説明

画像形成装置

【課題】画質劣化の抑制される画像形成装置を提供する。
【解決手段】一次転写ロール105a〜105dの体積抵抗率の常用対数値が7LogΩ・cm以上8.5LogΩ・cm以下であり、中間転写ベルト107が厚み方向に積層された複数の層からなり、且つ該複数層の内の少なくとも最も内周面側の最内層の表面抵抗率の常用対数値が、最も外周面側の最外層の表面抵抗率の常用対数値より小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した画像形成装置では、従来、電子写真感光体などの像保持体に静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーにより現像し、得られたトナー像を無端ベルトである中間転写ベルト上に静電気的に転写(一次転写工程)した後、転写紙などの被転写媒体上に再度転写(二次転写工程)して画像を形成する画像形成装置が知られている。特に、異なる複数色のトナー像を重ねることでフルカラー画像を得る方式(タンデム方式)の画像形成装置においては、中間転写ベルトが好適に用いられている。この種の画像形成装置においては、導電性を有する中間転写ベルトが広く用いられてきた。
【0003】
中間転写ベルトにおいては、長期に渡り安定して良好な出力画像を得るために、可撓性や耐折性、引張り破断強度などの機械的強度と共に、表面抵抗率や体積抵抗率などの電気的特性が重要である。
例えば、中間転写ベルト外周面の表面抵抗率の常用対数値を8LogΩ/□以上12LogΩ/□以下、内周面の表面抵抗率の常用対数値を5LogΩ/□以上10LogΩ/□以下とする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、中間転写体の表面抵抗率の常用対数値を10LogΩ/□以上14LogΩ/□以下、体積抵抗率の常用対数値を13LogΩ・cm以下とし、かつ表面抵抗率を10Ω/□、体積抵抗率を10Ω・cmで表したときX≦Yとする技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、特許文献3には、感光体ドラム上のトナー像を転写ロールによって単層で構成された高抵抗の中間転写ベルト上に転移させる一次転写工程において、中間転写ベルトを挟んだ感光体ドラムに対し最下流の転写ニップ位置に一次転写ロールを配置して高画質化を図る技術が開示されている。
【特許文献1】特開平8−30109号公報
【特許文献2】特開2004−46277号公報
【特許文献3】特開2005−189563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一次転写工程においては、中間転写ベルトの内周面側に接触配置された一次転写ロールと中間転写ベルトを介して対向配置された像保持体との間の一次転写領域において、像保持体上のトナー像を構成する各トナーが中間転写ベルト側へ移行することで、該トナー像が中間転写ベルトへ転写される。この一次転写工程においては、中間転写ベルトの内周面に接触配置された転写ロールと、中間転写ベルトの内周面と、の間における剥離放電によって中間転写ベルトの帯電量が増大することで、像保持体から中間転写ドラムへ転写されるトナーの飛び散りや、凝集等が発生する場合があり、画質劣化が懸念されていた。具体的には、中間転写ベルト内周面に接触配置された転写ロールと中間転写ベルト裏面とにおいて放電が発生することで、中間転写ベルト外周面上のトナー像が乱れ、これにより画質劣化が発生する場合があった。
【0006】
このような現象は、特に、中間転写ベルトを介して対向配置された像保持体と一次転写ロールとのズレが大きいほど発生しやすい傾向にあるが、この一次転写ロールの取り付け位置には装置製造時におけるバラツキ等によりズレが生じる場合があり、改善が期待されていた。
【0007】
本発明は、画質劣化の抑制される画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、
静電潜像を形成される像保持体と、
前記像保持体上に形成された前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体上の前記トナー像が転写されると共に該転写されたトナー像を保持する中間転写ベルトと、
前記像保持体との間で前記中間転写ベルトを挟持するように前記中間ベルトの内周面に接触配置され、前記トナー像を前記像保持体から前記中間転写ベルトへ転写する一次転写ロールと、
前記中間転写ベルト上に保持された前記トナー像を記録媒体へ転写する二次転写ロールと、
を備え、
前記一次転写ロールの体積抵抗率の常用対数値が7LogΩ・cm以上8.5LogΩ・cm以下であり、
前記中間転写ベルトが厚み方向に積層された複数の層からなり、且つ該複数層の内の少なくとも最も内周面側の最内層の表面抵抗率の常用対数値が、最も外周面側の最外層の表面抵抗率の常用対数値より小さい画像形成装置である。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記中間転写ベルトは、下記式(1)〜式(3)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置である。
【0010】
11.6 LogΩ/□≦ρs≦14.0 LogΩ/□ (1)
10.3 LogΩ・cm≦ρv≦14.0 LogΩ・cm (2)
9.8 LogΩ/□≦ρexs≦13.4 LogΩ/□ (3)
【0011】
上記式(1)〜式(3)中、ρsは前記中間転写ベルトの前記最外層の表面抵抗率の常用対数値を示し、ρvは前記中間転写ベルトの体積抵抗率の常用対数値を示し、ρexsは前記中間転写ベルトの内周面極表面の沿面抵抗率の常用対数値をそれぞれ表す。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記最外層と前記最内層とが、下記式(4)を満たすことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置である。
【0013】
1.2≦du/dl≦4.0 (4)
上記式(4)中、duは最外層の膜厚(μm)を、dlは最内層の膜厚(μm)を、それぞれ表す。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、中間転写ベルトの最外層の表面抵抗率の常用対数値を最内層に比べて小さくし、且つ一次転写ローラの体積抵抗値を請求項1に記載の範囲としなかった場合に比べて、中間転写ベルトの内周面と一次転写ロールとの剥離放電が抑制され、この剥離放電に起因する画質劣化が抑制される、という効果を奏する。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、本発明の構成を有さない場合に比べて、中間転写ベルトの内周面に接触される二次転写ロールと中間転写ベルトを挟持して対向するバックアップロールとのギャップ放電が抑制され、二次転写時における画質劣化も抑制され、更なる画質劣化の抑制が図れる、という効果を奏する。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、本発明の構成を有さない場合に比べて、更に二次転写ロールによる二次転写時における画像欠陥が抑制され、更なる画質劣化の抑制が図れる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して好ましい実施形態について詳細に説明する。
図1は、好ましい実施形態に係る画像形成装置の構成の一例(一実施形態)を示す概略図である。本実施形態に係る画像形成装置100は、いわゆるタンデム方式であり、電子写真感光体からなる4つの像保持体101a〜101dの周囲に、その回転方向に沿って順次、帯電装置102a〜102d、露光装置114a〜114d、現像装置103a〜103d、一次転写装置(一次転写ロール)105a〜105d、像保持体クリーニング装置104a〜104dが配置されている。尚、転写後の像保持体101a〜101dの表面に残留している残留電位を除去するために除電器を備えていてもよい。
【0018】
また、中間転写ベルト107が、テンションロール106a〜106d、ドライブロール111およびバックアップロール108に張架され、環状体張架装置(ベルト張架装置)を形成している。これらのテンションロール106a〜106d、ドライブロール111およびバックアップロール108により、中間転写ベルト107は、各像保持体101a〜101dの表面に接触しながら各像保持体101a〜101dと一次転写ロール105a〜105dとの間を矢印X方向へ搬送される。
【0019】
一次転写ロール105a〜105dは、像保持体101a〜101dの各々との間で、間に中間転写ベルト107を挟むように中間転写ベルト107の内周面側に接触配置されている。この一次転写ロール105a〜105dの各々と、像保持体101a〜101dの各々と、の間の領域が一次転写領域となる(詳細後述)。この一次転写領域の各々には、一次転写ロール105a〜105dの各々によって一次転写電流が印加され、これによって、像保持体101a〜101dの各々上に保持されていたトナー像が、中間転写ベルト107上に転写される。
【0020】
また、二次転写装置として、中間転写ベルト107および二次転写ベルト116を介して、バックアップロール108と二次転写ロール109が対向配置されている。紙等の被転写媒体115は、中間転写ベルト107の表面に接触しながら中間転写ベルト107と二次転写ロール109との間を矢印Zの方向に搬送され、その後、定着装置110を通過する。二次転写ロール109が中間転写ベルト107および二次転写ベルト116を介してバックアップロール108に接触する領域が二次転写領域となり、二次転写ロール109とバックアップロール108との接触部には二次転写電圧が印加される。更に、転写後の中間転写ベルト107と接触するように、中間転写ベルトクリーニング装置112および113が配置されている。
【0021】
この構成のフルカラー画像形成装置100では、像保持体101aが矢印Yの方向に回転するとともに、その表面が帯電装置102aによって一様に帯電された後、レーザー光等の露光装置114aにより第1色目の静電潜像が形成される。形成された静電潜像はその色に対応するトナーを収容した現像装置103aにより、トナーで現像(顕像化)されてトナー像が形成される。なお、現像装置103a〜103dには、各色の静電潜像に対応するトナー(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)がそれぞれ収容されている。
【0022】
像保持体101a上に形成されたトナー像は、一次転写領域を通過する際に、一次転写ロール105aによって中間転写ベルト107上に静電的に転写(一次転写)される。以降、第1色目のトナー像を保持した中間転写ベルト107上に、一次転写ロール105b〜105dによって、第2色目、第3色目、第4色目のトナー像が順次重ね合わせられるよう一次転写され、最終的にフルカラーの多重トナー像が得られる。
【0023】
中間転写ベルト107上に形成された多重トナー像は、二次転写部を通過する際に、被転写媒体115に静電的に一括転写される。トナー像が転写された被転写媒体115は、定着装置110に搬送され、加熱および/または加圧により定着処理された後、機外に排出される。
【0024】
一次転写後の像保持体101a〜101dは、像保持体クリーニング装置104a〜104dにより残留トナーが除去される。一方、二次転写後の中間転写ベルト107は、中間転写ベルトクリーニング装置112および113により残留トナーが除去され、次の画像形成プロセスに備える。
【0025】
以下、各構成について説明する。なお、以下では、同一機能を有する構成(部材)について説明する場合には、上記a〜dの符号を省略して説明する。例えば、像保持体101a〜101dを総称する場合には、像保持体101として説明する。
【0026】
〔中間転写ベルト〕
本実施形態における中間転写ベルト107は、図3に示すように、複数の層が厚み方向に積層された構成とされている。
例えば、図3(A)に示すように、中間転写ベルト107は、最も内周面側に位置される最内層107B上に、最も外周面側に位置される最外層107Aが積層されて構成されている。画像形成装置100に装着された状態の中間転写ベルト107においては、最外層107Aに像保持体101が接触配置されると共に中間転写ベルト107の搬送方向(図1中、矢印X方向)に所定間隔をあけて配列された状態となる。また、一次転写ロール105は、これらの像保持体101との間で中間転写ベルト107を挟持するように中間転写ベルト107の内周面に接触配置されている。
【0027】
この中間転写ベルト107の最内層107Bの表面抵抗率の常用対数値は、最外層107Aの外周面側の表面抵抗率の常用対数値に比べて小さくなるように予め調整されている。
作用については詳細を後述するが、この最内層107Bの内周面側の表面抵抗率の常用対数値を、最外層107Aの外周面側の表面抵抗率の常用対数値に比べて小さくなるように予め調整することで、内周面側に接触される一次転写ロール105と中間転写ベルト107との間の剥離放電が抑制され、この剥離放電に起因する画質劣化が抑制される。
【0028】
なお、本実施の形態では、「最外層107Aの表面抵抗率の常用対数値」とは、最外層107Aの外周面側表面における表面抵抗率の常用対数値を示し、「最内層107Bの表面抵抗率の常用対数値」とは、最内層107Bの内周面側表面における表面抵抗率の常用対数値を示している。
【0029】
この最外層107Aの表面抵抗率の常用対数値は、粒状性や、用紙剥離性に依存し、値は限定されないが、粒状性の理由から、高抵抗(「高抵抗」とは、具体的には、11.6LogΩ/□以上であることを示す)であることが好ましく、用紙剥離性の理由から12.4以下の範囲が好ましく、11.9以上12.4以下の範囲が更に好ましい。
【0030】
本実施の形態の画像形成装置10の中間転写ベルト107においては、最外層107Aの外周面側の表面抵抗率の常用対数値が、最内層107Bの内周面側の表面抵抗率の常用対数値より大きければよいが、外乱によるバラツキを抑える理由から、最外層107Aの外周面側の表面抵抗率の常用対数値が、最内層107Bの内周面側の表面抵抗率より0.6LogΩ/□以上大きい事が好ましく、1.0LogΩ/□以上大きい事が更に好ましい。
【0031】
なお、中間転写ベルト107の層構成は、複数層(2層以上)であればよく、図3(A)に示すような2層である場合に限られず、図3(B)に示すような3層構造、図3(C)に示す4層構造、または5層以上の層構成であってもよい。たとえば、3層構造である場合には、図3(B)に示すように、中間転写ベルト107を、最内層107B、中間層107C、及び最外層107Aの順に積層させた構成とすればよい。また、4層構造である場合には、図3(C)に示すように、中間転写ベルト107を、最内層107B、中間層107D、中間層107C、及び最外層107Aの順に積層した構成とすればよい。
【0032】
中間転写ベルト107の層構成が3層以上である場合においても、上述のように最外層107Aの外周面側の表面抵抗率が最内層107Bの内周面側の表面抵抗率より大きい、という関係を満たせば良く、どのような抵抗関係であってもよい。例えば、内周面側から外周面側に向かって表面抵抗率が連続的に大きくなるように調整してもよいし、段階的に大きくなるように調整してもよい。
【0033】
さらに、中間転写ベルト107は下記式(1)、式(2)、及び式(3)の全てを満たすことが好ましい。
11.6LogΩ/□≦ρs≦14.0LogΩ/□ (1)
10.3LogΩ・cm≦ρv≦14.0LogΩ・cm (2)
9.8LogΩ/□≦ρexs≦≦13.4LogΩ/□ (3)
(上記式(1)〜(3)中、ρsは前記中間転写ベルト107の最外層の表面抵抗率の常用対数値を、ρvは前記中間転写ベルト107の体積抵抗率の常用対数値を、ρexsは前記中間転写ベルト107内周面極表面の沿面抵抗率の常用対数値を、それぞれ表す。)
【0034】
前記「ρs」は、11.9LogΩ/□≦ρs≦12.4LogΩ/□であることがより好ましい。
【0035】
ρs≧11.6LogΩ/□であれば、二次転写工程において、二次転写ロール109より印加される転写電界が中間転写ベルト107上のトナー周辺に回り込むことによりトナーが周辺に飛び散り、被転写媒体上にトナー像がぼやけた状態で転写されて起こる粒状性の悪化が回避されるが、ρs≧11.9LogΩ/□とすることでさらに1グレード粒状性が向上される。
【0036】
なお、「1グレード粒状性」とは、ドットのばらけ(画像のムラ)具合を示している。
【0037】
また、ρs>12.4LogΩ/□である場合、二次転写工程において用紙の剥離不良が発生しやすくなり、二次転写ロール109下流の中間転写ベルト107の内面に除電手段を設けることで回避可能となるが、ρs≦12.4LogΩ/□とすることで前記除電手段を用いなくても用紙の剥離不良が抑制される。
【0038】
前記「ρv」は11.0LogΩ・cm≦ρv≦13.0LogΩ・cmであることがより好ましい。ρv≧11.0LogΩ・cmであれば、ρvが低い(ρv<11.0LogΩ・cm)時に発生しやすいライン画像の飛び散り(像にじみ)という画質欠陥が抑制され高画質化が図れる。
ρv>13.0LogΩ・cmである場合、中間転写ベルト107表面の帯電量が増大し、自己除電ができなくなってしまうため、二次転写工程において用紙の剥離不良が発生しやすくなり、ρs同様中間転写ベルト107内面に前記除電手段を設けることで避可能となるが、ρv≦13.0LogΩ・cmとすることで前記除電手段を用いなくても用紙の剥離不良の発生が抑制される。
【0039】
前記ρexsは10.6LogΩ/□≦ρexs≦13.0LogΩ/□であることがより好ましい。ρexs≧10.6LogΩ/□であれば、高温・高湿の環境条件下での一次転写工程にて発生する白抜けという画質欠陥の発生が抑制される。ρexs≦13.4LogΩ/□であれば、二次転写工程において中間転写ベルト107内周面に接触するバックアップロール108と中間転写ベルト107裏面の間で放電して、中間転写ベルト107外周面上のトナー像が乱れ、ウロコ状の濃度ムラとなって発生する画質欠陥が許容レベルまで軽減される。そして、さらにρexs≦13.0LogΩ/□とすることで前記ウロコ状の濃度ムラがほぼ解消される。
【0040】
本実施形態における中間転写ベルト107は、総膜厚が60μm以上120μm以下であることが望ましい。総膜厚が50μm以上であれば、十分な機械的強度を保持することができ、画像形成装置内での長期の使用においても、より良好な出力画像を得ることができる。また、総膜厚が130μm以下であれば、十分な可撓性を保持することができ、画像形成装置内で長期に張架された状態においても、中間転写ベルト107に張架跡がつくことなく、より良好な出力画像が得られる。
【0041】
さらに、最外層107Aと最内層107Bとの層厚は、下記式(4)を満たすことが望ましい。
1.2≦du/dl≦4.0 (4)
(上記式(4)中、duは最外周層の膜厚(μm)を、dlは最内周層の膜厚(μm)を、それぞれ表す。)
【0042】
前記「du/dl」は1.5≦du/dl≦3.0であることが好ましく、1.6≦du/dl≦2.7であることがより好ましい。
ここで、二次転写工程においては、中間転写ベルト107内周面に接触するバックアップロール108から流入した電荷が、中間転写ベルトの最外周層と最内周層の間に蓄積されることにより局所電界が発生する。この局所電界の電界強度が閾値を超えたところで最外周層に一気に電荷が流入し、二次転写ロール109との間で放電が発生する。放電領域のトナーが逆極性に帯電し被転写媒体に転写されないことによって、出力画像上におけるトナー像が抜けた領域(HTムラ)が発生するということを、本発明者らは見出した。
【0043】
1.2≦du/dlである場合、二次転写工程において、二次転写ロール109と中間転写ベルト107外周面の間で放電が発生するのを抑制しトナーが逆極性になるのを防止することから、トナー像が抜けた領域(白点)が発生せず、良好な出力画像となる。また、du/dl≦4.0である場合、バックアップロール108から流入した電荷が中間転写ベルト107の最外周層と最内周層の間に蓄積されないため、二次転写ロール109との間で放電が発生せず、トナーが逆極性になるのを防止することから、トナー像が抜けた領域(HTムラ)が発生せず、良好な出力画像となる。
【0044】
中間転写ベルト107の材質としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリアルキレンフタレート樹脂、ポリカーボネート/ポリアルキレンフタレートのブレンド材料、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体等の熱可塑性樹脂、またはポリイミド、ポリイミドとポリアミドの共重合体等の熱硬化性樹脂に、導電剤を溶解或いは分散させたものが用いられる。
【0045】
導電剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、ニッケル、銅、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、またはチタン酸カリウム等の導電性粒子や、ポリアニリン、ポリチオフェン等の有機導電性物質などが用いられる。中でも、ポリイミド樹脂を主成分(主成分とは、中間転写ベルト中のポリイミド樹脂含有量が50質量%を超えることを指す。)とし、カーボンブラックなどの導電性粒子を分散させた中間転写ベルト107が、機械的強度の強さや高弾性率、更に耐クリープ性(物体に持続応力が作用すると時間の経過とともに歪みが増大する現象、に耐える性質)に優れることなどから、特に好適に用いられる。
【0046】
この導電剤の各層(中間転写ベルト107の最外層107A、最内層107B)の表面抵抗率の常用対数値、体積抵抗率の常用対数値、及び沿面抵抗率の常用対数値は、各層に含有される導電剤の量により調整される。
【0047】
具体的には、最外周層に含有される導電性物質の量により、最外層107Aの表面抵抗率の常用対数値及び体積抵抗率の常用対数値が調整され、最内層107Bに含有される導電剤の量によりρexs、及び最内層107Bの表面抵抗率の常用対数値が調整される。
さらに、円筒成形管11外周面上に形成された塗布液16塗膜を乾燥する際に、所定の温度に設定することにより、ρvおよびρexsと独立してρsが制御される。より詳しくは、乾燥温度を高くするとρsが高く、乾燥温度を低くするとρsが低く調整される。尚、上記ρs、ρvおよびρexsの独立制御に関しては、塗布液16樹脂材料としてポリイミド前駆体を、導電性物質としてカーボンブラックを用いた場合に、より好適に用いられる。ポリイミド前駆体とカーボンブラックを用いる場合、乾燥工程後の残留溶媒量を一定とし、乾燥工程における温度を調整することにより、ρvおよびρexsと独立してρsが制御される。
【0048】
本実施形態に係る中間転写ベルト107の製造方法は特に限定されないが、例えばポリイミド前駆体溶液を用いて、図2に示すような回転塗布法により好適に製造される。
この方法では、中間転写ベルト107の長さに対応した外径を有する円筒成形管11を用意する。円筒成形管11外周面に沿った位置に、塗布液16を円筒成形管11外周面上に吐出するためのノズル15を配し、ノズル15は配管を通じて塗布液容器14に接続されており、さらに塗布液容器14は配管を通じて加圧装置17に接続されている。また、ノズル15の下方には、吐出された塗布液16を円筒成形管11外周面上において均すためのブレード18が配置されている。
【0049】
円筒成形管11を円筒成形管回転方向(矢印D)の向きに回転し、ノズル15から塗布液16を円筒成形管11外周面上に吐出し、ブレード18で円筒成形管11外周面上に均す。ノズル15とブレード18は、ノズルおよびブレード移動方向(矢印E)に一定速度で移動し、塗布液16が円筒成形管11外周面上に一定の厚みで塗布される。なお、塗布液16は加圧装置17によりノズル15から一定量吐出するように調節されている。これにより、円筒成形管11外周面上に塗布液16塗膜が形成される。
得られた塗布液16塗膜を加熱乾燥させた後、冷却後、円筒成形管11から剥離し、所定の幅で切断することで中間転写ベルト107を得ることができる。なお、塗布液16の樹脂材料としてポリイミド前駆体を用いる場合には、円筒成形管11外周面上に塗布液16塗膜を形成した後、80℃以上170℃以下で乾燥することにより溶媒を除去し(乾燥工程)、さらに250℃以上350℃以下に加熱することでイミド転化(焼成工程)させてポリイミド樹脂膜を形成する。冷却後、得られたポリイミド樹脂膜を円筒成形管11から剥離し、所定の幅で切断することで中間転写ベルト107が得られる。
【0050】
塗布液16の固形分濃度は、例えば10質量%以上40質量%以下、粘度は1Pa・s以上100Pa・s以下とされる。また、塗布液16には、要求される中間転写ベルトの表面抵抗率の常用対数値に応じて所定量のカーボンブラック等の導電性粒子を分散させておく。分散方法としては、ジェットミル、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、またはペイントシェーカーなどの公知の方法が用いられる。
【0051】
上記中間転写ベルト107の製造方法においては、乾燥温度は100℃以上170℃以下とするのが望ましい。乾燥工程において乾燥温度が低過ぎる場合、ポリイミド前駆体中の溶媒の乾燥が進まず、乾燥時間を長くしても所定の残留溶媒量に到達しにくい。また、乾燥温度が高過ぎる場合、乾燥工程の極初期にポリイミド前駆体極表面に乾燥膜が生成され、ポリイミド前駆体内部の溶媒が十分に乾燥できない場合があったり、乾燥工程後にポリイミド前駆体膜の表面が引きつられたようになり、塗膜の表面にシワ状の欠陥が発生し易くなる。乾燥温度を100℃以上170℃以下とすることで、所定の残留溶媒量で、かつより良好な塗膜を有するポリイミド前駆体膜となる。
【0052】
なお、本実施の形態においては、上述のように、中間転写ベルト107は、少なくとも2層構成とされている。2層以上の構成の中間転写ベルト107を形成する場合においても、用いる材料は上記と同様である。また、2層以上の多層構成膜は、上記円筒成形管11外周面上に塗布液16塗膜を形成して乾燥し最内周層を形成した後、さらに塗布・乾燥工程を繰返すことで、所望の構成膜を得る。塗布液16としてカーボンブラックを含有したポリイミド前駆体を用いる場合は、塗布・乾燥工程を繰返し、所望の構成が得られた後に、焼成工程を経ることで所望の構成膜を得る。
【0053】
また、中間転写ベルト107の厚みは、塗布液16の吐出量とノズル15およびブレード18の移動速度、さらに塗布液16の固形分濃度により調整される。中間転写ベルト107の厚みとしては、繰り返し画像出力においても寸法精度などを維持する観点から、50μm以上130μm以下であることが好ましい。
【0054】
〔像保持体〕
像保持体101としては、公知の電子写真感光体が広く適用される。電子写真感光体としては、感光層が無機材料で構成される無機感光体や、感光層が有機材料で構成される有機感光体などが用いられる。有機感光体においては、露光により電荷を発生する電荷発生層と、電荷を輸送する電荷輸送層を積層する機能分離型の有機感光体や、電荷を発生する機能と電荷を輸送する機能を同一の層が果たす単層型有機感光体が好適に用いられる。また、無機感光体においては、感光層がアモルファスシリコンにより構成されているものが、好適に用いられる。
【0055】
また、像保持体の形状には特に限定はなく、例えば、円筒ドラム状、シート状或いはプレート状等、公知の形状が採用される。
【0056】
〔帯電装置〕
帯電装置102としては、特に制限はなく、例えば、導電性(ここで、「導電性」とは例えば体積抵抗率が10Ω・cm未満を意味する。本明細書においては、特記がない限り同様である。)または半導電性(ここで、「半導電性」とは例えば体積抵抗率が10〜1013Ωcmを意味する。本明細書においては、特記がない限り同様である。)のローラ、ブラシ、フィルム、またはゴムブレード等を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器など、公知の帯電器を広く適用することができる。これらの中でも、オゾンの発生が少なく、効率的な帯電を行うことができる接触型帯電器が好ましい。
【0057】
帯電装置102は、像保持体101に対し、通常、直流電流を印加するが、交流電流を更に重畳させて印加してもよい。
【0058】
〔露光装置〕
露光装置114としては、特に制限はなく、例えば、像保持体101a〜101dの表面に、半導体レーザー光、LED光、または液晶シャッタ光等の光源、或いはこれらの光源からポリゴンミラーを介して所望の像様に露光する光学系機器など、公知の露光装置が広く適用される。
【0059】
〔現像装置〕
現像装置103としては、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤または二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用い接触或いは非接触させて現像する公知の現像器などが挙げられる。
【0060】
本実施形態の画像形成装置100に用いるトナー(現像剤)は特に限定されず、例えば、結着樹脂と着色剤を含んで構成される。
【0061】
結着樹脂としては、スチレン類、モノオレフィン類、ビニルエステル類、α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類等の単独重合体または共重合体を例示することができ、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、またはポリプロピレン等が挙げられる。更に、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、またはパラフィンワックス等も挙げられる。
【0062】
着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、またはC.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして挙げられる。
【0063】
トナーには、帯電制御剤、離型剤、他の無機粒子等の公知の添加剤を内添加処理や外添加処理してもよい。
【0064】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、またはキャンデリラワックス等を代表的なものとして挙げられる。
【0065】
帯電制御剤としては、公知のものが使用されるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプ等の帯電制御剤が用いられる。
【0066】
他の無機粒子としては、粉体流動性、帯電制御等の目的で、平均一次粒径が40nm以下の小径無機粒子を用い、更に必要に応じて、付着力低減の為、それより大径の無機或いは有機粒子を併用してもよい。これらの他の無機粒子は公知のものが使用される。
また、小径無機粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性をあげる効果が大きくなるため有効である。
【0067】
トナーの製造方法としては、高い形状制御性を得られることから、乳化重合凝集法や溶解懸濁法等の重合法が好ましく用いられる。また、これらの方法で得られたトナーをコアにして、更に凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法を行ってもよい。
【0068】
なお、外添剤を添加する場合、トナーおよび外添剤をヘンシェルミキサー或いはVブレンダー等で混合することによって製造される。また、トナーを湿式にて製造する場合は、湿式にて外添することもある。
【0069】
〔一次転写ロール〕
一次転写ロール105は、単層或いは多層のいずれでもよい。例えば、単層構造の場合は、発泡または無発泡のシリコーンゴム、ウレタンゴム、またはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。
【0070】
この一次転写ロール105の体積抵抗値は7LogΩ以上8.5LogΩ以下の範囲であり、7.4LogΩ以上7.9LogΩ以下の範囲がより好ましい。
一次転写ロール105の体積抵抗値が7LogΩ以上8.5LogΩ以下であることで、高温・高湿(27℃以上及び80%RH以上の少なくとも一方を満たす環境。以下同じとする。)の環境条件下においても、中間転写ベルトや一次転写ロールの抵抗が低すぎて像保持体101上のトナー像を中間転写ベルト107に転写するために十分な転写電界(電圧)が得られなくなる事が抑制され、転写不良(ムラ)が抑制される。また、逆に、低温・低湿(15℃以下及び30%RH以下の少なくとも一方を満たす環境。以下同じとする。)の環境条件下においても、中間転写ベルトや一次転写ロールの抵抗が高すぎて、像保持体101と一次転写ロール105との間に形成される転写電界(電圧)が過剰となることが抑制される。このため、結果、トナー像を構成しているトナーに電荷が注入(逆極性化)されて、該トナー像が部分的(細かな白点状)に像保持体101から中間転写ベルト107へ転写されない放電マークという画質欠陥の発生が抑制される。
【0071】
すなわち、一次転写ロール105の体積抵抗値を7LogΩ以上8.5LogΩ以下とすることで高温・高湿下での前記転写不良(ムラ)や低温・低湿下での前記放電マークの発生が許容レベルまで抑えられる。さらに、一次転写ロール105の体積抵抗値を7.4LogΩ以上7.9LogΩ以下とすることで前記転写不良(ムラ)や前記放電マークが抑制される。
【0072】
この一次転写ロール105には例えば30μA以上60μAの電流が印加され、像保持体101との間に形成される電界(電圧)によって、像保持体101上に保持されていたトナー像が一次転写ロール105へと転写される。
【0073】
一次転写ロール105の外径(直径)としては、寿命の観点から18mm以上30mm以下であることが好ましく、26mm以上30mm以下であることがより好ましい。
【0074】
〔像保持体クリーニング装置〕
像保持体クリーニング装置104は、一次転写工程後の像保持体101の表面に付着する残存トナーを除去するためのものであり、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、またはロールクリーニング等を用いることができる。これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、またはシリコーンゴム等が挙げられる。
【0075】
〔二次転写ロール〕
二次転写ロール109の層構造は、特に限定されるものではないが、例えば、三層構造の場合、コア層と中間層とその表面を被覆するコーティング層により構成される。コア層は導電性粒子を分散したシリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等の発泡体で、中間層はこれらの無発泡体で構成される。コーティング層の材料としては、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、パーフルオロアルコキシ樹脂などが挙げられる。二次転写ロール109の体積抵抗率は10Ωcm以下であることが好ましい。また、中間層を除いた2層構造としてもよい。
【0076】
〔バックアップロール〕
バックアップロール108は、二次転写ロール109の対向電極を形成する。バックアップロール108の層構造は、単層或いは多層のいずれでもよい。例えば単層構造の場合は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。二層構造の場合は、上記のようなゴム材料で構成される弾性層の外周面を高抵抗層で被覆したロールから構成される。バックアップロール108の表面抵抗率は10Ω/□以上1011Ω/□以下の範囲にあることが好ましい。
【0077】
バックアップロール108と二次転写ロール109とのシャフトの間には、通常1kV以上6kV以下の電圧が印加される。また、バックアップロール108のシャフトへの電圧印加に代えて、バックアップロール108に接触させた電気良導性の電極部材と二次転写ロール109との間に電圧を印加することもできる。上記電極部材としては、金属ロール、導電性ゴムロール、導電性ブラシ、金属プレート、または導電性樹脂プレート等が挙げられる。
【0078】
〔定着装置〕
定着装置110としては、例えば、熱ローラ定着器や加圧ローラ定着器、またはフラッシュ定着器など公知の定着器が広く適用される。
【0079】
〔中間転写ベルトクリーニング装置〕
中間転写ベルトクリーニング装置112および113としては、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、ロールクリーニング等を用いることができ、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、またはシリコーンゴム等が挙げられる。
【0080】
上述した実施の形態においては、像保持体が複数個で構成される所謂タンデム方式の画像形成装置を説明したが、像保持体が1個で、色数分だけ中間転写ベルトが回転・作像プロセスを行う所謂複数サイクル方式(例えば4サイクル方式等)の画像形成装置であっても良い。
【0081】
次に、本実施の形態の画像形成装置100における、一次転写部で発生する画質劣化の防止のメカニズムについて説明する。
【0082】
画像形成装置100においては、図9に示すように、一次転写ロール105(一次転写ロール105a〜105d)の各々は、像保持体101の各々(像保持体101a〜101d)に対して、中間転写ベルト107の搬送方向Xにオフセット量Dだけずれた位置となるように配設されている。
【0083】
詳細には、図9に示すように、像保持体101の各々と、対応して配置された一次転写ロール105の各々と、は、像保持体101の回転中心aから中間転写ベルト107に向かって延びる垂線と該中間転写ベルト107との交点Aと、一次転写ロール105の回転中心bから中間転写ベルト107に向かって延びる垂線と該中間転写ベルト107との交点Bと、の間の距離である「オフセット量D」だけずれた位置に配置されている。なお、一次転写ロール105は、像保持体101に対して中間転写ベルト107の搬送方向X下流側に配置されている。
【0084】
このオフセット量Dは、上述のようにゼロ“0”で無く、像保持体101の回転中心aと、一次転写ロール105の回転中心bと、が中間転写ベルト107の搬送方向Xに向かってずれた状態にある事が好ましい。これは、像保持体101の各々と中間転写ベルト107との間の一次転写領域を十分に確保して像保持体101から中間転写ベルト107へトナー像を効率よく安定して転写させるためである。
【0085】
ここで、従来の画像形成装置における中間転写ベルトのように、外周面側の表面抵抗率の常用対数値と、内周面側の表面抵抗率の常用対数値と、が略同一(±1%以下の範囲内で同一)である場合、例えば、1層構成である場合には、像保持体101の矢印Y方向への回転、中間転写ベルト107の矢印X方向への回転、及び一次転写ロール105の矢印P方向への回転によって、像保持体101と中間転写ベルト107との間、及び中間転写ベルト107と一次転写ロール105との間の各々において、これらの剥離時に剥離放電が生じる。この剥離放電によって電荷(像保持体101から中間転写ベルト107に転写されたトナー像を構成する各トナーの電荷極性とは逆極性の電荷)が発生することで、画質劣化が発生する。また、中間転写ベルト107と一次転写ロール105との間でも同様に、これらが剥離する剥離領域では剥離放電が生じ、画質劣化が発生する。
【0086】
詳細には、図10に示すように、像保持体101と中間転写ベルト107との剥離領域Hと、一次転写ロール105と中間転写ベルト107との剥離領域Iと、がほぼ同じ領域となる場合(オフセット量Dが“0”または“0”に限りなく近い場合)には、中間転写ベルト107の像保持体101に接する側と、一次転写ロール105に接する側と、で電位のバランスが釣り合って画質劣化が生じる程度の異常な剥離放電は発生せず、中間転写ベルト107上に転写されたトナー像が中間転写ベルト107の搬送に伴って一次転写領域Eを追加した後であっても中間転写ベルト107上に転写されたトナー像の乱れは生じない。
【0087】
しかしながら、図11に示すように、像保持体101と、中間転写ベルト107とを介して対応して配置された一次転写ロール105と、が「オフセット量D」だけずれた位置(オフセット量Dがゼロ“0”ではない場合)に配置されると、このオフセット量Dが大きくなるほど、一次転写領域Eにおける中間転写ベルト107と一次転写ロール105との合成抵抗は、オフセット量Dがゼロ“0”または“0”に近い値となるように像保持体101及び一次転写ロール105が配置された場合に比べて高くなる。
このため、従来の画像形成装置における中間転写ベルトでは、一次転写ロール105に同じ電流値の電圧を流していても、オフセット量Dが大きくなるほど一次転写領域Eに流れる電圧の電圧値が大きくなり、オフセット量Dのバラツキによる画質劣化が発生する場合があった。オフセット量Dが増加するほど、中間転写ベルト107上に転写されるトナー像に過剰の電圧が印加されることとなり、細かな白点(放電マーク)状の画質欠陥が発生する場合があった。
【0088】
また、従来の画像形成装置における1層の中間転写ベルトでは、一次転写ロール105が、像保持体101に対して中間転写ベルト107の搬送方向X下流側に配置されているので、像保持体101と中間転写ベルト107との間の剥離領域Hより中間転写ベルト107の搬送方向Xの下流側に、中間転写ベルト107と一次転写ロール105との剥離領域Iが位置されていることとなる。このため、剥離放電による帯電量も大きくなる。そのため、大きく帯電している中間転写ベルト107が近傍の接地部材にリークして中間転写ベルト107上のトナー像の電荷が樹木の枝分かれ状に減少し、その後の二次転写部で電荷が減少した部分が用紙に転写されずに樹木の枝分かれ状の白抜けが発生していた。
【0089】
ここで、従来の画像形成装置における1層の中間転写ベルトでは、図12に示すように、オフセット量Dが小さくなるほど一次転写ロール105に同じ電流値の電圧を流していても、中間転写ベルト107に印加される電圧が高くならず上述した「細かな白点(放電マーク)」状の画質欠陥は抑制される。しかしながら、図12の態様では一次転写領域Eが図11に比べて狭く、特に、高抵抗(本実施の形態では、“高抵抗”とは、体積抵抗率が11.6以上であることを示す)の中間転写ベルト107を用いた場合には、中間転写ベルト107と一次転写ロール105との剥離領域Iを過ぎても中間転写ベルト107が高帯電したままとなる。このため、この高帯電された状態で像保持体101から中間転写ベルト107が剥離されると、剥離放電により中間転写ベルト107上のトナー画像が乱され、「円弧状白抜け」の画質欠陥が発生する。
【0090】
一方、本実施の形態の画像形成装置10では、上述のように、中間転写ベルト107について、中間転写ベルト107を複数層から構成し、最内層の表面抵抗率、が最外層の表面抵抗率より小さい中間転写ベルト107とし、且つ一次転写ロール105の体積抵抗率の常用対数値を7LogΩ以上8.5LorΩ以下としている。この構成とすることで、中間転写ベルト107の内周面側の帯電量が剥離放電により過剰に大きくなることが抑制され、特に、オフセット量Dの大きい場合に発生する「細かな白点(放電マーク)」や「樹木の枝分かれ状白抜け」といった画質欠陥や、オフセット量Dが小さい場合に発生する「円弧状の白抜け」の発生が抑制される。また、中間転写ベルト107の最外層107Aが最内層107Bに比べて高い表面抵抗率および体積抵抗率となっているため、二次転写部において過剰の電荷注入による別の画質欠陥(非常に細かな白点:マイクロホワイトスポット)も抑制される。
【0091】
なお、上記した実施の形態では、像保持体105が複数個で構成される、所謂タンデム方式の画像形成装置を説明したが、本実施の形態の画像形成装置100は、像保持体105が1個で色数分だけ中間転写ベルト107が回転・作像プロセスを行う、所謂4サイクル方式の画像形成装置にも適用可能である。
【実施例】
【0092】
以下、実施例及び比較例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0093】
なお、下記実施例及び比較例において、表面抵抗率の常用対数値、体積抵抗率の常用対数値、極表面の沿面抵抗率の常用対数値、及び一次転写ロールの体積抵抗率の常用対数値の測定は、下記方法にて測定した。
【0094】
(表面抵抗率の常用対数値ρsの測定)
図4に表面抵抗率測定装置の断面概略図を示す。GNDに接続された裏面電極23の上に絶縁シート24、さらにその上に測定サンプル27を配置する。測定サンプル27の上に表面電極21とガード電極22を配置し、絶縁シート24を介して裏面電極23と表面電極21およびガード電極22で、測定サンプル27を挟んだサンドイッチ構成とされている。以下の実施例及び比較例では、この測定サンプル27にかえて、測定対象物を挟み、ガード電極22に接続された直流電源25により直流電圧を印加し、該直流電圧を印加した後に表面電極21に接続された微小電流計26により測定された電流量の測定結果から、表面抵抗率を算出した。
【0095】
詳細を下記に示す。図7に、図4に示す表面抵抗率測定装置に用いる電極の平面概略図を示した。表面電極21を中心とし、同心円環状にガード電極22が配置されている。ここで、d1〜d3は、それぞれ中心電極21の直径、ガード電極22の内周円の直径、ガード電極22の外周円の直径を表す。これらの値は、測定サンプルの大きさおよび形状に併せて任意に設定可能である。なお、本実施例及び比較例中の表面抵抗率の測定には、URプローブ(三菱化学社製)を用い、d1〜d3はそれぞれ下記の値とした。
d1=16mm,d2=30mm,d3=40mm
【0096】
そして、表面抵抗率は下記式(5)にて算出し、得られた表面抵抗率の常用対数値をρsとして求めた。
表面抵抗率=[π(d2+d1)/(d2−d1)]×(V/I) (5)
【0097】
ここで、式(5)中、Vは中心電極21に印加する電圧値(V)を、Iは微小電流計26で検出する電流値(A)をそれぞれ表す。本発明の実施例中の表面抵抗率の測定では、中心電極21に印加する電圧は500Vとした。また、電流値Iは電圧Vを印加してから10秒後の値とした。表面抵抗率の測定は温度20℃、相対湿度40%の環境下で行った。
【0098】
(体積抵抗率の常用対数値ρvの測定)
図5に体積抵抗率測定装置の断面概略図を示した。直流電源25を介してGNDに接続された裏面電極23の上に測定サンプル27を配置する。測定サンプル27の上に表面電極21とガード電極22を配置し、裏面電極23と表面電極21およびガード電極22で、測定サンプル27を挟んだサンドイッチ構成となっている。ガード電極22はGNDに接続されている。裏面電極23に接続された直流電源25により直流電圧を印加し、表面電極21に接続された微小電流計26により流れる電流量を測定し、体積抵抗率を算出し、算出した体積抵抗率の常用対数値を、ρvとして求めた。
【0099】
詳細を以下に説明する。図7に、体積抵抗率測定装置に用いる電極の平面概略図を示した。表面電極21を中心とし、同心円環状にガード電極22が配置されている。ここで、d1〜d3は、それぞれ中心電極21の直径、ガード電極22の内周円の直径、ガード電極22の外周円の直径を表す。これらの値は、測定サンプルの大きさおよび形状に併せて任意に設定可能である。なお、本実施例及び比較例中の体積抵抗率の測定には、URプローブ(三菱化学社製)を用い、d1〜d3はそれぞれ下記の値とした。
d1=16mm,d2=30mm,d3=40mm
【0100】
体積抵抗率を下記式(6)にて算出し、算出した体積抵抗率の常用対数値を、ρvとして求めた。
体積抵抗率=[(π×d12)/4]×(V/I)×(1/t) (6)
【0101】
ここで、式(6)中、Vは中心電極21に印加する電圧値(V)を、Iは微小電流計26で検出する電流値(A)を、tは測定サンプルの膜厚(cm)をそれぞれ表す。本発明の実施例中の表面抵抗率の測定では、中心電極21に印加する電圧は500Vとした。また、電流値Iは電圧Vを印加してから10秒後の値とした。また、測定サンプルの膜厚tの測定には、マイクロメーターや渦電流式膜厚系など公知のいかなる方法も好適に用いられるが、本発明の実施例中では、渦電流式膜厚計ISOSCOPE MP30(FFischer社製)にて膜厚を測定した。体積抵抗率の測定は温度20℃、相対湿度40%の環境下で行った。
【0102】
(極表面の沿面抵抗率の常用対数値ρexsの測定)
図6に極表面の沿面抵抗率測定装置の断面概略図を示す。GNDに接続された裏面電極23の上に測定サンプル27を配置する。測定サンプル27の上に電圧印加電極28と電流測定電極29を配置し、裏面電極23と電圧印加電極28および電流測定電極29で、測定サンプル27を挟んだサンドイッチ構成となっている。電圧印加電極28に接続された直流電源25により直流電圧を印加し、電流測定電極29に接続された微小電流計26により流れる電流量を測定し、極表面の沿面抵抗率を算出した。
【0103】
詳細を以下に示す。図8には、極表面の沿面抵抗率測定装置に用いる電極の平面概略図を示した。電圧印加電極28を中心とし、その両側に電圧印加電極28と平行になるように電流測定電極29が配置されている。ここで、d4〜d6は、それぞれ電圧印加電極29および電流測定電極29の幅、電圧印加電極29および電流測定電極29の長さ、電圧印加電極28と電流印加電極29の間隔を表す。これらの値は、測定サンプルの大きさおよび形状に併せて任意に設定可能である。なお、本実施例及び比較例中の表面抵抗率の測定においては、d4〜d6はそれぞれ下記の値とした。
d4=10mm,d5=50mm,d6=10mm
【0104】
そして、極表面の沿面抵抗率を下記式(7)にて算出し、算出した値の常用対数値を、ρexsとして求めた。
極表面の沿面抵抗率=V/(I/2)×(d5/d6)=2×(V/I)×(d5/d6) (7)
【0105】
上記式(7)中、Vは電圧印加電極29に印加する電圧値(V)を、Iは微小電流計26で検出する電流値(A)をそれぞれ表す。本実施例中の極表面の沿面抵抗率の測定では、電圧印加電極28に印加する電圧は500Vとした。また、電流値Iは電圧Vを印加してから15秒後の値とした。極表面の沿面抵抗率の測定は温度20℃、相対湿度40%の環境下で行った。
【0106】
なお、上記極表面の沿面抵抗率は、上記のような電極形状および測定条件とすることで、従来測定されてきた所謂表面抵抗率とは異なり、より膜の表層部近傍の横方向(沿面方向)抵抗率を測定するものである。
【0107】
(一次転写ロールの体積抵抗率の常用対数値Rの測定)
図13に、一次転写ロール105の体積抵抗を測定する装置の断面概略図を示した。平板32の上に一次転写ロール105を置き、一次転写ロール105の金属シャフトの両端にそれぞれ荷重(500gfのおもり:計1000gf)をのせた後、ハイレジスタンスメータ(抵抗測定器)33から一次転写ロール105の金属シャフトに1kVの電圧を10秒印加した後に、抵抗測定器33によって測定される値の常用対数値を、一次転写ロールの体積抵抗率の常用対数値とした。ハイレジスタンスメータは、Advantest社製R8340Aを使用して測定した。体積抵抗率の測定は温度22℃、相対湿度55%の環境下で行った。
【0108】
(中間転写ベルトのA1作製)
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルからなるポリアミック酸のN-メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(イミド転化後の固形分率が18質量%)に、ポリアミック酸の固形分100質量部にカーボンブラック(Special Black 4:Degussa社製)を80質量部となるように添加し、ジェットミル分散機(Geanus PY[衝突部の最小部断面積0.032mm2]:ジーナス社製)を用い、圧力200MPaで分散ユニット部を5回通過させて分散・混合を行い、分散液(A)を得た。得られた分散液(A)に対して、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルからなるポリアミック酸のNMP溶液(イミド転化後の固形分率が18質量%)を、ポリアミック酸100重量部に対してカーボンブラックが22.5重量部になるよう添加し、プラネタリー式ミキサー(アイコーミキサー:愛工舎製作所製)を用いて混合・攪拌することにより、最内層用カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液を調製した。
【0109】
一方、図2に示す円筒成形管11として、外径366mm、長さ600mm、肉厚6mmのアルミニウム製円筒体を用意した。かかるアルミニウム製円筒体は、球形ガラス粒子によるブラスト処理により、表面をRa:0.40μmに粗面化したものである。その円筒成形管11の表面にシリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布し、300℃で1時間焼き付け処理を施してアルミニウム製円筒体を作製した。さらに、回転塗布工程として、図2に示すように、円筒成型管11を、軸方向を水平にして矢印12の方向に50rpmで回転させた。ブレード18は幅20mm、厚さ0.5mmのSUSからなり、弾力性を有している。ブレード18を円筒成型管11に押付け、ポリイミド前駆体溶液16として前記最内層用カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液を用い、容器14から口径2mmのノズル15を通して押し出した。ポリイミド前駆体溶液がブレード18を通過する際、ブレード18が押し広げられ、ブレード18と円筒成型管11の間には隙間ができた。
【0110】
次いで、ノズル15とブレード18を矢印13の方向に120mm/分の速さで移動させた。なお、塗布の際には、円筒成型管11の両端に20mmずつの不塗布領域を設けた。次に、内周層用カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液が塗布された円筒成型管11を水平のまま、6rpmで回転させながら125℃で40分間加熱乾燥させ、最内層カーボンブラック分散ポリイミド前駆体乾燥膜を得た。なお、最内層カーボンブラック分散ポリイミド前駆体乾燥膜の膜厚は、後に示すイミド化後の膜厚が所望の値となるよう、塗布時のノズル15からの押出し液量を調整した。また、最内層カーボンブラック分散ポリイミド前駆体乾燥膜中の残留NMP量は24.0質量%であった。なお残留NMP量は、最内層塗布後の円筒成型管11の重さから、乾燥後の円筒成型管11の重さの差分より算出した。
【0111】
次に、前記分散液(A)に対して、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルからなるポリアミック酸のNMP溶液(イミド転化後の固形分率が18質量%)を、ポリアミック酸100質量部に対してカーボンブラックが18.7質量部になるよう添加し、プラネタリー式ミキサー(アイコーミキサー:愛工舎製作所製)を用いて混合・攪拌することにより、最外層用カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液を調製した。得られた最外層用カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液を用い、円筒成型管11の回転速さを40rpm、ノズル15の移動速さを90mm/分とした以外は最内層塗布時と同様にして、最内層カーボンブラック分散ポリイミド前駆体乾燥膜上に塗布した。
【0112】
次に、最外層用カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液が塗布された円筒成型管11を水平のまま、6rpmで回転させながら120℃で40分間加熱乾燥させ、最外層カーボンブラック分散ポリイミド前駆体乾燥膜を得た。なお、最外層カーボンブラック分散ポリイミド前駆体乾燥膜の膜厚は、後に示すイミド化後の膜厚が所望の値になるよう、塗布時のノズル15からの押出し液量を調整した。乾燥後の残留NMP量は35.2質量%であった。なお、この残留NMP量は、最外層乾燥後に測定しているので、最内層と最外層を併せた残留NMP量となっている。
【0113】
上記のようにして得られた最内層カーボンブラック分散ポリイミド前駆体乾燥膜上に、最外層カーボンブラック分散ポリイミド前駆体乾燥膜を積層した円筒成型管11を、200℃で30分間、260℃で30分間、300℃で30分間、320℃で20分間加熱させて、カーボンブラック分散ポリイミド皮膜を形成した。その後、円筒成型管11の温度が室温(25℃)にまで冷えたところで、円筒成型管11よりポリイミド樹脂皮膜を剥離した。得られたポリイミド樹脂皮膜を362mmの幅で切断し、中間転写ベルトaを得た。得られた中間転写ベルトaを2枚つなぎ合わせて周長2111mmの中間転写ベルトA1を得た。
【0114】
また、中間転写ベルトaの残りの切れ端を用いて最外層・最内層の膜厚を測定したところ、それぞれ31.2μm、64.9μmであった。また、ρs、ρvおよびρexsを測定したところ、それぞれ12.58LogΩ/□、13.27LogΩ・cmおよび11.58LogΩ/□であった。結果を表1に示す。
【0115】
(中間転写ベルトA2〜A12の作製)
中間転写ベルトA1の作製において、最内層に含有されるカーボンブラック量、最外層に含有されるカーボンブラック量、最内層カーボンブラック分散ポリイミド前駆体乾燥膜を形成する際の塗布後における乾燥温度と時間をそれぞれ表1に示す値に変えた以外は、中間転写ベルトA1と同様にして中間転写ベルトA2〜A12を作製した。なお、中間転写ベルトA2〜A16においては最内層と最外層の乾燥条件は等しく、それぞれ表1に示す乾燥条件とした。最外層膜厚、最内層膜厚、ρs、ρv、ρexs、及び最内層の表面抵抗率の常用対数値を測定したところ、それぞれ表1の値となった。
【0116】
(中間転写ベルトB1の作製)
中間転写ベルトA1の作製において、導電剤としてカーボンブラックではなくポリアニリンを用い、膜厚を80μmとした以外は、中間転写ベルトA1や従来の中間転写ベルトと同様にして1層の中間転写ベルトB1を作製した。実施例A1と同様に抵抗率を測定した結果を表1に示した。中間転写ベルトB1では導電剤をポリアニリンとしたが限定する必要はなく、カーボンブラックでもよい。また、塗布や乾燥条件も限定される必要はなく、単層で表1に記載のように最外層表面抵抗率の常用対数値ρsと最内層表面抵抗率の常用対数値ρiとの関係がρs≦ρiとなっていれば製造方法は限定されない。
【0117】
【表1】





【0118】
(実施例1)
図1に示す基本構成を有するフルカラー複合機(DocuColor 8000 Digital Press:富士ゼロックス社製)を改造した画質評価機に、上記調整した中間転写ベルトA1と、体積抵抗率の常用対数値が7.0LogΩの一次転写ロールを搭載した。
【0119】
この画質評価機を用い、A3用紙(J紙:富士ゼロックス社製)にて、
温度28℃、湿度85%RHの環境下、及び10℃、15%RHの各々の環境下で、像保持体101と一次転写ロール105とのオフセット量D(図9〜図11等参照)を、3.0mm,3.5mm,及び4.5mmの各々に調整し、各々において12枚の連続プリントを行った。
プリント時は一次転写ロールに印加される転写電流を、温度28℃、湿度85%RHの環境下では45μAとし、10℃、15%RHの各々の環境下では45μAとし、二次転写ロールに印加される転写電圧を温度28℃、湿度85%RHの環境下では1.5kVとし、10℃、15%RHの各々の環境下では3.0kVに設定した。出力画像としては、温度28℃、湿度85%RHの環境下ではハーフトーンパターン1(Magenta 20%濃度)およびフルカラーの階調パターン1を印字すると共に、10℃、15%RHの環境下ではハーフトーンパターン2(Red 40%濃度)およびフルカラーの階調パターン1を印字し、各々12枚目の、形成画像について、画像欠陥評価を行った。この画像欠陥評価としては、転写ムラ、円弧状白抜け、樹木の枝分かれ状白抜け、及び細かな白点(放電マーク)の各々を評価した。評価基準は以下の通りとした。
【0120】
<転写ムラ評価>
形成されたフルカラーの階調パターン1を目視にて評価することで、転写ムラを評価した。評価基準は以下の通りとした。
<転写ムラ評価基準>
○:転写ムラは未発生。
△:非常に軽微な(目視にて確認出来るか出来ない程度の)転写ムラが全画像領域の20%以下の範囲内で発生。
×:目視にてはっきり判別可能な程度の転写ムラが発生、または非常に軽微な転写ムラが全画像領域の20%を超える領域で発生。
【0121】
<円弧状白抜け評価>
形成されたハーフトーンパターン1を目視にて評価することで、転写ムラを評価した。評価基準は以下の通りとした。
<円弧状白抜け評価基準>
○:円弧状の白抜け未発生。
×:円弧状の白抜けが1個以上観察される。
【0122】
<樹木の枝分かれ状白抜け評価>
形成されたハーフトーンパターン2を目視にて評価することで、樹木の枝分かれ状白抜け評価を行った。評価基準は以下の通りとした。
<樹木の枝分かれ状白抜け評価基準>
○:樹木の枝分かれ状白抜け未発生。
×:樹木の枝分かれ状白抜けが1個以上観察される。
【0123】
<細かな白点(放電マーク)の評価>
形成されたフルカラーの階調パターン1を目視にて評価することで、細かな白点(放電マーク)の評価を行った。評価基準は以下の通りとした。
<細かな白点(放電マーク)の評価基準>
○:細かな白点(放電マーク)未発生。
△:細かな白点(放電マーク)が全画像領域の20%以下の範囲内で観察される。
×:細かな白点(放電マーク)が20%を超える領域で観察される。
【0124】
以上の評価結果を表2〜表4に示した。
【0125】
(実施例2〜実施例3)
実施例1で使用した一次転写ロールに変えて、体積抵抗率の常用対数値が7.7LogΩの一次転写ロールを用いたものを実施例2とし、体積抵抗率の常用対数値が8.5LogΩの一次転写ロールを用いたものを実施例3とし、実施例1と同一条件にて画像形成を行い、評価を行った。評価結果を表2〜表4に示した。
【0126】
(実施例4〜実施例6)
実施例1〜実施例3において、中間転写ベルトA1に変えて中間転写ベルトA2を用いた以外は、実施例1〜実施例3の各々と同じ条件にて画像形成を行い、評価を行ったものを実施例4〜実施例6の各々とした。評価結果を表2〜表4に示した。
【0127】
(実施例7〜実施例9)
実施例1〜実施例3において、中間転写ベルトA1に変えて中間転写ベルトA3を用いた以外は、実施例1〜実施例3の各々と同じ条件にて画像形成を行い、評価を行ったものを実施例7〜実施例9の各々とした。評価結果を表2〜表4に示した。
【0128】
(実施例10〜実施例12)
実施例1〜実施例3において、中間転写ベルトA1に変えて中間転写ベルトA4を用いた以外は、実施例1〜実施例3の各々と同じ条件にて画像形成を行い、評価を行ったものを実施例10〜実施例12の各々とした。評価結果を表2〜表4に示した。
【0129】
(実施例13〜実施例15)
実施例1〜実施例3において、中間転写ベルトA1に変えて中間転写ベルトA5を用いた以外は、実施例1〜実施例3の各々と同じ条件にて画像形成を行い、評価を行ったものを実施例13〜実施例15の各々とした。評価結果を表2〜表4に示した。
【0130】
(実施例16〜実施例18)
実施例1〜実施例3において、中間転写ベルトA1に変えて中間転写ベルトA6を用いた以外は、実施例1〜実施例3の各々と同じ条件にて画像形成を行い、評価を行ったものを実施例16〜実施例18の各々とした。評価結果を表2〜表4に示した。
【0131】
(実施例19〜実施例21)
実施例1〜実施例3において、中間転写ベルトA1に変えて中間転写ベルトA7を用いた以外は、実施例1〜実施例3の各々と同じ条件にて画像形成を行い、評価を行ったものを実施例19〜実施例21の各々とした。評価結果を表2〜表4に示した。
【0132】
(実施例22〜実施例24)
実施例1〜実施例3において、中間転写ベルトA1に変えて中間転写ベルトA8を用いた以外は、実施例1〜実施例3の各々と同じ条件にて画像形成を行い、評価を行ったものを実施例22〜実施例24の各々とした。評価結果を表2〜表4に示した。
【0133】
(実施例25〜実施例27)
実施例1〜実施例3において、中間転写ベルトA1に変えて中間転写ベルトA9を用いた以外は、実施例1〜実施例3の各々と同じ条件にて画像形成を行い、評価を行ったものを実施例25〜実施例27の各々とした。評価結果を表2〜表4に示した。
【0134】
(実施例28〜実施例30)
実施例1〜実施例3において、中間転写ベルトA1に変えて中間転写ベルトA10を用いた以外は、実施例1〜実施例3の各々と同じ条件にて画像形成を行い、評価を行ったものを実施例28〜実施例30の各々とした。評価結果を表2〜表4に示した。
【0135】
(実施例31〜実施例33)
実施例1〜実施例3において、中間転写ベルトA1に変えて中間転写ベルトA11を用いた以外は、実施例1〜実施例3の各々と同じ条件にて画像形成を行い、評価を行ったものを実施例31〜実施例33の各々とした。評価結果を表2〜表4に示した。
【0136】
(実施例34〜実施例36)
実施例1〜実施例3において、中間転写ベルトA1に変えて中間転写ベルトA12を用いた以外は、実施例1〜実施例3の各々と同じ条件にて画像形成を行い、評価を行ったものを実施例34〜実施例36の各々とした。評価結果を表2〜表4に示した。
【0137】
(比較例1〜比較例2)
実施例1で使用した一次転写ロールに変えて、体積抵抗率の常用対数値が6.9LogΩの一次転写ロールを用いたものを比較例1とし、体積抵抗率の常用対数値が8.6LogΩの一次転写ロールを用いたものを比較例2とし、実施例1と同一条件にて画像形成を行い、評価を行った。評価結果を表4に示した。
【0138】
(比較例3〜比較例7)
実施例1で使用した一次転写ロールに変えて、体積抵抗率の常用対数値が6.9LogΩの一次転写ロールを用いたものを比較例3とし、体積抵抗率の常用対数値が7.0LogΩの一次転写ロールを用いたものを比較例4とし、体積抵抗率の常用対数値が7.7LogΩの一次転写ロールを用いたものを比較例5とし、体積抵抗率の常用対数値が8.5LogΩの一次転写ロールを用いたものを比較例6とし、体積抵抗率の常用対数値が8.6LogΩの一次転写ロールを用いたものを比較例7とし中間転写ベルトA1に変えて中間転写ベルトB1を用いた以外は、実施例1と同じ条件にて画像形成を行い、評価を行ったものを比較例3〜比較例7とした。評価結果を表4に示した。
【0139】
【表2】




【0140】
【表3】




【0141】
【表4】



【0142】
表2〜表4に示されるように、中間転写ベルトの最内層の表面抵抗率の常用対数値が、最外層の表面抵抗率の常用対数値に比べて小さくなるように調整され、且つ一次転写ロールの体積抵抗率の常用対数値が7LogΩ以上8.5LogΩ以下の範囲である実施例1〜実施例36では、一次転写ロールの体積抵抗率の常用対数値が7LogΩ未満、または8.5LogΩを超える値である比較例1、比較例2、最内層の表面抵抗率の常用対数値が最外層の表面抵抗率の常用対数値に比べて大きい比較例3〜比較例7に比べて、画質評価として行った転写ムラ、円弧状白抜け、樹木の枝分かれ状白抜け、及び細かな白点の全ての評価項目について、オフセット量が変動した場合であっても、常に良好な結果が得られた。
【0143】
詳細には、例えば、一次転写ロールの体積抵抗値が7.7LogΩの場合には、実施例1〜実施例36では、オフセット量Dが3mm、3.5mm、及び4.5mmの何れであっても、良好な結果が得られており、オフセット量Dが変動しても良好な画像が得られる範囲(許容範囲)が広い事が分かる。一方、一次転写ロールの体積抵抗値の常用対数値が7LogΩ未満である比較例1では、オフセット量Dが上記何れの値であっても転写ムラが見られる。また、一次転写ロールの体積抵抗値の常用対数値が8.5LogΩを超える比較例2では、オフセット量が3.5mmより大きくなると、樹木の枝分かれ状白抜けや細かな白点(放電マーク)が発生している。
そして、比較例2〜4では、各々画質評価結果として全ての項目について良好な結果が得られているのは各々1点(比較例2では3mm、比較例5では3mm、比較例6では3mm)もしくは設定可能範囲なし(比較例3、比較例4、比較例7)であり、画像形成装置製造時のバラツキ等によりオフセット量Dにバラツキがある場合に、全ての画像形成装置において良好な画質が得られるとは言えないことが分かる。
以上のことから、実施例では、比較例に比べて、オフセット量Dにばらつきがあっても、良好な画質が得られ、オフセット量Dの許容範囲(良好な画質の得られる許容範囲)が比較例に比べて広いといえる。
【0144】
さらに、中間転写ベルトの最内層の表面抵抗率の常用対数値が、最外層の表面抵抗率の常用対数値に比べて小さくなるように調整され、且つ一次転写ロールの体積抵抗率の常用対数値が7LogΩ以上8.5LogΩ以下の範囲である実施例1〜実施例36の内、さらに、中間転写ベルトが上記式(1)〜(3)の全てを満たす実施例である実施例1〜18では、該式(1)〜(3)の少なくとも1つを満たさない実施例19〜36に比べて、全ての画像評価項目について更なる良好な結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本実施形態の画像形成装置の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本実施形態の中間転写ベルト作製するために用いられる、円筒成形管塗布装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【図3】(A)〜(C)は、本実施形態の中間転写ベルトの一例を示す模式断面図である。
【図4】本実施形態の中間転写ベルトの表面抵抗率測定装置の断面概略図である。
【図5】本実施形態の中間転写ベルトの体積抵抗率測定装置の断面概略図である。
【図6】本実施形態の中間転写ベルトの極表面の沿面抵抗率測定装置の断面概略図である。
【図7】本実施形態の中間転写ベルトの表面抵抗率および体積抵抗率測定装置に用いる電極の平面概略図である。
【図8】本実施形態の中間転写ベルトの極表面の沿面抵抗率測定装置に用いる電極の平面概略図である。
【図9】本実施の形態の画像形成装置における一次転写部の一例を示す模式図である。
【図10】従来の画像形成装置における一次転写部の一例を示す模式図である。
【図11】本実施の形態の画像形成装置における一次転写部の一例を示す模式図である。
【図12】従来の画像形成装置における一次転写部の一例を示す模式図である。
【図13】一次転写ロール105の体積抵抗を測定装置の一例を示す概略模式図である。
【符号の説明】
【0146】
101a〜101d 像保持体
103a〜103d 現像装置
105a〜105d 一次転写ロール
107 中間転写ベルト
109 二次転写ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像を形成される像保持体と、
前記像保持体上に形成された前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体上の前記トナー像が転写されると共に該転写されたトナー像を保持する中間転写ベルトと、
前記像保持体との間で前記中間転写ベルトを挟持するように前記中間ベルトの内周面に接触配置され、前記トナー像を前記像保持体から前記中間転写ベルトへ転写する一次転写ロールと、
前記中間転写ベルト上に保持された前記トナー像を記録媒体へ転写する二次転写ロールと、
を備え、
前記一次転写ロールの体積抵抗率の常用対数値が7LogΩ・cm以上8.5LogΩ・cm以下であり、
前記中間転写ベルトが厚み方向に積層された複数の層からなり、且つ該複数層の内の少なくとも最も内周面側の最内層の表面抵抗率の常用対数値が、最も外周面側の最外層の表面抵抗率の常用対数値より小さい画像形成装置。
【請求項2】
前記中間転写ベルトは、下記式(1)〜式(3)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
11.6 LogΩ/□≦ρs≦14.0 LogΩ/□ (1)
10.3 LogΩ・cm≦ρv≦14.0 LogΩ・cm (2)
9.8 LogΩ/□≦ρexs≦13.4 LogΩ/□ (3)
(上記式(1)〜式(3)中、ρsは前記中間転写ベルトの前記最外層の表面抵抗率の常用対数値を示し、ρvは前記中間転写ベルトの体積抵抗率の常用対数値を示し、ρexsは前記中間転写ベルトの内周面極表面の沿面抵抗率の常用対数値をそれぞれ表す。)
【請求項3】
前記最外層と前記最内層とが、下記式(4)を満たすことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
1.2≦du/dl≦4.0 (4)
(上記式(4)中、duは最外層の膜厚(μm)を、dlは最内層の膜厚(μm)を、それぞれ表す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−44329(P2010−44329A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209960(P2008−209960)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】