説明

画像形成装置

【課題】低コストな構成で高精度に帯電ローラの温度を推定することが可能であり,高画質な画像形成を実現した画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明のカラープリンタ1は,感光体21と,帯電ローラを含む帯電部22と,露光部23と,現像部24と,1次転写部25と,2次転写部16と,定着部17とを備えたものであって,装置内であって,定着部17と転写部25,16と帯電部22とのいずれよりも露光部23に近い位置に配置された温度測定部36と,温度測定部36が取得した温度に基づいて帯電部22への印加電圧を制御する制御部41とを有し,制御部41は,取得温度が第1の温度である場合の印加電圧の絶対値よりも,取得温度が第1の温度より高い第2の温度である場合の印加電圧の絶対値を小さくするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子写真方式の画像形成装置に関する。さらに詳細には,帯電装置として帯電ローラを使用した画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では,感光体ドラム等の像担持体の表面電位を一様に帯電させるための帯電装置が使用されている。帯電装置としては通常,例えば,非接触方式のコロトロン帯電器やスコロトロン帯電器,接触方式の帯電ローラや帯電ブラシ等のいずれかが装着される。非接触方式のものは,コロナ放電を利用して帯電する装置であり,その放電過程によりオゾンが発生する。そのため,オゾンを排気するための排気装置,あるいはオゾンの吸着装置等が必須となり,接触方式の帯電装置を使用した場合に比較して高コストとなるとともに装置の大型化を伴うものである。一方,接触方式のものはオゾンの発生が無く,低コストかつコンパクトであり,ローエンド機種のプリンタ等ではこの接触方式,特に帯電ローラが主流となっている。
【0003】
一般に帯電ローラは,金属製の軸の外周に半導電性のゴム等をローラ状に成型した構成となっている。このローラ部分の電気抵抗値は温度によってある程度変化するため,その対策を行わないと,帯電ローラの温度によって帯電処理後の像担持体の表面電位が多少異なるものとなってしまう。像担持体の表面電位によって,その後の露光処理後の像担持体の表面電位も影響を受けるため,帯電ローラの温度の違いが画像濃度の違いとなって発現するおそれがある。そのため,帯電ローラ近傍の温度を検出し,その結果に基づいて帯電バイアスを制御する技術が提案されている(例えば,特許文献1参照。)。
【0004】
一般に温度を検出するための手段としては,例えば,サーミスタ,熱電対,放射温度計等がある。サーミスタは,温度が変化したときの金属の電気抵抗値の変化を利用したものであり,電流を流して電圧を測定することで温度を取得するものである。熱電対は,材質の異なる2種類の金属線を接続した接点間の熱起電力によって温度を取得するものである。また,放射温度計は,対象物が放出する赤外線を測定することにより温度を取得するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−149203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,前記した従来の温度計測手段のうち,サーミスタ及び熱電対は,いずれも,微量な電流変化あるいは電圧変化を測定するものである。そのため,測定対象の周囲に高電圧を印加される装置が設置されていると,その影響により正確な測定が困難であるという問題点があった。放射温度計は,周囲の電気的構成に影響を受けずに正確な測定が可能なものであるが,装置自体のコストが高く,低価格級の機種に搭載することは実質的に不可能であった。
【0007】
本発明は,前記した従来の画像形成装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,低コストな構成で高精度に帯電ローラの温度を推定することが可能であり,高画質な画像形成を実現した画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像形成装置は,像担持体と,電圧が印加されて像担持体を帯電させる帯電回転部材と,帯電回転部材による帯電後の像担持体に静電潜像を形成する露光部と,形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像部と,形成されたトナー像を記録材に転写する転写部と,記録材に転写されたトナー像をその記録材に定着させる定着部とを備えた画像形成装置であって,画像形成装置内であって,定着部と転写部と帯電回転部材とのいずれよりも露光部に近い位置に配置された温度測定部と,温度測定部が取得した温度に基づいて帯電回転部材への印加電圧を制御する帯電電圧制御部とを有し,帯電電圧制御部は,取得温度が第1の温度である場合の印加電圧の絶対値よりも,取得温度が第1の温度より高い第2の温度である場合の印加電圧の絶対値を小さくするものである。
【0009】
本発明の画像形成装置によれば,温度測定部が,画像形成装置内であって,定着部と転写部と帯電回転部材とのいずれよりも露光部に近い位置に配置されている。従って,定着部の加熱部材の影響も,転写部の記録材の影響も,帯電回転部材の高電圧の影響もいずれも受けにくい。従って,低価格な温度検出装置の採用も可能である。さらに,発明者らは,露光部の温度が帯電回転部材の温度によく対応していることを見出した。すなわち,この温度測定部が取得した温度に基づいて帯電回転部材への印加電圧を制御することにより,温度に関わらず安定して適切な画像濃度での画像形成を行うことができる。従って,低コストな構成で高精度に帯電ローラの温度を推定することが可能であり,高画質な画像形成を実現した画像形成装置となっている。
【0010】
さらに本発明では,温度測定部は,サーミスタまたは熱電対によるものであることが望ましい。
このような装置は低価格であり,装置の大きさも小さいので,特に低価格級の画像形成装置に搭載するには適している。これらの装置は,周囲の電気的な影響を受けるが,本発明の配置であれば,電気的な影響はなく,高精度な測定が可能である。
【0011】
さらに本発明では,露光部は,回転により光を走査するポリゴンミラーを有するものであることが望ましい。
このようなものであれば,露光部は,帯電回転部材と同様に回転する部材を有することになる。従って,露光部の温度と帯電回転部材の温度とは良好な対応関係を有するものとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の画像形成装置によれば,低コストな構成で高精度に帯電ローラの温度を推定することが可能であり,高画質な画像形成を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】露光部の温度と帯電部への印加電圧との関係を示すグラフ図である。
【図3】実験のための温度検出装置の設置場所を示す説明図である。
【図4】実施例と各比較例によって取得された温度と,帯電ローラの温度との比較を示すグラフ図である。
【図5】実施例と各比較例によって取得された温度と,帯電ローラの温度との比較を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,いわゆるタンデム方式の中間転写ベルトを有するカラープリンタに,本発明を適用したものである。
【0015】
本形態のカラープリンタ1は,図1に示すように,カラー画像の形成が可能ないわゆるタンデム方式の画像形成装置である。図中中段には,4色の画像形成部が,図中左から右へ,イエロー10Y,マゼンタ10M,シアン10C,ブラック10Kの順に中間転写ベルト11に沿って配置されている。また,カラープリンタ1の図中下部には,着脱可能な給紙カセット13が装着されている。さらに,図中右側には,下から上向きに用紙搬送路14が設けられている。用紙搬送路14に沿って,下から順に,給紙ローラ15,2次転写部16,定着部17,排紙ローラ18が設けられている。また,カラープリンタ1の上面には,排紙トレイ19が設けられている。
【0016】
各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kは,それぞれの感光体21を中心に図1中時計回りに,帯電部22,露光部23,現像部24,1次転写部25,クリーナ26を有している。本形態の帯電部22は,帯電ローラを有するものである。この帯電部22は,帯電ローラと感光体21とのニップ部近傍での放電現象を利用して感光体21の表面を帯電する。そのため,例えば感光体21の電位が接地電位に対して−600V程度に相当する電位となるように帯電させるためには,帯電部22自体には,−1000V程度の電圧を印加することが必要である。
【0017】
また,本形態の露光部23は,図1に示すように,レーザ光源31と複数のポリゴンミラー32,ミラー33等を有し,画像データに基づいたレーザ光を感光体21の表面に照射するものである。複数のポリゴンミラー32はハウジング35に取り付けられている。そして,各ポリゴンミラー32は,レーザ光源31から照射されるレーザ光に同期して回転され,各ミラー33へ向けてレーザ光を走査するものである。本形態では,露光部23は,各色の画像形成部の下部に設けられ,レーザ光源31は各色で共通のものとなっている。
【0018】
さらに,露光部23の内部には,ハウジング35のうち,レーザ光の経路とならない箇所に温度測定部36が設けられている。本形態の温度測定部36は,サーミスタによって温度測定を行うものである。ただし,この温度測定部36を熱電対によるものとすることもできる。さらに本形態は,温度測定部36において取得された露光部23の温度に基づいて,帯電部22に印加する印加電圧を制御する制御部41をも有している。
【0019】
次に,このカラープリンタ1によってカラー画像が形成される際の,各部の動作を簡単に説明する。画像形成時には,中間転写ベルト11および各色の感光体21は,図1中に矢印で示すように回転される。感光体21は,帯電部22によって一様に帯電され,続いて露光部23によって露光される。これにより,感光体21の表面には,画像データに基づいた静電潜像が形成される。次に,現像部24によって,静電潜像にトナーが供給され,感光体21上にトナー像が形成される。各色のトナー像は,1次転写部25によって中間転写ベルト11上に転写され,重ね合わされる。1次転写領域を通過後も感光体21に残留しているトナーは,クリーナ26によって掻き取られる。
【0020】
一方,給紙カセット13に収容されている用紙は,給紙ローラ15によって1枚ずつ引き出される。そして,中間転写ベルト11上に重ね合わされたトナー像は,用紙搬送路14を搬送されてきた用紙に,2次転写部16において転写される。トナー像が転写された用紙は,さらに上方へ搬送され,定着部17に至る。定着部17において,加熱されるとともに加圧されることにより,トナーが用紙に定着される。これにより,画像形成された用紙は排紙ローラ18によって排紙トレイ19に排出される。
【0021】
本形態では,画像形成に先立って,温度測定部36によって露光部23の内部の温度が測定される。画像形成時に露光部23は,帯電部22とほぼ同様のタイミングで処理動作を行う。また,いずれも加熱部材(例えば,定着部17)による加熱や,通紙による冷却といった温度変化の影響を受けにくい。そのため,露光部23の温度は,帯電部22の温度と同じ傾向で上昇あるいは下降する。すなわち,露光部23の温度と帯電部22の温度とは,同じではないもののほぼ1対1の対応関係にあることが分かった。このことから,露光部23の温度が高ければ,帯電部22の温度も高いと推定できる。また,露光部23の温度が低ければ,帯電部22の温度も低いと推定できる。
【0022】
また,露光部23の内部は,画像形成中でも帯電部22のように高電圧が印加される箇所ではない。従って,露光部23の内部に設けられた温度測定部36は,他の部材の影響を受けることなく,サーミスタによるものであっても高精度に露光部23の温度の測定が可能である。従って,高精度に露光部23の温度を測定することができるので,帯電部22の温度を高精度に推定することができる。そこで本形態では,温度測定部36による測定結果に基づいて,帯電部22の印加電圧を制御する。
【0023】
つまり,制御部41は,取得した露光部23の温度に基づいて,帯電ローラに印加する電圧を制御する。すなわち,図2に示すように,得られた露光部23の温度が,予め定めた第1の基準温度(T1)と予め定めた第2の基準温度(T2)との間であれば,帯電電圧として予め定めた基準電圧(V0)を印加する。それに対して,得られた温度が,第1の基準温度(T1)より低い場合には,基準電圧(V0)より絶対値の大きい電圧(V1)を印加する。また,得られた温度が,第2の基準温度(T2)より高い場合には,基準電圧(V0)より絶対値の小さい電圧(V2)を印加する。
【0024】
このようにすることにより,帯電ローラの温度にかかわらず,感光体21の表面電位をほぼ同じ電位となるように帯電させることができる。なお,電圧の絶対値とは,予め定めた基準の電圧と帯電ローラの電圧との差の絶対値のことである。予め定めた基準の電圧とは,例えば,接地電圧,帯電前の感光体21の表面電圧,または,感光体21の軸電圧などとすればよい。
【0025】
なお,発明者らは,露光部23の温度と帯電部22の温度とがほぼ対応関係にあることを実験によって確認した。まず,帯電部22の温度と,画像形成装置内の各所の温度との関係を実験で確かめた。そのために,図3に示すように,温度測定部36および,温度検出箇所51,52,53にそれぞれサーミスタを配置した実験用の画像形成装置を用意した。さらに,比較の対象である帯電ローラの温度を測定するために,放射温度計を設置した。
【0026】
各測定箇所は以下の通りである。温度測定箇所51は,定着部17の周辺である。温度測定箇所52は,中間転写ベルト11の周辺である。温度測定箇所53は,2次転写部16の周辺である。なお,現像部24の周辺にもサーミスタを設けて温度の測定を行おうとしたが,この箇所にも高電圧が印加されており,安定した測定はできなかった。
【0027】
この実験用の画像形成装置で,連続モードと間欠モードとで画像形成を行い,それぞれの箇所の温度を測定した。連続モードでの測定結果を図4に,間欠モードでの測定結果を図5にそれぞれ示す。これらの図では,温度測定部36で検出された温度を実施例(実線),温度検出箇所51,52,53で検出された温度をそれぞれ比較例1,2,3(破線)とした。なお,各図中に太線で示したのは,放射温度計で測定した帯電ローラの温度である。
【0028】
連続モードの場合,図4中に太線で示したように,帯電ローラの温度は次第に上昇し,ある程度の温度で飽和した。これに対して,他の箇所での測定結果は以下の通りであった。
実施例(露光部23内部):帯電ローラの温度よりやや高い温度で,帯電ローラの温度とほぼ同じ傾向を示した。
比較例1(定着部17周辺):画像形成処理の開始直後にかなり高温となり,その後通紙によって少し温度低下した。そのままでほとんど変化なく推移した。
比較例2(中間転写ベルト11周辺):画像形成処理の開始から少しずつ上昇した。帯電ローラや実施例より早い時点で飽和に至った。
比較例3(2次転写部16周辺):ごく僅かに温度上昇した。
【0029】
間欠モードの場合,図5中に太線で示したように,帯電ローラの温度は間欠的に上下を繰り返しつつ次第に上昇した。これに対して,他の箇所での測定結果は以下の通りであった。
実施例(露光部23内部):帯電ローラの温度よりやや高い温度で,帯電ローラの温度とほぼ同じ傾向を示した。
比較例1(定着部17周辺):画像形成処理の開始直後からかなり高温域で間欠的に上下を繰り返した。全体的にはほとんど変化なく推移した。
比較例2(中間転写ベルト11周辺):画像形成処理の開始から間欠的に上下を繰り返した。全体的な温度変化はほとんどなかった。
比較例3(2次転写部16周辺):ごく僅かに温度上昇した。間欠的な上下変化は見られなかった。
【0030】
この実験の結果,露光部23の内部の温度は,使用モードにかかわらず帯電ローラの温度に良く対応することが分かった。すなわち,露光部23の内部温度を測定すれば,帯電ローラの温度を推定することは容易である。なお,この理由としては,露光部23は帯電部22と同様に記録紙との接触がなく,またこれら各部の処理がほぼ同様のタイミングで行われること,さらに露光部23に設けられているポリゴンミラー32を回転させるモータが,帯電部22において回転する帯電ローラとほぼ同等の熱源となることなどが考えられる。
【0031】
以上詳細に説明したように,本形態の画像形成装置によれば,露光部23の内部で温度計測を行うことにより,サーミスタまたは熱電対という低価格の装置による温度計測が可能であるとともに,高精度に帯電部22の温度を推定することができる。従って,低コストな構成で高精度に帯電ローラの温度を推定することが可能である。すなわち,取得された露光部23の温度に基づいて帯電部22の印加電圧を制御すれば,高画質な画像形成を実現することができる。
【0032】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 カラープリンタ
16 2次転写部
17 定着部
21 感光体
22 帯電部
23 露光部
24 現像部
32 ポリゴンミラー
36 温度測定部
41 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と,電圧が印加されて前記像担持体を帯電させる帯電回転部材と,前記帯電回転部材による帯電後の前記像担持体に静電潜像を形成する露光部と,形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像部と,形成されたトナー像を記録材に転写する転写部と,記録材に転写されたトナー像をその記録材に定着させる定着部とを備えた画像形成装置において,
画像形成装置内であって,前記定着部と前記転写部と前記帯電回転部材とのいずれよりも前記露光部に近い位置に配置された温度測定部と,
前記温度測定部が取得した温度に基づいて前記帯電回転部材への印加電圧を制御する帯電電圧制御部とを有し,
前記帯電電圧制御部は,取得温度が第1の温度である場合の印加電圧の絶対値よりも,取得温度が第1の温度より高い第2の温度である場合の印加電圧の絶対値を小さくするものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において,
前記温度測定部は,サーミスタまたは熱電対によるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において,
前記露光部は,回転により光を走査するポリゴンミラーを有するものであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−154262(P2011−154262A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16623(P2010−16623)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】