説明

画像形成装置

【課題】記録媒体に画像を形成する画像形成処理を行っているときの消費電力量を抑制する。
【解決手段】制御部は、画像形成処理中に通信部で複数の画像形成指示情報を受信したとき、それぞれの画像形成指示情報に含まれる記録媒体の種別情報に基づいて記憶部から抽出したそれぞれの定着温度と該画像形成処理中の定着温度とを比較(S3a)し、その差が最も小さい画像形成指示情報の画像形成処理を、処理中の画像形成処理が終了した後に行う(S5a)ようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、またはファクシミリ等の熱定着器を備えた画像形成装置に関し、特に熱定着器の消費電力を低減させる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置は、帯電させた感光体を露光装置で露光して静電潜像を形成し、この静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させて現像したトナー像を記録媒体に転写した後、転写されたトナー像を熱定着器により加熱して記録媒体に定着させて画像を形成するようにしている。
【0003】
画像形成装置は、トナー像を記録媒体に定着させるため、この熱定着器を所定の温度までヒータで加熱する必要があり、このとき多大な電力を消費することから、画像形成処理を行わない待機時はヒータによる加熱を制御して消費電力量を抑制するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−241009号公報(段落「0028」〜段落「0030」、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術においては、待機時の消費電力量を抑制できるが、記録媒体に画像を形成する画像形成処理を行っているときの消費電力量を抑制することができないという問題がある。
【0006】
例えば、熱定着器の温度を変化させる必要がある複数の種類の記録媒体(例えば、高温で熱定着させる葉書や封筒等の厚い印刷用紙や低温で熱定着させる通常の印刷用紙)を交互に連続して画像を形成する場合、熱定着器の加熱と冷却を繰り返すことにより多大な電力を消費してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、記録媒体に画像を形成する画像形成処理を行っているときの消費電力量を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため、本発明は、記録媒体に転写された現像剤像を熱定着させる定着部を備えた画像形成装置において、複数の種類の記録媒体を収容する記録媒体収容部と、前記記録媒体の種類を識別する種別情報に関連付けて該記録媒体毎の熱定着に必要な温度を定着温度として予め記憶する記憶部と、前記記録媒体の種別情報を含む画像形成指示情報を受信する通信部と、前記画像形成指示情報に含まれる前記記録媒体の種別情報に基づいて前記記録媒体収容部から給紙した記録媒体に現像剤像を転写し、該種別情報に基づいて前記記憶部から抽出した定着温度で熱定着させる画像形成処理を行う制御部とを設け、前記制御部は、画像形成処理中に前記通信部で複数の前記画像形成指示情報を受信したとき、それぞれの画像形成指示情報に含まれる前記記録媒体の種別情報に基づいて前記記憶部から抽出したそれぞれの定着温度と該画像形成処理中の定着温度とを比較し、その差が最も小さい画像形成指示情報の画像形成処理を、前記処理中の画像形成処理が終了した後に行うようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このようにした本発明は、記録媒体に画像を形成する画像形成処理を行っているときの消費電力量を抑制することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施例における画像形成システムの構成を示すブロック図
【図2】第1の実施例における画像形成装置の構成を示す概略図
【図3】第1の実施例における定着制御温度テーブルの説明図
【図4】第1の実施例における印刷ジョブの説明図
【図5】第1の実施例における印刷処理を示すフローチャート
【図6】第1の実施例における印刷処理の説明図
【図7】第2の実施例における印刷情報確認画面の説明図
【図8】第2の実施例における印刷処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明による画像形成装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は第1の実施例における画像形成システムの構成を示すブロック図である。
【0013】
図1において、画像形成装置1は、ネットワーク等の有線または無線の通信回線3を介して画像の形成を指示するコンピュータやサーバ等の上位装置2に通信可能に接続され、上位装置2から受信した画像形成指示情報としての印刷ジョブデータにしたがって画像を記録媒体に形成するプリンタ、複写機、またはファクシミリ等である。なお、本実施例では、画像形成装置1を電子写真方式のプリンタとして説明する。
【0014】
本実施例の画像形成装置としてのプリンタを図2の第1の実施例における画像形成装置の構成を示す概略図に基づいて説明する。
【0015】
図2において、画像形成装置1は、色材としての顔料を含む樹脂からなるトナーにより、上位装置から受信した印刷ジョブデータから生成した画像データをもとに記録媒体上に画像を形成する。
【0016】
画像形成装置1には、記録媒体としての印刷媒体17を収容する給紙トレイ16が装着され、印刷媒体17を給紙トレイ16から取り出す給紙ローラを備え、印刷媒体17を給紙して搬送する搬送ローラが配置される。
【0017】
本発明における画像形成装置1は、カラー電子写真方式であり、画像形成装置1内には画像形成部12(12a、12b、12c、12d)としてイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色の画像を形成する静電潜像担持体としての感光体ドラム、その感光体ドラムに形成された静電潜像をトナーにより現像し、トナー像を形成する現像器、その現像器にトナーを供給するトナーカートリッジが印刷媒体17の搬送路に沿って並べて配置されている。
【0018】
また、感光体ドラムの表面に電荷を供給して帯電させる帯電ローラ、光学ヘッドとしてのLEDヘッド等の露光装置が、感光体ドラムの表面に対向するように配置され、露光装置は帯電ローラで帯電された感光体ドラムの表面に画像データをもとに選択的に光を照射して静電画像を形成する。
【0019】
さらに、感光体ドラム上に形成され、トナーにより静電潜像を可視化した像であるトナー像を印刷媒体17上に転写する転写ローラが、転写部13(13a、13b、13c、13d)で印刷媒体17を搬送する搬送ベルト14を挟むように感光体ドラムに対向して配置され、また印刷媒体17が転写部13を通過した後の感光体ドラムの表面に残留したトナーを除去するクリーニングブレードが感光体ドラムの表面に接触して配置されている。
【0020】
転写部13の下流には印刷媒体17上に形成されたトナー像を熱および圧力で定着させる定着部15が配置され、その定着部15を通過した印刷媒体17は搬送する搬送ローラにより搬送され、画像が形成された印刷媒体17を収容する排出部へ排出される。
【0021】
ここで、印刷媒体17を収容する給紙トレイ16および印刷媒体17上に形成されたトナー像を定着させる定着部15を説明する。
【0022】
記録媒体収容部としての給紙トレイ16は、複数種類の印刷媒体17を収容することができるように複数備えられ、本実施例では、給紙トレイ16a、16b、16c、16dの4段で構成されているものとし、それぞれの給紙トレイ16には普通紙、厚紙等の印刷媒体17を収容することができるようになっており、それぞれの給紙トレイ16には同一種類の印刷媒体17が収容されているものとする。
【0023】
なお、それぞれの給紙トレイ16に収容された印刷媒体17の種類は、画像形成装置1の前面に備えられたタッチパネル付きディスプレイ等で構成された操作表示部11により操作者の操作を受付け、メモリ等の記憶部に記憶させて設定することができるものとする。また、操作者の操作を受付けた上位装置から設定データとして受信し、記憶部に記憶させて設定するようにしてもよい。
【0024】
定着部15は、ハロゲンランプ等の加熱機構で加熱された加熱部材としての定着ローラおよび搬送された印刷媒体17を定着ローラへ押圧する加圧ローラを備え、転写部13において印刷媒体17上に形成された現像剤像としてのトナー像の定着を行う。
【0025】
この定着部15には、電源が接続され、また定着ローラの温度を検出する温度センサ等が設けられており、後述する制御部の制御により、加熱機構を駆動して定着ローラの温度を所定の温度まで加熱し、また冷却ファン等の冷却機構を駆動して加熱された定着ローラを所定の温度まで冷却できるようになっている。
【0026】
このように定着部15は、印刷媒体17の大きさ等の諸条件に応じて最適な定着温度で印刷媒体17上に形成されたトナー像の定着を行う。
【0027】
なお、帯電ローラおよび転写ローラには図示しない電源により所定の電圧が印加され、搬送ベルト14、感光体ドラムおよび各ローラはそれぞれ図示しないモータと図示しない駆動を伝達するギアにより回転駆動される。また、現像器、露光装置、および図示しない各モータには、それぞれ電源および制御装置が接続されている。
【0028】
画像形成装置1は、上位装置との間で各種情報の送受信を行う通信部を備え、上位装置から印刷ジョブデータや設定データを受信し、その通信部で受信した印刷ジョブデータをもとに印刷媒体17上にトナー画像を形成し、そのトナー画像を定着部15で定着させる画像形成処理としての印刷処理を行う。
【0029】
このように構成された画像形成装置1は、制御プログラム(ソフトウェア)をメモリ等の記憶部に記憶し、その制御プログラムに基づいて画像形成処理を含む装置全体を制御する制御手段および演算手段としての制御部を備えている。
【0030】
次に、画像形成装置1の記憶部に記憶される定着制御温度テーブルを図3の第1の実施例における定着制御温度テーブルの説明図に基づいて説明する。
【0031】
図3において、30は定着制御温度テーブルであり、使用媒体31、印刷条件32、定着制御温度33、給紙トレイ34で構成されている。
【0032】
使用媒体31は、印刷媒体の大きさ等の諸条件を表すものであり、例えばA3判、A4判、A5判、B4判、B5判、はがき等の印刷媒体の大きさ等を表したものである。
【0033】
印刷条件32は、同一の印刷媒体において定着温度が異なる条件を表したものである。
【0034】
定着制御温度33は、印刷媒体の種類を識別する種別情報としての使用媒体31および印刷条件32で表される印刷媒体および印刷条件に対応付けて定着部の定着温度を表したものである。
【0035】
給紙トレイ34は、使用媒体31で示される印刷媒体が収容されている給紙トレイ16を識別するための情報を示し、例えば、“1”が給紙トレイ16a、“2”が給紙トレイ16b、“3”が給紙トレイ16c、“4”が給紙トレイ16dを表している。
【0036】
このように構成された定着制御温度テーブル30は、操作表示部11により操作者の操作を受付け、または操作者の操作を受付けた上位装置から設定データとして受信し、記憶部に記憶させて設定することができるものとする。
【0037】
なお、印刷媒体の大きさはそれぞれの給紙トレイ16に設けられたセンサで検知するようにしてもよい。
【0038】
上述した構成の作用について説明する。
【0039】
まず、図3に示すように、画像形成装置1の給紙トレイ16aに媒体1、給紙トレイ16bに媒体2、給紙トレイ16cに媒体3、給紙トレイ16dに媒体4が収容され、それぞれの印刷条件32には定着制御温度33が異なる条件1および条件2が定着制御温度テーブル30に設定されているものとする。
【0040】
次に、画像形成装置1は上位装置2から印刷ジョブデータを受信し、図4に示す印刷ジョブが待ち行列40を記憶部に形成しているものとする。
【0041】
図4において、待ち行列40は、印刷ジョブ到達順番41、使用媒体42、印刷条件43、定着制御温度44、給紙トレイ45、および状況46で構成され、上位装置2から受信した印刷ジョブデータに基づいて画像形成装置1の制御部により記憶部に記憶されるものである。
【0042】
印刷ジョブ到達順番41は、画像形成装置1が上位装置2から印刷ジョブデータを受信した順位を示している。本実施例では、1位から5位までの印刷ジョブが待ち行列を形成しているものとする。
【0043】
使用媒体42は、上位装置2から受信した印刷ジョブデータに含まれる印刷媒体の大きさ等の諸条件を表すものである。この使用媒体42は、上述した定着制御温度テーブル30の使用媒体31と一致するものである。
【0044】
印刷条件43は、上位装置2から受信した印刷ジョブデータに含まれる印刷条件である。この印刷条件43も、上述した定着制御温度テーブル30の印刷条件32と一致するものである。
【0045】
定着制御温度44は、上位装置2から受信した印刷ジョブデータに含まれる印刷媒体の大きさや条件等に基づいて定着制御温度テーブル30の使用媒体31および印刷条件32を検索して使用媒体31および印刷条件32に対応付けられた定着制御温度33を抽出し、その定着制御温度を格納したものである。したがって、定着制御温度44には、当該印刷ジョブで定着制御に必要な温度が格納される。
【0046】
給紙トレイ45は、上位装置2から受信した印刷ジョブデータに含まれる印刷媒体の大きさや条件等に基づいて定着制御温度テーブル30の使用媒体31および印刷条件32を検索して使用媒体31および印刷条件32に対応付けられた給紙トレイ34を抽出し、その給紙トレイを識別するための情報を格納したものである。したがって、給紙トレイ45には、当該印刷ジョブで印刷する印刷媒体が収容された給紙トレイを識別するための情報が格納される。
【0047】
状況46は、当該印刷ジョブの処理状況を表す情報であり、印刷処理中であれば“処理中”、印刷処理を待機している状態であれば“未処理”を表す情報が格納される。
【0048】
このように画像形成装置1の制御部は、上位装置2から受信した印刷媒体の大きさや印刷条件等を含む印刷ジョブデータ(印刷媒体の種別情報を含む画像形成指示情報)、および図3に示す定着制御温度テーブル30から印刷ジョブを待ち行列40として記憶部に形成する。
【0049】
本実施例では、図4に示すように印刷ジョブ到達順番41が1位(以下、n位の印刷ジョブを「ジョブn」という。)から5位までの印刷ジョブの待ち行列が形成されているものとし、ジョブ1は、使用媒体42が“媒体2”、印刷条件が“条件1”、定着制御温度44が“b℃”、給紙トレイ45が“2”、状況46が“処理中”、ジョブ2は、使用媒体42が“媒体4”、印刷条件が“条件1”、定着制御温度44が“d℃”、給紙トレイ45が“4”、状況46が“未処理”、ジョブ3は、使用媒体42が“媒体2”、印刷条件が“条件1”、定着制御温度44が“b℃”、給紙トレイ45が“2”、状況46が“未処理”、ジョブ4は、使用媒体42が“媒体1”、印刷条件が“条件1”、定着制御温度44が“a℃”、給紙トレイ45が“1”、状況46が“未処理”、ジョブ5は、使用媒体42が“媒体3”、印刷条件が“条件1”、定着制御温度44が“c℃”、給紙トレイ45が“3”、状況46が“未処理”であるとする。
【0050】
なお、定着制御温度は、0℃<a℃<b℃<c℃<d℃、かつ(b℃−a℃)<(c℃−b℃)であるものとする。
【0051】
次に、本実施例における画像形成装置の印刷処理を、図5の第1の実施例における印刷処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップに従い、図4を参照しながら説明する。
【0052】
S1a:画像形成装置1の制御部は、上位装置から印刷ジョブデータの受信を待機し、印刷ジョブデータを受信すると処理をS2aへ移行する。
【0053】
S2a:次に、制御部は、記憶部に記憶した印刷ジョブの待ち行列40を確認し、待ち行列40の状況46が“未処理”の印刷ジョブの存否を判定し、未処理の印刷ジョブが存在する場合、処理をS3aへ移行し、存在しない場合、処理をS4aへ移行する。
【0054】
S3a:制御部は、現在印刷処理中のジョブの定着制御温度と待ち行列40の状況46が“未処理”のすべての印刷ジョブの定着制御温度44とを比較し、その差が最小となる印刷ジョブを選択する。
【0055】
本実施例では、図4に示すようにジョブ1が印刷処理中の場合、ジョブ1の定着制御温度はb℃であるため、状況46が“未処理”のジョブ2からジョブ5の中で定着制御温度がb℃で同一(差が0℃で最小)のジョブ3が選択される。なお、定着制御温度がb℃のジョブが複数存在している場合、印刷ジョブ到達順番41の若い順位を優先して選択するものとする。
【0056】
S4a:制御部は、現在印刷処理中の印刷ジョブが終了したか否かを判定し、終了したと判定すると処理をS5aへ移行し、処理中と判定すると処理をS2aへ移行する。
【0057】
なお、現在印刷処理中の印刷ジョブが終了するまでに新たな印刷ジョブを受信した場合、そのジョブは待ち行列40に格納され、S3aにおいてそのジョブの定着制御温度44は現在印刷処理中のジョブの定着制御温度と比較される。
【0058】
S5a:印刷処理中の印刷ジョブが終了すると制御部は、S3aにおいて選択された印刷ジョブを印刷レベル最高位の印刷ジョブとして印刷処理を行う。なお、S3aにおいて印刷ジョブが選択されなかった場合は、印刷ジョブ到達順番41の最も若い順位の印刷ジョブの印刷処理を行う。
【0059】
このようにして画像形成装置は、印刷処理中の定着制御温度との差が最小になる定着制御温度の印刷ジョブを選択し、印刷処理を待機している他の印刷ジョブに優先した順位で印刷処理を行う。
【0060】
図4に示す待ち行列40に格納されたジョブ2からジョブ5は、ジョブ1の次に上述したとおりジョブ3が印刷処理され、ジョブ3の後に定着制御温度b℃との差が最小となる定着制御温度a℃のジョブ4が印刷処理され、ジョブ4の後に定着制御温度c℃のジョブ5が印刷処理され、最後に定着制御温度d℃のジョブ2が印刷処理される。
【0061】
従来の印刷処理では、図6に示すようにジョブ1(61)の印刷処理が終了した後、定着制御温度をb℃からd℃に上昇させるため、定着部を過熱機構で過熱(ヒータON)する温度上昇待ち時間62を確保した後、ジョブ2(63)の印刷処理を行う。ジョブ2(63)の印刷処理が終了した後、定着制御温度をd℃からb℃に下降させるため、定着部を冷却機構で冷却(クールダウン)する温度下降待ち時間64を確保した後、ジョブ3(65)の印刷処理を行う。ジョブ3(65)の印刷処理が終了した後、定着制御温度をb℃からa℃に下降させるため、定着部を冷却機構で冷却(クールダウン)する温度下降待ち時間66を確保した後、ジョブ4(67)の印刷処理を行う。ジョブ4(67)の印刷処理が終了した後、定着制御温度をa℃からc℃に上昇させるため、定着部を過熱機構で過熱(ヒータON)する温度上昇待ち時間68を確保した後、ジョブ5(69)の印刷処理を行う。
【0062】
本実施例による印刷処理では、図6に示すようにジョブ1(61)の印刷処理が終了した後、定着制御温度(b℃)が同一のジョブ3(65)の印刷処理を行う。ジョブ3(65)の印刷処理が終了した後、定着制御温度をb℃からa℃に下降させるため、定着部を冷却機構で冷却(クールダウン)する温度下降待ち時間66を確保した後、ジョブ4(67)の印刷処理を行う。ジョブ4(67)の印刷処理が終了した後、定着制御温度をa℃からc℃に上昇させるため、定着部を過熱機構で過熱(ヒータON)する温度上昇待ち時間68を確保した後、ジョブ5(69)の印刷処理を行う。ジョブ5(69)の印刷処理が終了した後、定着制御温度をc℃からd℃に上昇させるため、定着部を過熱機構で過熱(ヒータON)する温度上昇待ち時間70を確保した後、ジョブ2(63)の印刷処理を行う。
【0063】
したがって、本実施例による印刷処理では、従来の印刷処理と比較して定着部の定着制御温度をb℃からc℃に上昇させる加熱の消費電力、およびd℃からb℃に下降させる冷却の消費電力を抑制することができる。
【0064】
また、従来の印刷処理と比較して定着部の加熱および冷却の回数を1回ずつ削減することができ、印刷処理時間を大幅に短縮することができる。
【0065】
このように印刷処理中の定着制御温度との差が最小になる定着制御温度のジョブを選択し、印刷処理を待機している他のジョブに優先した順位で印刷処理を行うことにより、消費電力を抑制することができるとともに印刷処理時間を短縮することができる。
【0066】
以上説明したように、第1の実施例では、印刷処理中の定着制御温度との差が最小になる定着制御温度のジョブを選択し、印刷処理を待機している他のジョブに優先した順位で印刷処理を行うことにより、画像形成装置の消費電力を抑制することができるという効果が得られる。
【0067】
また、定着部の加熱、冷却、加熱および冷却の回数を削減して印刷処理時間を短縮することができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0068】
第1の実施例では、印刷処理中の定着制御温度との差が最小になる定着制御温度の印刷ジョブを選択し、印刷処理を待機している他の印刷ジョブに優先した順位で印刷処理を行うようにしているため、上位装置からの印刷ジョブは必ずしも到着順に画像形成装置で処理されなくなり、印刷順序が印刷ジョブの到着順序と大幅に変動することも考えられる。
【0069】
そこで、第2の実施例では、上位装置から送信された印刷ジョブが画像形成装置で処理される順位を上位装置の表示部に表示させるオンラインモニタ機能および他の印刷ジョブに優先して印刷処理を行う機能を画像形成装置に備えた構成としている。
【0070】
なお、上述した第1の実施例の画像形成システムおよび画像形成装置の構成と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0071】
図7は第2の実施例における印刷情報確認画面の説明図である。
【0072】
この印刷情報確認画面は、図1における上位装置2のディスプレイ等の表示部に表示される画面であり、画像形成装置1としてのプリンタによる印刷処理を待機している印刷ジョブの画像形成順位としての印刷順序を表示するものである。
【0073】
例えば、図7に示すように印刷ジョブを識別するための情報としてのドキュメント情報毎に、その印刷ジョブを受信した受付時刻および第1の実施例で説明した消費電力を抑制する印刷処理の結果としての印刷順序を表示する。
【0074】
この印刷情報確認画面は、上位装置から画像形成順位を要求する情報を受信した画像形成装置が印刷ジョブを識別するための情報としてのドキュメント情報毎に、その印刷ジョブを受信した受付時刻および消費電力を抑制する印刷処理の結果としての印刷順序を当該上位装置に送信し、その上位装置が表示部に表示する。
【0075】
したがって、上位装置で印刷操作を行う操作者は、印刷情報確認画面で画像形成装置に溜まっている印刷ジョブの印刷順位を確認することができるようになっている。
【0076】
また、印刷情報確認画面により消費電力を抑制する印刷処理を行う省電力モードであり、複数の印刷ジョブが待ち行列を形成し、直ちに印刷することができない場合、操作者の操作による上位装置のプリンタドライバの印刷指示において、画像形成優先指示としての割込みモードを指定することで最上位の優先順位で印刷を行う印刷指示を受け付け、その割込みモードが指定された情報を含む印刷ジョブデータがその上位装置から画像形成装置へ送信される構成となっている。
【0077】
割込みモードが指定された情報を含む印刷ジョブデータを受信した画像形成装置の制御部は、印刷処理を待機している他の印刷ジョブに優先した印刷順位で印刷する印刷処理を行う構成となっている。
【0078】
上述した構成の作用について説明する。
【0079】
まず、上位装置は、操作者の操作を受付けて印刷情報確認画面を表示するための印刷情報を要求する指示を画像形成装置へ送信する。その指示を受信した画像形成装置は、印刷ジョブを識別するための情報としてのドキュメント情報毎に、その印刷ジョブを受信した受付時刻および消費電力を抑制する印刷処理の結果としての印刷順序からなる印刷情報を当該上位装置に送信する。その印刷情報を受信した上位装置は表示部に、例えば図7に示す印刷情報確認画面を表示する。
【0080】
印刷情報確認画面により消費電力を抑制する印刷処理を行う省電力モードであり、複数の印刷ジョブにより待ち行列が形成され、直ちに印刷することができない場合、操作者の操作により上位装置のプリンタドライバの印刷指示において、割込みモードを指定する。その割込みモードの指定を受付けた上位装置は、その割込みモードが指定された旨の情報を含む印刷ジョブデータを画像形成装置へ送信する。
【0081】
このように上位装置の表示部に印刷情報確認画面を表示することにより、上位装置で印刷操作を行う操作者は、表示された印刷情報確認画面で画像形成装置に溜まっている印刷ジョブの印刷順位を確認することができる。
【0082】
次に、割込みモードが指定された旨の情報を含む印刷ジョブデータを受信した画像形成装置の印刷処理を、図8の第2の実施例における印刷処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップに従い、図4を参照しながら説明する。
【0083】
S1b:画像形成装置1の制御部は、上位装置から印刷ジョブデータの受信を待機し、印刷ジョブデータを受信すると処理をS2bへ移行する。
【0084】
S2b:次に、制御部は、記憶部に記憶した印刷ジョブの待ち行列40を確認し、待ち行列40の状況46が“未処理”の印刷ジョブの存否を判定し、未処理の印刷ジョブが存在する場合、処理をS3bへ移行し、存在しない場合、処理をS6bへ移行する。
【0085】
S3b:制御部は、待ち行列40の状況46が“未処理”のすべての印刷ジョブの印刷ジョブデータを確認して割込みモードが指定された印刷ジョブデータの存否を判定し、割込みモードが指定された印刷ジョブデータが存在する場合、処理をS4bへ移行し、存在しない場合、処理をS5bへ移行する。
【0086】
S4b:制御部は、割込みモードが指定された印刷ジョブデータを待ち行列40の状況46が“未処理”の他の印刷ジョブに優先させた印刷順位として優先レベルが最高位となる印刷順位を付与して処理をS6bへ移行する。なお、割込みモードが指定された印刷ジョブデータが複数存在した場合、印刷ジョブ到達順番41の若い順に印刷順位を付与するものとする。
【0087】
S5b:制御部は、現在印刷処理中の印刷ジョブの定着制御温度と待ち行列40の状況46が“未処理”のすべての印刷ジョブの定着制御温度44とを比較し、その差が最小となる印刷ジョブを選択する。
【0088】
本実施例では、図4に示すようにジョブ1が印刷処理中の場合、ジョブ1の定着制御温度はb℃であるため、状況46が“未処理”のジョブ2からジョブ5の中で定着制御温度がb℃で同一(差が0℃で最小)のジョブ3が選択される。なお、定着制御温度がb℃のジョブが複数存在している場合、印刷ジョブ到達順番41の若い順位を優先して選択するものとする。
【0089】
なお、本実施例では、制御部は現在印刷処理中の印刷ジョブの定着制御温度と待ち行列40の状況46が“未処理”のすべての印刷ジョブの定着制御温度44とを順次比較し、その差が小さい順(昇順)に印刷順位をそれぞれの印刷ジョブに付与するものとする。この印刷順位は、上位装置へ送信する印刷情報の印刷順位となり、記憶部に記憶される。
【0090】
S6b:制御部は、現在印刷処理中の印刷ジョブが終了したか否かを判定し、終了したと判定すると処理をS7bへ移行し、処理中と判定すると処理をS2bへ移行する。
【0091】
なお、現在印刷処理中の印刷ジョブが終了するまでに新たな印刷ジョブを受信した場合、その印刷ジョブは待ち行列40に格納され、印刷ジョブデータに割込みモードが指定されているか否かの判定(S3b)やその印刷ジョブの定着制御温度44は現在印刷処理中の印刷ジョブの定着制御温度と比較(S5b)される。
【0092】
S7b:制御部は、S4bまたはS5bにおいて選択された印刷ジョブを印刷レベル最高位の印刷ジョブとして印刷処理を行う。なお、S4bまたはS5bにおいて印刷ジョブが選択されなかった場合は、印刷ジョブ到達順番41の最も若い順位の印刷ジョブの印刷処理を行う。
【0093】
このようにして画像形成装置は、印刷処理中の定着制御温度との差が最小になる定着制御温度の印刷ジョブを選択し、印刷処理を待機している他の印刷ジョブに優先した順位で印刷処理を行うとともに割込みモードが指定された情報を含む印刷ジョブデータを受信した場合、その印刷ジョブを他の印刷ジョブに優先した印刷順位で印刷する印刷処理を行う。
【0094】
したがって、画像形成装置は、消費電力を抑制しつつ早急に印刷すべき印刷ジョブが発生した場合、その印刷ジョブの印刷処理を優先させて処理することにより、緊急度の高い書類等を他の印刷ジョブに優先させて印刷することができるようになる。
【0095】
以上説明したように、第2の実施例では、第1の実施例の効果に加え、早急に印刷すべき印刷ジョブが発生した場合、その印刷ジョブの印刷処理を優先させて処理することにより、緊急度の高い書類等を他の印刷ジョブに優先させて印刷できるという効果が得られる。
【0096】
なお、第1の実施例および第2の実施例では、画像形成装置を電子写真方式のプリンタとして説明したが、それに限られることなく複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置としてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 画像形成装置
2 上位装置
3 通信回線
11 操作表示部
12 画像形成部
13 転写部
14 搬送ベルト
15 定着部
16 給紙トレイ
17 印刷媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に転写された現像剤像を熱定着させる定着部を備えた画像形成装置において、
複数の種類の記録媒体を収容する記録媒体収容部と、
前記記録媒体の種類を識別する種別情報に関連付けて該記録媒体毎の熱定着に必要な温度を定着温度として予め記憶する記憶部と、
前記記録媒体の種別情報を含む画像形成指示情報を受信する通信部と、
前記画像形成指示情報に含まれる前記記録媒体の種別情報に基づいて前記記録媒体収容部から給紙した記録媒体に現像剤像を転写し、該種別情報に基づいて前記記憶部から抽出した定着温度で熱定着させる画像形成処理を行う制御部とを設け、
前記制御部は、画像形成処理中に前記通信部で複数の前記画像形成指示情報を受信したとき、それぞれの画像形成指示情報に含まれる前記記録媒体の種別情報に基づいて前記記憶部から抽出したそれぞれの定着温度と該画像形成処理中の定着温度とを比較し、その差が最も小さい画像形成指示情報の画像形成処理を、前記処理中の画像形成処理が終了した後に行うようにしたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
前記制御部は、画像形成処理中に前記通信部で複数の前記画像形成指示情報を受信したとき、それぞれの画像形成指示情報に含まれる前記記録媒体の種別情報に基づいて前記記憶部から抽出したそれぞれの定着温度と該画像形成処理中の定着温度とを比較し、その差の昇順に画像形成順位をそれぞれの画像形成指示情報に付与して前記記憶部に記憶させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
前記通信部を、前記画像形成指示情報に加え、前記記憶部に記憶された画像形成順位の送信を要求する情報を受信するとともに該要求に応じてそれぞれの画像形成指示情報に付与された画像形成順位を送信する通信部とし、
前記制御部は、前記通信部が上位装置から受信した画像形成順位の要求に応じて前記記憶部に記憶されたそれぞれの画像形成指示情報に付与された画像形成順位を該上位装置へ送信し、該上位装置の表示部に画像形成指示情報毎の画像形成順位を表示させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3の画像形成装置において、
前記通信部は、他の画像形成指示情報に優先して画像形成処理を行わせる画像形成優先指示を含む前記画像形成指示情報を受信し、
前記制御部は、前記通信部が前記画像形成優先指示を含む画像形成指示情報を受信したとき、該画像形成指示情報の画像形成処理を前記記憶部に記憶された他の画像形成指示情報に優先して行うことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate