説明

画像形成装置

【課題】 カッタユニットのカッタ刃の全領域での切断頻度の均一化を図ることでカッタ刃の耐久性向上を図ることができ、高速連続切断を容易に実現することも可能なカッタユニットを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】 記録媒体7を搬送方向と交差する方向に切断する固定刃11および可動刃12を有するカッタユニット2を備えた画像形成装置である。カッタユニットを搬送方向と交差する方向へ移動させる移動手段と、カッタの刃面の切断使用頻度の分布に応じて前記カッタユニットを複数の切断位置へ移動させるように移動手段を制御する制御手段150と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される記録媒体を搬送方向と交差する方向に切断するカッタユニットを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリンタ、複写機あるいはファクシミリ等の機能を有する画像形成装置は、画像情報に基づいて記録ヘッドにより記録媒体に画像を記録していく。記録媒体としては、紙、プラスチックシート、印画紙、OHP用シート、布等、種々の材質のものを使用できる。画像形成装置は、走査方式により、シリアルタイプとラインタイプに分けることができる。シリアルタイプは、記録ヘッドを移動させて主走査する1ライン分の記録と副走査による改行動作とを交互に繰り返す方式である。ラインタイプは、1ライン分ずつ一括して記録しながら副走査のみで記録していく方式である。さらに、画像形成装置は、記録ヘッドの種類によって、インクジェット式、熱転写式、レーザービーム式、感熱式、ワイヤドット式などに分けることができる。
【0003】
このような画像形成装置には、一定サイズのカット紙に記録し、排出する構成の他に、ロール状に巻かれた長尺の記録媒体(ロール紙)を巻き出して搬送することで所定領域を記録し、記録後に切断して排出する構成のものがある。このような長尺の記録媒体に記録する画像形成装置には、画像形成された部分を切断するためのカッタ刃を有する切断装置が備えたものが多い。このカッタ刃は、使用するに連れて刃先が磨耗していく。また、カッタ刃は、刃面の同じ箇所で切断し続けるとその部分の磨耗が進み、局所的に切れ味が低下することがある。切れ味が低下すると、切断端縁の真直性が劣化したり、毛羽や皺が発生したり、切断不良になるなどの不都合が生じることがある。その場合、刃面の一部が磨耗した場合でも、カッタ刃自体(刃面全体)を交換する必要がある。
【0004】
このような観点から、従来より、カッタ刃の耐久性を向上させるための手段が提案されている。特許文献1には、搬送方向と交差する方向にカッタ刃を走行させて記録媒体を切断する切断装置において、カッタ刃の突出量を段階的に切り替え可能とし、カッタ刃面の切断に用いる部分を所定の順序で切り替える構成のものが開示されている。このように刃面の切断に用いる領域を切り替えることにより、刃面の未使用部位の破損を防ぐとともに、カッタを無駄なく有効に使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−001292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来技術では、一度の切断動作においては刃面の特定領域を集中的に使用するため、カッタ刃面の磨耗が局部的に早急に進行することになる。また、刃面の切断に用いる領域を切り替え可能にしたとしても、近年の高速、大量の印刷工程およびメンテナンス性の向上に対応するためには、更なるカッタ刃の耐久性向上が要請されていた。また、上記の従来技術では、一度の切断動作においてカッタ刃を最低でも記録媒体の全幅にわたって往復移動させる必要があり、その場合の切断速度の点でも制限があるため、高速連続切断を実現することが困難であった。
【0007】
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、カッタ刃面の全領域での切断頻度の均一化を図ることでカッタ刃の耐久性向上を図ることができ、高速連続切断を容易に実現することも可能なカッタユニットを備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、搬送される記録媒体に記録ヘッドにより画像を記録する画像形成装置において、記録媒体の搬送方向と交差する方向に切断する固定刃および可動刃を有するカッタユニットと、前記カッタユニットを搬送方向と交差する方向へ移動させる移動手段と、カッタの刃面の切断使用頻度の分布に応じて前記カッタユニットを複数の切断位置へ移動させるように前記移動手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カッタ刃面の全領域での切断頻度の均一化を図ることでカッタ刃の耐久性向上を図ることができ、高速連続切断を容易に実現することも可能なカッタユニットを備えた画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態に係る切断装置を備えた画像形成装置の斜視図
【図2】一実施形態に係る切断装置を備えた画像形成装置の縦断面図
【図3】一実施形態に係るカッタユニットの正面図
【図4】カッタユニットを移動させるときの移動台とガイドシャフトの断面図(a)とカッタユニットで記録媒体を切断するときの移動台とガイドシャフトの断面図(b)
【図5】一実施形態に係る画像形成装置の制御部のブロック図
【図6】刃面全域の劣化の均一化を図るための第1の実施形態に係る切断動作のフローチャート
【図7】刃面全域の切断使用頻度の分布のグラフ(a)と、これから切断に使用する領域の予定切断使用頻度のグラフ(b)
【図8】刃面全域の切断使用頻度の均一化に反する変化を示すグラフ
【図9】刃面全域の切断使用頻度の均一化の方向の変化を示すグラフ
【図10】刃面の切断領域を切り替えるためにカッタをF1方向に移動させたときの画像形成装置の斜視図
【図11】刃面の切断領域を切り替えるためにカッタをF2方向に移動させたときの画像形成装置の斜視図
【図12】刃面の切断領域を切り替えない場合の画像形成装置の斜視図
【図13】刃面全域の劣化の均一化を図るための第2の実施形態に係る切断動作のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一または対応部分を示すものである。
〔第1の実施形態〕
図1は一実施形態に係る切断装置を備えた画像形成装置の斜視図であり、図2は一実施形態に係る切断装置を備えた画像形成装置の縦断面図である。図1および図2は画像形成装置100がラインタイプの場合を示し、記録媒体の全幅をカバーする長さを有する記録ヘッド3が用いられる。また、図示の画像形成装置100は、画像情報に基づいて記録ヘッドに設けられた複数のノズルからインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置である。さらに、図示のインクジェット記録装置はカラー記録用であり、記録ヘッド3は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色インクを吐出する4個の記録ヘッド3Bk、3Y、3M、3Cを搬送方向に並列配置して構成されている。
【0012】
記録ヘッド3のノズル面(インク吐出面)と所定隙間をおいて対向する位置に、搬送される記録媒体を支持するプラテン4が配されている。記録媒体として、給紙ユニット9のロール紙ホルダ8から解き出されるロール紙7が使用されている。各記録ヘッドの間と搬送最下流の記録ヘッドの下流側には搬送ローラ5d、5c、5b、5aが配されている。各搬送ローラには従動回転するピンチローラ6d、6c、6b、6aが配されている。これらのピンチローラは、それぞれの搬送ローラに弾性付勢力で押圧されることで搬送力を生み出している。給紙ユニット9と記録ヘッド3との間には、ロール紙7を画像形成部へ給送するための駆動ローラおよび従動ローラからなる給紙ローラ対10が配されている。給紙ローラ対10は、不図示のステッピングモータ等の駆動源によって駆動される。
【0013】
搬送最下流の搬送ローラ5aの下流側には、ロール紙を切断するためのカッタユニット2が設けられている。カッタユニット2は、制御部150で制御される移動手段により、搬送方向と交差(通常では直交)する方向に配されたガイドシャフト13に沿って移動可能に装着されている。カッタユニット2は、ロール紙7の幅方向に配された固定刃11と、搬送経路を挟んで固定刃11から離れた待機位置と固定刃11に重なるカッティング位置との間で移動(揺動)可能な可動刃12と、可動刃12をカッティング動作させるための駆動モータ17およびその伝動機構とを備えている。移動刃12を待機位置から固定刃11と重なる切断位置に向けて移動させることにより、記録媒体7を切断する。
【0014】
このカッタユニット2は、固定刃11、可動刃12、駆動モータ17およびその伝動機構などの各要素を移動台14上に搭載して構成されている。移動台14をガイドシャフト13に沿って不図示の移動手段により移動させることにより、記録媒体を切断するときのカッタユニット2の位置(搬送方向と交差する方向における切断位置)を切り替え可能に構成されている。切断装置50には、カッタユニット2を搬送方向と交差する方向へ移動させるための移動手段15と、カッタ(固定刃11もしくは可動刃12)の切断使用頻度の分布に応じてカッタユニット2を複数の切断位置へ移動させるように移動手段15を制御する制御手段(制御手段150の一部)とを備えている。
【0015】
制御手段150は、記録媒体の幅が入力される入力手段と、カッタユニット2の移動量を決定する移動量決定手段24と、移動量決定手段24で決定された移動量だけカッタユニット2を移動させる移動量制御手段16とを備えている。移動量決定手段24は、カッタユニット2のカッタの刃面の全長における使用頻度による劣化が均一化されるようにカッタユニット2の移動量を決定する。そして、移動量制御手段16は、決定された移動量だけ移動手段15を駆動してカッタユニット2を移動させる。
【0016】
切断装置50についてさらに具体的に説明する。切断装置50は、駆動源23で駆動される移動手段15によるカッタユニット2を移動を制御する移動制御手段16を備えている。カッタユニット2の移動量は、移動量決定手段24から移動制御手段16に付与される情報によって制御される。固定刃11は、移動台14の前後端部に固定された保持部材18a、18bに固定されている。可動刃12は、図3に示すように、一端部で保持部材18aに設けられた支点31を中心に揺動可能に取り付けられるとともに、他端部では可動刃プレート21に対しピン32を介して矢印E1−E2方向に摺動自在に連結されている。
【0017】
可動刃プレート21は、保持部材18bに対し、支点33を中心に回動可動に支持されている。保持部材18bには、可動刃12のカッティング動作を駆動するための駆動モータ17が取り付けられている。駆動モータ17の出力軸19の軸心から半径方向にずれた位置に偏心ピン20が設けられ、この偏心ピン20は可動刃プレート21に形成された溝状の長孔22に対し摺動自在に係合している。駆動モータ17の駆動により偏心ピン20が出力軸19を中心に回転移動すると、偏心ピン20が長孔22に沿ってスライドすることで可動プレート21が支点33を中心に揺動(枢動)する。すると、可動刃プレート21にピン32を介してスライド自在に連結された可動刃12は、その支点31を中心に所定角度範囲で揺動する。これにより、可動刃12は、固定刃11から搬送経路を挟んで対向する待機位置と固定刃11に重なって記録媒体を切断するカッティング位置との間で移動する。つまり、駆動モータ17を制御することでカッタユニット2の切断動作を制御することができる。
【0018】
カッタユニット2は、移動手段15によってガイドシャフト13に沿って矢印F1−F2方向に移動させることにより、記録媒体7を切断するときの切断位置を切り替えることができる。つまり、カッタユニット2の搬送方向と交差する方向における切断位置は、モータ等の駆動源23による移動手段15の駆動を移動制御手段16によって制御することにより、所定の位置に切り替えることができる。移動手段15としては、例えば、アイドラプーリに掛け回されたタイミングベルトを介して駆動する伝動機構や、ラックピニオン式伝動機構などが使用されるが、その他の伝動方式のものでも良い。
【0019】
図4(a)はカッタユニットの移動させるときの移動台とガイドシャフトの断面図であり、図4(b)はカッタユニットで記録媒体を切断するときの移動台とガイドシャフトの断面図である。カッタユニット2の移動台14には軸受孔34が形成され、軸受孔34はガイドシャフト13に対し摺動自在に嵌合されている。また、ガイドシャフト13の上部に形成された突起部35に移動台14に形成された溝部36を係合させることにより、移動台14は、ガイドシャフト13に対し、回転方向に所定の遊びをもって位置規制されるとともに上下方向に移動可能に嵌合されている。軸受孔34の下半部には断面V字状のV字形状部37が設けられ、カッタユニット2を上方へ付勢したときにガイドシャフト13の周面の2箇所38a、38bで線接触(断面で見ると点接触)するようになっている。
【0020】
本実施形態では、カッタユニット2を上方へ付勢可能な不図示の付勢手段が設けられており、記録媒体を切断するときにカッタユニット2を付勢することでV字形状部37をガイドシャフト13に突き当てるように構成されている。V字形状部37を形成する2面は45度〜135度の角度を有し、それぞれがガイドシャフト13に当接する点を結ぶ線分の二等分線を押圧方向(図4(b)中の矢印G方向)として移動台14をバネで押圧することが可能になっている。かかる構成によれば、軸受孔34がガイドシャフト13と接する2面に力が効率良く作用し、カッタユニット2の位置規制に効果的である。このカッタユニット2の押圧手段は、カムによる押圧手段など、他の手段であっても良い。
【0021】
カッタユニット2を押圧してV字形状部37をガイドシャフト13に突き当てるのは、カッタユニット2が切断位置へ移動した後であれば良い。これは、カッタユニット2が移動しているときには摺動抵抗となるため、押圧状態を解除することが好ましいからである。このような構成により、ガイドシャフト13は搬送方向(図4(b)中の矢印H−H´方向)に位置ずれすることなく、ガイドシャフト13に沿って位置決めされ、ロール紙7とカッタユニット2との直角度を精度よく保持することができる。よって、ロール紙を切断するときの直角度を精度よく規定することができ、記録媒体の切断端部の直角度のばらつきを無くすことができる。
【0022】
図5は画像形成装置の制御手段150のブロック図である。図6はカッタユニットのカッタの刃面の劣化の均一化を図るための切断動作のフローチャートである。図7(a)はカッタの刃面全域の切断使用頻度の分布のグラフであり、図7(b)はカッタの刃面のこれから使用する領域の予定切断使用頻度のグラフである。図8はカッタの刃面全域の切断使用頻度の均一化に反する変化を示すグラフである。図9はカッタの刃面の切断使用頻度の均一化の方向の変化を示すグラフである。図10はカッタの刃面の切断領域を切り替えるためにカッタをF1方向に移動させたときの画像形成装置の斜視図である。図11はカッタの刃面の切断領域を切り替えるためにカッタをF2方向に移動させたときの画像形成装置の斜視図である。
【0023】
以下に、図6のフローチャートに沿って、固定刃11および可動刃12の刃面の劣化を均一化するための動作を説明する。この動作は図5の制御部150によって制御される。まず、ステップS1において、制御部150により、固定刃11および可動刃12の刃面全域での切断使用頻度(これまでの切断回数の累計)の分布を、ドライバ回路25内の不揮発性メモリ26から読み出す。刃面全域における切断使用頻度の分布の測定値は、切断する毎に更新されて逐次不揮発性メモリ26内に保持されている。ここで、現在の刃面全域における切断使用頻度の分布は、図7(a)に示すような折れ線Iであると仮定する。
【0024】
グラフIのような切断使用頻度分布を不揮発性メモリ26から読み出した(測定した)後、ステップS2において、UI画面から入力された記録媒体の幅を検知し、次に切断される記録媒体の幅に基づいて刃面の予定切断使用領域を算出する。この記録媒体幅の検知方法は、光センサ等を用いて行われるが、その他の方法であっても良い。図7(b)の折れ線(グラフ)Jは、算出した予定切断使用領域(6インチ幅の記録媒体を切断する場合)を切断するときの予定切断使用頻度を示す。刃面の各切断領域においては、現在の切断使用頻度と予定切断使用頻度とを加算したものが、切断後の切断使用頻度となる。次いで、ステップS3において、実際の切断使用頻度の分布(折れ線I)と予定切断使用領域の使用頻度(折れ線J)とに基づいて、カッタの刃面全域の劣化を均一化するために有効な刃面の使用領域を算出する。すなわち、固定刃11および可動刃12からなるカッタの刃面内のどの領域でロール紙を切断すれば、刃面全域における最大切断使用頻度(図7(a)中のMAX.)と最小切断使用頻度(図7(a)中のMIN.)との差Δの値を最小にできるのかを算出する。
【0025】
図8は、最大切断使用頻度(MAX.)を含む領域を切断領域として選択した場合を示す。図8では、折れ線Iと折れ線Jとを重ねることにより、切断後の切断使用頻度分布が折れ線Kに示すようになり、最大切断使用頻度と最小切断使用頻度との差Δの値が切断前(図7(a)中のΔ)よりも増大している。図8は、予定切断使用領域の選択を誤ったために、切断後の最大切断使用頻度と最小切断使用頻度との差を最小にすることができず、刃面全域の劣化の均一化を図ることができない場合を参考までに示すものである。
【0026】
本実施形態では、カッタの刃面の使用領域として最小切断使用頻度(MIN.)を含む領域を選択する。このような選択によれば、図9に示すように、切断した後における切断使用頻度分布の折れ線Lでは、最大切断使用頻度(MAX.)と最小切断使用頻度(MIN.)との差Δの値が最小となる。そこで、ステップS4において、算出された最大切断使用頻度(MAX.)と最小切断使用頻度(MIN.)との差Δが最小となる刃面領域を使用してロール紙を切断するために、ガイドシャフト13に沿ったカッタユニット2の移動量を決定する。この移動量の決定は、制御手段150の移動量決定手段24(図2)により行われる。
【0027】
次いで、ステップS5において、決定された移動量が0であるか否かを判別する。移動量が0である場合は、ステップS7へ進み、カッタユニット2を移動させることなく、その位置で切断動作を行う。一方、移動量が0でない場合は、ステップS6へ進み、移動制御手段16により移動手段15を動作させることにより、カッタユニット2を当該移動量の分だけ所定方向へ移動させる。そして、ステップS7において、この移動後の位置でカッタユニット2による切断動作を行う。
【0028】
ロール紙7を切断する場合、図10および図11に示すように、移動量決定手段24により決定された移動量(移動量0を含む)だけカッタユニット2を搬送方向と交差する方向に移動させる。図10は、カッタ刃(固定刃11および可動刃12)の先端寄りき刃面領域でロール紙7を切断する状態を示す。カッタ刃の先端寄りの領域の切断使用頻度がカッタ刃の根元側の領域よりも少ない場合は、カッタユニット2を矢印F1方向に移動させてカッタ刃の先端寄りの領域で切断するように制御する。一方、同じロール紙7の場合でも、カッタ刃の先端寄りの領域の切断使用頻度がカッタ刃の根元側の領域よりも高い場合は、図11に示すように、カッタユニット2を矢印F2方向に移動させてカッタ刃の根元寄りの領域を使用して切断するように制御する。このように、刃面の各領域の使用頻度に応じて使用領域を切り替えることにより、刃面全域における使用頻度を極力均一化することができ、刃面の局部的な早期劣化を防ぎながら長期間にわたってカッタ刃を有効利用することができる。
【0029】
なお、本実施形態では、記録媒体のこれから記録して切断する1枚分の領域のデータに基づいて予定切断使用領域の予定切断使用頻度を算出している。ただし、これは、各ジョブ単位など、2枚分以上の記録・切断データに基づいて予定切断使用頻度を算出し、刃面の使用領域を決定しても良く、この方がカッタユニット2の移動頻度を減らすことができ、高速画像形成に有利である。
【0030】
また、本実施形態では、固定刃11および可動刃12の刃面全域における切断使用頻度を極力均一化するために、最大切断使用頻度(MAX.)と最小切断使用頻度(MIN.)との2つのデータを利用している。ただし、これは、切断使用頻度の分布パターンに基づいて、全体的な切断使用頻度のばらつきを抑制するように刃面の切断領域を選択する構成にしても良い。いずれにしても、実際の切断使用頻度と予定切断使用頻度とに基づいて刃面全域における切断使用頻度を極力均一化する方法であれば、各種の方法を採用することができる。
【0031】
また、以上では、6インチ幅および12インチ幅の2種類のロール紙を切断する場合の切断使用頻度の均一化について説明したが、以上き切断動作は、幅寸法がどのような大きさであっても、また、幅寸法が3種類以上であっても、同様に適用可能である。さらに、本実施形態では、ロール紙7が幅方向中心を基準としてセンター給紙搬送される場合を示したが、上述の切断動作は、片側突き当て給紙もしくは片側突き当て搬送など、他の給紙搬送の場合にも同様に適用可能である。
【0032】
〔第2の実施形態〕
図13は固定刃11および可動刃12の刃面全域の劣化の均一化を図るための第2の実施形態に係る切断動作のフローチャートである。次に、図10、図11、図12および図13を用いて第2の実施形態に係る切断動作を説明する。まず、ユーザがUI画面から入力した記録媒体の幅(予定切断幅)を検知し(ステップS21)、記録媒体の幅と固定刃11の刃面の半分の領域の長さとを比較する(ステップS22)。記録媒体の幅が固定刃11の刃面の半分より大きい場合は、カッタユニット2の現在の位置が幅方向(搬送方向と交差する方向)のセンター(ホームポジション)であるか否かを確認する(ステップS23)。現在の位置がセンターでない場合は、カッタユニット2をセンターへ移動させる(ステップS24)。一方、カッタユニット2がセンター(ホームポジション)に位置している場合は、カッタユニットを移動させることなく、図12に示すような位置関係で記録媒体(ロール紙)7を切断する(ステップS31)。この場合、カッタユニット2の固定刃11および可動刃12の刃面の全長は記録媒体の幅より大きいか少なくとも同じであるので、図12に示すようにカッタユニット2をセンターに位置させることで、記録媒体の全幅を切断することができる。
【0033】
また、記録媒体の幅が固定刃11の刃面の全長の半分より小さい場合は、カッタユニット2の現在位置を読み出し(ステップS25)、固定刃11の矢印F1側もしくは矢印F2側の半分の領域で記録媒体7を切断するように、カッタユニット2の移動量および移動方向を算出して決定する(ステップS26)。本実施形態では、カッタ11、12の刃面全長における各領域の切断回数の情報を格納する不揮発性メモリ26と、記録媒体7の幅と切断回数とに基づいてカッタユニット2の移動量を変更する移動量変更手段とが設けられている。そして、移動量変更手段で決定された移動量が0であるか否かを判別する(ステップS27)。0でない場合は、その移動量分だけカッタユニット2を移動させ(ステップS28)、移動後の位置で記録媒体を切断する(ステップS31)。この際のカッタユニット2の移動動作は、移動制御手段16(図2)で駆動源23(図2)を制御するとともに駆動源23により移動手段15(図2)を駆動することにより実行される。
【0034】
一方、ステップS27で移動量が0である場合は、カッタユニット2の同位置における現在までの切断回数が設定回数(本実施形態では100回)に達しているか否かを判別する(ステップS29)。この設定回数の判別は、カッタユニット2の矢印F1、F2方向の移動後の同位置での繰り返し切断回数を更新・保持している不揮発性メモリ26(図5)に保持されている切断回数に基づいて行う。切断回数が100回に到達している場合は、カッタの刃面における切断領域を切り替えるために、移動量変更手段により、固定刃11のF1側もしくはF2側の半分の領域内で記録媒体7を切断するようにカッタユニット2の移動量および移動方向を算出して決定する(ステップS30)。そして、その移動量分だけカッタユニット2を移動させ(ステップS28)、移動後の位置で記録媒体を切断する(ステップS31)。この際のカッタユニット2の移動動作も、前述と同様、移動制御手段16(図2)で駆動源23(図2)を制御するとともに駆動源23により移動手段15(図2)を駆動することにより実行される。また、ステップS29で切断回数が100回に到達していない場合は、カッタユニット2を移動させずに記録媒体7を切断する(ステップS31)。本実施形態のその他の構成および動作は、前述の第1の実施形態と同じである。
【0035】
なお、第2の実施形態では、切断回数100回でカッタユニット2を移動させてカッタの刃面の切断領域を切り替えているが、この切断回数の条件は、刃面の強度、主力記録媒体の剛度や厚み等によって異なり、場合に応じて適宜設定できるものである。また、記録媒体の幅を検知する手段としては、光センサ等を用いる方法であっても良く、その他の方法であっても良い。本実施形態では、記録媒体7が幅方向中心を基準としてセンター給紙搬送される場合を示したが、上述の切断動作は、片側突き当て給紙もしくは片側突き当て搬送など、他の給紙搬送の場合にも同様に適用可能である。
【0036】
なお、本発明は、記録媒体の搬送による副走査のみによるラインタイプ、あるいは記録ヘッドで搬送方向と交差する方向に主走査するシリアルタイプなどの記録方式に関わらず、同様に適用可能である。また、本発明は、記録媒体がロール紙等の長尺シートである場合に限定されるものではなく、所定寸法に裁断されたカットシートなど、他の形態の記録媒体を使用する場合にも同様に適用可能である。また、記録媒体の大小、記録媒体の幅の種類、記録ヘッドの数、使用するインクの種類や性状数などに関わらず、同様に適用可能である。さらに、本発明は、紙、プラスチックフィルム、印画紙、不織布など、記録媒体の材質にも関わりなく、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
2 カッタユニット
3 記録ヘッド
4 プラテン
5 搬送ローラ
7 記録媒体(ロール紙)
11 固定刃
12 可動刃
13 ガイドシャフト
14 移動台
15 移動手段
16 移動制御手段
17 駆動モータ
24 移動量決定手段
50 切断装置
100 画像形成装置
150 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される記録媒体に記録ヘッドにより画像を記録する画像形成装置において、
記録媒体の搬送方向と交差する方向に切断する固定刃および可動刃を有するカッタユニットと、
前記カッタユニットを搬送方向と交差する方向へ移動させる移動手段と、
カッタの刃面の切断使用頻度の分布に応じて前記カッタユニットを複数の切断位置へ移動させるように前記移動手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、記録媒体の幅が入力される入力手段と、前記カッタユニットの移動量を決定する移動量決定手段と、前記移動量決定手段で決定された移動量だけ前記カッタユニットを移動させる移動制御手段と、を備え、
前記移動量決定手段は前記カッタユニットのカッタの刃面の全長における使用頻度による劣化が均一化されるように前記カッタユニットの移動量を決定し、
前記移動制御手段は前記決定された移動量だけ前記移動手段を駆動して前記カッタユニットを移動させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記カッタユニットは、記録媒体の幅方向に配された固定刃と、前記固定刃から離れた待機位置から前記固定刃と重なる切断位置に向けて移動可能な可動刃とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記カッタユニットの移動を案内するために記録媒体の搬送方向と交差する方向に配されたガイドシャフトを備え、
前記カッタユニットは、前記ガイドシャフトと摺動可能な断面V字状のV字形状部を有する移動台と、前記V字形状部を前記ガイドシャフトに突き当てるための付勢手段とを有し、
記録媒体を切断するときに前記V字形状部を前記ガイドシャフトに突き当てることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記カッタユニットのカッタ刃の全長を複数の領域に区分けして各領域における切断使用頻度を測定し、
前記切断使用頻度の測定の後に記録媒体を切断した場合の前記各領域の予定切断使用頻度を算出し、
前記切断使用頻度と前記予定切断使用頻度とに基づき、記録媒体が切断された後の前記カッタの刃面の各領域の切断使用頻度が均一化されるように、前記カッタの刃面の切断に使用する領域を選択し、
前記カッタの刃面の前記選択した領域で記録媒体を切断する位置へ前記カッタユニットを移動させるように前記カッタユニットの移動量を決定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記カッタの刃面の各領域の切断回数の情報を格納するメモリと、
記録媒体の幅と前記切断回数とに基づいて前記カッタユニットの移動量を変更する移動量変更手段と、
を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−110666(P2011−110666A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270213(P2009−270213)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】