説明

画像形成装置

【課題】複数のキャップをホルダに保持して昇降させるとき、キャップがノズル面に確実にガタつきなく密着できるようにしなければならない。
【解決手段】維持回復機構8は、複数のキャップ30を保持する昇降可能に配設されたスライダ部材33と、側壁部37及び底面部38を有し、側壁部37に高さ方向の位置が変化するガイド溝41が形成され、スライダ部材33の支持ピン部材42がガイド溝41に移動可能に係合するスライダレール部材36と、スライダレール部材36を水平方向に往復移動させる往復移動手段とを有し、往復移動手段は、回転部材56のボス部57がスライダレール部材36の底面に離間して設けられた係合壁61、62に係合して押すことによってスライダレール部材36を往復移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いたインクジェット記録装置などが知られている。このインクジェット記録装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙、メディアなどとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、「画像形成装置」とは、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。
【0004】
このような液体吐出方式の画像形成装置においては、記録ヘッドの性能を維持回復する維持回復機構を備えている。維持回復機構は、記録ヘッドのノズル面を封止するキャップや、ノズル面を払拭するワイパ部材などを備え、例えば、ノズル面をキャップで封止し、キャップに接続された吸引ポンプを駆動してノズル面とキャップで形成される空間を減圧することで、ノズルから気泡や増粘インク等を強制的に排出するクリーニング動作などを行い、また、待機時にはノズル内インクの増粘を抑制するためのキャップでノズル面を封止するなどの動作を行う。
【0005】
従来、キャップを記録ヘッドのノズル面に対して昇降させる機構としては、特許文献1に記載されているように、記録ヘッドの移動方向と直交する方向(副走査方向)にヘッドキャップをスライドさせてノズル面をキャッピングするもの、特許文献2に記載されているように、キャッピング機構が斜めに延在するするガイド溝を有し、キャッピング部材がガイド溝に沿って移動しながら昇降するスライドユニットを備えるものが知られている。
【0006】
また、特許文献3に記載されているように、円筒カムによって一端側が方もち支持された状態で昇降されるスライダと、スライダに支持されると共にスライダの上昇によりノズル面を封止するキャップとを備え、スライダをラックアンドピニオン機構によって昇降させるようにしたものも知られている。
【0007】
また、特許文献4に記載されているように、上下移動機構を駆動モータの回転を水平直線運動に変換する運動変換部材と、ベースプレートの下部に設けられたガイドプレートと、運動変換部材と連動してガイドプレートに形成された略水平方向に延びるガイド溝の内部に転動するローラと、一端側がローラに枢結されて他端側がベースプレートに枢結されたアームと、ベースプレートの上下方向の移動を許容しつつ水平方向の移動を規制する移動規制部材とから構成したものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−94674号公報
【特許文献2】特開2004−142190号公報
【特許文献3】特開2007−130896号公報
【特許文献4】特開2007−313727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、画像形成装置として、複数個の記録ヘッドを千鳥状に配置して一度に印字できる領域を拡張するものがあり、このような画像形成装置における維持回復装置にあっては、千鳥状に配列された各記録ヘッドのノズル面を封止するように配列された保湿キャップと、その内幾つかの保湿キャップは吸引ポンプと連通してノズルの詰まりを吸引する吸引キャップと兼用とし、複数個の記録ヘッドを搭載したキャリッジを走査させながら順次吸引動作を行うことになる。
【0010】
このとき、全ての吸引キャップ及び保湿キャップ、又は幾つかの吸引キャップ及び保湿キャップを昇降させて吸引動作を行うので、吸引動作時にキャッピングする記録ヘッドのノズルにキャップのニップ部が干渉しないようにキャップ配列する、つまり複数の記録ヘッドを他のキャップと干渉しないように配列しなければならない。
【0011】
そのため、隣接する記録ヘッドの間隔をある程度確保する必要があり、搭載する記録ヘッドの数が多ければ多いほど記録ヘッドの走査方向の配列幅が大きくなり、維持回復装置のサイズも大きくなる。
【0012】
この場合、吸引キャップ及び保湿キャップ毎に昇降機構を設けると、部品点数が増えるため、千鳥状に配列した記録ヘッド群に合わせて吸引キャップ及び保湿キャップをグルーピングして、複数のキャップを1単位として昇降機構を設ける方が部品点数の削減を図れ、また部品形状(特にメインフレーム)も複雑にならない。
【0013】
しかしながら、複数のキャップをホルダに保持して昇降させるとき、キャップがノズル面に確実にガタつきなく密着できるようにする昇降機構が必要になる。
【0014】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、複数のキャップを1つの単位として昇降させる場合に、各キャップをノズル面に対して十分な密着性で密着できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出するノズルを有する複数の記録ヘッドと、
各記録ヘッドのノズル面をそれぞれ封止する複数のキャップを有する維持回復機構と、を備え、
前記維持回復機構は、前記複数のキャップを保持する昇降可能に配設されたスライダ部材と、高さ方向の位置が変化するガイド溝が形成され、前記スライダ部材の支持ピン部材が前記ガイド溝に移動可能に係合するスライダレール部材と、前記スライダレール部材を水平方向に往復移動させる往復移動手段と、を有している
構成とした。
【0016】
ここで、前記往復移動手段は、前記スライダレール部材の底面に移動方向に離間して設けられた2つの係合壁に交互に当接可能な突起部を有する回転部材と、前記回転部材を回転させる駆動手段とを有している構成とできる。
【0017】
また、前記スライダレール部材の前記2つの係合壁のうち、一方の係合壁は前記回転部材の突起部によって押し切られた点を越えて設けられていない構成とできる。
【0018】
また、前記スライダレール部材の移動方向は、前記記録ヘッドの移動方向又は前記記録ヘッドで画像が形成される被記録媒体の移動方向に沿う方向である構成とできる。
【0019】
また、前記スライダレール部材を手動操作で移動させる手段を備えている構成とできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る画像形成装置によれば、側壁と底面を有し、側壁にガイド溝が形成されているスライダレールが水平方向に往復運動することで、ガイド溝に挿入される支持ピン部材が設けられたスライダ部材がガイド溝に沿って上下動するので、スライダ部材に複数のキャップを保持した状態でも、キャップを記録ヘッドのノズル面に対してがたつき無く十分な密着性で密着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の一例を示す外観斜視説明図である。
【図2】同記録装置の印字機構部の平面説明図である。
【図3】キャリッジ及び維持回復機構部分の斜視説明図である。
【図4】維持回復機構のキャップ昇降機構の説明に供する斜視説明図である。
【図5】同じく底面側から見た要部斜視説明図である。
【図6】同じく側面説明図である。
【図7】同じく底面説明図である。
【図8】維持回復機構がデキャップ状態にあるときの側面説明図である。
【図9】同じくキャップ上昇過程の状態にあるときの側面説明図である。
【図10】同じくキャップ状態にあるときの側面説明図である。
【図11】維持回復機構の回転部材とスライダレール部材及びスライダ部材の動作の説明に供する底面説明図である。
【図12】同じく図11に続く状態の底面説明図である。
【図13】同じく図12に続く状態の底面説明図である。
【図14】同じく図13に続く状態の底面説明図である。
【図15】同じく図14に続く状態の底面説明図である。
【図16】同じく図15に続く状態の底面説明図である。
【図17】同じく図16に続く状態の底面説明図である。
【図18】キャッピングの強制解除の説明に供する底面説明図である。
【図19】同じく底面説明図である。
【図20】本発明の他の実施形態におけるキャリッジ構成の説明に供する模式的平面説明図である。
【図21】同じく維持回復機構の構成の説明に供する模式的平面説明図である。
【図22】キャップ昇降機構のデキャップ状態の側面説明図である。
【図23】同じくキャップ状態の側面説明図である。
【図24】同じく底面側から見た要部斜視説明図である。
【図25】同じく上方から見た要部斜視説明図である。
【図26】維持回復機構の回転部材とスライダレール部材及びスライダ部材の動作の説明に供する底面説明図である。
【図27】同じく図26に続く状態の底面説明図である。
【図28】同じく図27に続く状態の底面説明図である。
【図29】同じく図28に続く状態の底面説明図である。
【図30】同じく図29に続く状態の底面説明図である。
【図31】キャッピングの強制解除の説明に供する底面説明図である。
【図32】同じく底面説明図である。
【図33】維持回復機構のキャップ及びデキャップの手動操作の説明に供する模式的底面説明図である。
【図34】同じくキャップ時の説明に供する模式的底面説明図である。
【図35】同じく模式的底面説明図である。
【図36】同じくデキャップ時の説明に供する模式的底面説明図である。
【図37】同じく模式的底面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る画像形成装置についてとしてのインクジェット記録装置の一例について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同記録装置の外観斜視説明図、図2は同記録装置の印字機構部の平面説明図、図3はキャリッジ及び維持回復機構部分の斜視説明図である。
【0023】
このインクジェット記録装置は、シリアル型インクジェット記録装置であり、
記録装置本体1の内部には、図示しない両側板にガイドロッド3及びガイドレール4が掛け渡され、これらのガイドロッド3及びガイドレール4にキャリッジ5が主走査方向に摺動可能に保持されている。なお、ガイドレール4とはキャリッジ5の後部に回転可能に支持された副ガイドローラ6が当接する構成としている。
【0024】
そして、キャリッジ5を移動走査する主走査機構は、主走査方向の一方側に配置される駆動モータ11と、駆動モータ11によって回転駆動される駆動プーリ12と、主走査方向他方側に配置された従動プーリ13と、駆動プーリ12と従動プーリ13との間に掛け回されたタイミングベルト(ベルト部材)14とを備えている。なお、従動プーリ13はテンションスプリングによって外方(駆動プーリ12に対して離れる方向)にテンションが架けられている。
【0025】
ここで、駆動プーリ12と従動プーリ13は、インク滴吐出方向に沿う方向にプーリ軸方向が位置する配置としている。そして、これらの駆動プーリ12と従動プーリ13との間に掛け回されたベルト部材14は、キャリッジ5の背面側に設けたベルト固定部に一部分が固定保持されていることで、主走査方向と直交する方向におけるキャリッジ5の一方側に配置されている。
【0026】
また、キャリッジ5には、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のインク滴を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドからなる10個の記録ヘッド20a〜20j(区別しないときは「記録ヘッド20」という。)が図示しないヘッドベースに配置されている。ここで、記録ヘッド20a、20bと記録ヘッド20c、20dは用紙搬送方向に位置をずらして千鳥状配置として、例えばブラックのインク滴を吐出するヘッドとして使用する。また、記録ヘッド20e〜20gと記録ヘッド20h〜20jは用紙搬送方向に位置をずらして千鳥状配置とし、例えば記録ヘッド20e、20hはシアンのインク滴を、記録ヘッド20f、20iはマゼンタのインク滴を、記録ヘッド20g、20jはイエローのインク滴をそれぞれ吐出するヘッドとして使用することで、2つのヘッド分の用紙送り方向の領域を同じ主走査で印字できるようにしている。
【0027】
一方、キャリッジ5に主走査領域のうち、記録領域では、用紙10が図示しない紙送り機構によってキャリッジ5の主走査方向と直交する方向(副走査方向)にプラテン部材で案内されて間欠的に搬送される。プラテン部材は、キャリッジ5の主走査領域に沿って少なくとも記録領域で記録ヘッド20に対向して配設されている。
【0028】
また、主走査領域のうちの一方の端部側領域には記録ヘッド20の維持回復を行う維持回復機構8が配置されている。維持回復機構8は、記録ヘッド20a〜20jの各ノズル面を封止(キャッピング)するキャップ30a〜30j、図示しないノズル面を払拭するワイパ部材などを備えている。この維持回復機構8はユニット化して図1に仮想線で示すように装置本体1に対して着脱可能としている。
【0029】
このインクジェット記録装置では、キャリッジ5を主走査方向に移動し、用紙10を間欠的に副走査方向に送りながら、記録ヘッド20を画像情報に応じて駆動して液滴を吐出させることによって、用紙10上に所要の画像が形成される。
【0030】
次に、維持回復機構8のキャップ昇降機構について図4ないし図7をも参照して説明する。なお、図4はキャップ昇降機構部の斜視説明図、図5は同じく底面側から見た要部斜視説明図、図6は同じく側面説明図、図7は同じく底面説明図である。
維持回復機構8は、図2に示すように、記録ヘッド20a〜20dの各ノズル面をそれぞれ封止(キャッピング)する4個のキャップ30a〜30dを一体として昇降させる昇降機構と、記録ヘッド20e〜20jの各ノズル面をキャッピングする6個のキャップ30e〜30jを一体として昇降させる昇降機構とを備えている。以下では、キャップ30e〜30jを昇降させる昇降機構で説明するが、キャップ30a〜30dを昇降させる昇降機構も同様の構成である。
【0031】
まず、維持回復ユニットハウジング31内に設けたケース32内にスライダ部材33が昇降可能に保持されている。ここでは、ケース32に設けたガイド溝34にスライダ部材33に設けた支持ピン部材35を係合して昇降可能としている。そして、このスライダ部材33に記録ヘッド20e〜20jの各ノズル面をキャッピングする6個のキャップ30e〜30jを保持している。
【0032】
スライダ部材33の下側には、ケース32の内底面に移動可能に載置されたスライダレール部材36が配設されている。このスライダレール部材36は側壁部37と底面部38とを有し、側壁部37には高さ方向の位置が変化するガイド溝41、41が設けられている。そして、スライダ部材33の両側面に設けた支持ピン部材42、42が移動可能に係合している。これにより、スライダ部材33が水平方向に往復移動することで、支持ピン部材42がガイド溝41に沿って移動して、スライダ部材33が上下方向に昇降し、これによってキャップ30が記録ヘッド20に対して昇降する。
【0033】
つまり、キャッピング動作を行うときには、図8に示すように、スライダ部材33の支持ピン部材42がスライダレール部材36のガイド溝41の最も低い位置にあり、キャップ30が記録ヘッド20のノズル面をキャッピングしていないデキャップ状態から、スライダガイドレール部材36が矢示A方向に移動することによって、図9に示すように、スライダ部材33の支持ピン部材42がスライダレール部材36のガイド溝41に沿って上昇するのでスライダ部材33も矢示B方向に上昇し、更に、スライダレール部材36が矢示A方向に移動することによって、図10に示すように、支持ピン42がガイド溝41の最も高い位置に移動し、スライダ部材33も矢示B方向に最も上昇してキャップ30によって記録ヘッド20のノズル面がキャッピングされる。なお、キャッピング状態からデキャップ動作を行うときには、上述したと逆方向にスライダレール部材36を移動させることによってスライダ部材33が下降する。
【0034】
次に、スライダレール部材36を水平方向に往復移動させる往復移動機構について説明する。
往復移動機構は、駆動モータ51のモータギヤ52に噛み合う中間ギヤ53、中間ギヤ53に噛み合う中間ギヤ54、中間ギヤ54に噛み合うギヤ55が形成された回転部材56を有し、回転部材56には突起部としてボス部57が設けられている。この回転部材56のボス部57は、スライダレール部材36の底面部38に、主走査方向に離間して設けられた2つの係合壁(作用壁)61、62に係合(当接)可能としている。なお、係合壁61、62はスライダレール部材36の底面に形成された補強用リブをそのまま使用している。
【0035】
ここで、回転部材56の回転とスライダレール部材36及びスライダ部材33の移動について図11ないし図17を参照して説明する。
まず、図11に示す状態は回転部材56が矢示C方向に回転し、ボス部57がスライダレール部材36の係合壁61を押し切った状態を表しており、この時、キャップ30による記録ヘッド20のノズル面のキャッピングが完了した状態である。そして、この図11に示す位置から回転部材56を更に矢示C方向に回転させて図12に示す位置にした状態で回転部材56を停止させ、このときをキャップ状態(図10に示す状態)としている。
【0036】
このキャップ状態(停止状態)からデキャップ状態へ移行するときには、図13に示すように回転部材56を矢示C方向に回転させることで、回転部材56のボス部57が係合壁62を押し始め、スライダレール部材36を矢示D方向に移動させる。さらに回転部材56が回転されると、図14に示すようにボス部57が係合壁62を押し切った状態となり、この位置から回転部材56を回転させて図15に示す位置で停止させ、この状態をデキャップ状態(図8に示す状態)としている。
【0037】
このデキャップ状態からキャップ状態への移行動作は、図15に示す位置から図16及び図17に示すように回転部材56を矢示C方向に回転させて、回転部材56のボス部57で係合壁61を押してスライダレール部材36を図17で矢示A方向に移動させて図11に示す状態とした後、図12に示す位置で回転部材56を停止する。
【0038】
このように、側壁と底面を有し、側壁にガイド溝が形成されているスライダレールが水平方向に往復運動することで、ガイド溝に挿入される支持ピン部材が設けられたスライダ部材がガイド溝に沿って上下動することで、スライダ部材に複数のキャップを保持した状態でも、キャップを記録ヘッドのノズル面に対してがたつき無く十分な密着性で密着させることができる。
【0039】
次に、強制的にデキャップ状態に移行する場合について図18及び図19を参照して説明する。
前述したように、スライダレール部材36の底面に回転部材56のボス部57が当接する係合壁61、62を形成しているが、図18に示すように係合壁61を形成しない領域63を設けている。そこで、回転部材56を図18に示す位置に回転させた状態で、矢示E方向にスライダレール部材36を手動で押すことによって、図19に示すように、係合壁61のない領域63に回転部材56のボス部57が移動するので、スライダレール部材36が矢示D方向に移動し、デキャップ状態にすることができる。
【0040】
つまり、維持回復機構8を装置本体1から外すとき、キャップ30で記録ヘッド20のノズル面が封止されたキャップ状態のまま維持回復機構8を取出すと、記録ヘッド20のノズル面やキャップ30にニップ部を損傷にすることになる。そこで、上述したように強制的にデキャップ状態にした後維持回復装置8を取出すことで、ノズル面やキャップの損傷を防止できる。また、記録ヘッド20の交換を行う場合にも、同様にして、デキャップ状態にできることで、ノズル面やキャップの損傷を防止できる。
【0041】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。この実施形態は、スライダレール部材を副走査方向(用紙送り方向)に沿う方向で水平方向に移動させる例である。まず、同実施形態のキャリッジの構成及び維持回復機構の構成の概要について図20及び図21を参照して説明する。
ここでは、黒色の液滴を吐出する黒ヘッド120kを被記録媒体の移動方向(副走査方向)に沿って位置をずらして配置した黒キャリッジ105kと、カラーの液滴を吐出する3個のカラーヘッド120cを配置したカラーキャリッジ105cとを備え、黒キャリッジ105kとカラーキャリッジ105cとは分離及び結合可能に構成し、モノクロ印刷時には黒キャリッジ105kのみが移動走査してモノクロ画像を形成し、カラー印刷時には黒キャリッジ105kにカラーキャリッジ105cが結合されて両者が一体に移動走査してカラー画像を形成する。
【0042】
一方、維持回復機構108には、記録ヘッド120k、120cの各ノズル面をそれぞれ封止(キャッピング)する2個のキャップ130a、3個のキャップ130bを有し、2個のキャップ130aは図示しない吸引手段が接続された吸引及び保湿用キャップであり、3個のキャップ130bは保湿用キャップである。そして、ここでは、キャップ130bを昇降させる昇降機構に本発明を適用している。
【0043】
そこで、3個のキャップ130bを昇降させる昇降機構について図22ないし図25をも参照して説明する。なお、図22は同昇降機構のデキャップ状態の側面説明図、図23は同じくキャップ状態の側面説明図、図24は同じく底面側から見た要部斜視説明図、図25は同じく上方から見た要部斜視説明図である。
【0044】
キャップ130bはホルダ132に保持されてスライダ部材133に保持されている。スライダ部材133は、スライダレール部材136に設けたガイド溝141にスライダ部材133に設けた支持ピン部材142を係合して昇降可能としている。なお、スライダ部材133は前記実施形態と同様にハウジング170と係合ピン135との係合によって昇降をガイドされる。
【0045】
このスライダレール部材136は側壁部137と底面部138とを有し、側壁部137には高さ方向の位置が変化するガイド溝141、141が設けられている。そして、スライダ部材133の両側面に設けた支持ピン部材142、142が移動可能に係合している。これにより、スライダ部材133が水平方向に往復移動することで、支持ピン部材142がガイド溝141に沿って移動して、スライダ部材133が上下方向に昇降し、これによってキャップ130bが記録ヘッド120cに対して昇降する。
【0046】
つまり、キャッピング動作を行うときには、図22に示すように、スライダ部材133の1支持ピン部材142がスライダレール部材136のガイド溝141の最も低い位置にあり、キャップ130bが記録ヘッド120cのノズル面をキャッピングしていないデキャップ状態から、スライダガイドレール部材136が矢示E方向に移動することによって、スライダ部材133の支持ピン部材142がスライダレール部材136のガイド溝141に沿って上昇するのでスライダ部材133も矢示F方向に上昇し、更に、スライダレール部材136が矢示E方向に移動することによって、図23に示すように、支持ピン142がガイド溝141の最も高い位置に移動し、スライダ部材133も矢示F方向に最も上昇してキャップ130bによって記録ヘッド120cのノズル面がキャッピングされる。なお、キャッピング状態からデキャップ動作を行うときには、上述したと逆方向にスライダレール部材136を移動させることによってスライダ部材133が下降する。
【0047】
次に、スライダレール部材136を水平方向に往復移動させる往復移動機構について図26ないし図30を参照して説明する。
往復移動機構は、駆動モータ151のモータギヤ152に噛み合う中間群ギヤ153、中間群ギヤ153に噛み合うギヤ155が形成された回転部材156を有し、回転部材156には突起部としてボス部157が設けられている。この回転部材156のボス部157は、スライダレール部材136の底面部138に、副走査方向に離間して設けられた2つの係合壁(作用壁)161、162に係合(当接)可能としている。なお、係合壁161、162はスライダレール部材36の底面に形成された補強用リブをそのまま使用している。
【0048】
このように構成したので、前記実施形態と同様に、まず、図26に示す状態は回転部材156が矢示G方向に回転し、ボス部157がスライダレール部材136の係合壁161を押し切った状態を表しており、この時、キャップ130bによる記録ヘッド120cのノズル面のキャッピングが完了した状態である。そして、この図26に示す位置から回転部材156を更に矢示G方向に回転させて図27に示す位置にした状態で回転部材156を停止させ、このときをキャップ状態(図23に示す状態)としている。
【0049】
このキャップ状態(停止状態)からデキャップ状態へ移行するときには、図28に示すように回転部材156を矢示G方向に回転させることで、回転部材156のボス部157が係合壁162を押し始め、スライダレール部材136を矢示H方向に移動させる。さらに回転部材156が回転されると、図29に示すようにボス部157が係合壁162を押し切る手前の状態を経て、図30に示すようにボス部157が係合壁162を押し切り、回転部材156を図30の位置で停止させ、この状態をデキャップ状態(図22に示す状態)としている。
【0050】
このデキャップ状態からキャップ状態への移行動作は、図30に示す位置から図26に示すように回転部材156を矢示G方向に回転させて、回転部材156のボス部157で係合壁161を押してスライダレール部材136を矢示E方向に移動させて図27に示す位置で回転部材156を停止する。
【0051】
次に、強制的にデキャップ状態に移行する場合について図31及び図32を参照して説明する。
前述したように、スライダレール部材136の底面に回転部材156のボス部157が当接する係合壁161、162を形成しているが、図31に示すように係合壁161、162を形成しない領域163、164を設けている。
【0052】
そこで、回転部材156を図27に示す位置に回転させた状態で、図31に示すように、矢示H方向にスライダレール部材136を手動で押すことによって、係合壁161のない領域163に回転部材156のボス部157が移動するので、スライダレール部材136が矢示H方向に移動し、デキャップ状態にすることができる。
【0053】
また、回転部材156を図30に示す位置に回転させた状態で、図32に示すように、矢示E方向にスライダレール部材136を手動で押すことによって、係合壁162のない領域164に回転部材156のボス部157が移動するので、スライダレール部材136が矢示E方向に移動し、キャップ状態にすることができる。
【0054】
次に、手動操作でスライダレール部材を移動させる例について図33ないし図36を参照して説明する。
維持回復機構108にハウジング170にはスライダレール部材136を挟んで両側にレバー172A、172Bが移動可能に保持されている。レバーレバー172A、172Bには、スライダレール部材136の底部に設けたボス部173A、173Bが移動可能に係合する長孔(溝を含む)174A、174Bがそれぞれ形成されている。
【0055】
ここで、図33に示すように、デキャップ状態でスライダレール部材136がX方向(副走査方向)右端に位置しているとき、図34に示すように、レバー172AをX方向の矢示方向に引っ張ると、レバー172Aがボス部173Aを介してスライダレール部材136を同方向に移動させるので、スライダ部材133が上昇してキャップ状態となる。そして、図35に示すようにレバー172Aを矢示方向に押し込むことでレバー172Aが収納され、このとき、レバー172Aの長孔174Aでスライダレール部材136のボス部173Aが押されないのでキャップ状態のままレバー172Aを収納できる。
【0056】
この図35に示すキャップ位置状態から、図36に示すように、レバー172Bを矢示方向に引っ張ると、レバー172Bがボス部173Bを引っ掛けて、レバー172Bがボス部173Bを介してスライダレール部材136を同方向に移動させるので、スライダ部材133が下降してデキャップ状態となる。そして、図37に示すようにレバー172Bを矢示方向に押し込むことでレバー172Bが収納され、このとき、レバー172Bの長孔174Bでスライダレール部材136のボス部173Bが押されないのでデキャップ状態のままレバー172Bを収納できる。
【0057】
このように手動走査でスライダレール部材を往復移動させる手段を備えることによって、駆動手段が動作不可能な状態になってもキャップの昇降(移動)を行なうことができる。
【符号の説明】
【0058】
1 装置本体
5 キャリッジ
20a〜20j 記録ヘッド
30a〜30j キャップ
32 ケース
33 スライダ部材
36 スライダレール部材
37 側壁部
38 底面部
41 ガイド溝
42 支持ピン部材
56 回転部材
57 ボス部
61、62 係合壁
105k、105c キャリッジ
120k 黒ヘッド
120c カラーヘッド
130a、130b キャップ
133 スライダ部材
136 スライダレール部材
137 側壁部
138 底面部
141 ガイド溝
142 支持ピン部材
156 回転部材
157 ボス部
161、162 係合壁
172A、172B レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルを有する複数の記録ヘッドと、
各記録ヘッドのノズル面をそれぞれ封止する複数のキャップを有する維持回復機構と、を備え、
前記維持回復機構は、前記複数のキャップを保持する昇降可能に配設されたスライダ部材と、高さ方向の位置が変化するガイド溝が形成され、前記スライダ部材の支持ピン部材が前記ガイド溝に移動可能に係合するスライダレール部材と、前記スライダレール部材を水平方向に往復移動させる往復移動手段と、を有している
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記往復移動手段は、前記スライダレール部材の底面に移動方向に離間して設けられた2つの係合壁に交互に当接可能な突起部を有する回転部材と、前記回転部材を回転させる駆動手段とを有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記スライダレール部材の前記2つの係合壁のうち、一方の係合壁は前記回転部材の突起部によって押し切られた点を越えて設けられていないことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記スライダレール部材の移動方向は、前記記録ヘッドの移動方向又は前記記録ヘッドで画像が形成される被記録媒体の移動方向に沿う方向であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記スライダレール部材を手動操作で移動させる手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2010−179650(P2010−179650A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286059(P2009−286059)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】