説明

画像形成装置

【課題】画像品質の低下を招くことなく、簡単で、比較的多量な冷却液漏洩にも対応できてフェイルセーフとして最適な画像形成装置を提供する。
【解決手段】発熱部もしくはこの発熱部により昇温する昇温部から熱を受ける受熱部材102と、熱を外部へ放熱する放熱部105との間を冷却液を循環させて発熱部もしくは昇温部を冷却する冷却装置80を備えた画像形成装置である。冷却液が循環する循環経路110の配管接続部50の液漏れ防止構造60を備える。液漏れ防止構造60が、配管接続部50から流出する冷却液を吸収する吸液部材3と、吸液部材3の外側に配設されるトナー非相溶部材4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の複合機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関し、特に、装置内の現像装置等の受熱部材を液冷却方式に冷却する冷却装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらを備えた複合機等の電子写真方式の画像形成装置は、内部に書き込み装置、現像装置などの画像形成動作時に発熱を伴う複数のユニットを有しており、従来では、これらのユニットを冷却ファンによる空冷方式によって冷却を行っていた。ところで、近年画像形成処理速度の高速化は目覚ましく、各ユニットにおける発熱量が飛躍的に増加し始めた。さらに、省スペース化のニーズより、装置の小型化が求められ、従って発熱量を装置体積(もしくは発熱ユニット体積)で除算した発熱密度は急増している。
【0003】
また、省エネルギー化のニーズより、現像したトナーを紙に低エネルギーで定着させるため、トナー溶融温度の低下を目的としたトナー樹脂成分の改良も行われている。この結果、トナー溶融温度に至る前のトナー軟化開始温度も下がりつつあり、従って紙に定着させる前のトナーを軟化させないため、画像形成装置内部の昇温を抑える(=装置内限界温度の低下)必要も生じている。
【0004】
このように、電子写真方式の画像形成装置は、発熱密度の増加と、装置内限界温度の低下により、従来の冷却ファンによる空冷方式では必要な冷却が困難になってきた。そこで、空冷方式よりも冷却能力の高い、液冷方式(液体冷却方式、あるいは水冷方式とも言われる)が提案され始めた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
液冷方式では、発熱部もしくは昇温部に装着した受熱部と、これらと離れた放熱部との間で、冷却液を循環させて熱を取る。液冷方式は、空冷方式とは異なり、空気に比べて熱容量の高い液体冷媒により熱を輸送するため受熱特性が高く、発熱部、もしくは昇温部を低い温度に抑えられる。
【0006】
発熱部、もしくは昇温部に装着する受熱部は、できるだけ高い受熱特性を持たせるため、熱伝導率の高い銅またはアルミニウムが使われる。また、装置外に熱を放熱する放熱部も、同じ理由で銅やアルミニウムが使われる。受熱部と放熱部との間は、金属配管や、ゴムや樹脂のチューブが使われる。
【0007】
金属配管は、冷却液の蒸発を軽減するため、また冷却液にハロゲンイオン等を溶出させないために、ゴムや樹脂のチューブを使うことよりも望ましい。しかしながら、金属配管は剛体であるため、曲げるのは容易でなく、装置内では組み付けし難い。このため、部分的には柔軟なゴムや樹脂のチューブを使う必要がある。この際、ゴムや樹脂のチューブは、できるだけ水分蒸発の少ない、かつ低ハロゲン溶出の材質・形状を選定する必要がある。
【0008】
画像形成装置ではないが、液冷方式を使った電子装置において、吸水性ポリマー材料をゴムチューブと配管との継手部に被覆し、漏洩した冷却液を吸い取るようにしたものもある(特許文献2参照)。
【0009】
さらに、凹部形状を有する受け皿を設け、この凹部に発熱体を設置して、漏洩した冷却液を蒸発するようにした技術も開示されている(特許文献3)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
液冷方式は空冷方式と異なり、冷却液を装置内に保有するため、冷却液が漏洩し、装置に漏洩した冷却液がかかり故障する場合が懸念される。液冷方式で冷却液漏洩の可能性が高い箇所は、金属配管とゴムや樹脂のチューブとの耐圧が最も低い継手部である。
【0011】
継手部からの冷却液漏洩は、継手部の耐圧を高めることで確率を低くすることができるが、ゼロにはならない。このため冷却液が漏洩した場合のフェイルセーフ(被害を抑える、最小にする)を備える必要がある。
【0012】
したがって、前記特許文献2の記載のように、吸水性ポリマー材料にて継手部を被覆することが考えられる。しかしながら、吸水性ポリマー材料は、電子写真方式の画像形成装置で使用するトナー材料との相性が悪く、トナーが吸水性ポリマー材料と接触すると、トナーを溶融させる。溶融したトナーは装置内の汚染因子になるばかりでなく、万一別部材やユニットに付着した場合、その部材やユニットの機能を損ね、延いては画像品質の低下を引き起こす。さらに、吸水性ポリマー材料表面に溶融したトナーが付着すると、冷却液の吸収は困難になる。
【0013】
画像形成装置は電子機器(特許文献3等に記載された携帯型パーソナルコンピュータ等)に比べ多量の冷却液を使用するため、冷却液の漏洩量も多くなる。このため、前記特許文献3に記載のように受け皿を設けたものでは、このような漏洩量を許容できず、フェイルセーフとして用をなさない。
【0014】
ところで、継手部を、画像形成装置における画像形成部より離間または遮蔽して配置することも提案できる。しかしながら、継手部を画像形成部より離間させようとすれば、離間させるスペースを要し、装置全体の大型化を招くことになる。これは最近のトレンドである装置の小型化にとってはデメリットである。継手部を画像形成部に対して遮蔽させる場合では、例えば、装置内部に四方を囲まれた空間を設けたりする必要があり、設計上で複雑で、装置に組み付け難く、コストアップにもつながる。
【0015】
本発明は、斯かる事情に鑑み、画像品質の低下を招くことなく、簡単で、比較的多量な冷却液漏洩にも対応できてフェイルセーフとして最適な画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の画像形成装置は、発熱部もしくはこの発熱部により昇温する昇温部から熱を受ける受熱部材と、熱を外部へ放熱する放熱部との間を冷却液を循環させて前記発熱部もしくは昇温部を冷却する冷却装置を備えた画像形成装置であって、冷却液が循環する循環経路の配管接続部の液漏れ防止構造を備え、この液漏れ防止構造が、配管接続部から流出する冷却液を吸収する吸液部材と、この吸液部材の外側に配設されるトナー非相溶部材とを備えたものである。
【0017】
本発明の画像形成装置によれば、循環経路の配管接続部において液漏れが生じても、吸液部材にて冷却液を吸収することができる。また、吸液部材の外側にはトナー非相溶部材が配設されているので、このトナー非相溶部材にトナーが付着しても、トナーを溶融させない。
【0018】
前記液漏れ防止構造の吸液部材が、配管接続部の外周全周を被覆する筒状体にて構成したものであってもよい。
【0019】
前記液漏れ防止構造が、分離可能として配管接続部に装着されているのが好ましく、液漏れ防止構造が、固定手段を介して配管接続部に装着されるのも好ましい。
【0020】
前記液漏れ防止構造に、吸液部材の配置位置の外部からの確認を可能とする目印を設けても、吸液部材の外部からの目視を可能とする透視部を設けてもよい。
【0021】
前記液漏れ防止構造は配管接続部の液漏れを検知する液検知手段を備えたものであっても、前記液検知手段にて液漏れが検知されたときに、前記冷却装置の冷却動作及び画像形成動作を停止する制御手段を備えたものであってもよい。さらに、前記液検知手段にて液漏れが検知されたときに、液検知情報、冷却動作停止情報、及び画像形成動作停止情報を知らせる告知手段を備えたものであっても、
液検知手段、制御手段、及び告知手段を動作させるための電力を供給する電池手段を備えたものであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、循環経路の配管接続部において液漏れが生じても、吸液部材にて冷却液を吸収することができる。これによって、液漏れ防止構造の周囲への冷却液の漏洩、並びに装置故障を回避することができる。また、トナー非相溶部材にトナーが付着しても、トナーを溶融させない。このため、溶融したトナーが別の部材や別のユニットへ付着せず、これらの機構が損なわれず、トナー溶融による画像品質低下を防止できる。
【0023】
吸液部材を筒状体にて構成すれば、この液漏れ防止構造からの冷却液の流出を安定して防止できる。
【0024】
前記液漏れ防止構造が分離可能として配管接続部に装着されているものでは、この液漏れ防止構造が装着されている循環経路の配管接続部を点検する場合や交換する場合に、液漏れ防止構造を分離することによって、作業しやすいものとなる。
【0025】
液漏れ防止構造が固定手段を介して配管接続部に装着されるものでは、装置内の振動やヒューマンエラー等によっても液漏れ防止構造が配管接続部からずれにくいものとなって、長期にわたって安定して液漏れを防止でき、冷却液漏洩防止の信頼性が向上する。
【0026】
吸液部材の配置位置の外部からの確認を可能とする目印を設けたものでは、この目印に基づいて配管接続部にこの液漏れ防止構造を安定して装着することができる。吸液部材の外部からの目視を可能とする透視部を設けたものでは、装着後において、この透視部を介して吸液部材を外部から観察することができ、この液漏れ防止構造が配管接続部に配置されているかの確認を行うことができる。
【0027】
液検知手段を備えたものであれば、配管接続部に液漏れが発生した場合において、液検知手段にて液漏れを検知することができる。これによって、その後の処理(配管接続部の修理点検等の処理)を迅速に行うことができる。
【0028】
液検知手段にて液漏れが検知されたときに、前記冷却装置の冷却動作及び画像形成動作を停止する制御手段を備えたものでは、液漏れが生じている状態での冷却動作の動作保障でできなくなるため、冷却装置の冷却動作及び画像形成動作を停止させ、品質の低下した画像を提供するのを防止できるとともに、装置故障を防止できる。
【0029】
告知手段を備えたものであれば、液検知情報、冷却動作停止情報、及び画像形成動作停止情報を、ユーザもしくはオペレータが知ることができる。電池手段を備えたものであれば、この画像形成装置の主電源が供給されなくても、電池手段からの電力供給によって、液検知情報、冷却動作停止情報、及び画像形成動作停止情報を告知手段にて告知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の画像形成装置の全体簡略図である。
【図2】本発明の画像形成装置の制御部の簡略ブロック図である。
【図3】前記画像形成装置の液漏れ構造の要部拡大縦断面図である。
【図4】前記画像形成装置の液漏れ構造の要部横断面図である。
【図5】前記画像形成装置の第1変形例の液漏れ構造の要部横断面図である。
【図6】前記画像形成装置の第2変形例の液漏れ構造の要部縦断面図である。
【図7】前記画像形成装置の第3変形例の液漏れ構造の要部縦断面図である。
【図8】前記画像形成装置の第4変形例の液漏れ構造の要部横断面図である。
【図9】前記画像形成装置の第5変形例の液漏れ構造の要部縦断面図である。
【図10】前記画像形成装置の制御部の簡略ブロック図である。
【図11】前記画像形成装置の第6変形例の液漏れ構造の要部横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図に示す実施例による本発明を実施するための形態を説明する。
【実施例】
【0032】
図1は本発明の一実施形態における冷却装置を有する画像形成装置の概略構成図である。画像形成装置はタンデム型のカラー画像形成装置であって、一定の間隔で配置された4つの画像形成部51a、51b、51c、51dを備える。各画像形成部51a、51b、51c、51dは、像担持体としての感光体(感光体ドラム)52と、感光体ドラム52に潜像を形成する手段(例えば、帯電装置53と書込装置54)と、感光体ドラム52上の潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像装置55と、感光体ドラム表面を清浄化させるためのクリーニング装置56とを備える。
【0033】
この画像形成装置では、制御手段S(図2参照)からの信号に基づいて、駆動画像形成動作が作動する。この際、各色にて、帯電装置53が感光体52を一様に帯電した後、光学装置(図示省略)が原稿を読み取り、この読取原稿を書込装置54が前記感光体52上に静電潜像として形成する。次いで現像装置55は、この静電潜像にトナーを付着させ、すなわち可視画像を形成させる。一方で装置本体に収容されたカセットの積載された複数のシート10から一枚のシート10がシート搬送パス11に沿って転写装置12に搬送され、この転写装置12が静電気により前記可視画像をシート10に転写する。この後、定着装置13はこのシートを熱と圧力により定着し、以上の一連のプロセスにより、所定の画像形成されたシート10を得る。
【0034】
この画像形成装置は、発熱部もしくはこの発熱部により昇温する昇温部から熱を受ける受熱部材102と、熱を外部へ放熱する放熱部105との間を冷却液を循環させて前記発熱部もしくは昇温部を冷却する冷却装置80を備えている。
【0035】
すなわち、冷却装置80は、図1に示すように、前記受熱部材102と、放熱部105と、冷却液(冷媒)をこの冷却装置80内を循環させるためのポンプ100と、冷却液(冷媒)が貯留されるタンク101とを備え、これらが循環経路110によって連結されている。循環経路110は、ポンプ100と放熱部105とを連結する第1配管110aと、放熱部105と受熱部材102とを連結する第2配管110bと、各受熱部材102を連結して各受熱部材102とタンク101とを連結する第3配管110cとを備える。
【0036】
この実施例での発熱部は現像装置55とし、この現像装置55に受熱部材102を付設している。受熱部材102は、例えばアルミニウムからなり、内部に蛇行した冷却液が流れる流路を有する。放熱部105は熱交換器(ラジエータ)であって、表面に複数の放熱用フィン103を有する蛇行形状に形成された流路と、放熱を効果的に行うファン104とを備える。
【0037】
第2配管110bは、銅やアルミニウム等で構成される金属配管2である第1部111と、ゴム製や樹脂製のチューブ1である第2部112とを有し、このチューブ1と金属配管2とが配管接続部50を介して連結されている。また、第3配管110cは、金属配管2である第1部113と、ゴム製や樹脂製のチューブ1である第2部114とを有し、チューブ1と金属配管2とが配管接続部50を介して連結されている。
【0038】
冷却液としては、水または防錆材を含有した不凍液などを用いることができる。なお、不凍液としては、エチレングリコール水溶液、あるいは毒性が小さく、融点が低いプロピレングリコール水溶液などを用いることができる。
【0039】
この画像形成装置の画像形成動作時では、各色の現像装置55では、トナーを摩擦帯電させるため、トナーを攪拌させているが、このとき多量の摩擦熱が発生する。このため、制御手段S(図2参照)からの信号に基づいて冷却装置80のポンプ100が駆動し、循環配管110を冷却液が循環する。すなわち、ラジエータ(放熱用フィン)103にて冷却された冷却液は、ポンプ100より現像装置に装着している受熱部102へと送られ、摩擦熱の発生した現像装置55を冷却し、現像装置内部のトナーを所定の限界温度以下に留めおく。現像装置55からの熱により昇温した冷却液は、タンク101、そして再びポンプ100、ラジエータ103にて再び冷却され、以上を繰り返す。低温となった冷却液が受熱部材102に送られることになり、発熱部としての現像装置55を冷却することができる。
【0040】
ところで、この冷却装置80において、循環経路110の配管接続部50が図3と図4に示すような漏れ防止構造60が装着されている。この漏れ防止構造60は、配管接続部50から流出する冷却液を吸収する吸液部材3と、この吸液部材3の外側に配設されるトナー非相溶部材4とを備える。なお、チューブ1と金属配管2とは、チューブ1の開口部に金属配管2の端部が嵌入され、この嵌入部が配管接続部50となる。
【0041】
吸液部材3は配管接続部50に外嵌される筒体からなり、例えば高分子吸収材料にて構成される。なお、吸液部材3は、チューブ1に対応する大径部3aと金属配管2に対応する小径部3bとを有する。
【0042】
トナー非相溶部材4は、吸液部材3に外嵌される筒体からなり、フッ素樹脂やPET(ポリエチレンテレフタレート)等にて構成される。相溶性とは、2種類または多種類の物質が相互に親和性を有し、溶液または混和物を形成する性質をいう。したがって、トナー非相溶部材4とは、トナーとの間に親和性を有さず、混和物を形成しない部材である。なお、トナー非相溶部材4は、チューブ1に対応する第1中径部4aと、吸液部材3の大径部3aに対応する大径部4bと、吸液部材3の小径部3bに対応する第2中径部4cと、金属配管2に対応する小径部4dとを有する。
【0043】
このように、漏れ防止構造60を設ければ、循環経路110の配管接続部50において、冷却液が想定外に圧力が上昇し、耐圧が最も低い配管接続部50にてその耐圧に耐えられずに液漏れが生じても、吸液部材3にて冷却液を吸収することができ、液漏れ防止構造60の周囲への冷却液の漏洩、並びに装置故障を回避することができる。また、トナー非相溶部材4にトナーが付着しても、トナーを溶融させない。このため、溶融したトナーが別の部材や別のユニットへ付着せず、これらの機構が損なわれず、トナー溶融による画像品質低下を防止できる。
【0044】
この実施例のように、図4に示すように、吸液部材3を筒状体にて構成すれば、この液漏れ防止構造60からの冷却液の流出を安定して防止できる。
【0045】
なお、漏れ防止構造60が配管接続部50に装着された際には、位置ずれを生じさせないために、吸液部材3は、その大径部3aがチューブ1に密接するとともにその小径部3bが金属配管2に密接し、トナー非相溶部材4は、その第1中径部4aがチューブ1に密接するとともにその小径部4dが金属配管2に密接するのが好ましい。
【0046】
このように、この吸液部材3は、周囲へ暴露することもなくなる。このため、多湿環境でも不用意に環境湿度を吸液せずに、本来の冷却液漏洩のためだけに吸液できるようにするためにおいても望ましい。
【0047】
図5に示す漏れ防止構造60では、吸液部材3とトナー非相溶部材4とにわたるスリット5が設けられている。このため、この漏れ防止構造60は、このスリット5を介して一対の半割体に分割することができる。すなわち、漏れ防止構造60が分離可能として配管接続部50に装着されていることになる。
【0048】
このように、前記液漏れ防止構造60が分離可能として配管接続部に装着されているものでは、この液漏れ防止構造60が装着されている循環経路110の配管接続部50を点検する場合や交換する場合に、液漏れ防止構造60を分離することによって、作業しやすいものとなる。
【0049】
次に図6に示すものでは、固定手段20を介して配管接続部50に装着されている。固定手段20はバンド部材6にて構成している。この場合、トナー非相溶部材4の第1中径部4aと第2中径部4cと小径部4dとをバンド部材6にて締め付けている。バンド部材6としては、帯状のバンド本体と、このバンド本体に付設されるバックルとを備えたものであっても、また、弾性材からなるリング体にて構成してもよい。
【0050】
このように、液漏れ防止構造60が、固定手段20を介して配管接続部50に装着されていることによって、装置内の振動やヒューマンエラー等によっても液漏れ防止構造60が配管接続部50からずれにくいものとなって、長期にわたって安定して液漏れを防止でき、冷却液漏洩防止の信頼性が向上する。
【0051】
固定手段20としては、バンド部材6に限るものではなく、粘着テープや面ファスナ等を用いるものであってもよい。すなわち、この液漏れ防止構造60を配管接続部50に固定できればよい。
【0052】
図7に示す液漏れ防止構造60では、トナー非相溶部材4に、吸液部材3が存在する範囲を示す目印7を設けている。この場合、吸液部材3の両軸方向端部に対応するように配置される。目印7は、例えば、トナー非相溶部材4の色とは相違する有色のテープ(ビニールテープ)等にて構成することができる。また、トナー非相溶部材4とは相違する色を塗布したものであってもよい。
【0053】
このように、吸液部材3の配置位置の外部からの確認を可能とする目印7を設けたものでは、この目印7に基づいて配管接続部50にこの液漏れ防止構造60を安定して装着することができる。
【0054】
図8では、吸液部材3の外部からの目視を可能とする透視部8を設けている。この場合、図5に示すようにスリット5を有するタイプにおいて、トナー非相溶部材4の一部を透視部8と変更している。透視部8としては、透明な樹脂にて構成できる。この樹脂としてもトナー非相溶性を示すものが好ましい。
【0055】
吸液部材3の外部からの目視を可能とする透視部8を設けたものでは、装着後において、この透視部8を介して吸液部材3を外部から観察することができ、この液漏れ防止構造60が配管接続部50に配置されているかの確認を行うことができる。
【0056】
図9は、液検知手段62を構成する液検知センサ9を備えている。液検知センサ9が、吸液部材3の大径部3aとトナー非相溶部材4の大径部4bとの間に配置されている。液検知センサ9はいわゆる漏液センサであり、電極間抵抗検知方式や交流検出方式等の種々の公知・公用の既存のものを用いることができる。
【0057】
液検知手段62にて液漏れを検出した際には、図10に示すように、制御手段S(画像形成動作を制御する制御手段)から冷却装置80にその冷却動作を停止する信号を送って冷却動作を停止するようにしたり、さらには、画像形成動作を停止するようにしたりできる。なお、制御手段Sは、マイクロコンピュータ(マイコン)にて構成できる。
【0058】
また、液漏れがあった際、冷却動作が停止した際、画像形成動作が停止した際には、液検知情報、冷却動作停止情報、及び画像形成動作停止情報を、ユーザ等に知らせるための告知手段65を設けてもよい。ここで、告知手段65としては、警告用の音声、警告音、警告用照明の点燈等で構成できる。また、この画像形成装置の操作パネル(図示省略)の表示部に、この停止情報を表示(告知)するようにしてもよい。
【0059】
液検知手段62、制御手段S、及び告知手段65を動作させるための電力を供給する電池手段66を、主電源とは別に設けてもよい。電池手段66として例えば蓄電池を用いることができる。
【0060】
液検知手段62にて液漏れが検知されたときに、前記冷却装置80の冷却動作及び画像形成動作を停止する制御手段3を備えたものでは、液漏れが生じている状態での運転を回避でき、品質の低下した画像を提供するのを防止できるとともに、装置故障を防止できる。すなわち、液漏れが生じれば、冷却装置80の動作が保証できなくなるためである。
【0061】
告知手段65を備えたものであれば、液検知情報、冷却動作停止情報、及び画像形成動作停止情報を、ユーザもしくはオペレータが知ることができる。電池手段66を備えたものであれば、この画像形成装置の主電源が供給されなくても、電池手段からの電力供給によって、液検知情報、冷却動作停止情報、及び画像形成動作停止情報を告知手段にて告知することができる。
【0062】
電池手段66を備えたものであれば、この画像形成装置の主電源が供給されなくても、電池手段66からの電力供給によって、液検知情報、冷却動作停止情報、及び画像形成動作停止情報を告知手段にて告知することができる。
【0063】
図11は吸液部材3及びトナー非相溶部材4を筒状体にて構成することなく、受け皿状体にて構成している。すなわち、吸液部材3は、底壁70と、この底壁70から立設される側壁71a,71bとからなり、配管接続部50を下方から受けている。また、トナー非相溶部材4は、底壁72と、この底壁72から立設される側壁73a,73bとからなり、吸液部材3を下方から受けている。
【0064】
図11に示す漏れ防止構造60であっても、配管接続部50において、液漏れが生じても、受け皿状体の吸液部材3にて冷却液を受けることができ、この吸液部材3にて冷却液を吸収することができる。この場合のトナー非相溶部材4であっても、吸液部材3をトナー非相溶部材4にて覆うことになって、吸液部材3のトナーとの接触を防止でき、トナーの溶融を防止できる。
【0065】
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。本発明に係る画像形成装置は、電子写真複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ装置等がある。前記実施例では、発熱部を現像装置55としていたが、発熱部としては現像装置55に限るものではなく、他の部位であってもよい。また、受熱部材102が付設される部位としては、例えば、発熱部を現像装置55とした場合に、この現像装置55の熱によって昇温する昇温部としてもよい。この昇温部としても、現像装置55によって昇温する部位に限るものではない。循環経路110の配管接続部50としては、図1における部位に限るものではなく、循環経路110の種々の部位に設けられる。
【0066】
また、前記実施例では、吸液部材3とトナー非相溶部材4とを別部材にて構成していたが、これらが一体構成であってもよい。図6に示すようにバンド部材6を用いる場合、その数の増減は任意である。すなわち、バンド部材6を用いることによって、この液漏れ防止構造60を位置ずれさせることなく安定した固定状態を維持できればよい。図7に示すように、目印7を設ける場合も、その数、設ける位置等は、配管接続部50に安定してこの液漏れ防止構造60を配置できるものであれば、種々変更できる。また、図8に示すように透視部8を設ける場合、図2等のようにスリップ5を有さないものであってもよく、透視部8の配置位置としても、吸液部材3の外部からの観察が可能な範囲であれば種々変更することができる。さらに、液検知センサ9の配置位置としても、液漏れが生じたことを検知できる範囲で種々変更できる。
【0067】
(実施例1)
画像形成装置として、リコー社製imagio Neo C600カラー画像形成装置を用い、冷却装置として、受熱部材102には内部にU字流路を施した30mm×330mm×20mmのアルミニウム製ブロックを用い、ラジエータ(放熱部50)には一辺が120mmの正方形のアルミニウム製コルゲート型(厚み20mm)を直列に3個配置したものを用い、ラジエータファン(放熱用フィン103)にはラジエータ(放熱部50)と同サイズで一辺が120mmの正方形の軸流ファン(流速2.3m/s)を用いた。また、ポンプ100には締め切り揚程が50kPaの遠心型のものを用い、タンク101には容積700mLのポリプロピレン製タンクを用い、チューブ1にはブチルゴムとEPDM混合成分のゴムチューブを用い、金属配管2にはアルミニウム製パイプを用い、冷却液にはプロピレングリコールを主成分とした防錆剤も含有した−13℃不凍仕様の不凍液を採用した。
【0068】
以上の構成より、軟化開始温度が45℃のトナーを使って、室温32℃環境にて、1分間に75枚のカラー両面印刷を3時間連続で行った。この結果、各色の現像装置内部のトナー最高温度は、イエローが42℃、シアンが42℃、マゼンタが43℃、ブラックが43℃となり、何れの色も軟化開始温度以下となり、印刷画像にも異常は見られなかった。
【0069】
また、吸液部材3に故意にトナーを塗してみたが、3時間後と2週間放置後の計2回を確認したところ、塗したトナーが溶融することはなかった。さらに、吸液部材3内部の継手部(配管接続部50)の外側に外部から注射器で冷却液10mLを注入したところ、すべて吸液部材3に吸液され、外側に冷却液が漏洩することはなかった。
【0070】
(実施例2)
実施例2は、実施例1に加え、吸液部材3に、導電性を有する冷却液を、抵抗値を測定することで検知できる液検知センサ9を装着したものである。
【0071】
同様に、軟化開始温度が45℃のトナーを使って、室温32℃の環境にて、1分間に75枚のカラー両面印刷を3時間連続で行った。この結果、各色の現像装置内部のトナー最高温度は、イエローが42℃、シアンが43℃、マゼンタが43℃、ブラックが43℃となり、何れの色も軟化開始温度以下となり、印刷画像にも異常は見られなかった。
【0072】
また、吸液部材3に故意にトナーを塗してみたが、3時間後と2週間放置後の計2回を確認したところ、塗したトナーが溶融することはなかった。さらに、吸液部内部の継手部(配管接続部50)の外側に外部から注射器で冷却液11mLを注入したところ、0.5mLの注入時点で、液検知センサが検知し、冷却液の漏洩が検知された。また、残りの10.5mLを注入しても、冷却液は吸液部に全て吸液され、外側に冷却液が漏洩することはなかった。
【符号の説明】
【0073】
3 吸液部材
4 トナー非相溶部材
6 バンド部材
7 目印
8 透視部
9 液検知センサ
50 配管接続部
60 液漏れ防止構造
62 液検知手段
65 告知手段
66 電池手段
80 冷却装置
102 受熱部材
103 放熱用フィン
104 ファン
105 放熱部
110 循環経路
S 制御手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】
【特許文献1】特開2007−24985号公報
【特許文献2】特開2002−232176号公報
【特許文献3】特許第375534号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部もしくはこの発熱部により昇温する昇温部から熱を受ける受熱部材と、熱を外部へ放熱する放熱部との間を冷却液を循環させて前記発熱部もしくは昇温部を冷却する冷却装置を備えた画像形成装置であって、
冷却液が循環する循環経路の配管接続部の液漏れ防止構造を備え、この液漏れ防止構造が、配管接続部から流出する冷却液を吸収する吸液部材と、この吸液部材の外側に配設されるトナー非相溶部材とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記液漏れ防止構造の吸液部材が、配管接続部の外周全周を被覆する筒状体にて構成したことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記液漏れ防止構造が、分離可能として配管接続部に装着されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記液漏れ防止構造が、固定手段を介して配管接続部に装着されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記液漏れ防止構造に、吸液部材の配置位置の外部からの確認を可能とする目印を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記液漏れ防止構造に、吸液部材の外部からの目視を可能とする透視部を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記液漏れ防止構造は配管接続部の液漏れを検知する液検知手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記液検知手段にて液漏れが検知されたときに、前記冷却装置の冷却動作及び画像形成動作を停止する制御手段を備えたことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記液検知手段にて液漏れが検知されたときに、液検知情報、冷却動作停止情報、及び画像形成動作停止情報を知らせる告知手段を備えたことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
液検知手段、制御手段、及び告知手段を動作させるための電力を供給する電池手段を備えたことを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−112707(P2011−112707A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266468(P2009−266468)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】