説明

画像形成装置

【課題】 ノズルの目詰まり等を防ぎ、印字不良の発生を抑制するとともに、インクの選択範囲を広げることが可能となる画像形成装置を得る。
【解決手段】 圧電体16を使用し、圧電体の共振により発生した超音波によりインクを飛翔させる音響インクジェット方式の画像形成装置において、超音波集束のための音響レンズ13として、流体レンズを使用する。さらに、該音響レンズの焦点位置を可変することにより、飛翔インクサイズを可変にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電体の共振により発生した超音波によりインクを飛翔させる音響インクジェット方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の画像形成装置としては、種々の構造を有するものが多数提案されており、たとえばピエゾ方式やサーマル方式のインクジェット方式によるものが知られている。
【0003】
その例として、この種の従来装置には、たとえば音波発生装置から音波を発生させて、この音波をガラス等の無機系材料やエポキシ樹脂等からなる音響レンズで集束させてインク液滴を飛翔させるようにした構成による装置が周知である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2007−245632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したピエゾ方式やサーマル方式によるものでは、ノズルの目詰まりが発生しやすく印字不良の発生頻度が高いという問題がある。
【0006】
また、ピエゾ方式では、複雑なオリフィス構造を形成する必要があり、コストが高くなっていた。一方、サーマル方式では、ヘッド部でのヒーターによる加熱が必要なので、インクの熱対策が必要となり、インク選択の範囲が狭くなる不具合が生じていた。
【0007】
さらに、上述した従来装置では、インクの液滴サイズを可変することも不可能であった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ノズルの目詰まり等を防ぎ、印字不良の発生を抑制するとともに、インクの選択範囲を広げることが可能となる画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る画像形成装置は、圧電体を使用し、圧電体の共振により発生した超音波によりインクを飛翔させる音響インクジェット方式の画像形成装置において、超音波集束のための音響レンズとして、流体レンズを使用することを特徴とする。
【0010】
本発明(請求項2記載の発明)に係る画像形成装置は、請求項1において、音響レンズの焦点位置を可変することにより、飛翔インクサイズを可変にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明に係る画像形成装置によれば、超音波を使用する音響インクジェット方式において、超音波集束のための音響レンズとして、流体レンズを使用することにより、従来よりも大きなノズル径を使用することが可能で、これによりノズルの目詰まりが発生しないという優れた効果がある。
【0012】
さらに、本発明によれば、インクを加熱することがないから、インクの選択幅が広く、所要の印字性能を得ることができる。
【0013】
また、本発明によれば、音響レンズの焦点位置を可変することにより、飛翔インクサイズを可変することが可能であり、印字品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1ないし図5は本発明に係る画像形成装置の第1実施形態を示し、これらの図において、本発明の画像形成装置は、音響インクジェット記録方式によるものであって、インクを記録紙へ選択的に飛翔させて記録パターンを記録紙上に作成するようになっている。
【0015】
その模式的断面図を図1に示す。
これを簡単に説明すると、この画像形成装置は、大きく分けて給紙部A、記録部B、排紙部Cで構成されている。
給紙部Aは、給紙カセット1、給紙ローラ2で構成され、不図示の中央演算装置から送られて来る給紙データに応じて記録部Bへ用紙Pを供給する。
【0016】
記録部Bは、搬送ローラA3、搬送ローラB7、プラテンローラ4、記録ヘッド5で構成されている。記録ヘッド5はライン型を採用する。印字データに応じて記録ヘッド5からインクIが用紙Pへ向けて飛翔し、記録が行われる。
【0017】
記録部Bで記録が完了した用紙Pは、搬送ローラB7の回転により排紙部Cへ向かう。排紙部Cでは、記録が完了した用紙Pをスタックする。
【0018】
記録ヘッド5の構成を図2、3、4、5、に示す。
記録ヘッド5は、図2に示すように、ガラス基板9に形成された振動子14と振動子14に対応してガラス基板9を介してインク層10側に配置された音響レンズ13と上部プレート12で構成されている。
【0019】
本画像形成装置は、音響インクジェット方式であり、振動子14で発生した超音波がガラス基板9を伝播し、音響レンズ13で集束され、インク層10中のインクを上部プレート12の開口部11から選択的に飛翔させる。
【0020】
開口部11は、飛翔インク滴サイズよりも十分に広く、インク滴サイズを制御する機能は持っていない。従来のサーマル方式やピエゾ型インクジェットではノズル径がΦ20μm前途と非常に小さく目詰まりしやすかったが、本発明では、開口部11は、Φ50μm程度と従来よりもかなり大きくなっており、インク目詰まりの問題も発生しない。
【0021】
図3、4、5で振動子14と音響レンズ13の構成を説明する。
振動子14は、共通電極17、圧電体16、セグメント電極15とで構成される。圧電体16は、ZnO,PZT等で構成される。
【0022】
印字データに応じて共通電極17、セグメント電極15に印加される電界によって、圧電体16は振動し超音波を発生する。例えば、圧電体16に6μm厚のPZT膜を使用した場合、250MHz Vpp20VのAC電界で駆動する。発生した超音波は、ガラス基板9を介して音響レンズ13で集束される。
【0023】
音響レンズ13は、エレクトロウエッティングを使用した液体レンズである。音響レンズ13は、円筒状の形状をしており、内部には、導電性の水性溶媒と非導電性のオイル2種類の溶媒が入れられており、2種類の溶媒の界面がレンズとしての機能を有する。
【0024】
図5に音響レンズ14の配置図を示す。
この図5は、振動子16側から見た図であるが、セグメント電極15と共通電極17の交点部に音響レンズ14の中心となるように配置される。
【0025】
音響レンズ13は、電極A18,電極B21、絶縁体19,20、ガラス板22で構成されており、インクが内部に入らないように密閉されている。音響レンズ13内部は、ガラス基板9上以外撥水処理されている。電極A18,電極B21には、電源装置23が接続されている。
【0026】
電源装置23から電圧が印加されていないと音響レンズ13内部の液体の状態は内部が撥水処理をされているので、オイル系溶媒24が壁面を濡らしていくと、図4(A)に示すような状態になる。電源装置23から電圧が印加されると、音響レンズ13内部の濡れ性が変化するので水溶性溶媒25が濡らして行き、図4(B)のように界面が凹レンズ形状を形成する。
電源装置23から印加される電圧を調整することにより、音響レンズの焦点距離が変化する。
【0027】
通常の印字パターン時には、図6に示すように、開口部11のインク表面に超音波が集束するように調整されている。集束した超音波によりメニスカスが形成され、インク飛翔を行い、印字を完成させることができる。
【0028】
また、音響レンズの焦点位置をインク層表面よりずらした位置にすると図7(B)のように焦点がインク層表面に合わせたとき図7(A)よりもメニスカスが大きくなり、飛翔インク滴サイズも大きくなる。
【0029】
このようにして、音響レンズ13の焦点位置を変化させることにより飛翔インク滴サイズを可変することが可能になる。これにより、従来のピエゾ方式やサーマル方式のインクジェット方式ではできなかったインク滴サイズ可変が可能なる。
【0030】
また、使用するインクの粘度、表面張力が変わった場合には、適切な飛翔インク液滴サイズが得られるように焦点位置を可変して調整することも可能になるので、使用する出来るインクの範囲が広くなり、各種メディアに対応可能になる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、画像形成装置を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示し、その模式的断面図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置において、記録ヘッドの構成を示す要部断面図である。
【図3】振動子と音響レンズの構成を説明するための拡大断面図である。
【図4】(A),(B)は図3の構成の動きを説明するための図である。
【図5】図2の概略平面図である。
【図6】音響レンズによる通常状態での動作説明図である。
【図7】(A),(B)は飛翔インク滴サイズの可変状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0033】
5…記録ヘッド、6…インクタンク、9…ガラス基板、10…インク層、11…開口部、12…上部プレート、13…音響レンズ、14…振動子、15…セグメント電極、16…圧電体、17…共通電極、18…電極A、19…絶縁体、20…絶縁体、21…電極B、22…ガラス板、23…電源装置、24…オイル系溶媒、25…水系溶媒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体を使用し、圧電体の共振により発生した超音波によりインクを飛翔させる音響インクジェット方式の画像形成装置において、
超音波集束のための音響レンズとして、流体レンズを使用することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記音響レンズの焦点位置を可変することにより、飛翔インクサイズを可変にすることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−52316(P2010−52316A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220717(P2008−220717)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】