説明

画像形成装置

【課題】 手差し給紙機構を有する画像形成装置において、電源ON時に画像形成準備動作内で適切な動作を選択し、印字可能になるまでの時間を短縮し、ユーザビリティを向上する。
【解決手段】 手差し給紙口にセットされた用紙の給紙機構と給紙カセットなど他のタイプの給紙口から給紙された紙の搬送路と、を共通化した手差し給紙口を有する画像形成において、手差し給紙口から用紙を紙の搬送路途中まで給紙した情報を不揮発メモリに記憶する手差し状態記憶手段と、電源投入時、搬送路途中にて用紙有りを検出した場合、不揮発メモリに記憶された手差し状態記憶手段の情報に応じて、画像形成準備動作内で自動排紙手段の実行是非を判断することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やレーザプリンタ等の電子写真プロセスを用いた画像形成を行う、手差し給紙口を備えた画像形成装置、またはその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置における手差し給紙機構(たとえば、特許文献1を参照)は、手差し給紙用に独立した給紙機構を持たず、手差し給紙以外の紙の搬送路上にあるローラを用いて給紙する機構になっている。この構成は、給紙カセットなどの他のタイプの給紙口から給紙された用紙の搬送路と、手差し給紙口にセットされた用紙の給紙機構、とを共通化して、独立した手差し用紙の給紙機能を省略して、装置を小型化するために用いられる構成である。
【0003】
手差し給紙機構が設けられた画像形成装置では、他の給紙口から紙が給紙され、紙が画像記録装置内を搬送されている場合には手差し給紙口からの給紙は行えず、紙が搬送路上からなくなり、排紙された後に手差し給紙口の給紙を行わなくてはならない。また、手差し給紙口に用紙が挿入されている状況では、紙の搬送路に用紙があるため、他の給紙口からのプリントを行うことができない。
【0004】
特許文献2、および、特許文献3では、この手差し給紙口独特の特徴に起因する問題を、ユーザビリティを向上させる方法で解決することが可能な画像形成装置、およびその制御方法が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−132029号公報
【特許文献2】特開2006−062816号公報
【特許文献3】特開2006−160431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、手差し給紙機構が設けられた画像形成装置では、以下のような問題点が発生する。
【0007】
紙の搬送路と、手差し給紙口にセットされた用紙の給紙機構が共通化されているため、手差し給紙機構から給紙された用紙は、紙の搬送路の途中まで搬送される。この給紙済みの状態で、ユーザに電源をOFF/ONされると、画像形成装置は、紙の搬送路途中に用紙があることは検知できるものの、その用紙が手差し給紙機構から給紙されたかどうかは判別できなく、前回プリント中に電源を切られたと判断せざるを得ない。その結果、電源ON後の画像形成準備動作内で、用紙の自動排紙、および、機内のクリーニング動作を実行する必要が生じる。
【0008】
よって、手差し給紙機構から給紙された状態で、電源ONされると、画像形成準備動作の延長・画像形成準備動作中の駆動音の増大という問題を倦む。したがって、本発明は、手差し給紙機構が設けられた画像形成装置において、電源OFF/ONされた場合でも、本来は不要な動作を実施する必要を無くし、画像形成準備動作を従来より短縮し、ユーザビリティを向上させることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この問題を解決するために、本出題に係わる第1の発明は、
用紙の搬送路を利用して用紙給紙を行う手差し給紙機構と
その他の給紙機構と、を備えた画像形成装置において、
手差し給紙機構の用紙挿入部である手差し給紙口の用紙有無を検知する手差し給紙口紙検知手段と、
用紙の搬送路途中に設けた用紙の有無を検知する搬送路紙検知手段と、
前記手差し給紙口紙検知手段により用紙有りを検知すると、前記搬送路紙検知手段まで用紙を搬送する手差し給紙手段と、
前記手差し給紙手段による手差し給紙口における用紙の給紙状態を不揮発メモリに記憶する手差し状態記憶手段と、
電源投入時、前記搬送路紙検知手段にて用紙有りを検出した場合、用紙を装置外に排紙する自動排紙手段と、を備え、
手差し状態記憶手段は、前記手差し給紙手段により前記搬送路紙検知手段まで用紙を搬送したタイミングで不揮発メモリに手差し用紙給紙済みの状態であることを記憶し、
手差し状態記憶手段は、前記手差し給紙口から前記搬送路紙検知手段まで給紙済みの用紙を搬送再開したタイミングで不揮発メモリに手差し用紙未給紙の状態であることを記憶し、
電源投入時、前記搬送路紙検知手段にて用紙有りを検出した場合において、
前記手差し状態記憶手段が手差し給紙済みであることが記憶している場合に、
前記自動排紙手段を実行しないと判断することを特徴とする画像形成装置。
【0010】
この問題を解決するために、本出題に係わる第2の発明は、
用紙の搬送路を利用して用紙給紙を行う手差し給紙機構と
その他の給紙機構と、を備えた画像形成装置において、
手差し給紙機構の用紙挿入部である手差し給紙口の用紙有無を検知する手差し給紙口紙検知手段と、
用紙の搬送路途中に設けた用紙の有無を検知する搬送路紙検知手段と、
前記手差し給紙口紙検知手段により用紙有りを検知すると、前記搬送路紙検知手段まで用紙を搬送する手差し給紙手段と、
前記手差し給紙手段による手差し給紙口における用紙の給紙状態を不揮発メモリに記憶する手差し状態記憶手段と、
電源投入時、前記搬送路紙検知手段にて用紙有りを検出した場合、用紙を装置外に排紙する自動排紙手段と、
ユーザに手差し給紙口に用紙有りであることを報知するユーザ報知手段と、
ユーザに手差し給紙口に給紙済みの用紙を自動排紙するかどうかを選択するユーザ選択手段と、をさらに備え、
手差し状態記憶手段は、前記手差し給紙手段により前記搬送路紙検知手段まで用紙を搬送したタイミングで不揮発メモリに手差し用紙給紙済みの状態であることを記憶し、
手差し状態記憶手段は、前記手差し給紙口から前記搬送路紙検知手段まで給紙済みの用紙を搬送再開したタイミングで不揮発メモリに手差し用紙未給紙の状態であることを記憶し、
電源投入時、前記搬送路紙検知手段にて用紙有りを検出した場合において、
前記手差し状態記憶手段が手差し給紙済みであることが記憶している場合に、
前記ユーザ選択手段からの情報に応じ、前記自動排紙手段の実行是非を判断することを特徴とする画像形成装置。
【0011】
この問題を解決するために、本出題に係わる第3の発明は、
用紙の搬送路を利用して用紙給紙を行う手差し給紙機構と
その他の給紙機構と、を備えた画像形成装置において、
手差し給紙機構の用紙挿入部である手差し給紙口の用紙有無を検知する手差し給紙口紙検知手段と、
用紙の搬送路途中に設けた用紙の有無を検知する搬送路紙検知手段と、
前記手差し給紙口紙検知手段により用紙有りを検知すると、前記搬送路紙検知手段まで用紙を搬送する手差し給紙手段と、
前記手差し給紙手段による手差し給紙口における用紙の給紙状態を不揮発メモリに記憶する手差し状態記憶手段と、
電源投入時、前記搬送路紙検知手段にて用紙有りを検出した場合、用紙を装置外に排紙する自動排紙手段と、
時刻情報を取得する時刻取得手段と、
手差し状態記憶手段は、前記手差し給紙手段により前記搬送路紙検知手段まで用紙を搬送したタイミングで手差し用紙給紙済みの状態であることと手差し用紙給紙済みの状態になった時刻を不揮発メモリに記憶し、
手差し状態記憶手段は、前記手差し給紙口から前記搬送路紙検知手段まで給紙済みの用紙を搬送再開したタイミングで不揮発メモリに手差し用紙未給紙の状態であることを記憶し、
電源投入時、前記搬送路紙検知手段にて用紙有りを検出した場合において、
前記手差し状態記憶手段が手差し給紙済みであることが記憶している場合に、
前記給紙時刻記憶手段から用紙が手差し給紙状態にある手差し給紙後経過時間を求め、
前記手差し給紙後経過時間があらかじめ定められた時間より大きいかどうかで、前記自動排紙手段の実行是非を判断することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、電源ON後、用紙搬送路途中にある用紙がある場合に、不揮発メモリに記憶しておいた手差し給紙機構からの用紙の給紙状態に応じて、手差し給紙機構から給紙された用紙であるかどうかを適切に判断できる。その判断結果から、画像形成準備動作時の自動排紙動作の是非を決定し、不必要な自動排紙動作を省略することが可能になる。そのため、本発明によれば、電源ON時から印字開始可能な状態になる時間を短縮することができ、ユーザビリティを向上することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施例に係る画像形成装置の構成を説明する図。
【図2】本発明の第1の実施例に係る画像形成装置の制御に関わるブロック図。
【図3】従来例に係る画像形成準備動作のフローチャート。
【図4】本発明の第1の実施例に係る手差し給紙口からの給紙制御に関わるフローチャート。
【図5】本発明の第1の実施例に係る手差し給紙口からのプリント制御に関わるフローチャート。
【図6】本発明の第1の実施例に係る画像形成準備動作のフローチャート。
【図7】本発明の第2の実施例に係る画像形成装置の給紙部構成を説明する図。
【図8】本発明の第2の実施例に係る画像形成準備動作のフローチャート。
【図9】本発明の第2の実施例に係るユーザに手差し給紙口に残留している用紙の扱いを選択させる一例であるユーザーインタフェース図。
【図10】本発明の第3の実施例に係る手差し給紙口からの給紙制御に関わるフローチャート。
【図11】本発明の第3の実施例に係る画像形成準備動作のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例1)
まず、カラー電子写真画像形成装置の全体構成について、図1を参照して概略を説明する。本実施例に示す画像形成装置は電子写真画像形成プロセス利用のレーザープリンタである。
【0015】
画像形成装置の給紙部は、用紙を積載する給紙カセット14と用紙の搬送方向を変更する用紙搬送ガイド15と用紙を転写部に搬送するためのレジストローラ対16が配置されている。そして、レジストローラ対16下流部に用紙の搬送を検知するためのレジストセンサ110(搬送路紙検知手段に該当)が設置されている。
【0016】
また、レジストローラ対16近傍には、手差し給紙口113が設けられ、手差し給紙口113には、用紙の挿入を検知するための手差しセンサ112が設置されている。
【0017】
また、画像形成装置は、イエロー色の画像を形成する画像形成部1aと、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部1bと、シアン色の画像を形成する画像形成部1cと、ブラック色の画像を形成する画像形成部1dの4つの画像形成部(画像形成ユニット)を備えており、これらの4つの画像形成部1a、1b、1c、1dは一定の間隔をおいて一列に配置されている。各画像形成部1a、1b、1c、1dには、それぞれ像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、感光体ドラムという)2a、2b、2c、2dが設置されている。各感光体ドラム2a、2b、2c、2dの周囲には、帯電器3a、3b、3c、3d、現像装置4a、4b、4c、4d、ドラムクリーニング装置5a、5b、5c、5dがそれぞれ設置されており、帯電器3と現像装置4間の上方には露光装置、6a、6b、6c、6dがそれぞれ設置されている。各現像装置4a、4b、4c、4dには、それぞれイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーが収納されている。各感光体ドラム2a、2b、2c、2dは、負帯電のOPC感光体でアルミニウム製のドラム基体上に光導電層を有しており、駆動装置(不図示)によって矢印方向(反時計回り)に所定のプロセススピードで回転駆動される。帯電手段としての帯電器3a、3b、3c、3dは、帯電バイアス電源(不図示)から印加される帯電バイアスによって各感光体ドラム2a、2b、2c、2d表面を負極性の所定電位に均一に帯電する。 現像装置4a、4b、4c、4dは、それぞれ感光体ドラム2a、2b、2c、2d上に形成される各静電潜像に各色のトナーを付着させてトナー像として現像(可視像化)する。現像装置4a、4b、4c、4dによる現像方法としては、例えばトナー粒子に対して磁性キャリアを混合したものを現像剤として用いて磁気力によって搬送し、各感光体ドラム2a、2b、2c、2dに対して接触状態で現像する2成分接触現像法を用いることができる。転写手段としての転写ローラ7a、7b、7c、7dは弾性部材で構成されており、各転写のニップ部にて無端ベルト状の用紙搬送ベルト(以下、転写ベルトという)8を介して各感光体ドラム2a、2b、2c、2dに当接している。尚、ここでは転写手段として、転写ローラ7を使用したが、トナー像を用紙に転写する際に高圧が印加され、かつ転写ベルト8に対して当接する転写ブレードとしてもよい。ドラムクリーニング装置5a、5b、5c、5dは、感光体ドラム2a、2b、2c、2d表面にそれぞれ残った転写残トナーを除去して回収する。露光装置6a、6b、6c、6dは、画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザ光がレーザ出力部(不図示)から出力され、高速回転するポリゴンミラー(不図示)等を介して各感光体ドラム2a、2b、2c、2d表面を露光することにより、各帯電器3a、3b、3c、3dで帯電された各感光体ドラム2a、2b、2c、2d表面に画像情報に応じた各色の静電潜像を形成する。転写ベルト8は、駆動ローラ9、テンションローラ10間に張架されており、駆動ローラ9の駆動によって矢印方向(反時計回り)に回転(移動)される。転写ベルト8は、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルム等のような誘電体樹脂によって構成されている。
【0018】
また転写ベルト8の用紙搬送方向の下流側には、熱源を内包する定着フィルム11と加圧ローラ12を有する定着装置13が設置されている。定着器の下流には、用紙の機外への排出を検知するための排紙センサ111、と用紙を排出するための排紙ローラ対17が設置されている。
【0019】
図2は本実施形態における画像形成装置の制御ブロック図である。図2を利用して、手差し給紙口113からの一連のプリントの流れを説明する。
【0020】
まず、給紙動作を説明する。
【0021】
制御部102は手差しセンサ112で用紙有りを検出すると、給紙制御部107に対して、給紙モータ115の駆動指示を出し、手差し給紙口113からの用紙の給紙動作を行う。制御部102は、その間、レジストセンサ110の用紙有無を監視し、用紙有りを検出すると、給紙制御部107に対して、給紙モータ115の停止指示を出し、手差し給紙口113からの給紙動作を終了する。用紙は、図1のレジストローラ対16に保持した状態で止められている。
【0022】
次いで、プリント動作は、以下の流れで行われる。
【0023】
画像形成装置本体101はホストコンピュータ104と直接またはネットワークにて接続される。ホストコンピュータ104にて作成された印刷データはコントローラ103が受信し、画像信号に変換する。コントローラ103は制御部102に状態を問い合わせ、印刷可能状態であることを確認した後、制御部102に印刷開始の指示を出す。印刷開始指示を受けた制御部102は接続された搬送制御部105、定着駆動制御部106、光学部117a、117b、117c、117d、ドラム駆動制御部108、及び給紙制御部107を制御して、各負荷を起動するなどの印刷準備を開始する。
【0024】
ベルト駆動制御部105は、ベルト駆動モータ113を駆動することによって、図1の駆動ローラ9転写ローラ7a、7b、7c、7dの駆動を制御する。定着駆動制御部106は、定着モータ114を駆動することによって、図1の定着器13及び排紙ローラ対17の駆動を制御する。給紙制御部107は、給紙モータ115を駆動することによって、図1のレジストローラ対16の駆動を制御する。ドラム駆動制御部108は、ドラムモータ116a、116b、116c、116dを駆動することによって、図1の画像形成部1a、1b、1c、1dの駆動を制御する。
【0025】
印刷準備が完了すると、制御部102が給紙制御部107に給紙指示を出すことにより、レジストローラ対16位置にて待機している用紙の再給紙動作を開始する。
【0026】
この時、制御部102は、画像形成中状態に遷移し、画像形成中状態に遷移したことをコントローラ103に報知する。そして、制御部102は所定時間後に印字開始信号をコントローラ103に送出する。印字開始信号を受信したコントローラ103は、印字開始信号に同期して画像信号を出力する。
【0027】
コントローラ103が出力した画像信号は、光学部117によって、レーザビームのオンオフ信号に変調され、感光体ドラム2上に露光される。用紙が搬送路に沿って搬送されるに伴い、用紙上にカラー画像が形成される。画像形成プロセスが正常に終了し、排紙センサ112にて用紙の後端が検出された場合、制御部102は印刷が正常に終了したと判断し、再び画像形成可能状態になったことをコントローラ103に報知する。
【0028】
給紙カセット14からプリントする場合は、以下の流れである。
【0029】
印刷準備が完了すると、制御部102が給紙制御部107に給紙指示を出し、給紙モータ115が駆動して、さらに不図示のピックアップソレノイドをON/OFFすると、給紙カセット14から用紙が給紙開始される。給紙された用紙の先端がレジストセンサ110によって検出されると、制御部102は所定時間後に印字開始信号をコントローラ103に送出する。以下の流れは、手差し給紙口113からのプリント動作と同様である。
【0030】
手差し給紙口113は、給紙カセット14からの用紙の搬送路上に待機させるため、手差し給紙済みの状態では、給紙カセット14からのプリントを指示することは実行不可能である。
【0031】
このような構成において、従来、電源OFF/ON時に、以下のような問題点があった。
【0032】
ユーザが手差し給紙口113に用紙を入れた状態で、電源のOFF/ONを行った場合、制御部102は、レジストセンサ110が紙有りであることが、プリント途中で電源を切られた状況か、手差し給紙口113にて給紙済みの状態で電源を切られた状況のいずれかの状況を示すのか判断がつかない。プリント途中で電源を切られた場合は、用紙先端がどの位置にいるかが不定であるため、その用紙は使用できず、機外に自動排紙する必要がある。つまり、いずれかの状況が判断できない時、制御部102は、プリント途中で電源を切られたと判断せざるを得ず、用紙の機外排出を行う必要が生じる。
【0033】
結局、従来例としての手差し給紙済み状態での電源ON時の画像形成装置の動作は、図3のフローチャートに示すようになる。電源ONされると(S100)、画像形成装置は、レジストセンサ110が紙有りであるかどうか判断し(S102)、紙有りであれば、レジストセンサ110にある用紙の自動排紙を行う(S103)。また、プリント途中で電源を切られた場合は、転写ベルト8がトナーで汚れている可能性があるため、自動排紙の後、転写ベルト8のクリーニング動作を行う(S104)。クリーニング終了後、スタンバイに移行する(S105)。レジストセンサ110が紙有りでなければ(S102)、そのままスタンバイに移行する。
【0034】
上記のような構成にした場合、ユーザが手差し給紙口113に用紙を入れた状態で電源OFF/ONした場合、必ず、用紙の自動排出、および、クリーニング動作を実施してしまう。すなわち、電源ON時に不必要な準備動作を行うことになり、ユーザの利便性を損なっていた。
【0035】
本実施例は、上記従来技術を鑑み、手差し給紙の状態を不揮発メモリに記憶することにより、電源ON直後でも正確に手差し給紙の状態を画像形成装置が把握し、無駄な電源ON時の準備動作を省略するというものである。
【0036】
まず、本実施例の手差し給紙口113からの給紙動作のフローチャートを、図4に示す。
【0037】
スタンバイ状態にて(S300)、手差しセンサ112で用紙有りを監視する(S301)。用紙無しであれば監視を継続する。用紙有りを検出すると、給紙モータ115を駆動し、手差し給紙口113からの用紙の給紙動作を行う(S302)。そして、レジストセンサ110の用紙有無を監視する(S303)。用紙有りを検出すると、給紙モータ115を停止させる(S305)。給紙が終了すると、不揮発メモリ制御部120に対して、手差し給紙口の給紙状態が給紙済み状態であることを不揮発メモリ121に書き込み指示を出す(S305)。
【0038】
ついで、手差し給紙済みの用紙に対して印字するための再給紙動作のフローチャートを、図5に示す。
【0039】
手差し給紙済み状態にて(S400)、プリント指示を待ちつづける(S401)。プリント指示を受けると、給紙モータ115を再駆動し、手差し給紙口113から既にレジストローラ対16まで給紙済みの用紙の搬送を再開する(S402)。その直後、不揮発メモリ制御部120に対して、手差し給紙口の給紙状態が未給紙状態であることを不揮発メモリ121に書き込み指示を出す(S404)。その後、上述した流れに従い、印字動作を行い(S404)、印字終了後、スタンバイに移行する(S405)。
【0040】
プリント指示による再給紙動作の時だけでなく、用紙を引き抜かれた場合も同様に、不揮発メモリに手差し給紙が未給紙状態であることを書き込む。
【0041】
そして、不揮発メモリに格納された手差し給紙口の給紙状態に応じた電源ON時のフローチャートを図6に示す。
【0042】
電源ONされると(S200)、画像形成装置は、不揮発メモリ121から手差し給紙口の給紙状態を読み込む(S202)。手差し給紙口の給紙状態が給紙済み状態であるかどうか判断する(S203)。給紙済み状態であれば、レジストセンサ用紙有りかどうかを判断する(S204)。用紙有りであれば、手差し給紙口から給紙された用紙がそのままレジストローラ対位置にあると判断して、スタンバイに移行する(S210)。S204にて、レジストセンサに用紙無しであれば、用紙が電源OFF中に引き抜かれたと判断し、不揮発メモリ制御部120に対して、手差し給紙口の給紙状態が未給紙状態であることを不揮発メモリ121に書き込み指示を出し(S205)、スタンバイに移行する。S203にて、手差し給紙口の給紙状態が給紙済み状態でない(未給紙状態である)ならば、レジストセンサ用紙有りかどうかを判断する(S206)。レジストセンサ110が紙有りであれば、レジストセンサ110にある用紙の自動排紙を行う(S207)。自動排紙の後、転写ベルト8のクリーニング動作を行う(S209)。クリーニング終了後、スタンバイに移行する(S210)。S206にて、レジストセンサ110が紙有りでなければ、そのままスタンバイに移行する(S210)。
【0043】
したがって、このフローチャートのように不揮発メモリの情報に従うことで、手差し給紙口から紙が入れられた状態で、電源をOFF/ONされた場合でも、無駄に自動排紙やクリーニングを実行しなくなり、スタンバイに移行し、プリント可能になるまでの時間が短縮される。
【0044】
以上が本実施例1の実施形態である。本実施形態を採ることにより、電源ON時にレジストセンサが紙有りである場合に、手差し給紙口から用紙を給紙された状況を正確に判断できるようになり、不要な準備動作を行わなくなり、電源ONからプリント可能になるまでの時間の短縮を実現できる。
【0045】
(実施例2)
次に、本発明の第2の実施例について説明する。尚、第1の実施例と同様の構成に関しては、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0046】
第2の実施例は、電源ON時に手差し給紙口に用紙が入れられていることと判断した場合に、ユーザがその用紙を利用するかどうかを選択した結果に基づいて、動作を決定する例である。
【0047】
本実施例の給紙部を図7に示す。なお、第1の実施例と同一の用途の部品に関しては、同一符号を付してある。また、画像形成部は、第1の実施例と同様の構成であり、説明を省略する。
【0048】
用紙を積載する給紙カセット14と用紙を転写部に搬送するためのレジストローラ対16が配置されている。そして、レジストローラ対16下流部に用紙の搬送を検知するためのレジストセンサ110が設置されている。また、転写部の反対側に、手差し給紙口113が設けられ、手差し給紙口113には、用紙の挿入を検知するための手差しセンサ112が設置されている。手差し給紙口からレジストローラ対16まで用紙を搬送するための手差し搬送ローラ114、115が設定されている。
【0049】
本実施例の給紙部構成では、手差し給紙口からレジストローラ対までの位置が離れているため、手差し給紙口から用紙を給紙した状態で、ユーザから給紙済みの用紙が見えなくなる可能性がある。よって、ユーザが手差し給紙口に用紙を入れた状態で電源OFF/ONしても、ユーザが手差し給紙口に用紙が残っていることに気づかない可能性がある。本実施例は、この問題を解決するためのものである。
【0050】
本実施例の不揮発メモリに格納された手差し給紙口の給紙状態に応じた電源ON時のフローチャートを図8に示す。
【0051】
電源ONされると(S500)、画像形成装置は、不揮発メモリ121から手差し給紙口の給紙状態を読み込む(S502)。手差し給紙口の給紙状態が給紙済み状態であるかどうか判断する(S503)。給紙済み状態であれば、レジストセンサ用紙有りかどうかを判断する(S504)。用紙有りであれば、手差し給紙口から給紙された用紙がそのままレジストローラ対位置にあると判断する。用紙が残留していると判断すると、画像形成装置は、表示パネル118において、図9に示すようなウィンドウを表示し、手差し給紙口に用紙が残留していることを報知し、残留している用紙を継続して利用するか否かの判断を促す(S505)。ユーザの選択結果を確認し(S506)、ユーザが手差し給紙口の用紙を利用すると選択した場合は、スタンバイに移行する(S513)。ユーザがその用紙を利用しないと選択した場合は、自動排紙を行い(S507)、不揮発メモリ制御部120に対して、手差し給紙口の給紙状態が未給紙状態であることを不揮発メモリ121に書き込み指示を出し(S507)、スタンバイに移行する。なお、この場合は、プリント途中の電源OFFではないと判断できるため、クリーニングは実施する必要がない。S504にて、レジストセンサに用紙無しであれば、用紙が電源OFF中に引き抜かれたと判断し、不揮発メモリ制御部120に対して、手差し給紙口の給紙状態が未給紙状態であることを不揮発メモリ121に書き込み指示を出し(S508)、スタンバイに移行する。S503にて、手差し給紙口の給紙状態が給紙済み状態でない(未給紙状態である)ならば、レジストセンサ用紙有りかどうかを判断する(S509)。レジストセンサ110が紙有りであれば、レジストセンサ110にある用紙の自動排紙を行う(S510)。自動排紙の後、転写ベルト8のクリーニング動作を行い(S512)、スタンバイに移行する(S513)。S509にて、レジストセンサ110が紙有りでなければ、そのままスタンバイに移行する(S513)。
【0052】
本実施例では、手差し給紙口給紙済みと判断した場合に、用紙の利用有無をユーザに選択できるようにすることによって、ユーザが用紙を手差し給紙口から取り忘れた場合に適切に対応できるようになる。手差し給紙口から搬送路まで給紙する距離が長く、ユーザから手差し給紙口に用紙がセットされていることを見落とす可能性のある画像形成装置で有用である。
【0053】
(実施例3)
次に、本発明の第3の実施例について説明する。尚、第1の実施例と本実施例の画像形成装置は、第1の実施例と同様の構成であり、その説明を省略する。
【0054】
手差し給紙口から給紙した場合は、レジストローラ対に用紙先端をニップされた状態で維持される。長時間レジストローラ対に用紙をニップされつづけると、用紙先端が座屈してしまい、その用紙に対して印字すると画像不良等の不都合が発生する可能性がある。本実施例は、この問題を解決するためのものである。
【0055】
まず、本実施例の手差し給紙口113からの給紙動作のフローチャートを、図10に示す。
【0056】
スタンバイ状態にて(S700)、手差しセンサ112で用紙有りを監視する(S701)。用紙無しであれば監視を継続する。用紙有りを検出すると、給紙モータ115を駆動し、手差し給紙口113からの用紙の給紙動作を行う(S702)。そして、レジストセンサ110の用紙有無を監視する(S703)。用紙有りを検出すると、給紙モータ115を停止させる(S705)。給紙が終了すると、不揮発メモリ制御部120に対して、手差し給紙口の給紙状態が給紙済み状態であることを不揮発メモリ121に書き込み指示を出す(S705)。次に、制御部102は、コントローラ103を通じ、ホストコンピュータ104からその時点の時刻を取得し(S705)、その時刻情報を不揮発メモリに書き込む(S706)。
【0057】
次いで、手差し給紙済みの用紙に対して印字するための再給紙動作は、第1の実施例と同様であるため、省略する。
【0058】
本実施例の不揮発メモリに格納された手差し給紙口の給紙状態に応じた電源ON時のフローチャートを図11に示す。
【0059】
電源ONされると(S600)、画像形成装置は、時刻情報を取得し(S601)、次いで、不揮発メモリ121から手差し給紙口の給紙状態と手差し給紙済みになった時刻情報を読み込む(S602)。次に、手差し給紙口の給紙状態が給紙済み状態であるかどうか判断する(S603)。給紙済み状態であれば、レジストセンサ用紙有りかどうかを判断する(S604)。用紙有りであれば、手差し給紙口から給紙された用紙がそのままレジストローラ対位置にあると判断する。用紙が残留していると判断すると、画像形成装置は、取得した時刻情報と不揮発メモリに記憶されていた時刻情報に基づいて、手差し給紙されてからの経過時間を算出する(S605)。そして、算出した経過時間があらかじめ定められている閾値の時間より大きいか否かの判断をする(S605)。経過時間が閾値より小さければ、スタンバイに移行する(S613)。経過時間が閾値より大きければ、自動排紙を行い(S607)、不揮発メモリ制御部120に対して、手差し給紙口の給紙状態が未給紙状態であることを不揮発メモリ121に書き込み指示を出し(S607)、スタンバイに移行する(S613)。なお、この場合は、プリント途中の電源OFFではないと判断できるため、クリーニングは実施する必要がない。S604にて、レジストセンサに用紙無しであれば、用紙が電源OFF中に引き抜かれたと判断し、不揮発メモリ制御部120に対して、手差し給紙口の給紙状態が未給紙状態であることを不揮発メモリ121に書き込み指示を出し(S608)、スタンバイに移行する。S603にて、手差し給紙口の給紙状態が給紙済み状態でない(未給紙状態である)ならば、レジストセンサ用紙有りかどうかを判断する(S609)。レジストセンサ110が紙有りであれば、レジストセンサ110にある用紙の自動排紙を行う(S610)。自動排紙の後、転写ベルト8のクリーニング動作を行い(S612)、スタンバイに移行する(S613)。S509にて、レジストセンサ110が紙有りでなければ、そのままスタンバイに移行する(S613)。
【0060】
本実施例では、不揮発メモリに手差し給紙の状態と手差し給紙を行った時刻を記憶することにより、手差し給紙口給紙済みであるかどうかの判断だけでなく、手差し給紙済みの用紙を使用していいかどうかの判断が適切に実行可能になる。これにより、長時間放置による画像不良等への不都合へ対処可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1a、1b、1c、1d 画像形成部
2a、2b、2c、2d 感光体ドラム
3a、3b、3c、3d 帯電器
4a、4b、4c、4d 現像装置
5a、5b、5c、5d ドラムクリーニング装置
6a、6b、6c、6d 露光装置
7a、7b、7c、7d 転写ローラ
8 転写ベルト
9 駆動ローラ
10 テンションローラ
11 定着フィルム
12 加圧ローラ
13 定着装置
14 給紙カセット
15 用紙搬送ガイド
16 レジストローラ対
17 排紙ローラ対
101 画像形成装置本体
102 制御部
104 ホストコンピュータ
103 コントローラ
105 搬送制御部
106 定着駆動制御部
107 給紙制御部
108 ドラム駆動制御部
110 レジストセンサ
111 排紙センサ
112 手差しセンサ
113 手差し給紙口
113 ベルト駆動モータ
114 定着モータ
115 給紙モータ
116a、116b、116c、116d ドラムモータ
117a、117b、117c、117d 光学部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙の搬送路を利用して用紙給紙を行う手差し給紙機構と
その他の給紙機構と、を備えた画像形成装置において、
手差し給紙機構の用紙挿入部である手差し給紙口の用紙有無を検知する手差し給紙口紙検知手段と、
用紙の搬送路途中に設けた用紙の有無を検知する搬送路紙検知手段と、
前記手差し給紙口紙検知手段により用紙有りを検知すると、前記搬送路紙検知手段まで用紙を搬送する手差し給紙手段と、
前記手差し給紙手段による手差し給紙口における用紙の給紙状態を不揮発メモリに記憶する手差し状態記憶手段と、
電源投入時、前記搬送路紙検知手段にて用紙有りを検出した場合、用紙を装置外に排紙する自動排紙手段と、を備え、
前記手差し状態記憶手段の情報に応じて、前記自動排紙手段の実行是非を判断することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の手差し状態記憶手段は、前記手差し給紙手段により前記搬送路紙検知手段まで用紙を搬送したタイミングで不揮発メモリに手差し用紙給紙済みの状態であることを記憶することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1記載の手差し状態記憶手段は、前記手差し給紙口から前記搬送路紙検知手段まで給紙済みの用紙を搬送再開したタイミングで不揮発メモリに手差し用紙未給紙の状態であることを記憶することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の画像形成装置は、
電源投入時、前記搬送路紙検知手段にて用紙有りを検出した場合において、
前記手差し状態記憶手段が手差し給紙済みであることを記憶している場合に、
前記自動排紙手段を実行しないと判断することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至3の画像形成装置は、
電源投入時、前記搬送路紙検知手段にて用紙有りを検出した場合において、
前記手差し状態記憶手段が手差し給紙済みであることを記憶している場合に、
ユーザに手差し給紙口に用紙有りであることを報知するユーザ報知手段と、
ユーザに手差し給紙口に給紙済みの用紙を自動排紙するかどうかを選択するユーザ選択手段と、をさらに備え、
前記ユーザ選択手段からの情報に応じ、前記自動排紙手段の実行是非を判断することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至3の画像形成装置は、
時刻情報を取得する時刻取得手段と、
手差し用紙給紙済みの状態になった時刻を不揮発メモリに記憶する給紙時刻記憶手段と、
電源投入時に、前記給紙時刻記憶手段から用紙が手差し給紙状態にある経過時間を求める経過時間決定手段と、をさらに備え、
電源投入時、前記搬送路紙検知手段にて用紙有りを検出した場合において、
前記手差し状態記憶手段が手差し給紙済みであることを記憶している場合、
前記手差し給紙計測時間の手差し給紙後経過時間があらかじめ定められた時間と比較した結果に基づき、前記自動排紙手段の実行是非を判断することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−280452(P2010−280452A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133028(P2009−133028)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】