説明

画像形成装置

【課題】圧接部を二つ形成した上で中間転写体からトナー像を記録材に転写する構成において、上流側の圧接部を抜けた後の記録材先端と中間転写体との密着性が低下するのを抑制し、記録材の搬送性と転写性の改善を図る。
【解決手段】第1の転写内ローラ56aの回転中心と第1の転写外ローラ57bの回転中心とを結ぶ直線に垂直な第1の垂線Aは、第1の押圧部と第2の押圧部との間の直線状の中間転写ベルト51の延長線Fと第1の交差点Gにおいて交差し、かつ前記中間転写ベルト51の回転方向において前記第1の交差点Gよりも下流側では前記中間転写ベルト51の内周面側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式或いは静電記録方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多様な記録材に対応するために、感光ドラム等の像担持体に形成されたトナー像を中間転写体に転写し、その後中間転写体に形成されたトナー像を記録材に転写する転写部を有する画像形成装置が採用されている。
【0003】
特許文献1にはトナー像を記録材に転写する転写部の記録材搬送方向における幅を長くとることによって印加電圧の抑制と画質の向上とを行うために、中間転写体の内面に接触する転写内ローラ2つと、中間転写体の外面に接触し、中間転写体を介して転写内ローラ2つを圧する転写外ローラとにより転写部が形成される構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−29054
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1に記載された構成では二次転写部での記録材の搬送パスが転写外ローラに沿って大きく湾曲するので、転写外ローラを抜けた後の記録材にカールくせがつくおそれがある。そこで二次転写部での記録材の搬送パスが湾曲するのを抑制するためには、第1の転写内ローラと、中間転写体を介して第1の転写内ローラを圧する第1の転写外ローラを配置した上で、記録材の搬送方向において第1の転写内ローラより下流側の第2の転写内ローラと、中間転写体を介して第2の転写内ローラを圧する第2の転写外ローラとを配置することで、二つの押圧部と、上流側と下流側の押圧部の間に直線状のベルト面とを形成するのが有効である。
【0006】
しかし記録材の搬送方向において、第1の転写外ローラの位置が第1の転写内ローラの位置より上流側にあると、第1の転写内ローラと第1の転写外ローラとによって形成される押圧部を抜けた記録材の先端が中間転写ベルトから離れる方向を向く。その結果記録材の先端と中間転写ベルトとの密着性が圧接部を通過した後に低下するおそれがある。その結果第2の転写外ローラと第2の転写内ローラによって形成される押圧部に向けた記録材の搬送性が不安定になったり、転写性を悪化したりするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで上記課題を解決するために本願発明は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体から転写されたトナー像を担持する移動可能な中間転写体と、前記中間転写体を内周面から張架して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第1の転写内ローラと、前記中間転写体の移動方向において前記第1の転写内ローラより下流側に配置されて、前記中間転写体を内周面から張架して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第2の転写内ローラと、前記中間転写体を介して前記第1の転写内ローラを第1の押圧部で圧して前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第1の転写外ローラと、前記中間転写体を介して前記第2の転写内ローラを第2の押圧部で圧して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第2の転写外ローラと、前記第1の転写内ローラ及び前記第2の転写内ローラに電圧を印加することで画像を形成する画像形成装置において、前記第1の転写内ローラの回転中心と前記第1の転写外ローラの回転中心とを結ぶ直線に垂直な第1の垂線は、前記第1の押圧部と前記第2の押圧部との間の直線状の前記中間転写ベルトの線分と第1の交差点において交差して、かつ、前記中間転写ベルトの回転方向において前記第1の交差点よりも下流側では前記中間転写ベルトの内周面側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願発明により、圧接部を二つ形成した上で中間転写体からトナー像を記録材に転写する構成において、上流側の圧接部を抜けた後に記録材先端と中間転写との密着性が低下するのを抑制することができる。その結果下流側の圧接部に向けた記録材搬送性が不安定になったり、下流側の圧接部での転写性が悪化したりするのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】画像形成装置の概略断面構成図である。
【図2】実施形態1の二次転写部の構成を示す図である。
【図3】転写電流と転写電圧の関係を示す線図である。
【図4】記録材先端の挙動を示す図である。
【図5】実施形態1の上流側の押圧部付近を示す図である。
【図6】記録材後端の挙動を示す図である。
【図7】実施形態1の下流側の押圧部付近を示す図である。
【図8】実施形態2の二次転写部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態1>
[画像形成装置の全体構成及び動作について]
先ず、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。図1は、本実施形態の画像形成装置100の概略断面構成を示す。
【0011】
Sa、Sb、Sc、Sdはトナー像を形成する画像形成部としてのプロセスユニットである。各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdはそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像を形成する。画像形成部Sa、Sb,Sc,Sdの構成は、用いられるトナーの色が異なる以外は同様の構成であるので、代表して画像形成部Saを用いて説明する。
【0012】
画像形成部Saは、像担持体としての感光ドラム1aと、感光ドラム1a表面を帯電する帯電手段としての帯電ローラ2aと、帯電された感光体ドラム表面を露光する露光手段としてのレーザースキャナ3aとを備える。さらに画像形成部Saはトナー像を現像する現像手段としての現像装置4aと、感光ドラム1aからトナー像を中間転写ベルト51に転写する一次転写手段としての一次転写ローラ53aとを備える。感光ドラム1aが回転駆動して、感光体ドラム1aの表面が帯電ローラ2aにより帯電される。帯電された感光体ドラム1a表面はレーザースキャナ3aによって露光されて、感光体ドラム1a上に静電潜像が形成される。静電潜像は、レーザースキャナ3aの出力が画像情報に基づいてOFF/ONされることによって画像情報に応じて形成される。現像装置4aはイエロートナーを内包する。現像装置4aには所定の電圧が印加されており、静電潜像は現像装置4aを通過するときに現像されて、感光ドラム1a表面上にトナー像が形成される。現像方式としては、静電潜像の露光部にトナーを付着させて現像する反転現像方式が用いられる。一次転写ローラ53aは中間転写ベルト51を介して感光体ドラム1aを圧するように配置されて、中間転写ベルト51にトナー像を転写する一次転写部を形成する。感光ドラム1a上のトナー画像は、一次転写電源54aにより一次転写ローラ53aに一次転写電圧が印加されることにより、中間転写ベルト51へ転写する。感光ドラム1aに残ったトナーはドラムクリーナ6aによってクリーニングされる。
【0013】
なおフルカラー画像を形成する場合には、各色のトナー像がそれぞれの一次転写部で順次中間転写ベルト51に転写して重畳する。
中間転写ベルト51は、感光体ドラム1a、1b、1c、1dから転写されたトナー像を担持して搬送する中間転写体として機能する。中間転写ベルト51は外周面が感光体ドラム1a、1b、1c、1d表面に当接するように配置されており、複数の支持部材としての52,55,56a、56bによって張架されて、移動可能なベルト部材である。中間転写ベルト51として、表面抵抗率1012Ω/□(JIS−K6911法準拠プローブを使用、印加電圧100V、印加時間60sec、23℃/50%RH)、厚み80μmのPI(ポリイミド)樹脂で形成されたものを用いた。もちろんこれに限定する意図ではなく、中間転写ベルト51として、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)のような誘電体樹脂を用いてもよい。52は中間転写ベルト51の移動を駆動する駆動ローラとして機能する。間転写ベルト51は、ベルト駆動手段である中間転写ベルト駆動ローラ52による駆動力を受けて、図1中の矢印R3方向に周回移動する。
【0014】
56a、56bはトナー像を記録材に転写するための二次転写内ローラとして機能する。57a、57bは中間転写ベルト51の外周面側から二次転写内ローラ56a、56bをそれぞれ押圧するように配置される。詳細は後述するが、二次転写内ローラ56a、56b、二次転写外ローラ57a、57bが中間転写体からトナー像を記録材に転写する二次転写部を形成する二次転写部材として機能する。トナー像を記録材に転写する二次転写部における構成については後で詳細を説明する。
【0015】
記録材は記録材収容部としてのカセット81に収容されている。記録材は、記録材収容部としてのカセット81から不図示のピックアップローラ82によって取り出されて、不図示の搬送ローラ83によって搬送される。記録材を搬送するタイミングは、トナー像を中間転写体の2次転写内ローラ56a、56bに張架される位置に搬送するタイミングと同期する。
【0016】
二次転写後、記録材はトナー像を記録材に定着する定着手段としての定着装置7へと搬送される。なお二次転写部で記録材に転写せず中間転写ベルト51に残留したトナー(二次転写残トナー)は、中間転写ベルトクリーナ59によって除去、回収される。
【0017】
定着装置7は、回転自在に配設された定着ローラ71と、定着ローラ71に押圧しながら回転する加圧ローラ72と、を有する。定着ローラ71の内部には、ハロゲンランプ等のヒータ73が配設されている。そして、このヒータ73へ供給する電圧等を制御することにより、定着ローラ71の表面の温度調節が行われている。定着装置7に記録材Pが搬送されてくると、一定速度で回転する定着ローラ71と加圧ローラ72との間を記録材Pが通過する際に、記録材Pは、その表裏両面からほぼ一定の圧力、温度で加圧、加熱される。これにより、記録材Pの表面上の未定着トナー像は、溶融して記録材Pに定着される。こうして、記録材P上への画像形成が完了する。
【0018】
なお本実施形態ではプロセス速度(感光ドラム1や中間転写ベルト51の周速、記録材Pの搬送速度)は300mm/secに設定されている。
【0019】
[二次転写部の構成]
本実施形態では、二次転写内ローラ56a、56b、二次転写外ローラ57a、57bが、中間転写ベルト51からトナー像を記録材に転写する二次転写部を形成する二次転写部材として機能する。図2を用いて説明する。
【0020】
上流側の二次転写外ローラ57a(第1の転写外ローラ)は、中間転写ベルト51を介して上流側の二次転写内ローラ56a(第1の転写内ローラ)を押圧する押圧部(第1の押圧部N2a)を形成する。他方下流側の二次転写外ローラ57b(第2の転写外ローラ)は、中間転写ベルト51とを介して下流側の二次転写内ローラ56b(第2の転写内ローラ)を押圧する押圧部(第2の押圧部N2b)を形成する。
【0021】
この様に押圧部を複数形成することで、トナー像を記録材に転写する二次転写部の記録材搬送方向における幅を長くとることができる。
【0022】
二次転写内ローラ56a、56bとしては、外径12mmのSUS製の芯金561a、561bと、芯金561a、561b周りに設けられて厚さ6mmのEPDM層562a、562bとによって構成される弾性ローラを用いた。二次転写内ローラ56a、56bの電気抵抗値は約10Ω(23℃50%RH)である。もちろん二次転写内ローラをこれらの数値のものに限定する意図ではない。二次転写内ローラ56a、56bの電気抵抗値は、500g重の荷重の下で接地された金属ローラに当接された二次転写内ローラ56a、56bを50mm/secの周速で移動させ、芯金561a、561bに50Vの電圧を印加して測定された電流値から求まる。
【0023】
二次転写外ローラ57a、57bとしては、外径12mmのSUS製の芯金571a、571bと、芯金571a、571b周りに配置されて厚さ6mmのイオン導電性ウレタンスポンジ層572a、572bと、によって構成される弾性ローラを用いた。二次転写外ローラ572a、572bの電気抵抗値は、二次転写内ローラ56a、56bと同様の測定方法で、印加電圧が2000Vの場合に、約6×10Ω(23℃50%RH)である。二次転写外ローラ57a、57bの抵抗値は約10Ω以上のものを用いるのが望ましい。二次転写外ローラ57a、57bを構成するために約10Ω以上の部材を使用することで、記録材の抵抗値と比較して二次転写外ローラ57a、57bの抵抗値が十分大きくなる。その結果二次転写時に幅方向において記録材が通過しない非通紙部を流れる電流が大きくなるのを抑制することが可能になる。
【0024】
58a、58bは、トナー像を記録材に転写する二次転写電圧を印加する二次転写電圧印加手段としての二次転写電圧電源である。
【0025】
本実施形態では図2に示されるように、二次転写電圧電源58a、58bはそれぞれ二次転写外ローラ57a、57bに接続されて、かつ二次転写内ローラ56a、56bは接地される。そのため二次転写電圧電源58aが上流側の二次転写外ローラ57aに電圧を印加すると、電界が上流側の二次転写外ローラ57aと二次転写内ローラ57aとの間に形成される。さらに二次転写電圧電源58bが下流側の二次転写外ローラ57bに電圧を印加すると、電界が下流側の二次転写外ローラ57bと二次転写内ローラ56bとの間に形成される。
【0026】
トナー像を記録材に転写するときには、トナー像を記録材に転写する二次転写電圧としてトナーの正規の極性(負極性)と逆極性の電圧が二次転写外ローラ57a、57bそれぞれに印加される。二次転写電圧印加により形成される転写電界は、正規の極性のトナーを中間転写ベルト51上から記録材Pに向けて移動させる方向である。この転写電界は、上流側の二次転写内ローラ56aと二次転写外ローラ57aとの間の第1の押圧部N2aと、下流側の二次転写内ローラ56bと二次転写外ローラ57bとの間の第2の押圧部N2bとの二か所に確実に形成される。その結果トナー像を記録材に転写する転写電流が流れる電流経路として、第1の押圧部N2aを介する経路と第2の押圧部N2bとの二つを形成する。
【0027】
この理由について説明する。画像形成装置の構成によってはトナー像を記録材に転写するために必要となる電流が大きくなる場合がある。しかし従来用いられている構成では、トナー像を記録材に転写する転写電流が流れる経路が一つであった。このような構成ではトナー像を記録材に転写するために必要となる電流値が大きい場合、二次転写部において印加する電圧を高くしなければならない。その結果二次転写部の上流側で放電が生じて、画像を乱すおそれがある。すなわちトナー像を転写するために必要となる電流値が大きい場合であっても、印加電圧が高くなるのを抑制する構成が望まれている。そこで本実施形態は、トナー像を転写する転写電流が流れる電流経路を二つ形成して、転写電流を分けて流す構成となっている。その結果、トナー像を転写する転写電流が流れる経路が一つであった従来の構成に比べて、二次転写部において印加する電圧が大きくなるのを抑制することができる。
【0028】
ところで本実施形態は二次転写内ローラ56a、56bを接地して、バイアスを印加する電源58a、58bを二次転写外ローラ57a、57bそれぞれに接続する構成である。もちろんこの構成に限定する意図ではない。
【0029】
他の実施形態としては二次転写外ローラ57a、57bにバイアスを印加する電源を個別に設けるのではなくて共通化してもよい。
【0030】
また他の本実施形態としては二次転写外ローラを3本以上備えて、押圧部を三つ以上形成する構成であってもよい。
【0031】
[二次転写部における電圧の制御]
本実施形態では二次転写電圧電源58a、58bによる印加電圧は制御部200によって制御される。制御部200の制御は、ユーザに指定された記録材の坪量情報、電流測定部581aによって測定される上流側の二次転写外ローラ57aを流れる電流値、電流測定部581bによって測定される下流側の二次転写外ローラ57bを流れる電流値に基づく。制御部200はCPU,ROM,RAMを含む。なお坪量とは、単位面積辺りの重さ(g/m)を示す単位で、記録材の厚みを示す値として一般的に用いられる。
【0032】
本実施形態ではトナー像を記録材に転写する二次転写電圧を適正化するために、調整電圧を印加する調整工程としてATVC(Auto Transfer Voltage Control)がトナー像を記録材に転写する二次転写工程前の非通紙時に行われる。
【0033】
調整工程としてのATVCは、定電圧制御された複数の調整電圧が二次転写電圧電源により印加されて、調整電圧が印加された時に流れる電流がそれぞれ測定されることにより行われる。その理由は電圧と電流の相関関係を算出するためである。印加された複数の調整電圧とそれぞれ測定された電流との相関関係に基づいて二次転写に必要となる目標電流Itを流すための電圧V1が算出される。記録材が分担する記録材分担電圧V2を電圧V1に加えた電圧(V1+V2)が、調整工程に続く二次転写工程中は、定電圧制御された二次転写電圧の目標電圧Vtとして設定される。その結果二次転写電圧として所望の転写電流に対応する適正な電圧値が設定される。また二次転写中は二次転写電圧が定電圧制御された状態で印加されるので、記録材の幅が変わっても二次転写が安定した状態で行われる。
【0034】
本実施形態は二次転写電圧電源58a、58bが二次転写電圧を二次転写外ローラ57a、57bに印加する構成であるので、上流側と下流側の二次転写外ローラ57a、57bのそれぞれについて二次転写電圧を適正化する必要がある。
【0035】
上流側と下流側の二次転写外ローラ57a、57bの調整工程は並行して行われる。すなわち二次転写電圧電源58aが上流側の二次転写外ローラ57aに複数の調整電圧V1,V2を印加して、かつ二次転写電圧電源58bが複数の調整電圧V1,V2を下流側の二次転写外ローラ57bに印加する。さらにこの時に電流測定部581aがそれぞれの調整電圧V1,V2が二次転写ローラ57aに印加されたときの電流I1a、I2aを測定する。さらに電流測定部581bがそれぞれの調整電圧V1,V2が二次転写外ローラ57bに印加されたときの電流I1b、I2bを測定する。なお電流測定部581bによる下流側の二次転写外ローラ57bに流れる電流の測定は、上流側の二次転写外ローラ57aに電圧が印加された状態で行われる。そのため下流側の二次転写外ローラ57bの調整を画像形成時に近い状況で行うことができる。V1,V2,I1a、I2aの相関関係に基づいて上流側の二次転写外ローラ57a位置での二次転写に必要となる上流側の目標電流Itaを流すための電圧V1aが算出される。算出されたV1aに基づいて上流側の二次転写外ローラ57aに印加される二次転写電圧の目標電圧Vtaが設定される。同様にV1,V2,I1b、I2bの相関関係に基づいて下流側の二次転写外ローラ57b位置での二次転写に必要となる下流側の目標電流Itbを流すための電圧V1bが算出される。算出されたV1bに基づいて下流側の二次転写外ローラ57bに印加される二次転写電圧の目標電圧Vtbが設定される。
【0036】
なおトナー像すべてを記録材に転写するために必要となる目標電流の合計値は画像形成装置の構成、搬送速度等により予め設定される。本実施形態では、目標電流の合計値に対して上流側の目標電流Vtaが占める割合は50%、下流側の目標電流Vtbが占める割合は50%と、割合は同じになるように設定される。もちろんこの割合に限定する意図ではない。
【0037】
なお、図3は本実施形態の画像形成装置の二次転写部における、転写電圧と転写電流の関係を示している。下流側の二次転写外ローラ57bの位置では、上流側の二次転写外ローラ57aで転写されたトナーや記録材Pにチャージされた電荷があるのでトナー像は転写しにくい。すなわち、同じ電流を流すために必要となる電圧は、下流側の二次転写外ローラ57bの方が上流側の二次転写外ローラ57aよりもΔV高くなる。本実施形態では電圧差ΔVは800V程度になる。例えば50μAを流すために必要な印加電圧は、上流側の二次転写外ローラ57aでは4000Vであるのに対して、下流側の二次転写外ローラ57bでは4800Vとなる。
【0038】
本実施形態では上流側と下流側の二次転写外ローラ57a、57bに印加される二次転写電圧の目標電圧Vta、Vtbを設定するために、調整電圧印加を上流、下流側の二次転写外ローラ57a、57bそれぞれについて行う構成である。しかしこれに限定する意図ではない。二次転写電圧の目標電圧Vta,Vtbを設定するために、いずれか一方の二次転写外ローラについて調整電圧印加を行った上で、他方の二次転写外ローラについて調整電圧印加を行う代わりに図3の関係を利用してもよい。すなわち上流側の二次転写外ローラ57aについての目標電圧Vtaの設定は、上流側の二次転写外ローラ57aについて調整電圧印加を行うことで算出された電圧と電流の相関関係に基づいて行う。下流側の二次転写外ローラ57bについて目標電圧Vtbの設定は、上流側の二次転写外ローラ57aで算出された電圧と電流の相関関係を高電圧側に所定値シフトした関係に基づいて行う。その結果下流側の二次転写外ローラ57bについて調整電圧印加を行わずに済む。
【0039】
[二次転写内ローラと二次転写外ローラとの位置関係]
本実施形態では図5に示されるように、上流側の押圧部N2aが記録材Pを送り出す向きが、上流側の押圧部N2aと下流側の押圧部N2bとの間の直線状の中間転写ベルトの外面に記録材を進入させるように構成する。すなわち複数ある押圧部の内、上流側の押圧部において、2次転写外ローラの中心を2次転写内ローラの中心よりも中間転写ベルト51の移動方向下流側に配置させる。この理由について図4を用いて説明する。
【0040】
記録材Pの坪量が64g/m以上の場合、記録材自身の剛度が強いので記録材の姿勢は記録材自身の剛度によって支えられる。そのため記録材Pの先端T´が上流側の押圧部N2aを通過した後、記録材と中間転写ベルト51との密着性は高いままである(図4−a)。すなわち下流側の押圧部N2bに向けた記録材の搬送性は安定している。しかし記録材Pの坪量が64g/m以下の場合、記録材自身の剛度が低い。そのため記録材Pの先端T´が上流側の押圧部N2aを通過した後、記録材Pと中間転写ベルトとの密着性が低下することにより記録材Pの先端T´が中間転写ベルト51から分離してしまうことがある(図4−b)。すなわち下流側の押圧部N2bに向けた記録材の搬送性の安定性が損なわれる。
【0041】
そこで本願発明では図5に示されるように、上流側の押圧部N2aが記録材を送り出す向きが、上流側の押圧部N2aと下流側の押圧部N2bとの間の直線状の中間転写ベルト51の外面に記録材を進入させるように構成する。つまり上流側の押圧部N2aで記録材が中間転写ベルト側を向けば、記録材の先端T´は中間転写ベルト51に対して押しつけられた状態になる。その結果上流側の押圧部N2aを抜けた後に記録材先端と中間転写ベルト51との密着性が低下するのが抑制されて、下流側の押圧部N2bに向けた記録材の搬送を安定化することができる。
【0042】
図5においてAは、上流側の押圧部N2aが記録材を送り出す向きを示す。Dは、上流側の二次転写内ローラ56aの回転中心と上流側の二次転写外ローラ57aの回転中心とを結んだ直線である。押圧部で記録材を送り出す向きは、2次転写内ローラの回転中心と2次転写外ローラの回転中心を結んだ線に直交するので、AはDに対して直交する垂線(第1の垂線)となっている。またFは上流側の押圧部N2aと下流側の押圧部N2bとの間の直線状の中間転写ベルトの外面を延長した延長線を示す。
【0043】
本実施形態では上流側の押圧部N2aが記録材を送り出すと上流側の押圧部N2aと下流側の押圧部N2bとの間の直線状の中間転写ベルトの外面に記録材の先端が進入する。すなわち第1の垂線Aは、上流側の押圧部N2aと下流側の押圧部N2bとの間の線分に交差点(第1の交差点)Gで交差する。さらに第1の垂線Aは、中間転写ベルト51の回転方向において第1の交差点Fよりも下流側では中間転写ベルト51の内面側に位置する。このような位置関係になるように、二次転写内ローラ56a、56b、二次転写外ローラ57a、57bが配置される。
【0044】
ところで図5におけるθは上流側の押圧部N2aと下流側の押圧部N2bとの間の直線状の中間転写ベルト51の外面に対して記録材の先端が進入する進入角度を示す。すなわちθ(第1の角度)は、第1の交差点Gを頂点とする鋭角のことである。さらにθ(第1の角度)は、中間転写ベルト51の回転方向において第1の交差点Gより上流側の第1の垂線Aの半直線と、中間転写ベルト51の回転方向において第1の交差点Gより上流側の中間転写ベルトの外面の延長線Fの半直線とによって形成される。本実施形態では進入角度θ(第1の角度)は15°に設定される。もちろんこの数値に限定する意図ではないが、θは10°以上で40°以下の範囲で設定されるのが望ましい。この理由について説明する。
【0045】
進入角度θが小さいと上流側の押圧部N2aを抜けた後に記録材先端と中間転写ベルトとの密着性を十分に高めることができない。従って進入角度θは10°以上に設定されるのが望ましい。
【0046】
しかし進入角度θが大きくなると、記録材は上流側の押圧部N2aにおいて中間転写ベルト51が上流側の2次転写外ローラ57aの湾曲に沿うように搬送される。その結果記録材の先端が上流側の二次転写外ローラ57aに巻き付くことで、搬送不良が生じるおそれがある。そこで記録材が上流側の二次転写外ローラ57aに巻き付くのを抑制するためには進入角度θは40°以下に設定されるのが望ましい。
【0047】
また本実施形態では図7に示されるように、下流側の押圧部N2bが記録材を挟持すると、上流側の押圧部N2aと下流側の押圧部N2bとの間の直線状の中間転写ベルトの外面に記録材の後側が押しつけられるように構成される。すなわち複数ある押圧部の内、下流側の押圧部において、2次転写外ローラの中心を2次転写内ローラの中心よりも中間転写ベルトの移動方向上流側に配置する。この理由について図6を用いて説明する。
【0048】
記録材Pの坪量が256g/m以下の場合、記録材自身が軽い。そのため記録材の先端が下流側の押圧部N2bを通過した後、記録材Pの後端E’は、中間転写ベルト51との密着性が保持された状態で、下流側の押圧部N2bまで搬送される(図6−a)。しかし図6−bのように記録材Pの坪量が256g/m以上の場合記録材が重い。そのため記録材の後端E’が上流側の押圧部N2aを通過した後下流側の押圧部N2bに到達する前に、上流側の後端E’と中間転写ベルト51との間の密着性が低下する。その結果記録材Pの後端E’が中間転写ベルト51から分離した状態で下流側の押圧部N2bに搬送されると、記録材の後端E’のバタツキが生じることによって、上流側の押圧部N2aで転写した画像を乱すおそれがある。
【0049】
すなわち記録材の後端が上流側の押圧部N2aを通過した後、記録材の後端E’と中間転写ベルト51の密着性を保持するのが望ましい。
そこで本実施形態では図7に示されるように、下流側の押圧部N2bが記録材を挟持すると、上流側の押圧部N2aと下流側の押圧部N2bとの間の直線状の中間転写ベルト51の外面に記録材の後側が押しつけられるように構成される。その結果記録材の後端と中間転写ベルト51との密着性が低下するのが抑制されて、記録材の後端E’のバタツキが生じるのが抑制される。
【0050】
図7においてBは、下流側の押圧部N2bが記録材を送り出す向きを示す。Hは、下流側の二次転写内ローラ56bの回転中心と下流側の二次転写外ローラ57bを結んだ直線を示す。押圧部が記録材を送り出す向きは2次転写内ローラの回転中心と2次転写外ローラの回転中心を結んだ線に直交すので、BはHに対して直交する垂線(第2の垂線)となっている。
【0051】
すなわち本実施形態では、下流側の押圧部N2bが記録材を挟持すると、上流側の押圧部N2aと下流側の押圧部N2bとの間の直線状の中間転写ベルトの外面に記録材の後側を押しつける。すなわち第2の垂線Bは、ベルト面の上流側の押圧部N2aと下流側の押圧部N2bとの間の線分に交差点(第2の交差点)Jで交差する。かつ第2の垂線Bは、中間転写ベルト51の回転方向において第2の交差点Jよりも上流側では中間転写ベルト51の内周面側に位置する。このような位置関係になるように、二次転写内ローラ56a、56b、二次転写外ローラ57a、57bが配置される。その結果記録材の後端と中間転写ベルトの密着性が低下するのが抑制されて、記録材の後端E’のバタツキが生じるのが抑制される。
【0052】
ところで図6におけるθ´は、上流側の押圧部N2aと下流側の押圧部N2bとの間の中間転写ベルト51の直線状の外面から、下流側の押圧部N2bで挟持された記録材Pが退出する退出角度を示す。すなわち退出角度θ´(第2の角度)は第2の交差点Jを頂点とする鋭角である。さらに退出角度θ´(第2の角度)は、中間転写ベルト51の移動方向において第2の交点Jよりも下流側の第2の垂線Bの半直線と、中間転写ベルト51の移動方向において第2の交点Jよりも下流側の延長線Fの半直線とによって形成される。本実施形態では退出角度θ’は33°に設定される。もちろんこの数値に限定する意図ではない。退出角度θ’(第2の角度)は15°以上で40°以下に設定されるのが望ましい。この理由について説明する。
【0053】
退出角度θ’が小さいと、記録材の後端の中間転写ベルトへの押しつけが不十分になる。そのため記録材の後端と中間転写ベルトの密着性を保持する効果が十分得られない。そこで退出角度θ’は15°以上に設定されるのが望ましい。一方で退出角度θ’が大きくなると下流側の押圧部N2bを抜けた後記録材の先端が下流側の二次転写外ローラに記録材が巻き付きやすくなる。その結果記録材の搬送不良が生じるおそれがある。また記録材の先端が下流側の押圧部N2bを通過した後、記録材の先端が搬送ガイドのガイド面に対して垂直に突き当たるようなかたちになることにより、搬送不良が生じるおそれもある。そこで下流側の押圧部を抜けた後に記録材先端の搬送不良を抑制するために、退出角度θ’は15°以上で40°以下に設定されるのが望ましい。
【0054】
〈第2の実施形態〉
第1の実施形態と重複する点については説明を省略する。本実施形態では図8に示されるように、二次転写外ローラ57a、57bによって張架されて、記録材を担持搬送する転写搬送ベルト91が設けられている。また転写搬送ベルト91は中間転写ベルト51に、上流側の押圧部N2aと下流側の押圧部N2bとの間で接触するように配置される。
【0055】
この理由について表1を用いて説明する。表1は記録材の坪量と中間転写ベルト51上に一次転写されたトナー像の載り量をそれぞれ変更した時の、画像弊害(ガサツキ及び画像ズレ)との関係を示す。この関係により、中間転写ベルト51上のトナーの載り量が多いと画像弊害が生じるおそれがあることがわかった。この理由は中間転写ベルト51上のトナーの載り量が多くなれば記録材と中間転写ベルト51との空隙が大きくなり、中間転写ベルト51と転写搬送ベルト91の間の密着性が低下するからである。
【0056】
【表1】

【0057】
そこで本実施形態では、複数の2次転写内ローラが、中間転写ベルトと転写搬送ベルトを介して複数の2次転写外ローラに接して複数の押圧部を形成する。かつ上流側の2次転写外ローラの中心を2次転写内ローラの中心よりも中間転写ベルトの移動方向下流側に、また下流側の2次転写外ローラの中心を下流側の2次転写内ローラの中心よりも中間転写ベルトの移動方向上流側に配置する。
【0058】
転写搬送ベルト91はEPDMゴムで構成される。転写搬送ベルト91の体積抵抗率は10〜1011Ω・cmである。転写搬送ベルト91は駆動ローラ18と、2次外転写ローラ57a,57bと、テンションローラ19とによって張架される。転写搬送ベルト91は駆動ローラ18の回転駆動によって中間転写ベルト51の回転に同期して矢印方向に移動する。転写搬送ベルト91を設けることにより、上流側の押圧部N2aと下流側の押圧部N2bとの間において、記録材と中間転写ベルトとの間の密着性が向上するので、中間転写ベルト51のトナー載り量が多くなる場合であっても画像弊害が生じるのが抑制される。
【符号の説明】
【0059】
51 中間転写ベルト
56a 上流側の二次転写内ローラ
56b 下流側の二次転写内ローラ
57a 上流側の二次転写外ローラ
57b 下流側の二次転写外ローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体から転写されたトナー像を担持する移動可能な中間転写体と、
前記中間転写体を内周面から張架して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第1の転写内ローラと、
前記中間転写体の移動方向において前記第1の転写内ローラより下流側に配置されて、前記中間転写体を内周面から張架して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第2の転写内ローラと、
前記中間転写体を介して前記第1の転写内ローラを第1の押圧部で圧して前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第1の転写外ローラと、
前記中間転写体を介して前記第2の転写内ローラを第2の押圧部で圧して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第2の転写外ローラと、
前記第1の転写内ローラ及び前記第2の転写内ローラに電圧を印加することで画像を形成する画像形成装置において、
前記第1の転写内ローラの回転中心と前記第1の転写外ローラの回転中心とを結ぶ直線に垂直な第1の垂線は、前記第1の押圧部と前記第2の押圧部との間の直線状の前記中間転写ベルトの線分と第1の交差点において交差して、かつ、前記中間転写ベルトの回転方向において前記第1の交差点よりも下流側では前記中間転写ベルトの内周面側に位置することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体から転写されたトナー像を担持する移動可能な中間転写体と、
前記中間転写体を内周面から張架して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第1の転写内ローラと、
前記中間転写体の移動方向において前記第1の転写内ローラより下流側に配置されて、前記中間転写体を内周面から張架して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第2の転写内ローラと、
前記中間転写体を介して前記第1の転写内ローラを第1の押圧部で圧して前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第1の転写外ローラと、
前記中間転写体を介して前記第2の転写内ローラを第2の押圧部で圧して、前記中間転写体からトナー像を記録材に転写するための第2の転写外ローラと、
前記第1の転写外ローラ及び前記第2の転写外ローラに電圧を印加することで画像を形成する画像形成装置において、
前記第1の転写内ローラの回転中心と前記第1の転写外ローラの回転中心とを結ぶ直線に垂直な第1の垂線は、前記第1の押圧部と前記第2の押圧部との間の直線状の前記中間転写ベルトの線分と第1の交差点において交差して、かつ、前記中間転写ベルトの回転方向において前記第1の交差点よりも下流側では前記中間転写ベルトの内周面側に位置することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記第2の転写内ローラの回転中心と前記第2の転写外ローラの回転中心とを結ぶ直線に垂直な第2の垂線は、前記第1の押圧部と前記第2の押圧部との間の直線状の前記中間転写ベルトの線分と第2の交差点において交差して、かつ、前記中間転写ベルトの回転方向において前記第2の交差点よりも上流側では前記中間転写ベルトの内周面側に位置することを特徴とする画像形成装置。
特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載された画像形成装置。
【請求項4】
前記中間転写ベルトが回転する方向において前記第1の交差点より上流側の前記第1の垂線と、前記中間転写ベルトが回転する方向において前記第1の交差点よりも上流側の前記延長線とが成す第1の角度は、前記中間転写ベルトが回転する方向において第2の交差点より下流側の前記第2の垂線と、前記中間転写ベルトが回転する方向において前記第2の交差点よりも下流側の前記延長線とが成す第2の角度より大きいことを特徴とする請求項3に記載された画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の角度は、10°以上で40°以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載された画像形成装置。
【請求項6】
前記第2の角度は、15°以上で40°以下であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載された画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−234051(P2012−234051A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102670(P2011−102670)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】