説明

画像形成装置

【課題】直流バイアス現像方式を用いてカウンター現像を行なう場合における画像ノイズを防止する画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像ノイズが発生し易くなるようにかぶりマージンの絶対値をデフォルト値よりも小さくして(S501)、テストパッチの静電潜像を露光装置にて感光体ドラムの外周面上に形成する(S502)。次に、テストパッチの濃度プロファイルを取得し(S503)、画像ノイズが発生したと判定されたら(S504:YES)、プリント時のかぶりマージンの絶対値をデフォルト値の絶対値よりも大きくする(S505)。さもなければ(S504:NO)、プリント時のかぶりマージンをデフォルト値にする(S506)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に、現像ローラーと感光体ドラムとの距離変動に起因する画像ノイズを解消する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、感光体ドラムの外周面上に形成された静電潜像を現像するために供される現像剤として、トナーのみを含んだ1成分系現像剤と、トナーとキャリアーとを含んだ2成分系現像剤との2種類がある。2成分系現像剤を用いる場合には、トナーとキャリアーとを攪拌して、トナーを帯電させた後、静電吸着によって現像ローラーから感光体ドラムへとトナーが供給される。
【0003】
この静電吸着を行う方式には、直流電圧を印加する直流現像方式と、交流電圧を印加する交流現像方式とがある。直流現像方式は、交流現像方式よりも装置構成が簡単であるという意味において低コストであり、また、細線再現性に優れているという利点がある。その一方、直流現像方式は、現像ローラーと感光体ドラムとの間の距離変動の影響を受けて静電吸着力が変動し易いという問題を有している。
【0004】
このような問題に対して、例えば、感光体ドラムに対して、現像ローラーをカウンター方向に回転させると共に、現像剤の密度を高くするという対策が有効である。このようにすれば、現像ローラーに付着する現像剤から感光体ドラムまでの距離が大きくなることによって現像剤の供給量が減少し、感光体ドラム上に形成されたトナー像の濃度が低下するのを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−54103号公報
【特許文献2】特開2008−167104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この対策をとった場合には、現像剤密度を高めすぎると、現像ローラー上の現像剤の穂高が高くなって感光体ドラムにまで達し、感光体ドラム上のトナーが掻き取られて画像ノイズが発生するという問題がある。
現像剤密度は、環境、耐久期間、トナー濃度、部品のばらつき等、さまざまな要因によって変動するので、予測が難しい。したがって、現像剤密度の変動に伴う画像ノイズの発生を予測することによって、画像ノイズに対処することは困難である。
【0007】
本発明は、上述のような問題に鑑みて為されたものであって、直流バイアス現像方式を用いてカウンター現像を行なう場合における画像ノイズを防止する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、感光体ドラムに対してカウンター方向に回転する現像ローラーを備え、2成分現像剤を用いて直流バイアス現像方式で静電潜像を現像する画像形成装置であって、プリント時よりもかぶりマージンを小さくして、べた画像を形成するべた画像形成手段と、副走査方向において、前記べた画像に続く非画像領域のトナー濃度を検出する濃度検出手段と、濃度検出手段にて検出されたトナー濃度が高いほど、プリント時にトナー濃度が低くなるように現像条件を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このようにすれば、プリント時よりもかぶりマージンを小さくしてべた画像を形成するので、様々な要因により発生する画像ノイズをより確実に検出することができる。また、画像ノイズのトナー濃度が高いほど、プリント時にトナー濃度が低くなるように現像条件を制御するので、画質の劣化を最小限に留めながら画像ノイズの発生を抑えることができる。
【0010】
このばあいにおいて、制御手段は、検出されたトナー濃度が高いほど、かぶりマージンが大きくなるように現像条件を制御しても良いし、スクリーン形状を変えることによって、プリント時にトナー濃度が低くなるように制御しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の主要な構成を示す図である。
【図2】作像部111の構造の一部を示す断面図である。
【図3】現像ローラー202が備える磁石ローラーにおける磁極配置を示す断面図である。
【図4】制御部112の構成を示すブロック図である。
【図5】制御部112が現像バイアスを設定する動作を示すフローチャートである。
【図6】トナー濃度センサー440によって検出されたテストパッチの濃度プロファイルを例示するグラフであって、(a)は画像ノイズ発生時のグラフであり、(b)は正常時のグラフである。
【図7】画像形成装置によって得られる画質を評価する実験の結果を示す表である。
【図8】本発明の変形例に係る制御部112の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[1] 画像形成装置の構成
まず、本実施の形態に係る画像形成装置の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る画像形成装置の主要な構成を示す図である。図1に示されるように、画像形成装置1は、原稿読取部100、画像形成部110及び給紙部120を備えている。原稿読取部100は、原稿台トレイに載置された原稿を自動原稿搬送装置(ADF: Automatic Document Feeder)にて搬送し、光学的に読み取って画像データを生成する。画像データは後述の制御部112に記憶される。
【0013】
画像形成部110は作像部111Y〜111K、制御部112、中間転写ベルト113、2次転写ローラー対114、タイミングローラー対115、クリーナー116、定着装置117、排紙ローラー対118、排紙トレイ119、濃度センサー102及び1次転写ローラー103Y〜103Kを備えている。また、画像形成部110にはY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)各色のトナーカートリッジ101Y〜101Kが装着されている。
【0014】
トナーカートリッジ101Y〜101Kからそれぞれトナーの供給を受けて、作像部111Y〜111Kは、制御部112の制御の下、それぞれYMCK各色のトナー像を形成する。1次転写ローラー103Y〜103Kは、これらのトナー像が重なり合うように中間転写ベルト113に静電転写(1次転写)する。中間転写ベルト113は無端状の回転体であって、矢印A方向に回転走行し、1次転写されたトナー像を2次転写位置まで搬送する。中間転写ベルト113の材料としては、ポリカーボネートやポリテトラフルオロエチレン(PTFE: polytetrafluoroethylene)、或いはポリイミドを主原料としてカーボンを分散させた半導電性の材料を用いれば良い。
【0015】
給紙部120は、記録紙Pを紙サイズ毎に格納する給紙カセット121を備え、画像形成部110に記録紙Pを1枚ずつ供給する。供給された記録紙Pは、中間転写ベルト113がトナー像を搬送するのに並行して搬出され、タイミングローラー対115を経由して、2次転写ローラー対114まで搬送される。タイミングローラー対115は1対のローラーからなっており、記録紙Pが2次転写ローラー対114に到達するタイミングを調整する。
【0016】
2次転写ローラー対114は転写電圧を印加された1対のローラーからなっており、このローラー対は互いに圧接して転写NIP部を形成している。この転写NIP部において中間転写ベルト113上のトナー像が記録紙P上に静電転写(2次転写)される。トナー像を転写された記録紙Pは定着装置117へ搬送される。また、2次転写後、中間転写ベルト113上に残った残留トナーは、更に矢印A方向に搬送された後、クリーナー116によって掻き取られ、廃棄される。
【0017】
定着装置117は記録紙Pに担持されたトナー像を加熱、溶融して、記録紙Pに圧着する。トナー像を融着された記録紙Pは排紙ローラー対118によって排紙トレイ119上に排出される。なお、制御部112は、上記を含む画像形成装置1の動作を制御する。制御部112は、パソコン(PC: Personal Computer)など、他の装置との間で画像データを送受信したり、プリントジョブを受け付けたりもする。
【0018】
また、画像形成装置1は、形成する画質を安定させるために画像安定化処理を実行する。濃度センサー102は、対象物を照明してその反射光量により濃度を計測する反射型濃度センサーであって、画像安定化処理の際に中間転写ベルト113上に形成されたテストパターンを光学的に検出する。
なお、トナー像を転写するに当たっては、転写ローラーに代えて転写チャージャや転写ベルトを用いても良い。また、中間転写ベルト113上の残留トナーを除去する際に、クリーナー116(クリーニングブレード)に代えて、クリーニングブラシやクリーニングローラー等を用いても良い。定着装置117についても電磁誘導加熱方式に代えて、ハロゲンランプや抵抗発熱体を熱源に用いても良い。また、定着加熱体はローラー形状であってもベルト形状であっても良い。
【0019】
[2] 作像部111の構成
次に、作像部111Y〜111Kの構成について、特に現像装置に着目して説明する。なお、作像部111Y〜111Kは何れも同様の構成を備えているので、以下では、トナー色を表わすYMCKの文字を省いて、単に111と表わす。
図2は、作像部111の構造の一部を示す断面図である。図2に示されるように、作像部111は現像装置200と感光体ドラム210とを備えており、感光体ドラム210の外周面に沿って帯電装置、露光装置、現像装置200及び清掃装置の順に配設されている。なお、帯電装置、露光装置及び清掃装置については図示を省略した。また、後述のように、作像部111は何れも大きく分けて露光ユニットと像担持体ユニットとの2つの部分からなっている。
【0020】
感光体ドラム210は不図示の駆動手段によって回転駆動され、矢印B方向に回転する。感光体ドラム210は、アルミニウム管の外周面上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層及びオーバーコート層を順次積層した積層型感光体であって、電荷輸送層は厚さ約25μmである。また、オーバーコート層は2〜3μmであって、感光層の磨耗速度を遅らせることで長寿命化が図られる。感光体ドラム210の外周面は、帯電装置によって一様に帯電された後、露光装置がレーザー光を照射することによって静電潜像が形成される。
【0021】
現像装置200は、感光体ドラム210に向かって開口する現像ハウジング201を有している。この開口部分には、現像ローラー202が配設されており、また、開口部分の一方の縁部には現像ローラー202の外周面上に担持された現像剤の層厚を規制する規制ブレード203が設けられている。
現像ローラー202は、固定配置された磁石ローラーを、回転自在なスリーブローラーに内包した構造となっており、感光体ドラム210に対してカウンター方向(矢印C方向)に回転する。図3に示されるように、磁石ローラーは周方向に沿って順にN1、S1、N2、S2及びS3の5つの磁極を有している。これら5つの磁極のうち、現像磁極N1は感光体ドラム210と対向する位置に配置されている。
【0022】
また、現像磁極N1の下流側には搬送磁極S1、並びに反発磁極S2、S3が配置され、規制磁極N2は規制ブレード203に対向する位置に配置されている。反発磁極S2、S3は、スリーブローラー上の現像剤を剥離するために反発磁界を発生させ、特に、磁極S3はピックアップ磁極としても機能する。
現像装置200は、トナーカートリッジ101からトナーホッパー(図示省略)を経由して現像剤の供給を受ける。供給された現像剤は、攪拌スクリュー204と供給スクリュー205とによって攪拌され、所定の帯電を付与された後、現像ローラー202の供給磁極S2の作用によって、現像ローラー202の外周面上に導かれる。
【0023】
現像ローラー202の外周面上に担持された現像剤は、現像ローラー202の回転と、供給磁極S2と規制磁極N2との間の磁界の作用とによって矢印C方向へ搬送される。現像ローラー202の外周面上において、現像剤は、規制ブレード203によって所定の層厚に層厚規制された後、感光体ドラム210と現像ローラー202とが対向する現像領域まで搬送される。規制ブレード203は現像剤の穂立ち高さを規制して、トナーのかぶりや飛散が防止される。
【0024】
現像ローラー202は、不図示の電源から現像バイアスとして直流バイアスが印加される。この現像バイアスにより現像領域においては、現像ローラー202と感光体ドラム210との間に静電引力が作用する。これによって、現像剤中のトナーが現像ローラー202から感光体ドラム210の外周面上に供給され、静電潜像が顕像化される。
現像領域を通過した現像剤は、現像ローラー202の外周面上を更に矢印C方向に搬送された後、反発磁極S2、S3の作用によって現像ローラー202から剥離され、供給スクリュー205側に戻される。なお、本実施の形態に係る現像剤は、重合法によって作られた平均粒径6μmの負帯電トナー及び平均粒径33μmの磁性キャリアーからなっている。また、規制ブレード203は、磁性材料からなっている。このため、現像ローラー202の規制磁極N2と規制ブレード203との間で有効な現像剤の穂立ちを形成することできるので、安定した層厚規制を行うことができる。
【0025】
感光体ドラム210の外周面に沿って、感光体ドラム201の回転方向(矢印B方向)における現像領域の直ぐ下流側にはトナー濃度センサー220が配設されている。トナー濃度センサー220は感光体ドラム201の外周面上に形成されたトナー像の濃度を検出する。
感光体ドラム210の外周面は、1次転写ローラー103によって押圧された中間転写ベルト113に接触している。感光体ドラム210の外周面上に形成されたトナー像は、1次転写ローラー103に印加された1次転写バイアスにより形成される転写電界により、中間転写ベルト113上に転写される。
【0026】
清掃装置は、クリーニングブレードを感光体ドラム210の外周面に当接させることによって、1次転写後に感光体ドラム210の外周面上に残留するトナーを機械的に掻き取って清掃する。掻き取られたトナーは、スクリューにより廃トナーとして排出される。
イレーサーランプは、クリーニングブレードと帯電装置との隙間から、残留トナーを清掃された感光体ドラム210の外周面を露光する。これによって、感光体ドラム210の外周面が除電され、例えば、−30V程度の一様な電位とされる。
【0027】
その後、以上のような動作を繰り返すことによって、次々と作像が実行される。
なお、感光体ドラム210に代えて感光体ベルトを用いても良い。また、帯電装置は、コロナ放電方式やローラー帯電方式や帯電ブレード、帯電ブラシ、近接帯電部材等を用いても良い。また、清掃装置はクリーニングブレードに代えて、ブラシやローラー等を用いても良い。また、現像装置200を用いて残留トナーを回収しても良い。
【0028】
[2] 制御部112の構成
次に、現像装置200を制御する制御部112の構成について説明する。
図4は、制御部112の構成を示すブロック図である。図4に示されるように、制御部112は、メインコントローラー400と、エンジンコントローラー410とを備えており、現像装置200を制御する。
【0029】
メインコントローラー400は、CPU(central processing unit)401、操作パネル402及び画像メモリー403を備えている。CPU401は、操作パネル402にてユーザからの指示入力を受け付けたり、情報の表示を行なったりする。また、画像メモリー403は画像形成すべき画像データを記憶する。
エンジンコントローラー410は、CPU411、パッチ作成モジュール412、切換えスイッチ413、RAM(random access memory)414、ROM(read only memory)415、帯電バイアス発生部416及び現像バイアス発生部417を備えている。CPU411は、RAM414に記憶されている制御プログラムを起動時に読み出すと、ROM415を作業用記憶領域として当該プログラムを実行し、パッチ作成モジュール412や切換えスイッチ413、帯電バイアス発生部416、現像バイアス発生部417等を制御する。
【0030】
パッチ作成モジュール412は、テストパッチデータを作成して、出力する。本実施の形態においては、テストパッチとして、10mm×10mmの矩形状のべた画像が生成される。パッチ作成モジュール412が出力したテストパッチデータは、切換えスイッチ413を経由して、露光ユニット420に入力される。露光ユニット420は、露光装置421を備えており、入力されたテストパッチデータに従って、感光体ドラム210の外周面上を露光し、静電潜像を形成する。なお、切換えスイッチ413は、メインコントローラー400の画像メモリー403に記憶されている画像データと、パッチ作成モジュール412が出力する画像データとの何れかを露光ユニット421へ出力する。
【0031】
帯電バイアス発生部416は、像担持体ユニット430が備える帯電装置431を制御して、感光体ドラム210の外周面を一様に帯電させる。現像バイアス発生部417は、像担持体ユニット430が備える現像装置200を制御して、現像ローラー202の電位を調整する。
また、エンジンコントローラー410は、CPU411にてトナー濃度センサー440の検出値を参照することにより、感光体ドラム210の外周面上のトナー濃度を検出する。
【0032】
[3] 制御部112の動作
次に、制御部112の動作について説明する。制御部112は、起動時や紙間、プリントジョブを受け付けてから実行するまでの間、スリープ状態から復帰した場合などに現像バイアスを設定する。
図5は、制御部112が現像バイアスを設定する動作を示すフローチャートである。図5に示されるように、現像バイアスを設定する際に、制御部112は、まず、現像バイアス発生部417にてかぶりマージンの絶対値をデフォルト値の絶対値よりも小さくして(S501)、パッチ作成モジュール412にて作成したテストパッチの静電潜像を露光装置421にて感光体ドラム210の外周面上に形成する(S502)。本実施の形態においては、かぶりマージンのデフォルト値を−150Vとし、テストパッチ形成時のかぶりマージンを−50Vとしている。なお、本実施の形態においては、マイナス帯電の場合を例にとって説明している。
【0033】
かぶりマージンの絶対値を小さくすると、感光体ドラム210の外周面の帯電電位と現像ローラー202との間の電位差が小さくなる。このため、感光体ドラム210の外周面における非画像部でトナーに作用する静電反発力は、かぶりマージンがデフォルト値をとる場合よりもテストパッチ形成時の方が小さくなる。その結果、現像ローラー202の回転方向における上流側(感光体ドラム210の回転方向では下流側)に形成された現像剤の穂に潤沢に含まれているトナーのうち弱帯電トナーが非画像部に付着し易くなって、テストパッチの後端部(感光体ドラム210の回転方向における下流側)に画像ノイズが発生し易くなる。
【0034】
次に、感光体ドラム210の外周面上に形成されたテストパッチのトナー濃度を検出して、濃度プロファイルを取得する(S503)。
図6は、トナー濃度センサー440によって検出されたテストパッチの濃度プロファイルを例示するグラフであって、(a)は画像ノイズ発生時のグラフであり、(b)は正常時のグラフである。なお、縦軸はトナー濃度を表わし、横軸は検出時刻を表わしている。また、トナー濃度センサー440は、感光体ドラム210に対して静止しているので、感光体ドラム210の回転方向における上流側に付着したトナーから先にトナー濃度を検出する。
【0035】
図6(a)に示されるように、画像ノイズ発生時には、テストパッチの後端部に引き続く画像ノイズのトナー濃度パターンが検出される。一方、図6(b)に示されるように、正常時にはテストパッチの後端部には画像ノイズは現れない。また、何れの場合にはテストパッチの先端より前には画像ノイズは現れない。このことを利用して、本実施の形態においては、テストパッチ後端から1mm後ろのトナー濃度と、テストパッチ先端から3mm前のトナー濃度とを比較して、反射濃度の差が0.1以上ある場合に、画像ノイズが発生したと判定する。
【0036】
そして、画像ノイズが発生したと判定された場合には(S504:YES)、プリント時におけるかぶりマージンの絶対値をデフォルト値の絶対値よりも大きくする(S505)。本実施の形態においては、画像安定化処理の如何に関わらず、現像バイアス値が−400Vに固定され、かぶりマージンは−50Vになる。
一方、画像ノイズが発生していないと判定された場合には(S504:NO)、プリント時におけるかぶりマージンをデフォルト値にする(S506)。この場合においては、現像バイアス値のデフォルト値である−500Vが採用され、したがって、かぶりマージンも−150Vに設定された後、画像安定化処理の結果に応じて、現像バイアス値が−500V〜−600Vの範囲内の値に調整される。
【0037】
一般的に、テストパッチの後端に発生する画像ノイズは、かぶりマージン以外にも、耐久期間の長さや温湿度などの環境条件、部品バラツキなど、様々な要因の影響を受けて発生するので、印字条件から予測制御を行うことが難しい。また、同じような印字条件下でもノイズ発生の程度が変動する。このため、プリント時と同じ印字条件でテストパッチを印字しても、確実に画像ノイズを検出することは困難である。これに対して、本発明では、かぶりマージンを小さくして、プリント時よりもノイズ発生方向に負荷を加えるので、上述のような不確実性を排除して、容易に、かつ精度良く画像ノイズを検出することができる。
【0038】
また、画像ノイズが検出された場合には、かぶりマージンの絶対値を大きくすれば、プリント時における画像ノイズの発生を抑えることができる。この対策を採用した場合には、画像濃度が低下するという副作用が発生するが、画像ノイズと比較すれば、濃度低下の方がユーザにとって許容し易い。
[4] 評価実験の結果
本実施の形態に係る画像形成装置1によって得られる画質を評価する実験を行ったので、その結果について説明する。
【0039】
図7は、実験結果を示す表である。図7において、P.D.バラツキとは現像ローラーと感光体ドラムとの間の距離の変動に起因する現像ローラーと感光体ドラムとの対向部における現像剤密度の変動の大きさをいい、変動が大きいほどP.D.バラツキが高いと言う。また、P.D.バラツキが無いとは、P.D.バラツキが設計値通りであることを言い、P.D.バラツキが低めとは設計値よりも小さいことを言う。
【0040】
図7に示されるように、「従来」、即ち、べた部の現像バイアス値が−600Vで、かぶりマージンが150Vである従来技術の場合には、P.D.バラツキが高いと画像ノイズの発生が確認された。一方、P.D.バラツキが無い場合や低い場合には何も問題が生じなかった。また、「従来」と同じ構成で現像バイアス値を−400Vにした「かぶりマージン大」では、P.D.バラツキが高い場合における画像ノイズの発生を解消することはできるものの、P.D.バラツキが無い場合や低い場合に画像濃度が低下してしまうという問題がある。
【0041】
一方、本実施の形態によれば、「実施例」に示されるように、P.D.バラツキの高低に関わらず、画像ノイズや濃度低下を防止することができる。
また、後述する変形例では、プリント時におけるかぶりマージンの絶対値をデフォルト値よりも大きくするのに代えて3オン1オフのスクリーン処理を行うが、かかる処理を行った「変形例」でも、やはりP.D.バラツキの高低に関わらず、画像ノイズや濃度低下を防止することができることが分かった。
【0042】
[5] 変形例
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
(1) 上記実施の形態においては、画像ノイズが検出されるとプリント時のかぶりマージンの絶対値をデフォルト値よりも大きくする場合について説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて次のようにしても良い。
【0043】
図8は、本変形例に係る制御部112の動作を示すフローチャートである。本変形例においても上記実施の形態におけるのと同様に画像ノイズの検出処理を行い、画像ノイズが検出された場合(S804:YES)にはスクリーン処理を実行する(S805)。このスクリーン処理は、例えば、隣り合う4画素中の1画素を無色とする3オン1オフ処理を行えば良い。無色の画素部分にはトナーを付着させないので、かぶりマージンの絶対値をデフォルト値よりも大きくするのと同様に全体として濃度を低下させる効果を得ることができる。したがって、画像ノイズを抑制する効果を得る。
【0044】
画像ノイズ検出されなかった場合(S804:NO)にはスクリーン処理を行わず、通常通りにプリントを行えば良い(S806)。このようにすれば、図7に示されるように、P.D.バラツキが無い場合や低い場合における濃度低下を防止して優れた画質を実現することができる。
(2) 上記実施の形態において示した現像ローラーにおける磁極の配置(図3)はあくまで例示に過ぎず、磁極の数や配置は上記実施の形態には限定されないので、適宜選定するのが望ましい。なお、現像磁極N1の配置については、現像ローラー202と感光体ドラム210との最近接位置よりも感光体ドラム210の回転方向における上流側の方向に幾らか傾けると、現像機能を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る画像形成装置は、現像ローラーと感光体ドラムとの距離変動に起因する画像ノイズを解消する装置として有用である。
【符号の説明】
【0046】
1………………………画像形成装置
110…………………画像形成部
111Y〜111K…作像部
112…………………制御部
200…………………現像装置
201…………………現像ハウジング
202…………………現像ローラー
203…………………規制ブレード
204…………………攪拌スクリュー
205…………………供給スクリュー
210…………………感光体ドラム
410…………………エンジンコントローラー
412…………………パッチ作成モジュール
413…………………切換えスイッチ
416…………………帯電バイアス発生部
417…………………現像バイアス発生部
420…………………露光ユニット
421…………………露光装置
430…………………像担持体ユニット
431…………………帯電装置
440…………………トナー濃度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムに対してカウンター方向に回転する現像ローラーを備え、2成分現像剤を用いて直流バイアス現像方式で静電潜像を現像する画像形成装置であって、
プリント時よりもかぶりマージンを小さくして、べた画像を形成するべた画像形成手段と、
副走査方向において、前記べた画像に続く非画像領域のトナー濃度を検出する濃度検出手段と、
濃度検出手段にて検出されたトナー濃度が高いほど、プリント時にトナー濃度が低くなるように現像条件を制御する制御手段と、を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
制御手段は、検出されたトナー濃度が高いほど、かぶりマージンが大きくなるように現像条件を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
制御手段は、スクリーン形状を変えることによって、プリント時にトナー濃度が低くなるように制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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