画像形成装置
【課題】シート状の転写部材を用いて像担持体からベルト体又はベルト体に担持された記録材にトナーを転写する場合に、ベルト体とシート状の転写部材との間に異物が挟まり込むことを抑制することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】シート状の転写部材5を用いて像担持体からベルト体20又はベルト体35に担持された記録材Pにトナーを転写する画像形成装置100は、シート状の転写部材5とベルト体20の材料との静止摩擦係数をμとして、シート状の転写部材5の接触部隣接表面5B1からシート状の転写部材5の前記ベルト体に接触しない側の面に向かう方向の法線ベクトルと重力方向のベクトルとのなす角度をθとしたとき、μ<tanθ(但し、0≦θ≦90°)の関係が成立する構成とする。
【解決手段】シート状の転写部材5を用いて像担持体からベルト体20又はベルト体35に担持された記録材Pにトナーを転写する画像形成装置100は、シート状の転写部材5とベルト体20の材料との静止摩擦係数をμとして、シート状の転写部材5の接触部隣接表面5B1からシート状の転写部材5の前記ベルト体に接触しない側の面に向かう方向の法線ベクトルと重力方向のベクトルとのなす角度をθとしたとき、μ<tanθ(但し、0≦θ≦90°)の関係が成立する構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト体に接触して配置されたシート状の転写部材を用いて、像担持体からベルト体又はベルト体に担持された記録材にトナーを転写する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置として、電子写真方式などを利用してトナーを用いて画像を形成するものが広く用いられている。このような画像形成装置において、像担持体としての感光ドラム上に担持されているトナー像を、ベルト体としての記録材搬送ベルトに担持されている記録材又はベルト体としての中間転写ベルトの表面に静電的に転移させる転写工程を有するものがある。この転写工程のために、画像形成装置には、トナーの帯電極性と逆極性の必要な電圧(転写バイアス)を与える転写電圧印加手段としての転写電源(高圧電源)が設けられる。又、その転写電源に接続されている転写手段として、記録材搬送ベルト又は中間転写ベルトを挟んで感光ドラムとの対向位置に転写ローラなどの転写部材が配置される。記録材搬送ベルト又は中間転写ベルトは、その表面が感光ドラムに接触するように配置され、又転写ローラなどの転写部材は、記録材搬送ベルト又は中間転写ベルトの裏面に接触するように配置される。
【0003】
又、転写手段としてのシート状の転写部材(以下「転写シート」という。)である、摺動性のよい導電シート部材を、記録材搬送ベルト又は中間転写ベルトの裏面と面接触させ、所定の位置に固定する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、弾性シート部材と記録材搬送ベルトとの間に導電性シート部材を挟んで固定した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3388535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の転写シートを用いた場合、他の要素の長寿命化などにより製品寿命が長寿命化され、従来の製品寿命以上の長い期間にわたって画像形成装置が使用され続けるようになると、次のような問題が発生することがあることが分かった。
【0006】
即ち、従来の転写シートを用いた場合、記録材搬送ベルト又は中間転写ベルトの内周面が削れ、削れカスが発生することがあった。そして、そのような状態で画像形成装置の使用を続けた場合に、その削れカスが異物として転写シートと記録材搬送ベルト又は中間転写ベルトとの間に挟まり込むことがあった。その結果、転写電流が不均一になるため、転写不良(転写電流ムラに対応した転写ムラ)が生じてしまう場合があった。
【0007】
このような問題は、ベルト体として中間転写ベルトを用いる画像形成装置でも、ベルト体として記録材搬送ベルトを用いる画像形成装置でも同様に生じ得る。又、ベルト体を張架しているローラが削れ、削れカスが発生した場合に、これが転写シートとベルト体との間に挟まり込むことでも、同様の問題が発生し得る。
【0008】
従って、本発明の目的は、シート状の転写部材を用いて像担持体からベルト体又はベルト体に担持された記録材にトナーを転写する場合に、ベルト体とシート状の転写部材との間に異物が挟まり込むことを抑制することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナーを担持する像担持体と、複数のローラによって張架され、前記像担持体に接触して移動可能なベルト体と、前記ベルト体の前記像担持体と接触する面とは反対側の面に、一方の面側で接触するシート状の転写部材であって、前記ベルト体に接触する側の面は、前記ベルト体に接触する接触部、及び前記接触部よりも前記ベルト体の移動方向上流側に位置し前記接触部に連続している前記ベルト体に接触しない非接触部を備えるシート状の転写部材と、を有し、前記シート状の転写部材に電圧が印加されることにより、前記像担持体から、前記移動方向に移動する前記ベルト体又は前記移動方向に移動する前記ベルト体に担持された記録材にトナーが転写される画像形成装置において、前記シート状の転写部材と前記ベルト体の材料との静止摩擦係数をμとして、前記非接触部における前記接触部の前記ベルト体の移動方向上流側の端部に隣接する部分から、前記シート状の転写部材の前記ベルト体に接触しない側の面に向かう方向の法線ベクトルと、重力方向のベクトルとのなす角度をθとしたとき、μ<tanθ(但し、0≦θ≦90°)の関係が成立することを特徴とする画像形成装置である。
【0010】
本発明の他の態様によると、前記シート状の転写部材と前記ローラの材料との静止摩擦係数をμとして、前記非接触部における前記接触部の前記ベルト体の移動方向上流側の端部に隣接する部分から、前記シート状の転写部材の前記ベルト体に接触しない側の面に向かう方向の法線ベクトルと、重力方向のベクトルとのなす角度をθとしたとき、μ<tanθ(但し、0≦θ≦90°)の関係が成立することを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0011】
又、本発明の更に他の態様によると、前記シート状の転写部材と、前記ベルト体及び前記ローラの材料のそれぞれとの静止摩擦係数のうち最大のものをμmaxとして、前記非接触部における前記接触部の前記ベルト体の移動方向上流側の端部に隣接する部分から、前記シート状の転写部材の前記ベルト体に接触しない側の面に向かう方向の法線ベクトルと、重力方向のベクトルとのなす角度をθとしたとき、μmax<tanθ(但し、0≦θ≦90°)の関係が成立することを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シート状の転写部材を用いて像担持体からベルト体又はベルト体に担持された記録材にトナーを転写する場合に、ベルト体とシート状の転写部材との間に異物が挟まり込むことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の全体構成を示す模式的断面図である。
【図2】図1の画像形成装置(具体例1)における1次転写手段の構成を示す模式的断面図である。
【図3】削れカスが転写シートとベルト体との間に挟まり込むことを防止する原理を説明するための説明図である。
【図4】比較例1に係る画像形成装置における1次転写手段の構成を示す模式的断面図である。
【図5】具体例3に係る画像形成装置における1次転写手段の構成を示す模式的断面図である。
【図6】本発明の他の実施例に係る転写シートの加工及び取り付け時の保持状態を示す断面図である。
【図7】本発明の他の実施例に係る転写シートの加工及び取り付け時の保持状態を示す断面図である。
【図8】本発明の更に他の実施例に係る画像形成装置の全体構成を示す模式的断面図である。
【図9】図8の画像形成装置における転写手段の構成を示す模式的断面図である。
【図10】本発明に従って構成された転写手段の構成の他の例を示す模式的断面図である。
【図11】従来の転写シートを用いた転写手段の構成の一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0015】
実施例1
(1)画像形成装置の構成及び動作
先ず、本発明の一実施例に係る画像形成装置の全体的な構成について説明する。
【0016】
図1は、本実施例の画像形成装置100の全体構成を示す模式的断面図である。本実施例では、画像形成装置100は、電子写真方式を用いた中間転写方式のフルカラープリンタである。
【0017】
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4の画像形成部1Y、1M、1C、1Bkの画像形成部(ステーション)を有する。これらの4つの画像形成部1Y、1M、1C、1Bkは、後述するベルト体としての中間転写ベルト20の画像担持面の移動方向に沿って一定の間隔をおいて略水平に一列に配置されている。
【0018】
尚、単にベルト体の移動方向(回転方向)と言う場合は、他に特別の記載のない場合、画像形成中(より詳細には転写中)における移動方向(回転方向)である。
【0019】
又、本実施例では、各画像形成部1Y、1M、1C、1Bkの構成及び動作は、使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同一である。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用の要素であることを表すために図中符号に与えた添え字Y、M、C、Bkは省略して、当該要素について各色について共通して適用されるものとして説明する。
【0020】
画像形成部1には、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(感光体)、即ち、感光ドラム2が設置されている。感光ドラム2の周囲には、次の各手段が設置されている。先ず、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ3である。次に、現像手段としての現像装置4である。次に、1次転写手段を構成するシート状の転写部材である転写シート5である。次に、クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置6である。又、図中の帯電ローラ3と現像装置4との間の上方には、露光手段としての露光装置(レーザスキャナ装置)7が設置されている。各現像装置4Y、4M、4C、4Bkには、現像剤として、それぞれ負帯電性のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーが収納されている。
【0021】
感光ドラム2は、本実施例では、ドラム型の負帯電性の有機感光体であり、アルミニウムで作製されたドラム基体上に感光層を有している。感光ドラム2は、駆動装置(図示せず)によって図中矢印R1方向(反時計方向)に所定のプロセススピード(周速度)で回転駆動される。
【0022】
帯電ローラ3は、感光ドラム2に接触しており、加圧手段によって感光ドラム2に対して押圧されている。帯電動作時には、帯電ローラ3には、帯電電圧印加手段としての帯電電源(図示せず)によって、所定の帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。これにより、感光ドラム2の表面は所定の電位に均一に帯電させられる。尚、本実施例では、感光ドラム2は、帯電ローラ3により負極性に帯電させられる。
【0023】
露光装置(レーザスキャナ装置)7は、帯電ローラ3によって帯電させられた感光ドラム2の表面に、画像情報に応じた静電潜像(静電像)を形成する。即ち、露光装置7において、ホストコンピュータ(図示せず)から入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザ光が、レーザ出力部から出力される。このレーザ光が、各反射ミラーを介して感光ドラム2の表面を走査露光する。これにより、感光体ドラム2の表面に画像情報に応じた静電潜像が形成される。
【0024】
現像装置4は、本実施例では、現像方式として、接触現像方式を用いている。現像装置4は、現像剤担持体としての現像ローラを有している。現像ローラ上に薄層状に担持されたトナーは、駆動装置(図示せず)により回転駆動される現像ローラにより、感光ドラム2との対向部(現像部)に搬送される。感光ドラム2上に形成された静電潜像は、現像ローラから供給されるトナーによってトナー像として現像される。現像動作時に、現像ローラには、現像電圧印加手段としての現像電源によって、所定の現像電圧(現像バイアス)が印加される。尚、本実施例では、一様に帯電させられた後に露光によって電位の絶対値が低下させられた感光ドラム2上の露光部に、感光ドラム2の帯電極性と同極性に帯電したトナーを付着させる反転現像方式によって、静電潜像の現像が行われる。
【0025】
現像装置4の現像ローラと感光ドラム2とは、フルカラー画像形成モードでは全ての画像形成部で接触し、モノカラー画像形成モード(例えば、白黒画像形成モード)では画像を形成する画像形成部では接触しそれ以外の画像形成部では離間する。これは、現像ローラとトナーの劣化、消耗を防止するためである。
【0026】
又、各感光ドラム2Y、2M、2C、2Bkに対向して、中間転写体としての無端ベルト状の中間転写ベルト20が設置されている。中間転写ベルト20は、複数の支持部材(張架ローラ)としての駆動ローラ21、テンションローラ(加圧ローラ)22、2次転写対向ローラ23により張架されている。中間転写ベルト20は、テンションローラ22に対する加圧手段(図示せず)によりテンションがかけられている。又、中間転写ベルト20は、駆動装置(図示せず)によって回転駆動される駆動ローラ21により、図中矢印R2方向(時計方向)に周回移動(回転)させられる。各転写シート5Y、5M、5C、5Bkは、中間転写ベルト20の内周面(裏面)側に配置されている。詳しくは後述するように、各転写シート5Y、5M、5C、5Bkは加圧手段によって中間転写ベルト20の裏面に対して押圧されている。これにより、各感光ドラム2Y、2M、2C、2Bkと中間転写ベルト20との接触領域である各1次転写部(1次転写ニップ)N1Y、N1M、N1C、N1Bkが形成されている。又、中間転写ベルト20の外周面(表面)側には、2次転写対向ローラ23と対向する位置に、2次転写手段を構成するローラ型の転写部材である2次転写ローラ24が設置されている。2次転写ローラ24は、中間転写ベルト20を介して2次転写対向ローラ23に対して押圧されている。これにより、中間転写ベルト20と2次転写ローラ24との接触領域である2次転写部(2次転写ニップ)N2が形成されている。2次転写ローラ24は、中間転写ベルト20に対して接触及び離間可能に設置されている。
【0027】
シート状の転写部材である転写シート5は、導電性を持たせた樹脂により形成されたシートで構成されている。その樹脂としては、例えば、ナイロン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂)、PMMA(アクリル)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などが挙げられる。詳しくは後述するように、転写シート5は、保持部材16に保持されると共に、加圧手段としての弾性部材(転写パッド)15によって中間転写ベルト20の裏面に対して押圧されている。弾性部材15は、ウレタンゴム、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、エピクロロヒドリンゴム、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、クロロプレンゴム、シリコーンゴムなどにより形成された弾性体で構成されている。
【0028】
複数のローラによって張架され像担持体に接触して移動可能なベルト体としての中間転写ベルト20は、本実施例では、主にPEN(ポリエチレンナフタレート)により無端ベルト状に形成されている。中間転写ベルト20の材料としては、上記のものの他に、PVdF(フッ化ビニリデン樹脂)、ETFE(四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂)、PI(ポリイミド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの樹脂、或いは、例えばEPDMなどのゴム基層上に例えばウレタンゴムにPTFEなどフッ素樹脂を分散したものを被覆して無端ベルト状に構成したものなど用いることができる。
【0029】
張架ローラとしての駆動ローラ21及び2次転写対向ローラ23は、それぞれ、EPDMにカーボンブラックを分散させた導電性ゴムを芯金の外周に被覆した構成とされている。又、テンションローラ22はアルミニウムからなるローラを用いている。
【0030】
感光ドラム2は中間転写ベルト20の表面に接触している。転写シート5は、中間転写ベルト20の裏面に接触している。又、保持部材16に保持された弾性部材15は、転写シート5の中間転写ベルト20に接触する側の面とは反対側の面に接触している。そして、この保持部材16に保持された弾性部材15は、転写シート5を中間転写ベルト20に対して押圧している。その結果、弾性部材15は、転写シート5及び中間転写ベルト20を感光ドラム2に対して押圧している。転写シート5には、1次転写電圧印加手段としての1次転写電源(高圧電源)40が接続されている。1次転写工程時に、転写シート5には、1次転写電源によって、所定の1次転写電圧(1次転写バイアス)が印加される。これにより、回転する感光ドラム2上のトナー像は、周回移動(回転)する中間転写ベルト20上に1次転写される。
【0031】
尚、中間転写ベルト20の外周面側において、2次転写ローラ24とは異なる位置で2次転写対向ローラ23に対向するように、ベルトクリーニング装置が設定されている。このベルトクリーニング装置は、2次転写工程後に中間転写ベルト20の表面に残ったトナー(2次転写残トナー)を除去して回収するためのものである。本実施例では、ベルトクリーニング装置は、ベルトクリーニング部材として、ローラ型のクリーニング用帯電部材であるクリーニング用帯電ローラ30を有する。クリーニング用帯電ローラ30は、中間転写ベルト20の表面に接触するように設置されている。このクリーニング用帯電ローラ30には、クリーニング電圧印加手段としてのクリーニング電源(図示せず)が接続されている。そして、中間転写ベルト20のクリーニング動作時には、クリーニング帯電ローラ30には、クリーニング電源によって、所定のクリーニング電圧(クリーニングバイアス)が印加される。クリーニング用帯電ローラ30とクリーニング電源とによって、ベルトクリーニング装置が構成されている。
【0032】
又、中間転写ベルト20の外周面側において、駆動ローラ21に対向する位置に、色レジ補正・濃度補正用センサユニット50が設けられている。この色レジ補正・濃度補正用センサユニット50は、使用する環境の変化、画像形成枚数などの諸条件によらず、安定した色レジ補正(中間転写ベルト20上での各色のトナー像の位置合わせ)を行うため、又安定した画像濃度を得るために設けられたものである。色レジ補正・濃度補正用センサユニット50は、LEDなどの発光素子と、フォトダイオードやCdSなどの受光素子とを有して構成されている。
【0033】
2次転写部N2よりも記録材Pの搬送方向下流側には、定着ローラ12aと加圧ローラ12bとを有する定着装置12が設置されている。
【0034】
次に、本実施例の画像形成装置100による画像形成動作について説明する。
【0035】
例えば、フルカラー画像形成モードでは、画像形成動作開始信号が発せられると、所定のプロセススピードで回転駆動される各画像形成部1の各感光ドラム2は、各帯電ローラ3によって一様に帯電させられる。そして、各露光装置7は、入力されるカラー色分解された画像信号を、レーザ出力部が出力する光信号に変換する。そして、各露光装置7は、その光信号であるレーザ光によって、帯電した各感光ドラム2上を走査露光して、各感光ドラム2上に画像信号に応じた静電潜像を形成する。
【0036】
各感光ドラム2上に形成された静電潜像は、各現像装置4により現像剤としての各色のトナーが供給されることにより、各色のトナー像(現像剤像)として現像される。このとき、現像装置4の現像ローラには、感光ドラム2の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性の現像電圧が印加され、トナーが感光ドラム2の表面の電位に応じて静電吸着されることで、静電潜像がトナー像として現像される。
【0037】
このようにして回転する各感光ドラム2にトナー像が形成されていくと共に、各感光ドラム2上のトナー像が各1次転写部N1に到達すると、そのトナー像は各転写シート5の作用によって、回転する中間転写ベルト20上に1次転写されていく。このとき、各転写シート5には、1次転写電源40によって、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の1次転写電圧が印加される。
【0038】
フルカラー画像形成モードでは、先ず、第1の画像形成部1Yの1次転写部N1Yで中間転写ベルト20上にイエロートナー像が1次転写される。このイエロートナー像は、中間転写ベルト20の回転によって第2の画像形成部1Mの1次転写部N1Mへと移動される。そして、次に、第2の画像形成部1Mの1次転写部N1Mにおいて、マゼンタトナー像が中間転写ベルト20上のイエロートナー像に重ね合わせるようにして1次転写される。同様にして第3、第4の画像形成部1C、1Bkの1次転写部N1C、N1Bkにおいて、シアントナー像、ブラックトナー像が順次に重ね合わせるようにして1次転写され、中間転写ベルト20上にフルカラー画像用の多重トナー像が形成される。
【0039】
一方、中間転写ベルト20の回転によって中間転写ベルト20上の多重トナー像の先端が2次転写部N2に移動されるタイミングに合わせて、給紙ローラ(レジストローラ)13によって記録材Pが2次転写部N2に搬送されてくる。そして、中間転写ベルト20上の多重トナー像は、2次転写部N2において、この記録材P上に一括して2次転写される。このとき、2次転写ローラ24には、2次転写電源によって、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の2次転写電圧が印加される。
【0040】
トナー像が転写された記録材Pは、定着装置12に搬送される。定着装置12は、記録材Pを定着ローラ12aと加圧ローラ12bとの間の定着部(定着ニップ)に挟持して搬送することで、トナー像を加熱及び加圧して記録材Pの表面に定着させる。その後、記録材Pは、画像形成装置100の外部に排出される。
【0041】
1次転写工程後に各感光ドラム2上に残留しているトナー(1次転写残トナー)は、各ドラムクリーニング装置6によって除去されて回収される。又、2次転写工程後に中間転写ベルト20上に残留しているトナー(2次転写残トナー)は、ベルトクリーニング装置によって次のようにして回収される。ベルトクリーニング装置は、クリーニング用帯電部材であるクリーニング用帯電ローラ30を用いる。クリーニング用帯電ローラ30は、中間転写ベルト20と接触しており、クリーニング電源からクリーニング電圧が印加されることで、2次転写残トナーを帯電させる。2次転写工程後の2次転写残トナーは、クリーニング用帯電ローラ30と中間転写ベルト20との接触領域近傍における放電によって、強制的に帯電させられる。これにより、2次転写残トナーは、トナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させられる。そして、1次転写部N1(例えば、第1の画像形成部1Y)において、次の画像の1次転写を行いながら、或いは画像形成後の整理(準備)動作である後回転工程時に、前の画像の上述のように帯電させられた2次転写残トナーが、感光ドラム2に逆転写される。そして、この感光ドラム2に逆転写された2次転写残トナーは、その画像形成部のドラムクリーニング装置6によって除去されて回収される。
【0042】
以上により、一連の画像形成動作が終了する。
【0043】
尚、画像形成終了時には、中間転写ベルト20を画像形成動作時とは逆方向に所定量だけ回転させてから画像形成動作を終了する。即ち、画像を出力した後に当該画像形成装置の動作を停止する際に、ベルト体を画像形成動作時の移動方向とは逆方向に移動させた後に当該画像形成装置の動作を停止する。これは、1次転写部N1において中間転写ベルト20と転写シート5との間に異物が挟まり込んだ場合を想定して、この挟まり込んだ異物を取り出すことを目的としている。
【0044】
又、色レジ補正及び濃度補正時には、トナー像を中間転写ベルト20上に形成し、回転する中間転写ベルト20上のトナー像及びトナー像の無い部分に発光素子からの光を照射し、そこからの反射光を受光素子で受ける。これにより、トナー像パッチの形成された位置及び濃度を測定する。色レジ補正時には、トナー像の有無の間隔を測定することで色レジを補正する。又、濃度補正時にはトナー像の濃度を測定することで、濃度を補正する。
【0045】
(2)課題
ここで、図11を参照して、従来の転写シートを用いた場合における課題について更に説明する。図11は、従来の転写シートを用いた転写手段の構成の一例を示す。転写シート205は、ベルト体220の内周面側に配設され、ベルト体220と弾性シート215とにそれぞれ当接しており、そしてベルト体220の裏面に対して押圧されている。つまり、弾性シート215は、弾性シート支持部材216に支持されている。その結果、弾性シート215は、転写シート205及びベルト体220(更にベルト体が記録材搬送ベルトであり画像形成中である場合には記録材P)を感光ドラム202に対して押圧する。転写シート205には、電源240が接続されている。感光ドラム202上に形成されたトナー像は、転写シート205に電源240から転写電圧が印加されることにより、ベルト体220又はベルト体220上に担持されている記録材Pに転写される。
【0046】
このような従来の転写シート205を用いた場合、ベルト体220の内周面が削れ、削れカスが発生することがあった。そして、そのような状態で画像形成装置の使用を続けた場合に、その削れカスが異物として転写シート205とベルト体220との間に挟まり込むことがあった。その結果、転写電流が不均一になるため、転写不良(転写電流ムラに対応した転写ムラ)が生じてしまう場合があった。又、ベルト体220を張架しているローラが削れ、削れカスが発生した場合に、これが転写シート205とベルト体220との間に挟まり込むことでも、同様の問題が発生し得る。
【0047】
本実施例の目的の一つは、シート状の転写部材を用いて像担持体からベルト体又はベルト体に担持された記録材にトナーを転写する場合に、ベルト体とシート状の転写部材との間に異物が挟まり込むことを抑制することである。又、本実施例の目的の他の一つは、上述のように異物が挟まり込むことを抑制することで、該異物が挟まり込むことに起因する転写不良(転写電流ムラに対応した転写ムラ)を抑制することである。
【0048】
(3)1次転写手段
次に、本実施例における1次転写手段の構成について更に詳しく説明する。
【0049】
図2は、本実施例における1次転写手段の構成を示す模式的断面図である。
【0050】
尚、本実施例では、第1〜第4の画像形成部1Y、1M、1C、1Bkの1次転写手段の構成は実質的に同一である。従って、いずれかの画像形成部のものであることを示すために符号に与えた添え字Y、M、C、Bkを付すことなく、各画像形成部に共通に適用できるものとして説明する。
【0051】
転写シート5は、本実施例では、導電性を持たせた高分子PE(ポリエチレン)樹脂により形成されたシートで構成されている。このシートは弾力性(可撓性)を有する。又、本実施例では、転写シート5を構成するシートは、縦9.5mm、横225mmの略長方形の形状を有する。又、本実施例では、転写シート5の厚さは200μmである。
【0052】
転写シート5の電気抵抗値を、次のようにして測定した。転写シート5の中間転写ベルトに接触する側の面に、転写シート5の中間転写ベルト20との接触面(接触部)の面積に相当する面積のアース電極を取り付ける。そして、このアース電極と、転写シート5に1次転写電圧を印加する1次転写電極40との間に25Vの電圧を印加する。本実施例では、転写シート5として、このときの電気抵抗値が1×104Ωのものを用いた。
【0053】
尚、転写シート5の材料としては、本実施例のもの以外にも、例えば、ナイロン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂)、PMMA(アクリル)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などを適宜用いることができる。
【0054】
本実施例では、転写シート5の、中間転写ベルト20を構成する材料に対する静止摩擦係数μは、0.42であった。
【0055】
ここで、転写シートの相手材としてのベルト体を構成する材料とは、ベルト体が単一材料であれば、その材料と同一材料のテストピースである。又、ベルト体が裏面側の基層とその上の単一又は複数の層から成るなど、複数の材料で構成される場合は、ベルト体の内周面側に配置された転写シートや張架ローラといった摺擦又は摩擦係合する部材に対して露出している部分の材料と同一材料のテストピースである。この部分の材料が、画像形成装置の使用に伴って異物としての削れカスを生じるからである。本実施例では、中間転写ベルトは、実質的にPENの単一材料で構成されている。
【0056】
本明細書において、静止摩擦係数は、JIS−K7125(面圧:0.005MPa)に準拠して測定した値である。より具体的には、転写シート5を構成する材料と、中間転写ベルト20を構成する材料との静止摩擦係数は、次のようにして測定した。即ち、各々のシートサンプルを用いて、新東科学(株)製表面性試験機(HEIDON−14DR)を使用して面圧を0.005MPa、引張速度1m/minの条件にて測定した。
【0057】
加圧手段としての弾性部材15は、本実施例では、ウレタンゴムで形成された発泡スポンジ状の弾性体で構成されている。又、本実施例では、弾性部材15を構成する弾性体は、縦(中間転写ベルトの移動方向)5mm、横(中間転写ベルトの移動方向と直交する方向)225mm、高さ(転写シートに接触する中間転写ベルトの面に対し垂直方向)4mmの略直方体の形状を有する。
【0058】
弾性部材15の材料としては、本実施例のもの以外にも、例えば、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、エピクロロヒドリンゴム、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、クロロプレンゴム、シリコーンゴムなどを適宜用いることができる。硬度と寸法安定性が確保できていれば、発泡スポンジやソリッドゴムなども用いることができる。硬度が適切でない場合や寸法が安定していない場合には、凹凸形状が発生してしまい、転写不良(接触ムラに対応した縦白帯び状の画像不良)が発生しやすくなる。
【0059】
又、本実施例では、保持部材16の材質は導電性樹脂である。そして、保持部材16に1次転写電源40が電気的に接続され、転写シート5は保持部材16を介して1次転写電源に電気的に接続される。このように、本実施例では、保持部材16は、1次転写電源40から印加される1次転写電圧の給電部材を兼ねている。
【0060】
本実施例では、1次転写手段は、上述のような転写シート5、弾性部材15、保持部材16、1次転写電源40などで構成される。
【0061】
更に説明すると、転写シート5は、縦方向の一方の端部側の所定幅の部分が、横方向の全域にわたって、保持部材16の中間転写ベルト20の移動方向上流側の側面16aの一部に固定されることで取り付けられている。本実施例では、この取り付け部において、転写シート5は、固定手段としての両面テープ(図示せず)によって、保持部材16に貼り付けられている。この転写シート5と保持部材16との取り付け部の軸線は、中間転写ベルト20の裏面から所定距離の位置において、中間転写ベルト20の移動方向と直交する方向に沿って中間転写ベルト20の裏面と略並行に延在する。転写シート5の自由端5bは固定端5cに対して、中間転写ベルト20の移動方向下流側に位置し、この自由端5bから固定端5c側に所定幅の部分が中間転写ベルト20の裏面に接触する。この中間転写ベルト20の裏面に接触する部分における、転写シート5の中間転写ベルト20に接触しない側の面に接触するように、弾性部材15が配置される。そして、転写シート5は、自由端5bから固定端5c側に所定幅の中間転写ベルト20に接触する部分と、その部分より中間転写ベルト20の移動方向上流側の中間転写ベルト20に接触しない部分とが、中間転写ベルト20側に凸となるように折り曲げられている。転写シート5は、この折り曲げられた形状にて、弾性部材15の中間転写ベルト20側の面を覆っている。この状態で、弾性部材15が転写シート5を中間転写ベルト20に対して押圧し、転写シート5の中間転写ベルト20に接触する側の面が中間転写ベルト20の裏面に接触している。
【0062】
ここで、転写シート5は、上述のように、一方の面側でベルト体(本実施例では中間転写ベルト20)に接触する。転写シート5において、ベルト体に接触する側の面を「表面」とし、その反対側の面であるベルト体に接触しない側の面を「裏面」とする。このとき、転写シート5の表面は、ベルト体に接触する接触部5A、及び接触部5Aよりもベルト体の移動方向上流側に位置し接触部5Aに連続しているベルト体に接触しない非接触部5Bを備えている。そして、転写シート5の上記非接触5Bにおける、転写シート5の上記接触部5Aのベルト体の移動方向上流側の端部5A1に隣接する部分5B1を「接触部隣接表面」と呼ぶことにする。そして、転写シート5の接触部隣接表面から転写シート5の裏面に向かう方向の法線ベクトルと、重力方向のベクトルとのなす角度を「角度θ」と定義する。このとき、本実施例では、転写シート5とベルト体を構成する材料との静止摩擦係数μと、角度θとの間に、
μ<tanθ(但し、0≦θ≦90°)
の関係が成立する構成とする。このような構成とすることで、ベルト体の削れカスが異物として転写シート5とベルト体との間に挟まり込むことを抑制することができる。又、これによって、ベルト体の削れカスが異物として転写シート5とベルト体との間に挟まり込むことに起因する転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を抑制することができる。
【0063】
尚、縦白スジ上画像不良とは、中間転写ベルト20の移動方向と直交する方向における転写電流ムラに対応した転写ムラによって、中間転写ベルト20の移動方向(画像移動方向)に沿って部分的に画像濃度に薄いスジ状の画像不良が生じる現象である。これは、中間転写ベルト20の移動方向と直交する方向のいずれかの位置において、異物が転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込むことで生じる。
【0064】
本実施例では、図2に示すように、角度θは35°となっている。上述のように、本実施例では、転写シート5は、中間転写ベルト20に接触する接触部5Aと中間転写ベルト20に接触しない非接触部5Bとの連接部を折り曲げた形状を有する。そして、転写シート5の中間転写ベルト20に接触する側の面である表面は、上記接触部5Aと上記非接触部5Bとの間に変曲線5aを有している。
【0065】
尚、本実施例では、転写シート5は、シート状態で作成された後に、図2に示すような折り曲げた形状を安定して達成するため、次のようにして予め変形させた。即ち、転写シート5を構成するシートを型に保持しながら加熱してその形状を固定することで、転写シート5の所望の形状を得た。
【0066】
又、転写シート5を中間転写ベルト20に対して押圧する弾性部材15を用いない構成とすることもできる。即ち、保持部材16に固定された転写シート5を、転写シート5自体の弾力性によって中間転写ベルト20の裏面に接触するようにすることもできる。しかし、均一な転写圧力(転写部においてベルト体を像担持体に押圧する力)を確保するためには、弾性部材15を用いることが望ましい。特に、本実施例のように、転写シート5を折り曲げた構成とする場合には、弾性部材15を用いない構成では、均一な転写圧力を確保することが難しくなることがあるので、弾性部材15を用いることが望ましい。
【0067】
(4)作用
本実施例では、上述のように転写シート5を折り曲げた構成とすることで、転写シート5と中間転写ベルト20を構成する材料との静止摩擦係数μ=0.42と、角度θ=35°との間に、
μ<tanθ(≒0.7)
の関係が成り立っている。即ち、図3に示すように、角度θ=35°は、摩擦角よりも大きい。
【0068】
尚、本実施例では、図2及び図3に示すように、角度θ=35°は、転写シート5の中間転写ベルト20の移動方向上流側の表面(例えば、固定端5cに隣接する表面)と水平面との成す角度と略同一である。
【0069】
更に説明すると、画像形成装置100の使用に伴って発生した異物としての中間転写ベルト20の削れカスの中には、転写シート5の接触部隣接表面にとどまるものが発生する。この転写シート5の接触部隣接表面にとどまった削れカスは、中間転写ベルト20の駆動に伴った、中間転写ベルト20の張り面のわずかな上下動や1次転写部N1のわずかな上下動により、中間転写ベルト20と転写シート5とに挟まれる。そして、この中間転写ベルト20と転写シート5とに挟まれた削れカスが、転写シート5と中間転写ベルト20との接触部まで搬送され、結果的に、転写シート5と中間転写ベルト20との接触部に挟まってしまうことがある。このように中間転写ベルト20の削れカスが転写シート5と中間転写ベルト20との接触部に挟まってしまうと、転写不良(転写電流ムラに対応した転写ムラ)が起きる場合がある。
【0070】
従って、転写シート5と中間転写ベルト20との接触部の中間転写ベルト20の移動方向上流側端部の近傍(非接触部側)、即ち、転写シート5の接触部隣接表面には、異物としての中間転写ベルト20の削れカスがとどまらないことが望ましい。
【0071】
転写シート5の接触部隣接表面にとどまった異物としての中間転写ベルト20の削れカスには、主に重力と、反力としての転写シート5による垂直抗力と、クーロン力と、転写シート5と中間転写ベルト20の削れカスとの摩擦力とが働くことになる。このうち、クーロン力については、転写シート5の電気抵抗が低いことともあり、画像形成装置100が動作していない間に、中間転写ベルト20の削れカスは持っている電荷を消失し、結果的に、クーロン力は十分に小さくなっていく。
【0072】
従って、画像形成装置100が動作していない間を考えると、中間転写ベルト20の削れカスは、重力と、反力としての転写シート5による垂直抗力と、転写シート5と中間転写ベルト20の削れカスとの摩擦力とが働く。そのため、角度θ=35°が摩擦角よりも大きければ、中間転写ベルト20の削れカスは、転写シート5の接触部隣接表面にとどまることなく、重力によって転写シート5上を滑り落ちる。その結果、中間転写ベルト20の削れカスが異物として転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込むことによる転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を抑制することができる。
【0073】
尚、本実施例では、上述のように、画像形成終了時に中間転写ベルト20を画像形成動作時とは逆方向に回転させてから画像形成動作を終了する。この場合には、中間転写ベルト20と転写シート5との間に挟まり込んだ異物としての中間転写ベルト20の削れカスは、転写シート5の接触部隣接表面に排出することができる。従って、一旦転写ベルト5と中間転写ベルト20との間に挟まり込んだ異物としての中間転写ベルト20の削れカスは、中間転写ベルト20の逆回転によって排出される。その後、この異物は、上述の作用により、転写シート5の接触部隣接表面にとどまることなく、重力によって転写シート5上を滑り落ちる。その結果、中間転写ベルト20の削れカスが異物として転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込むことによる転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を更に効果的に抑制することができる。
【0074】
(5)画像出力実験結果
次に、本発明の効果を確認するための画像出力実験の結果について説明する。
【0075】
先ず、具体例1として、上述の本実施例の構成と同一の構成の画像形成装置により画像出力実験を行った。即ち、具体例1では、保持部材16に貼り付けた転写シート5を折り曲げて弾性部材15で中間転写ベルト20に対して加圧し、角度θ=35°である。
【0076】
印字耐久試験として、記録材にCS−814(Canon販売、商品名)を用い、Y、M、C、Bkの各色の印字率が4%の画像を用いて、20万枚の印刷を行った。耐久試験中には、耐久試験開始時と、その後2万枚おきに、画像サンプリングを行った。印字モードとしては普通紙モードを用いた。又、実験中の画像形成装置のプロセススピードは150mm/sec、スループットは1分間に25枚であった。尚、実験中は、中間転写ベルト20の逆回転は行わないようにした。サンプリング画像としては、記録材にCS−814(Canon販売、商品名)を用いて、Y、M、C、Bk、R(レッド)、B(ブルー)、G(グリーン)の各色のベタ画像(最高濃度レベルの画像)、ハーフトーン画像を出力した。サンプリング画像から画像評価を行い、縦白スジ状画像不良の観点でランク付け評価を行った。ランク付けは、画像不良がまったく発生しない場合を○、わずかに確認できる場合を○△、確認できる場合を△、少し悪い場合を△×、悪い場合を×として行った。尚、実験を行った雰囲気環境は、温度23℃、湿度50%であった。
【0077】
評価結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
具体例1では、縦白スジ状の画像不良は、16万枚までは発生することはなかった(○)。又、18万枚からわずかに確認(○△)され、20万枚の耐久試験終了時においてもわずかに確認できるレベル(○△)で発生するだけであった。
【0080】
次に、本実施例の画像形成装置から1次転写手段の構成を変更した画像形成装置により画像出力実験を行った。
【0081】
比較例1として、転写シート5を次のような構成とすることで角度θ=15°としたことを除いて、本実施例の画像形成装置と実質的に同一の構成の画像形成装置により、画像出力実験を行った。即ち、比較例1では、図4に示すように、保持部材16に貼り付けた転写シート5を折り曲げることなく弾性部材15で中間転写ベルト20に対して加圧した。そのため、転写シート5と中間転写ベルト20との接触部の中間転写ベルト20の移動方向下流側の端部から中間転写ベルト20の移動方向上流側へと、転写シート5の表面はなだらかにその傾斜を増していく。そのため、転写シート5の接触部隣接表面から転写シート5の裏面に向かう方向の法線ベクトルと、重力方向のベクトルとのなす角度θは、15°となっている。
【0082】
又、比較例2として、転写シート5を次のような構成とすることで角度θ=20°としたことを除いて、本実施例の画像形成装置と実質的に同一の構成の画像形成装置により、画像出力実験を行った。即ち、比較例2では、比較例1と同様に、保持部材16に貼り付けた転写シート5を折り曲げることなく弾性部材15で中間転写ベルト20に対して加圧した。
【0083】
又、具体例2として、角度θ=25°としたことを除いて本実施例の画像形成装置と実質的に同一の構成の画像形成装置により画像出力実験を行った。即ち、具体例2では、本実施例と同様に、保持部材16に貼り付けた転写シート5を折り曲げて弾性部材15で中間転写ベルト20に対して加圧した。
【0084】
評価方法は、上述の具体例1の場合の評価方法と同一である。
【0085】
評価結果を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
比較例1では、縦白スジ状の画像不良は、12万枚までは発生することはなかった(○)。又、14万枚からわずかに確認(○△)され、16万枚でレベルが1ランク悪化(△)し、18万枚で更にレベルが1ランク悪化(△×)し、20万枚の耐久試験終了時においても少しレベルの悪いレベル(△×)で発生した。
【0088】
又、比較例2では、縦白スジ状の画像不良は、12万枚までは発生することはなかった(○)。又、14万枚からわずかに確認(○△)され、16万枚でレベルが1ランク悪化(△)し、18万枚で更にレベルが1ランク悪化(△×)し、20万枚の耐久試験終了時においても少しレベルの悪いレベル(△×)で発生した。即ち、比較例1と同様の評価結果であった。
【0089】
一方、具体例2では、縦白スジ状の画像不良は、16万枚までは発生することはなかった(○)。又、18万枚からわずかに確認(○△)され、20万枚の耐久試験終了時においてもわずかに確認できるレベル(○△)で発生するだけであった。即ち、具体例1と同様の評価結果であった。
【0090】
尚、別の実験として、上記同様の耐久試験を行って、縦白スジ状画像不良が発生した際に画像形成装置を停止して、1次転写手段を分解して転写シート5と中間転写ベルト20との接触部を観察した。その結果、比較例1、2では、「○△」、「△」、「△×」レベルの場合に、主に中間転写ベルト20の削れカス(大きさが50〜300μm程度のPENの粉)が転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込んでいることが確認された。具体例1、2では、「○△」レベルの場合に、中間転写ベルト20の削れカスはほとんどみられないが、駆動ローラ21(或いは2次転写対向ローラ23)の削れカス(後述)が転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込んでいることが確認された。そして、それぞれの場合に、観察された削れカスを除去した後1次転写手段を再度組み立てて、引き続き画像出力実験を行うと、縦白スジ状画像不良は解消された。
【0091】
以上の結果から、角度θが20°と25°との間で大きく現象が良化していることが分かる。これは、次の理由によるものである。即ち、本実施例の設定では、転写シート5と中間転写ベルト5を構成する材料との静止摩擦係数μが0.42である。又、そこから算出される摩擦角が約23°(tan23°=0.424)である。このことから、角度θが20°と25°との間で、摩擦角よりも角度θが大きくなる。これにより、画像形成装置100の使用に伴って発生した異物としての中間転写ベルト20の削れカスが転写シート5の接触部隣接表面にとどまり、この異物が転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込むことを抑制する効果が飛躍的に向上する。その結果、転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を抑制する効果が飛躍的に向上する。
【0092】
(6)まとめ
以上説明したように、本実施例では、転写シート5と中間転写ベルト20を構成する材料との静止摩擦係数μと、角度θとの間に、μ<tanθ(但し、0≦θ≦90°)の関係が成立する構成とする。これにより、画像形成装置100の使用に伴って発生した異物としての中間転写ベルト20の削れカスが転写シート5の接触部隣接表面にとどまり、この異物が転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込むことを抑制することができる。その結果、転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を抑制することができる。
【0093】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0094】
本実施例では、中間転写ベルト20の張架ローラ(本実施例では駆動ローラ21、テンションローラ22、2次転写対向ローラ23)の削れカスによる転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)をも抑制することを目的とする。
【0095】
ここで、転写シート5と、画像形成装置100の使用に伴って異物としての削れカスを発生するベルト体及びベルト体の張架ローラを構成する材料との静止摩擦係数の中で最大のものを「最大静止摩擦係数μmax」と呼ぶことにする。このとき、本実施例では、最大静止摩擦係数μmaxと、角度θとの間に、
μmax<tanθ(但し、0≦θ≦90°)
の関係が成立する構成とする。このような構成とすることで、ベルト体及びベルト体の張架ローラから発生する削れカスが異物として転写シート5とベルト体との間に挟まり込むことを抑制することができる。又、これによって、ベルト体及びベルト体の張架ローラから発生する削れカスが異物として転写シート5とベルト体との間に挟まり込むことに起因する転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を抑制することができる。
【0096】
尚、本実施例では、ベルト体は中間転写ベルト20である。又、本実施例では、ベルト体の張架ローラのうち駆動ローラ21から画像形成装置100の使用に伴って異物としての削れカスが発生しやすい。
【0097】
図5は、本実施例における1次転写手段の構成を示す。尚、本実施例では、第1〜第4の画像形成部1Y、1M、1C、1Bkの1次転写手段の構成は実質的に同一である。図5に示すように、本実施例における1次転写手段の構成は、実施例1のものと同様であるが、以下のような点が異なる。
【0098】
転写シート5は、弾性部材15の側面に沿って配設され、折り曲げた形状にて、弾性部材15の中間転写ベルト20側の面を覆っている。この状態で、弾性部材15が転写シート5を中間転写ベルト20に対して押圧し、転写シート5の表面が中間転写ベルト20の裏面に接触している。図示の通り、本実施例では、転写シート5は、中間転写ベルト20との接触部の中間転写ベルト20の移動方向上流側端部の近傍で中間転写ベルト20側に凸となるように折り曲げられている。更に、本実施例では、転写シート5は、その折り曲げ部よりも中間転写ベルト20の移動方向上流側において中間転写ベルト20とは反対側に凸となるように湾曲させられている。
【0099】
そして、本実施例では、図5に示すように、角度θは75°となっている。上述のように、本実施例では、転写シート5は、中間転写ベルト20に接触する接触部5Aと中間転写ベルト20に接触しない非接触部5Bとの連接部を折り曲げた形状を有する。そして、転写シート5の中間転写ベルト20に接触する側の面である表面は、上記接触部と上記非接触部との間に変曲線5aを有している。
【0100】
尚、本実施例では、転写シート5は、シート状態で作成された後に、図5に示すような折り曲げた形状を安定して達成するため、次のような構成とする。即ち、図6に示すように、転写シート5と中間転写ベルト20との接触部の中間転写ベルト20の移動方向上流側の端部となる位置において、所定の深さ(例えば転写シート5の厚さの略半分の深さ)のスリット(ハーフカット)5Sを施す。そして、このスリット5Sが設けられた面が裏面になるように折り曲げることで所望の形状を得た。
【0101】
尚、上記とは逆に、図7に示すように、スリット5Sが設けられた面が表面になるように折り曲げて用いても良い。
【0102】
本実施例のようなスリット5Sを施す方法は、実施例1のように型に保持しながら加熱する方法と比較して、画像形成装置100の使用に伴った波うちがより発生し難いという点で有利である。これは、実施例1の方法では、転写シート5を曲げる際に、その転写シート5において伸びの発生した箇所と縮みの発生した箇所が存在し、長手方向における伸び縮みのわずかなムラにより、シート形状の安定性が損なわれる可能性があるためである。スリット5Sを施すことで、伸びの発生した箇所と縮みの発生した箇所を減らすことができるため、画像形成装置100の使用に伴った波うちが発生し難くなる。換言すれば、本実施例のようなスリット5Sを施す方法は、実施例1のように型に保持しながら加熱する方法と比較して、角度θを大きくしやすいという点で有利である。
【0103】
本実施例では、μmaxは、転写シート5と、画像形成装置100の使用に伴って異物としての削れカスを発生する、駆動ローラ21を構成する材料であるゴム(具体的にはEPDMにカーボンブラックを分散させた導電性ゴム)との静止摩擦係数が示す。本実施例では、転写シート5と駆動ローラ21を構成する導電性ゴム(テストピース)との静止摩擦係数は0.79であった。
【0104】
尚、本実施例では、駆動ローラ21と2次転写対向ローラ23とは同様の構成とされ、2次転写対向ローラ23の導電性ゴムと転写シート5との静止摩擦係数は、駆動ローラ21の導電性ゴムと転写シート5との静止摩擦係数と実質的に同じである。ここでは、本実施例の画像形成装置100においてより削れカスが発生し易い駆動ローラ21を構成する材料が上記最大静止摩擦係数μmaxを示すものとして説明する。
【0105】
ここで、転写シートの相手材としてのベルト体の張架ローラを構成する材料とは、張架ローラが単一材料であれば、その材料と同一材料のテストピースである。又、張架ローラが芯金とその上の単一又は複数の層から成るなど、複数の材料で構成される場合は、ベルト体の内周面と摩擦係合するべく、ベルト体の内周面に対して露出している部分の材料と同一材料のテストピースである。この部分の材料が、画像形成装置の使用に伴って異物としての削れカスを生じるからである。
【0106】
上述のように、本明細書において、静止摩擦係数は、JIS−K7125(面圧:0.005MPa)に準拠して測定した値である。より具体的には、転写シート5を構成する材料と、駆動ローラ21を構成するゴムとの静止摩擦係数は、次のようにして測定した。即ち、転写シートのシートサンプルと、駆動ローラ21を構成する導電性ゴムのテストピースを用いて、新東科学(株)製表面性試験機(HEIDON−14DR)を使用して面圧を0.005MPa、引張速度1m/minの条件にて測定した。
【0107】
本実施例では、上述のように転写シート5を折り曲げた構成とすることで、転写シート5と駆動ローラ21を構成するゴムとの静止摩擦係数μmax=0.79と、角度θ=75°との間に、
μmax<tanθ(≒3.7)
の関係が成り立っている。即ち、実施例1と同様に、角度θ=75°は、摩擦角よりも大きい。
【0108】
尚、本実施例では、図5に示すように、角度θ=75°は、転写シート5の中間転写ベルト20の移動方向上流側の表面(例えば、固定端5cに隣接する表面)と水平面との成す角度(実施例1と同じ35°)よりも大きい。
【0109】
従って、画像形成装置100の使用に伴って発生した、異物としての駆動ローラ21の削れカスは、転写シート5の接触部隣接表面にとどまることなく、重力によって転写シート5上を滑り落ちる。その結果、駆動ローラ21の削れカスが異物として転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込むことによる転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を抑制することができる。
【0110】
ここで、本実施例では、転写シート5と中間転写ベルト20を構成する材料との静止摩擦係数μ(=0.42)<tanθ(≒3.7)の関係が成り立っている。従って、実施例1と同様に、異物としての中間転写ベルト20の削れカスに対しても上記駆動ローラ21の削れカスに対するものと同様の効果が得られる。
【0111】
尚、実施例1と同様に、中間転写ベルト20の逆回転を行うことで、一旦転写ベルト5と中間転写ベルト20との間に挟まり込んだ異物は、排出された後に上述の作用により転写シート5上を滑り落ちる。従って、転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を更に効果的に抑制することができる。
【0112】
次に、本発明の効果を確認するための画像出力実験の結果について説明する。
【0113】
先ず、具体例3として、上述の本実施例の構成と同一構成の画像形成装置により画像出力実験を行った。即ち、具体例3では、保持部材16に貼り付けた転写シート5を折り曲げて弾性部材15で中間転写ベルト20に対して加圧し、角度θ=75°である。
【0114】
又、具体例4として、角度θ=55°としたことを除いて本実施例の画像形成装置と実質的に同一の構成の画像形成装置により画像出力実験を行った。即ち、具体例4では、本実施例と同様に、保持部材16に貼り付けた転写シート5を折り曲げて弾性部材15で中間転写ベルト20に対して加圧した。
【0115】
評価方法は、実施例1において説明した評価方法と同一である。
【0116】
評価結果を表3に示す。尚、表3には、実施例1において説明した具体例1、比較例1についての評価結果も併せて示す。
【0117】
【表3】
【0118】
具体例3及び具体例4では、縦白スジ状の画像不良は20万枚の耐久終了まで発生することはなかった。
【0119】
ここで、具体例3と具体例4との両者で評価結果に差は出なかった。しかし、中間転写ベルト20の削れカスや駆動ローラ21の削れカス以外の異物に対して同様の効果がより得られるのは具体例3の構成の方である。中間転写ベルト20の削れカスや駆動ローラ21の削れカス以外の異物としては、例えば、画像形成装置の使用に伴って中間転写ベルト20の内周面側に侵入することのある異物である、粉塵、トナー、紙粉、その他画像形成装置全般の削れ粉が挙げられる。この理由は、具体例3の構成の方が、転写シート5の接触部隣接表面にその異物が到来した場合に、その異物が重力によって転写シート5上を滑り落ちる力がより大きくなるからである。
【0120】
尚、実施例1で説明したように、別の実験として、上記同様の耐久試験を行って、縦白スジ状画像不良が発生した際に画像形成装置を停止して、1次転写手段を分解して転写シート5と中間転写ベルト20との接触部を観察した。その結果、比較例1では、「○△」、「△」、「△×」レベルの場合に、主に中間転写ベルト20の削れカス(前述)が転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込んでいることが確認された。具体例1では、「○△」レベルの場合に、中間転写ベルト20の削れカスはほとんどみられない。しかし、駆動ローラ21(或いは2次転写対向ローラ23)の削れカス(大きさが50〜300μm程度の導電性ゴムの粉)が転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込んでいることが確認された。そして、それぞれの場合に、観察された削れカスを除去した後1次転写手段を再度組み立てて、引き続き画像出力実験を行うと、縦白スジ状画像不良は解消された。尚、具体例3、4では、耐久試験終了後に上記同様の観察を行ったが、中間転写ベルト20、駆動ローラ21のいずれの削れカスも転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込んでいることは確認されなかった。
【0121】
以上の結果から、角度θが15°と35°の間で大きく現象が良化し、更に、角度θが35°と55°の間で現象が良化していることが分かる。
【0122】
角度θが15°と35°の間で大きく現象が良化しているのは、実施例1で説明したのと同じ理由によるものであり、実施例1で説明したように、より詳細には、角度θが20°と25°との間で大きく現象が良化している。
【0123】
一方、角度θが35°と55°との間で現象が大きく良化したのは、次の理由によるものである。即ち、本実施例の設定では、転写シート5と駆動ローラ21を構成するゴムとの静止摩擦係数(最大静止摩擦係数)μmaxが0.79である。又、そこから算出される摩擦角が約38°(tan38°=0.781)である。このことから、角度θが35°と55°との間で、摩擦角よりも角度θが大きくなる。これにより、画像形成装置100の使用に伴って発生した異物としての駆動ローラ21の削れカスが転写シート5の接触部隣接表面にとどまり、この異物が転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込むことを抑制する効果が飛躍的に向上する。その結果、転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を抑制する効果が飛躍的に向上する。
【0124】
以上説明したように、本実施例では、最大摩擦係数μmaxとしての転写シート5と駆動ローラ21を構成するゴムとの静止摩擦係数と、角度θとの間に、μmax<tanθ(但し、0≦θ≦90°)の関係が成立する構成とする。これにより、画像形成装置の使用に伴って発生した異物としての中間転写ベルト20及び駆動ローラ21から発生する削れカスが、転写シート5の接触部隣接表面にとどまり、この異物が転写シートと中間転写ベルトとの間に挟まり込むことを抑制することができる。その結果、転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を抑制することができる。
【0125】
実施例3
次に、本発明に係る画像形成装置の更に他の実施例について説明する。
【0126】
本実施例では、画像形成装置は、電子写真方式を用いて感光ドラム上に形成されたトナー像を記録材担持体としての無端ベルト状の記録材搬送ベルト上に担持された記録材上に順次重ね合わせて転写する直接転写方式のフルカラープリンタである。
【0127】
図8は、本実施例の画像形成装置の全体構成を示す模式的な断面図である。尚、図1を参照して実施例1にて説明した中間転写方式の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0128】
本実施例の画像形成装置100は、図1に示す中間転写方式の画像形成装置100における中間転写ベルト20に代えて、記録材担持体としての無端ベルト状の記録材搬送ベルト35を有する。記録材搬送ベルト35は、各感光ドラム2Y、2M、2C、2Bkに対向して設置されている。記録材搬送ベルト35は、複数の支持部材(張架ローラ)としての駆動ローラ21、テンションローラ(加圧ローラ)22により張架されている。記録材搬送ベルト35は、テンションローラ22に対する加圧手段(図示せず)によりテンションがかけられており、駆動装置(図示せず)によって回転駆動される駆動ローラ21により、図中矢印R2方向(時計方向)に周回移動(回転)させられる。各画像形成部1Y、1M、1C、1Bkの転写手段を構成する各転写シート5Y、5M、5C、5Bkは、記録材搬送ベルト35の内周面(裏面)側に配置されている。各転写シート5Y、5M、5C、5Bkは加圧手段によって記録材搬送ベルト35の裏面に対して押圧されている。これにより、各感光ドラム2Y、2M、2C、2Bkと記録材搬送ベルト35との接触領域である各転写部(転写ニップ)NY、NM、NC、NBkが形成されている。
【0129】
第1の画像形成部1Yの上流側において、テンションローラ22に対向する位置には、記録材Pを記録材搬送ベルト35上に静電吸着させる吸着部材としての吸着ローラ36が設置されている。
【0130】
例えばフルカラー画像形成モードでは、各感光ドラム2上のトナー像の形成タイミングに合わせて、給紙ローラ(レジストローラ)13で搬送された記録材Pが記録材搬送ベルト35に送られ、各画像形成部1の各転写部Nに順次に搬送される。そして、各感光ドラム2上のトナー像は、各転写部Nにおいて転写シート5に転写電源40からトナーの正規の帯電極性とは逆極性の転写電圧(転写バイアス)が印加されることで、記録材搬送ベルト35上の記録材P上に順次に重ね合わせるようにして転写される。尚、記録材Pは、駆動ローラ21の駆動によって移動される記録材搬送ベルト35の表面に、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の吸着電圧(吸着バイアス)が印加された吸着ローラ36によって静電吸着される。
【0131】
トナー像が形成された記録材Pは、記録材搬送ベルト35の表面から分離されて、定着装置12に搬送される。そして、定着装置12によってトナー像が定着された後に、画像形成装置100の外部に排出される。
【0132】
記録材搬送ベルト35は、通常は表面にトナー像を直接担持させることはない。しかし、ジャム(記録材が装置内で搬送途中に詰まること)時や非画像部への地かぶりなどによって、記録材搬送ベルト35上に汚染トナーが付着することがある。或いは、濃度検知やカラーレジストレーション補正などの動作時に記録材搬送ベルト35上に直接検知用パッチを担持することがある。このような記録材搬送ベルト35上のトナーを清掃するために、次のような清掃工程が、所定のタイミングで行われる。即ち、清掃工程では、各画像形成部1Y、1M、1C、1Bkにて各転写シート5a、5b、5c、5dに、転写時とは逆極性のクリーニング電圧(クリーニングバイアス)を印加する。そして、記録材搬送ベルト35上の汚染トナーを各感光ドラム2a、2b、2c、2dに転移し、ドラムクリーニング装置6a、6b、6c、6dに回収する。
【0133】
本実施例では、4つの画像形成部1Y、1M、1C、1Bkは、記録材搬送ベルト35の記録材担持面の移動方向に沿って一定の間隔をおいて斜めに一例に配置されている。
【0134】
記録材搬送ベルト35の材料、構造は、実施例1にて説明した中間転写ベルト20と同じとすることができる。本実施例の記録材搬送ベルト35の材料、構造は、実施例1における中間転写ベルト20と実質的に同一である。
【0135】
又、張架ローラとしての駆動ローラ21及びテンションローラ22の材料、構造も、実施例1のものと同じとすることができる。本実施例の駆動ローラ21及びテンションローラ22の材料、構造は、実施例1におけるものと実質的に同一である。
【0136】
尚、本実施例では、実施例1において中間転写ベルト20について行ったのと同様にして、画像形成終了時に記録材搬送ベルト35を画像形成動作時とは逆方向に回転させてから画像形成動作を終了する。
【0137】
図9は、本実施例における転写手段の構成を示す。尚、本実施例では、第1〜第4の画像形成部1Y、1M、1C、1Bkの転写手段の構成は実質的に同一である。図9に示すように、本実施例における転写手段の構成は、実施例1における1次転写手段の構成と同様であるが、以下のような点が異なる。
【0138】
弾性部材15は、転写シート5を、記録材搬送ベルト35(記録材Pが転写部Nにあるときは更に記録材P)を介して感光ドラム2に押圧している。転写シート5は、保持部材16の上流側側面の一部に両面テープにて取り付けられており、転写シート5を折り曲げた形状にて、弾性部材15の記録材搬送ベルト35側の面覆っている。この状態で、弾性部材15が転写シート5を記録材搬送ベルト35に対して押圧し、転写シート5の表面が記録材搬送ベルト35の裏面に接触している。
【0139】
そして、本実施例では、図9に示すように、角度θは85°となっている。ここで、実施例1、2において説明した、角度θ、静止摩擦係数μ、最大静止摩擦係数μmaxの定義におけるベルト体は、本実施例では記録材搬送ベルト35である。
【0140】
尚、本実施例では、転写シート5は、シート状態で作成された後に、図9に示すような折り曲げた形状を安定して達成するため、実施例1と同様にして予め変形させた。即ち、転写シート5を構成するシートを型に保持しながら加熱してその形状を固定することで、転写シート5の所望の形状を得た。
【0141】
このように、本実施例では、図8に示すように各画像形成部1Y、1M、1C、1Bkを斜めに配列することで、実施例2のようにスリット(ハーフカット)を施さなくても、容易に角度θを大きくとることができる。
【0142】
本実施例では、転写シート5と記録材搬送ベルト35を構成する材料との静止摩擦係数μと、角度θとの間に、μ(=0.42)<tanθ(≒11.4)の関係が成り立っている。又、本実施例では、μmaxは、転写シート5と駆動ローラ21を構成するゴムとの静止摩擦係数が示す。そして、本実施例では、転写シート5と駆動ローラ21を構成するゴムとの静止摩擦係数μmaxと、角度θとの間に、μmax(=0.79)<tanθ(≒11.4)の関係も成り立っている。従って、実施例1、2で説明したように、本実施例においても、次のような効果が得られる。即ち、画像形成装置の使用に伴って発生した異物としての記録材搬送ベルト35及び駆動ローラ21から発生する削れカスが、転写シート5の接触部隣接表面にとどまり、この異物が転写シートと記録材搬送ベルト35との間に挟まり込むことを抑制する効果である。その結果、転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を抑制することができる。
【0143】
その他の実施例
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0144】
例えば、上述の実施例では、本発明をカラー画像形成装置に適用したが、これに限定されるものではない。ベルト体に接触して配置されたシート状の転写部材を用いて、像担持体からベルト体又はベルト体に担持された記録材にトナーを転写するものであれば、モノクロ画像形成装置にも本発明を適用することができ、同様の効果が得られる。
【0145】
又、上述の実施例において、弾性部材15の形状は略直方体としたが、例えば、図10に示すように、他の形状であってもよい。即ち、上述の実施例では、略直方体の弾性部材15は、転写シート5のベルト体に接触する領域の裏面に接触して、当該領域をベルト体に対して押圧するものであった。図10の例では、上述の実施例における弾性部材15に相当する略直方体の部分に加えて、転写シート5の接触部隣接表面よりもベルト体の移動方向上流側に所定範囲の領域の転写シート5を裏面側から支持する部分を有する。図10の例では、弾性部材15は、上記両部分は一体的に形成されている。上述の実施例で説明した静止摩擦係数μ(又は最大静止摩擦係数μmax)と角度θとの関係が確保できていれば、同様の効果が得られる。
【0146】
又、上述の実施例では、μmaxは、転写シート5と駆動ローラ21を構成するゴムとの静止摩擦係数が示した。同様に、転写シート5とベルト体(中間転写ベルト20又は記録材搬送ベルト35)を構成する材料との静止摩擦係数がμmaxを示す場合には、当該μmaxと角度θが上記実施例で説明した関係を満たすようにすればよい。尚、上記実施例では、画像形成装置を使用することによって、ベルト体とベルト体の張架ローラの両方から異物として削れカスが発生する場合について説明した。しかし、実質的にベルト体とベルト体の張架ローラのいずれか一方からしか異物として削れカスが発生しない場合には、次にようにすればよい。即ち、削れカスが発生するベルト体又はベルト体の張架ローラを構成する材料のいずれか一方と転写シートとの間の静止摩擦係数μ(それがμmaxであるか否かに拘わらない)と、角度θとの間に、上述の実施例で説明した関係を満たすようにすればよい。
【0147】
又、上述の実施例では、画像形成終了時にベルト体を画像形成動作時とは逆方向に回転させてから画像形成動作を終了する構成について説明した。しかし、この逆回転を行わない構成においても、上述の実施例で説明した静止摩擦係数μ(又は最大静止摩擦係数μmax)と角度θとの関係が確保できていれば、同様の効果が得られる。
【0148】
又、上述の実施例で説明した静止摩擦係数μ(又は最大静止摩擦係数μmax)と角度θとの関係を確保することで、ベルト体、ベルト体の張架ローラ以外の異物に対しても、同様の効果を得られる。転写シートの接触部隣接表面にその異物が到来した場合に、その異物が重力によって転写シート上を滑り落ちる力が働きやすくなるからである。ベルト体の張架ローラ以外の異物としては、例えば、画像形成装置の使用に伴ってベルト体の内周面に侵入することのある異物である、粉塵、トナー、紙粉、その他画像形成装置全般の削れ粉が挙げられる。
【0149】
又、実施例3において、ベルト体として記録材搬送ベルトを用いる場合において、各画像形成部が斜めに配列されている構成について説明した。しかし、ベルト体として中間転写ベルトを用いる場合においても、各画像形成部を斜めに配列することができる。この場合も、実施例3で説明したように、容易に角度θを大きくとることが可能となる。
【符号の説明】
【0150】
1 画像形成部
2 感光ドラム
5 転写シート(シート状の転写部材)
15 弾性部材(加圧手段)
16 保持部材
20 中間転写ベルト(ベルト体)
21 駆動ローラ
22 テンションローラ
23 2次転写対向ローラ
24 2次転写ローラ
35 記録材搬送ベルト(ベルト体)
40 一次転写電源(転写電源)
P 記録材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト体に接触して配置されたシート状の転写部材を用いて、像担持体からベルト体又はベルト体に担持された記録材にトナーを転写する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置として、電子写真方式などを利用してトナーを用いて画像を形成するものが広く用いられている。このような画像形成装置において、像担持体としての感光ドラム上に担持されているトナー像を、ベルト体としての記録材搬送ベルトに担持されている記録材又はベルト体としての中間転写ベルトの表面に静電的に転移させる転写工程を有するものがある。この転写工程のために、画像形成装置には、トナーの帯電極性と逆極性の必要な電圧(転写バイアス)を与える転写電圧印加手段としての転写電源(高圧電源)が設けられる。又、その転写電源に接続されている転写手段として、記録材搬送ベルト又は中間転写ベルトを挟んで感光ドラムとの対向位置に転写ローラなどの転写部材が配置される。記録材搬送ベルト又は中間転写ベルトは、その表面が感光ドラムに接触するように配置され、又転写ローラなどの転写部材は、記録材搬送ベルト又は中間転写ベルトの裏面に接触するように配置される。
【0003】
又、転写手段としてのシート状の転写部材(以下「転写シート」という。)である、摺動性のよい導電シート部材を、記録材搬送ベルト又は中間転写ベルトの裏面と面接触させ、所定の位置に固定する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、弾性シート部材と記録材搬送ベルトとの間に導電性シート部材を挟んで固定した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3388535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の転写シートを用いた場合、他の要素の長寿命化などにより製品寿命が長寿命化され、従来の製品寿命以上の長い期間にわたって画像形成装置が使用され続けるようになると、次のような問題が発生することがあることが分かった。
【0006】
即ち、従来の転写シートを用いた場合、記録材搬送ベルト又は中間転写ベルトの内周面が削れ、削れカスが発生することがあった。そして、そのような状態で画像形成装置の使用を続けた場合に、その削れカスが異物として転写シートと記録材搬送ベルト又は中間転写ベルトとの間に挟まり込むことがあった。その結果、転写電流が不均一になるため、転写不良(転写電流ムラに対応した転写ムラ)が生じてしまう場合があった。
【0007】
このような問題は、ベルト体として中間転写ベルトを用いる画像形成装置でも、ベルト体として記録材搬送ベルトを用いる画像形成装置でも同様に生じ得る。又、ベルト体を張架しているローラが削れ、削れカスが発生した場合に、これが転写シートとベルト体との間に挟まり込むことでも、同様の問題が発生し得る。
【0008】
従って、本発明の目的は、シート状の転写部材を用いて像担持体からベルト体又はベルト体に担持された記録材にトナーを転写する場合に、ベルト体とシート状の転写部材との間に異物が挟まり込むことを抑制することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナーを担持する像担持体と、複数のローラによって張架され、前記像担持体に接触して移動可能なベルト体と、前記ベルト体の前記像担持体と接触する面とは反対側の面に、一方の面側で接触するシート状の転写部材であって、前記ベルト体に接触する側の面は、前記ベルト体に接触する接触部、及び前記接触部よりも前記ベルト体の移動方向上流側に位置し前記接触部に連続している前記ベルト体に接触しない非接触部を備えるシート状の転写部材と、を有し、前記シート状の転写部材に電圧が印加されることにより、前記像担持体から、前記移動方向に移動する前記ベルト体又は前記移動方向に移動する前記ベルト体に担持された記録材にトナーが転写される画像形成装置において、前記シート状の転写部材と前記ベルト体の材料との静止摩擦係数をμとして、前記非接触部における前記接触部の前記ベルト体の移動方向上流側の端部に隣接する部分から、前記シート状の転写部材の前記ベルト体に接触しない側の面に向かう方向の法線ベクトルと、重力方向のベクトルとのなす角度をθとしたとき、μ<tanθ(但し、0≦θ≦90°)の関係が成立することを特徴とする画像形成装置である。
【0010】
本発明の他の態様によると、前記シート状の転写部材と前記ローラの材料との静止摩擦係数をμとして、前記非接触部における前記接触部の前記ベルト体の移動方向上流側の端部に隣接する部分から、前記シート状の転写部材の前記ベルト体に接触しない側の面に向かう方向の法線ベクトルと、重力方向のベクトルとのなす角度をθとしたとき、μ<tanθ(但し、0≦θ≦90°)の関係が成立することを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0011】
又、本発明の更に他の態様によると、前記シート状の転写部材と、前記ベルト体及び前記ローラの材料のそれぞれとの静止摩擦係数のうち最大のものをμmaxとして、前記非接触部における前記接触部の前記ベルト体の移動方向上流側の端部に隣接する部分から、前記シート状の転写部材の前記ベルト体に接触しない側の面に向かう方向の法線ベクトルと、重力方向のベクトルとのなす角度をθとしたとき、μmax<tanθ(但し、0≦θ≦90°)の関係が成立することを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シート状の転写部材を用いて像担持体からベルト体又はベルト体に担持された記録材にトナーを転写する場合に、ベルト体とシート状の転写部材との間に異物が挟まり込むことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の全体構成を示す模式的断面図である。
【図2】図1の画像形成装置(具体例1)における1次転写手段の構成を示す模式的断面図である。
【図3】削れカスが転写シートとベルト体との間に挟まり込むことを防止する原理を説明するための説明図である。
【図4】比較例1に係る画像形成装置における1次転写手段の構成を示す模式的断面図である。
【図5】具体例3に係る画像形成装置における1次転写手段の構成を示す模式的断面図である。
【図6】本発明の他の実施例に係る転写シートの加工及び取り付け時の保持状態を示す断面図である。
【図7】本発明の他の実施例に係る転写シートの加工及び取り付け時の保持状態を示す断面図である。
【図8】本発明の更に他の実施例に係る画像形成装置の全体構成を示す模式的断面図である。
【図9】図8の画像形成装置における転写手段の構成を示す模式的断面図である。
【図10】本発明に従って構成された転写手段の構成の他の例を示す模式的断面図である。
【図11】従来の転写シートを用いた転写手段の構成の一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0015】
実施例1
(1)画像形成装置の構成及び動作
先ず、本発明の一実施例に係る画像形成装置の全体的な構成について説明する。
【0016】
図1は、本実施例の画像形成装置100の全体構成を示す模式的断面図である。本実施例では、画像形成装置100は、電子写真方式を用いた中間転写方式のフルカラープリンタである。
【0017】
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4の画像形成部1Y、1M、1C、1Bkの画像形成部(ステーション)を有する。これらの4つの画像形成部1Y、1M、1C、1Bkは、後述するベルト体としての中間転写ベルト20の画像担持面の移動方向に沿って一定の間隔をおいて略水平に一列に配置されている。
【0018】
尚、単にベルト体の移動方向(回転方向)と言う場合は、他に特別の記載のない場合、画像形成中(より詳細には転写中)における移動方向(回転方向)である。
【0019】
又、本実施例では、各画像形成部1Y、1M、1C、1Bkの構成及び動作は、使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同一である。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用の要素であることを表すために図中符号に与えた添え字Y、M、C、Bkは省略して、当該要素について各色について共通して適用されるものとして説明する。
【0020】
画像形成部1には、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(感光体)、即ち、感光ドラム2が設置されている。感光ドラム2の周囲には、次の各手段が設置されている。先ず、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ3である。次に、現像手段としての現像装置4である。次に、1次転写手段を構成するシート状の転写部材である転写シート5である。次に、クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置6である。又、図中の帯電ローラ3と現像装置4との間の上方には、露光手段としての露光装置(レーザスキャナ装置)7が設置されている。各現像装置4Y、4M、4C、4Bkには、現像剤として、それぞれ負帯電性のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーが収納されている。
【0021】
感光ドラム2は、本実施例では、ドラム型の負帯電性の有機感光体であり、アルミニウムで作製されたドラム基体上に感光層を有している。感光ドラム2は、駆動装置(図示せず)によって図中矢印R1方向(反時計方向)に所定のプロセススピード(周速度)で回転駆動される。
【0022】
帯電ローラ3は、感光ドラム2に接触しており、加圧手段によって感光ドラム2に対して押圧されている。帯電動作時には、帯電ローラ3には、帯電電圧印加手段としての帯電電源(図示せず)によって、所定の帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。これにより、感光ドラム2の表面は所定の電位に均一に帯電させられる。尚、本実施例では、感光ドラム2は、帯電ローラ3により負極性に帯電させられる。
【0023】
露光装置(レーザスキャナ装置)7は、帯電ローラ3によって帯電させられた感光ドラム2の表面に、画像情報に応じた静電潜像(静電像)を形成する。即ち、露光装置7において、ホストコンピュータ(図示せず)から入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザ光が、レーザ出力部から出力される。このレーザ光が、各反射ミラーを介して感光ドラム2の表面を走査露光する。これにより、感光体ドラム2の表面に画像情報に応じた静電潜像が形成される。
【0024】
現像装置4は、本実施例では、現像方式として、接触現像方式を用いている。現像装置4は、現像剤担持体としての現像ローラを有している。現像ローラ上に薄層状に担持されたトナーは、駆動装置(図示せず)により回転駆動される現像ローラにより、感光ドラム2との対向部(現像部)に搬送される。感光ドラム2上に形成された静電潜像は、現像ローラから供給されるトナーによってトナー像として現像される。現像動作時に、現像ローラには、現像電圧印加手段としての現像電源によって、所定の現像電圧(現像バイアス)が印加される。尚、本実施例では、一様に帯電させられた後に露光によって電位の絶対値が低下させられた感光ドラム2上の露光部に、感光ドラム2の帯電極性と同極性に帯電したトナーを付着させる反転現像方式によって、静電潜像の現像が行われる。
【0025】
現像装置4の現像ローラと感光ドラム2とは、フルカラー画像形成モードでは全ての画像形成部で接触し、モノカラー画像形成モード(例えば、白黒画像形成モード)では画像を形成する画像形成部では接触しそれ以外の画像形成部では離間する。これは、現像ローラとトナーの劣化、消耗を防止するためである。
【0026】
又、各感光ドラム2Y、2M、2C、2Bkに対向して、中間転写体としての無端ベルト状の中間転写ベルト20が設置されている。中間転写ベルト20は、複数の支持部材(張架ローラ)としての駆動ローラ21、テンションローラ(加圧ローラ)22、2次転写対向ローラ23により張架されている。中間転写ベルト20は、テンションローラ22に対する加圧手段(図示せず)によりテンションがかけられている。又、中間転写ベルト20は、駆動装置(図示せず)によって回転駆動される駆動ローラ21により、図中矢印R2方向(時計方向)に周回移動(回転)させられる。各転写シート5Y、5M、5C、5Bkは、中間転写ベルト20の内周面(裏面)側に配置されている。詳しくは後述するように、各転写シート5Y、5M、5C、5Bkは加圧手段によって中間転写ベルト20の裏面に対して押圧されている。これにより、各感光ドラム2Y、2M、2C、2Bkと中間転写ベルト20との接触領域である各1次転写部(1次転写ニップ)N1Y、N1M、N1C、N1Bkが形成されている。又、中間転写ベルト20の外周面(表面)側には、2次転写対向ローラ23と対向する位置に、2次転写手段を構成するローラ型の転写部材である2次転写ローラ24が設置されている。2次転写ローラ24は、中間転写ベルト20を介して2次転写対向ローラ23に対して押圧されている。これにより、中間転写ベルト20と2次転写ローラ24との接触領域である2次転写部(2次転写ニップ)N2が形成されている。2次転写ローラ24は、中間転写ベルト20に対して接触及び離間可能に設置されている。
【0027】
シート状の転写部材である転写シート5は、導電性を持たせた樹脂により形成されたシートで構成されている。その樹脂としては、例えば、ナイロン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂)、PMMA(アクリル)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などが挙げられる。詳しくは後述するように、転写シート5は、保持部材16に保持されると共に、加圧手段としての弾性部材(転写パッド)15によって中間転写ベルト20の裏面に対して押圧されている。弾性部材15は、ウレタンゴム、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、エピクロロヒドリンゴム、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、クロロプレンゴム、シリコーンゴムなどにより形成された弾性体で構成されている。
【0028】
複数のローラによって張架され像担持体に接触して移動可能なベルト体としての中間転写ベルト20は、本実施例では、主にPEN(ポリエチレンナフタレート)により無端ベルト状に形成されている。中間転写ベルト20の材料としては、上記のものの他に、PVdF(フッ化ビニリデン樹脂)、ETFE(四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂)、PI(ポリイミド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの樹脂、或いは、例えばEPDMなどのゴム基層上に例えばウレタンゴムにPTFEなどフッ素樹脂を分散したものを被覆して無端ベルト状に構成したものなど用いることができる。
【0029】
張架ローラとしての駆動ローラ21及び2次転写対向ローラ23は、それぞれ、EPDMにカーボンブラックを分散させた導電性ゴムを芯金の外周に被覆した構成とされている。又、テンションローラ22はアルミニウムからなるローラを用いている。
【0030】
感光ドラム2は中間転写ベルト20の表面に接触している。転写シート5は、中間転写ベルト20の裏面に接触している。又、保持部材16に保持された弾性部材15は、転写シート5の中間転写ベルト20に接触する側の面とは反対側の面に接触している。そして、この保持部材16に保持された弾性部材15は、転写シート5を中間転写ベルト20に対して押圧している。その結果、弾性部材15は、転写シート5及び中間転写ベルト20を感光ドラム2に対して押圧している。転写シート5には、1次転写電圧印加手段としての1次転写電源(高圧電源)40が接続されている。1次転写工程時に、転写シート5には、1次転写電源によって、所定の1次転写電圧(1次転写バイアス)が印加される。これにより、回転する感光ドラム2上のトナー像は、周回移動(回転)する中間転写ベルト20上に1次転写される。
【0031】
尚、中間転写ベルト20の外周面側において、2次転写ローラ24とは異なる位置で2次転写対向ローラ23に対向するように、ベルトクリーニング装置が設定されている。このベルトクリーニング装置は、2次転写工程後に中間転写ベルト20の表面に残ったトナー(2次転写残トナー)を除去して回収するためのものである。本実施例では、ベルトクリーニング装置は、ベルトクリーニング部材として、ローラ型のクリーニング用帯電部材であるクリーニング用帯電ローラ30を有する。クリーニング用帯電ローラ30は、中間転写ベルト20の表面に接触するように設置されている。このクリーニング用帯電ローラ30には、クリーニング電圧印加手段としてのクリーニング電源(図示せず)が接続されている。そして、中間転写ベルト20のクリーニング動作時には、クリーニング帯電ローラ30には、クリーニング電源によって、所定のクリーニング電圧(クリーニングバイアス)が印加される。クリーニング用帯電ローラ30とクリーニング電源とによって、ベルトクリーニング装置が構成されている。
【0032】
又、中間転写ベルト20の外周面側において、駆動ローラ21に対向する位置に、色レジ補正・濃度補正用センサユニット50が設けられている。この色レジ補正・濃度補正用センサユニット50は、使用する環境の変化、画像形成枚数などの諸条件によらず、安定した色レジ補正(中間転写ベルト20上での各色のトナー像の位置合わせ)を行うため、又安定した画像濃度を得るために設けられたものである。色レジ補正・濃度補正用センサユニット50は、LEDなどの発光素子と、フォトダイオードやCdSなどの受光素子とを有して構成されている。
【0033】
2次転写部N2よりも記録材Pの搬送方向下流側には、定着ローラ12aと加圧ローラ12bとを有する定着装置12が設置されている。
【0034】
次に、本実施例の画像形成装置100による画像形成動作について説明する。
【0035】
例えば、フルカラー画像形成モードでは、画像形成動作開始信号が発せられると、所定のプロセススピードで回転駆動される各画像形成部1の各感光ドラム2は、各帯電ローラ3によって一様に帯電させられる。そして、各露光装置7は、入力されるカラー色分解された画像信号を、レーザ出力部が出力する光信号に変換する。そして、各露光装置7は、その光信号であるレーザ光によって、帯電した各感光ドラム2上を走査露光して、各感光ドラム2上に画像信号に応じた静電潜像を形成する。
【0036】
各感光ドラム2上に形成された静電潜像は、各現像装置4により現像剤としての各色のトナーが供給されることにより、各色のトナー像(現像剤像)として現像される。このとき、現像装置4の現像ローラには、感光ドラム2の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性の現像電圧が印加され、トナーが感光ドラム2の表面の電位に応じて静電吸着されることで、静電潜像がトナー像として現像される。
【0037】
このようにして回転する各感光ドラム2にトナー像が形成されていくと共に、各感光ドラム2上のトナー像が各1次転写部N1に到達すると、そのトナー像は各転写シート5の作用によって、回転する中間転写ベルト20上に1次転写されていく。このとき、各転写シート5には、1次転写電源40によって、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の1次転写電圧が印加される。
【0038】
フルカラー画像形成モードでは、先ず、第1の画像形成部1Yの1次転写部N1Yで中間転写ベルト20上にイエロートナー像が1次転写される。このイエロートナー像は、中間転写ベルト20の回転によって第2の画像形成部1Mの1次転写部N1Mへと移動される。そして、次に、第2の画像形成部1Mの1次転写部N1Mにおいて、マゼンタトナー像が中間転写ベルト20上のイエロートナー像に重ね合わせるようにして1次転写される。同様にして第3、第4の画像形成部1C、1Bkの1次転写部N1C、N1Bkにおいて、シアントナー像、ブラックトナー像が順次に重ね合わせるようにして1次転写され、中間転写ベルト20上にフルカラー画像用の多重トナー像が形成される。
【0039】
一方、中間転写ベルト20の回転によって中間転写ベルト20上の多重トナー像の先端が2次転写部N2に移動されるタイミングに合わせて、給紙ローラ(レジストローラ)13によって記録材Pが2次転写部N2に搬送されてくる。そして、中間転写ベルト20上の多重トナー像は、2次転写部N2において、この記録材P上に一括して2次転写される。このとき、2次転写ローラ24には、2次転写電源によって、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の2次転写電圧が印加される。
【0040】
トナー像が転写された記録材Pは、定着装置12に搬送される。定着装置12は、記録材Pを定着ローラ12aと加圧ローラ12bとの間の定着部(定着ニップ)に挟持して搬送することで、トナー像を加熱及び加圧して記録材Pの表面に定着させる。その後、記録材Pは、画像形成装置100の外部に排出される。
【0041】
1次転写工程後に各感光ドラム2上に残留しているトナー(1次転写残トナー)は、各ドラムクリーニング装置6によって除去されて回収される。又、2次転写工程後に中間転写ベルト20上に残留しているトナー(2次転写残トナー)は、ベルトクリーニング装置によって次のようにして回収される。ベルトクリーニング装置は、クリーニング用帯電部材であるクリーニング用帯電ローラ30を用いる。クリーニング用帯電ローラ30は、中間転写ベルト20と接触しており、クリーニング電源からクリーニング電圧が印加されることで、2次転写残トナーを帯電させる。2次転写工程後の2次転写残トナーは、クリーニング用帯電ローラ30と中間転写ベルト20との接触領域近傍における放電によって、強制的に帯電させられる。これにより、2次転写残トナーは、トナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させられる。そして、1次転写部N1(例えば、第1の画像形成部1Y)において、次の画像の1次転写を行いながら、或いは画像形成後の整理(準備)動作である後回転工程時に、前の画像の上述のように帯電させられた2次転写残トナーが、感光ドラム2に逆転写される。そして、この感光ドラム2に逆転写された2次転写残トナーは、その画像形成部のドラムクリーニング装置6によって除去されて回収される。
【0042】
以上により、一連の画像形成動作が終了する。
【0043】
尚、画像形成終了時には、中間転写ベルト20を画像形成動作時とは逆方向に所定量だけ回転させてから画像形成動作を終了する。即ち、画像を出力した後に当該画像形成装置の動作を停止する際に、ベルト体を画像形成動作時の移動方向とは逆方向に移動させた後に当該画像形成装置の動作を停止する。これは、1次転写部N1において中間転写ベルト20と転写シート5との間に異物が挟まり込んだ場合を想定して、この挟まり込んだ異物を取り出すことを目的としている。
【0044】
又、色レジ補正及び濃度補正時には、トナー像を中間転写ベルト20上に形成し、回転する中間転写ベルト20上のトナー像及びトナー像の無い部分に発光素子からの光を照射し、そこからの反射光を受光素子で受ける。これにより、トナー像パッチの形成された位置及び濃度を測定する。色レジ補正時には、トナー像の有無の間隔を測定することで色レジを補正する。又、濃度補正時にはトナー像の濃度を測定することで、濃度を補正する。
【0045】
(2)課題
ここで、図11を参照して、従来の転写シートを用いた場合における課題について更に説明する。図11は、従来の転写シートを用いた転写手段の構成の一例を示す。転写シート205は、ベルト体220の内周面側に配設され、ベルト体220と弾性シート215とにそれぞれ当接しており、そしてベルト体220の裏面に対して押圧されている。つまり、弾性シート215は、弾性シート支持部材216に支持されている。その結果、弾性シート215は、転写シート205及びベルト体220(更にベルト体が記録材搬送ベルトであり画像形成中である場合には記録材P)を感光ドラム202に対して押圧する。転写シート205には、電源240が接続されている。感光ドラム202上に形成されたトナー像は、転写シート205に電源240から転写電圧が印加されることにより、ベルト体220又はベルト体220上に担持されている記録材Pに転写される。
【0046】
このような従来の転写シート205を用いた場合、ベルト体220の内周面が削れ、削れカスが発生することがあった。そして、そのような状態で画像形成装置の使用を続けた場合に、その削れカスが異物として転写シート205とベルト体220との間に挟まり込むことがあった。その結果、転写電流が不均一になるため、転写不良(転写電流ムラに対応した転写ムラ)が生じてしまう場合があった。又、ベルト体220を張架しているローラが削れ、削れカスが発生した場合に、これが転写シート205とベルト体220との間に挟まり込むことでも、同様の問題が発生し得る。
【0047】
本実施例の目的の一つは、シート状の転写部材を用いて像担持体からベルト体又はベルト体に担持された記録材にトナーを転写する場合に、ベルト体とシート状の転写部材との間に異物が挟まり込むことを抑制することである。又、本実施例の目的の他の一つは、上述のように異物が挟まり込むことを抑制することで、該異物が挟まり込むことに起因する転写不良(転写電流ムラに対応した転写ムラ)を抑制することである。
【0048】
(3)1次転写手段
次に、本実施例における1次転写手段の構成について更に詳しく説明する。
【0049】
図2は、本実施例における1次転写手段の構成を示す模式的断面図である。
【0050】
尚、本実施例では、第1〜第4の画像形成部1Y、1M、1C、1Bkの1次転写手段の構成は実質的に同一である。従って、いずれかの画像形成部のものであることを示すために符号に与えた添え字Y、M、C、Bkを付すことなく、各画像形成部に共通に適用できるものとして説明する。
【0051】
転写シート5は、本実施例では、導電性を持たせた高分子PE(ポリエチレン)樹脂により形成されたシートで構成されている。このシートは弾力性(可撓性)を有する。又、本実施例では、転写シート5を構成するシートは、縦9.5mm、横225mmの略長方形の形状を有する。又、本実施例では、転写シート5の厚さは200μmである。
【0052】
転写シート5の電気抵抗値を、次のようにして測定した。転写シート5の中間転写ベルトに接触する側の面に、転写シート5の中間転写ベルト20との接触面(接触部)の面積に相当する面積のアース電極を取り付ける。そして、このアース電極と、転写シート5に1次転写電圧を印加する1次転写電極40との間に25Vの電圧を印加する。本実施例では、転写シート5として、このときの電気抵抗値が1×104Ωのものを用いた。
【0053】
尚、転写シート5の材料としては、本実施例のもの以外にも、例えば、ナイロン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂)、PMMA(アクリル)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などを適宜用いることができる。
【0054】
本実施例では、転写シート5の、中間転写ベルト20を構成する材料に対する静止摩擦係数μは、0.42であった。
【0055】
ここで、転写シートの相手材としてのベルト体を構成する材料とは、ベルト体が単一材料であれば、その材料と同一材料のテストピースである。又、ベルト体が裏面側の基層とその上の単一又は複数の層から成るなど、複数の材料で構成される場合は、ベルト体の内周面側に配置された転写シートや張架ローラといった摺擦又は摩擦係合する部材に対して露出している部分の材料と同一材料のテストピースである。この部分の材料が、画像形成装置の使用に伴って異物としての削れカスを生じるからである。本実施例では、中間転写ベルトは、実質的にPENの単一材料で構成されている。
【0056】
本明細書において、静止摩擦係数は、JIS−K7125(面圧:0.005MPa)に準拠して測定した値である。より具体的には、転写シート5を構成する材料と、中間転写ベルト20を構成する材料との静止摩擦係数は、次のようにして測定した。即ち、各々のシートサンプルを用いて、新東科学(株)製表面性試験機(HEIDON−14DR)を使用して面圧を0.005MPa、引張速度1m/minの条件にて測定した。
【0057】
加圧手段としての弾性部材15は、本実施例では、ウレタンゴムで形成された発泡スポンジ状の弾性体で構成されている。又、本実施例では、弾性部材15を構成する弾性体は、縦(中間転写ベルトの移動方向)5mm、横(中間転写ベルトの移動方向と直交する方向)225mm、高さ(転写シートに接触する中間転写ベルトの面に対し垂直方向)4mmの略直方体の形状を有する。
【0058】
弾性部材15の材料としては、本実施例のもの以外にも、例えば、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、エピクロロヒドリンゴム、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、クロロプレンゴム、シリコーンゴムなどを適宜用いることができる。硬度と寸法安定性が確保できていれば、発泡スポンジやソリッドゴムなども用いることができる。硬度が適切でない場合や寸法が安定していない場合には、凹凸形状が発生してしまい、転写不良(接触ムラに対応した縦白帯び状の画像不良)が発生しやすくなる。
【0059】
又、本実施例では、保持部材16の材質は導電性樹脂である。そして、保持部材16に1次転写電源40が電気的に接続され、転写シート5は保持部材16を介して1次転写電源に電気的に接続される。このように、本実施例では、保持部材16は、1次転写電源40から印加される1次転写電圧の給電部材を兼ねている。
【0060】
本実施例では、1次転写手段は、上述のような転写シート5、弾性部材15、保持部材16、1次転写電源40などで構成される。
【0061】
更に説明すると、転写シート5は、縦方向の一方の端部側の所定幅の部分が、横方向の全域にわたって、保持部材16の中間転写ベルト20の移動方向上流側の側面16aの一部に固定されることで取り付けられている。本実施例では、この取り付け部において、転写シート5は、固定手段としての両面テープ(図示せず)によって、保持部材16に貼り付けられている。この転写シート5と保持部材16との取り付け部の軸線は、中間転写ベルト20の裏面から所定距離の位置において、中間転写ベルト20の移動方向と直交する方向に沿って中間転写ベルト20の裏面と略並行に延在する。転写シート5の自由端5bは固定端5cに対して、中間転写ベルト20の移動方向下流側に位置し、この自由端5bから固定端5c側に所定幅の部分が中間転写ベルト20の裏面に接触する。この中間転写ベルト20の裏面に接触する部分における、転写シート5の中間転写ベルト20に接触しない側の面に接触するように、弾性部材15が配置される。そして、転写シート5は、自由端5bから固定端5c側に所定幅の中間転写ベルト20に接触する部分と、その部分より中間転写ベルト20の移動方向上流側の中間転写ベルト20に接触しない部分とが、中間転写ベルト20側に凸となるように折り曲げられている。転写シート5は、この折り曲げられた形状にて、弾性部材15の中間転写ベルト20側の面を覆っている。この状態で、弾性部材15が転写シート5を中間転写ベルト20に対して押圧し、転写シート5の中間転写ベルト20に接触する側の面が中間転写ベルト20の裏面に接触している。
【0062】
ここで、転写シート5は、上述のように、一方の面側でベルト体(本実施例では中間転写ベルト20)に接触する。転写シート5において、ベルト体に接触する側の面を「表面」とし、その反対側の面であるベルト体に接触しない側の面を「裏面」とする。このとき、転写シート5の表面は、ベルト体に接触する接触部5A、及び接触部5Aよりもベルト体の移動方向上流側に位置し接触部5Aに連続しているベルト体に接触しない非接触部5Bを備えている。そして、転写シート5の上記非接触5Bにおける、転写シート5の上記接触部5Aのベルト体の移動方向上流側の端部5A1に隣接する部分5B1を「接触部隣接表面」と呼ぶことにする。そして、転写シート5の接触部隣接表面から転写シート5の裏面に向かう方向の法線ベクトルと、重力方向のベクトルとのなす角度を「角度θ」と定義する。このとき、本実施例では、転写シート5とベルト体を構成する材料との静止摩擦係数μと、角度θとの間に、
μ<tanθ(但し、0≦θ≦90°)
の関係が成立する構成とする。このような構成とすることで、ベルト体の削れカスが異物として転写シート5とベルト体との間に挟まり込むことを抑制することができる。又、これによって、ベルト体の削れカスが異物として転写シート5とベルト体との間に挟まり込むことに起因する転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を抑制することができる。
【0063】
尚、縦白スジ上画像不良とは、中間転写ベルト20の移動方向と直交する方向における転写電流ムラに対応した転写ムラによって、中間転写ベルト20の移動方向(画像移動方向)に沿って部分的に画像濃度に薄いスジ状の画像不良が生じる現象である。これは、中間転写ベルト20の移動方向と直交する方向のいずれかの位置において、異物が転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込むことで生じる。
【0064】
本実施例では、図2に示すように、角度θは35°となっている。上述のように、本実施例では、転写シート5は、中間転写ベルト20に接触する接触部5Aと中間転写ベルト20に接触しない非接触部5Bとの連接部を折り曲げた形状を有する。そして、転写シート5の中間転写ベルト20に接触する側の面である表面は、上記接触部5Aと上記非接触部5Bとの間に変曲線5aを有している。
【0065】
尚、本実施例では、転写シート5は、シート状態で作成された後に、図2に示すような折り曲げた形状を安定して達成するため、次のようにして予め変形させた。即ち、転写シート5を構成するシートを型に保持しながら加熱してその形状を固定することで、転写シート5の所望の形状を得た。
【0066】
又、転写シート5を中間転写ベルト20に対して押圧する弾性部材15を用いない構成とすることもできる。即ち、保持部材16に固定された転写シート5を、転写シート5自体の弾力性によって中間転写ベルト20の裏面に接触するようにすることもできる。しかし、均一な転写圧力(転写部においてベルト体を像担持体に押圧する力)を確保するためには、弾性部材15を用いることが望ましい。特に、本実施例のように、転写シート5を折り曲げた構成とする場合には、弾性部材15を用いない構成では、均一な転写圧力を確保することが難しくなることがあるので、弾性部材15を用いることが望ましい。
【0067】
(4)作用
本実施例では、上述のように転写シート5を折り曲げた構成とすることで、転写シート5と中間転写ベルト20を構成する材料との静止摩擦係数μ=0.42と、角度θ=35°との間に、
μ<tanθ(≒0.7)
の関係が成り立っている。即ち、図3に示すように、角度θ=35°は、摩擦角よりも大きい。
【0068】
尚、本実施例では、図2及び図3に示すように、角度θ=35°は、転写シート5の中間転写ベルト20の移動方向上流側の表面(例えば、固定端5cに隣接する表面)と水平面との成す角度と略同一である。
【0069】
更に説明すると、画像形成装置100の使用に伴って発生した異物としての中間転写ベルト20の削れカスの中には、転写シート5の接触部隣接表面にとどまるものが発生する。この転写シート5の接触部隣接表面にとどまった削れカスは、中間転写ベルト20の駆動に伴った、中間転写ベルト20の張り面のわずかな上下動や1次転写部N1のわずかな上下動により、中間転写ベルト20と転写シート5とに挟まれる。そして、この中間転写ベルト20と転写シート5とに挟まれた削れカスが、転写シート5と中間転写ベルト20との接触部まで搬送され、結果的に、転写シート5と中間転写ベルト20との接触部に挟まってしまうことがある。このように中間転写ベルト20の削れカスが転写シート5と中間転写ベルト20との接触部に挟まってしまうと、転写不良(転写電流ムラに対応した転写ムラ)が起きる場合がある。
【0070】
従って、転写シート5と中間転写ベルト20との接触部の中間転写ベルト20の移動方向上流側端部の近傍(非接触部側)、即ち、転写シート5の接触部隣接表面には、異物としての中間転写ベルト20の削れカスがとどまらないことが望ましい。
【0071】
転写シート5の接触部隣接表面にとどまった異物としての中間転写ベルト20の削れカスには、主に重力と、反力としての転写シート5による垂直抗力と、クーロン力と、転写シート5と中間転写ベルト20の削れカスとの摩擦力とが働くことになる。このうち、クーロン力については、転写シート5の電気抵抗が低いことともあり、画像形成装置100が動作していない間に、中間転写ベルト20の削れカスは持っている電荷を消失し、結果的に、クーロン力は十分に小さくなっていく。
【0072】
従って、画像形成装置100が動作していない間を考えると、中間転写ベルト20の削れカスは、重力と、反力としての転写シート5による垂直抗力と、転写シート5と中間転写ベルト20の削れカスとの摩擦力とが働く。そのため、角度θ=35°が摩擦角よりも大きければ、中間転写ベルト20の削れカスは、転写シート5の接触部隣接表面にとどまることなく、重力によって転写シート5上を滑り落ちる。その結果、中間転写ベルト20の削れカスが異物として転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込むことによる転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を抑制することができる。
【0073】
尚、本実施例では、上述のように、画像形成終了時に中間転写ベルト20を画像形成動作時とは逆方向に回転させてから画像形成動作を終了する。この場合には、中間転写ベルト20と転写シート5との間に挟まり込んだ異物としての中間転写ベルト20の削れカスは、転写シート5の接触部隣接表面に排出することができる。従って、一旦転写ベルト5と中間転写ベルト20との間に挟まり込んだ異物としての中間転写ベルト20の削れカスは、中間転写ベルト20の逆回転によって排出される。その後、この異物は、上述の作用により、転写シート5の接触部隣接表面にとどまることなく、重力によって転写シート5上を滑り落ちる。その結果、中間転写ベルト20の削れカスが異物として転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込むことによる転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を更に効果的に抑制することができる。
【0074】
(5)画像出力実験結果
次に、本発明の効果を確認するための画像出力実験の結果について説明する。
【0075】
先ず、具体例1として、上述の本実施例の構成と同一の構成の画像形成装置により画像出力実験を行った。即ち、具体例1では、保持部材16に貼り付けた転写シート5を折り曲げて弾性部材15で中間転写ベルト20に対して加圧し、角度θ=35°である。
【0076】
印字耐久試験として、記録材にCS−814(Canon販売、商品名)を用い、Y、M、C、Bkの各色の印字率が4%の画像を用いて、20万枚の印刷を行った。耐久試験中には、耐久試験開始時と、その後2万枚おきに、画像サンプリングを行った。印字モードとしては普通紙モードを用いた。又、実験中の画像形成装置のプロセススピードは150mm/sec、スループットは1分間に25枚であった。尚、実験中は、中間転写ベルト20の逆回転は行わないようにした。サンプリング画像としては、記録材にCS−814(Canon販売、商品名)を用いて、Y、M、C、Bk、R(レッド)、B(ブルー)、G(グリーン)の各色のベタ画像(最高濃度レベルの画像)、ハーフトーン画像を出力した。サンプリング画像から画像評価を行い、縦白スジ状画像不良の観点でランク付け評価を行った。ランク付けは、画像不良がまったく発生しない場合を○、わずかに確認できる場合を○△、確認できる場合を△、少し悪い場合を△×、悪い場合を×として行った。尚、実験を行った雰囲気環境は、温度23℃、湿度50%であった。
【0077】
評価結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
具体例1では、縦白スジ状の画像不良は、16万枚までは発生することはなかった(○)。又、18万枚からわずかに確認(○△)され、20万枚の耐久試験終了時においてもわずかに確認できるレベル(○△)で発生するだけであった。
【0080】
次に、本実施例の画像形成装置から1次転写手段の構成を変更した画像形成装置により画像出力実験を行った。
【0081】
比較例1として、転写シート5を次のような構成とすることで角度θ=15°としたことを除いて、本実施例の画像形成装置と実質的に同一の構成の画像形成装置により、画像出力実験を行った。即ち、比較例1では、図4に示すように、保持部材16に貼り付けた転写シート5を折り曲げることなく弾性部材15で中間転写ベルト20に対して加圧した。そのため、転写シート5と中間転写ベルト20との接触部の中間転写ベルト20の移動方向下流側の端部から中間転写ベルト20の移動方向上流側へと、転写シート5の表面はなだらかにその傾斜を増していく。そのため、転写シート5の接触部隣接表面から転写シート5の裏面に向かう方向の法線ベクトルと、重力方向のベクトルとのなす角度θは、15°となっている。
【0082】
又、比較例2として、転写シート5を次のような構成とすることで角度θ=20°としたことを除いて、本実施例の画像形成装置と実質的に同一の構成の画像形成装置により、画像出力実験を行った。即ち、比較例2では、比較例1と同様に、保持部材16に貼り付けた転写シート5を折り曲げることなく弾性部材15で中間転写ベルト20に対して加圧した。
【0083】
又、具体例2として、角度θ=25°としたことを除いて本実施例の画像形成装置と実質的に同一の構成の画像形成装置により画像出力実験を行った。即ち、具体例2では、本実施例と同様に、保持部材16に貼り付けた転写シート5を折り曲げて弾性部材15で中間転写ベルト20に対して加圧した。
【0084】
評価方法は、上述の具体例1の場合の評価方法と同一である。
【0085】
評価結果を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
比較例1では、縦白スジ状の画像不良は、12万枚までは発生することはなかった(○)。又、14万枚からわずかに確認(○△)され、16万枚でレベルが1ランク悪化(△)し、18万枚で更にレベルが1ランク悪化(△×)し、20万枚の耐久試験終了時においても少しレベルの悪いレベル(△×)で発生した。
【0088】
又、比較例2では、縦白スジ状の画像不良は、12万枚までは発生することはなかった(○)。又、14万枚からわずかに確認(○△)され、16万枚でレベルが1ランク悪化(△)し、18万枚で更にレベルが1ランク悪化(△×)し、20万枚の耐久試験終了時においても少しレベルの悪いレベル(△×)で発生した。即ち、比較例1と同様の評価結果であった。
【0089】
一方、具体例2では、縦白スジ状の画像不良は、16万枚までは発生することはなかった(○)。又、18万枚からわずかに確認(○△)され、20万枚の耐久試験終了時においてもわずかに確認できるレベル(○△)で発生するだけであった。即ち、具体例1と同様の評価結果であった。
【0090】
尚、別の実験として、上記同様の耐久試験を行って、縦白スジ状画像不良が発生した際に画像形成装置を停止して、1次転写手段を分解して転写シート5と中間転写ベルト20との接触部を観察した。その結果、比較例1、2では、「○△」、「△」、「△×」レベルの場合に、主に中間転写ベルト20の削れカス(大きさが50〜300μm程度のPENの粉)が転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込んでいることが確認された。具体例1、2では、「○△」レベルの場合に、中間転写ベルト20の削れカスはほとんどみられないが、駆動ローラ21(或いは2次転写対向ローラ23)の削れカス(後述)が転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込んでいることが確認された。そして、それぞれの場合に、観察された削れカスを除去した後1次転写手段を再度組み立てて、引き続き画像出力実験を行うと、縦白スジ状画像不良は解消された。
【0091】
以上の結果から、角度θが20°と25°との間で大きく現象が良化していることが分かる。これは、次の理由によるものである。即ち、本実施例の設定では、転写シート5と中間転写ベルト5を構成する材料との静止摩擦係数μが0.42である。又、そこから算出される摩擦角が約23°(tan23°=0.424)である。このことから、角度θが20°と25°との間で、摩擦角よりも角度θが大きくなる。これにより、画像形成装置100の使用に伴って発生した異物としての中間転写ベルト20の削れカスが転写シート5の接触部隣接表面にとどまり、この異物が転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込むことを抑制する効果が飛躍的に向上する。その結果、転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を抑制する効果が飛躍的に向上する。
【0092】
(6)まとめ
以上説明したように、本実施例では、転写シート5と中間転写ベルト20を構成する材料との静止摩擦係数μと、角度θとの間に、μ<tanθ(但し、0≦θ≦90°)の関係が成立する構成とする。これにより、画像形成装置100の使用に伴って発生した異物としての中間転写ベルト20の削れカスが転写シート5の接触部隣接表面にとどまり、この異物が転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込むことを抑制することができる。その結果、転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を抑制することができる。
【0093】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0094】
本実施例では、中間転写ベルト20の張架ローラ(本実施例では駆動ローラ21、テンションローラ22、2次転写対向ローラ23)の削れカスによる転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)をも抑制することを目的とする。
【0095】
ここで、転写シート5と、画像形成装置100の使用に伴って異物としての削れカスを発生するベルト体及びベルト体の張架ローラを構成する材料との静止摩擦係数の中で最大のものを「最大静止摩擦係数μmax」と呼ぶことにする。このとき、本実施例では、最大静止摩擦係数μmaxと、角度θとの間に、
μmax<tanθ(但し、0≦θ≦90°)
の関係が成立する構成とする。このような構成とすることで、ベルト体及びベルト体の張架ローラから発生する削れカスが異物として転写シート5とベルト体との間に挟まり込むことを抑制することができる。又、これによって、ベルト体及びベルト体の張架ローラから発生する削れカスが異物として転写シート5とベルト体との間に挟まり込むことに起因する転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を抑制することができる。
【0096】
尚、本実施例では、ベルト体は中間転写ベルト20である。又、本実施例では、ベルト体の張架ローラのうち駆動ローラ21から画像形成装置100の使用に伴って異物としての削れカスが発生しやすい。
【0097】
図5は、本実施例における1次転写手段の構成を示す。尚、本実施例では、第1〜第4の画像形成部1Y、1M、1C、1Bkの1次転写手段の構成は実質的に同一である。図5に示すように、本実施例における1次転写手段の構成は、実施例1のものと同様であるが、以下のような点が異なる。
【0098】
転写シート5は、弾性部材15の側面に沿って配設され、折り曲げた形状にて、弾性部材15の中間転写ベルト20側の面を覆っている。この状態で、弾性部材15が転写シート5を中間転写ベルト20に対して押圧し、転写シート5の表面が中間転写ベルト20の裏面に接触している。図示の通り、本実施例では、転写シート5は、中間転写ベルト20との接触部の中間転写ベルト20の移動方向上流側端部の近傍で中間転写ベルト20側に凸となるように折り曲げられている。更に、本実施例では、転写シート5は、その折り曲げ部よりも中間転写ベルト20の移動方向上流側において中間転写ベルト20とは反対側に凸となるように湾曲させられている。
【0099】
そして、本実施例では、図5に示すように、角度θは75°となっている。上述のように、本実施例では、転写シート5は、中間転写ベルト20に接触する接触部5Aと中間転写ベルト20に接触しない非接触部5Bとの連接部を折り曲げた形状を有する。そして、転写シート5の中間転写ベルト20に接触する側の面である表面は、上記接触部と上記非接触部との間に変曲線5aを有している。
【0100】
尚、本実施例では、転写シート5は、シート状態で作成された後に、図5に示すような折り曲げた形状を安定して達成するため、次のような構成とする。即ち、図6に示すように、転写シート5と中間転写ベルト20との接触部の中間転写ベルト20の移動方向上流側の端部となる位置において、所定の深さ(例えば転写シート5の厚さの略半分の深さ)のスリット(ハーフカット)5Sを施す。そして、このスリット5Sが設けられた面が裏面になるように折り曲げることで所望の形状を得た。
【0101】
尚、上記とは逆に、図7に示すように、スリット5Sが設けられた面が表面になるように折り曲げて用いても良い。
【0102】
本実施例のようなスリット5Sを施す方法は、実施例1のように型に保持しながら加熱する方法と比較して、画像形成装置100の使用に伴った波うちがより発生し難いという点で有利である。これは、実施例1の方法では、転写シート5を曲げる際に、その転写シート5において伸びの発生した箇所と縮みの発生した箇所が存在し、長手方向における伸び縮みのわずかなムラにより、シート形状の安定性が損なわれる可能性があるためである。スリット5Sを施すことで、伸びの発生した箇所と縮みの発生した箇所を減らすことができるため、画像形成装置100の使用に伴った波うちが発生し難くなる。換言すれば、本実施例のようなスリット5Sを施す方法は、実施例1のように型に保持しながら加熱する方法と比較して、角度θを大きくしやすいという点で有利である。
【0103】
本実施例では、μmaxは、転写シート5と、画像形成装置100の使用に伴って異物としての削れカスを発生する、駆動ローラ21を構成する材料であるゴム(具体的にはEPDMにカーボンブラックを分散させた導電性ゴム)との静止摩擦係数が示す。本実施例では、転写シート5と駆動ローラ21を構成する導電性ゴム(テストピース)との静止摩擦係数は0.79であった。
【0104】
尚、本実施例では、駆動ローラ21と2次転写対向ローラ23とは同様の構成とされ、2次転写対向ローラ23の導電性ゴムと転写シート5との静止摩擦係数は、駆動ローラ21の導電性ゴムと転写シート5との静止摩擦係数と実質的に同じである。ここでは、本実施例の画像形成装置100においてより削れカスが発生し易い駆動ローラ21を構成する材料が上記最大静止摩擦係数μmaxを示すものとして説明する。
【0105】
ここで、転写シートの相手材としてのベルト体の張架ローラを構成する材料とは、張架ローラが単一材料であれば、その材料と同一材料のテストピースである。又、張架ローラが芯金とその上の単一又は複数の層から成るなど、複数の材料で構成される場合は、ベルト体の内周面と摩擦係合するべく、ベルト体の内周面に対して露出している部分の材料と同一材料のテストピースである。この部分の材料が、画像形成装置の使用に伴って異物としての削れカスを生じるからである。
【0106】
上述のように、本明細書において、静止摩擦係数は、JIS−K7125(面圧:0.005MPa)に準拠して測定した値である。より具体的には、転写シート5を構成する材料と、駆動ローラ21を構成するゴムとの静止摩擦係数は、次のようにして測定した。即ち、転写シートのシートサンプルと、駆動ローラ21を構成する導電性ゴムのテストピースを用いて、新東科学(株)製表面性試験機(HEIDON−14DR)を使用して面圧を0.005MPa、引張速度1m/minの条件にて測定した。
【0107】
本実施例では、上述のように転写シート5を折り曲げた構成とすることで、転写シート5と駆動ローラ21を構成するゴムとの静止摩擦係数μmax=0.79と、角度θ=75°との間に、
μmax<tanθ(≒3.7)
の関係が成り立っている。即ち、実施例1と同様に、角度θ=75°は、摩擦角よりも大きい。
【0108】
尚、本実施例では、図5に示すように、角度θ=75°は、転写シート5の中間転写ベルト20の移動方向上流側の表面(例えば、固定端5cに隣接する表面)と水平面との成す角度(実施例1と同じ35°)よりも大きい。
【0109】
従って、画像形成装置100の使用に伴って発生した、異物としての駆動ローラ21の削れカスは、転写シート5の接触部隣接表面にとどまることなく、重力によって転写シート5上を滑り落ちる。その結果、駆動ローラ21の削れカスが異物として転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込むことによる転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を抑制することができる。
【0110】
ここで、本実施例では、転写シート5と中間転写ベルト20を構成する材料との静止摩擦係数μ(=0.42)<tanθ(≒3.7)の関係が成り立っている。従って、実施例1と同様に、異物としての中間転写ベルト20の削れカスに対しても上記駆動ローラ21の削れカスに対するものと同様の効果が得られる。
【0111】
尚、実施例1と同様に、中間転写ベルト20の逆回転を行うことで、一旦転写ベルト5と中間転写ベルト20との間に挟まり込んだ異物は、排出された後に上述の作用により転写シート5上を滑り落ちる。従って、転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を更に効果的に抑制することができる。
【0112】
次に、本発明の効果を確認するための画像出力実験の結果について説明する。
【0113】
先ず、具体例3として、上述の本実施例の構成と同一構成の画像形成装置により画像出力実験を行った。即ち、具体例3では、保持部材16に貼り付けた転写シート5を折り曲げて弾性部材15で中間転写ベルト20に対して加圧し、角度θ=75°である。
【0114】
又、具体例4として、角度θ=55°としたことを除いて本実施例の画像形成装置と実質的に同一の構成の画像形成装置により画像出力実験を行った。即ち、具体例4では、本実施例と同様に、保持部材16に貼り付けた転写シート5を折り曲げて弾性部材15で中間転写ベルト20に対して加圧した。
【0115】
評価方法は、実施例1において説明した評価方法と同一である。
【0116】
評価結果を表3に示す。尚、表3には、実施例1において説明した具体例1、比較例1についての評価結果も併せて示す。
【0117】
【表3】
【0118】
具体例3及び具体例4では、縦白スジ状の画像不良は20万枚の耐久終了まで発生することはなかった。
【0119】
ここで、具体例3と具体例4との両者で評価結果に差は出なかった。しかし、中間転写ベルト20の削れカスや駆動ローラ21の削れカス以外の異物に対して同様の効果がより得られるのは具体例3の構成の方である。中間転写ベルト20の削れカスや駆動ローラ21の削れカス以外の異物としては、例えば、画像形成装置の使用に伴って中間転写ベルト20の内周面側に侵入することのある異物である、粉塵、トナー、紙粉、その他画像形成装置全般の削れ粉が挙げられる。この理由は、具体例3の構成の方が、転写シート5の接触部隣接表面にその異物が到来した場合に、その異物が重力によって転写シート5上を滑り落ちる力がより大きくなるからである。
【0120】
尚、実施例1で説明したように、別の実験として、上記同様の耐久試験を行って、縦白スジ状画像不良が発生した際に画像形成装置を停止して、1次転写手段を分解して転写シート5と中間転写ベルト20との接触部を観察した。その結果、比較例1では、「○△」、「△」、「△×」レベルの場合に、主に中間転写ベルト20の削れカス(前述)が転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込んでいることが確認された。具体例1では、「○△」レベルの場合に、中間転写ベルト20の削れカスはほとんどみられない。しかし、駆動ローラ21(或いは2次転写対向ローラ23)の削れカス(大きさが50〜300μm程度の導電性ゴムの粉)が転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込んでいることが確認された。そして、それぞれの場合に、観察された削れカスを除去した後1次転写手段を再度組み立てて、引き続き画像出力実験を行うと、縦白スジ状画像不良は解消された。尚、具体例3、4では、耐久試験終了後に上記同様の観察を行ったが、中間転写ベルト20、駆動ローラ21のいずれの削れカスも転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込んでいることは確認されなかった。
【0121】
以上の結果から、角度θが15°と35°の間で大きく現象が良化し、更に、角度θが35°と55°の間で現象が良化していることが分かる。
【0122】
角度θが15°と35°の間で大きく現象が良化しているのは、実施例1で説明したのと同じ理由によるものであり、実施例1で説明したように、より詳細には、角度θが20°と25°との間で大きく現象が良化している。
【0123】
一方、角度θが35°と55°との間で現象が大きく良化したのは、次の理由によるものである。即ち、本実施例の設定では、転写シート5と駆動ローラ21を構成するゴムとの静止摩擦係数(最大静止摩擦係数)μmaxが0.79である。又、そこから算出される摩擦角が約38°(tan38°=0.781)である。このことから、角度θが35°と55°との間で、摩擦角よりも角度θが大きくなる。これにより、画像形成装置100の使用に伴って発生した異物としての駆動ローラ21の削れカスが転写シート5の接触部隣接表面にとどまり、この異物が転写シート5と中間転写ベルト20との間に挟まり込むことを抑制する効果が飛躍的に向上する。その結果、転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を抑制する効果が飛躍的に向上する。
【0124】
以上説明したように、本実施例では、最大摩擦係数μmaxとしての転写シート5と駆動ローラ21を構成するゴムとの静止摩擦係数と、角度θとの間に、μmax<tanθ(但し、0≦θ≦90°)の関係が成立する構成とする。これにより、画像形成装置の使用に伴って発生した異物としての中間転写ベルト20及び駆動ローラ21から発生する削れカスが、転写シート5の接触部隣接表面にとどまり、この異物が転写シートと中間転写ベルトとの間に挟まり込むことを抑制することができる。その結果、転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を抑制することができる。
【0125】
実施例3
次に、本発明に係る画像形成装置の更に他の実施例について説明する。
【0126】
本実施例では、画像形成装置は、電子写真方式を用いて感光ドラム上に形成されたトナー像を記録材担持体としての無端ベルト状の記録材搬送ベルト上に担持された記録材上に順次重ね合わせて転写する直接転写方式のフルカラープリンタである。
【0127】
図8は、本実施例の画像形成装置の全体構成を示す模式的な断面図である。尚、図1を参照して実施例1にて説明した中間転写方式の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0128】
本実施例の画像形成装置100は、図1に示す中間転写方式の画像形成装置100における中間転写ベルト20に代えて、記録材担持体としての無端ベルト状の記録材搬送ベルト35を有する。記録材搬送ベルト35は、各感光ドラム2Y、2M、2C、2Bkに対向して設置されている。記録材搬送ベルト35は、複数の支持部材(張架ローラ)としての駆動ローラ21、テンションローラ(加圧ローラ)22により張架されている。記録材搬送ベルト35は、テンションローラ22に対する加圧手段(図示せず)によりテンションがかけられており、駆動装置(図示せず)によって回転駆動される駆動ローラ21により、図中矢印R2方向(時計方向)に周回移動(回転)させられる。各画像形成部1Y、1M、1C、1Bkの転写手段を構成する各転写シート5Y、5M、5C、5Bkは、記録材搬送ベルト35の内周面(裏面)側に配置されている。各転写シート5Y、5M、5C、5Bkは加圧手段によって記録材搬送ベルト35の裏面に対して押圧されている。これにより、各感光ドラム2Y、2M、2C、2Bkと記録材搬送ベルト35との接触領域である各転写部(転写ニップ)NY、NM、NC、NBkが形成されている。
【0129】
第1の画像形成部1Yの上流側において、テンションローラ22に対向する位置には、記録材Pを記録材搬送ベルト35上に静電吸着させる吸着部材としての吸着ローラ36が設置されている。
【0130】
例えばフルカラー画像形成モードでは、各感光ドラム2上のトナー像の形成タイミングに合わせて、給紙ローラ(レジストローラ)13で搬送された記録材Pが記録材搬送ベルト35に送られ、各画像形成部1の各転写部Nに順次に搬送される。そして、各感光ドラム2上のトナー像は、各転写部Nにおいて転写シート5に転写電源40からトナーの正規の帯電極性とは逆極性の転写電圧(転写バイアス)が印加されることで、記録材搬送ベルト35上の記録材P上に順次に重ね合わせるようにして転写される。尚、記録材Pは、駆動ローラ21の駆動によって移動される記録材搬送ベルト35の表面に、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の吸着電圧(吸着バイアス)が印加された吸着ローラ36によって静電吸着される。
【0131】
トナー像が形成された記録材Pは、記録材搬送ベルト35の表面から分離されて、定着装置12に搬送される。そして、定着装置12によってトナー像が定着された後に、画像形成装置100の外部に排出される。
【0132】
記録材搬送ベルト35は、通常は表面にトナー像を直接担持させることはない。しかし、ジャム(記録材が装置内で搬送途中に詰まること)時や非画像部への地かぶりなどによって、記録材搬送ベルト35上に汚染トナーが付着することがある。或いは、濃度検知やカラーレジストレーション補正などの動作時に記録材搬送ベルト35上に直接検知用パッチを担持することがある。このような記録材搬送ベルト35上のトナーを清掃するために、次のような清掃工程が、所定のタイミングで行われる。即ち、清掃工程では、各画像形成部1Y、1M、1C、1Bkにて各転写シート5a、5b、5c、5dに、転写時とは逆極性のクリーニング電圧(クリーニングバイアス)を印加する。そして、記録材搬送ベルト35上の汚染トナーを各感光ドラム2a、2b、2c、2dに転移し、ドラムクリーニング装置6a、6b、6c、6dに回収する。
【0133】
本実施例では、4つの画像形成部1Y、1M、1C、1Bkは、記録材搬送ベルト35の記録材担持面の移動方向に沿って一定の間隔をおいて斜めに一例に配置されている。
【0134】
記録材搬送ベルト35の材料、構造は、実施例1にて説明した中間転写ベルト20と同じとすることができる。本実施例の記録材搬送ベルト35の材料、構造は、実施例1における中間転写ベルト20と実質的に同一である。
【0135】
又、張架ローラとしての駆動ローラ21及びテンションローラ22の材料、構造も、実施例1のものと同じとすることができる。本実施例の駆動ローラ21及びテンションローラ22の材料、構造は、実施例1におけるものと実質的に同一である。
【0136】
尚、本実施例では、実施例1において中間転写ベルト20について行ったのと同様にして、画像形成終了時に記録材搬送ベルト35を画像形成動作時とは逆方向に回転させてから画像形成動作を終了する。
【0137】
図9は、本実施例における転写手段の構成を示す。尚、本実施例では、第1〜第4の画像形成部1Y、1M、1C、1Bkの転写手段の構成は実質的に同一である。図9に示すように、本実施例における転写手段の構成は、実施例1における1次転写手段の構成と同様であるが、以下のような点が異なる。
【0138】
弾性部材15は、転写シート5を、記録材搬送ベルト35(記録材Pが転写部Nにあるときは更に記録材P)を介して感光ドラム2に押圧している。転写シート5は、保持部材16の上流側側面の一部に両面テープにて取り付けられており、転写シート5を折り曲げた形状にて、弾性部材15の記録材搬送ベルト35側の面覆っている。この状態で、弾性部材15が転写シート5を記録材搬送ベルト35に対して押圧し、転写シート5の表面が記録材搬送ベルト35の裏面に接触している。
【0139】
そして、本実施例では、図9に示すように、角度θは85°となっている。ここで、実施例1、2において説明した、角度θ、静止摩擦係数μ、最大静止摩擦係数μmaxの定義におけるベルト体は、本実施例では記録材搬送ベルト35である。
【0140】
尚、本実施例では、転写シート5は、シート状態で作成された後に、図9に示すような折り曲げた形状を安定して達成するため、実施例1と同様にして予め変形させた。即ち、転写シート5を構成するシートを型に保持しながら加熱してその形状を固定することで、転写シート5の所望の形状を得た。
【0141】
このように、本実施例では、図8に示すように各画像形成部1Y、1M、1C、1Bkを斜めに配列することで、実施例2のようにスリット(ハーフカット)を施さなくても、容易に角度θを大きくとることができる。
【0142】
本実施例では、転写シート5と記録材搬送ベルト35を構成する材料との静止摩擦係数μと、角度θとの間に、μ(=0.42)<tanθ(≒11.4)の関係が成り立っている。又、本実施例では、μmaxは、転写シート5と駆動ローラ21を構成するゴムとの静止摩擦係数が示す。そして、本実施例では、転写シート5と駆動ローラ21を構成するゴムとの静止摩擦係数μmaxと、角度θとの間に、μmax(=0.79)<tanθ(≒11.4)の関係も成り立っている。従って、実施例1、2で説明したように、本実施例においても、次のような効果が得られる。即ち、画像形成装置の使用に伴って発生した異物としての記録材搬送ベルト35及び駆動ローラ21から発生する削れカスが、転写シート5の接触部隣接表面にとどまり、この異物が転写シートと記録材搬送ベルト35との間に挟まり込むことを抑制する効果である。その結果、転写不良(異物に対応した縦白スジ状画像不良)を抑制することができる。
【0143】
その他の実施例
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0144】
例えば、上述の実施例では、本発明をカラー画像形成装置に適用したが、これに限定されるものではない。ベルト体に接触して配置されたシート状の転写部材を用いて、像担持体からベルト体又はベルト体に担持された記録材にトナーを転写するものであれば、モノクロ画像形成装置にも本発明を適用することができ、同様の効果が得られる。
【0145】
又、上述の実施例において、弾性部材15の形状は略直方体としたが、例えば、図10に示すように、他の形状であってもよい。即ち、上述の実施例では、略直方体の弾性部材15は、転写シート5のベルト体に接触する領域の裏面に接触して、当該領域をベルト体に対して押圧するものであった。図10の例では、上述の実施例における弾性部材15に相当する略直方体の部分に加えて、転写シート5の接触部隣接表面よりもベルト体の移動方向上流側に所定範囲の領域の転写シート5を裏面側から支持する部分を有する。図10の例では、弾性部材15は、上記両部分は一体的に形成されている。上述の実施例で説明した静止摩擦係数μ(又は最大静止摩擦係数μmax)と角度θとの関係が確保できていれば、同様の効果が得られる。
【0146】
又、上述の実施例では、μmaxは、転写シート5と駆動ローラ21を構成するゴムとの静止摩擦係数が示した。同様に、転写シート5とベルト体(中間転写ベルト20又は記録材搬送ベルト35)を構成する材料との静止摩擦係数がμmaxを示す場合には、当該μmaxと角度θが上記実施例で説明した関係を満たすようにすればよい。尚、上記実施例では、画像形成装置を使用することによって、ベルト体とベルト体の張架ローラの両方から異物として削れカスが発生する場合について説明した。しかし、実質的にベルト体とベルト体の張架ローラのいずれか一方からしか異物として削れカスが発生しない場合には、次にようにすればよい。即ち、削れカスが発生するベルト体又はベルト体の張架ローラを構成する材料のいずれか一方と転写シートとの間の静止摩擦係数μ(それがμmaxであるか否かに拘わらない)と、角度θとの間に、上述の実施例で説明した関係を満たすようにすればよい。
【0147】
又、上述の実施例では、画像形成終了時にベルト体を画像形成動作時とは逆方向に回転させてから画像形成動作を終了する構成について説明した。しかし、この逆回転を行わない構成においても、上述の実施例で説明した静止摩擦係数μ(又は最大静止摩擦係数μmax)と角度θとの関係が確保できていれば、同様の効果が得られる。
【0148】
又、上述の実施例で説明した静止摩擦係数μ(又は最大静止摩擦係数μmax)と角度θとの関係を確保することで、ベルト体、ベルト体の張架ローラ以外の異物に対しても、同様の効果を得られる。転写シートの接触部隣接表面にその異物が到来した場合に、その異物が重力によって転写シート上を滑り落ちる力が働きやすくなるからである。ベルト体の張架ローラ以外の異物としては、例えば、画像形成装置の使用に伴ってベルト体の内周面に侵入することのある異物である、粉塵、トナー、紙粉、その他画像形成装置全般の削れ粉が挙げられる。
【0149】
又、実施例3において、ベルト体として記録材搬送ベルトを用いる場合において、各画像形成部が斜めに配列されている構成について説明した。しかし、ベルト体として中間転写ベルトを用いる場合においても、各画像形成部を斜めに配列することができる。この場合も、実施例3で説明したように、容易に角度θを大きくとることが可能となる。
【符号の説明】
【0150】
1 画像形成部
2 感光ドラム
5 転写シート(シート状の転写部材)
15 弾性部材(加圧手段)
16 保持部材
20 中間転写ベルト(ベルト体)
21 駆動ローラ
22 テンションローラ
23 2次転写対向ローラ
24 2次転写ローラ
35 記録材搬送ベルト(ベルト体)
40 一次転写電源(転写電源)
P 記録材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーを担持する像担持体と、
複数のローラによって張架され、前記像担持体に接触して移動可能なベルト体と、
前記ベルト体の前記像担持体と接触する面とは反対側の面に、一方の面側で接触するシート状の転写部材であって、前記ベルト体に接触する側の面は、前記ベルト体に接触する接触部、及び前記接触部よりも前記ベルト体の移動方向上流側に位置し前記接触部に連続している前記ベルト体に接触しない非接触部を備えるシート状の転写部材と、
を有し、
前記シート状の転写部材に電圧が印加されることにより、前記像担持体から、前記移動方向に移動する前記ベルト体又は前記移動方向に移動する前記ベルト体に担持された記録材にトナーが転写される画像形成装置において、
前記シート状の転写部材と前記ベルト体の材料との静止摩擦係数をμとして、
前記非接触部における前記接触部の前記ベルト体の移動方向上流側の端部に隣接する部分から、前記シート状の転写部材の前記ベルト体に接触しない側の面に向かう方向の法線ベクトルと、重力方向のベクトルとのなす角度をθとしたとき、
μ<tanθ(但し、0≦θ≦90°)
の関係が成立することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
トナーを担持する像担持体と、
複数のローラによって張架され、前記像担持体に接触して移動可能なベルト体と、
前記ベルト体の前記像担持体と接触する面とは反対側の面に、一方の面側で接触するシート状の転写部材であって、前記ベルト体に接触する側の面は、前記ベルト体に接触する接触部、及び前記接触部よりも前記ベルト体の移動方向上流側に位置し前記接触部に連続している前記ベルト体に接触しない非接触部を備えるシート状の転写部材と、
を有し、
前記シート状の転写部材に電圧が印加されることにより、前記像担持体から、前記移動方向に移動する前記ベルト体又は前記移動方向に移動する前記ベルト体に担持された記録材にトナーが転写される画像形成装置において、
前記シート状の転写部材と前記ローラの材料との静止摩擦係数をμとして、
前記非接触部における前記接触部の前記ベルト体の移動方向上流側の端部に隣接する部分から、前記シート状の転写部材の前記ベルト体に接触しない側の面に向かう方向の法線ベクトルと、重力方向のベクトルとのなす角度をθとしたとき、
μ<tanθ(但し、0≦θ≦90°)
の関係が成立することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
トナーを担持する像担持体と、
複数のローラによって張架され、前記像担持体に接触して移動可能なベルト体と、
前記ベルト体の前記像担持体と接触する面とは反対側の面に、一方の面側で接触するシート状の転写部材であって、前記ベルト体に接触する側の面は、前記ベルト体に接触する接触部、及び前記接触部よりも前記ベルト体の移動方向上流側に位置し前記接触部に連続している前記ベルト体に接触しない非接触部を備えるシート状の転写部材と、
を有し、
前記シート状の転写部材に電圧が印加されることにより、前記像担持体から、前記移動方向に移動する前記ベルト体又は前記移動方向に移動する前記ベルト体に担持された記録材にトナーが転写される画像形成装置において、
前記シート状の転写部材と、前記ベルト体及び前記ローラの材料のそれぞれとの静止摩擦係数のうち最大のものをμmaxとして、
前記非接触部における前記接触部の前記ベルト体の移動方向上流側の端部に隣接する部分から、前記シート状の転写部材の前記ベルト体に接触しない側の面に向かう方向の法線ベクトルと、重力方向のベクトルとのなす角度をθとしたとき、
μmax<tanθ(但し、0≦θ≦90°)
の関係が成立することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記シート状の転写部材は、前記接触部と前記非接触部との連接部を折り曲げた形状を有し、前記シート状の転写部材の前記ベルト体に接触する側の面は、前記接触部と前記非接触部との間に変曲線を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像を出力した後に当該画像形成装置の動作を停止する際に、前記ベルト体を前記移動方向とは逆方向に移動させた後に当該画像形成装置の動作を停止することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
トナーを担持する像担持体と、
複数のローラによって張架され、前記像担持体に接触して移動可能なベルト体と、
前記ベルト体の前記像担持体と接触する面とは反対側の面に、一方の面側で接触するシート状の転写部材であって、前記ベルト体に接触する側の面は、前記ベルト体に接触する接触部、及び前記接触部よりも前記ベルト体の移動方向上流側に位置し前記接触部に連続している前記ベルト体に接触しない非接触部を備えるシート状の転写部材と、
を有し、
前記シート状の転写部材に電圧が印加されることにより、前記像担持体から、前記移動方向に移動する前記ベルト体又は前記移動方向に移動する前記ベルト体に担持された記録材にトナーが転写される画像形成装置において、
前記シート状の転写部材と前記ベルト体の材料との静止摩擦係数をμとして、
前記非接触部における前記接触部の前記ベルト体の移動方向上流側の端部に隣接する部分から、前記シート状の転写部材の前記ベルト体に接触しない側の面に向かう方向の法線ベクトルと、重力方向のベクトルとのなす角度をθとしたとき、
μ<tanθ(但し、0≦θ≦90°)
の関係が成立することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
トナーを担持する像担持体と、
複数のローラによって張架され、前記像担持体に接触して移動可能なベルト体と、
前記ベルト体の前記像担持体と接触する面とは反対側の面に、一方の面側で接触するシート状の転写部材であって、前記ベルト体に接触する側の面は、前記ベルト体に接触する接触部、及び前記接触部よりも前記ベルト体の移動方向上流側に位置し前記接触部に連続している前記ベルト体に接触しない非接触部を備えるシート状の転写部材と、
を有し、
前記シート状の転写部材に電圧が印加されることにより、前記像担持体から、前記移動方向に移動する前記ベルト体又は前記移動方向に移動する前記ベルト体に担持された記録材にトナーが転写される画像形成装置において、
前記シート状の転写部材と前記ローラの材料との静止摩擦係数をμとして、
前記非接触部における前記接触部の前記ベルト体の移動方向上流側の端部に隣接する部分から、前記シート状の転写部材の前記ベルト体に接触しない側の面に向かう方向の法線ベクトルと、重力方向のベクトルとのなす角度をθとしたとき、
μ<tanθ(但し、0≦θ≦90°)
の関係が成立することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
トナーを担持する像担持体と、
複数のローラによって張架され、前記像担持体に接触して移動可能なベルト体と、
前記ベルト体の前記像担持体と接触する面とは反対側の面に、一方の面側で接触するシート状の転写部材であって、前記ベルト体に接触する側の面は、前記ベルト体に接触する接触部、及び前記接触部よりも前記ベルト体の移動方向上流側に位置し前記接触部に連続している前記ベルト体に接触しない非接触部を備えるシート状の転写部材と、
を有し、
前記シート状の転写部材に電圧が印加されることにより、前記像担持体から、前記移動方向に移動する前記ベルト体又は前記移動方向に移動する前記ベルト体に担持された記録材にトナーが転写される画像形成装置において、
前記シート状の転写部材と、前記ベルト体及び前記ローラの材料のそれぞれとの静止摩擦係数のうち最大のものをμmaxとして、
前記非接触部における前記接触部の前記ベルト体の移動方向上流側の端部に隣接する部分から、前記シート状の転写部材の前記ベルト体に接触しない側の面に向かう方向の法線ベクトルと、重力方向のベクトルとのなす角度をθとしたとき、
μmax<tanθ(但し、0≦θ≦90°)
の関係が成立することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記シート状の転写部材は、前記接触部と前記非接触部との連接部を折り曲げた形状を有し、前記シート状の転写部材の前記ベルト体に接触する側の面は、前記接触部と前記非接触部との間に変曲線を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像を出力した後に当該画像形成装置の動作を停止する際に、前記ベルト体を前記移動方向とは逆方向に移動させた後に当該画像形成装置の動作を停止することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−163717(P2012−163717A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23272(P2011−23272)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]