画像形成装置
【課題】少ない部品構成で定着部材を効率良く加熱し、定着部材の機械的負荷を軽減し、制御安定性、異常時における安全性を得られる定着装置とする。
【解決手段】定着装置は、定着部材51、加圧部材52、外部加熱装置130からなる。定着部材51は加圧部材52と圧接させる。外部加熱装置130で加熱された定着部材51と加圧部材52との圧接部である定着ニップに、未定着トナー画像が形成された用紙を通紙させ、トナーを加熱、加圧して用紙にトナー画像を定着させる。定着部材51を加熱する際の定着部材51への十分な加熱ニップを確保して機械的負荷を軽減し、外部加熱装置130の温度制御、定着部材51の温度を安定させること加え、異常発生時の安全性を確保するために、筒状スリーブ部材133と加熱ベルト132を用いて加熱する。筒状スリーブ部材133は、定着部材51の外周形状に倣う形態で凹形状を有する。
【解決手段】定着装置は、定着部材51、加圧部材52、外部加熱装置130からなる。定着部材51は加圧部材52と圧接させる。外部加熱装置130で加熱された定着部材51と加圧部材52との圧接部である定着ニップに、未定着トナー画像が形成された用紙を通紙させ、トナーを加熱、加圧して用紙にトナー画像を定着させる。定着部材51を加熱する際の定着部材51への十分な加熱ニップを確保して機械的負荷を軽減し、外部加熱装置130の温度制御、定着部材51の温度を安定させること加え、異常発生時の安全性を確保するために、筒状スリーブ部材133と加熱ベルト132を用いて加熱する。筒状スリーブ部材133は、定着部材51の外周形状に倣う形態で凹形状を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置に関し、より詳細には、ベルトを用いて外部から定着ローラを加熱する外部加熱方式の定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンターや複写機、ファクシミリ等の電子写真画像形成方式を用いて記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、記録媒体上に転写されたトナー像を定着させて永久的な画像とすることが必要である。
【0003】
トナー像の定着方法としては、大きく分類すると、熱によりトナーを溶かし、さらに圧力により記録媒体に浸透させる方法や、トナーおよび記録媒体に大きな圧力を加えてトナーをつぶして記録媒体に付着させる方法、溶剤によりトナーを溶かして記録媒体に浸透させる方法等がある。
【0004】
現在、電子写真装置では、熱と圧力とを利用した定着方式が最も多く使用されている。
この理由は、比較的簡単な構成であり、また低速から高速まで幅広い範囲で安定した良好な定着性が得られるためである。例えば、ヒートロール方式の定着装置は、熱源を内包した加熱(定着)ローラと、加熱ローラに押圧接触する加圧ローラとから構成される。加熱ローラは、例えばアルミニウムや鉄等の金属を用いた円筒からなり、その周面には例えばシリコンゴムからなる弾性層と、最外周面に例えばPFA等からなる離型層が形成される。金属製の円筒の内部には、例えばハロゲンランプなどの輻射熱源が設けられる。
【0005】
このような構成の定着装置では、輻射熱源により加熱ローラの内部から加熱ローラ全体を加熱して、加圧ローラとの間にできる定着ニップにトナー像が転写された記録媒体を通過させ、トナーを溶融固着させる。そのため加熱ローラは、高い定着圧力に耐えるため肉厚の金属製の円筒から形成されており、その周面には、熱伝導性が数十〜数百W/m・Kの金属と比較して約0.5〜0.8W/m・Kと非常に小さいシリコンゴムからなる弾性層やPFA層等を設けているため、一般的に熱容量が大きく、特にカラー定着の場合にはウォームアップに数分の時間を要してしまう。このため、プリント待機時には定着装置を一定温度に保持することにより、プリント待機時からの復帰時間を短縮していた。
【0006】
しかし、この対応によって常時エネルギーを消費することになる。
このような問題に対し、消費電力を低減して加熱効率を向上させるため、輻射予備加熱方式の定着装置が提案されている(例えば、特許文献1)。すなわち図7(特許文献1の図6相当)に示すように、輻射予備加熱方式の定着装置210は、内部に熱源213aを有する外部加熱手段213により外部から表面が加熱される定着ローラ212と、定着ローラ212と平行に配置され、定着ローラ212の外周面を押圧して定着ニップを形成する加圧ローラ211とからなる。この定着装置210では、外部加熱手段213を定着前の記録材Pを搬送する搬送部の近傍に設けることにより、記録材Pを定着ニップに通紙させる前に外部加熱手段213の輻射熱を利用して記録材PおよびトナーTを予備加熱することができる。
【0007】
また、上述の問題に対して、多軸懸架ベルト加熱方式の定着装置が提案されている(例えば、特許文献2)。すなわち図8(特許文献1の図7相当)に示す多軸懸架ベルト加熱方式の定着装置220は、加熱源222aを有する定着ローラ222と、定着ローラ222に圧接する加圧ローラ221と、懸架ローラ223および加熱源224aを有する懸架ローラ224によって張架された無端ベルト225とからなる。このような構成の定着装置220は、容易に加熱ニップ幅を十分に長くする(すなわち加熱時間を長くする)ことができ、定着ローラ222に対する機械的負荷も小さい。
【0008】
また同様な効果が得られる別の構成としては、図9(特許文献1の図2相当)に示す単軸のベルト直接加熱方式が考えられる(例えば特許文献3)。定着ローラ231と、加圧ローラ232と、外部加熱部材233からなる。定着ローラ231は、用紙Pに転写されたトナー像を定着させるためのローラであり、後述する加圧ローラ232と圧接して設けられる。定着ローラ231は、定着ローラ回転軸231aと、弾性層231bと、離型層231cからなる。定着ローラ回転軸231aは、例えば金属製の芯金であって、外部の図示しない駆動部と接続されており、反時計回りに回転する。弾性層231bは、定着ローラ回転軸231aの周囲に設けられ、断熱性を有する材質の部材から形成されており、例えば発泡性シリコンゴム等からなる。離型層231cは、弾性層231bの周囲に形成され、離型層231cにトナーが付着しないように離型性を有する材質から生成されている。離型層231cは、例えばPFAやPTFE等のフッ素樹脂フィルムまたはこれらの材質のコーティングがなされて形成されている。また、弾性層231bと離型層231cとの間に、約0.2〜3mmの厚さを有する非発泡シリコンゴム層が設けられている。加圧ローラ232は、用紙Pに転写されたトナー像を定着させるための圧力を加えるローラであり、定着ローラ231と平行に圧接して設けられる。加圧ローラ232は、加圧ローラ回転軸232aと、弾性層232bとからなる。加圧ローラ回転軸232aは、加圧ローラ232の回転中心となる軸であり、例えば金属製の芯金であって、図示しない支持部材により回転可能に支持されている。加圧ローラ回転軸132bの周囲には、弾性層132bが形成される。弾性層232bは、断熱性を有する材質の部材から形成されており、例えば発泡性シリコンゴム等からなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した輻射予備加熱方式の定着装置210では、外部加熱手段213からの輻射熱や対流による記録材PおよびトナーTの予備加熱は、特にプリント速度が速い場合やカラー定着の場合において、記録材PおよびトナーTに与える加熱効果が非常に小さい。そのため、プリントの高速化やカラー化への対応が困難である。また、多軸懸架ベルト加熱方式の定着装置は、機構が複雑であるため製造コストが高く、懸架ローラを含めた加熱部全体の熱容量が大きい。従来の2ローラ定着器と比較してベルトを懸架するための懸架機構の部品数の多さからも、定着装置全体として部品数やコストが非常に高くなるという問題もある。
【0010】
一方上述の問題を解決するための単軸のベルト直接加熱方式は、定着ローラへの熱的、機械的負荷を軽減することの可能であるが、ベルトの熱容量が小さいが故、温度制御が難しく安定した温度が得られない、加熱源の異常連続点灯時の安全性に課題がある。他方ベルトの厚みを増して前記課題を解決可能であるが、ベルト剛性のため定着ローラとの密着幅が確保できずに伝熱効率が悪化する。
【0011】
そこで本発明においては、上記問題にかんがみ、少ない部品構成で定着部材への熱的、機械的負荷を軽減するとともに制御安定性、安全性を得ることの可能な、定着装置と、これを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の定着装置のうち請求項1に係るものは、定着部材と、前記定着部材と平行に配置され、前記定着部材と押圧接触する領域に搬送される記録媒体の未定着トナー像を定着させる加圧部材と、前記定着部材の周面を加熱する外部加熱装置とを備え、前記外部加熱装置は、内部に熱源を有する筒状スリーブ部材と、前記筒状スリーブ部材を内包する加熱ベルト部材にて構成され、前記定着部材に押圧されていることを特徴とする。
【0013】
同請求項2に係るものは、請求項1に記載の定着装置において、前記定着部材と前記外部加熱装置との接触する部分は、前記定着部材は円弧形状で前記外部加熱装置は、該円弧形状に倣った凹形状であることを特徴とする。
【0014】
同請求項3に係るものは、請求項1または2に記載の定着装置において、前記定着部材と前記外部加熱装置との接触する部分は、前記定着部材は円弧形状で前記外部加熱装置の該円弧形状に倣った凹形状を前記筒状スリーブ部材で形成していることを特徴とする。
【0015】
同請求項4に係るものは、請求項1から3のいずれかに記載の定着装置において、前記定着部材と前記外部加熱装置との接触する部分は、前記定着部材は円弧形状で前記外部加熱装置の該円弧形状に倣った凹形状を前記筒状スリーブ部材で形成するとともに、前記接触する部分に弾性部材を設けてあることを特徴とする。
【0016】
同請求項5に係るものは、請求項1または2に記載の定着装置において、前記定着部材と前記外部加熱装置との接触する部分は、前記定着部材は円弧形状で前記外部加熱装置の該円弧形状に倣った凹形状を前記加熱ベルト部材により形成していることを特徴とする。
【0017】
同請求項6に係る画像形成装置は、請求項1から5のいずれかに記載の定着装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、少ない部品構成で定着部材を効率良く加熱すること、定着部材の機械的負荷を軽減するとともに制御安定性、また異常時における安全性を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例に係るプリンタの構成を示す概略断面図
【図2】本発明の一実施例に係る定着装置の構成を示す概略断面図
【図3】本発明の一実施例に係る定着装置を構成する外部加熱装置の一例の断面図
【図4】加熱ニップ部の筒状スリーブ部材の凹部と加熱ベルトの間に弾性部材を介して加熱ニップを形成する例を示す断面図
【図5】筒状スリーブ部材の凹形状を定着部材の形状に倣わせる形状ではなく、定着部材から完全に退避させた形状とした例を示す断面図
【図6】加熱ニップ部の筒状スリーブ部材を排除し加熱ベルトを加熱源が直接加熱できる構成を示す断面図
【図7】輻射予備加熱方式の定着装置の従来例を示す断面図
【図8】多軸懸架ベルト加熱方式の定着装置の従来例を示す断面図
【図9】単軸のベルト直接加熱方式の定着装置の従来例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
定着部材の周面を加熱する外部加熱装置を、内部に熱源を有する筒状スリーブ部材と、この筒状スリーブ部材を内包する加熱ベルト部材にて構成し、定着部材に押圧されるようにする。また定着部材と外部加熱装置との接触する部分は、定着部材は円弧形状で外部加熱装置は、この円弧形状に倣った凹形状とすることができる。さらに、外部加熱部材の円弧形状に倣った凹形状を筒状スリーブ部材で形成することができる。それらにより少ない部品構成で定着部材を効率良く加熱すること、定着部材の機械的負荷を軽減するとともに制御安定性、また異常時における安全性を得られる。
【0021】
また定着部材と外部加熱装置との接触する部分は、定着部材は円弧形状で、外部加熱装置のこの円弧形状に倣った凹形状を筒状スリーブ部材で形成するとともに、接触部に弾性部材を設ける。外部加熱装置の該円弧形状に倣った凹形状を加熱ベルト部材により形成することができる。これにより、外部加熱装置と定着部材の密着性を向上させることで少ない部品構成で定着部材をより効率良く加熱すること、定着部材の機械的負荷を軽減するとともに制御安定性、また異常時における安全性を得ることができる。
【0022】
画像形成装置において前記定着装置を有する構成とすれば、やはり、少ない部品構成で定着部材をより効率良く加熱すること、定着部材の機械的負荷を軽減するとともに制御安定性、また異常時における安全性を得ることができる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を、画像形成装置であるカラーレーザプリンタ(以下、単に「プリンタ」という)に適用した実施例を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施例に係るプリンタの概略構成図である。このプリンタは、イエロー・シアン・マゼンタ・ブラックの4つの画像形成手段を横に並べて配置してタンデム画像形成部を構成する。タンデム画像形成部においては、個々のトナー像形成手段である画像形成手段101Y、101C、101M、101Kが、図中有左から順に配置されている。ここで、各符号の添字Y、C、M、Kは、それぞれイエロー、マゼンダ、シアン、黒用の部材であることを示す。また、タンデム画像形成部においては、個々画像形成手段101Y、C、M、Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体21Y、C、M、Kのまわりに、帯電装置、現像装置10Y、C、M、K、感光体クリーニング装置等を備えている。プリンタの上部には、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の各色トナーが充填されたトナーボトル2Y、C、M、Kが配置されている。そして、このトナーボトル2Y、C、M、Kから図示しない搬送経路によって、所定の補給量だけ各色現像装置10Y、C、M、K、に各色トナーが補給される。
【0024】
また、タンデム画像形成部の下部に潜像形成手段としての光書込ユニット9を設ける。この光書込ユニット9は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を備え、画像データに基づいて各感光体1の表面にレーザ光を走査しながら照射するように構成されている。
【0025】
タンデム画像形成部のすぐ上には、中間転写体として無端ベルト状の中間転写ベルト1を設けている。この中間転写ベルト1は、支持ローラ1a、1bに掛け回され、この支持ローラのうち駆動ローラ1aの回転軸には駆動源としての図示しない駆動モータが連結されている。この駆動モータを駆動させると、中間転写ベルト1が図中反時計回りに回転移動するとともに、従動可能な支持ローラ1bが回転する。中間転写ベルト10の内側には、感光体21Y、C、M、K上に形成されたトナー像を中間転写ベルト1上に転写するための一次転写装置11Y、C、M、Kを設ける。
【0026】
1次転写装置11Y、C、M、Kより中間転写ベルト1の駆動方向下流に2次転写装置としての2次転写ローラ5を設ける。この2次転写ローラ4と中間転写ベルト1を挟んで反対の側には、支持ローラ1bが配置されており、押部材としての機能を果たしている。また、給紙カセット8、給紙コロ7、レジストローラ6等を備えている。さらに、2次転写ローラ4によりトナー像を転写された記録媒体Sの進行方向に関して2次転写ローラ4の下流部には、記録媒体S上の画像を定着する定着装置5、排紙ローラ3を備えている。
【0027】
つぎに、上述の構成を有するプリンタの動作を説明する。
個々の画像形成手段でその感光体21Y、C、M、Kを回転し、感光体21Y、C、M、Kの回転とともに、まず帯電装置17Y、C、M、Kで感光体21Y、C、M、Kの表面を一様に帯電する。次いで画像データを光書込ユニット9からのレーザによる書き込み光を照射して感光体21Y、C、M、B上に静電潜像を形成する。その後、現像装置10Y、C、M、Kによりトナーが付着され静電潜像を可視像化することで各感光体21Y、C、M、K上にそれぞれ、イエロー・シアン・マゼンタ・ブラックの単色画像を形成する。また、不図示の駆動モータで駆動ローラ1aを回転駆動して他の従動ローラ1b、2次転写ローラ4を従動回転し、中間転写ベルト1を回転搬送して、その可視像を一次転写装置11Y、C、M、Kで中間転写ベルト1上に順次転写する。これによって中間転写ベルト1上に合成カラー画像を形成する。画像転写後の感光体21Y、C、M、Kの表面は感光体クリーニング装置で残留トナーを除去して清掃して再度の画像形成に備える。
【0028】
また、上述の画像形成のタイミングにあわせて、給紙カセット8からは記録媒体S先端が給紙コロ7により繰り出され、レジストローラ6まで搬送され、いったん停止する。そして、上記画像形成動作とタイミングを取りながら、二次転写ローラ4と中間転写ベルト1の間に搬送される。ここで、中間転写ベルト1と2次転写対向ローラ5とは記録媒体Sを挟んでいわゆる2次転写ニップを形成し、2次転写ローラ4にて中間転写ベルト10上のトナー像を記録媒体S上に2次転写する。
【0029】
画像転写後の記録媒体Sは定着装置5へと送り込まれ、加熱源53を有し、温度制御手段55によって表面を所定の温度に維持された定着部材51、定着部材51に対向し定着部材51に圧接される加圧部材52により形成されるニップ部に用紙を挟んで搬送することで用紙上のトナー像を加熱加圧し用紙に定着させる。またニップ部から排出された用紙は、排紙ローラ3から機外に排出される。一方、画像転写後の中間転写ベルト1は、中間転写体クリーニング装置12で、画像転写後に中間転写ベルト1上に残留する残留トナーを除去し、タンデム画像形成部による再度の画像形成に備える。
【0030】
本実施例に係る定着装置5は、図2に示すように、定着部材51と、加圧部材52と、外部加熱装置130からなる。定着部材51は、用紙Pに転写されたトナー像を定着させるための本実施例ではローラであり、後述する加圧部材52と圧接して設けられる。
【0031】
定着部材51の構成は、基材として金属製の芯金であって、外部の駆動部(図示せず)と接続されており、反時計回りに回転する。基材の外周には弾性層が設けられ、断熱性を有する材質の部材から形成されており、例えばシリコンゴム等からなる。さらに離型層は、弾性層の周囲に形成され、離型層にトナーが付着しないように離型性を有する材質から生成されている。離型層は、例えばPFAやPTFE等のフッ素樹脂フィルムまたはこれらの材質のコーティングがなされて形成されている。
【0032】
加圧部材52は、用紙Pに転写されたトナー像を定着させるための圧力を加える本実施例ではローラであり、定着部材51と平行に圧接して設けられる。加圧部材52の構成は、基材として例えば金属製の芯金であって、支持部材(図示せず)により回転可能に支持されている。加圧部材52の基材の周囲には、弾性層形成される。弾性層は、断熱性を有する材質の部材から形成されており、例えばシリコンゴム等からなる。また弾性層の周囲に形成され、離型層にトナーが付着しないように離型性を有する材質から生成されている。
【0033】
外部加熱装置130は、定着部材51を加熱する装置であって、図3に示すように、内部に熱源131を有する筒状スリーブ部材133とその外周に密着し摺動可能に配置されている加熱ベルト132とからなる。
【0034】
加熱ベルト132は、例えばハロゲンランプ等の熱源131により約150〜200℃に加熱された状態で連続使用されるため耐熱性を有するとともに、定着部材51と加熱ニップを形成するために定着部材51に押圧されることによりたわむような弾性を有する材質から形成される。加熱ベルト132は、例えば、熱容量の小さいステンレスやニッケル等の金属やPI等の耐熱樹脂から形成される。さらに、加熱ベルト132の外周面に、例えばPFAやPTFE等からなる離型層を形成してもよい。
【0035】
筒状スリーブ部材133は薄肉0.1mmから0.5mm程度の金属材、例えばステンレスやアルミニウム等により形成される。筒状形ではあるが無端である必要はない。その内面は加熱源131からの熱を効率よく吸収させるため黒色塗装が好ましい。外周面は加熱ベルト132と摺動することから表面にPFAやPTFE等からなる摺動層を形成してもよい。また摺動性向上のためグリス等の潤滑材を形成しても良い。
【0036】
このような構成の定着装置50は、外部加熱装置130によって加熱された定着部材51と加圧部材52との圧接部(以下、「定着ニップ」と言う。)に、未定着トナー画像が形成された用紙Pを通紙させることにより、トナーを加熱および加圧して用紙Pにトナー画像を定着させる。
【0037】
ここで、定着部材51を加熱する際の該定着部材51への十分な加熱ニップ確保と機械的負荷を軽減することと、外部加熱装置130の温度制御を安定させ、ひいては定着部材51の温度を安定させること加えて異常発生時の安全性を確保するために筒状スリーブ部材133と加熱ベルト132を用いて加熱することを特徴とする。
【0038】
本実施例に係る筒状スリーブ部材133は、定着部材51の外周形状に倣う形態で凹形状を有している。弾性のある加熱ベルト132を筒状スリーブ部材133の周長と略同一となるように設定することで定着部材51に押圧して加熱ベルト132をたわませ前記凹形状に倣わせることにより加熱ニップを形成する。
【0039】
外部加熱装置130を図示しない弾性部材による加圧力で定着部材51に押圧させると、加熱ベルト132は弾性変形して筒状スリーブ部材131と定着部材51の周面に沿うようにたわむ。このときの押圧力は加熱ベルト部材132をたわませる程度の軽い力ですむことから定着部材51への機械的負荷は小さいものとなる。同様に筒状スリーブ部材133にかかる負荷も小さいものとなり筒状スリーブ部材133の肉厚は自身の形状を維持できる程度で済む。その結果筒状スリーブ部材133は0.1mm程度の薄肉に形成することが可能となる。一方筒状スリーブ部材133を介することで加熱ベルト132単独で加熱する場合に比べると熱容量は大きくなる。その結果温度上昇速度は遅くなるが、温度制御は容易となる。定着部材51の熱容量を考え合わせた場合、筒状スリーブ部材133の熱容量は定着装置全体の昇温速度を大きく阻害するものではない。同様な効果を加熱ベルト132の厚肉化で得ることも可能であるが、その結果加熱ベルト132の弾性が失われ定着部材51に倣いにくくなり加熱ニップが十分に確保できなくなることから、筒状スリーブ部材133を用いたほうが好ましい。筒状スリーブ部材133の肉厚は以上のような、熱容量、温度制御の容易性、安全性を考慮して適宜決定することが好ましい。
【0040】
次に外部加熱装置130の駆動手段について説明する。
前述のように定着部材51は図示しない外部の駆動手段によって反時計回りに回転する。このとき定着部材51に押圧され表面が接触している加熱ベルト132は定着部材51表面からの摩擦力により時計回りに回転駆動される。加熱ベルト132の内面に接触している筒状スリーブ部材133は固定されているため(回動可能に構成されていない)、加熱ベルト132と筒状スリーブ部材133はお互いの内周面と外周面を摺動させながら加熱ベルト132は回転される。前述のように加熱ベルト132と筒状スリーブ部材133はお互いの内周面と外周面は摺動性を考慮してPFA等の摩擦抵抗の小さい表層を有すること、あるいはグリス等の潤滑剤を設けることで滑らかに回動することが可能となる。また加熱ベルト132の内周長と筒状スリーブ部材133外周長は略同一となるような調整された値に設定することで、お互いの密着性を増すことにより全周にわたって加熱源131の熱を筒状スリーブ部材133を介して加熱ベルト132に効率よく伝えることが可能となる。
【0041】
なお外部加熱装置130の温度検知は温度検知手段134により加熱ベルト132の表面温度を検知して実施する。温度検知手段は接触式サーミスタ、非接触式のサーモパイル等が考えられるがその形態は問わない。同様に図2に示す定着部材51の温度検知手段53の検知温度を合わせて制御に用いることがより精度の高い温度制御を可能となる。
【0042】
図4に、加熱ニップ部の筒状スリーブ部材133の凹部と加熱ベルト132の間に弾性部材135、いわゆるパッド部材を介して加熱ニップを形成する例を示す。このように弾性部材135を介することで加熱ベルト132と定着部材51の密着性が向上し熱伝達効率が良くなる。
【0043】
図5に、筒状スリーブ部材133の凹形状を定着部材51の形状に倣わせる形状ではなく、定着部材51から完全に退避させた形状とするものを示す。このような形状とすることで加熱ベルト132は定着部材51に押圧されると弾性変形して定着部材51の周面に沿うようにたわむ。このときの押圧力は加熱ベルト部材132をたわませる程度の軽い力ですむことから定着部材51への機械的負荷はより小さいものとなる。このような構成とすることで筒状スリーブ部材133bは定着部材51に正確に沿うような高精度の加工が不要となり生産性が向上するとともに低コストで製造可能となる。一方加熱ベルト132の弾性力が十分であれば熱効率面でのデメリットはなく、今まで同様の効果が得られる。
【0044】
図6に、加熱ニップ部の筒状スリーブ部材133cを排除し加熱ベルト132を加熱源131が直接加熱できる構成を示す。このため熱効率が良くなる。直接加熱する場合安全面での懸念がある、例えば加熱源131が暴走し連続点灯状態になる場合が考えられるが、加熱ニップ以外の部分では筒状スリーブ部材133cにより異常温度上昇が抑えられ、また加熱ニップ部では対向する定着部材51があるので異常温度上昇が抑えられる。その結果熱効率向上のメリットを得ながら安全性も維持できる。
【符号の説明】
【0045】
5:定着装置
51:定着部材
52:加圧部材
130:外部加熱装置
131:熱源
132:加熱ベルト
133、133b、133c:筒状スリーブ部材
134:温度検知手段
135:弾性部材
P用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特開2006−184623号公報
【特許文献2】特開2005−292714号公報
【特許文献3】特開2008−158147号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置に関し、より詳細には、ベルトを用いて外部から定着ローラを加熱する外部加熱方式の定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンターや複写機、ファクシミリ等の電子写真画像形成方式を用いて記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、記録媒体上に転写されたトナー像を定着させて永久的な画像とすることが必要である。
【0003】
トナー像の定着方法としては、大きく分類すると、熱によりトナーを溶かし、さらに圧力により記録媒体に浸透させる方法や、トナーおよび記録媒体に大きな圧力を加えてトナーをつぶして記録媒体に付着させる方法、溶剤によりトナーを溶かして記録媒体に浸透させる方法等がある。
【0004】
現在、電子写真装置では、熱と圧力とを利用した定着方式が最も多く使用されている。
この理由は、比較的簡単な構成であり、また低速から高速まで幅広い範囲で安定した良好な定着性が得られるためである。例えば、ヒートロール方式の定着装置は、熱源を内包した加熱(定着)ローラと、加熱ローラに押圧接触する加圧ローラとから構成される。加熱ローラは、例えばアルミニウムや鉄等の金属を用いた円筒からなり、その周面には例えばシリコンゴムからなる弾性層と、最外周面に例えばPFA等からなる離型層が形成される。金属製の円筒の内部には、例えばハロゲンランプなどの輻射熱源が設けられる。
【0005】
このような構成の定着装置では、輻射熱源により加熱ローラの内部から加熱ローラ全体を加熱して、加圧ローラとの間にできる定着ニップにトナー像が転写された記録媒体を通過させ、トナーを溶融固着させる。そのため加熱ローラは、高い定着圧力に耐えるため肉厚の金属製の円筒から形成されており、その周面には、熱伝導性が数十〜数百W/m・Kの金属と比較して約0.5〜0.8W/m・Kと非常に小さいシリコンゴムからなる弾性層やPFA層等を設けているため、一般的に熱容量が大きく、特にカラー定着の場合にはウォームアップに数分の時間を要してしまう。このため、プリント待機時には定着装置を一定温度に保持することにより、プリント待機時からの復帰時間を短縮していた。
【0006】
しかし、この対応によって常時エネルギーを消費することになる。
このような問題に対し、消費電力を低減して加熱効率を向上させるため、輻射予備加熱方式の定着装置が提案されている(例えば、特許文献1)。すなわち図7(特許文献1の図6相当)に示すように、輻射予備加熱方式の定着装置210は、内部に熱源213aを有する外部加熱手段213により外部から表面が加熱される定着ローラ212と、定着ローラ212と平行に配置され、定着ローラ212の外周面を押圧して定着ニップを形成する加圧ローラ211とからなる。この定着装置210では、外部加熱手段213を定着前の記録材Pを搬送する搬送部の近傍に設けることにより、記録材Pを定着ニップに通紙させる前に外部加熱手段213の輻射熱を利用して記録材PおよびトナーTを予備加熱することができる。
【0007】
また、上述の問題に対して、多軸懸架ベルト加熱方式の定着装置が提案されている(例えば、特許文献2)。すなわち図8(特許文献1の図7相当)に示す多軸懸架ベルト加熱方式の定着装置220は、加熱源222aを有する定着ローラ222と、定着ローラ222に圧接する加圧ローラ221と、懸架ローラ223および加熱源224aを有する懸架ローラ224によって張架された無端ベルト225とからなる。このような構成の定着装置220は、容易に加熱ニップ幅を十分に長くする(すなわち加熱時間を長くする)ことができ、定着ローラ222に対する機械的負荷も小さい。
【0008】
また同様な効果が得られる別の構成としては、図9(特許文献1の図2相当)に示す単軸のベルト直接加熱方式が考えられる(例えば特許文献3)。定着ローラ231と、加圧ローラ232と、外部加熱部材233からなる。定着ローラ231は、用紙Pに転写されたトナー像を定着させるためのローラであり、後述する加圧ローラ232と圧接して設けられる。定着ローラ231は、定着ローラ回転軸231aと、弾性層231bと、離型層231cからなる。定着ローラ回転軸231aは、例えば金属製の芯金であって、外部の図示しない駆動部と接続されており、反時計回りに回転する。弾性層231bは、定着ローラ回転軸231aの周囲に設けられ、断熱性を有する材質の部材から形成されており、例えば発泡性シリコンゴム等からなる。離型層231cは、弾性層231bの周囲に形成され、離型層231cにトナーが付着しないように離型性を有する材質から生成されている。離型層231cは、例えばPFAやPTFE等のフッ素樹脂フィルムまたはこれらの材質のコーティングがなされて形成されている。また、弾性層231bと離型層231cとの間に、約0.2〜3mmの厚さを有する非発泡シリコンゴム層が設けられている。加圧ローラ232は、用紙Pに転写されたトナー像を定着させるための圧力を加えるローラであり、定着ローラ231と平行に圧接して設けられる。加圧ローラ232は、加圧ローラ回転軸232aと、弾性層232bとからなる。加圧ローラ回転軸232aは、加圧ローラ232の回転中心となる軸であり、例えば金属製の芯金であって、図示しない支持部材により回転可能に支持されている。加圧ローラ回転軸132bの周囲には、弾性層132bが形成される。弾性層232bは、断熱性を有する材質の部材から形成されており、例えば発泡性シリコンゴム等からなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した輻射予備加熱方式の定着装置210では、外部加熱手段213からの輻射熱や対流による記録材PおよびトナーTの予備加熱は、特にプリント速度が速い場合やカラー定着の場合において、記録材PおよびトナーTに与える加熱効果が非常に小さい。そのため、プリントの高速化やカラー化への対応が困難である。また、多軸懸架ベルト加熱方式の定着装置は、機構が複雑であるため製造コストが高く、懸架ローラを含めた加熱部全体の熱容量が大きい。従来の2ローラ定着器と比較してベルトを懸架するための懸架機構の部品数の多さからも、定着装置全体として部品数やコストが非常に高くなるという問題もある。
【0010】
一方上述の問題を解決するための単軸のベルト直接加熱方式は、定着ローラへの熱的、機械的負荷を軽減することの可能であるが、ベルトの熱容量が小さいが故、温度制御が難しく安定した温度が得られない、加熱源の異常連続点灯時の安全性に課題がある。他方ベルトの厚みを増して前記課題を解決可能であるが、ベルト剛性のため定着ローラとの密着幅が確保できずに伝熱効率が悪化する。
【0011】
そこで本発明においては、上記問題にかんがみ、少ない部品構成で定着部材への熱的、機械的負荷を軽減するとともに制御安定性、安全性を得ることの可能な、定着装置と、これを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の定着装置のうち請求項1に係るものは、定着部材と、前記定着部材と平行に配置され、前記定着部材と押圧接触する領域に搬送される記録媒体の未定着トナー像を定着させる加圧部材と、前記定着部材の周面を加熱する外部加熱装置とを備え、前記外部加熱装置は、内部に熱源を有する筒状スリーブ部材と、前記筒状スリーブ部材を内包する加熱ベルト部材にて構成され、前記定着部材に押圧されていることを特徴とする。
【0013】
同請求項2に係るものは、請求項1に記載の定着装置において、前記定着部材と前記外部加熱装置との接触する部分は、前記定着部材は円弧形状で前記外部加熱装置は、該円弧形状に倣った凹形状であることを特徴とする。
【0014】
同請求項3に係るものは、請求項1または2に記載の定着装置において、前記定着部材と前記外部加熱装置との接触する部分は、前記定着部材は円弧形状で前記外部加熱装置の該円弧形状に倣った凹形状を前記筒状スリーブ部材で形成していることを特徴とする。
【0015】
同請求項4に係るものは、請求項1から3のいずれかに記載の定着装置において、前記定着部材と前記外部加熱装置との接触する部分は、前記定着部材は円弧形状で前記外部加熱装置の該円弧形状に倣った凹形状を前記筒状スリーブ部材で形成するとともに、前記接触する部分に弾性部材を設けてあることを特徴とする。
【0016】
同請求項5に係るものは、請求項1または2に記載の定着装置において、前記定着部材と前記外部加熱装置との接触する部分は、前記定着部材は円弧形状で前記外部加熱装置の該円弧形状に倣った凹形状を前記加熱ベルト部材により形成していることを特徴とする。
【0017】
同請求項6に係る画像形成装置は、請求項1から5のいずれかに記載の定着装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、少ない部品構成で定着部材を効率良く加熱すること、定着部材の機械的負荷を軽減するとともに制御安定性、また異常時における安全性を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例に係るプリンタの構成を示す概略断面図
【図2】本発明の一実施例に係る定着装置の構成を示す概略断面図
【図3】本発明の一実施例に係る定着装置を構成する外部加熱装置の一例の断面図
【図4】加熱ニップ部の筒状スリーブ部材の凹部と加熱ベルトの間に弾性部材を介して加熱ニップを形成する例を示す断面図
【図5】筒状スリーブ部材の凹形状を定着部材の形状に倣わせる形状ではなく、定着部材から完全に退避させた形状とした例を示す断面図
【図6】加熱ニップ部の筒状スリーブ部材を排除し加熱ベルトを加熱源が直接加熱できる構成を示す断面図
【図7】輻射予備加熱方式の定着装置の従来例を示す断面図
【図8】多軸懸架ベルト加熱方式の定着装置の従来例を示す断面図
【図9】単軸のベルト直接加熱方式の定着装置の従来例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
定着部材の周面を加熱する外部加熱装置を、内部に熱源を有する筒状スリーブ部材と、この筒状スリーブ部材を内包する加熱ベルト部材にて構成し、定着部材に押圧されるようにする。また定着部材と外部加熱装置との接触する部分は、定着部材は円弧形状で外部加熱装置は、この円弧形状に倣った凹形状とすることができる。さらに、外部加熱部材の円弧形状に倣った凹形状を筒状スリーブ部材で形成することができる。それらにより少ない部品構成で定着部材を効率良く加熱すること、定着部材の機械的負荷を軽減するとともに制御安定性、また異常時における安全性を得られる。
【0021】
また定着部材と外部加熱装置との接触する部分は、定着部材は円弧形状で、外部加熱装置のこの円弧形状に倣った凹形状を筒状スリーブ部材で形成するとともに、接触部に弾性部材を設ける。外部加熱装置の該円弧形状に倣った凹形状を加熱ベルト部材により形成することができる。これにより、外部加熱装置と定着部材の密着性を向上させることで少ない部品構成で定着部材をより効率良く加熱すること、定着部材の機械的負荷を軽減するとともに制御安定性、また異常時における安全性を得ることができる。
【0022】
画像形成装置において前記定着装置を有する構成とすれば、やはり、少ない部品構成で定着部材をより効率良く加熱すること、定着部材の機械的負荷を軽減するとともに制御安定性、また異常時における安全性を得ることができる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を、画像形成装置であるカラーレーザプリンタ(以下、単に「プリンタ」という)に適用した実施例を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施例に係るプリンタの概略構成図である。このプリンタは、イエロー・シアン・マゼンタ・ブラックの4つの画像形成手段を横に並べて配置してタンデム画像形成部を構成する。タンデム画像形成部においては、個々のトナー像形成手段である画像形成手段101Y、101C、101M、101Kが、図中有左から順に配置されている。ここで、各符号の添字Y、C、M、Kは、それぞれイエロー、マゼンダ、シアン、黒用の部材であることを示す。また、タンデム画像形成部においては、個々画像形成手段101Y、C、M、Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体21Y、C、M、Kのまわりに、帯電装置、現像装置10Y、C、M、K、感光体クリーニング装置等を備えている。プリンタの上部には、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の各色トナーが充填されたトナーボトル2Y、C、M、Kが配置されている。そして、このトナーボトル2Y、C、M、Kから図示しない搬送経路によって、所定の補給量だけ各色現像装置10Y、C、M、K、に各色トナーが補給される。
【0024】
また、タンデム画像形成部の下部に潜像形成手段としての光書込ユニット9を設ける。この光書込ユニット9は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を備え、画像データに基づいて各感光体1の表面にレーザ光を走査しながら照射するように構成されている。
【0025】
タンデム画像形成部のすぐ上には、中間転写体として無端ベルト状の中間転写ベルト1を設けている。この中間転写ベルト1は、支持ローラ1a、1bに掛け回され、この支持ローラのうち駆動ローラ1aの回転軸には駆動源としての図示しない駆動モータが連結されている。この駆動モータを駆動させると、中間転写ベルト1が図中反時計回りに回転移動するとともに、従動可能な支持ローラ1bが回転する。中間転写ベルト10の内側には、感光体21Y、C、M、K上に形成されたトナー像を中間転写ベルト1上に転写するための一次転写装置11Y、C、M、Kを設ける。
【0026】
1次転写装置11Y、C、M、Kより中間転写ベルト1の駆動方向下流に2次転写装置としての2次転写ローラ5を設ける。この2次転写ローラ4と中間転写ベルト1を挟んで反対の側には、支持ローラ1bが配置されており、押部材としての機能を果たしている。また、給紙カセット8、給紙コロ7、レジストローラ6等を備えている。さらに、2次転写ローラ4によりトナー像を転写された記録媒体Sの進行方向に関して2次転写ローラ4の下流部には、記録媒体S上の画像を定着する定着装置5、排紙ローラ3を備えている。
【0027】
つぎに、上述の構成を有するプリンタの動作を説明する。
個々の画像形成手段でその感光体21Y、C、M、Kを回転し、感光体21Y、C、M、Kの回転とともに、まず帯電装置17Y、C、M、Kで感光体21Y、C、M、Kの表面を一様に帯電する。次いで画像データを光書込ユニット9からのレーザによる書き込み光を照射して感光体21Y、C、M、B上に静電潜像を形成する。その後、現像装置10Y、C、M、Kによりトナーが付着され静電潜像を可視像化することで各感光体21Y、C、M、K上にそれぞれ、イエロー・シアン・マゼンタ・ブラックの単色画像を形成する。また、不図示の駆動モータで駆動ローラ1aを回転駆動して他の従動ローラ1b、2次転写ローラ4を従動回転し、中間転写ベルト1を回転搬送して、その可視像を一次転写装置11Y、C、M、Kで中間転写ベルト1上に順次転写する。これによって中間転写ベルト1上に合成カラー画像を形成する。画像転写後の感光体21Y、C、M、Kの表面は感光体クリーニング装置で残留トナーを除去して清掃して再度の画像形成に備える。
【0028】
また、上述の画像形成のタイミングにあわせて、給紙カセット8からは記録媒体S先端が給紙コロ7により繰り出され、レジストローラ6まで搬送され、いったん停止する。そして、上記画像形成動作とタイミングを取りながら、二次転写ローラ4と中間転写ベルト1の間に搬送される。ここで、中間転写ベルト1と2次転写対向ローラ5とは記録媒体Sを挟んでいわゆる2次転写ニップを形成し、2次転写ローラ4にて中間転写ベルト10上のトナー像を記録媒体S上に2次転写する。
【0029】
画像転写後の記録媒体Sは定着装置5へと送り込まれ、加熱源53を有し、温度制御手段55によって表面を所定の温度に維持された定着部材51、定着部材51に対向し定着部材51に圧接される加圧部材52により形成されるニップ部に用紙を挟んで搬送することで用紙上のトナー像を加熱加圧し用紙に定着させる。またニップ部から排出された用紙は、排紙ローラ3から機外に排出される。一方、画像転写後の中間転写ベルト1は、中間転写体クリーニング装置12で、画像転写後に中間転写ベルト1上に残留する残留トナーを除去し、タンデム画像形成部による再度の画像形成に備える。
【0030】
本実施例に係る定着装置5は、図2に示すように、定着部材51と、加圧部材52と、外部加熱装置130からなる。定着部材51は、用紙Pに転写されたトナー像を定着させるための本実施例ではローラであり、後述する加圧部材52と圧接して設けられる。
【0031】
定着部材51の構成は、基材として金属製の芯金であって、外部の駆動部(図示せず)と接続されており、反時計回りに回転する。基材の外周には弾性層が設けられ、断熱性を有する材質の部材から形成されており、例えばシリコンゴム等からなる。さらに離型層は、弾性層の周囲に形成され、離型層にトナーが付着しないように離型性を有する材質から生成されている。離型層は、例えばPFAやPTFE等のフッ素樹脂フィルムまたはこれらの材質のコーティングがなされて形成されている。
【0032】
加圧部材52は、用紙Pに転写されたトナー像を定着させるための圧力を加える本実施例ではローラであり、定着部材51と平行に圧接して設けられる。加圧部材52の構成は、基材として例えば金属製の芯金であって、支持部材(図示せず)により回転可能に支持されている。加圧部材52の基材の周囲には、弾性層形成される。弾性層は、断熱性を有する材質の部材から形成されており、例えばシリコンゴム等からなる。また弾性層の周囲に形成され、離型層にトナーが付着しないように離型性を有する材質から生成されている。
【0033】
外部加熱装置130は、定着部材51を加熱する装置であって、図3に示すように、内部に熱源131を有する筒状スリーブ部材133とその外周に密着し摺動可能に配置されている加熱ベルト132とからなる。
【0034】
加熱ベルト132は、例えばハロゲンランプ等の熱源131により約150〜200℃に加熱された状態で連続使用されるため耐熱性を有するとともに、定着部材51と加熱ニップを形成するために定着部材51に押圧されることによりたわむような弾性を有する材質から形成される。加熱ベルト132は、例えば、熱容量の小さいステンレスやニッケル等の金属やPI等の耐熱樹脂から形成される。さらに、加熱ベルト132の外周面に、例えばPFAやPTFE等からなる離型層を形成してもよい。
【0035】
筒状スリーブ部材133は薄肉0.1mmから0.5mm程度の金属材、例えばステンレスやアルミニウム等により形成される。筒状形ではあるが無端である必要はない。その内面は加熱源131からの熱を効率よく吸収させるため黒色塗装が好ましい。外周面は加熱ベルト132と摺動することから表面にPFAやPTFE等からなる摺動層を形成してもよい。また摺動性向上のためグリス等の潤滑材を形成しても良い。
【0036】
このような構成の定着装置50は、外部加熱装置130によって加熱された定着部材51と加圧部材52との圧接部(以下、「定着ニップ」と言う。)に、未定着トナー画像が形成された用紙Pを通紙させることにより、トナーを加熱および加圧して用紙Pにトナー画像を定着させる。
【0037】
ここで、定着部材51を加熱する際の該定着部材51への十分な加熱ニップ確保と機械的負荷を軽減することと、外部加熱装置130の温度制御を安定させ、ひいては定着部材51の温度を安定させること加えて異常発生時の安全性を確保するために筒状スリーブ部材133と加熱ベルト132を用いて加熱することを特徴とする。
【0038】
本実施例に係る筒状スリーブ部材133は、定着部材51の外周形状に倣う形態で凹形状を有している。弾性のある加熱ベルト132を筒状スリーブ部材133の周長と略同一となるように設定することで定着部材51に押圧して加熱ベルト132をたわませ前記凹形状に倣わせることにより加熱ニップを形成する。
【0039】
外部加熱装置130を図示しない弾性部材による加圧力で定着部材51に押圧させると、加熱ベルト132は弾性変形して筒状スリーブ部材131と定着部材51の周面に沿うようにたわむ。このときの押圧力は加熱ベルト部材132をたわませる程度の軽い力ですむことから定着部材51への機械的負荷は小さいものとなる。同様に筒状スリーブ部材133にかかる負荷も小さいものとなり筒状スリーブ部材133の肉厚は自身の形状を維持できる程度で済む。その結果筒状スリーブ部材133は0.1mm程度の薄肉に形成することが可能となる。一方筒状スリーブ部材133を介することで加熱ベルト132単独で加熱する場合に比べると熱容量は大きくなる。その結果温度上昇速度は遅くなるが、温度制御は容易となる。定着部材51の熱容量を考え合わせた場合、筒状スリーブ部材133の熱容量は定着装置全体の昇温速度を大きく阻害するものではない。同様な効果を加熱ベルト132の厚肉化で得ることも可能であるが、その結果加熱ベルト132の弾性が失われ定着部材51に倣いにくくなり加熱ニップが十分に確保できなくなることから、筒状スリーブ部材133を用いたほうが好ましい。筒状スリーブ部材133の肉厚は以上のような、熱容量、温度制御の容易性、安全性を考慮して適宜決定することが好ましい。
【0040】
次に外部加熱装置130の駆動手段について説明する。
前述のように定着部材51は図示しない外部の駆動手段によって反時計回りに回転する。このとき定着部材51に押圧され表面が接触している加熱ベルト132は定着部材51表面からの摩擦力により時計回りに回転駆動される。加熱ベルト132の内面に接触している筒状スリーブ部材133は固定されているため(回動可能に構成されていない)、加熱ベルト132と筒状スリーブ部材133はお互いの内周面と外周面を摺動させながら加熱ベルト132は回転される。前述のように加熱ベルト132と筒状スリーブ部材133はお互いの内周面と外周面は摺動性を考慮してPFA等の摩擦抵抗の小さい表層を有すること、あるいはグリス等の潤滑剤を設けることで滑らかに回動することが可能となる。また加熱ベルト132の内周長と筒状スリーブ部材133外周長は略同一となるような調整された値に設定することで、お互いの密着性を増すことにより全周にわたって加熱源131の熱を筒状スリーブ部材133を介して加熱ベルト132に効率よく伝えることが可能となる。
【0041】
なお外部加熱装置130の温度検知は温度検知手段134により加熱ベルト132の表面温度を検知して実施する。温度検知手段は接触式サーミスタ、非接触式のサーモパイル等が考えられるがその形態は問わない。同様に図2に示す定着部材51の温度検知手段53の検知温度を合わせて制御に用いることがより精度の高い温度制御を可能となる。
【0042】
図4に、加熱ニップ部の筒状スリーブ部材133の凹部と加熱ベルト132の間に弾性部材135、いわゆるパッド部材を介して加熱ニップを形成する例を示す。このように弾性部材135を介することで加熱ベルト132と定着部材51の密着性が向上し熱伝達効率が良くなる。
【0043】
図5に、筒状スリーブ部材133の凹形状を定着部材51の形状に倣わせる形状ではなく、定着部材51から完全に退避させた形状とするものを示す。このような形状とすることで加熱ベルト132は定着部材51に押圧されると弾性変形して定着部材51の周面に沿うようにたわむ。このときの押圧力は加熱ベルト部材132をたわませる程度の軽い力ですむことから定着部材51への機械的負荷はより小さいものとなる。このような構成とすることで筒状スリーブ部材133bは定着部材51に正確に沿うような高精度の加工が不要となり生産性が向上するとともに低コストで製造可能となる。一方加熱ベルト132の弾性力が十分であれば熱効率面でのデメリットはなく、今まで同様の効果が得られる。
【0044】
図6に、加熱ニップ部の筒状スリーブ部材133cを排除し加熱ベルト132を加熱源131が直接加熱できる構成を示す。このため熱効率が良くなる。直接加熱する場合安全面での懸念がある、例えば加熱源131が暴走し連続点灯状態になる場合が考えられるが、加熱ニップ以外の部分では筒状スリーブ部材133cにより異常温度上昇が抑えられ、また加熱ニップ部では対向する定着部材51があるので異常温度上昇が抑えられる。その結果熱効率向上のメリットを得ながら安全性も維持できる。
【符号の説明】
【0045】
5:定着装置
51:定着部材
52:加圧部材
130:外部加熱装置
131:熱源
132:加熱ベルト
133、133b、133c:筒状スリーブ部材
134:温度検知手段
135:弾性部材
P用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特開2006−184623号公報
【特許文献2】特開2005−292714号公報
【特許文献3】特開2008−158147号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着部材と、
前記定着部材と平行に配置され、前記定着部材と押圧接触する領域に搬送される記録媒体の未定着トナー像を定着させる加圧部材と、
前記定着部材の周面を加熱する外部加熱装置と、
を備え、
前記外部加熱装置は、内部に熱源を有する筒状スリーブ部材と、前記筒状スリーブ部材を内包する加熱ベルト部材にて構成され、
前記定着部材に押圧されている
ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置において、
前記定着部材と前記外部加熱装置との接触する部分は、前記定着部材は円弧形状で前記外部加熱装置は、該円弧形状に倣った凹形状である
ことを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の定着装置において、
前記定着部材と前記外部加熱装置との接触する部分は、前記定着部材は円弧形状で前記外部加熱装置の該円弧形状に倣った凹形状を前記筒状スリーブ部材で形成している
ことを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の定着装置において、
前記定着部材と前記外部加熱装置との接触する部分は、前記定着部材は円弧形状で前記外部加熱装置の該円弧形状に倣った凹形状を前記筒状スリーブ部材で形成するとともに、
前記接触する部分に弾性部材を設けてある
ことを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の定着装置において、
前記定着部材と前記外部加熱装置との接触する部分は、前記定着部材は円弧形状で前記外部加熱装置の該円弧形状に倣った凹形状を前記加熱ベルト部材により形成している
ことを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の定着装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
定着部材と、
前記定着部材と平行に配置され、前記定着部材と押圧接触する領域に搬送される記録媒体の未定着トナー像を定着させる加圧部材と、
前記定着部材の周面を加熱する外部加熱装置と、
を備え、
前記外部加熱装置は、内部に熱源を有する筒状スリーブ部材と、前記筒状スリーブ部材を内包する加熱ベルト部材にて構成され、
前記定着部材に押圧されている
ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置において、
前記定着部材と前記外部加熱装置との接触する部分は、前記定着部材は円弧形状で前記外部加熱装置は、該円弧形状に倣った凹形状である
ことを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の定着装置において、
前記定着部材と前記外部加熱装置との接触する部分は、前記定着部材は円弧形状で前記外部加熱装置の該円弧形状に倣った凹形状を前記筒状スリーブ部材で形成している
ことを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の定着装置において、
前記定着部材と前記外部加熱装置との接触する部分は、前記定着部材は円弧形状で前記外部加熱装置の該円弧形状に倣った凹形状を前記筒状スリーブ部材で形成するとともに、
前記接触する部分に弾性部材を設けてある
ことを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の定着装置において、
前記定着部材と前記外部加熱装置との接触する部分は、前記定着部材は円弧形状で前記外部加熱装置の該円弧形状に倣った凹形状を前記加熱ベルト部材により形成している
ことを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の定着装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−168464(P2012−168464A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31126(P2011−31126)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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