説明

画像形成装置

【課題】インク不足によって発生したインク不吐出による印字不良の発生を抑制するとともに、ヘッドタンク内の負圧不足による吐出不良やノズルの吐出口からのインク垂れを防止できる。
【解決手段】インクタンク内に気泡が混入したものと判断したとき、ヘッドタンクを大気開放する前に、インクカートリッジからヘッドタンクに正転送液を行ってヘッドタンク内のインクの液面が供給口300の開口部より高くなるまでインクをヘッドタンク135に充填する。これにより、ヘッドタンク内を大気と遮断することなり、その後に逆転送液を行ってヘッドタンクからインクカートリッジ側へインクを戻してヘッドタンク内を所定の圧力の負圧状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリンタ、ファックス、複写機、プロッタ、或いはこれらの内の複数の機能を複合した画像形成装置としては、例えばインクの液滴を吐出する液体吐出ヘッドを備え、媒体を搬送しながらインク滴を用紙に付着させて画像形成を行うインクジェット記録装置がある。ここでの媒体は「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。また、画像形成装置は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。そして、画像形成とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与する(単に液滴を吐出する)ことをも意味する。また、インクとは、所謂インクに限るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えばDNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる液体の総称として用いる。
【0003】
上記インクジェット記録装置には、大量のインクを収容可能である着脱自在のインクカートリッジと、該インクカートリッジからのインクを一時貯留し、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドにインクを供給するヘッドタンク(サブタンク、バッファタンクとも称される)とを備えたものがある。このヘッドタンクは樹脂フィルムなどの可撓性部材で構成されている。また、ヘッドタンクには、ヘッドタンク内を大気に開放し、又は大気を遮断する開閉可能な開閉弁などの大気開放機構と、インクカートリッジからヘッドタンクにインクを送る送液手段とを備えている。さらに、ヘッドタンク内には、ヘッドタンク内のインク満タンの液面を検知する液面検知手段が備えられている。このような構成を備えたインクジェット記録装置では、送液手段による正転送液を行ってインクカートリッジからヘッドタンクへインクを充填するとき、ヘッドタンクがインクで満タン状態にあることを検知する液面検知手段からの検知信号に基づいてインク充填動作を制御している。このインク充填動作には、印字開始前又は印字終了後にヘッドタンク内をインクで満タン状態にするために大気開放機構の開閉弁を開状態にしてインク充填を行う大気開放充填と、印字中に使用インク量のインクを随時充填するために大気開放機構の開閉弁を閉状態にしてインク充填を行う通常充填とがある。
【0004】
上記インクジェット記録装置において、インクカートリッジ内のインクを送液手段によってヘッドタンクへ送液してインクカートリッジ内のインクが空になったとき、このインクカートリッジの空状態で送液手段によるヘッドタンクへの送液を続けると、送液手段とインクカートリッジの装着部分との流路内が過負圧状態となる。この状態でインクカートリッジを交換すると、外気を吸い込み、送液手段とインクカートリッジの装着部分との間に気泡が混入する場合がある。吸い込んでしまった空気は送液手段からヘッドタンクまでの供給経路は閉じた経路であるために抜けることが無く、新たなインクカートリッジが装着されインク充填動作が始まると、空気はインクと共にチューブを通ってヘッドタンクに送られることになる。ヘッドタンク内に気泡が存在する状態で画像形成動作が行われると、ヘッドタンク内の気泡が液滴吐出ヘッドに送られてインク不吐出による吐出不良が発生し画像品質が低下することになる。また、気泡が混入したままヘッドタンク内を大気開放した状態でインクを充填すると、液面が上昇し、液面より上部に存在する気泡を持ち上げることになる。このため、ヘッドタンクの上部に設けられている大気開放機構にインクが付着し、付着したインクが乾燥し固体化することで、大気開放機構の開閉弁が駆動できなくなる。
【0005】
インクカートリッジ交換時にインクカートリッジを引き抜いた際気泡が混入したときのインク充填動作に関する方法として、特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1の方法では、空気が混入した可能性が高い場合にはエアー混入フラグをセットし、供給経路内の空気をヘッドタンクに送り込む送液シーケンスを行う。送液シーケンス実施後、所定時間以内であればエアー混入フラグ状態(ヘッドタンク泡状態)とする。送液シーケンス実施後、エアー混入フラグが解除されたら、通常状態に戻る。エアー混入フラグ状態でユーザがプリンタを使用し、通常状態において再負圧形成を要するタイミング(大気開放充填を要するタイミング)では、大気開放充填を行わず、代替え動作(通常充填やクリーニングなど)を行っている。このように、上記特許文献1に記載の発明では、ヘッドタンク内の気泡が消失するまでは上記大気開放充填によるインク充填を制限している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の方法によれば、大気開放を要するインク充填が必要なタイミング、すなわち再負圧形成が必要な状況にも関わらず、再負圧形成をしていないため、ヘッドタンク負圧ができていない可能性がある。また、エアー混入状態における再負圧形成方法の実装法では、再負圧形成を実施するたびに、ヘッドタンクインク液面が下がり、最悪の場合はヘッドタンク内インクが空になる。このため、インク不足によるインク不吐出が起こり、印字不良が起こる。
【0007】
また、ヘッドタンク内のインクを所定量吸引してヘッドタンク内を負圧状態にしたが、この負圧形成時ヘッドタンク内のインク液量はヘッドタンク内の気泡が消失した体積分、インクの規定量より減っている。このためヘッドタンク内のインク液量が規定量より少ない状態でヘッドタンク内の所定の負圧形成を行ったことで、ヘッドタンク内の負圧値は規定値より低くなる。インクジェット記録装置は、ヘッドタンクに連通する記録ヘッド内の液室内を規定の負圧値となる負圧状態にし、液室に設けられた変位部材に記録電圧を供給して変位部材を変位させて液室の内圧に規定の変位圧を加えて記録ヘッドのノズルからインクを吐出して印字を行う。上記のように印字初期時から既にヘッドタンク内の負圧値が規定値より低い状態で変位部材によって液室の内圧に規定の変位圧を加えると、不足の負圧値分過剰なインクが吐出されて正常なインク吐出ができない。また、ヘッドタンク内の負圧値が規定値より低いと、ノズルでのインクのメニスカス液面を保つことができず液室内のインクがノズルから垂れるという不具合があった。
【0008】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、インク不足によって発生したインク不吐出による印字不良の発生を抑制するとともに、ヘッドタンク内の負圧不足による吐出不良、ヘッドタンク内の負圧不足によって発生するノズルの吐出口からのインク垂れを防止できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、インクを貯留するインクカートリッジと、該液滴吐出ヘッドに負圧を作成し、かつ前記インクカートリッジから送液された所定量のインクを一時貯留し可撓性部材で構成されるヘッドタンクと、該ヘッドタンク内を大気に開放する開閉可能な大気開放機構と、該インクカートリッジから前記ヘッドタンクにインクを送液する正転送液及び前記ヘッドタンクから前記インクカートリッジにインクを送液する逆転送液を行う送液手段と、前記ヘッドタンク内のインク満タンの液面を検知する液面検知手段と、前記ヘッドタンクに気泡が混入したか否かを判断する気泡混入判断手段と、前記液面検知手段の検知結果及び前記気泡検知手段の判断結果に基づいて前記大気開放機構及び前記送液手段の各駆動を制御してインク充填動作を制御する制御部と、を有する画像形成装置において、前記気泡混入判断手段によって前記ヘッドタンクに気泡が混入したものと判断したときには、前記制御部は、前記大気開放機構によって前記ヘッドタンク内を大気と遮断した状態で前記正転送液を行うように前記送液手段を制御することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1記載の画像形成装置において、前記ヘッドタンクにインクを供給する供給口を設け、該供給口は前記液面検知手段によって検知する前記インク満タンの液面位置より低い位置に設置され、前記液面検知手段によって前記インク満タンの液面を検知するまで前記送液手段によって前記正転送液を行ってインクを前記ヘッドタンクに充填して前記供給口をインク液面で遮断することを特徴とするものである。
更に、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の画像形成装置において、前記気泡混入判断手段は、前記送液手段によって正転送液を所定時間行っても前記液面検知手段が前記インク満タンの液面を検知しないときには気泡が前記ヘッドタンク内に混入したと判断することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1又は2に記載の画像形成装置において、前記気泡混入判断手段は、画像形成動作が予め定めた時間経過しても行われなかったときには気泡が前記ヘッドタンク内に混入したと判断することを特徴とするものである。
更に、請求項5の発明は、請求項1又は2に記載の画像形成装置において、前記送液手段は、チューブポンプであることを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、気泡混入判断手段によってヘッドタンクに気泡が混入したものと判断したとき、大気開放機構によってヘッドタンク内を大気と遮断した状態で送液手段によって正転送液を行ってインクをヘッドタンクに充填し始める。このようにヘッドタンク内を大気と遮断した状態でインクを充填すると、ヘッドタンク内の密閉された空間における空気量は変化せず、充填された所定のインク量に相当するインクの体積増に対応して可撓性部材で構成されるヘッドタンクが膨らむ。このため、ヘッドタンク内に所定量のインクを充填することができ、ヘッドタンク内のインク量が規定量となる。そして、規定量のインク量が充填されたヘッドタンク内から所定量のインクを送液手段による逆転送液を行って負圧形成を行い、ヘッドタンク内を規定の負圧値の負圧状態にすることができる。これにより、ヘッドタンク内の負圧状態が正常となり、ヘッドタンクに連通する記録ヘッド内の液室内も規定の負圧値となるため、正常なインク吐出が可能となる。また、ヘッドタンク内の負圧値が規定値となることで、ノズルでのインクのメニスカス液面を保つことができ液室内のインクはノズルから垂れない。よって、インク不足によって発生したインク不吐出による印字不良の発生を抑制するとともに、吐出不良やノズルからのインク垂れを防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インク不足によって発生したインク不吐出による印字不良の発生を抑制するとともに、吐出不良やノズルからのインク垂れを防止できるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態のインクジェット記録装置を前方から見た斜視図である。
【図2】インクジェット記録装置の機構部の要部側面図である。
【図3】インクジェット記録装置の機構部の要部平面図である。
【図4】インクジェット記録装置の制御部の概要を示すブロック図である。
【図5】ヘッドタンクの構造を示す斜視図である。
【図6】チューブポンプの構成を示す概略平面図である。
【図7】インク供給系の説明に供する模式的説明図である。
【図8】液滴吐出ヘッドに搭載されたヘッドタンクの構成を示す概略断面図である。
【図9】ヘッドタンクに対する供給経路にエアーが混入した可能性が高い場合に対応するための処理を示すフローチャートである。
【図10】ヘッドタンクに対する供給経路にエアーが混入した可能性が高い場合に対応するための別の処理を示すフローチャートである。
【図11】ヘッドタンクに対する供給経路にエアーが混入した可能性が高い場合に対応するための別の処理を示すフローチャートである。
【図12】ヘッドタンクに対する供給経路にエアーが混入した可能性が高い場合に対応するための別の処理を示すフローチャートである。
【図13】大気開放充填動作及び通常の再負圧形成フローの動作を示すフローチャートである。
【図14】代替の再負圧形成フローの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、インクジェット記録装置の実施形態について説明する。
図1は本実施形態のインクジェット記録装置を前方から見た斜視図である。同図に示す本実施形態のインクジェット記録装置100は、装置本体101と、装置本体101に装着された用紙を装填するための給紙トレイ102と、装置本体101に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ103とを備えている。また、装置本体101の前面の一端部側(給排紙トレイ部の側方)には、前面から装置本体101の前方側に突き出し、上面よりも低くなったインクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部104を有し、このカートリッジ装填部104の上面には操作ボタンや表示器などの操作/表示部105が設けられている。
【0014】
このカートリッジ装填部104には、色の異なる色材である記録液(インク)、例えばブラック(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の記録液収容手段としての記録液カートリッジであるインクカートリッジ110k、110c、110m、110y(色を区別しないときは「インクカートリッジ110」という。)を、装置本体101の前面側から後方側に向って挿入して装填可能とし、このカートリッジ装填部104の前面側には、インクカートリッジ110を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)106が開閉可能に設けられている。また、インクカートリッジ110k、110c、110m、110yは縦置き状態で横方向に並べて装填する構成となっている。
【0015】
また、操作/表示部105には、各色のインクカートリッジ110k、110c、110m、110yの装着位置(配置位置)に対応する配置位置で、各色のインクカートリッジ110k、110c、110m、110yの残量がニアーエンド及びエンドになったことを表示するための各色の残量表示部111k、111c、111m、111yを配置している。更に、この操作/表示部105には、電源ボタン112、用紙送り/印刷再開ボタン113、キャンセルボタン114も配置されている。
【0016】
次に、このインクジェット記録装置の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同機構部の概要を示す側面図、図3は同じく要部平面図である。
【0017】
インクジェット記録装置の機構部において、フレーム121を構成する左右の側板121A、121Bに横架したガイド部材であるガイドロッド131とステー132とでキャリッジ133を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図3で矢示方向である双方向のキャリッジ主走査方向に移動走査する。
【0018】
キャリッジ133には、前述したように、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する4個の液滴吐出ヘッド134a〜134dとからなる液滴吐出ヘッド134が、主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着されている。なお、各色のインク液滴を吐出するノズル列を有する1又は複数のヘッド構成などを採用することもできる。
【0019】
ここで、液滴吐出ヘッド134を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0020】
また、キャリッジ133には、各液滴吐出ヘッド134a〜134dに各色のインクを供給するためのヘッドタンク135a〜135dを搭載している。各ヘッドタンク135a〜135dには各色のインクを送液する可塑性のインク供給チューブ136を介してカートリッジ装填部104に装着された各色のインクカートリッジ110y,110m,110c,110kから各色のインクが充填供給される。なお、このカートリッジ装填104にはインクカートリッジ110内のインクを送液するための供給ポンプユニット124が設けられ、またインク供給チューブ136は這い回しの途中でフレーム121を構成する後板121Cに係止部材125にて保持されている。供給ポンプユニット124は逆方向に送液(逆転送液)することもできる。
【0021】
一方、図2の給紙トレイ102の用紙積載部(圧板)141上に積載した用紙142を給紙するための給紙部として、用紙積載部141から用紙142を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)143及び給紙コロ143に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド144を備え、この分離パッド144は給紙コロ143側に付勢されている。
【0022】
そして、この給紙部から給紙された用紙142を液滴吐出ヘッド134の下方側に送り込むために、用紙142を案内するガイド部材145と、カウンタローラ146と、搬送ガイド部材147と、先端加圧コロ149を有する押さえ部材148とを備えるとともに、給送された用紙142を静電吸着して液滴吐出ヘッド134に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト151を備えている。
【0023】
この搬送ベルト151は、無端状ベルトであり、搬送ローラ152とテンションローラ153との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト151の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ156を備えている。この帯電ローラ156は、搬送ベルト151の表層に接触し、搬送ベルト151の回動に従動して回転するように配置されている。更に、搬送ベルト151の裏側には、液滴吐出ヘッド134による印写領域に対応してガイド部材157が配置されている。
【0024】
この搬送ベルト151は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ152が回転駆動されることによって図2のベルト搬送方向に周回移動する。
【0025】
更に、液滴吐出ヘッド134で記録された用紙142を排紙するための排紙部として、搬送ベルト151から用紙142を分離するための分離爪161と、排紙ローラ162及び排紙コロ163とを備え、排紙ローラ162の下方に排紙トレイ103を備えている。
【0026】
また、装置本体101の背面部には両面ユニット171が着脱自在に装着されている。この両面ユニット171は搬送ベルト151の逆方向回転で戻される用紙142を取り込んで反転させて再度カウンタローラ146と搬送ベルト151との間に給紙する。また、この両面ユニット171の上面は手差しトレイ172としている。
【0027】
更に、図3に示すように、キャリッジ133の走査方向一方側の非印字領域には、液滴吐出ヘッド134のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構181を配置している。
【0028】
この維持回復機構181には、液滴吐出ヘッド134の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)182a〜182d(区別しないときは「キャップ182」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード183と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け184などを備えている。ここでは、キャップ182aを吸引及び保湿用キャップとし、他のキャップ182b〜182dは保湿用キャップとしている。
【0029】
そして、この維持回復機構181による維持回復動作で生じる記録液の廃液、キャップ182に排出されたインク、あるいはワイパーブレード183に付着してワイパークリーナ185で除去されたインク、空吐出受け184に空吐出されたインクは図示しない廃液タンクに排出されて収容される。
【0030】
また、図3に示すように、キャリッジ133の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け188を配置し、この空吐出受け188には液滴吐出ヘッド134のノズル列方向に沿った開口189などを備えている。
【0031】
このように構成した本実施形態のインクジェット記録装置においては、給紙トレイ102から用紙142が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙142はガイド145で案内され、搬送ベルト151とカウンタローラ146との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド137で案内されて先端加圧コロ149で搬送ベルト151に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0032】
このとき、後述する制御部のACバイアス供給部から帯電ローラ156に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト151が交番する帯電電圧パターン、すなわち周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト151上に用紙142が給送されると、用紙142が搬送ベルト151に吸着され、搬送ベルト151の周回移動によって用紙142が副走査方向に搬送される。
【0033】
そこで、リニアエンコーダ137による主走査位置情報に基づいてキャリッジ133を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液滴吐出ヘッド134を駆動することにより、停止している用紙142にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙142を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙142の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙142を排紙トレイ103に排紙する。
【0034】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ133は維持回復機構181側に移動されて、キャップ182で液滴吐出ヘッド134がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ182で液滴吐出ヘッド134をキャッピングした状態で図示しない吸引ポンプによってノズルから記録液を吸引(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、液滴吐出ヘッド134の安定した吐出性能を維持する。
【0035】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図4を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。この制御部は、この画像形成装置全体の制御を司る、本発明に係る制御を行うための手段を兼ねたマイクロコンピュータで構成した主制御部201及び印刷制御を司るマイクロコンピュータで構成した印刷制御部202を備えている。
【0036】
そして、主制御部201は、通信回路200から入力される印刷処理の情報に基づいて用紙142に画像を形成するために、キャリッジ133を主走査方向に移動させる主走査モータを主走査モータ駆動回路203によって駆動制御し、用紙142を送る副走査モータを介して副走査モータ駆動回路204によって駆動制御するとともに、印刷制御部202に対して印刷用データを送出するなどの制御を行う。
【0037】
また、主制御部201には、キャリッジ133の位置を検出するキャリッジ位置検出回路205からの検出信号が入力され、主制御部201はこの検出信号に基づいてキャリッジ133の移動位置及び移動速度を制御する。キャリッジ位置検出回路205は、例えばキャリッジ133の走査方向に配置されたエンコーダシートのスリット数を、キャリッジ133に搭載されたフォトセンサで読み取って計数することで、キャリッジ133の位置を検出する。主走査モータ駆動回路203は、主制御部201から入力されるキャリッジ移動量に応じて主走査モータを回転駆動させて、キャリッジ133を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0038】
また、主制御部201には搬送ベルト151の移動量を検出する搬送量検出回路206からの検出信号が入力され、主制御部201はこの検出信号に基づいて搬送ベルト151の移動量及び移動速度を制御する。搬送量検出回路206は、例えば搬送ローラ152の回転軸に取り付けられた回転エンコーダシートのスリット数を、フォトセンサで読み取って計数することで搬送量を検出する。副走査モータ駆動回路204は、主制御部201から入力される搬送量に応じて副走査モータを回転駆動させて、搬送ローラ152を回転駆動して搬送ベルト151を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0039】
主制御部201は、給紙コロ駆動回路207に給紙コロ駆動指令を与えることによって給紙コロ143を一回転させる。主制御部201は、維持回復機構駆動用モータ駆動回路208を介して維持回復機構181のモータを回転駆動することにより、前述したようにキャップ182の昇降、ワイパーブレード183の昇降、吸引ポンプの駆動などを行わせる。
【0040】
主制御部201は、供給ポンプ用駆動回路211を介して供給ポンプユニット124の供給ポンプを駆動するための駆動モータ(供給モータ)を駆動制御し、カートリッジ装填部104に装填されたインクカートリッジ110からヘッドタンク135に対してインクを正転送液して充填供給する。このとき、主制御部201は、ヘッドタンク135が満タン状態にあることを検知するヘッドタンク満タンセンサからの検知信号に基づいて充填供給を制御する。この場合、ヘッドタンク135の大気開放機構226を開状態にして充填を行う大気開放充填、大気開放機構226を閉じたまま充填を行う通常充填がある。また、ヘッドタンク135からインクカートリッジ110からに対してインクを逆転送液して戻すこともできる。大気開放機構226を閉じたまま逆転送液を行うことでインクを捨てることなく、ヘッドタンク135に負圧形成することもできる。
【0041】
また、主制御部201は、カートリッジ通信回路214を通じて、カートリッジ装填部104に装着された各インクカートリッジ110に設けられる記憶手段である不揮発性メモリに記憶されている情報を取り込んで、所要の処理を行って、本体記憶手段である不揮発性メモリ(例えばEEPROM)215に格納保持する。そして、主制御部201には、環境温度、環境湿度を検知する環境センサ213からの検知信号が入力される。
【0042】
印刷制御部202は、主制御部201からの信号とキャリッジ位置検出回路205及び搬送量検出回路206などからのキャリッジ位置や搬送量に基づいて、液滴吐出ヘッド134の液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成する。そして、上述した画像データをシリアルデータでヘッド駆動回路210に転送する。更には、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッド駆動回路210に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバに与える駆動波形選択手段を含む。1つの駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッド駆動回路210に対して出力する。
【0043】
ヘッド駆動回路210は、シリアルに入力される液滴吐出ヘッド134の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部202から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を選択的に液滴吐出ヘッド134の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば前述したような圧電素子)に対して印加して、液滴吐出ヘッド134を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0044】
図5はインクジェット記録装置のヘッドタンクの構造を示す斜視図である。同図において、負圧レバー20−1は、ヘッドタンク20の内部に設けられ、可撓性部材のフィルム20−2に付勢を与えるバネ20−7によって負圧を生じているヘッドタンク内に収納されるインクの消費量に応じて変位するフィルム20−2に追随して動作するレバーである。供給口20−3は図1及び図3のインクカートリッジ110k〜110yから図3のインク供給チューブ136を経てインクが供給される供給口である。また、大気開放ピン20−4はヘッドタンク20の内部を必要に応じて大気状態に開放するピンである。更に、このようなヘッドタンク20の下方にはインク滴を噴射する記録ヘッド20−5が取り付けられている。また、インク又は空気を検知する検知機構20−6が設けられている。
【0045】
ここで、本発明で使用する送液ポンプユニット124の送液ポンプは、ポンプ構造が複雑ではなく、インクの正逆送が駆動モータの回転方向を変えることにより可能な、図6に示すようなチューブポンプ30を採用している。このチューブポンプ30のポンプ内部には送液用のゴムチューブ31が這いまわされ、ゴムチューブ31をポンプ内部に内蔵されているポンプロータ32でゴムチューブ31を局所的に潰し、ポンプロータ32を回転させることにより潰したポイントを回転方向に移動させることで、ポンプロータ32の回転方向にインクが送液される。具体的には、インクカートリッジからインクタンクへインクを正転送液するときは、ポンプロータ32を矢印Aの回転方向に回転させる。逆に、インクタンクからインクカートリッジを逆転送液するときは、ポンプロータ32を矢印Bの回転方向に回転させる。ここで、ポンプロータ32の回転において矢印Aの回転方向の回転を正回転と称し、矢印Bの回転方向の回転を逆回転と称する。よって、ポンプロータ32の回転を正逆転制御することで、インク送液方向を制御できる。また、送液ポンプに、構成が単純なチューブポンプを使用することにより、小スペースなポンプ構成にしている。更に、送液方向を制御することに対して、ポンプ駆動モータの正逆制御で可能なので、配管がシンプルになる。なお、チューブポンプの構造は図7に示すような回転コロタイプ以外の偏心カムタイプなどでも構わない。
【0046】
次に、この画像形成装置における液滴吐出ヘッド34に記録液であるインクを供給する液体供給装置について図7を参照して説明する。なお、図7は同液体供給装置の模式的説明図である。
【0047】
第1液体収容手段であるインクカートリッジ110は、カートリッジケース221内に液体であるインクを収容した可塑性を有するインク袋222を収納し、このインク袋222には内部のインクを供給するためのインク供給口部223を備えている。このインク供給口部223は内部にゴムなどの弾性部材を有している。供給ポンプユニット124は、インクカートリッジ110のインクをヘッドタンク135に給送するための供給ポンプ224と、供給ポンプ224のピストン225を図7で上下方向に往復移動させるためのカム226と、カム226を回転させるギヤ227及びこのギヤ227を回転駆動させるギヤ228をモータ軸229に取り付けたポンプ駆動手段であるインク供給モータ230とを備え、供給ポンプ224に設けた中空針231をインクカートリッジ110のインク袋222におけるインク供給口部223内の弾性部材(例えばゴム栓)に差し込むことによって供給ポンプ224内とインク袋222内とをジョイントする。
【0048】
第2液体収容手段であるヘッドタンク135は、インク232を収容するタンクケース233と、図示しない負圧発生手段、例えばフィルムと弾性部材からなる負圧発生機構と、タンクケース233内を大気に開放するための大気開放機構234とを備え、タンクケース233の下部には液滴吐出ヘッド134が取り付けられ、またタンクケース233の上部には収容されたインク232の液面が所定の位置になったことを検知する2本の検知電極235(図中では1本のみ表記)などで構成した満タン検知手段を備えている。
【0049】
供給ポンプ224は、図6で説明したチューブポンプを用いる。この供給ポンプ224の作動/停止を制御するための制御手段である主制御部201は、ヘッドタンク135に対してインクカートリッジ110からインクを供給するとき、満タン検出手段の検知電極235からの検知信号に基づいて供給ポンプ用モータ駆動回路211を介して駆動モータ230の回転駆動及び停止を制御する。
【0050】
そして、この液体供給装置において、インク供給チューブ136の一端部は、送液手段である供給ポンプユニット124の供給ポンプ224に対し、供給ポンプ224の液体供給方向(正転送液方向)に沿う方向でジョイント部236によって接続している。インク供給チューブ136の他端部は、ヘッドタンク135に設けられた供給口300に接続している。この供給口300の端部は、検知電極235の端部のタンクケース233の底からの高さより、低い位置まで伸びている。
【0051】
次に、この液体供給装置において、ヘッドタンク135に記録液(インク)を充填するとき、所定時間が経過するまで供給ポンプユニット124の供給ポンプを作動させてもヘッドタンク135が満タンにならないときにインクカートリッジ110のインク無しと扱う処理を行う場合の空気(エアー)の混入について説明する。
【0052】
インクカートリッジ110のインク袋222が空の状態では吸い出すものが無くなることで、供給ポンプユニット124の供給ポンプを駆動し続けていると供給ポンプユニット124の供給ポンプ224内の圧力は負の圧力(負圧)が増加して行くことになる。そのため、インクカートリッジ110の交換指示が出るときには、供給ポンプユニット124内は強い負圧状態となっている。
【0053】
この状態でインクカートリッジ110を交換するとき、一時的にインク供給口部223のゴム栓と供給ポンプユニット124の中空針231のジョイントが外されることになり、外した瞬間、供給ポンプユニット124内への空気の吸い込みが始まる。供給ポンプユニット124からヘッドタンク135までの供給経路は閉じた経路であるために、吸い込んでしまった空気は当該供給経路から抜けることが無い。このため、新たなインクカートリッジ110が装着され供給動作が始まると、空気はインク供給チューブ136を通ってヘッドタンク135に送られることになる。
【0054】
このようにしてヘッドタンク135内に送られた空気は、図8に示すように、ヘッドタンク135内のインク液面で気泡301となり、また更に供給動作が進むと気泡301の泡径が増大して行くこととなる。このヘッドタンク135内の気泡301が、インクの液面より上部に浮遊することでインクの液量が少ないにもかかわらず検知電極235に触れてヘッドタンク内が満タンであるかのような誤った検知結果を出力することになる。更に、ヘッドタンク135に対して大気開放機構234を開いた状態で充填動作を行ったときに、検知電極234に気泡301が接触したままで満タンが検知されずに、インクが大気開放機構234から外部に漏れ出し、液滴吐出ヘッド134を汚したり、液滴吐出ヘッド134を故障させたりすることがある。
【0055】
そこで、ヘッドタンク135に対する供給経路にエアー(空気)が混入した可能性が高い場合に対応するための処理について図9〜図12に示す動作フローを参照して説明する。この画像形成装置において、ヘッドタンク135に対する供給経路にエアー(空気)が混入した可能性が高い場合には、エアー混入フラグをセット(=1)にする処理を行う。
【0056】
本実施形態の動作フローを示す図8において、供給ポンプユニット124の供給ポンプを駆動してヘッドタンク135に対してインクカートリッジ110からヘッドタンク135に対してインクを充填する処理を行う場合、先ず供給ポンプユニット124の供給ポンプ224を駆動する(ステップS101)。そして、充填が完了する前に予め定めた所定時間が経過した(タイムアウト)したときには(ステップS102;NO、ステップS103;YES)、インクカートリッジ110にインクがなくなったことになるので、供給経路内にエアーが混入した可能性が高いものとして扱い、エアー混入フラグをセット(=1)にする(ステップS104)。その後、カートリッジ交換処理へ移行する(ステップS105)。
【0057】
また、図10に示すように、記録動作を終了してからの時間を計時し(ステップS201;NO)装置が予め定めた所定期間(所定時間)に渡って使用されていないとき(ステップS202;YES)、供給ポンプユニット124の供給ポンプ224やインク供給チューブ136などの供給経路にエアー(空気)が混入した可能性が高いものとして、エアー混入フラグをセット(=1)にする処理を行う(ステップS203)。つまり、装置の電源がオン状態にされたとき、電源オフからの経過期間が所定期間(例えば72時間)に達しているときには、エアー混入フラグをセット(=1)にする処理を行った後、電源オン時の処理に移行する。この場合、供給ポンプユニット124の供給ポンプ224が所定期間駆動されなかったことになるため、供給経路にエアーが混入した可能性が高いものとして扱う。
【0058】
そこで、この画像形成装置は、図11に示すように、エアー混入フラグが「1」であるとき(ヘッド単位で見る)には(ステップS301;YES)、インクカートリッジ110からヘッドタンク135にインクを正転送液する送液シーケンスが実施済みか否かを判別する(ステップS302)。送液シーケンスが実施済みでなければ(ステップS302;NO)、送液シーケンスを実施して(ステップS303)、送液ポンプユニット124の供給ポンプ224やインク供給チューブ136内に混入しているエアー(空気)をインクとともにヘッドタンク135に送り込み、送液時刻を記憶する(ステップS304)。
【0059】
この送液シーケンスとは、例えばヘッドタンク135に対して通常の充填量よりも多い量の記録液を送液し(過充填)し、液滴吐出ヘッド134をキャップ182でキャッピングしてノズル吸引を行う(維持吸引)ことによってヘッドタンク135内に負圧を形成する。そして、液滴吐出ヘッド134のノズル面(液滴を吐出するノズルが形成されている面)をワイパーブレード183でワイピングする動作を、所定回数(2〜3回)繰返し、所要のクリーニング動作を行って液滴吐出ヘッド134をキャップ182でキャッピングする動作(シーケンス)である。
【0060】
これに対して、エアー混入フラグが「1」で送液シーケンスを実施済みであれば(ステップS302;YES)、ヘッドタンク135内に送り込んだエアーによる気泡が消失するまでの予め定めた所定時間が送液時刻から経過しているか否かを判別する(ステップS305)。所定時間が送液時刻から経過していれば(ステップS305;YES)、エアー混入フラグを「0」にする(ステップS306)。
【0061】
このようにすれば、エアー混入フラグが「1」の状態であれば、供給経路内またはヘッドタンク135内に空気が混入している可能性が高い状態であることを画像形成装置に認識させることができ、エアー混入状態とそうでない場合で、メンテナンス動作を分けることが可能となる。
【0062】
また、図12に示すように、エアー混入フラグが「1」でない場合は(ステップS401;NO)、図12に示すような大気開放充填動作を行って通常の再負圧形成フローを行う(ステップS402、S403)。エアー混入フラグが「1」である場合は(ステップS401;YES)、図14に示すような代替の再負圧形成フローを行う(ステップS404)。この代替の再負圧形成フローは大気開放前に大気遮断した状態の通常充填動作を含む動作フローである。この代替の再負圧形成フローを行う理由は、代替の再負圧形成フローを行わないと気泡がヘッドタンク135の上部まで至って大気開放機構を壊してしまう恐れがあるからである。
【0063】
次に、大気開放充填動作及び通常の再負圧形成フローの動作について当該動作フローを示す図13に従って説明する。
先ず、大気開放機構で、ヘッドタンク135内を大気開放する(ステップS501)。ヘッドタンク135内は負圧形成されていたので、フィルムなどの可撓性部材で構成されるヘッドタンク135は少し膨らみ、液面が下がる。その後、大気と遮断して逆転送液(又は維持吸引により)ヘッドタンクに負圧形成を行う。そして、大気開放状態でインクを充填する(ステップS502)。そして、検知電極235が液面検知するまでインクを充填する。検知電極235の下端より供給口300の開口部が低い位置である。つまり、図8において検知電極235の下端の高さh1は供給口300の開口部の高さh2より高くなっている。このため検知電極235が液面検知したときは、液面は供給口300の開口部より上となる。これにより、インクが供給口300の開口部を塞ぐことで大気を遮断したことになる(ステップS503)。大気と遮断された状態で逆転送液することで、ヘッドタンク135内に所定の圧力の負圧状態を形成する(ステップS504)。
【0064】
次に、代替の再負圧形成フローの動作について当該動作フローを示す図14に従って説明する。
先ず、ヘッドタンク135内に正転送液して過充填位置又は通常充填位置までインクを充填する(ステップS601)。この場合のような大気と遮断した状態でのインク充填では、フィルムなどの可撓性部材で構成されるヘッドタンク135が膨らむだけで、液面は上がらない。そのため、気泡は上部まで行かないので大気開放機構234を壊す恐れはない。その後、ヘッドタンク135内を大気開放する(ステップS602)。この時、既にインクを充填しているので、インクを充填していない時に比べて液面低下抑制効果がある。その後、大気を遮断する(ステップS603)。大気を遮断した状態で逆転送液することで、ヘッドタンク135内に負圧状態を形成する(ステップS604)。
【0065】
上記大気開放充填動作及び上記通常の再負圧形成フローの動作、上記代替の再負圧形成フローの動作において、液面が下がらないのでヘッドタンク135の供給口300はインクで遮断された状態となり、逆転送液による負圧形成が可能となる。逆転送液による負圧形成であるので、インク排出することなく再負圧形成することができる。
【0066】
以上説明したように、実施形態によれば、エアー混入フラグによってヘッドタンク135に気泡301が混入していると判断したときには、主制御部201はヘッドタンク135を大気開放機構234で大気開放する前に、インクカートリッジからヘッドタンクに正転送液を行うように送液手段の供給ポンプユニット124を制御する。つまり、大気と遮断した状態でインク充填を行うので樹脂フィルムなどの可撓性部材で構成されるヘッドタンク135が膨らみ、所定量のインクを充填することができる。印字動作時にはヘッドタンク内のインク量が規定量となる。ヘッドタンク135のインク量が規定量であるため印刷初期時に行われるヘッドタンク135内の負圧形成を行い、ヘッドタンク内の負圧値は規定値となり、正常なインク吐出が可能となる。また、ヘッドタンク135内の負圧値が規定値となるため、ノズルでのインクのメニスカス液面を保つことができ液室内のインクがノズルから垂れることはない。
【0067】
また、実施形態によれば、図7及び図8に示すように、ヘッドタンク135にインクを供給する供給口300は、ヘッドタンク内のインクの液面を検知する液面検知手段である検知電極235によって検知するインクの液面位置より低い位置に設置されている。つまり、ヘッドタンク135の底からの供給口300の高さは検知電極235の高さより低い。そして、インクの液面が供給口300を通過してインクで供給口300を塞ぐまでインクをヘッドタンク135に充填する。供給口300がインクで塞がれた状態で逆転送液を行ってヘッドタンクからインクカートリッジ側へインクを戻してヘッドタンク内を負圧状態にできる。よって、インクの液面が低下せず印字不良の発生を抑制するとともに、記録ヘッドのノズルからのインク垂れを防止する。また、逆転送液による負圧形成であるので、インク排出することなく再負圧形成することができる。
【0068】
また、実施形態によれば、図9に示すように、インクカートリッジからヘッドタンクにインクを所定時間、正転送液を行っても、ヘッドタンクが満タンにならないときには気泡がヘッドタンク内に混入したと判断する。さらに、図10に示すように、画像形成動作が予め定めた時間経過しても行われなかったときには気泡がヘッドタンク内に混入したと判断する。
【符号の説明】
【0069】
20 ヘッドタンク
20−1 負圧レバー
20−2 フィルム
20−3 供給口
20−4 大気開放ピン
20−5 記録ヘッド
20−6 検知機構
20−7 バネ
30 チューブポンプ
110 インクカートリッジ
124 供給ポンプユニット
133 キャリッジ
134 液滴吐出ヘッド
135 ヘッドタンク
136 インク供給チューブ
181 維持回復機構
201 主制御部
202 印刷制御部
203 主走査モータ駆動回路
204 副走査モータ駆動回路
205 キャリッジ位置検出回路
206 搬送量検出回路
207 給紙コロ駆動回路
208 維持回復機構用モータ駆動回路
209 ヘッド駆動回路
210 供給ポンプ用駆動回路
211 ヘッドタンク満タンセンサ
212 環境センサ
213 カートリッジ通信回路
214 不揮発性メモリ
215 カートリッジEEPROM
224 供給ポンプ
234 大気開放機構
235 検知電極
300 供給口
301 気泡
【先行技術文献】
【特許文献】
【0070】
【特許文献1】特開2007−223230号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、インクを貯留するインクカートリッジと、該液滴吐出ヘッドに負圧を作成し、かつ前記インクカートリッジから送液された所定量のインクを一時貯留し可撓性部材で構成されるヘッドタンクと、該ヘッドタンク内を大気に開放する開閉可能な大気開放機構と、該インクカートリッジから前記ヘッドタンクにインクを送液する正転送液及び前記ヘッドタンクから前記インクカートリッジにインクを送液する逆転送液を行う送液手段と、前記ヘッドタンク内のインク満タンの液面を検知する液面検知手段と、前記ヘッドタンクに気泡が混入したか否かを判断する気泡混入判断手段と、前記液面検知手段の検知結果及び前記気泡検知手段の判断結果に基づいて前記大気開放機構及び前記送液手段の各駆動を制御してインク充填動作を制御する制御部と、を有する画像形成装置において、
前記気泡混入判断手段によって前記ヘッドタンクに気泡が混入したものと判断したときには、前記制御部は、前記大気開放機構によって前記ヘッドタンク内を大気と遮断した状態で前記正転送液を行うように前記送液手段を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記ヘッドタンクにインクを供給する供給口を設け、該供給口は前記液面検知手段によって検知する前記インク満タンの液面位置より低い位置に設置され、前記液面検知手段によって前記インク満タンの液面を検知するまで前記送液手段によって前記正転送液を行ってインクを前記ヘッドタンクに充填して前記供給口をインク液面で遮断することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記気泡混入判断手段は、前記送液手段によって正転送液を所定時間行っても前記液面検知手段が前記インク満タンの液面を検知しないときには気泡が前記ヘッドタンク内に混入したと判断することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記気泡混入判断手段は、画像形成動作が予め定めた時間経過しても行われなかったときには気泡が前記ヘッドタンク内に混入したと判断することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記送液手段は、チューブポンプであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−161973(P2012−161973A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23501(P2011−23501)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】