Kを所定の待機状態とするための帯電電源部60Kの立ち下げの開始を、現像スリーブ141Kに電圧を印加するための現像電源部63Kの立ち下げの開始よりも遅らせて、しかも、それぞれからの出力が予め設定された待機状態に同時になるようにしているために、帯電電源部60Kから出力される電圧の電位が現像電源部63Kから出力される電位に対して所定値以上に上回るおそれがない。
【0054】
その結果、画像形成終了時に、感光体ドラム11Kにキャリアが付着する「キャリア付着」を確実に防止することができるとともに、感光体ドラム11Kにおける非画像領域にトナーが付着する「トナーかぶり」も確実に防止することができる。さらには、現像電源部63Kが待機状態になる時間が経過すると同時に、感光体ドラム11Kの駆動停止制御が開始されて感光体ドラム11Kの回転が停止されるために、感光体ドラム11Kが回転される時間が短くなり、感光体ドラム11Kを高寿命化することができる。
【0055】
なお、待機状態において、現像電源部63Kおよび帯電電源部60Kから現像スリーブ141Kおよび帯電器12Kにそれぞれ出力される電圧として−200Vおよび−300Vとしたが、それぞれの電圧が0V(出力停止状態)となるようにしてもよい。
また、上記の説明では、K色のトナーの画像形成ユニット10Kにおいて実行される制御について説明したが、他の画像形成ユニット10Y、10M、10Cにおいても、同様の制御が実行される。
【0056】
比較のために、画像形成装置におけるK色トナー用の現像器10Kの画像形成動作を開始する際における帯電現像制御部50Kによって実行されている従来の制御の一例を、図10に示すタイムチャートに基づいて説明する。帯電現像制御部50Kは、プリントジョブを受け付けると、現像器14Kの現像電源部63Kの制御を開始する。現像電源部63Kは、最初に、出力停止状態(0V)から、例えば−200Vの待機状態になるように制御される。現像電源部63Kの制御の開始から例えば100ms程度の所定時間が経過すると、感光体モータ65Kに制御信号を出力して感光体ドラム11Kを回転させる。感光体ドラム11Kは所定時間(0.4s(秒))が経過することによって所定の回転数で回転する安定回転状態になる。感光体ドラム11Kが安定回転状態になると、帯電電源部60Kにおけるシールド電圧生成部62Kの制御が開始されるとともに、現像電源部63Kを、例えば−600Vの中間出力状態になるように制御が切り替えられる。これと同時に、シールド電圧生成部62Kは、−900Vの電圧が出力される状態になるように制御を開始する。その後、予め設定された所定時間が経過することによって、シールド電圧生成部62Kの出力電圧が−900Vになった後に、現像器14Kの現像モータ66Kに制御信号を出力して現像スリーブ141Kを回転させる。そして、現像スリーブ141Kの回転が安定回転状態になったとみなされる所定時間(例えば0.4s)が経過した時点で、現像電源部63Kの出力が予め設定された−700Vの電圧が出力されるように制御が切り替えられる。その後、現像電源部63Kから−700Vの電圧が出力される状態になると、画像形成動作が実行される。
【0057】
この場合には、現像電源部63Kの出力が段階的に上昇するように制御することにより、現像スリーブの表面電位の絶対値が感光体ドラム11Kの表面電位の絶対値を所定値以上に上回ることを防止することができる。しかし、制御に長時間を要するために、画像形成動作の開始が遅れ、しかも、感光体ドラム11Kが、安定回転になった後においても、比較的長い時間にわたって回転されることから、本発明のように、感光体ドラム11Kを高寿命化することができるものではない。
【0058】
さらに、比較のために、画像形成装置におけるK色トナー用の現像器10Kの画像形成動作を終了する際の帯電現像制御部50Kによる制御の一例を、図11に示すタイムチャートに基づいて説明する。帯電現像制御部50Kは、画像プロセス部10における画像形成動作の終了が通知されると、現像電源部63Kに対する制御を開始し、例えば−700Vの直流電圧が出力される状態とした後に、−600Vの中間電圧が出力されるように制御する。そして、予め設定された所定時間が経過した時点で、所定の回転数で安定回転している現像スリーブ171Kの回転を停止させるために、現像モータ66Kに制御信号を出力する。その後、例えば0.5s(500ms)程度の予め設定された所定時間が経過すると、現像電源部63Kに対して−200Vの待機状態になるように制御を切り替える。この制御の切り替えが実行された後に、予め設定された所定時間が経過すると、所定の回転数で安定回転している感光体ドラム11Kの回転を停止させるために、感光体モータ65Kに制御信号を出力する。このような状態で、例えば0.5s(500ms)程度の予め設定された所定時間が経過すると、現像電源部63Kに対して出力が停止するように制御を切り替える。これにより、現像電源部63Kは出力停止状態になる。
【0059】
この場合も、現像電源部63Kが待機状態になるまでに、比較的長い時間を要する。その結果、感光体ドラム11Kの回転時間が長くなり、感光体ドラム11Kを高寿命化することができるものではない。
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではない。上記の実施形態では、予め設定された測定時間にわたって、現像電源部63Kから出力される電圧を測定して、所定電圧に達する時間(到達予想時間)を算出し、測定時間が経過した時点で、帯電電源部60Kの制御を開始する構成であったが、例えば、測定時間を設定することなく、現像電源部63Kから出力される電圧に基づいて所定電圧に達する到達予想時間を算出し、到達予想時間が算出された時点で、帯電電源部60Kが所定の出力状態(例えば最大出力状態)で到達予想時間に所定電圧に達するために要する必要時間を算出し、到達予想時間から必要時間を差し引いた時点を制御の開始時とし、その開始時において帯電電源部60Kの立ち上げを開始し、帯電電源部60Kを所定の出力状態に維持するように制御するようにしてもよい。
【0060】
また、本発明に係る画像形成装置は、タンデム型カラーデジタルプリンタに限るものではなく、例えば、回転軸の周囲に4つの現像装置を配置し、これら4つの現像装置を、順次、静電潜像担持体に対向させてフルカラー画像を形成する、いわゆる4サイクル方式の画像形成装置であってもよい。また、本発明は、プリンタに限らず、複写機、FAX、MFP(Multiple Function Printer)等にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、トナー画像を形成する画像形成装置において、画像形成開示時および終了時に、「トナーかぶり」および「キャリア付着」が発生することを防止することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 画像プロセス部
30 シート搬送部
10Y、10M、10C、10K トナー画像形成ユニット
11Y、11M、11C、11K 感光体ドラム
12Y、12M、12C、12K 帯電器
13Y、13M、13C、13K プリントヘッド
14Y、14M、14C、14K 現像器
141K 現像スリーブ
18 中間転写ベルト
40 定着装置
50K 帯電現像制御部
60K 帯電電源部
61K 針状電極電源部
62K シールド電圧生成部
63K 現像電源部
631K 矩形波交流電圧生成部
632K 直流電圧生成部
65K 感光体モータ
66K 現像モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電させる帯電器と、
前記帯電器に帯電バイアス電圧を印加する帯電電源部と、
帯電された前記像担持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記像担持体に対向して配置された現像剤担持体を有し、当該現像剤担持体によって搬送される現像剤により前記静電潜像を現像する現像器と、
前記現像剤担持体に現像バイアス電圧を印加する現像電源部と、
前記帯電バイアス電圧が出力されるように前記帯電電源部を制御するとともに、前記現像バイアス電圧が出力されるように前記現像電源部を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、画像形成動作を開始または終了する際に、前記現像電源部の出力がそれぞれ所定電圧に達すると想定される到達予想時間を算出して、算出されたそれぞれの到達予想時間に前記帯電電源部の出力がそれぞれ所定電圧に達するように当該帯電電源部を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記現像電源部の出力がそれぞれ所定電圧に達するまでの間に、予め設定された測定時間における当該現像電源部の出力に基づいて、前記到達予想時間を算出し、前記測定時間が経過した時点で前記帯電電源部の制御を開始することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記測定時間において、所定の時間間隔毎に前記現像電源部の出力を測定し、測定された出力に基づいて、前記到達予想時間を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記帯電器は、スコロトロン方式の帯電器であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記現像剤が二成分系現像剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−175613(P2010−175613A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15334(P2009−15334)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】