説明

画像形成装置

【課題】少数ラインのメンテナンスを移動手段の複雑化、大型化を招くことなく得られる画像形成装置を提供する。
【解決手段】インクを吐出する複数の記録ヘッド16が複数列配置された上下方向に移動可能なヘッド部15を有し、該ヘッド部15の全ての記録ヘッド16に対応して設けられ、記録媒体搬送方向に沿って移動可能な複数のキャップ手段を有するメンテナンス装置20を設け、メンテナンス装置20のキャップ手段は上下方向において移動できないように固定された第1キャップ手段21a〜21dと、第1キャップ手段21a〜21dに隣接して配置され、少なくとも記録ヘッド16の1列分に対応して設けられた第2キャップ手段21e,21fとを有するとともに、第2キャップ手段21e,21fのキャップ面の位置は、第1キャップ手段21a〜21dのキャップ面の位置より記録ヘッド16に近づいた位置に位置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に記録ヘッドから液滴を吐出させ画像を形成する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記形式の画像形成装置において、記録ヘッドから長時間、液滴であるインクが吐出されないとノズル内のインクの乾燥が進み、粘性が増加し、適正に吐出できなくなってしまう。そのため、画像形成装置には記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドのノズル内及びノズル面をメンテナンスするメンテナンス装置を設けている。一般にメンテナンス装置としては、ノズル内のインクの乾燥を防ぐキャップ手段、ノズル面に付着した異物を払拭するワイパー手段、ノズル内のインクを吸引除去する吸引手段等が備えている。
【0003】
特許文献1には、メンテナンスユニットによる回復動作終了時後において、ノズル内への液体や気泡引き込みを防止する目的で、搬送方向に複数配列された記録ヘッドと、これらのヘッドのノズル面を被覆するキャップを備え、搬送方向を平行な方向に移動可能に構成されたメンテナンス装置であって、ヘッドと搬送手段の間にメンテナンスユニットが入り込み、キャップは、メンテナンスユニットの移動に連動して上下動して、ヘッドのノズル面に当接・離隔するメンテナンスユニットであることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には搬送方向に対して重なりを持つように固定された複数のインクヘッドのメンテナンスを行い、且つ画像形成装置本体の小型化を実現するインクヘッドのメンテナンス装置を提供する目的で、ヘッドが複数列配列されるヘッドユニットと、ヘッドユニットとそれぞれ対向する位置に配置され、ヘッドのノズルからインクを吸引して廃棄するメンテナンスユニットを備え、ヘッドユニットは搬送方向に沿って、それぞれが等間隔にスペースを空けて配置され、吐出時である印字時には、それぞれのスペース内にメンテナンスユニットを退避させる。また、メンテナンス時には、メンテナンスユニットを支持するサイドフレームに連結され、搬送方向に移動させるスライド移動部と、メンテナンスユニットを昇降可能に吊り下げる昇降フレームと、記録媒体を搬送するプラテン部を昇降させるプラテン昇降部からなり、プラテン部を昇降させるに伴い昇降フレームにガイドさせつつ、メンテナンスユニットを昇降させる昇降移動部を備え、昇降動作と、スライド動作によりヘッドとメンテナンス吸引部とを対向させることが開示されている。
【0005】
しかしながら、メンテナンス装置を搭載した画像形成装置ではメンテナンス実施時には移動手段が必要不可欠であり、記録ヘッド部、メンテナンス装置の少なくともいずれかには上下移動手段、スライド移動手段が必要である。また、複数の記録ヘッドを配列しているライン型画像形成装置においては、それぞれの記録ヘッドに対してキャップ手段の移動手段が必要である。このキャップ手段をまとめて移動させる移動手段を構成すると、複数の記録ヘッドを同時メンテナンスすることはできるが、例えば、1列(1ライン)だけメンテナンスしたい場合でも全キャップが記録ヘッドに当接してしまい、メンテナンスが必要ないラインまでメンテナンス動作を行ってしまう。吸引動作をせず、ただキャッピングだけしたとしてもノズル面にはキャップ痕がついてしまい、ワイパーによるワイピング動作が入り、結局はメンテナンス動作の一環を実施してしまう。そこで、各ライン若しくはラインをグループごとに分け、それぞれに移動手段を設ければ、上記問題を軽減できるが、この場合、移動手段の複雑化、大型化を招くという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来の問題を解消し、少数ラインのメンテナンスを移動手段の複雑化、大型化を招くことなく得られる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、記録媒体の幅にわたって配置され、液滴を吐出する複数の記録ヘッドが、記録媒体搬送方向に複数列配置され、上下方向に移動可能なヘッド部を有する画像形成装置において、前記ヘッド部の全ての記録ヘッドに対応して設けられ、記録媒体搬送方向に沿って移動可能な複数のキャップ手段を有するメンテナンス装置を設け、該メンテナンス装置のキャップ手段は上下方向において移動できないように固定された第1キャップ手段と、前記第1キャップ手段に隣接して配置され、少なくとも前記記録ヘッドの1列分に対応して設けられた第2キャップ手段とを有するとともに、該第2キャップ手段のキャップ面の位置は、前記第1キャップ手段のキャップ面の位置より前記記録ヘッドに近づいた位置に位置されることを特徴とする画像形成装置を提案する。
【0008】
なお、本発明は、前記第2キャップ手段が、前記第1キャップ手段よりも前記記録ヘッドに近づいた位置に固定されていると有利である。
さらに、本発明は、前記第2キャップ手段が、前記第1キャップ手段よりも前記記録ヘッドに近づいた位置に移動可能に設けられていると有利である。
【0009】
さらにまた、本発明は、印字時に前記メンテナンス装置が記録媒体搬送方向下流側に退避される装置では、前記第2キャップ手段が前記第1キャップ手段に対して記録媒体搬送方向上流側に配置されていると有利である。
【0010】
さらにまた、本発明は、前記第1キャップ手段及び前記第2キャップ手段の少なくともいずれかに1列分に前記記録ヘッドの吐出面を払拭するワイパー手段を設けると有利である。
【0011】
さらにまた、本発明は、前記第1キャップ手段は全て保湿専用キャップで、前記第2キャップ手段は吸引キャップであると有利である。
さらにまた、本発明は、前記第1キャップ手段と前記第2キャップ手段が全て吸引キャップであると有利である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の記録ヘッドに対して配置されたキャップ手段に加えて、少なくとも複数の記録ヘッド1列分のキャップ手段を配置しているので、少数ライン単位の記録ヘッドのメンテナンスを実施することができる。しかも、キャップ手段を有するメンテナンス装置には、スライド移動可能な移動手段を設け、記録ヘッド部には上下移動可能な移動手段を設け、それぞれの装置に1つだけの移動手段機構を配置しているので、簡易的な機構で製品をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明が適用される画像形成装置を示す概略全体側面図である。
【図2】その画像形成装置を示す概略全体平面図である。
【図3】記録ヘッドの配置を示す説明図である。
【図4】(a)〜(c)はメンテナンス動作を示す説明図である。
【図5】本発明に係る画像形成装置を示す概略全体側面図である。
【図6】本発明に係る画像形成装置をメンテナンス時の一態様を示す側面図である。
【図7】本発明に係る画像形成装置をメンテナンス時の次の態様を示す側面図である。
【図8】本発明に係る画像形成装置をメンテナンス時の別の態様を示す側面図である。
【図9】(a),(b)はキャップ手段を上下移動する機構を示す正面及び側面図である。
【図10】キャップ手段を上下動の一例を示す正面図である。
【図11】(a),(b)は、メンテナンス装置の移動手段を示す機構図である。
【図12】第2キャップ手段を高くするように上下移動させる手段の機構図である。
【図13】本発明の他の実施形態を示す画像形成装置の概略平面図である。
【図14】ワイパー手段の一例を示す説明図である。
【図15】(a)〜(e)はワイパー手段による記録ヘッドのノズル面の払拭動作を示す説明図である。
【図16】本発明の他の実施形態を示す画像形成装置の概略平面図である。
【図17】メンテナンス時の一態様を示す説明図である。
【図18】第2キャップ手段の吸引手段を示す説明図である。
【図19】メンテナンス動作のの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を用いて説明する。
図1は、本発明が適用される画像形成装置の概略全体側面図、図2はその概略全体平面図であり、ここに示した画像形成装置はノズルから液滴を吐出する記録ヘッドが記録媒体のほぼ全幅にわたりライン構成をしたライン型画像形成装置である。
【0015】
図1及び図2において、符号1は図示しない前後側板、ステー等で構成された装置本体、2は記録媒体Pを積載し給紙する給紙部であり、給紙部2には記録媒体Pが積載される給紙トレイ3、分離ローラ4及び給紙ローラ5を有している。また、符号6は印刷された記録媒体Pを排紙積載する排紙トレイ7を備えた排紙部である。
【0016】
給紙部2から給紙された記録媒体Pは1枚ずつ搬送部8へ送られる。搬送部8は搬送駆動ローラ9、搬送従動ローラ10、これらローラに巻き掛けられた無端ベルト11とを有し、無端ベルト11の表面には複数の穴(図示せず)が形成されており、無端ベルト11下部には穴を介して記録媒体Pを吸引する吸引ファン12が設けられている。なお、符号13,14は搬送駆動ローラ9、搬送従動ローラ10上で無端ベルト11と自重で当接する搬送ガイドローラである。
【0017】
かかる搬送部8は吸引ファン12の作用によって記録媒体Pを無端ベルト11に吸着し矢印A方向に搬送しているが、記録媒体Pを静電吸着によって無端ベルト11に吸着し搬送する搬送方式を採用しても構わない。
【0018】
搬送部8の上方、すなわち無端ベルト11の上方には記録媒体Pに液滴であるインクを吐出する印字部15が配設されている。この印字部15には、インクを吐出する記録ヘッド16が記録媒体のほぼ全幅にわたり構成されており、記録ヘッド16は4列で、ここでは記録ヘッド16aと記録ヘッド16bにはイエロー(Y)とマゼンタ(M)、記録ヘッド16cと記録ヘッド16dにはシアン(C)とブラック(K)となっている。各ラインでは図2及び図3に示すように、記録ヘッド16が5個千鳥状に配列されていることにより、150dpiの画像1ラインを形成している。なお、印字部15には記録ヘッド16にインクをそれぞれ供給する図示していない分岐管が各色ごとに配列され、分岐管上流側にはサブタンク(図示せず)が配置され、サブタンクと記録ヘッド16との水頭差によって、記録ヘッド16のノズル孔のメニスカスを保持するのに適切な負圧が形成される。さらに、サブタンクの上流側にはインクを貯蔵するメインタンク(図示せず)が配置されている。
【0019】
搬送部8の上方で、且つヘッド部15の脇には、記録ヘッド16のノズル面をメンテナンスするメンテナンス装置20が設けられている。このメンテナンス装置20は各記録ヘッド16a、16b、16c、16dに合わせてキャップ手段21a、21b、21c、21dが記録ヘッド同様に記録媒体のほぼ全幅にわたり千鳥状に配列されている。このキャップ手段21a〜21dは、記録ヘッド16のノズル面を覆うキャップと、図示しないノズル面に付着した適宜を拭き取るワイパー手段と、キャップを記録ヘッド16のノズル面を密閉した状態でインクを吸引する吸引手段とで構成され、記録ヘッド16の吐出性能を維持・回復させている。キャップ手段21a〜21dに連結された流路、吸引手段、圧力室等がキャップ手段下部に配置されている。ここでは流路、吸引手段、圧力室等の配置はこれに限らず、コンパクト化を図り、これらを図示しない本体装置の後側板の外側に配置し、チューブ等の経路を使用し接続しても構わない。このメンテナンス装置20は搬送部8上において図示していない移動手段により記録媒体Pの搬送面と平行な面内において矢印A−A’方向にスライド移動可能であって、記録ヘッド16の下部にもぐりこむメンテナンス位置と、図1に示すようにヘッド部15の左脇に退避している退避位置との間を移動することができる。
【0020】
次に、上記した画像形成装置のメンテナンス装置20の動作について説明する。
図1は、記録ヘッド16からインクを吐出する画像形成時の状態を示している。ヘッド部15には図示していないヘッド部上下移動手段が設けられ、記録媒体Pの面に対して鉛直方向である矢印B−B’方向に移動可能であり、印字時では搬送部8上に記録媒体Pに対してヘッド部15の記録ヘッド16のノズル面がその隙間およそ1mmほどに位置に保持されている。このとき、メンテナンス装置20はヘッド部15の図1ににおいて左脇の搬送部8上に位置し、この位置がメンテナンス装置20の退避位置となる。
【0021】
記録ヘッド16からインクを吐出する動作が終了し、記録ヘッドの16のメンテナンス信号、もしくは、記録ヘッド16の待機信号が入ると、図4(a)に示すように、ヘッド部15が矢印B方向である上方へ移動し、ヘッド部15と搬送部8の間にスペースが形成される。このスペースには、図4(b)に示すように、メンテナンス装置20が矢印A’方向に移動し、ヘッド部16の下部に侵入する。このため、ヘッド部15の矢印B方向の移動はメンテナンス装置20の入るスペース、もしくはそれ以上に上方に退避移動される。
【0022】
そして、スペースに入り込んだメンテナンス装置20のキャップ手段21a〜21dが記録ヘッド16a〜16dの真下に移動すると該位置で停止し、ヘッド部15が矢印B’方向に降下する。そして、メンテナンス装置20のキャップ手段21a〜21dが記録ヘッド16a〜16dを覆い、ノズル内のインクの乾燥を防止し、さらにノズル内のインクを吸引することもでき、次回の吐出時に不良なく適切にインクを吐出することができる。また、メンテナンスが終了し、吐出信号が入ったならば上記動作とは逆の動作にてメンテナンス装置20を退避位置に戻す。
【0023】
ここまでにおいて説明したメンテナンス装置20は、従来をほぼ同様の構成であるので、全ての記録ヘッド16をメンテナンスする場合は好ましいが、例えば1列のみをメンテナンスしたい場合には、メンテナンスの必要でない記録ヘッドまでキャップしてしまい、吸引動作などでインクを廃棄してしまう。もしくは、メンテナンスが不要な記録ヘッド部だけ吸引動作などによる廃棄をしない構成としても、記録ヘッドに対向配置されたキャップは全記録ヘッドに当接する。その場合、記録ヘッドのノズルにはキャップ痕がついてしまい、吸引動作などの後にワイピング動作をする必要があり、メンテナンス動作をせざるを得なく作業効率が悪い。
【0024】
そこで、本発明では次のように措置を講じている。
図5に示す画像形成装置は、上記した装置とメンテナンス装置20がキャップ手段の構成が異なるだけで他の構成はほぼ同様である。ここに示したメンテナンス装置20は上記したキャップ手段21a〜21dを第1キャップ手段とすると、キャップ手段21e,21fの第2キャップ手段を備えている。この第2キャップ手段21e,21fの構成は、記録ヘッド16が記録媒体Pの幅にわたって配置され、第1キャップ手段21a〜21dの記録媒体P搬送方向Aの上流側に隣接して配置されている。そして、第2キャップ手段21e,21fは記録ヘッド2列分に対応して設けられ、第1キャップ手段21a〜21dと第2キャップ手段21e,21fは同じメンテナンス装置20のベースに支持されており、一緒に上記した矢印A−A’方向にスライド移動可能となっている。
【0025】
第2キャップ手段21e,21fは、図6に示すように、記録ヘッド16のノズル面に当接するキャップ面の高さが第1キャップ手段21a〜21dのキャップ面よりも高さHほど高い位置に固定支持されている。第2キャップ手段21e,21fが記録ヘッド16a,16bをメンテナンスする場合、メンテナンス装置20の第2キャップ手段21e,21fが記録ヘッド16a、16bに対向する位置までメンテナンス装置20が矢印A’方向にスライド移動し、ヘッド部15が降下して記録ヘッド16のノズル面と第2キャップ手段21e,21fのキャップ面が当接しメンテナンス動作に入る。このとき、他の記録ヘッド16c、16dには第1キャップ手段21a〜21dが第2キャップ手段21e,21fより高さHほど低く設定されているため、第1キャップ手段21a〜21dが他の記録ヘッド16c、16dに当接することがなく、記録ヘッド16a、16bのみをメンテナンスすることができる。したがって、メンテナンスが不要な記録ヘッド16をメンテナンスしてしまうことがなく、最低限のインク廃棄量で済み、また、最低限のメンテナンス時間となる。
【0026】
また、第2キャップ手段21e,21fが記録ヘッド16c,16dをメンテナンスする場合には、図7に示すように、メンテナンス装置20の第2キャップ手段21e,21fが記録ヘッド16c、16dに対向する位置までメンテナンス装置20が矢印A’方向にスライド移動し、ヘッド部15が降下して記録ヘッド16のノズル面と第2キャップ手段21e,21fのキャップ面が当接しメンテナンス動作に入る。このとき、第1キャップ手段21a〜21dはヘッド部15の左側に外れるため、第1キャップ手段21a〜21dが記録ヘッド16に当接することがない。
【0027】
さらにまた、第1キャップ手段21a〜21dがすべての記録ヘッド16a〜16dのメンテナンスを行う場合、図8に示すように、第1キャップ手段21a〜21dより高さが高い第2キャップ手段21e,21fであってもヘッド部15の右側に外れるため、第2キャップ手段21e,21fが記録ヘッド16に当接してしまうことがない。
【0028】
このように構成されたメンテナンス装置20は、メンテナンスが必要な記録ヘッド16のみの場合、第2キャップ手段21e,21fを用いて効率よくメンテナンスすることができ、またすべての記録ヘッド16の場合は第1キャップ手段21a〜21dを用いて全記録ヘッドを同時にメンテナンスすることができるので、メンテナンス作業効率が向上する。
【0029】
第2キャップ手段21e,21fは第1キャップ手段21a〜21dに対して記録媒体搬送方向Aの上流側に配置されている。そして、記録ヘッド16から記録媒体Pにインクを吐出する印字時においては、メンテナンス装置20がヘッド部15の記録媒体搬送方向Aの下流側に退避させている。すなわち、メンテナンス装置20の退避位置は図5においてヘッド部15の左脇である。このように構成すると、メンテナンス信号が入ったとき、先に述べた動作においてメンテナンス装置20が記録ヘッド16の下部に入りこみメンテナンス動作が始まるが、このとき1列ごとのメンテナンス信号の場合、第2キャップ手段21e,21fが第1キャップ手段21a〜21dの搬送方向下流側にあると、記録ヘッド16aのメンテナンス時にはメンテナンス装置20を搬送方向上流側に大きく移動する必要があり、移動量が大きくなりスペース確保が必要となり製品が大型になってしまう。第2キャップ手段21e,21fが第1キャップ手段21a〜21dの搬送方向上流側に配置することで記録ヘッド16a、16bのメンテナンス時にメンテナンス装置20を最小限の移動量で すむ。記録ヘッド16c、16d側に関しては、もともとメンテナンス装置20が退避するスペースが確保されているのでスペースの問題はない。また、メンテナンス装置20の退避位置をヘッド部15の搬送方向Aの上流側に設定した場合は、第1キャップ手段21a〜21dと第2キャップ手段21e,21fの配置は逆にする。
【0030】
図9(a),(b)は、上下方向に移動する移動手段を設けたキャップ手段21を記録媒体Pの幅方向から見た説明図である。
図9(a),(b)において、キャップ手段21の5個キャップ22の下部には廃棄されるインクを1つにまとめる流路部材23が配管され、流路部材23は図示していない吸引ポンプが接続されていて、ノズル内のインクが流路部材23を介して吸引されて廃棄される。キャップ手段21は5個のキャップ22が一緒に上下移動できるように、支軸25を介してメンテナンス装置20の側板24に上下移動可能に装着されている。側板24のそれぞれ外側には支軸25が着座するカム26が配置され、このカム26が回転すると、支軸25がカムピンとなってキャップ22が高さHだけ上昇し、カム26の上死点の位置において、記録ヘッド16のノズル面にキャップ22が当接する構成となっている。
【0031】
5個並べたうちの1つのキャップは、図10に示すように、その両端がガイドピン27を介して側板24の図示していないスライド部に係合され、スプリング28によって押し上げられている。記録ヘッド16のノズル面にキャップ22が当接し押し上げられたとき、スライド部とガイドピン27によりキャップ22が上下移動可能となり適切な圧力で記録ヘッド16のノズル面に当接する。
【0032】
図11(a),(b)は、メンテナンス装置20の移動手段を示す機構図である。メンテナンス装置20はベース30上に第1キャップ手段21a〜21dと第2キャップ手段21e,21fのそれぞれのキャップ22がフレーム29を介して記録ヘッド16に対向配置されている。メンテナンス装置20ベース30において、記録媒体の幅方向の一側には車輪の用をなすベアリング31を設置し、他側はジョイント32を介してタイミングベルト33に連結されている。このタイミングベルト33により搬送方向A−A’にスライド移動可能となっている。タイミングベルト33には図示しないタイミングプーリを介してモータ38に接続されており、モータ駆動によってメンテナンス装置20全体が移動可能になる。このモータ38はステッピングモータを使用しパルス制御によって微少量の移動制御を可能としている。ベアリング31側では画像形成装置本体の側板17に設置されているスライドレール18上にベアリング31が乗るかたちとなり搬送方向の移動を補助することとなる。メンテナンス装置の20退避位置には退避位置センサ34を設け、ヘッド部15側にスライド移動したときには適宜配置したキャップ位置センサ35によって停止位置を制御している。また、第2キャップ手段21e,21fは第1キャップ手段21a〜21dより高さHほど高くなっているが、キャップ単品自体は共通使用し、キャップフレームを高さHほどかえた形状を使用している。
【0033】
図12(a),(b)は、第2キャップ手段21e,21fを第1キャップ手段21a〜21dより高さHほど高くなるように上下移動させる手段の機構図である。
図12(a),(b)において、第2キャップ手段21eにはキャップ22を5個並べた状態を1つにしたフレーム29において、カム26により持ち上げられ高さHだけ高くなる。カム26から一方側にカム軸26aが突き出し、これにカムプーリ35が固定されている。隣に並べられた第2キャップ手段21fのフレーム29のカムプーリ35同士がタイミングベルト36によって掛け渡され、一方の第2キャップ手段21eよりカムプーリ35を介してモータプーリ37へとタイミングベルト39によって掛け渡されている。モータプーリ37にはモータ38が接続され、モータ38の回転によりカム26が回りキャップ22が上下移動可能となる。このモータ38はステッピングモータを使用しパルス制御によって回転角を微小量から制御することが可能である。ここではカム26の位相を同期させキャップ上死点タイミングを同じにしているが、位相をずらしてキャップ上死点タイミングをずらしても構わない。例えば、上死点位置をずらして記録ヘッド16における1ラインのみをメンテナンスすることも可能となる。上死点が同時となるタイミングがあれば問題はない。
【0034】
図13は、本発明の他の実施形態を示す画像形成装置の概略平面図であり、本実施形態ではメンテナンス装置20に記録ヘッド16のノズル面を払拭するワイパー手段40、41を設けている。ここでは第2キャップ手段21eに隣接してワイパー手段40を配置しており、記録ヘッド16a、16b分に相当するワイパー手段40、41が配置されている。ワイパー手段40,41のワイパー42は、図14に示すように、ワイパーホルダ43に固定されており、このワイパー42はゴム材などであるが、記録ヘッド16のノズル面のインクを払拭可能できる材質であれば限定しない。ワイパー手段40,41は第2キャップ手段21e,21fのキャップ22に対し、それぞれ搬送方向上流側に隣接して配置されており、ワイパー42の先端はキャップ22の上面に対して高さhほど高い位置に配置している。記録ヘッド16のノズル面を払拭する際にはこのワイパーをある程度押し込む必要があり、その高さがhである(図14参照。)。
【0035】
ワイパー手段40,41による記録ヘッド16のノズル面の払拭動作について図15にて説明する。図15(a)は記録ヘッド16から記録媒体Pに吐出している時でありメンテナンス装置20は退避位置にある。図15(b)はメンテナス時、メンテナンス装置20がヘッド部15の下部に入り込む。図15(c)では、記録ヘッド16がキャップ22に当接しメンテナンス動作となる。ここまでは先に述べた説明と同じである。図15(d)は、ワイパー手段40,41による払拭のため高さhほど記録ヘッド16を上昇移動した状態を示している。このとき、先のメンテナンス動作により記録ヘッド16のノズル面16Aには少なくともインクが残った状態となりこのインク15をワイパー42で払拭させる。図15(e)では、先のインクを拭き取るためメンテナンス装置20を搬送方向下流側に払拭に適切な速度でスライド移動させ記録ヘッド16のノズル面のインク滴を拭き取る。
【0036】
また、ここではワイパー手段40,41をキャップ面に対して高さHほど高い位置に固定しているが、実施変形例として先の図9に示す上下移動機構を用いてワイパー手段40,41を高さhほど上下移動可能な機構を配置しても構わない。このときワイパー動作としては先のキャップ同様にヘッド部15による高さHほどの移動手段を排除することができる。機構図においては、先の図12の機構と同じでキャップ22をワイパー42に変更した構成にすることで実施可能である。記録ヘッド16a、16bに対向するワイパー42の上下移動をずらすことも可能である。カムの位相をずらすことでワイパー42上下移動をずらすことが可能で、例えば、記録ヘッド16aのみのワイピングも可能となる。同時に上死点に達するタイミングがあれば問題はない。
【0037】
さらに第2キャップ手段21e,21fを上下移動させ、かつ、このワイパー42も上下移動させたい場合には同じような移動機構を配置し、例えば、第2キャップ手段21e,21f側にワンウェイクラッチを搭載し、モータであるステッピングモータを正転、逆転制御することで1つの駆動源でキャップとワイパーの2つを制御することも可能である。もちろん別々にモータを設けても良い。
【0038】
以上のことから、ワイパー手段40,41により記録ヘッド16のノズル面を払拭することができる。この動作を他の記録ヘッドでも同様に実施し、複数回繰り返すことで全記録ヘッド16のノズル面を払拭することができる。また、ここでは第2キャップ手段21e,21fの脇にワイパー42を配置したが、それに限るものではなく第1キャップ手段21aの脇に配置しても構わない。さらに、記録ヘッド16の1列分のワイパー手段40を配置したが、これも限るものではなく、例えば第1キャップ手段21a〜21dの脇にワイパー手段40を配置し1度のワイピング動作で記録ヘッド16のノズル面を払拭しても構わない。
【0039】
図16は、本発明の他の実施形態を示す画像形成装置の概略平面図であり、本実施形態ではメンテナンス装置20にキャップ22Aと吸引キャップ22Bを搭載している。メンテナンス装置20の複数の記録ヘッド16に対向配置されるキャップ手段である第1キャップ手段21a〜21dは、非吐出時などの吐出待機中における記録ヘッド16内のインクの乾燥を防止するために、記録ヘッド16のノズル面にキャップ22を当接し保湿する役目をし、第2キャップ手段21e,21fは記録ヘッド16を列単位でメンテナンスする役目をする。
【0040】
図17では、メンテナンス装置20がすべての記録ヘッド16に対して第1キャップ手段21a〜21dが対向配置する位置にあり、記録ヘッド16のノズル面に当接し、記録ヘッド16のノズル面が外気に触れないようにすることで、記録ヘッド16のインクの乾燥を防止し吐出不良が起こらないようにしている。
【0041】
図18では、第2キャップ手段21e,21fには図9で説明したキャップ22の下部には廃棄されるインクを1つにまとめる流路部材23が配管され、流路部材23は吸引手段である吸引ポンプ45が接続されていて、記録ヘッド16の列単位によるメンテナンスを実施している。なお、吸引手段のおいては、吸引ポンプ45に限定するものではなく、例えば、チューブを押しつぶしてインクを吸引できるチューブポンプ、その他にもダイアフラムポンプなどがある。また、圧力室(チャンバー)を設け減圧作用による吸引する手段としてもよい。吸引されたインクは図示しない廃液タンクへ廃棄される構成となっている。
【0042】
ここで、第1キャップが保湿キャップ22A、第2キャップが吸引キャップ22Bを備えたメンテナンス装置20において、メンテナンス動作のフローを図19に示す。
全記録ヘッドをメンテナンスする信号が入った場合には、まず記録ヘッドa、b列を対象にメンテナンスを実施するため、第1キャップは記録ヘッドa、bに対向配置するように移動しキャップは記録ヘッドのノズル面に当接し、メンテナンスが実行される。記録ヘッドa、bの所要のメンテナンスが完了したならば、記録ヘッド部が上昇する。次に、第1キャップ手段が記録ヘッドc、dに対向配置するようにメンテナンス装置が排紙側に移動し、記録ヘッド部が下降し、記録ヘッドc、dのノズル面が第1キャップと当接し記録ヘッドc、dの所要のメンテナンスが実行される。これで全記録ヘッドのメンテナンスが実行されたわけで、記録ヘッド部が上昇し、メンテナンス装置は所定の退避位置へ移動し、次の指示を待つこととなる。
【0043】
記録ヘッドa、bのみのメンテナンス信号の場合には、第1キャップが記録ヘッドa、bと対向配置される位置にメンテナンス装置が移動し記録ヘッドa、bのメンテナンスが実行される。記録ヘッドa、bのみのメンテナンスであるため終了したならば記録ヘッド部が上昇し、メンテナンス装置は退避位置へ移動し完了となる。ヘッドc、dのみのメンテナンスの時には、第1キャップが記録ヘッドc、dと対向配置される位置にメンテナンス装置が移動し記録ヘッドc、dのメンテナンスが実行される。メンテナンスが完了したならば記録ヘッド部が上昇しメンテナンス装置が退避位置へ移動し完了となる。
【符号の説明】
【0044】
15 ヘッド部
16a、16b、16c、16d 記録ヘッド
20 メンテナンス装置
21a、21b、21c、21d 第1キャップ手段
21e、21f 第2キャップ手段
22 キャップ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】特開2007−196443号公報
【特許文献2】特開2005−111938号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の幅にわたって配置され、液滴を吐出する複数の記録ヘッドが、記録媒体搬送方向に複数列配置され、上下方向に移動可能なヘッド部を有する画像形成装置において、
前記ヘッド部の全ての記録ヘッドに対応して設けられ、記録媒体搬送方向に沿って移動可能な複数のキャップ手段を有するメンテナンス装置を設け、
該メンテナンス装置のキャップ手段は上下方向において移動できないように固定された第1キャップ手段と、前記第1キャップ手段に隣接して配置され、少なくとも前記記録ヘッドの1列分に対応して設けられた第2キャップ手段とを有するとともに、該第2キャップ手段のキャップ面の位置は、前記第1キャップ手段のキャップ面の位置より前記記録ヘッドに近づいた位置に位置されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記第2キャップ手段が、前記第1キャップ手段よりも前記記録ヘッドに近づいた位置に固定されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記第2キャップ手段が、前記第1キャップ手段よりも前記記録ヘッドに近づいた位置に移動可能に設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかに記載の画像形成装置において、印字時に前記メンテナンス装置が記録媒体搬送方向下流側に退避される装置では、前記第2キャップ手段が前記第1キャップ手段に対して記録媒体搬送方向上流側に配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れかに記載の画像形成装置において、前記第1キャップ手段及び前記第2キャップ手段の少なくともいずれかに1列分に前記記録ヘッドの吐出面を払拭するワイパー手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れかに記載の画像形成装置において、前記第1キャップ手段は全て保湿専用キャップで、前記第2キャップ手段は吸引キャップであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1ないし5の何れかに記載の画像形成装置において、前記第1キャップ手段と前記第2キャップ手段が全て吸引キャップであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−214780(P2010−214780A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64372(P2009−64372)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】