説明

画像形成装置

【課題】感光体表面の感光層の摩耗量を精確に予測するとともに、予測した摩耗量に基づいて帯電電圧を制御することにより長期間に亘って高画質な画像形成が可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】印字が実行されると、画像形成部Pa〜Pd毎に各感光体ドラム1a〜1dの駆動時間t1及び帯電バイアスの印加時間t2をカウントする。次に、t1の積算カウント値が10分に達したとき帯電電流iを帯電電流センサ45により検出する。そして、式(1)を用いてドラム駆動10分毎の感光層の摩耗量Mを算出し、摩耗量Mを積算した積算摩耗量ΣMを算出してRAM93に保存する。ΣMの増加分に応じて帯電バイアスの基準値に対するシフト電圧(補正値)を帯電バイアス補正テーブルから参照して帯電バイアスを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザプリンタ、ファクシミリ等の、電子写真式の画像形成装置に関し、特に、感光体ドラムの表面を接触若しくは非接触の状態で帯電させる帯電部材を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置において、感光体ドラムの表面を均一に帯電させる好適な手段としては、コロナ放電器を備えたコロナ帯電方式と、帯電ローラに代表される導電性の帯電部材を備えた接触帯電方式とがある。コロナ放電器はオゾン等のコロナ生成物が多く発生するので、オゾンにより空気中の成分が分解され、NOxやSOx等のイオン生成物が生成される。そのため、近年ではコロナ帯電方式に代えて接触帯電方式が採用される傾向が認められる。この接触帯電方式は、特にDC電圧若しくはDC電圧にAC電圧を重畳した電圧を印加することによりオゾン、NOx、SOx等の発生を抑制可能である。
【0003】
しかし、接触帯電方式では感光体表面の帯電工程が表面近傍での放電により行われるため、感光層の摩耗が促進される。特に有機感光層(OPC)を有する感光体を用いる場合、感光層が摩耗すると静電容量が増大し、画像形成に最適な静電潜像を形成するために感光体表面に与えるべき電荷量が変化する。また、感光体の摩耗が進行すると、感光体の耐圧特性が低下するため、帯電部材に高電圧が印加されたときに感光層がピンホールと呼ばれる局所的な絶縁破壊を起こしやすい。このピンホールは画像上で黒点となって現れ、画像品質上の大きな問題となる。従って、長期間に亘って安定した画像を出力するためには、感光層の層厚(膜厚)に応じた帯電電圧に制御する必要がある。
【0004】
そこで、画像形成装置の使用期間中における感光層の膜厚を検出し、プロセス設定条件を制御する方法が種々提案されており、例えば特許文献1には、帯電電流値と感光体の静電容量及び感光層の膜厚との関係を用いて、検知された帯電電流値から感光層の膜厚を算出するか、或いは装置の使用時間から感光層の摩耗量を推定し、膜厚変動に応じて現像バイアス及び帯電バイアスを制御する画像形成装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、画像形成装置の使用状態や設置環境の変化等の時間推移に基づいて検知電流量を補正し、補正された検知結果に応じてプロセス設定条件を制御する画像形成装置が開示されている。また、特許文献3には、感光体の温度と流れ込み電流に対応して定まる感光層の膜厚に関するデータを記憶手段に格納しておき、実際に検知された感光体への流れ込み電流及び感光体の温度と、記憶手段に格納されたデータとに基づいて感光層の膜厚を算出する画像形成装置が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献4には、放電電流値を条件として係数Kを選択し、Kを係数とした関数によって像担持体の消耗値Wを算出するとともに、消耗値Wを積算して算出された積算消耗値Sに基づいて像担持体の寿命を判定する像担持体の寿命検知装置及び画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−246994号公報
【特許文献2】特開2004−334063号公報
【特許文献3】特開2006−208477号公報
【特許文献4】特開2005−128150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法では、帯電電流が検知できれば膜厚が求められることになっているが、実際には環境温度や連続印字中の感光層の光疲労等により、同じ膜厚であっても帯電電流は大きく変化するため膜厚の予測が困難であった。また、使用時間と感光層の摩耗量との関係については、感光体の駆動中に常に画像形成時の電圧が印加されていれば帯電電流の検出値をテーブルに参照することで膜厚の予測が可能であるが、実際には使用状態によって帯電電圧が印加されない状態で感光体が回転している時間が異なるため、使用時間のみで膜厚を予測することも困難であった。
【0009】
また、特許文献2の方法では、検知電流によって算出された多数の膜厚データから近似線を導き、膜厚を補正していくために、メモリ容量を増大させて多数のデータを格納しておく必要があり、装置のコストアップに繋がるという問題点があった。また、特許文献3の方法では、感光体の温度と表面電位を精確に検出する温度検出手段及び表面電位検出手段が必要であり、特に複数の感光体を使用するカラー画像形成装置においてはコストアップに繋がる。
【0010】
また、特許文献4では、DC電圧にAC電圧を重畳した電圧を帯電ローラに印加する構成のため、像担持体と帯電ローラとの間に流れる放電電流値とAC電圧の周波数(帯電周波数)とに基づいて係数Kを決定している。そして、Kを決定するためのテーブルが予め記憶素子に記憶されている(段落[0085]、図6)。そのため、Kの値に対応する放電電流値が所定の幅(範囲)を持つことになり、放電電流値の微小な変化に応じた係数Kの最適値を決定できず、ひいては像担持体の消耗値Wを精度良く算出することができなかった。
【0011】
なお、感光体表面を非接触の状態で帯電させる場合においても、帯電部材と感光体とが近接している場合は上述したような接触帯電方式と同様の問題が生じる。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑み、感光体表面の感光層の摩耗量を精確に予測するとともに、予測した摩耗量に基づいて帯電電圧を制御することにより長期間に亘って高画質な画像形成が可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、表面に感光層が形成された像担持体と、該像担持体の表面に接触若しくは非接触状態で直流電圧のみからなる帯電バイアスを印加することで前記像担持体表面を帯電させる帯電部材と、該帯電部材に直流電圧を印加する電圧印加手段と、該電圧印加手段により帯電バイアスを印加したとき前記像担持体と前記帯電部材との間に流れる帯電電流を検出する電流検出手段と、前記像担持体の駆動時間t1、前記帯電部材への帯電バイアスの印加時間t2を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された前記像担持体の駆動時間t1、前記帯電部材への帯電バイアスの印加時間t2、及び前記電流検出手段により検出された帯電電流iに基づいて感光層の摩耗量Mを算出し、摩耗量Mを積算して得られた積算摩耗量ΣMに応じて前記帯電部材に印加される帯電バイアスを基準値から補正する制御手段と、を備えた画像形成装置である。
【0014】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記制御手段は、算出された積算摩耗量ΣMを前記記憶手段に記憶するとともに、積算摩耗量ΣMが前回の帯電バイアスの補正時から所定量増加する毎に帯電バイアスを補正することを特徴としている。
【0015】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記摩耗量Mは、以下の式(1)により算出されることを特徴としている。
M=r×t1+s×i×t2 ・・・(1)
ただし、
r:像担持体を所定の線速で駆動させたときの、帯電バイアスを印加しない場合の単位時間当たりの摩耗レート
s:像担持体を所定の線速で駆動させたときの、単位時間、単位帯電電流当たりの摩耗レート
である。
【0016】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記記憶手段には、装置内部の環境条件に応じた複数の前記摩耗レートsが記憶されていることを特徴としている。
【0017】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記記憶手段には、前記像担持体の線速に応じた複数の前記摩耗レートr、sが記憶されていることを特徴としている。
【0018】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記像担持体及び前記帯電部材を複数組有し、像担持体毎に算出される前記摩耗量M及び前記積算摩耗量ΣMに基づいて各帯電部材に印加される帯電バイアスが個別に制御されることを特徴としている。
【0019】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記帯電バイアスは、感光層の初期層厚と前記積算摩耗量ΣMとに応じて決まる絶縁破壊発生電圧よりも低く設定されることを特徴としている。
【0020】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記感光層が有機感光層であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1の構成によれば、帯電部材に直流電圧のみからなる帯電バイアスを印加する場合、像担持体の駆動時間t1、帯電バイアスの印加時間t2、及び帯電電流iに基づいて摩耗量Mを算出し、算出された摩耗量Mを積算して積算摩耗量ΣMを算出することにより、帯電電流の影響を受ける印字中の摩耗量に加えて、帯電電流の影響を排除した非印字時の摩耗量を算出することができる。また、算出された積算摩耗量ΣMに基づいて帯電バイアスを制御することにより、感光層の摩耗量に応じた適切な帯電バイアスを決定することができる。
【0022】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の画像形成装置において、算出された積算摩耗量ΣMを記憶手段に記憶しておき、積算摩耗量ΣMが前回の帯電バイアスの補正時から所定量増加する毎に帯電バイアスを補正することにより、層厚の変化に応じた適切な間隔で補正が入るため、補正間隔が短すぎることによる待ち時間の増加や補正間隔が長すぎることによる帯電不具合等を抑制することができる。
【0023】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1又は第2の構成の画像形成装置において、摩耗レートrと像担持体の駆動時間t1の積で表される物理的な摩耗量と、摩耗レートs、帯電電流i、帯電バイアスの印加時間t2の積で表される帯電バイアス印加による摩耗量の増加分とを別個に計算して加算することで、例えば短時間で多量の印字を連続して行う場合と、少量の印字を何度も行う場合のどちらの場合でも摩耗量Mを精度良く算出することができる。
【0024】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第3の構成の画像形成装置において、装置内部の環境条件に応じた複数の摩耗レートsを記憶しておくことで、装置内部の環境条件に係わらず摩耗量の予測精度がより高くなる。
【0025】
また、本発明の第5の構成によれば、上記第3又は第4の構成の画像形成装置において、像担持体の線速に応じた複数の摩耗レートr、sを記憶しておくことで、様々なモードでの摩耗量をより精度良く予測することができる。
【0026】
また、本発明の第6の構成によれば、上記第1乃至第5のいずれかの構成の画像形成装置において、像担持体及び帯電部材を複数組有する場合、像担持体毎に算出される摩耗量M及び積算摩耗量ΣMに基づいて帯電部材毎に帯電バイアスを個別に制御することにより、例えばタンデム型カラー画像形成装置における各像担持体の使用状況に応じて適切な帯電バイアスを印加することができる。
【0027】
また、本発明の第7の構成によれば、上記第1乃至第6のいずれかの構成の画像形成装置において、帯電バイアスを、感光層の初期層厚と積算摩耗量ΣMとに応じて決まる絶縁破壊発生電圧よりも低く設定することにより、ピンホールの発生を確実に防止することができる。
【0028】
また、本発明の第8の構成によれば、上記第1乃至第7のいずれかの構成の画像形成装置において、感光層が摩耗し易い有機感光層である像担持体においても適切な帯電バイアスを印加してピンホールの発生リスクを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の画像形成装置の全体構成を示す概略断面図
【図2】図1における画像形成ユニットPa周辺の部分拡大図
【図3】本発明の画像形成装置の制御経路を示すブロック図
【図4】画像形成時及び非画像形成時における感光体ドラムの駆動時間t1と感光層の摩耗量Mとの関係を示すグラフ
【図5】スコロトロン式の帯電装置を用いて連続印字を行ったときの感光体ドラムの駆動時間x1と感光層の摩耗量y1との関係を示すグラフ
【図6】接触帯電式の帯電装置を用いて連続印字を行ったときの帯電電流x2と、各電流値に対する単位時間(100分)当たりの感光層の摩耗量から0μAでの摩耗量を差し引いた放電による摩耗量の増加分y2との関係を示すグラフ
【図7】本発明の画像形成装置における帯電バイアスの制御例を示すフローチャート
【図8】実施例における、帯電バイアスをONとして連続印字を行った場合と、帯電バイアスをOFFとして画像形成装置を駆動した場合における感光体ドラムの駆動時間と感光層の摩耗量との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の現像装置が搭載された画像形成装置の概略断面図であり、ここではタンデム方式のカラー画像形成装置について示している。カラープリンタ100本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、Pc及びPdが、図1では右側から順に配設されている。これらの画像形成部Pa〜Pdは、異なる4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程によりシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの画像を順次形成する。
【0031】
この画像形成部Pa〜Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム1a、1b、1c及び1dが配設されており、さらに駆動手段(図示せず)により図1において時計回りに回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa〜Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a〜1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次転写されて重畳された後、二次転写ローラ9の作用によって記録媒体の一例としての転写紙P上に転写され、さらに、定着部7において転写紙P上に定着された後、装置本体より排出される。感光体ドラム1a〜1dを図1において反時計回りに回転させながら、各感光体ドラム1a〜1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0032】
トナー像が転写される転写紙Pは、装置下部の用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラ12a及びレジストローラ対12bを介して二次転写ローラ9と後述する中間転写ベルト8の駆動ローラ11との間のニップへと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが主に用いられる。また、二次転写ローラ9から見て中間転写ベルト8の移動方向の下流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナーを除去するためのブレード状のベルトクリーナ19が配置されている。
【0033】
次に、画像形成部Pa〜Pdについて説明する。回転自在に配設された感光体ドラム1a〜1dの周囲及び下方には、感光体ドラム1a〜1dを帯電させる帯電装置2a、2b、2c及び2dと、各感光体ドラム1a〜1dに画像情報を露光する露光ユニット4と、感光体ドラム1a〜1d上にトナー像を形成する現像装置3a、3b、3c及び3dと、感光体ドラム1a〜1d上に残留した現像剤(トナー)を除去するクリーニング装置5a、5b、5c及び5dが設けられている。
【0034】
パソコン等の上位装置から画像データが入力されると、先ず、帯電装置2a〜2dによって感光体ドラム1a〜1dの表面を一様に帯電させ、次いで露光ユニット4によって画像データに応じて光照射し、各感光体ドラム1a〜1d上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置3a〜3dには、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色のトナーを含む二成分現像剤が所定量充填されている。なお、後述のトナー像の形成によって各現像装置3a〜3d内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合には不図示のトナー補給装置から各現像装置3a〜3dにトナーが補給される。この現像剤中のトナーは、現像装置3a〜3dにより感光体ドラム1a〜1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光ユニット4からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0035】
そして、一次転写ローラ6a〜6dにより一次転写ローラ6a〜6dと感光体ドラム1a〜1dとの間に所定の転写電圧で電界が付与され、感光体ドラム1a〜1d上のイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、感光体ドラム1a〜1dの表面に残留したトナーがクリーニング装置5a〜5dにより除去される。
【0036】
中間転写ベルト8は、上流側の搬送ローラ10と、下流側の駆動ローラ11とに掛け渡されており、駆動モータ(図示せず)による駆動ローラ11の回転に伴い中間転写ベルト8が時計回りに回転を開始すると、転写紙Pがレジストローラ対12bから所定のタイミングで中間転写ベルト8に隣接して設けられた二次転写ローラ9へ搬送され、フルカラー画像が転写される。トナー像が転写された転写紙Pは定着部7へと搬送される。
【0037】
定着部7に搬送された転写紙Pは、定着ローラ対13により加熱及び加圧されてトナー像が転写紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された転写紙Pは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられる。転写紙Pの片面のみに画像を形成する場合は、そのまま排出ローラ対15によって排出トレイ17に排出される。
【0038】
一方、転写紙Pの両面に画像を形成する場合は、定着部7を通過した転写紙Pの一部を一旦排出ローラ対15から装置外部にまで突出させる。その後、転写紙Pは排出ローラ対15を逆回転させることにより分岐部14で用紙搬送路18に振り分けられ、画像面を反転させた状態でレジストローラ対12bに再搬送される。そして、中間転写ベルト8上に形成された次の画像が二次転写ローラ9により転写紙Pの画像が形成されていない面に転写され、定着部7に搬送されてトナー像が定着された後、排出ローラ対15から排出トレイ17に排出される。
【0039】
図2は、図1における画像形成部Pa付近の拡大図である。なお、画像形成部Pb〜Pdについても基本的に同様の構成であるため説明を省略する。感光体ドラム1aの周囲には、ドラム回転方向(図2の反時計回り)に沿って帯電装置2a、現像装置3a、クリーニング装置5a、及び除電ランプ20が配設され、中間転写ベルト8を挟んで一次転写ローラ6aが配置されている。
【0040】
帯電装置2aは、感光体ドラム1aに接触してドラム表面に帯電バイアスを印加する帯電ローラ21と、帯電ローラ21をクリーニングするための帯電クリーニングローラ23とを有している。本発明においては、発生するオゾン量を少なくし、且つ帯電バイアス電源42(図3参照)のコストを低減するために、直流電圧のみからなる帯電バイアスを帯電ローラ21に印加している。
【0041】
現像装置3aは、2本の攪拌搬送スクリュー25と、磁気ローラ27と、現像ローラ29とを有する二成分現像式であり、磁気ローラ27表面に起立する磁気ブラシを用いて現像ローラ29にトナー薄層を形成し、現像ローラ29にトナーと同極性(正)の現像バイアスを印加してドラム表面にトナーを飛翔させる。
【0042】
クリーニング装置5aは、クリーニングブレード31及び回収スクリュー33を有している。
【0043】
感光体ドラム1a表面の、中間転写ベルト8との当接面よりも回転方向下流側には、クリーニングブレード31が感光体ドラム1aに当接した状態で固定されている。クリーニングブレード31としては、例えばJIS硬度が78°のポリウレタンゴム製のブレードが用いられ、その当接点において感光体接線方向に対し所定の角度で取り付けられている。なお、クリーニングブレード31の材質及び硬度、寸法、感光体ドラム1aへの食い込み量及び圧接力等は、感光体ドラム1aの仕様に応じて適宜設定される。クリーニングブレード31によって感光体ドラム1a表面から除去された残留トナーは、回収スクリュー33の回転に伴ってクリーニング装置5aの外部に排出される。
【0044】
クリーニング装置5aと帯電装置2aの間には除電ランプ20が配置されている。除電ランプ20は、感光体ドラム1a表面に光照射することによりドラム表面の残留電荷を除去する。
【0045】
次に、本発明の画像形成装置の制御経路について説明する。図3は、本発明の画像形成装置に用いられる制御経路の一例を示すブロック図である。なお、カラープリンタ100を使用する上で装置各部の様々な制御がなされるため、カラープリンタ100全体の制御経路は複雑なものとなる。そこで、ここでは制御経路のうち、本発明の実施に必要となる部分を重点的に説明する。
【0046】
制御部90は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)91、読み出し専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)92、読み書き自在の記憶部であるRAM(Random Access Memory)93、一時的に画像データ等を記憶する一時記憶部94、カウンタ95、カラープリンタ100内の各装置に制御信号を送信したり操作部50からの入力信号を受信したりする複数(ここでは2つ)のI/F(インターフェイス)96を少なくとも備えている。また、制御部90は、装置本体内部の任意の場所に配置可能である。
【0047】
ROM92には、カラープリンタ100の制御用プログラムや、制御上の必要な数値等、カラープリンタ100の使用中に変更されることがないようなデータ等が収められている。RAM93には、カラープリンタ100の制御途中で発生した必要なデータや、カラープリンタ100の制御に一時的に必要となるデータ等が記憶される。具体的には、各感光体ドラム1a〜1dの駆動時間t1、各帯電装置2a〜2dへの帯電バイアスの印加時間t2、後述する感光層の摩耗レートr、s、及びこれらを用いて算出された感光層の摩耗量M、積算摩耗量ΣMの他、感光層の摩耗量(層厚)に対するシフト電圧(補正値)との関係を記憶した帯電バイアス補正テーブルも格納されている。カウンタ95は、印刷枚数や駆動時間t1、帯電バイアス印加時間t2を積算してカウントする。
【0048】
また、制御部90は、カラープリンタ100における各部分、装置に対し、CPU91からI/F96を通じて制御信号を送信する。また、各部分、装置からその状態を示す信号や入力信号がI/F96を通じてCPU91に送信される。制御部90が制御する各部分、装置としては、例えば、画像形成ユニットPa〜Pd、露光ユニット4、一次転写ローラ6a〜6d、定着部7、二次転写ローラ9、画像入力部40、バイアス制御回路41、操作部50等が挙げられる。
【0049】
画像入力部40は、カラープリンタ100がパーソナルコンピュータ等から送信される画像データを受信する受信部である。画像入力部40より入力された画像信号はデジタル信号に変換された後、一時記憶部94に送出される。
【0050】
バイアス制御回路41は、帯電バイアス電源42、現像バイアス電源43、及び転写バイアス電源44と接続され、制御部90からの出力信号によりこれらの各電源を作動させるものであり、これらの各電源はバイアス制御回路41からの制御信号によって、帯電装置2a〜2d、磁気ローラ27、現像ローラ29、一次転写ローラ6a〜6d、二次転写ローラ9に所定のバイアスを印加する。帯電電流センサ45は、帯電ローラ21に帯電バイアスが印加されたときに帯電ローラ21と感光体ドラム1a〜1dとの間に流れる電流値を検知し、検知結果は制御部90に送信される。
【0051】
操作部50には、液晶表示部51、各種の状態を示すLED52が設けられており、ユーザは操作部50を操作して指示を入力することで、カラープリンタ100の各種の設定をし、画像形成等の各種機能を実行させる。液晶表示部51は、カラープリンタ100の状態を示したり、画像形成状況や印刷部数を表示したり、タッチパネルとして、両面印刷や白黒反転等の機能や倍率設定、濃度設定など各種設定を行えるようになっている。
【0052】
その他、操作部50には、画像形成を開始するようにユーザが指示するスタートボタン、画像形成を中止する際等に使用するストップ/クリアボタン、カラープリンタ100の各種設定をデフォルト状態にする際に使用するリセットボタン等が設けられている。
【0053】
次に、本発明の画像形成装置における感光層の摩耗量の予測方法について説明する。図1に示したような接触式の帯電装置2a〜2dを備えた画像形成装置においては、帯電ローラ21に帯電バイアスを印加した状態で装置を駆動する画像形成時と、帯電ローラ21に帯電バイアスを印加しない状態で装置を駆動する非画像形成時とで、感光体ドラム1a〜1d表面に形成された感光層の単位時間当たりの摩耗量(摩耗レート)が異なる。
【0054】
感光体ドラム1a〜1dが摩耗する主な要因としては、感光体ドラム1a〜1dに接触する中間転写ベルト8、クリーニングブレード31による物理的な摩耗が挙げられる。この物理的な摩耗は、中間転写ベルト8、及びクリーニングブレード31等の接触部材が感光体ドラム1a〜1dに所定の圧力で押圧され、トナー外添剤である酸化チタン等の高硬度微粒子を含む現像剤が介在した状態で感光体ドラム1a〜1dが接触部材に対し線速差をもって回転し、感光体ドラム1a〜1dの回転により接触部材と感光体ドラム1a〜1dとの間に摩擦が生じることで発生する。
【0055】
画像形成時においては、上記の物理的な摩耗に加えて、帯電ローラ21から感光体ドラム1a〜1dへ流れる帯電電流により摩耗が促進される。そのため、帯電バイアスを印加する画像形成時の感光層の摩耗レートは帯電バイアスを印加しない非画像形成時の感光層の摩耗レートに比べて大きくなる。また、後述するように、直流電圧のみからなる帯電バイアスを印加したときの摩耗レートは、感光体ドラムと帯電装置との間に流れる帯電電流iに比例する。
【0056】
そこで、帯電バイアスを印加しない状態での単位時間当たりの感光層の摩耗レート(以下、摩耗レートrという)と、帯電バイアスを印加した場合の単位時間、単位帯電電流当たりの摩耗レート(以下、摩耗レートsという)とを予め求めておき、感光体ドラムの駆動時間と摩耗レートrとの積で算出される物理的な摩耗量、及び帯電バイアスの印加時間と帯電電流i、摩耗レートsとの積で算出される帯電バイアス印加による摩耗量の増加分を加算すれば、感光層の摩耗量を予測することができる。
【0057】
即ち、感光体ドラムの駆動時間をt1、帯電バイアスの印加時間をt2とすると、感光層の摩耗量Mは以下の式(1)で表される。
M=r×t1+s×i×t2 ・・・(1)
【0058】
画像形成時においてはt1=t2であるため、感光層の摩耗量Mは、図4(a)に示すように、物理的な摩耗量(r×t1)と放電による摩耗量の増加分(s×i×t2)の和となる。一方、非画像形成時においてはt2=0であるため、感光層の摩耗量Mは、図4(b)に示すように、物理的な摩耗量(r×t1)のみとなる。
【0059】
そして、画像形成装置の使用期間中に任意の時間毎の摩耗量Mを複数回(M1、M2・・・)算出し、さらにMを積算して積算摩耗量ΣMを算出する。積算摩耗量ΣMの算出例を表1に示す。表1では、駆動時間t1の積算値が10分を超えたジョブの終了後に摩耗量MをM1〜M10の10回分算出し、各M1〜M10の算出結果を積算して積算摩耗量ΣMを求めている。
【0060】

【表1】

【0061】
なお、感光層の初期層厚のスペックは決まっており(例えば36±2μm)、所定の環境条件において感光体ドラム1a〜1d表面が狙いの表面電位となるような帯電バイアスの基準値が各画像形成部Pa〜Pdにおいて設定されている。そして、得られた感光層の積算摩耗量ΣMに応じて、初期層厚がスペックの下限値である場合であっても絶縁破壊発生電圧を超えないように帯電ローラ21へ印加する帯電バイアスを制御することにより、感光層のピンホール発生を防止して長期間に亘って安定した画像を出力することができる。以下、摩耗レートr、sの具体的な求め方について説明する。
【0062】
(摩耗レートrの求め方)
図1の画像形成装置における接触式の帯電装置2a〜2dを、スコロトロン式の帯電装置に変更し、連続印字を行ったときの印字時間に対する摩耗量をプロットする。スコロトロン式の帯電装置を使用した場合、放電による摩耗量の増加はほぼ無視できる程度となる。従って、感光層の摩耗量は接触部材(中間転写ベルト8、クリーニングブレード31)による物理的な摩耗によるものとみなされ、各部材の接触状態に大きな変動がなければ摩耗量は感光体ドラムの駆動時間に比例する。
【0063】
図5は、感光体ドラムの駆動時間x1(分)を横軸に、感光層の摩耗量y1(μm)を縦軸にとり、感光体ドラムを所定の線速(例えば168mm/s)で回転させて連続印字したときのグラフである。図5に示すグラフは、一次式y1=0.0005x1で表される直線となるから、傾き0.0005が摩耗レートr(感光体ドラムを線速168mm/sで駆動させたときの、1分間当たりの感光層の摩耗量)に相当する。
【0064】
(摩耗レートsの求め方)
図1の画像形成装置において、帯電装置2a〜2dの帯電ローラ21と感光体ドラム1a〜1dとの間に一定電流(例えば0μA、30μA、50μA、70μA)を印加して感光体ドラム1a〜1dを画像形成時と同じ速度で回転させる。途中、クリーニングブレード31のめくれを防止するために、必要に応じて潤滑剤としてトナーを補給する。そして、初期状態、及び所定時間経過後に感光層の層厚を測定し、各電流値に対する単位時間当たりの摩耗量を算出する。
【0065】
図6は、帯電電流x2(μA)を横軸に、各電流値に対する単位時間(100分)当たりの感光層の摩耗量から0μAでの摩耗量を差し引いた放電による摩耗量の増加分y2(μm/100分)を縦軸にとり、感光体ドラムを所定の線速(例えば168mm/s)で回転させて連続印字したときのグラフである。図6に示すグラフは、一次式y2=0.003x2+0.0056で表される直線となるから、傾き0.003が感光体ドラムを線速168mm/sで100分間駆動させたときの、単位帯電電流(1μA)当たりの摩耗量の増加分に相当する。従って、摩耗レートs(感光体ドラムを線速168mm/sで駆動させたときの、1分間・1μA当たりの摩耗量の増加分)は0.003/100=0.00003となる。
【0066】
上述した方法により感光層の摩耗量を算出することで、図1に示したようなカラープリンタにおいて、例えばモノクロ印字動作時に画像形成部Pdの帯電装置2dにのみ帯電バイアスが印加され、画像形成部Pa〜Pcの帯電装置2a〜2cに帯電バイアスが印加されていないような場合でも、帯電電流の影響を排除した感光体ドラム1a〜1cの感光層の摩耗量を精度良く算出することができる。
【0067】
また、短時間で多量の印字を連続して行う場合(ドラム駆動時間t1≒帯電バイアス印加時間t2)と、少量の印字を何度も行う場合(ドラム駆動時間t1>帯電バイアス印加時間t2)のどちらの場合でも摩耗量を精度良く算出することができる。また、帯電ローラ21から感光体ドラム1a〜1dへの放電量(≒帯電電流)がわかれば摩耗量を算出できるため、使用環境によらず摩耗量を精度良く算出することができる。
【0068】
なお、特に高湿環境の場合、帯電ローラ21表面が吸湿すると感光体ドラム1a〜1dとの接触部からの電荷注入割合が増加するため、検出された電流値に対する摩耗レートsは減少する。そのため、装置の使用環境、特に湿度条件に対応して複数の摩耗レートsを予め記憶させておき、湿度検出センサで検出された装置内部の湿度に応じて摩耗レートsを変更して摩耗量を算出すれば、摩耗量の予測精度がより高くなる。
【0069】
図7は、本発明の画像形成装置における帯電バイアスの制御例を示すフローチャートである。図1〜図4を参照しながら、図7のステップに沿って感光層の層厚の予測値に基づく帯電バイアスの制御手順について説明する。図1に示したカラープリンタ100において印字が実行されると、画像形成部Pa〜Pd毎に各感光体ドラム1a〜1dの駆動時間t1及び帯電バイアスの印加時間t2をカウントする(ステップS1)。t1、t2のカウントはt1の積算カウント値が10分に達するまで継続され(ステップS2)、10分に達したときは全速モード(例えば168mm/s)での帯電電流を帯電電流センサ45により検出する(ステップS3)。
【0070】
ステップS3で検出された帯電電流は、ドラム駆動10分間の帯電ON時間中の帯電電流iとみなされる。また、1/2線速、3/4線速など、全速モードと異なるモードで画像形成が行われる場合は、電流検知は全速モード時にのみ行い、積算カウント値に1/2、3/4等の係数を掛けてドラム駆動時間t1、帯電バイアス印加時間t2を補正する。t1、t2はROM93に格納される。
【0071】
そして、式(1)を用いてドラム駆動10分毎の感光層の摩耗量Mを算出し(ステップS4)、t1及びt2をリセットする(ステップS5)。さらに、算出された摩耗量Mを積算して積算摩耗量ΣMを算出し(ステップS6)、ΣMをRAM93に保存する(ステップS7)。次に、ΣMが1μm増えたか否かが判断され(ステップS8)、ΣMが1μm増えた場合は帯電バイアスの基準値に対するシフト電圧(補正値)を帯電バイアス補正テーブルから参照して帯電バイアスを補正し(ステップS8)、次回以降の画像形成時における帯電バイアスの印加に反映させる。具体的には、帯電バイアスを感光層の層厚に応じて決まる絶縁破壊発生電圧よりも低く、且つ所望のドラム表面電位が得られるような電圧値に設定する。
【0072】
帯電バイアスを補正した後はステップS1に戻り、同様の手順で摩耗量Mを算出してRAM93内に保存された積算摩耗量ΣMに加算して上書き保存し、直前の帯電バイアス補正時からΣMが1μm増える毎に帯電バイアスの補正を行う。なお、帯電バイアスの最適値は装置内部の温湿度条件等、感光層の層厚以外のファクターによっても変化するため、実際の帯電バイアスは複数のファクターで決まるシフト電圧を加算して決定される。
【0073】
上記のように帯電バイアスの制御を行うことで、感光層が摩耗した場合にも感光層の層厚に応じて感光体ドラムの表面電位を一定に維持するために必要十分な帯電バイアスを印加することができる。従って、感光層のピンホールによる黒点やドラム表面電位の低下による画像カブリのない高品質な画像を長期間に亘り安定して出力できる画像形成装置となる。また、感光層のピンホールの発生も抑制されるため、感光体ドラムの長寿命化にも寄与する。
【0074】
さらに、ドラム駆動時間t1、帯電バイアス印加時間t2、積算摩耗量ΣM、及び摩耗レートr、sを記憶しておけば感光層の摩耗量に基づく帯電バイアス制御が可能となるため、これらが格納されるRAM93の容量を小さくすることができる。
【0075】
また、1/2線速、3/4線速等の通常線速(全速モード)と異なる線速のときに、通常線速から大きく帯電条件を変える場合や、ユーザの使用態様によっては通常線速と異なる線速で使用頻度が高い場合も考えられる。そのような場合は、摩耗レートr、sの値を線速毎に複数設定しておき、摩耗量Mの算出を線速の異なるジョブ毎に分けて行うようにすることで、様々なモードでの摩耗量をより精度良く予測することができる。
【0076】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば上記実施形態に記載されている構成部品の材質、形状、その相対配置などは、特定的な記載がない限りはこの発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。また、感光層の摩耗量Mを算出する際の駆動時間の積算カウント値や帯電バイアスの補正トリガーとなる積算摩耗量ΣMの増加幅についても一例に過ぎず、感光層の特性や初期層厚等に応じて適宜変更可能である。
【0077】
また、上記実施形態において、帯電ローラ21は、感光体ドラム1a〜1dの表面に接触して感光体ドラム1a〜1dの表面を帯電させるよう構成されているが、帯電ローラ21が感光体ドラム1a〜1dの表面に近接して配置され、非接触の状態で帯電させるように構成される実施形態においても、実質的に同じ作用により実質的に同じ効果を奏することができる。
【0078】
また、本発明は図1に示したタンデム型のカラープリンタに限らず、アナログ又はデジタル式のモノクロ複写機、モノクロプリンタ、ロータリー式或いはタンデム式のカラー複写機、ファクシミリ等の、種々の画像形成装置に適用できるのはもちろんである。以下、実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0079】
図1に示した画像形成装置を用いて、実際に連続印字を行った場合、或いは帯電バイアスをOFFとして駆動を行った場合の感光層の摩耗量と、式(1)を用いて算出される摩耗量の予測値とを比較した。試験方法としては、所定時間毎に帯電電流と感光層の層厚を測定し、感光体ドラムの駆動時間に対する摩耗量の実測値の推移をプロットした。一方、予め決定された摩耗レートr、s(ここではr=0.0005、s=0.00003)と、測定された帯電電流iとから式(1)を用いて摩耗量の予測値を算出し、実測値と同様にプロットした。結果を図8に示す。
【0080】
図8に示すように、式(1)により算出した感光層の摩耗量の予測値(図に□で表示)と、感光層の摩耗量の実測値(図に●で表示)とは、連続印字時(図に実線で表示)と帯電バイアスOFF時(図に破線で表示)の両方でよく一致していることがわかる。この結果より、本発明の方法を用いて感光層の摩耗量を精度良く予測できるとともに、摩耗量の予測値に基づいて帯電バイアスを適正に制御可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、感光体ドラムの表面に接触若しくは非接触状態で直流電圧のみからなる帯電バイアスを印加してドラム表面を帯電させる帯電部材を備えた画像形成装置に利用可能である。本発明の利用により、感光層の摩耗量を精度良く予測し、感光層の層厚に応じた適切な帯電バイアスを印加することでピンホールの発生を効果的に抑制でき、像担持体の長寿命化も促進可能な画像形成装置を提供することができる。
【0082】
特に、感光層が摩耗し易いOPC等の有機感光体を備えた画像形成装置に適用した場合、感光層の摩耗に伴うピンホールの発生リスクを低下させて装置の長寿命化、出力画像の画質及びメンテナンス性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0083】
Pa〜Pd 画像形成部
1a〜1d 感光体ドラム(像担持体)
2a〜2d 帯電装置
3a〜3d 現像装置
4 露光ユニット
5a〜5d クリーニング装置
6a〜6d 一次転写ローラ
8 中間転写ベルト
9 二次転写ローラ
20 除電ランプ
21 帯電ローラ(帯電部材)
41 バイアス制御回路(電圧印加手段)
42 帯電バイアス電源(電圧印加手段)
45 帯電電流センサ(電流検出手段)
90 制御部(制御手段)
93 RAM(記憶手段)
95 カウンタ
100 カラープリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に感光層が形成された像担持体と、
該像担持体の表面に接触若しくは非接触状態で直流電圧のみからなる帯電バイアスを印加することで前記像担持体表面を帯電させる帯電部材と、
該帯電部材に直流電圧を印加する電圧印加手段と、
該電圧印加手段により帯電バイアスを印加したとき前記像担持体と前記帯電部材との間に流れる帯電電流を検出する電流検出手段と、
前記像担持体の駆動時間t1、前記帯電部材への帯電バイアスの印加時間t2を記憶する記憶手段と、
該記憶手段に記憶された前記像担持体の駆動時間t1、前記帯電部材への帯電バイアスの印加時間t2、及び前記電流検出手段により検出された帯電電流iに基づいて感光層の摩耗量Mを算出し、摩耗量Mを積算して得られた積算摩耗量ΣMに応じて前記帯電部材に印加される帯電バイアスを基準値から補正する制御手段と、を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、算出された積算摩耗量ΣMを前記記憶手段に記憶するとともに、積算摩耗量ΣMが前回の帯電バイアスの補正時から所定量増加する毎に帯電バイアスを補正することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記摩耗量Mは、以下の式(1)により算出されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
M=r×t1+s×i×t2 ・・・(1)
ただし、
r:像担持体を所定の線速で駆動させたときの、帯電バイアスを印加しない場合の単位時間当たりの摩耗レート
s:像担持体を所定の線速で駆動させたときの、単位時間、単位帯電電流当たりの摩耗レート
である。
【請求項4】
前記記憶手段には、装置内部の環境条件に応じた複数の前記摩耗レートsが記憶されていることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記憶手段には、前記像担持体の線速に応じた複数の前記摩耗レートr、sが記憶されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像担持体及び前記帯電部材を複数組有し、像担持体毎に算出される前記摩耗量M及び前記積算摩耗量ΣMに基づいて各帯電部材に印加される帯電バイアスが個別に制御されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記帯電バイアスは、感光層の初期層厚と前記積算摩耗量ΣMとに応じて決まる絶縁破壊発生電圧よりも低く設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記感光層が、有機感光層であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−128345(P2011−128345A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286111(P2009−286111)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】