説明

画像形成装置

【課題】無端帯状の像保持体と搬送部材の間を通過する媒体に転写される現像剤の飛び散りを低減すること。
【解決手段】無端帯状の像保持体(B)の表面の可視像を媒体(S)に転写する転写領域(Q4)に配置され、表面に媒体(S)を支持して搬送する無端帯状の搬送部材(1)と、搬送部材(1)を回転可能に支持し且つ転写部材(T2b)に対して搬送部材(1)の回転方向の上流側に配置された支持部材(4)と、転写領域(Q4)の上流側における像保持体(B)の表面と搬送部材(1)の表面とを予め設定された角度(θ1)にする通常位置と、成す角度を通常位置よりも小さい角度(θ2)にする小角位置と、の間で移動させる移動部材(7+9+M1)と、現像剤が飛び散りやすい状態であると判別された場合に、通常位置から小角位置に移動させる移動制御手段(C5)と、を備えた画像形成装置(U)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置において、可視像が媒体に転写される転写領域において、可視像が転写された後の媒体を表面に支持して搬送する無端帯状の搬送部材、いわゆる、搬送ベルトを使用する技術として、以下の特許文献1〜3記載の技術が従来公知である。
【0003】
特許文献1としての特開2006−267487号公報には、用紙(P)の搬送方向である左右方向に沿って配置された一対の二次転写ロール(42)および張架ロール(44)で転写ベルト(46)が張架されており、用紙(P)の搬送経路に対して反対側において、補正ロール(48)を転写ベルト(46)の表面に直交する上下方向に移動させることで張力を補正する技術が記載されている。すなわち、特許文献1記載の技術では、補正ロール(48)は2次転写ロール(42)に対して用紙(P)の搬送方向の下流側に配置されている。
【0004】
特許文献2としての特開2009−116006号公報には、中間転写ベルト(5)の2次転写領域に対応して2次転写ベルト(8)が配置されており、2次転写ベルト(8)は、2次転写領域の上流側に配置されたローラ(9a)と、2次転写領域の下流側である右方に配置されたローラ(9b)と、下流側のローラ(9a)の斜め左下方に配置されたローラ(9c)と、で張架された構成が記載されている。特許文献2記載の構成では、2次転写領域には2次転写ローラ(21)が配置されており、上流側のローラ(9a)、2次転写ローラ(21)、下流側のローラ(9b)で支持された2次転写ベルト(8)の表面が直線上になるように配置されている。
【0005】
特許文献3としての特開平10−133497号公報には、二次転写領域の上流部分におけるギャップでの放電に対応するために、記録媒体(3)と中間転写ベルト(2)とが、転写位置の直前でギャップ無く重ね合わされるように、中間転写ベルト(2)に対して、離間した状態、接触した状態、接触した状態から上流側、の順に二次転写ロール(10)を移動させる技術が記載されています。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−267487号公報(「0039」〜「0042」、図2)
【特許文献2】特開2009−116006号公報(「0030」、「0039」〜「0041」、図2)
【特許文献3】特開平10−133497号公報(「0045」〜「0046」、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、無端帯状の像保持体と搬送部材の間を通過する媒体に転写される現像剤の飛び散りを低減することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を解決するために、請求項1記載の発明の画像形成装置は、
表面に可視像が保持されて回転する無端帯状の像保持体と、
前記像保持体の表面の可視像を媒体に転写する転写領域に配置されると共に、表面に媒体を支持して搬送する無端帯状の搬送部材と、
無端帯状の前記搬送部材を回転可能に支持すると共に、前記転写領域において前記無端帯状の搬送部材を挟んで前記像保持体に対向して配置され、前記像保持体の表面の可視像を前記媒体に転写する転写電圧が前記像保持体との間で印加される転写部材と、
無端帯状の前記搬送部材を回転可能に支持し且つ前記転写部材に対して前記搬送部材の回転方向の上流側に配置された支持部材と、
前記支持部材を移動可能に支持する移動部材であって、前記転写領域の上流側における前記像保持体の表面と前記搬送部材の表面とが成す角度を予め設定された角度にする通常位置と、前記成す角度を前記通常位置における角度よりも小さい角度にする小角位置と、の間で前記支持部材を移動させて前記搬送部材の表面の姿勢を変化させる前記移動部材と、
前記可視像を構成する現像剤が予め設定された飛び散りやすい状態であるか否かを判別する判別手段と、
前記現像剤が飛び散りやすい状態であると判別された場合に、前記移動部材を前記通常位置から前記小角位置に移動させる移動制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
温度および湿度の少なくとも一方を検出する検出部材と、
前記検出部材が検出した温度および湿度の少なくとも一方に基づいて、低帯電であるか否かを判別することで現像剤が飛び散りやすい状態であるか否かを判別する前記判別手段と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、小角位置に移動させない構成に比べて、無端帯状の像保持体と搬送部材の間を通過する媒体に転写される現像剤の飛び散りを低減することができる。
請求項2に記載の発明によれば、低帯電である場合に飛び散りやすいと判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
【図2】図2は、実施例1の二次転写ユニット部分の要部説明図である。
【図3】図3は実施例1の搬送テンションロールの要部拡大図である。
【図4】図4は本発明の実施例1のプリンタの制御部の機能図、いわゆるブロック線図である。
【図5】図5は実施例1の接触幅制御処理のフローチャートの説明図である。
【図6】図6は通常位置における転写領域を通過する際の空間の圧縮に関する説明図であり、図6Aはトナー像が転写領域に差し掛かった状態の説明図、図6Bは図6Aに示す状態から用紙搬送方向の下流側に移動した状態の説明図、図6Cは図6Bに示す状態からさらに用紙搬送方向の下流側に移動した状態の説明図である。
【図7】図7は小角位置における転写領域を通過する際の空間の圧縮に関する説明図であり、図7Aはトナー像が転写領域に差し掛かった状態の説明図、図7Bは図7Aに示す状態から用紙搬送方向の下流側に移動した状態の説明図、図7Cは図7Bに示す状態からさらに用紙搬送方向の下流側に移動した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例(以下、実施例と記載する)を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
図1において、画像形成装置Uは、操作部UI、画像読取部の一例としてのスキャナ装置U1、給紙装置U2、画像形成装置本体U3、および用紙排出部U4を有している。
【0014】
前記操作部UIは、入力部の一例としての電源ボタンやコピースタートキー、コピー枚数設定キー、テンキー等や、表示部等を有している。
前記スキャナ装置U1は、図示しない原稿を読取って画像情報に変換し、画像形成装置本体U3に入力する。
給紙装置U2は、給紙部の一例としての複数の給紙トレイTR1〜TR4と、前記各給紙トレイTR1〜TR4に収容された媒体の一例としての記録用紙Sを取り出して画像形成装置本体U3に搬送する給紙路SH1と、を有する。
【0015】
図1において、画像形成装置本体U3は、制御部Cや、前記制御部Cにより制御されて画像形成装置本体U3の各部材に給電する電源回路E等を有する。制御部Cは、スキャナ装置U1で読み取られた原稿の画像情報や、画像形成装置Uに接続された図示しない情報送信装置の一例としてのパーソナルコンピュータから送信された画像情報が送信される。
前記制御部Cは、受信した画像情報を、Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:黒の印刷用の情報に処理して、潜像書込装置の駆動回路の一例としてのレーザ駆動回路Dに出力する。レーザ駆動回路Dは、制御部Cから入力されたレーザ駆動信号を予め設定された時期に、各色の潜像形成装置ROSy,ROSm,ROSc,ROSkに出力する。
【0016】
各潜像形成装置ROSy〜ROSkの下方には、Y,M,C,Kの像保持体ユニットUy,Um,Uc,Ukが配置されている。
図1において、K:黒の像保持体ユニットUkは、像保持体の一例としての感光体ドラムPkと、帯電器の一例としてのコロトロンCCkと、像保持体用の清掃器の一例としての感光体クリーナCLkとを有する。そして、他の色Y,M,Cの像保持体ユニットUy,Um,Ucも、感光体ドラムPy,Pm,Pc、コロトロンCCy,CCm,CCc、感光体クリーナCLy,CLm,CLcを有する。
なお、実施例1では、使用頻度の高く表面の磨耗が多いK色の感光体ドラムPkは、他の色の感光体ドラムPy,Pm,Pcに比べて大径に構成され、高速回転対応および長寿命化がされている。
【0017】
感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pkは、それぞれコロトロンCCy,CCm,CCc,CCkにより一様に帯電された後、前記潜像形成装置ROSy,ROSm,ROSc,ROSkの出力する潜像書込光の一例としてのレーザビームLy,Lm,Lc,Lkにより、感光体ドラムPy〜Pkの表面に静電潜像が形成される。前記感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pkの表面の静電潜像は、現像装置Gy,Gm,Gc,Gkに設けられた現像部材の一例としての現像ロールR0により、Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:黒の各色の現像剤で可視像の一例としてのトナー像に現像される。
【0018】
感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pk表面上のトナー像は、一次転写器の一例としての1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1kにより、一次転写領域Q3において、中間転写体の一例であって、像保持体の一例としての中間転写ベルトB上に順次重ねて転写され、中間転写ベルトB上に多色画像、いわゆる、カラー画像が形成される。中間転写ベルトB上に形成されたカラー画像は、2次転写領域Q4に搬送される。
なお、黒画像データのみの場合はK:黒の感光体ドラムPkおよび現像装置Gkのみが使用され、黒のトナー像のみが形成される。
1次転写後、感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pkの表面に残留した残留トナーは感光体ドラム用のクリーナCLy,CLm,CLc,CLkによりクリーニングされる。
前記各像保持体ユニットUy,Um,Uc,Ukと現像装置の一例としての現像装置Gy,Gm,Gc,Gkとにより、可視像形成部の一例としてのトナー像形成部材Uy+Gy,Um+Gm,Uc+Gc,Uk+Gkが構成されている。
【0019】
画像形成装置本体U3の上部には、補給装置の一例としてのトナーディスペンサーU3aが配置されており、トナーディスペンサーU3aには、現像剤の収容容器の一例としてのトナーカートリッジKy,Km,Kc,Kkが着脱可能に装着されている。画像形成に伴って現像装置Gy〜Gkにおいてトナーが消費されると、各トナーカートリッジKy〜Kkから各現像装置Gy〜Gkにトナーが供給される。
【0020】
前記感光体ドラムPy〜Pkの下方に配置された中間転写ベルトBは、中間転写体の駆動部材の一例としての中間駆動ロールRdと、中間転写ベルトBに張力を付与する張力付与部材の一例としての中間テンションロールRtと、中間転写ベルトBの片寄り、蛇行を補正する第1の片寄り補正部材の一例としての中間ステアリングロールRwと、中間転写体の従動部材の一例としての複数の中間アイドラロールRfと、二次転写領域の対向部材の一例としてのバックアップロールT2aと、により張架されている。そして、前記中間転写ベルトBは、中間駆動ロールRdの駆動により矢印Ya方向に回転移動可能に支持されている。
前記中間駆動ロールRd、中間テンションロールRt、中間ステアリングロールRw,中間アイドラロールRf、バックアップロールT2aにより、実施例1の中間転写体の支持部材の一例としてのベルト支持ロールRd+Rt+Rw+Rf+T2aが構成されている。また、前記中間転写ベルトBやベルト支持ロールRd+Rt+Rw+Rf+T2a、1次転写ロールT1y〜T1kにより、中間転写装置の一例としてのベルトモジュールBMが構成されている。なお、実施例1のベルトモジュールBMは、画像形成装置の本体U3に対して、着脱、交換が可能なユニットにより構成されている。
【0021】
なお、実施例1の中間ステアリングロールRwは、回転軸を有する回転体により構成され、中間転写ベルトBの幅方向への片寄りに応じて片寄りを補正する方向に回転軸が傾斜して、中間転写ベルトBの片寄り、蛇行を防止する。なお、このように、光センサやベルトの端に接触する部材等のベルトの片寄りを検出する部材の検出結果に応じて回転軸を傾斜させて片寄りを補正する方式、いわゆるアクティブステアリング方式のステアリングロールRwは、従来公知であり、例えば、特開2009−86463号公報や特開2010−231112号公報等に記載された従来公知の種々の構成を採用可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0022】
前記バックアップロールT2aの下方には、転写搬送装置の一例としての2次転写ユニットUtが配置されている。2次転写ユニットUtは、転写部材の一例として、バックアップロールT2aに対向して配置された2次転写ロールT2bを有し、2次転写ロールT2bが中間転写ベルトBと対向する領域により2次転写領域Q4が構成されている。なお、実施例1では、2次転写ユニットUtは、図示しない付勢部材により、バックアップロールT2aに2次転写ロールT2bが押し付けられる方向に付勢されている。また、前記バックアップロールT2aには、電圧印加用の接触部材の一例としてのコンタクトロールT2cが接触しており、前記ロールT2a〜T2cにより2次転写器T2が構成されている。
前記コンタクトロールT2cには、制御部Cにより制御される電源回路Eから予め設定された時期に、トナーの帯電極性と同極性の2次転写電圧が印加される。
【0023】
前記ベルトモジュールBM下方には用紙搬送路SH2が配置されている。前記給紙装置U2の給紙路SH1から給紙された記録用紙Sは、前記用紙搬送路SH2に搬送され、送出部材の一例としてのレジロールRrにより、トナー像が2次転写領域Q4に搬送される時期に合わせて送り出され、媒体案内部材の一例としての用紙ガイドSG1、SG2に案内されて、2次転写領域Q4に搬送される。
前記中間転写ベルトB上のトナー像は、前記2次転写領域Q4を通過する際に、前記2次転写器T2により記録用紙Sに転写される。なお、カラー画像の場合は中間転写ベルトB表面に重ねて1次転写されたトナー像が一括して記録用紙Sに2次転写される。
【0024】
2次転写後の前記中間転写ベルトBは、中間転写体の清掃器の一例としてのベルトクリーナCLBにより清掃、すなわち、クリーニングされる。なお、前記2次転写ロールT2bは、中間転写ベルトBと離隔および接触可能に支持されている。
前記1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1k、中間転写ベルトB、二次転写器T2、ベルトクリーナCLB等により、感光体ドラムPy〜Pk表面の画像を記録用紙Sに転写する転写装置T1+B+T2+CLBが構成されている。
【0025】
トナー像が2次転写された前記記録用紙Sは、二次転写ロールT2bの下流側に配置された張架部材の一例としての転写ベルト支持ロールT2dと、二次転写ロールT2bとの間に張架された転写搬送部材の一例としての無端帯状の転写搬送ベルトT2eの表面に保持されて下流側に搬送される。
転写搬送ベルトT2eの下流側には、搬送部材の一例として、表面に記録用紙Sを保持して下流側に搬送する複数の吸着搬送ベルトBHが配置されており、複数の吸着搬送ベルトBHにより搬送速度や用紙間隔が調整されながら下流側に搬送される。前記吸着搬送ベルトBHには、図示しない複数の孔が形成されており、吸引装置の一例としてのファンが孔を通じて空気を吸引することで、記録用紙Sを表面に吸着した状態で下流側に搬送する。なお、このような吸着搬送ベルトは従来公知であり、例えば、特開2004−347880号公報等に記載された構成等、任意の構成を採用可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0026】
前記吸着搬送ベルトBHにより搬送された記録用紙Sは、下流の用紙排出部U4内に配置された定着装置Fに搬送される。前記定着装置Fは、加熱定着部材の一例としての加熱ロールFhと、加圧定着部材の一例としての加圧ロールFpとを有し、加熱ロールFhと加圧ロールFpとが接触する領域により定着領域Q5が形成されている。
前記記録用紙S上のトナー像は定着領域Q5を通過する際に定着装置Fにより加熱定着される。定着装置Fでトナー像が定着された記録用紙Sは、排出部の一例としての排出トレイTRhに排出される。
前記符号SH1、SH2等により用紙搬送路SHが構成されている。また、前記符号SH,Ra,Rr,SGr,BH等により用紙搬送装置SUが構成されている。
【0027】
(二次転写ベルトの説明)
図2は、実施例1の二次転写ユニット部分の要部説明図である。
図1、図2において、二次転写領域Q4に配置された二次転写ユニットUtは、表面に記録用紙Sを支持して搬送する無端帯状の搬送部材の一例としての転写搬送ベルト1を有する。前記転写搬送ベルト1は、前記二次転写ロールT2bと、転写搬送ベルト1を回転させる駆動力が伝達される第2の駆動部材の一例としての搬送駆動ロール2と、転写搬送ベルト1の片寄りや蛇行を補正する第2の片寄り補正部材の一例としての搬送ステアリングロール3と、転写搬送ベルト1に張力を付与する第2の張力付与部材の一例としての搬送テンションロール4と、により張架されている。
【0028】
前記搬送駆動ロール2と、搬送ステアリングロール3と、搬送テンションロール4と、2次転写ロールT2bとにより、実施例1の搬送部材の支持部材の一例としての搬送支持ロールT2b,2〜4が構成されている。
実施例1の搬送ステアリングロール3は、前記転写ステアリングロールRwと同様に、アクティブステアリング方式のステアリングロールにより構成されており、従来公知の種々の構成を採用可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0029】
実施例1の転写搬送ベルト1と中間転写ベルトBは、予め設定された媒体に対する中間転写ベルトBの表面の第1の静止摩擦係数をμAとし、媒体に対する転写搬送ベルト1の表面の第2の静止摩擦係数をμBとした場合に、μA<μBに設定されている。すなわち、同一の媒体に対して、転写搬送ベルト1の表面の静止摩擦係数μBの方が、中間転写ベルトBの表面の静止摩擦係数μAよりも大きく設定されている。
具体的には、実施例1の転写搬送ベルト1は、樹脂材料の一例としてのポリイミドにより構成されている。そして、中間転写ベルトBは、ポリイミドにより構成された基層の表面に、離型性が高く基層よりも静止摩擦係数が小さい材料の一例としてのポリテトラフルオロエチレン:PTFE製の表面層が形成された構成となっている。
【0030】
なお、実施例1では、ポリイミドやポリイミドの表面にPTFEの表面層を形成する構成を例示したが、これに限定されず、ポリアミドやポリイミドアミド、その他、中間転写ベルトや転写搬送ベルトとして使用可能な材料とすることが可能であり、表面層もPTFEに限定されず、その他のフッ素樹脂や静止摩擦係数が小さい材料を採用可能である。すなわち、μA<μBを満たす任意の材料を選択、採用可能である。
また、転写搬送ベルト1は、ポリイミドの単層構造の構成を例示したが、これに限定されず、表面層や中間層等を設けた多層構造とすることも可能である。同様に、中間転写ベルトBも基層と表面層の2層構造に限定されず、単層構造や3層以上の多層構造とすることも可能である。
【0031】
さらに、材料の選択でμA<μBを満足する構成を例示したが、これに限定されず、表面の凹凸や溝形成等の加工によりμA<μBとすることも可能であり、例えば、同一材料且つ異なる表面加工としてμA<μBとすることも可能である。
また、転写搬送ベルト1と中間転写ベルトBの基層とは同一の材料とする構成を例示したが、これに限定されず、異なる材料とすることも可能である。
【0032】
図3は実施例1の搬送テンションロールの要部拡大図である。
図2、図3において、実施例1の搬送テンションロール4は、2次転写ロールT2bに対して、転写搬送ベルト1の回転方向の上流側に配置されており、2次転写領域Q4に対して用紙搬送方向の上流側に配置されている。そして、搬送テンションロール4は、軸4aを有し、軸4aは、軸支持部材の一例としての回転アーム7の先端に形成された凹部状の軸受け部7aに支持されている。
【0033】
前記軸受け部7aには、軸4aを転写搬送ベルト1側に押して転写搬送ベルト1に張力を発生させる弾性部材の一例としてのコイルバネ8が支持されている。前記回転アーム7は、回転中心7bを中心として回転可能に支持されている。回転アーム7の下方には、駆動源の一例としての移動モータM1から駆動が伝達される駆動部材の一例としての偏心カム9が配置されている。したがって、偏心カム9が回転すると、回転アーム7が回転して、搬送テンションロール4は、図2、図3の実線に示す通常位置と、破線で示すように2転写搬送ベルト1が上方に移動して2次転写領域Q4の上流側における中間転写ベルトBと転写搬送ベルト1との成す角が小さくなる小角位置と、の間で移動する。
前記回転アーム7や偏心カム9、モータM1等により、実施例1の移動部材7+9+M1が構成されている。
【0034】
(実施例1の制御部の説明)
図4は本発明の実施例1のプリンタの制御部の機能図、いわゆるブロック線図である。
図4において、前記制御部Cは、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/O、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリ、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリ、前記ROMに記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置、ならびに発振器等を有する小型情報処理装置、いわゆるマイクロコンピュータにより構成されており、前記ROMに記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0035】
(制御部Cに接続された信号出力要素)
前記制御部Cは、操作部UIや、温度の検出部材の一例としての温度センサSN1、湿度の検出部材の一例としての湿度センサSN2等の信号出力要素からの出力信号が入力されている。
前記操作部UIは、電源ボタンUI1、表示部UI2、入力釦の一例としての矢印キーUI3や設定キーUI4等を備えている。
温度センサSN1は、画像形成装置U内の環境温度を検出する。
湿度センサSN2は、画像形成装置U内の環境湿度を検出する。
【0036】
(制御部Cに接続された被制御要素)
また、制御部Cは、主駆動源駆動回路D0、電源回路E、転写搬送用の駆動回路D1、その他の図示しない制御要素に接続されており、それらの作動制御信号を出力している。
主駆動源駆動回路D0は、主駆動源の一例としてのメインモータM0を介して感光体ドラムPy〜Pkや中間転写ベルトB等を回転駆動する。
前記電源回路Eは現像用電源回路Ea、帯電用電源回路Eb、転写用電源回路Ec、定着用電源回路Ed等を有している。
【0037】
現像用電源回路Eaは、現像装置Gy〜Gkの現像ロールR0に現像電圧を印加する。
帯電用電源回路Ebは、コロトロンCCy〜CCkそれぞれに感光体ドラムPy〜Pk表面を帯電させるための帯電電圧を印加する。
転写用電源回路Ecは、1次転写器T1y〜T1kや2次転写ロールT2bに転写電圧を印加する。
定着用電源回路Edは、定着装置Fの加熱ロールFhにヒータ加熱用の電源を供給する。
転写搬送用の駆動回路D1は、移動モータM1を介して偏心カム9を制御し、搬送テンションロール4を通常位置と幅広位置との間で移動させる。
【0038】
(制御部Cの機能)
前記制御部Cは、前記信号出力要素からの入力信号に応じた処理を実行して、前記各制御要素に制御信号を出力する機能を有している。すなわち、制御部Cは次の機能を有している。
C1:ジョブ制御手段
画像形成動作の制御手段の一例としてのジョブ制御手段C1は、操作部UIからの入力に応じて、画像形成装置Uの各部材の駆動や各電圧の印加時期等を制御して、画像形成動作の一例としてのジョブを実行する。
C2:メインモータ制御手段
主駆動源の制御手段の一例としてのメインモータ制御手段C2は、メインモータ駆動回路D0を介してメインモータM0の駆動を制御し、感光体ドラムPy〜Pk等の駆動を制御する。
【0039】
C3:電源制御手段
電源制御手段C3は、現像用電源制御手段C3Aと、帯電用電源制御手段C3Bと、転写用電源制御手段C3Cと、定着用電源制御手段C3Dとを有し、電源回路Eの作動を制御して、各部材への電圧印加や電源供給を制御する。
C3A:現像用電源制御手段
現像用電源制御手段C3Aは、現像用電源回路Eaを制御して現像装置Gy〜Gkの現像ロールに印加する現像電圧を制御する。
C3B:帯電用電源制御手段
帯電用電源制御手段C3Bは、帯電用電源回路Ebを制御して、コロトロンCCy〜CCkに印加する帯電電圧を制御する。
【0040】
C3C:転写用電源制御手段
転写用電源制御手段C3Cは、転写用電源回路Ecを制御して、1次転写ロールT1y〜T1kに印加する1次転写電圧や、2次転写ロールT2bに印加する2次転写電圧を制御する。
C3D:定着用電源制御手段
定着用電源制御手段C3Dは、定着用電源回路Edを制御して、定着装置Fの加熱ロールFhのヒータの温度制御、すなわち、定着温度の制御を行う。
【0041】
C4:判別手段
判別手段C4は、温度判別手段C4Aと、湿度判別手段C4Bとを有し、トナー像を構成する現像剤が予め設定された飛び散りやすい状態であるか否かを判別する。実施例1の判別手段C4は、低帯電であるか否かを判別することで、現像剤が飛び散りやすいか否かを判別する。すなわち、実施例1の判別手段C4は、センサSN1,SN2が検出した温度および湿度の少なくとも一方に基づいて、低帯電であるか否かを判別する。具体的には、実施例1では、トナーが低帯電となりやすい高温高湿環境である場合に、トナーが低帯電であると判別する。
C4A:温度判別手段
温度判別手段C4Aは、温度センサSN1の検出結果に基づいて、環境温度が高温であるか否かを判別する。実施例1の温度判別手段C4Aは、一例として、環境温度が28℃以上の場合に高温であると判別する。
【0042】
C4B:湿度判別手段
湿度判別手段C4Bは、湿度センサSN1の検出結果に基づいて、環境湿度が高湿であるか否かを判別する。実施例1の湿度判別手段C4Bは、一例として、環境湿度が85%RH以上の場合に高湿であると判別する。
C5:移動制御手段
移動制御手段C5は、現像剤が低帯電であると判別された場合に、移動部材7+9+Mを制御して、搬送テンションロール4を通常位置から小角位置に移動させる。実施例1の移動制御手段C5は、現像剤が低帯電であると判別された場合に、偏心カム9を制御して搬送テンションロール4を小角位置に移動させると共に、現像剤が低帯電でないと判別された場合に、偏心カム9を制御して搬送テンションロール4を通常位置に移動させる。
【0043】
(実施例1の流れ図の説明)
次に、実施例1のプリンタUにおける制御の流れを流れ図、いわゆるフローチャートを使用して説明する。
(接触幅制御処理のフローチャートの説明)
図5は実施例1の接触幅制御処理のフローチャートの説明図である。
図5のフローチャートの各ステップSTの処理は、画像形成装置Uの制御部Cに記憶されたプログラムに従って行われる。また、この処理は画像形成装置Uの他の各種処理と並行して実行される。
図5に示すフローチャートはプリンタUの電源投入により開始される。
【0044】
図5のST1において、ジョブが開始されたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST2に進み、ノー(N)の場合はST1を繰り返す。
ST2において、環境温度が高温であるか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST3に進み、ノー(N)の場合はST5に進む。
ST3において、環境湿度が高湿であるか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST4に進み、ノー(N)の場合はST5に進む。
ST4において、搬送テンションロール4を小角位置に移動させる。そして、ST6に進む。
ST5において、搬送テンションロール4を通常位置に移動させる。そして、ST6に進む。
ST6において、ジョブが終了したか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST1に戻り、ノー(N)の場合はST6を繰り返す。
【0045】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の画像形成装置Uでは、感光体ドラムPy〜Pkで形成されたトナー像は、中間転写ベルトBを介して、2次転写領域Q4において、記録用紙Sに転写される。トナー像が転写された記録用紙Sは、転写搬送ベルト1の表面に支持されて下流側に搬送され、吸着搬送ベルトBHに送られ、定着装置Fでトナー像が定着された後、排出トレイTRhに排出される。
実施例1では、高温高湿以外の環境では、搬送テンションロール4が通常位置に移動して、2次転写領域Q4を通過する記録用紙Sにトナー像が転写される。そして、高温高湿の環境では、搬送テンションロール4が小角位置に移動して、転写搬送ベルト1の表面が用紙搬送路SH1に近づく。
【0046】
図3において、搬送テンションロール4が通常位置に移動した状態では、2次転写領域Q4の上流側において中間転写ベルトBと転写搬送ベルト1との成す角θが、予め設定された角度θ1となる。そして、搬送テンションロール4が小角位置に移動すると、転写搬送ベルト1の姿勢が変わって、成す角θが、通常位置における角度θ1よりも小さい角度θ2となる。よって、二次転写領域Q4の上流側において、記録用紙Sが進入してくる楔状の空間11は、通常位置に比べて、小角位置の方が尖った状態となる。
【0047】
図6は通常位置における転写領域を通過する際の空間の圧縮に関する説明図であり、図6Aはトナー像が転写領域に差し掛かった状態の説明図、図6Bは図6Aに示す状態から用紙搬送方向の下流側に移動した状態の説明図、図6Cは図6Bに示す状態からさらに用紙搬送方向の下流側に移動した状態の説明図である。
図6において、通常位置では、2次転写ロールT2bに巻き付いた状態の転写搬送ベルト1の張力に伴って、2次転写ロールT2bが締め付けられた状態となり、2次転写ロールT2bが弾性変形して、径が縮んだ状態となる。
【0048】
したがって、図6に示すように、帳票や罫線等を有する画像を印刷する場合に、トナー像として記録用紙Sの幅方向に伸びる線状の画像16,17が搬送方向に隙間をあけて形成されることがある。この場合、画像16,17が2次転写領域Q4に進入すると、図6Aに示すように下流側の画像16が記録用紙Sの表面に接触した後、図6Bに示すように上流側の画像17が記録用紙Sの表面に接触する。このとき、画像16,17の間に密閉された空間18が形成される。そして、記録用紙Sが下流側に進むに連れて、両側から二次転写ロールT2bおよびバックアップロールT2aに挟まれて、空間18が狭くなり、空気が圧縮される。特に、通常位置では、画像17が記録用紙Sの表面に接触して空間18が密閉された状態になってから、二次転写ロールT2bおよびバックアップロールT2aに挟まれて空間18が圧縮されるまでの時間が短く、空気の圧力変化が大きくなりやすい。このとき、上流側の画像17のトナーが低帯電状態でトナーどうしの電気的な力が弱い場合には、圧縮された空気の圧力を受けて、飛び散る恐れがある。
【0049】
図7は小角位置における転写領域を通過する際の空間の圧縮に関する説明図であり、図7Aはトナー像が転写領域に差し掛かった状態の説明図、図7Bは図7Aに示す状態から用紙搬送方向の下流側に移動した状態の説明図、図7Cは図7Bに示す状態からさらに用紙搬送方向の下流側に移動した状態の説明図である。
図7において、実施例1の画像形成装置Uでは、トナーが低帯電状態であると判別された場合には、搬送テンションロール4が小角位置に移動する。搬送テンションロール4が小角位置に移動すると、転写搬送ベルト1の巻き付く長さが短くなり、2次転写ロールT2bの締め付けが緩む。したがって、2次転写ロールT2bが弾性復元し、通常位置の場合に比べて、径が大きくなり、転写搬送ベルト1と中間転写ベルトBとが接触する幅である2次転写領域Q4の搬送方向の長さが搬送方向の上流側に向けて延びる。
【0050】
したがって、図7A〜図7Cに示すように、画像16,17が記録用紙Sに転写される場合に、搬送テンションロール4が通常位置に移動している場合に比べて、2次転写領域Q4の上流側で早い時期に画像17が記録用紙Sの表面に接触する。
また、2次転写ロールT2bが弾性復元すると、2次転写ロールT2bが転写搬送ベルト1を押す力の分布は、2次転写ロールT2bが弾性復元して上流側に延びた部分19では、弾性復元していない部分に比べて弱くなる。したがって、記録用紙Sに画像17が上流側の早い時期に接触した後、記録用紙Sが下流側に進むに連れて、延びた部分19の弱い力を受けて圧縮された後、2次転写ロールT2bおよびバックアップロールT2aに挟まれる。したがって、空間18の空気の圧力変化が、通常位置における場合に比べて小さくなり、飛び散りが低減される。
なお、低温低湿等の環境でトナーの帯電量が高い場合に、小角位置に保持すると、中間転写ベルトBと転写搬送ベルト1との間隔が狭くなり、放電しやすい状態となって、リーク等が発生する懸念がある。したがって、実施例1では、低帯電状態の場合に小角位置に移動し、低帯電以外の場合には通常位置に移動して転写動作が行われている。
【0051】
また、実施例1では、二次転写領域Q4において、中間転写ベルトBと転写搬送ベルト1の2つのベルトが対向して配置されている。
一般に、無端帯状のベルトを複数の回転部材で張架して使用する場合、回転部材間の平行度に伴って、ベルトが片寄ったり蛇行したりする。これに対応して、転写搬送ベルト等の縁にリブを設けて片寄りや蛇行を規制する方式で片寄りを補正しようとすると、ベルトが高速回転したり、周長が短い短尺ベルトになると片寄り等を補正しきれなくなり、転写搬送ベルトが片寄りすぎて破損等する恐れがある。したがって、高速化、長寿命化を図るにはベルトを長尺にし、実施例1のように、複数の支持ローラT2b,2〜4で転写搬送ベルト1を支持した上で、アクティブステアリング方式の搬送ステアリングロール3を使用して、片寄り、蛇行を抑制することが好適となる。
【0052】
ここで、中間転写ベルトBだけでなく、転写搬送ベルト1もアクティブステアリング方式のステアリングロールRw、3を使用すると、例えば、2次転写領域Q4に記録用紙Sが無い状態において、中間転写ベルトBが幅方向の一端側に片寄り補正がされている状態で、転写搬送ベルト1が幅方向の他端側に片寄り補正されることがあり、2次転写領域Q4において、ベルトB,1が互いに逆方向に移動する問題がある。ベルトB,1どうしが逆方向に移動すると、ベルトB,1間に摺擦が発生して、摩耗すると共に、摩擦力が作用してベルトB,1の一方に他方が引きずられてしまい、片寄りの補正に対して悪影響を及ぼす恐れがある。片寄りの補正に悪影響が発生すると、ベルトB,1の破断が発生したり、ベルトB,1の回転時の挙動が不安定となって、中間転写ベルトB上に転写される画像の位置ずれ(色ずれ)、ベルトB,1の速度変動に伴うバンディング等の画質低下が発生する恐れがある。
【0053】
そこで、従来の画像形成装置において、転写搬送ベルトに離型性を付与することで、中間転写ベルトと転写搬送ベルトの片寄りの干渉を低減し、色ずれやバンディングを防止することが考えられる。しかしながら、転写搬送ベルトに離型性を付与した場合、用紙の搬送力が低下し、画像の縮み(縦倍率の低下)が発生するといったことがあり、中間転写ベルトBに対向する転写搬送ベルト1において、アクティブステアリング方式の搬送ステアリングロール3で支持された転写搬送ベルト1を配置する構成はこれまで採用されてこなかった。
【0054】
これに対して、実施例1では、中間転写ベルトBおよび転写搬送ベルト1の両方にアクティブステアリング方式のステアリングロールRw,3を使用して片寄り、蛇行を補正すると共に、中間転写ベルトBの表面に離型性の高い表面層が形成されている。したがって、記録用紙Sが2次転写領域Q4に無い状態で、ベルトB,1どうしが互いに逆方向に移動しても摩擦力で一方が他方に引っ張られることが低減され、片寄りの補正に悪影響がでることが低減される。したがって、ベルトB,1の破損等が低減されると共に、回転時の挙動が安定しやすく、画像の位置ずれ(色ずれ)等の発生が低減される。
【0055】
また、実施例1では、2つのベルトB,1の静止摩擦係数μA,μBがμA<μBに設定されており、記録用紙Sの表面と裏面とで逆方向の力を受けても、中間転写ベルトBと記録用紙Sとの間の方が先に滑る。したがって、記録用紙Sのシワ発生や破損が低減される。
仮に、μA≧μBの場合、すなわち、中間転写ベルトではなく、転写搬送ベルトにフッ素樹脂等の表面層を形成した場合、記録用紙Sと転写搬送ベルトBとの間が滑って、記録用紙Sの搬送力が低下してしまい、画像が縮む等の問題が発生する恐れがある。これに対して、実施例1では、μA<μBに設定されており、記録用紙Sの搬送力が低下しにくく、画像が縮む等の問題の発生が低減される。
【0056】
また、従来の転写搬送ベルトでは、特許第3575729号公報や特開2006−30778号公報等に記載されているように、2つの支持部材で支持する構成が多く、2つの支持部材で支持する場合、転写搬送ベルトが経時的に伸びた場合に転写搬送ベルトが長いと張力が確保できなくことに対応して転写搬送ベルトの周長が比較的短く構成されることが多い。このような従来の転写搬送ベルトを使用する場合に、単位時間当たりの印刷枚数が多くなり転写搬送ベルトが高速回転すると、周長が短いために単位長さ当たりの摺動や摩耗が多くなって寿命が短くなると共に、転写搬送ベルトが片寄り、蛇行が発生しやすくなり転写搬送ベルトに負荷がかかりやすくなる問題がある。これに対して、実施例1では、転写搬送ベルト1を複数の支持ローラT2b,2〜4で支持し、周長が長くなっており、高速回転時でも長寿命化されている。
さらに、実施例1の画像形成装置Uでは、中間転写ベルトBを複数層で構成し表面側のみ離型性を付与しており、裏面側に離型性を付与した場合に発生するベルト支持ロールRd+Rt+Rw+Rf+T2a等と中間転写ベルトB間のスリップも防止することができる。
【0057】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H07)を下記に例示する。
(H01)前記各実施例において、画像形成装置の一例として複写機Uを例示したが、これに限定されず、プリンタ、FAX、あるいはこれら複数の機能を備えた複合機等に適用可能である。また、多色の画像形成装置に限定されず、単色の画像形成装置にも適用可能である。
【0058】
(H02)前記実施例において、像保持体の一例としてのドラム状の感光体を例示したが、これに限定されず、無端帯状の感光体を使用することも可能である。
(H03)前記実施例において、例示した具体的な数値や材料名等については、設計や仕様等に応じて、任意に変更可能である。
(H04)前記実施例において、支持ロールT2b,2〜4の数や位置等は設計や仕様等に応じて変更可能である。
【0059】
(H05)前記実施例において、搬送ステアリングロール3と搬送テンションロール4とを別の位置に配置する構成を例示したが、これに限定されず、例えば、搬送テンションロール4に搬送ステアリングロール3の機能を付与して共通化する等の変更も可能である。
(H06)前記実施例において、高温且つ高湿の場合に低帯電状態と判別する構成を例示したが、これに限定されず、例えば、高温または高湿の場合に低帯電と判別したり、常温常湿でも低帯電としたり等、設計や仕様等に応じて任意に変更可能である。また、温度と湿度の両方に基づいて判別する構成に限定されず、温度または湿度の一方に基づいて判別する構成とすることも可能である。
【0060】
(H07)前記実施例において、現像剤が飛び散りやすい状態の一例として、高温高湿の状態を例示したがこれに限定されず、例えば、多色印刷や厚紙等を使用する場合にベルトB,1が低速回転し、単色印刷や普通紙等を使用するにベルトB,1が高速回転する場合に、高速回転する場合を現像剤が飛び散りやすい状態と判別することも可能である。他には、濃度調整、いわゆるプロセスコントロールに伴って、印加される電圧が低くなり、低耐電になりやすい場合に、現像剤が飛び散りやすい状態と判別する等、現像剤が飛び散りやすい状態であるか否かを判別する条件を変更、追加することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…搬送部材、
4…支持部材、
7+9+M1…移動部材、
B…像保持体、
C4…判別手段、
C5…移動制御手段、
Q4…転写領域、
S…媒体、
SN1,SN2…検出部材、
T2b…転写部材、
U…画像形成装置、
θ1,θ2…角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に可視像が保持されて回転する無端帯状の像保持体と、
前記像保持体の表面の可視像を媒体に転写する転写領域に配置されると共に、表面に媒体を支持して搬送する無端帯状の搬送部材と、
無端帯状の前記搬送部材を回転可能に支持すると共に、前記転写領域において前記無端帯状の搬送部材を挟んで前記像保持体に対向して配置され、前記像保持体の表面の可視像を前記媒体に転写する転写電圧が前記像保持体との間で印加される転写部材と、
無端帯状の前記搬送部材を回転可能に支持し且つ前記転写部材に対して前記搬送部材の回転方向の上流側に配置された支持部材と、
前記支持部材を移動可能に支持する移動部材であって、前記転写領域の上流側における前記像保持体の表面と前記搬送部材の表面とが成す角度を予め設定された角度にする通常位置と、前記成す角度を前記通常位置における角度よりも小さい角度にする小角位置と、の間で前記支持部材を移動させて前記搬送部材の表面の姿勢を変化させる前記移動部材と、
前記可視像を構成する現像剤が飛び散りやすい状態であるか否かを判別する判別手段と、
前記現像剤が予め設定された飛び散りやすい状態であると判別された場合に、前記移動部材を前記通常位置から前記小角位置に移動させる移動制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
温度および湿度の少なくとも一方を検出する検出部材と、
前記検出部材が検出した温度および湿度の少なくとも一方に基づいて、低帯電であるか否かを判別することで現像剤が飛び散りやすい状態であるか否かを判別する前記判別手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−203377(P2012−203377A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71088(P2011−71088)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】